タイトル: | 特許公報(B2)_骨代謝改善剤 |
出願番号: | 2002535679 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | A61K 36/48,A61K 36/00,A61K 35/74,A61P 15/12,A61P 19/08,A61P 19/10 |
松原 智史 早川 弘子 島川 康久 狩野 光芳 曽根 春恵 石川 文保 JP 4880861 特許公報(B2) 20111209 2002535679 20010928 骨代謝改善剤 株式会社ヤクルト本社 000006884 特許業務法人 小野国際特許事務所 110000590 小野 信夫 100086324 松原 智史 早川 弘子 島川 康久 狩野 光芳 曽根 春恵 石川 文保 JP 2000313223 20001013 20120222 A61K 36/48 20060101AFI20120202BHJP A61K 36/00 20060101ALI20120202BHJP A61K 35/74 20060101ALI20120202BHJP A61P 15/12 20060101ALI20120202BHJP A61P 19/08 20060101ALI20120202BHJP A61P 19/10 20060101ALI20120202BHJP JPA61K35/78 JA61K35/78 YA61K35/74 GA61P15/12A61P19/08A61P19/10 A61K 36/48 A61K 35/74 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平09−238647(JP,A) 特開平10−114653(JP,A) 特開平10−158178(JP,A) 特開平10−056959(JP,A) 特開平09−194384(JP,A) 1 FERM BP-1366 ATCC 27304 FERM 6223 JP2001008486 20010928 WO2002032441 20020425 10 20071026 鶴見 秀紀 技術分野本発明は、骨代謝改善剤に関し、更に詳細には、骨粗しょう症等の骨代謝の低下に伴う疾患の治療、予防に有効な、醗酵豆乳を利用する骨代謝改善剤に関する。背景技術女性、特に閉経後の女性では女性ホルモンが減少し、骨粗しょう症等の骨代謝のアンバランスに伴う疾患が多い。骨粗しょう症の患者は、骨密度が低下しているため、簡単に骨折しやすく、特に老人の場合ではこの骨折を契機に寝たきりになってしまうなどの問題があり、その予防が強く求められている。このような骨密度が低下傾向にある人には、骨代謝の改善を図り、骨密度を上昇させることが望まれており、骨代謝の改善を目的とするいくつかの技術が報告されている。例えば、豆乳のカルシウム吸収促進作用や、この豆乳中のカルシウム吸収促進物質が報告されているが(特開平6−46797号、同7−75525号等)、いずれも未だ満足し得る効果とはいえない。また、イソフラボンや、これと亜鉛やペプチドを組み合わせた組成物が骨代謝を向上させることも報告されているが(特開平10−114653号、特開2000−139411号)、これらに含まれる成分を得るためには煩雑な工程が必要であり、医薬としてはともかく、日常の生活において継続的に摂取し、骨代謝を改善するという用途には適切とはいいがたいものである。このように、効果、経済性および摂取のし易さを全て満足させる骨代謝の向上方法は未だ提供されていないというのが現状であり、本発明はこのような手段の提供を目的とするものである。発明の開示本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、既にカルシウム吸収促進作用を有することが知られている豆乳を醗酵させ、醗酵豆乳とすると骨代謝改善作用が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は、豆乳をラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・マリまたはビフィドバクテリウム・ブレーベから選ばれる1種または2種以上の微生物で発酵した発酵豆乳を有効成分として含有することを特徴とする骨代謝改善剤を提供するものである。また、本発明は人および動物に、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・マリまたはビフィドバクテリウム・ブレーベから選ばれる1種または2種以上の微生物で発酵した醗酵豆乳を有効成分として含有する骨代謝改善剤を投与することからなる、人および動物の骨代謝改善方法を提供するものである。発明の実施の形態本発明の骨代謝改善剤とは、骨吸収を抑制し、その結果、骨密度や骨中ミネラル含量を増加させる素材のことをいう。また、本発明の骨代謝改善剤において有効成分として使用される醗酵豆乳は、豆乳にラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・マリまたはビフィドバクテリウム・ブレーベから選ばれる1種または2種以上の微生物を接種し、醗酵を行ったものである。この醗酵豆乳の原料となる豆乳は大豆成分が液体に懸濁あるいは溶解していれば、どのような方法を用いて得ても良く、例えば、丸大豆や脱脂大豆を、水浸漬するか又は水浸漬しないで含水状態にて摩砕して呉となし、これを濾過して不溶性画分を除去したもの、あるいは大豆タンパクを水で溶解あるいは懸濁させたものが挙げられる。本発明の骨代謝改善剤の有効成分である醗酵豆乳の製造において、用いる乳酸菌またはビフィドバクテリウム属細菌は、特に制限されず、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidphilus)、ラクトバチルス・ガセリ(L.gasseri)、ラクトバチルス・マリ(L.mali)、ラクトバチルス・プランタラム(L.plantarum)、ラクトバチルス・ペントサス(L.pentosus)、ラクトバチルス・ブヒネリ(L.buchneri)、ラクトバチルス・カゼイ(L.casei)、ラクトバチルス・ジョンソニー(L.johnsonii)、ラクトバチルス・ガリナラム(L.gallinarum)、ラクトバチルス・アミロボラス(L.amylovorus)、ラクトバチルス・ブレビス(L.brevis)、ラクトバチルス・ラムノーザス(L.rhamnosus)、ラクトバチルス・ケフィア(L.kefir)、ラクトバチルス・パラカゼイ(L.paracasei)、ラクトバチルス・クリスパタス(L.crispatus)、ラクトバチルス・ブルガリクス(L.bulgaricus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(L.fermentum)、ラクトバチルス・ロイテリ(L.reuteri)、ラクトバチルス・アリメンタリウス(L.alimentarius)、ラクトバチルス・マルタロミクス(L.maltaromicus)等のラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptcoccus thermophilus)等のストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・クレモリス(Lactococcus cremoris)等のラクトコッカス属細菌、ロイコノストック・クレモリス(Leuconostoc cremoris)等のロイコノストック属細菌、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(B.longum)、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム(B.pseudolongum)、ビフィドバクテリウム・グロボサム(B.globosum)、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(B.adolescentis)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B.infantis)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(B.breve)、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム(B.catenulatum)ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム(B.pseudocatenulatum)、ビフィドバクテリウム・ラクチス(B.lactis)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(B.animalis)、ビフィドバクテリウム・アンギュラータム(B.angulatum)、ビフィドバクテリウム・ガリカム(B.gallicum)等のビフィドバクテリウム属細菌等が挙げられる。中でも、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・マリ、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ラムノーザス、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトコッカス・ラクチス、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスおよびビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムから選ばれる1種または2種以上を組み合わせて用いれば、骨代謝改善効果が高く、風味良好な醗酵豆乳が得られるため好ましく、特に、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・マリまたはビフィドバクテリウム・ブレーベが好ましい。このような菌として、具体的には、ラクトバチルス・カゼイYIT9029株(FERM BP−1366)、YIT0078株(ATCC393)およびYIT0123株(ATCC27216)、ラクトバチルス・マリYIT0243株(ATCC27304)、ビフィドバクテリウム・ブレーベYIT4065株(FERM BP−6223)、YIT4014株(ATCC15700)およびYIT4063株(FERM BP−2823)、ラクトバチルス・プランタラムYIT0103株(ATCC10241)、ラクトバチルス・ラムノーザスYIT105株(ATCC7469)、ラクトバチルス・パラカゼイYIT0209株(ATCC25302)、ラクトバチルス・クリスパータスYIT0212株(ATCC33820)、ラクトコッカス・ラクチスYIT2027株(FERM P−16074)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスYIT4011株(ATCC15703)およびビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムYIT4072株(ATCC27919)等が挙げられる。なお、醗酵豆乳の製造においては、上記乳酸菌およびビフィドバクテリウム属細菌の他、他の微生物、例えばバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属細菌、アセトバクター・アセチ(Acetobacter aceti)、アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)等のアセトバクター属細菌、サッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ユニスポラス(Saccharomyces unisporus)、クルイベロマイセス・マキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)、トルラスポラ・デルブルエッキー(Torulaspora delbrueckii)、キャンジダ・ケフィア(Candida kefyr)等のサッカロマイセス属、トルラスポラ属、キャンジダ属等に属する酵母等を併用して、醗酵させることも可能である。本発明で使用する醗酵豆乳の製造は、常法により行なうことができる。例えば、まず豆乳を殺菌処理した後、上記乳酸菌またはビフィドバクテリウム属細菌を接種して培養を行い、これを均質化処理することにより醗酵豆乳を得ることができる。豆乳を醗酵するにあたり、培養条件は適宜選択すればよい。例えば、嫌気性菌であれば、培養基中の酸素を炭酸ガスや窒素ガスなどの不活性ガスで置換するか、または酸素反応剤などで除酸素して嫌気的条件化にて培養を行うこともできる。また、好気性菌であれば、酸素存在下の好気条件を選択すればよい。なお、その他の条件も、用いる微生物の種類に合わせ適宜設定すればよく、例えば乳酸菌やビフィドバクテリウム属細菌を用いる場合には、25℃〜37℃で、15〜48時間程度培養すればよく、豆乳濃度としては固形分換算で1〜20%が醗酵豆乳の骨代謝改善効果の点から好ましい。この培養、醗酵にあたり、原料である豆乳中に各種糖質、各種栄養素、各種成分等、例えば、グルコース、シュークロース、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖等の糖類、肉エキス、酵母エキス、ペプチド、金属等の栄養素類、穀物成分、穀物種子の発芽物成分、野菜成分、果物成分、ナッツ成分、ハーブ成分等の植物成分、動物成分、微生物培養成分等の成分を0.01質量%〜99質量%程度添加してもよい。本発明の骨代謝改善剤は、上記して得られる醗酵豆乳を医薬や食品等の適宜な形態および液状、ペースト状、固形状等の適宜な形状とすることにより調製される。使用される醗酵豆乳も、醗酵したそのままのもの、ある程度濃縮したものあるいは凍結乾燥等の手段により固形粉末化したもの等を利用することができる。また、本発明の骨代謝改善剤における、目的を達成するための醗酵豆乳の摂取量は、6%大豆固形分の醗酵豆乳として、1人あたり10g〜1000g/日程度であり、好ましくは100g〜300g/日である。更に、本発明の骨代謝改善剤を人および動物の骨代謝改善方法に用いる場合には、人および動物に骨代謝改善剤を上記量で投与すればよい。なお、例えば食品形態の骨代謝改善剤の場合は、風味を上げたり、必要な形状とする等の目的のために種々の成分を添加、配合し、更にフレーバーを添加することができる。本発明の骨代謝改善剤に添加、混合される成分としては、各種糖質や乳化剤、増粘剤、甘味料、酸味料、果汁等が挙げられる。より具体的には、グルコース、シュークロース、フラクトース、タガトース、トレハロース、トレハルロース、ラクチュロース、キシロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳糖、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ラフィノース、スタキオース、グルコサミン、イヌリン、蜂蜜、メイプルシロップ、甘酒等の糖類、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット等の糖アルコール、スクラロース、アスパルテーム等の高甘味度甘味料、甘草、ステビア、グリチルリチン酸配糖体等の天然甘味料、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン糖脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤、寒天、ゼラチン、カラギーナン、グァーガム、キサンタンガム、ペクチン、ローカストビーンガム等の増粘(安定)剤、が挙げられる。この他にも、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、ドロマイト等のミネラル類、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、乳酸、酢酸、アミノ酸等の酸類、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、ヒドロキシプロリン、フラボン、フラボノール、イソフラボン、アントシアン、カテキン、プロアントシアニジン等の添加物類、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンD類、ビタミンK類、ベータカロチン、レチノイン酸、葉酸等の各種ビタミン類やブラックコホシュ、ダイズ、セイヨウカボチャ種子、ザクロ種子、セイヨウオトギリソウ、パッションフラワー、バレリアン、プエラリア・ミリフィカ、ローズマリー、ペパーミント、レモンバーム、マリーゴールド等のハーブエキス、米、小麦、大麦、ライ麦、カラス麦、トウモロコシ等の穀物成分あるいは穀物種子の発芽物成分、ジャガイモ、サツマイモ、ムラサキサツマイモ、ヤマイモ、カボチャ、ナス、トマト、ニガウリ、ピーマン、ゴマ、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、レタス、アズキ、ソラマメ、ダイズ、エダマメ、エンドウマメ、ショウガ、ゴボウ、セロリ、ダイコン、ワサビ、アボカド、ニンジン、ホウレンソウ、タマネギ、ニンニク、ユリ、ラッキョウ、シソ、ニラ、パースニップ、ワラビ、タケノコ、シイタケ、マッシュルーム等の野菜成分、レモン、リンゴ、ブドウ、イチゴ、オレンジ、カキ、グァバ、バナナ、ブルーベリー、フェイジョア、タマリロ、アセロラ、ライム、シークワーサー、メロン、モモ、マンゴー、ユズ、パパイア、パインアップル、ナシ、プラム、グレープフルーツ、カリン、アンズ、スイカ、ザクロ、キウイ、ミカン等の果物成分、ピーナッツ、アーモンド、ココナッツ、カシューナッツ、マカデミアナッツ、カカオ、クリ、ギンナン、クルミ等のナッツ成分、牛乳、脱脂乳、乳清、クリーム、醗酵乳、ヨーグルト等の乳成分等を配合しても、優れた風味のものを得ることができる。また、本発明の骨代謝改善剤に添加することのできるフレーバーとしては、ヨーグルト系、ベリー系、オレンジ系、花梨系、シソ系、シトラス系、アップル系、ミント系、グレープ系、ペア、カスタードクリーム、ピーチ、メロン、バナナ、トロピカル、ハーブ系、紅茶、コーヒー系等のフレーバーが挙げられ、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。かくして得られる本発明の骨代謝改善剤は、酸素透過性の低い密封容器に充填して提供できるし、また、酸素透過性の高い密封容器に充填して提供することもできる。更に、これらの密封容器内を不活性ガスで置換しても良い。実施例以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はなんらこれら実施例により制約されるものではない。実施例 1豆乳飼料および醗酵豆乳飼料の製造(1):(1)豆乳および醗酵豆乳粉末の調製素豆乳(四国加工機製、含0.8%ブドウ糖果糖液糖)20リットルを135℃で3.5秒プレート滅菌後、10リットルを4℃で保存した。残りの10リットルにラクトバチルス・カゼイYIT9029菌液を0.01%、ラクトバチルス・マリYIT0243を1%接種し、30℃で24時間培養して醗酵豆乳を得た。保存した豆乳および醗酵豆乳はそれぞれ凍結乾燥を行い、粉砕して豆乳粉末および醗酵豆乳粉末とした。(2)飼料調製表1に示す組成の飼料を調製し、以下の試験で用いた。対照飼料は、AIN−93Gの組成を一部改変し、カルシウム含量0.1%の低カルシウム食とした。豆乳粉末および醗酵豆乳粉末は4%を混合し、豆乳飼料および醗酵豆乳飼料とした。ミネラルは豆乳、醗酵豆乳粉末中含量を分析し、3種類の飼料中カルシウム、リンおよびマグネシウム含量が等しくなるように調製した。実施例 2骨代謝改善性試験(1):8週齢(♀)のSD系ラットを36匹購入し、27匹に両側の卵巣摘出手術、9匹に偽手術を行った。対照飼料を与えた2週間の回復期を設けたのち、卵巣摘出した個体を3群にわけ(n=9)、卵巣摘出−対照飼料群(以下、「対照群」という)、卵巣摘出−豆乳飼料群(以下、「豆乳群」という)および卵巣摘出−醗酵豆乳飼料群(以下、「醗酵豆乳群」という)とした。また、偽手術した個体を偽手術群とした。偽手術群、対照群には対照飼料を、豆乳群には豆乳飼料、醗酵豆乳群には醗酵豆乳飼料を8週間与えた。飼料投与はペアードフィーディングを行い、各群の飼料摂取量がほぼ等しくなるようにした。水はイオン交換水を自由摂取させた。投与8週目に代謝ケージを用いて24時間採尿を行い、体積を測定後、−20℃で分析まで保存した。解剖1週間前に6日間膣粘膜上皮細胞を採取し、角化上皮細胞の有無を観察することにより、偽手術群に発情があることおよび他の群に発情がないことを確認した。ネンブタール麻酔下で腹部大動脈より放血を行って屠殺ののち、解剖を行い、子宮、大腿骨および脛骨を摘出した。脛骨および大腿骨の骨密度は、100℃で24時間乾燥後、その質量および体積を測定することにより求めた。その後、脛骨および大腿骨を550℃で24時間灰化して質量を測定し、体積当たりの質量を骨中ミネラル含量として示した。なお、統計処理は、分散分析ののち、Tukeyの検定にて多重比較を行った(図中、同じアルファベットを共有しない群間に有意差(P<0.05)あり)。(結 果)尿中に排出された、骨吸収の程度を示すマーカーであるデオキシピリジノリンを測定した結果を図1に、脛骨および大腿骨の骨密度を測定した結果をそれぞれ図2および図3に、骨中ミネラル含量を測定した結果をそれぞれ図4および図5に示す。なお、デオキシピリジノリンは臨床検査用キット(Pyrilinks−D:メトラ社製)を用いて測定し、予め測定したクレアチニン(クレアチニンBテストワコー/和光純薬社製)当たりの濃度で示した。このデオキシピリジノリンは、コラーゲンを架橋している物質で、大部分が骨中に存在する。この物質は骨吸収に伴って放出され、未代謝のまま尿中より排出されること、消化管からの吸収がなく、食事の影響を受けないことから優れた骨吸収マーカーとして知られているもので、実際、骨の減少率との間に有意な負の相関があることが報告されている(Fledelius C et al.Calcif.Tissue Int.54,381−384,1994)。この結果から明らかなように、醗酵豆乳群は、対照群および豆乳群に比べ尿中骨代謝マーカーであるデオキシピリジノリンの濃度が有意に低く、偽手術群に近い値であった。また、骨密度および骨中ミネラル含量の減少も対照群および豆乳群に比べ少なく、脛骨密度および大腿骨ミネラル含量は対照群より有意に高い値となった。一方、子宮質量は卵巣摘出により約11%に減少したが、対照群、豆乳群、醗酵豆乳群の間で有意差はみられなかった。実施例 3醗酵豆乳飼料の製造(2):(1)豆乳および醗酵豆乳粉末の調製素豆乳(四国加工機製)170リットルを100℃で90分間蒸気滅菌後、80リットルを4℃で保存した。残りの90リットルにビフィドバクテリウム・ブレーベYIT4065菌液を1%接種し、34℃で15時間培養して醗酵豆乳を得た。保存した豆乳および醗酵豆乳はそれぞれ凍結乾燥を行い、粉砕して豆乳粉末および醗酵豆乳粉末とした。(2)飼料調製対照飼料はAIN−76の組成を一部改変し、タンパク含量25%、脂肪含量17%の調製飼料にした。豆乳飼料および醗酵豆乳飼料は、粗タンパク48%、粗脂肪24.3%である豆乳粉末および醗酵豆乳粉末を30%含有したもので、これらの飼料の粗タンパク、粗脂肪、カルシウム、リン、マグネシウムの含量が対照飼料と等しくなるようにカゼイン、コーンオイル、CaCO3、KH2PO4、MgO、シュークロースで調製した。実施例 4骨代謝改善性試験(2):卵巣摘出手術をし、発情のないことを確認した8ヶ月齢(♀)のWistar系経産ラット24匹を3群に分けて(n=8)、対照群、豆乳群、発酵豆乳群とした。また、偽手術をし、発情があることを確認した同ラット8匹を偽手術群とした。偽手術群、対照群には対照飼料を、豆乳群には豆乳飼料を、発酵豆乳群には醗酵豆乳飼料を12週間与えた。水はイオン交換水を自由摂取させた。4時間絶食後にネンブタール麻酔下で腹部大動脈より放血を行って屠殺ののち、解剖を行い、子宮、大腿骨および脛骨を摘出した。脛骨の骨密度は、実施例2と同様に測定し、大腿骨中のカルシウム含量は、凍結乾燥した骨を550℃で5時間灰化した後、硝酸および過塩素酸で湿式灰化したものを高周波プラズマ発光分析装置 ICP−S2000(島津製作所製)にて測定した。(結 果)脛骨の骨密度を測定した結果を図6に、大腿骨中のカルシウム濃度を測定した結果を図7に示す。醗酵豆乳群における大腿骨の乾燥質量あたりのカルシウム含量および体積あたりのカルシウム含量が対照群に比べて有意に高かったが、豆乳群では対照群と差がなかった。また、発酵豆乳群における脛骨の骨密度および体積あたりのカルシウム含量は対照に比べて有意に高かったが、豆乳群では差がなかった。また、子宮質量は卵巣摘出の3群間で有意な差がなく、初体重、終体重、飼料摂取量にも有意な差は見られなかった。以上の結果から明らかなように、未醗酵の豆乳に比べて、醗酵豆乳には卵巣摘出による骨密度の低下を防ぐ効果があった。このことは未醗酵の豆乳によって骨代謝が改善できない場合でも、ビフィドバクテリウム・ブレーベYIT4065で製造した醗酵豆乳が骨代謝の改善に有効であることを示している。産業上の利用可能性上記試験から、醗酵豆乳は女性ホルモンの合成分泌能が低下する閉経後の女性に対する有用な骨代謝改善剤として使用しうることが示された。また閉経前であっても女性ホルモンの乱れによる骨代謝への悪影響を予防する食品として有用であるといえる。さらに本試験から、醗酵豆乳は豆乳に比べ、骨代謝の面で明らかに優位性を持つことが明かとなった。従って本発明の骨代謝改善剤は、骨粗しょう症等の骨代謝の低下に伴う疾患の治療、予防に極めて有効である。【図面の簡単な説明】図1は尿中に排出された、デオキシピリジノリンを測定した結果を示す図面である。図2は脛骨の骨密度を測定した結果を示す図面である。図3は大腿骨の骨密度を測定した結果を示す図面である。図4は脛骨の骨中ミネラル含量を測定した結果を示す図面である。図5は大腿骨の骨中ミネラル含量を測定した結果を示す図面である。図6は脛骨の骨密度を測定した結果を示す図面である。図7は大腿骨カルシウム含量を測定した結果を示す図面である。 豆乳をラクトバチルス・カゼイYIT9029株(FERM BP−1366)、ラクトバチルス・マリYIT0243株(ATCC27304)およびビフィドバクテリウム・ブレーベYIT4065株(FERM BP−6223)から選ばれる1種または2種以上の微生物で醗酵した醗酵豆乳を有効成分として含有することを特徴とする女性ホルモンの合成分泌能が低下した女性用の骨密度低下抑制剤。