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タイトル:特許公報(B2)_アリルアルコールの異性化方法
出願番号:2002528633
年次:2009
IPC分類:C07C 29/56,B01J 31/22,C07C 33/03,C07D 215/30,C07F 11/00,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

フランク,ハエセ エベル,クラウス JP 4377128 特許公報(B2) 20090918 2002528633 20010918 アリルアルコールの異性化方法 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア 508020155 BASF SE 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 新井 栄一 100122389 フランク,ハエセ エベル,クラウス DE 100 46 865.9 20000920 20091202 C07C 29/56 20060101AFI20091112BHJP B01J 31/22 20060101ALI20091112BHJP C07C 33/03 20060101ALI20091112BHJP C07D 215/30 20060101ALI20091112BHJP C07F 11/00 20060101ALN20091112BHJP C07B 61/00 20060101ALN20091112BHJP JPC07C29/56 BB01J31/22 ZC07C33/03C07D215/30C07F11/00 CC07B61/00 300 C07C 29/56、33/03 CA(STN) CASREACT(STN) REGISTRY(STN) 特表平09−508392(JP,A) Sang-Woo PARK et al.,Bulletin of the Korean Chemical Society,2000年 4月,vol.21, no.4,pp.446-448 Francesco P. BALLISTRERI et al.,Journal of Organic Chemistry ,1996年,vol.61, no.18,pp.6381-6387 14 EP2001010777 20010918 WO2002024617 20020328 2004509157 20040325 18 20080401 神野 将志 【0001】本発明は、平衡の両方向において、前駆体アリルアルコールを生成物アリルアルコールに異性化する方法であって、反応を、オキソペルオキソタングステン(VI)錯体の存在下で行う前記方法、及び新規なペルオキソタングステン(VI)錯体、及びその使用に関する。【0002】アリルアルコールは、工業的有機生成物の合成において重要な中間体である。第3級アリルアルコールは特に、例えば、香料の調製における中間化合物として、また、石鹸及び洗剤における添加剤として役立つ。【0003】アリルアルコールは酸触媒下で異性化する。この異性化は、式I及びII:【化6】(式中、R1〜R5は、水素、または置換されていてもよい一不飽和、多価不飽和もしくは飽和のC1-C12-アルキル基である)で表される平衡式に示されるように、ヒドロキシル基の1,3-移動及び二重結合の内部置換に該当する。【0004】この方法は特に、例えば、ゲラニオール又はネロールなどの第1級又は第2級アリルアルコールの異性化による、例えば、2-リナロールなどの第3級生成物アリルアルコールの製造に好適である。【0005】ゲラニオール(2-トランス-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-8-オール)、ネロール(2-シス-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-8-オール)及び2-リナロール(3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オール)は、香料産業における重要な化合物である。これらは香料として直接使用されるか、又は他の化合物との反応により、より高分子量の香料に転換される。これらのテルペンアルコールはまた、ビタミンE及びビタミンAなどのビタミンの合成においてC10ビルディングブロックとして重要である。【0006】過去の文献ではリナロールのゲラニオールへの異性化方法の記載が中心であった。該異性化は平衡反応であるため、開発された方法は、原理的にはゲラニオール又はネロールからリナロールへの異性化の逆反応にも使用することができる。【0007】最初は、アリルアルコールの異性化反応は触媒として酸を用いて行われた。しかしながら、これらの方法は、例えば、脱水又は環化などの二次反応がこれらを支配するため、その重要性は限定されていた。【0008】より最近では、モリブデン、バナジウム及びタングステン化合物が、置換アリルアルコールの転位のための触媒として同定及び研究されている(P. Chabardesら、Tetrahedron 33 (1977), pages 1775-1783を参照)。【0009】英国特許GB 125 6184に記載されたモリブデン化合物は異性化触媒として不十分な結果であったのに対して、さらなる配位子としての窒素塩基の存在下で、式WO(OR)4のタングステンオキソ(VI)アルコキシド触媒を用いると、式VO(OR)3で表される類似バナジウムオキソ(V)アルコキシド触媒と比較して、相対的に高い選択性と同時により高い活性が可能であった。さらに、タングステン触媒の利点は、第1に、それらを反応混合物から容易に分離することができるということ(T. Hosogaiら、Chemistry Letters 1982, pages 357-360を参照)及びそれらがバナジウム触媒と比較して毒性が低いということである。【0010】さらに、独国特許DE 25 16 698には、タングステンに基づく新規な触媒の製造、及び第3級アリルアルコールから第1級アリルアルコールへの触媒転位のためのその使用が開示されている。この方法では、用いる触媒は、酸素を介して結合したアルコキシ基及び/又はトリアルキルシリル基を含み、選択性を改善するために、タングステンに配位結合した、元素N、P、As及びBiから選択される元素を含む配位子、特に、第1級、第2級および第3級のクラスのモノアミン、ポリアミン、Schiff塩基、イミン、ニトリル及びイソニトリルから選択される配位子をさらに含むタングステンオキソ(VI)錯体である。特に好適なものとして該文献に記載されている配位子は、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、b-エトキシエチルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン及びナフチルアミンなどの第1級モノアミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、メチルアニリン、メチルシクロヘキシルアミン、ピペリジンモルホリン及びピロリジンなどの第2級モノアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルジブチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン、N-メチルピロリジン及びN-メチルモルホリンなどの第3級モノアミン;エチレンジアミン、ピラジン、ピペラジン、ピリミジン、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン、ポリエチレンイミン、並びに分子内に多数のアミノ基を有するイオン交換樹脂であり、特に、ピリジン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジエチルアミン及びトリシクロヘキシルホスフィンである。該文献にはアミノアルコールは記載されていない。【0011】独国特許DE 25 16 698に記載された方法と同様にして、発明者らがタングステンオキソ(VI)テトラキスゲラニレートの0.05 mol%強度溶液を用いたゲラニオールの異性化について研究したところ、リナロールへの転位は、200℃にて窒素塩基の存在下では(反応時間は約1時間)、窒素塩基を同時使用しない場合よりも有意により選択的に進行することが示された。ここで用いた窒素塩基は、ジエチルアミン、ピリジン、イミダゾール及びポリ-(4-ビニルピリジン)であった。触媒溶液にアミノアルコールを添加することにより、改善された(比較実験、実施例2〜6を参照)。この方法によって達成されたリナノールの選択性は非常に良好であるが、この方法で達成された転化率は依然として満足のいくものではない。【0012】これらの実験の欠点は、相対的に転化率が低いことに加えて、同時に温度が150℃と高いことであり、そのために副生成物の形成が加速されることである。【0013】独国特許DE 25 16 698には、アルコール又はアルコール中に溶解したアルコキシドを用いたタングステンオキソテトラクロリドのアルコール分解による、タングステンアルコキシドの合成が記載されている。アンモニアを用いて塩化アンモニウムの形態で塩化物を除去すること又はナトリウムメトキシドを用いて塩化ナトリウムとして塩化物を除去することが可能であるが、それは常に不完全である。また、塩素はほとんど常に蒸留生成物アリルアルコール中に存在し、香料及びビタミンとしてのその品質及び許容性を激しく損なう。さらに、タングステンアルコキシド中の塩化物は、例えppm量でも、金属カラム及び反応器に対する有害な腐食作用を有する。続いて、活性炭フィルター又は酸化銀(I)を介して微量の塩化物を除去することが可能であるが、労力を要し、工程全体が複雑かつより高価になる。【0014】さらに、タングステンオキソテトラクロリドは、上流の反応においてタングステン酸及び塩化チオニルを用いた公知の方法により最初に供給しなければならず、これはタングステンアルコキシドの合成を多段階工程において高い費用で行わなければならないことを意味する。【0015】独国特許DE 25 16 698に記載されたのと同様にして、ヒドロキシル化合物とタングステントリオキシドとからタングステンオキソ(VI)アルコキシド錯体を導く工程は、収率が悪いために工業的な用途に使用することができない。【0016】知られているように、タングステンアルコキシドは加水分解されやすく、水と反応してアルコール及びタングステンオキシドを生成する。アリルアルコールの異性化の条件下では、アリルアルコールの異性化の二次反応として脱水反応も常に起こり、タングステンオキシドは溶解性に乏しい形態で反応混合物から徐々に沈降してくる。これらは、触媒費用を増加させ、さらにアリルアルコールからの副生成物及び水の形成を促し、選択性のさらなる悪化をもたらす。【0017】本発明の課題は、アリルアルコールの異性化方法を改良して、ハロゲンによるアリルアルコールの夾雑、さらに、プラントにおける腐食の問題を回避するために、タングステンオキソ触媒がハロゲンを含まず、単純で低コストな工程で調製できるようにすることである。さらに、本発明の目的は、加水分解による触媒の損失を減少させる又は完全に回避すること、及び生成物の選択性を改善することである。また、異性化温度をさらに増加させる必要なしに、平衡への到達速度を加速し、空時収率を増加させる必要がある。【0018】さらに、ゲラニオール及びネロールなどの第1級又は第2級アリルアルコールの、リナロールなどの第3級アリルアルコールへの異性化の場合、改良触媒は、用いた前駆体アリルアルコールのより高い転化率を達成すること、すなわち、平衡に到達する速度を加速することを目的とした。さらにまた、新規触媒は従来の触媒よりも容易に製造できることを目的とした。【0019】驚くべきことに、本発明者らは、この課題が、ゲラニオール及びネロールのリナロールへの異性化に関して、同時に改良された選択性及びより高い活性により、均質に溶解した式(III)で表される新規なオキソペルオキソタングステン(VI)錯体により達成されることを見出した。【0020】本発明によれば、水、アルコール又は別の溶媒に溶解したオキソペルオキソタングステン(VI)の均質な溶液を使用することが可能である。【0021】本発明は、下記式(I)で表される前駆体アリルアルコールを下記式(II)で表される生成物アリルアルコールに異性化する方法であって、【化7】(式中、R1〜R5は、平衡の両方向において、水素、または置換されていてもよい一不飽和、多価不飽和もしくは飽和のC1-C12-アルキル基である。)該反応を、下記式(III)【化8】(式中、L1およびL2は、各場合において互いに独立して、水、ヒドロキシル、アルコキシもしくはフリーの配位位置であるか、またはアミノアルコール、アミノフェノール、アミノカルボン酸もしくはそれらの混合物、もしくはアミンとアルコール、フェノールもしくはカルボン酸との混合物の群から選択される配位子であってもよく、mは、1または2であり、nは、1〜6であり、pは、1〜6であり、p>1の場合、二核錯体または多核錯体が形成される。)で表されるオキソペルオキソタングステン(VI)錯体の存在下で行う、前記方法を提供する。【0022】本発明による方法を用いて有利に異性化可能である式(I)又は(II)のアリルアルコールの例は:2-メチル-3-ブテン-2-オール、プレノール(3-メチル-2-ブテン-1-オール)、リナロール、ネロール及びゲラニオール並びにファルネソール(3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエン-1-オール)及びネロリドール(3,7,11-トリメチルドデカ-1,6,10-トリエン-3-オール)であり、特に、リナロール、ネロール及びゲラニオールである。【0023】配位子L1及び/又はL2は、水、ヒドロキシル、アルコキシもしくはフリーの配位位置であるか、又はアミノアルコール、アミノフェノール、アミノカルボン酸もしくはそれらの混合物などの窒素もしくは酸素を含む配位子であってもよい。【0024】用いることができるアミノアルコールの例は:トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、3-アミノ-1-プロパノール、1-アミノ-2-プロパノール、2-アミノ-1-プロパノール、ブチルジエタノールアミン、メチルジイソプロパノールアミン、N-(2-ヒドロキシベンジル)アミン又はN,N'-ビス(2-ヒドロキシベンジル)-1,2-ジアミノエタンである。【0025】用いることができるアミノフェノールの例は:o-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール又は8-ヒドロキシキノリン(ハロゲン、アルキル、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、チオ、スルホニル又はニトロで置換されていてもよい)であり、特に、8-ヒドロキシキノリンが好ましい。【0026】用いることができるアミノカルボン酸の例は:ピコリン酸、2,6-ピリジンジカルボン酸又はβ-アラニンである。【0027】また、アミンとアルコール、フェノール又はカルボン酸との混合物を用いることも可能である。【0028】アミンとは、例えば、モノ-、ジ-又はトリメチルアミン、エチルアミン、モノ-、ジ-又はトリエチルアミン、モノ-、ジ-又はトリブチルアミン、好ましくはジエチルアミンを意味するものと理解される。【0029】カルボン酸とは、1〜12個の炭素原子を有し、ヒドロキシル又はハロゲンによって置換されていてもよい一不飽和、多価不飽和又は飽和のモノ-、ジ-又はトリカルボン酸、例えば、ギ酸、酢酸、酪酸、ピバル酸、酪酸、ヘキサン酸、ラウリル酸、アクリル酸、オレイン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、特に好ましくはクエン酸を意味するものと理解される。【0030】フェノールはハロゲン、アルキル、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、チオ、スルホニル又はニトロにより置換されていてもよい。【0031】好ましいのは、ジエチルアミンとフェノールとの混合物又はジエチルアミンとクエン酸との混合物である。【0032】アルコールとは、特に述べない限り、Rが、ハロゲン、C1-C6-アルキル、アミノもしくはヒドロキシルにより一置換又は多置換されていてもよい一不飽和、多価不飽和又は飽和のC1-C15-アルキル基であるアルコールROH、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、ゲラニオール、ネロール、ネロリドール、プレノール、リナロール又はファルネソールを意味するものと理解される。【0033】しかしながら、さらなる配位子として、1,3-アミノアルコール又は1,4-アミノアルコールを使用することもできる。第1級アミンを有するアミノアルコールは、窒素原子がさらにモノ-及び/又はジ-アルキル-置換されていてもよい。第2級アミンを有するアミノアルコールは、窒素原子がさらにモノ-アルキル-置換されていてもよい。【0034】 本発明による好ましい触媒は、式【化9】(式中、L1及びL2及びnは上記で定義したとおりであり、pは2〜6である)で表される触媒である。【0035】本発明はまた、式(III)【化10】(式中、L1は、水、ヒドロキシル、アルコキシもしくはフリーの配位位置であるか、またはアミノアルコール、アミノフェノール、アミノカルボン酸もしくはそれらの混合物、もしくはアミンとアルコール、フェノールもしくはカルボン酸との混合物の群から選択される配位子であってもよく、L2は、アミノアルコール、アミノフェノール、アミノカルボン酸もしくはそれらの混合物、もしくはアミンとアルコール、フェノールもしくはカルボン酸との混合物の群から選択される配位子であり、mは、1または2であり、nは、1〜6であり、pは、1〜6であり、p>1の場合、二核錯体または多核錯体が形成される。)で表される新規なオキソペルオキソタングステン(VI)錯体を提供する。【0036】 好ましいのは、式(IIIa)、(IIIb)及び(IIIc)【化11】(式中、 L1は、水、ヒドロキシル、アルコキシもしくはフリーの配位位置であるか、またはアミノアルコール、アミノフェノール、アミノカルボン酸もしくはそれらの混合物、もしくはアミンとアルコール、フェノールもしくはカルボン酸との混合物の群から選択される配位子であってもよく、 L2は、アミノアルコール、アミノフェノール、アミノカルボン酸もしくはそれらの混合物、もしくはアミンとアルコール、フェノールもしくはカルボン酸との混合物の群から選択される配位子であり、 nは、1〜6であり、 pは、2〜6であり、p>1の場合、二核錯体または多核錯体が形成される。)で表される錯体である。【0037】特に好ましいのは、配位子L1及び/又はL2が8-ヒドロキシキノリンである錯体である。【0038】本発明によるペルオキソタングステン(VI)錯体は単核形態又は多核形態であってもよい。もし、p>1である場合にこの錯体が二核又は多核形態であるならば、該錯体は式(IIIc)で与えられる構造を有する。【0039】8-ヒドロキシキノリンは、配位子L1及び/又はL2として特に好ましく使用される。タングステンと8-ヒドロキシキノリンのモル比は1:1〜1:5の範囲、好ましくは1:1及び1:2である。【0040】オキソペルオキソタングステン(VI)錯体は、独国特許DE 195 33 331に記載の方法に従って、タングステン酸及び水性過酸化水素溶液から、必要に応じて続いて配位子を付加することにより製造することができる。【0041】また、オキソペルオキソタングステン(VI)錯体は、アルコールROH(アルコールは上記で定義したとおりであり、好ましくはゲラニオール、ネロール及びリナロールである)中で無水条件下にて、タングステン酸及び尿素/過酸化水素付加物から、必要に応じて続いて配位子を付加することにより製造することもできる。【0042】オキソペルオキソタングステン(VI)錯体は、実際の反応前に別々に製造することもできるし、前駆体アリルアルコール中でin situで同時に製造することもできる。【0043】一般的には、オキソペルオキソタングステン(VI)錯体は、0.001〜約5重量%の濃度で前駆体アリルアルコール中に溶解して使用する。【0044】アミノアルコール配位子の設定量、特に、用いるオキソペルオキソタングステン(VI)錯体の量に対する配位子の量は、反応の選択性に影響する。【0045】タングステンの量に対して、アミノアルコール配位子の量が少ないときは選択性及び活性が低くなる。【0046】最初に、さらなる有機溶媒を用いて、もしくは用いずに配位子L1又はL2とオキソペルオキソタングステン(VI)錯体の水性又は有機性溶液と混合した後、この方法で製造した完成した触媒の溶液又は懸濁液を前駆体アリルアルコールに加えることが特に有利であることが証明された。加える配位子は、一般的には、タングステンの量に基づいて、1〜1000 mol%、好ましくは100〜700 mol%の量で用いる。【0047】反応混合物中の配位子及びタングステン錯体の絶対濃度は本発明による方法において重要ではなく、例えば、平衡に到達する速度が所望の様式で増加するように増加させてもよい。【0048】また、本発明による方法では、例えば、不活性ガス流を通過させるか、公知の水除去剤を添加するか、又は蒸留中に生成物アリルアルコールのガス流を用いて除去することによって、混合物から二次反応の結果として形成される水を除去することにより平衡に到達する速度を高めることもできる。【0049】一般的には、本発明による方法は約50〜300℃、好ましくは150〜250℃の温度で行う。【0050】それは溶媒を使用してもしなくても、非連続的又は連続的に実行することができる。用いることができる溶媒は、トルエン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、シクロヘキサン、キシレン、塩化メチレン又はメシチレンなどの有機溶媒であるが、好ましくは、溶媒として前駆体アリルアルコール自体を用いる。【0051】反応混合物中の前駆体アリルアルコールが約10〜約100重量%の濃度で存在する場合、本発明による方法を有利に実行することができる。【0052】本発明による特に有利な方法は、用いる前駆体アリルアルコールがゲラニオール及びネロールであり、かつ製造される生成物アリルアルコールが2-リナロールである方法である。【0053】この方法での後処理のために、より低沸点の成分として蒸留することにより、2-リナロールを生成混合物から分離する。一般的には、前駆体アリルアルコール及び二次的な化合物が生成物アリルアルコール中に存在することになろう。この生成物アリルアルコールは、公知の方法に従う蒸留により精製することができる。【0054】異性化は平衡反応であり、平衡の位置は前駆体アリルアルコール及び生成物アリルアルコールの熱力学的特性、並びに反応条件に依存する。反応バッチからの、混合物中で最も低沸点のアリルアルコールであるリナロールの非連続的又は連続的な除去により、平衡が移動した結果として好ましくない平衡に至る場合でさえ、好ましい空時収率が得られ、蒸留カラムの蒸留器は反応室として働く。【0055】以下の実施例は、本発明による方法をより詳細に説明するためのものであって、それを限定するものではない。【0056】オキソペルオキソタングステン(VI)錯体の製造例えば、タングステン酸を、3.5倍過剰量の水性過酸化水素中に40℃で懸濁する。6時間攪拌した後、溶液を濾過する。この調製されたオキソペルオキソタングステン(VI)溶液に、8-ヒドロキシキノリンを添加する。8-ヒドロキシキノリンは、固体もしくは溶融物として添加するか、又は有機溶媒、例えば、アルコールに溶解して滴下しながら添加する。8-ヒドロキシキノリンは、タングステンの量に基づいて1〜3.5モル当量の量で用いるのが好ましい。得られた溶液又は懸濁液は、ゲラニオールに添加するか、又はゲラニオールを該触媒混合物に添加することにより、前駆体アリルアルコールを異性化するために直接使用する。しかしながら、タングステンオキソペルオキソ及び8-ヒドロキシキノリンの錯体化合物を、固体として単離することもできる。水性オキソペルオキソタングステン(VI)溶液及びアルコール性8-ヒドロキシキノリン溶液の混合物を蒸発により濃縮する。沈殿した触媒粉末を濾過除去し、洗浄後に乾燥する。また、公知の方法により、上記の方法により製造されたオキソペルオキソタングステン(VI)及び8-ヒドロキシキノリンの触媒混合物を抽出し、その抽出物を揮発させることも可能である。同様に、錯体化合物がそれ自身可溶性に乏しい溶媒、例えば、ゲラニオールの添加により、触媒錯体を沈殿させることができる。しかしながら、任意の順序で、8-ヒドロキシキノリン及びオキソペルオキソタングステン(VI)溶液を、前駆体アリルアルコールに別々に前後して添加するか、又は同時に添加することもできる。上記の方法により製造された新規なタングステン錯体は、ペルオキソ基及びさらなる配位子として8-ヒドロキシキノリンを含み、タングステンと8-ヒドロキシキノリンの比が1:1又は1:2であるという点に特徴がある。【0057】この触媒は、任意の所望の溶媒に溶解するか、又は固体として、20〜300℃の温度で前駆体アリルアルコールに添加することができる。【0058】有利には、触媒溶液又は懸濁液及び有機溶媒中に存在する水を、異性化生成物、例えば、より低沸点のリナロールと一緒に蒸留することにより除去する。【0059】異性化ゲラニオール及びネロールを異性化して2-リナロールを得ることに関する実験は、内部温度計、蒸留橋、ガス供給管及び磁気攪拌装置を備えた100 mlの三つ口ガラスフラスコを反応室としてその中で行った。反応フラスコを、シリコンオイル浴中での反応のために加熱し、2 l/hのアルゴン又は窒素の連続流を攪拌した反応溶液に通した。前駆体アリルアルコールを計算した触媒溶液に添加し、必要な温度に達するまで混合物を攪拌しながら加熱した。1時間後に冷却して実験を終了し、生成物組成をGCにより決定した。反応中にいかなる生成物も蒸留除去しなかった。【0060】24 g(212 mmol)のタングステン酸を30重量%の過酸化水素溶液中に懸濁することにより、触媒溶液を製造した。黄色の懸濁液を6時間40℃にて攪拌し、冷却した後、濁った溶液を濾過した。このオキソペルオキソタングステン(VI)錯体溶液は異性化にすぐに使用することができ、計算量の配位子をそこに添加することができた。配位子として8-ヒドロキシキノリンを用いた場合、配位子はエタノール性溶液として添加した。あるいは、オキソペルオキソタングステン(VI)溶液を配位子の溶液に添加することもできる。【0061】配位子としての塩基の効果実施例1〜10100 mlの三つ口ガラスフラスコに、120 mg( W 含量0.12 mmol)の水性オキソペルオキソタングステン(VI)溶液、次いで、以下の表1に示す0.24 mmolのさらなる配位子、及び20 g(0.13 mol)のゲラニオールを室温にて入れた。混合物を、油浴中で攪拌しながら200℃に加熱し、1時間の反応時間を通して、2 l/hのアルゴン気流を溶液に通過させた。1時間後に冷却して反応を停止させた。【0062】続いて、反応混合物のガスクロマトグラフィー分析(GC)を行い、表1に示す結果を得た。【0063】【表1】配位子を添加しない場合、オキソペルオキソタングステン(VI)触媒は低い異性化活性を示す。8-ヒドロキシキノリンを用いる場合、ゲラニオールのリナロールへの異性化は最も速い速度で進行するだけでなく、最も選択的な様式で進行する。アミンのみの存在下では、転化率及び選択性はアミンを添加しない場合よりも低い。【0064】例として8-ヒドロキシキノリンを用いる配位子の濃度の影響実施例11〜17100 mlの三つ口ガラスフラスコに120 mg(0.12 mmol)の水性オキソペルオキソタングステン(VI)溶液を入れ、以下の表2に示すモル比で8-ヒドロキシキノリンを添加し、20 g(0.13 mol)のゲラニオールを室温にて添加した。混合物を、アルゴンの連続流を通しながら200℃にて1時間加熱した。続いて、反応混合物のGCを行い、表2に示す結果を得た。【0065】【表2】選択性及び活性に関する最適なタングステン:8-ヒドロキシキノリンのモル比は1:2〜1:5の範囲である。【0066】温度の影響実施例18〜20100 mlの三つ口ガラスフラスコに120 mg(0.12 mmol)の水性オキソペルオキソタングステン(VI)溶液を入れ、次いで、66 mg(0.455 mmol)の8-ヒドロキシキノリン及び20 g(0.13 mol)のゲラニオールを室温にて添加した。混合物を、油浴中で攪拌しながらアルゴン気流中で表3に示す温度に加熱した。続いて、反応混合物のGCを行い、その結果を表3に示した。【0067】【表3】200℃未満の温度では、8-ヒドロキシキノリンを用いる場合、反応速度は温度に伴って低下した。異性化に関する最も高い選択性は180℃の温度で見出された。この場合、異性化は依然として良好な速度で進行した。【0068】触媒調製物の影響実施例21及び実施例7(比較実験)触媒であるオキソペルオキソタングステン(VI)を、3.3倍モル過剰の尿素/過酸化水素付加物のエタノール性溶液中でタングステン酸を40℃にて20時間攪拌することにより、無水アルコール溶液中で製造した。濾過した均質な溶液のタングステン含量を測定したところ、タングステンの理論値の90%であることがわかった。実施例7と同様に、0.12 mmolの触媒溶液を最初に導入し、続いて、3.5倍モル過剰の8-ヒドロキシキノリン及び20gのゲラニオールを添加した。反応フラスコを、アルゴン気流下で200℃にて1時間加熱した。【0069】【表4】タングステン酸及び尿素/過酸化水素付加物からエタノール中で無水条件下で製造されたオキソペルオキソタングステン(VI)触媒は、異性化の条件下で、水性過酸化水素中で製造された触媒と同じぐらい良好な活性及び選択性を示す。【0070】前駆体アリルアルコールの影響実施例22及び実施例14実施例14と同様に、反応を異性体について純粋なネロールを用いて行った。反応条件並びに前駆体及び触媒の組成は実施例14と同一であった。【0071】【表5】ネロールのリナロールへの異性化はゲラニオールの異性化と同様に進行する。異性化中に、リナロールに関して平衡に達することにより、ゲラニオールがネロールから形成され、それに応じてまた、ネロールがゲラニオールから形成される。【0072】オキソペルオキソタングステン触媒の合成並びにゲラニオール及びネロールの異性化におけるその使用:合成:実施例23160 mlのエタノール中の9.896 gの8-ヒドロキシキノリンの溶液に、19.5 gの水性オキソペルオキソタングステン(VI)溶液(タングステン含量:19重量%)を、室温にて攪拌しながら添加する。透明な溶液はすぐに濃い黄色に変わり、さらに90 mlのエタノールを加えると、数時間で約10 gの黄色結晶粉末が析出する。結晶を少量のエタノールで洗浄し、空気中で乾燥させる。【0073】微量分析:C:39.1%;O:19.3%;N:5.0%;H:2.7%;W:30.6%。【0074】実施例2410 mlのエタノールと、3 mlのエタノール中の190 mg(1.31 mmol)の8-ヒドロキシキノリンを連続的に1.2 gの水性オキソペルオキソタングステン(VI)溶液(1.2 mmolのタングステンを含む)に添加する。最初の無色の溶液は透明なまま直ぐに濃い黄色に変わる。70 mlのゲラニオールもしくは70 mlのネロール又はゲラニオールとネロールの混合物を、この黄色の溶液に添加し、室温にて攪拌する。数分以内に、溶液は黄色から橙色を介して赤褐色に変化し、126 mgの赤褐色の微細な結晶性沈殿が形成する。【0075】微量分析:C:30.7%;O:16%;N:3.9%;H:2.2%;W:46%。【0076】触媒:実施例252:1の比の250 gのゲラニオール/ネロール混合物を、バッフル、パドル攪拌棒及び蒸留橋を備えた500 mlの攪拌フラスコに導入し、アルゴン気流(1.3 l/h)中180℃に加熱した。温度が上昇したところで、900 mgの実施例23からの触媒粉末を添加し、混合物を180℃で1時間攪拌した。続いて反応混合物のGCを行ったところ、表6に示す結果が得られた。【0077】実施例26100 mlの三つ口ガラスフラスコに、17.7 mgの実施例24からの触媒粉末を入れ、7 gの異性的に純粋なゲラニオールを添加した。混合物を、油浴中、アルゴン気流下で攪拌しながら180℃に加熱した。1時間後、反応混合物のGC分析を行ったところ、表6に示す結果が得られた。【0078】【表6】タングステンに対して過剰の8-ヒドロキシキノリンに依存して、元素分析及びIR分光分析により特徴付けられる異なるオキソペルオキソタングステン錯体が形成された。両方の触媒種は、ゲラニオール及びネロールからのリナロールの形成に関して、触媒的に活性であり、同程度の選択性を有する。【0079】結果の一般的説明:冷却により反応を停止させた後、生成物組成をGCにより測定した。低沸点成分はゲラニオール、ネロール及びリナロールからの脱水生成物であった。高沸点成分はゲラニオール、ネロール及びリナロールからのエーテル形成の結果として形成された。リナロールの選択性は、リナロールへの転化率を生成物リナロール、低沸点成分、中沸点成分及び高沸点成分の和で割ることにより決定した。 下記式(I)で表される前駆体アリルアルコールを下記式(II)で表される生成物アリルアルコールに異性化する方法であって、(式中、R1〜R5は、平衡の両方向において、水素、または置換されていてもよい一不飽和、多価不飽和もしくは飽和のC1-C12-アルキル基である。) 該反応を、下記式(III)(式中、L1およびL2は、各場合において互いに独立して、水、ヒドロキシル、アルコキシもしくはフリーの配位位置であるか、またはアミノアルコール、アミノフェノール、アミノカルボン酸もしくはそれらの混合物、もしくはアミンとアルコール、フェノールもしくはカルボン酸との混合物の群から選択される配位子であってもよく、 mは、1または2であり、 nは、1〜6であり、 pは、1〜6であり、p>1の場合、二核錯体または多核錯体が形成される。)で表されるオキソペルオキソタングステン(VI)錯体の存在下で行う、前記方法。 式(III)で表される錯体が、下記式(IIIa)、(IIIb)および(IIIc)(式中、L1、L2およびnは請求項1で定義したとおりであり、pは2〜6である。)で表される錯体の群から選択される、請求項1に記載の方法。 L1および/またはL2が、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、3-アミノ-1-プロパノール、1-アミノ-2-プロパノール、2-アミノ-1-プロパノール、ブチルジエタノールアミン、メチルジイソプロパノールアミン、N-(2-ヒドロキシベンジル)アミンおよびN,N'-ビス(2-ヒドロキシベンジル)-1,2-ジアミノエタンからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。 L1および/またはL2が、o-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール、8-ヒドロキシキノリン(ハロゲン、アルキル、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、チオ、スルホニルまたはニトロで置換されていてもよい)、ピコリン酸、2,6-ピリジンジカルボン酸およびβ-アラニンからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。 L1および/またはL2が、ジエチルアミンとフェノールとの混合物またはジエチルアミンとクエン酸との混合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。 L1および/またはL2が8-ヒドロキシキノリンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。 タングステンと8-ヒドロキシキノリンの比が1:1〜1:5である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。 前駆体アリルアルコールとして、第1級アリルアルコールまたは第2級アリルアルコールを使用する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。 アリルアルコールが、2-メチル-3-ブテン-2-オール、プレノール(3-メチル-2-ブテン-1-オール)、リナロール、ネロール、ゲラニオール、ファルネソール(3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエン-1-オール)およびネロリドール(3,7,11-トリメチルドデカ-1,6,10-トリエン-3-オール)からなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。 前駆体アリルアルコールがゲラニオールおよびネロールからなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。 式(III)で表されるオキソペルオキソタングステン(VI)錯体を、反応前にまたは前駆体アリルアルコール中にてin situで調製する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。 式(III)(式中、 L1は、水、ヒドロキシル、アルコキシもしくはフリーの配位位置であるか、またはアミノアルコール、アミノフェノール、アミノカルボン酸もしくはそれらの混合物、もしくはアミンとアルコール、フェノールもしくはカルボン酸との混合物の群から選択される配位子であってもよく、 L2は、アミノアルコール、アミノフェノール、アミノカルボン酸もしくはそれらの混合物、もしくはアミンとアルコール、フェノールもしくはカルボン酸との混合物の群から選択される配位子であり、 ここでL1および/またはL2が8-ヒドロキシキノリンであり、 mは、1または2であり、 nは、1〜6であり、 pは、1〜6である。)で表されるオキソペルオキソタングステン(VI)錯体。 下記式(IIIa)、(IIIb)および(IIIc)(式中、 L1は、水、ヒドロキシル、アルコキシもしくはフリーの配位位置であるか、またはアミノアルコール、アミノフェノール、アミノカルボン酸もしくはそれらの混合物、もしくはアミンとアルコール、フェノールもしくはカルボン酸との混合物の群から選択される配位子であってもよく、 L2は、アミノアルコール、アミノフェノール、アミノカルボン酸もしくはそれらの混合物、もしくはアミンとアルコール、フェノールもしくはカルボン酸との混合物の群から選択される配位子であり、 ここでL1および/またはL2が8-ヒドロキシキノリンであり、 nは、1〜6であり、 pは、2〜6である。)で表される錯体から選択される、請求項12に記載のオキソペルオキソタングステン(VI)錯体。 下記式(I)で表される前駆体アリルアルコールを下記式(II)で表される生成物アリルアルコールに異性化する反応における触媒としての式(III)で表される化合物の使用。(式中、R1〜R5は、平衡の両方向において、水素、または置換されていてもよい一不飽和、多価不飽和もしくは飽和のC1-C12-アルキル基である。)


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