生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_安息香酸誘導体結晶の製造方法
出願番号:2002523440
年次:2011
IPC分類:C07C 231/24,C07C 233/65


特許情報キャッシュ

影近 弘之 長野 裕夫 JP 4754768 特許公報(B2) 20110603 2002523440 20010831 安息香酸誘導体結晶の製造方法 東光薬品工業株式会社 391031247 財団法人乙卯研究所 591063648 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 影近 弘之 長野 裕夫 JP 2000264733 20000901 20110824 C07C 231/24 20060101AFI20110804BHJP C07C 233/65 20060101ALI20110804BHJP JPC07C231/24C07C233/65 C07C 1/00-409/44 CAplus(STN) REGISTRY(STN) JSTPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) 特許第3001632(JP,B2) 3 JP2001007526 20010831 WO2002018322 20020307 6 20080229 棚橋 貴子 技術分野本発明は、医薬の有効成分として有用な4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸の特定の結晶を選択的に製造する方法に関する。背景技術4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸はレチノイド活性を有しており、医薬の有効成分としての利用が期待されている。従来、この化合物には少なくとも2種類の結晶多形、すなわち▲1▼193℃で融解するもの、及び▲2▼233℃で融解するものが知られている〔▲1▼については、特許第3001632号公報、▲2▼については特開昭61−76440号公報を参照のこと。▲3▼205.5−206.5℃で融解する結晶がChem.Pharm.Bull.,32,p.4209,1984に記載されているが、この結晶については融点が231−232℃であったことが後日報告されており、▲2▼と同一の結晶であることが判明している:J.Cellular Physiology,135,pp.179−188,1988〕。特許第3001632号公報に記載された193℃で融解する結晶は、再結晶溶媒としてメタノール及び水の混合物を用いて製造され、233℃で融解する結晶は再結晶溶媒として酢酸エチル及びヘキサンの混合物を用いて製造される。後者の結晶(融点233℃)では結晶中に酢酸エチル及びヘキサンがそれぞれ1200ppm及び190ppmも残留し、厚生省が定める残留溶媒の基準値(酢酸エチル:5000ppm以下;ヘキサン:290ppm)を満足することが難しいという問題があるのに対して、193℃で融解する結晶では残留メタノールを極めて低くできるという特徴がある。しかしながら、193℃で融解する結晶は物理的な衝撃により結晶形が転移し易く、均一な結晶として調製することが極めて困難であるという問題を有しており、均一規格の医薬品を大量に調製するための原料としては適性を欠くものであった。一方、233℃で融解する結晶は物理的な衝撃のみならず、熱、温度、光などに対しても安定性が高いことが判明したが、この結晶を選択的に製造する方法は従来知られていない。また、233℃で融解する結晶の製造方法としては、酢酸エチル及びヘキサンの混合物を再結晶溶媒として用いる方法が知られているが、医薬品の残留溶媒ガイドラインによればヘキサンはクラス2に分類されており、医薬品中への残留は望ましくない溶媒であることから、残留溶媒としてヘキサンを含まない結晶の提供が切望されている。発明の開示本発明の課題は、4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸の結晶のうち、233℃で融解する結晶を選択的に製造する方法、及び残留溶媒としてヘキサンを含まない上記結晶を提供することにある。本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、エタノール及び水の混合物を用いて再結晶を行うことにより、233℃で融解する結晶を選択的に製造できることを見出した。従来、193℃で融解する結晶はメタノール及び水の混合物で選択的に製造できることが知られているが、エタノール及び水の混合物により異なる結晶形の結晶が選択的に得られることは驚くべきことである。すなわち、本発明は、示差走査熱量分析において233℃付近に単一の吸熱ピークを有する4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸結晶を製造する方法であって、4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸の結晶を水及びエタノールの混合物で再結晶する工程を含む方法を提供するものである。好ましい態様によれば、エタノールと水の容量比が8:5〜1:1の範囲である上記方法が提供される。また、本発明により、示差走査熱量分析において233℃付近に単一の吸熱ピークを有する4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸結晶を製造する方法であって、示差走査熱量分析において193℃付近及び233℃付近に吸熱ピークを有する4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸の結晶を加熱する工程を含む方法が提供される。好ましい態様によれば、加熱は200℃付近の温度で行うことができる。別の観点からは、本発明により、示差走査熱量分析において233℃付近に単一の吸熱ピークを有する4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸結晶であって、ヘキサン及び/又は酢酸エチルを残留溶媒として含まないことを特徴とする結晶が提供される。また、示差走査熱量分析において233℃付近に単一の吸熱ピークを有する4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸結晶であって、減圧下に110〜120℃で乾燥を行った後に残留エタノールが2,000ppm以下であることを特徴とする結晶、及び示差走査熱量分析において193℃付近及び233℃付近に吸熱ピークを有する4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸の結晶が本発明により提供される。さらに本発明により、示差走査熱量分析において233℃付近に単一の吸熱ピークを有する4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸結晶であって、ヘキサン及び/又は酢酸エチルを残留溶媒として含まないことを特徴とする結晶の医薬の製造のための使用、及び該結晶を有効成分として含む医薬が提供される。上記医薬としては、急性前骨髄球性白血病治療剤、乾癬及び掌蹠膿胞症治療剤などを例示できる。発明を実施するための最良の形態本発明の方法に原料として用いられる4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸結晶の種類は特に限定されず、193℃で融解する結晶(上記▲1▼)のほか、任意の結晶を用いてもよい。本発明者らの研究によれば、特許第3001632号公報に記載された193℃で融解する結晶(「I型結晶」と呼ぶ)は示差走査熱量分析(DSC)において194℃付近に単一の吸熱ピークを与える。また、特開昭61−76440号公報に記載された233℃で融解する結晶(「II型結晶」と呼ぶ)は、示差走査熱量分析において233℃付近に単一の吸熱ピークを与える。これらのほか、本発明者は、示差走査熱量分析において193℃付近に吸熱ピークを与えると同時に発熱転移して233℃付近にも吸熱ピークを与える結晶(「III型結晶と呼ぶ」の存在を確認している(本明細書の実施例3を参照のこと)。この結晶は、本明細書において、示差走査熱量分析において193℃付近及び233℃付近に吸熱ピークを有する4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸の結晶と定義される。上記のいずれの結晶を本発明の方法の原料として用いてもよい。結晶形の確認は、示差走査熱量分析に加えて、粉末X線回折測定を行うことにより確実に行うことができる。上記I型結晶及びII型結晶の粉末X線回折図は、それぞれ特許第3001632号公報の図5及び6に記載されており、当業者は容易に確認することができる。また、上記I型結晶及びII型結晶の熱分析の結果は、上記公報の図3及び4にそれぞれ記載されている。なお、融点測定又は示差走査熱量分析などにおける実験誤差は数℃程度、通常は2℃以内、好ましくは1℃以内、より好ましくは0.5℃以内である。本発明の方法は、4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸の再結晶溶媒としてエタノール及び水の混合物を用いることを特徴としている。晶析時のエタノール及び水の混合割合は特に限定されないが、例えば、エタノール:水=8:5〜1:1程度の範囲が好ましい。エタノールの割合が上記の範囲を超えて高くなるとI型結晶及びII型結晶の混合物が得られる場合がある。再結晶の方法は特に限定されず、通常の再結晶操作により行えばよい。例えば、原料の4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸結晶をエタノール及び水の混合物に完全に溶解した後、徐々に冷却して析出する結晶を濾取すればよいが、原料の結晶をエタノールに加熱溶解した後、適宜の量の温水を添加して所定の割合のエタノール−水混合物を調製して、目的物を晶析させてもよい。目的物を効率的に晶析させるため、種結晶を添加してもよい。種結晶の量は特に限定されないが、原料として用いた結晶の重量に対して1/1,000〜1/1,000,000程度、好ましくは約1/80,000である。濾取した結晶は、通常は減圧下で110〜120℃程度の加熱下に乾燥を行い、再結晶溶媒を除くことができる。また、示差走査熱量分析において193℃付近及び233℃付近に吸熱ピークを有する4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸の結晶を加熱して示差走査熱量分析において233℃付近に単一の吸熱ピークを有する4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸結晶において、加熱温度は通常180℃以上、好ましくは200℃以上、特に好ましいのは200〜210℃程度である。本発明の方法により製造される4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸の結晶は、ヘキサンを含む再結晶溶媒を用いずに製造されており、実質的にヘキサンを残留溶媒として含まないことを特徴としている。例えば、30mmHg以下の減圧下で110〜120℃の加熱下に22時間乾燥を行った後に上記結晶に含まれる残留エタノールは、通常は2,000ppm以下、好ましくは1,000ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下である。エタノールは厚生省の定める医薬品の残留溶媒のうちクラス3に分類される低毒性の溶媒であることから、本発明の結晶は医薬の有効成分として好適に使用できる。実施例以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。実施例14−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸10.0gをエタノール130mL及び水120mLの混合液に加え、加温して溶解後、徐々に冷却して析出する結晶を濾取した。得られた湿結晶を減圧下に110〜120℃で乾燥することにより結晶を得た。この結晶について示差走査熱量分析を行ったところ、233℃付近に単一の吸熱ピークを与えた。また、この結晶の粉末X線回折図は特許第3001632号公報の図6に示された粉末X線回折図と一致しており、II型結晶であることが確認できた。実施例2再結晶溶媒をエタノール150mL及び水100mLの混合液に替えた以外は実施例1と同様にして結晶を得た。この結晶について示差走査熱量分析を行ったところ、233℃付近に単一の吸熱ピークを与えた。また、この結晶の粉末X線回折図は特許第3001632号公報の図6に示された粉末X線回折図と一致しており、II型結晶であることが確認できた。実施例3再結晶溶媒をエタノール170mL及び水80mLの混合液に替えた以外は実施例1と同様にして結晶を得た。この結晶について示差走査熱量分析を行ったところ、193℃付近及び233℃付近に二つの吸熱ピークを与えた。この結晶をIII型結晶と命名した。実施例4実施例3で得たIII型結晶を減圧下に200〜205℃で2時間加熱した。得られた結晶について示差走査熱量分析を行ったところ、233℃付近に単一の吸熱ピークを与えた。また、この結晶の粉末X線回折図は特許第3001632号公報の図6に示された粉末X線回折図と一致しており、II型結晶であることが確認できた。比較例14−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸20.0gをメタノール200mL及び水20mLの混合液に加え、加温して溶解後、室温まで冷却した。この溶液に水40mLを徐々に滴下して析出する結晶を濾取し、減圧下に110〜120℃で乾燥することにより結晶を得た。この結晶について示差走査熱量分析を行ったところ、193℃付近に単一の吸熱ピークを与えた。また、この結晶の粉末X線回折図は特許第3001632号公報の図5に示された粉末X線回折図と一致しており、I型結晶であることが確認できた。試験例1実施例1及び比較例1で得た結晶の粒度分布を測定した。レーザー式粒度分布計(マイクロトラックFRA)を用い、1%SOPROPHOR FL(ローヌプーラン製)水溶液3mlに水15mlを加え、ここに実施例1又は比較例1で得た結晶を適量分散させて試料液とした。結果を表1に示す。この結果、本発明の方法で得た結晶は平均粒子径にばらつきが少なく、均一な錠剤の製造に好適であることが判明した。産業上の利用可能性本発明の方法により、物理的な衝撃に対しても安定なII型結晶を選択的に製造することができ、得られた結晶は毒性の高いヘキサンを残留溶媒として含まないことから、医薬の有効成分として好適に使用できる。また、本発明の方法で得られる結晶は平均粒子径のばらつきが少なく、打錠したときに含有量が均一な錠剤を調製できるという特徴がある。 示差走査熱量分析において233℃付近に単一の吸熱ピークを有する4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸結晶を製造する方法であって、4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸の結晶を水及びエタノールの混合物で再結晶する工程を含む方法。 示差走査熱量分析において233℃付近に単一の吸熱ピークを有する4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸結晶を製造する方法であって、示差走査熱量分析において193℃付近及び233℃付近に吸熱ピークを有する4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸の結晶を加熱する工程を含む方法。 請求項1に記載の方法により得られる示差走査熱量分析において233℃付近に単一の吸熱ピークを有する4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸結晶であって、ヘキサン及び/又は酢酸エチルを残留溶媒として含まないことを特徴とする結晶。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る