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タイトル:特許公報(B2)_乳酸菌含有プロバイオティクス製品
出願番号:2002522228
年次:2007
IPC分類:C12N 1/20,A23L 1/30,A61K 35/74,A61P 1/02,A23C 9/12,C12R 1/225


特許情報キャッシュ

加藤 あずさ 中谷 清吾 鈴木 信之 平田 晴久 JP 3944076 特許公報(B2) 20070413 2002522228 20010827 乳酸菌含有プロバイオティクス製品 わかもと製薬株式会社 000100492 中村 稔 100059959 大塚 文昭 100067013 熊倉 禎男 100082005 宍戸 嘉一 100065189 竹内 英人 100096194 今城 俊夫 100074228 小川 信夫 100084009 村社 厚夫 100082821 西島 孝喜 100086771 箱田 篤 100084663 加藤 あずさ 中谷 清吾 鈴木 信之 平田 晴久 JP 2000254775 20000825 20070711 C12N 1/20 20060101AFI20070621BHJP A23L 1/30 20060101ALI20070621BHJP A61K 35/74 20060101ALI20070621BHJP A61P 1/02 20060101ALI20070621BHJP A23C 9/12 20060101ALN20070621BHJP C12R 1/225 20060101ALN20070621BHJP JPC12N1/20 AA23L1/30 ZA61K35/74 AA61P1/02A23C9/12C12R1:225 C12N 1/20 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS/CA(STN) 特開平09−241173(JP,A) Antonie van Leeuwenhoek,1999年,Vol.76,p.293-318 5 FERM P-17991 JP2001007312 20010827 WO2002016554 20020228 15 20020410 深草 亜子 技術分野本発明は、ヒトの消化管から分離された乳酸菌、これを有効成分として含有するプロバイオティクス製品、及びこれを有効成分として含有する消化管疾患及び泌尿生殖器感染症の予防及び/又は治療用組成物に関する。背景技術日本では、乳酸菌製剤を、極めて安全性に優れた整腸用医薬品として長年使用してきた。又、乳酸菌を含有する整腸用のいわゆる健康食品も多数市販されている。さらに、従来から健康的な食品として親しまれていた、乳酸菌を含有するヨーグルトや醗酵乳が、最近、おなかの調子をととのえる特定保健用食品の承認を受け、注目を集めている。一方、欧米でも乳酸菌含有医薬品、食品は、整腸効果のみならず、多様な作用を発揮して健康維持に効果を示すprobiotics(プロバイオティクス)製品の代表選手として注目され、多数市販されている。又、プロバイオティクスの研究及び製品開発を目的とした乳酸菌の研究が盛んに行われている(Reuter G.:腸内フローラとプロバイオティクス(光岡知足編)、17-39頁、学会出版センター、1998年)。プロバイオティクスは、一般に「宿主の腸内菌叢のバランスを改善することにより、宿主にとって有益な作用をもたらしうる、生きた微生物」(Fuller R:Gut、32巻、439-42頁、1991年)と定義されている。乳酸菌に代表されるプロバイオディクスは以下に示す多様な機能を有することが報告されている(Sanders ME及びHuis in't Veld J:Antonie van Leeuwenhoek、76巻、293-315頁、1999年)。1)乳糖消化補助、2)腸管病原菌抵抗性、3)大腸癌発癌抑制、4)小腸細菌過剰増殖抑制、5)免疫機能調節、6)抗アレルギー、7)血中脂質低下、8)降圧、9)尿路感染抑制、10)ヘリコバクター・ピロリ感染抑制、11)肝性脳疾患抑制。さらに最近では、乳酸菌による歯磨きが歯周病に対しても効果を示すことが示された(今井龍弥:歯周病が3日でよくなる乳酸菌歯みがき、マキノ出版、2000年)。このように、プロバイオティクスは、腸内菌叢のみならず、口腔、胃等、他の消化管内菌叢及び膣等、泌尿生殖器内菌叢のバランスを改善することにより宿主にとって有益な作用をもたらすことがわかってきた。乳酸菌は、消化管及び泌尿生殖器粘膜に付着して、増殖し、乳酸等有用代謝産物を産生することにより、直接的及び間接的に、消化管及び泌尿生殖器粘膜のバリアー機能を健常に保持して、これらの機能を発揮すると考えられている。プロバイオティクス製品に使用される乳酸菌の選択基準としては、安全性、胃酸抵抗性、胆汁抵抗性、製品加工及び製品中での安定性、粘膜付着性、病原菌抑制性、免疫応答刺激性などがある(Sanders ME及びHuis in't Veld J:Antonie van Leeuwenhoek、76巻、293-315頁、1999年)。これらの基準を満たす菌株として、ヒト消化管内の常在乳酸菌であるラクトバシラス属、ストレプトコッカス属、ビフィドバクテリウム属乳酸菌が主に用いられている。特にラクトバシラス属乳酸菌の使用が最も多い。中でもLactobacillus rhamnosus GG株(特開昭61-280433号公報)、Lactobacillus caseiシロタ株(ヤクルトとして市販)、Lactobacillus johnsonii La1株(特開平6-315373号公報)、Lactobacillus plantarum 299株(DSM6595)(特表平6-501624号公報)、L. plantarum 299v株(DSM9843)(特表平11-502703号公報)、Lactobacillus salivarius UCC 1株(NCIMB 40830)、L. salivarius UCC 118株(NCIMB 40829)(WO98/35014)などの菌株がプロバイオティクス製品に適した菌株として選抜され、使用されている。しかし、これらの乳酸菌含有プロバイオティクス製品をヒトや動物に投与した場合、乳酸菌はすみやかに消化管等から排出されてしまい、プロバイオティクス機能を維持し、発揮することができない、という問題があった。発明の開示本発明は、上記現状に鑑み、消化管等からの排出に抗してプロバイオティクス機能を高度に発揮できる、定着性の高い乳酸菌、これを有効成分として含有するプロバイオティクス製品、及びこれを有効成分として含有する消化管疾患及び泌尿生殖器感染症の予防及び/又は治療用組成物を提供することを目的とする。本発明は、粘膜付着性、増殖性及び耐酸性の高いラクトバシラス・サリバリウスに属する乳酸菌を有効成分として含有するプロバイオティクス製品を提供するものである。本発明はまた、粘膜付着性、増殖性及び耐酸性の高いラクトバシラス・サリバリウスに属する乳酸菌を有効成分として含有する消化管疾患の予防及び/又は治療用組成物を提供するものである。本発明はまた、粘膜付着性、増殖性及び耐酸性の高いラクトバシラス・サリバリウスに属する乳酸菌を有効成分として含有する泌尿生殖器感染症の予防及び/又は治療用組成物を提供するものである。本発明はさらに、粘膜付着性、増殖性及び耐酸性の高い新規なラクトバシラス・サリバリウスWB21株(FERM BP−7792)を提供するものである。本発明者らは、プロバイオティクス製品用として最適な乳酸菌として、ヒト由来の乳酸菌の中から、従来のプロバイオティクス製品に使用されている乳酸菌と比べて、粘膜付着性、増殖性及び耐酸性の著しく高い乳酸菌を選抜することに成功し、本発明を完成させたものである。以下に本発明を詳述する。発明を実施するための最良の形態本発明では、対照菌株として、主にLactobacillus rhamnosus GG株(ATCC53103)(特開昭61-280433号公報)及びLactobacillus johnsonii La1(CNCM I-1225)(特開平6-315373号公報)を用いた。これらの菌株は消化管粘膜付着性を一基準に選抜されたものであり、これらの菌株を使用したプロバイオティクス製品は世界各国で広く販売され、その有用性に関する研究報告も数多い。本発明者らは、ヒト腸内由来の乳酸菌のうち、対照菌株と比べて、粘膜付着性、増殖性及び耐酸性の高い乳酸菌株の選抜について鋭意研究を重ねた結果、これらの条件に合致する菌株として、本発明のラクトバシラス・サリバリウスWB1004株(FERM BP−7791)を見出した。本菌株の細菌学的性質等は、ヘリコバクター・ピロリを胃または十二指腸から除菌する能力を有する乳酸菌株として、特開平9-241173号公報に開示されている。本発明者らは、耐酸性のより高い菌株を選抜する目的で、ラクトバシラス・サリバリウスWB1004株を低pH処理(0.9%NaClを含むpH1.2〜1.4のHCl/KCl緩衝液中に懸濁して、37℃、30分間インキュベートする)して生残する菌株の選抜を繰り返した。その結果、ラクトバシラス・サリバリウスWB1004株に比べて、低pH処理での生残率が10〜100倍高い、ラクトバシラス・サリバリウスWB21株を見出した。本菌株の細菌学的性質は表1に示した。ラクトバシラス・サリバリウスWB1004株及びラクトバシラス・サリバリウスWB21株は、受託番号FERM BP−7791(寄託日:1995年12月21日)及びFERM BP−7792(寄託日:2000年8月14日)として〒305-8566茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されている。本発明のラクトバシラス・サリバリウスWB1004株(FERM BP−7791)及びラクトバシラス・サリバリウスWB21株(FERM BP−7792)の粘膜上皮細胞付着性、増殖性及び耐酸性は以下の通りである。粘膜上皮細胞付着性粘膜上皮細胞としては、常法で用いられているように、腸管粘膜細胞のモデルとして、ヒト大腸癌細胞Caco2(ATCC HTB-37、Coconnier MHら:FEMS Microbiol. Lett. 110巻、299頁、1993年)、ヒト結腸癌細胞HT-29(ATCC HTB-38)、ヒト胎児由来小腸上皮細胞Intestine-407(ATCC CCL-6)、胃粘膜細胞のモデルとして、ヒト胃癌細胞MKN45(JCRB 0254、山口晴之ら:感染症学雑誌、72巻、487頁、1998年)、口腔粘膜細胞のモデルとして、ヒト口腔底扁平上皮癌由来細胞HO-1-u-1(JCRB 0828、宮内忍ら:日本口腔外科学会雑誌、31巻、1347頁、1985年)、ヒト頬粘膜扁平上皮癌由来細胞HO-1-N-1(JCRB 0831、諸山隆正ら:日本癌学会総会記事、45巻、242頁、1986年)を用いた。付着性は、Granatoらの方法(Appl. Environ. Microbiol.、65巻、1071頁、1999年)に準じて検討した。Caco2を細胞濃度が1×104個/mLになるように、20%ウシ胎児血清を含むDMEM培地(Sigma社製)に懸濁させ、24穴マイクロプレートに1mL分注した。2日に1回培地交換しながら、37℃、16日間培養した。マイクロプレートに付着したCaco2を1mLのPBSで3回洗浄した。この単層細胞に、MRS broth(Difco社製)で、一晩培養後、生菌数約5×108個/mLとなるようにリン酸緩衝生理食塩水(PBS、日水製薬社製)に懸濁した各乳酸菌株の懸濁液1mLを加えて、37℃、30分間、10%CO2インキュベーター内でインキュベートした。その後、Caco2の単層を1mLのPBSで3回洗浄して、付着しなかった乳酸菌を除去した後、グラム染色し、光学顕微鏡を用いて、付着した乳酸菌数をカウントした。その結果、本発明のLactobacillus salivariusに属する乳酸菌のCaco2への付着性は、Lactobacillus rhamnosus GG株(ATCC53103)、Lactobacillus johnsonii La1株(CNCM I-1225)、Lactobacillus plantarum 299株(DSM6595)、L. plantarum 299v株(DSM9843)並びに他のヒト腸内乳酸菌の基準株と比べても、著しく高いことを確認した。中でもLactobacillus salivarius WB1004株及びLactobacillus salivarius WB21株は付着性が高いことが判明した(表2)。HT-29、Intestine-407についても10%ウシ胎児血清を含むFischer's培地(GIBCO BRL社製)を用いて同様の方法で培養し、各乳酸菌株の付着性を調べた。その結果、どちらの細胞に対しても、本発明のLactobacillus salivarius WB21株の付着性は、Lactobacillus rhamnosus GG株、Lactobacillus johnsonii La1株、Lactobacillus plantarum 299株、L. plantarum 299v株、Lactobacillus salivarius UCC 1株、L. salivarius UCC 118株と比べて、著しく高いことを確認した(表3)。MKN45を細胞濃度が5×104個/mLになるように10%ウシ胎児血清を含むRPMI1640培地(日水製薬社製)に懸濁させ、96穴マイクロプレートに0.1mL分注した。37℃、3日間培養後、マイクロプレートに付着したMKN45をPBSで3回洗浄した。このMKN45単層細胞に、MRS bpoth(Difco社製)で、一晩培養後、生菌数約5×108個/mLとなるようにリン酸緩衝生理食塩水(PBS、日水製薬社製)に懸濁した各乳酸菌株の懸濁液0.1mLを加えて、37℃、10分間、インキュベートした。その後、MKN45の単層をPBSで3回洗浄して、付着しなかった乳酸菌を除去した後、グラム染色し、光学顕微鏡を用いて、付着した乳酸菌数をカウントした。その結果、本発明のLactobacillus salivariusに属する乳酸菌のMKN45への付着性は、Lactobacillus rhamnosus GG株及びLactobacillus johnsonii La1株、並びに他のヒト腸内乳酸菌の基準株と比べても、著しく高いことを確認した。中でもLactobacillus salivarius WB1004及びLactobacillus salivarius WB21株は付着性が高いことが判明した(表4)。HO-1-u-1(JCRB0828)を細胞濃度が2×104個/mLになるように10%ウシ胎児血清を含むDMEM/F12(1:1)培地(GIBCO BRL社製)に懸濁させ、96穴マイクロプレートに0.1mL分注した。37℃、4日間培養後、マイクロプレートに付着したHO-1-u-1をPBSで3回洗浄した。このHO-1-u-1単層細胞に、MRS broth(Difco社製)で、一晩培養後、生菌数約1×l09個/mLとなるようにリン酸緩衝生理食塩水(PBS、日水製薬社製)に懸濁した各乳酸菌株の懸濁液0.1mLを加えて、37℃、10分間、インキュベートした。その後、HO-1-u-1の単層をPBSで3回洗浄して、付着しなかった乳酸菌を除去した後、グラム染色し、光学顕微鏡を用いて、付着した乳酸菌数をカウントした。その結果、本発明のLactobacillus salivarius WB1004株及びLactobacillus salivarius WB21株のHO-1-u-1への付着性は、Lactobacillus rhamnosus GG株及びLactobacillus johnsonii La1株と比べて、著しく高いことを確認した(表5)。HO-1-N-1(JCRB0831)を細胞濃度が2×104個/mLになるように10%ウシ胎児血清を含むDMEM/F12(1:1)培地(GIBCO BRL社製)に懸濁させ、96穴マイクロプレートに0.1mL分注した。37℃、4日間培養後、マイクロプレートに付着したHO-1-N-1をPBSで3回洗浄した。このHO-1-N-1単層細胞に、MRS broth比(Difco社製)で、一晩培養後、生菌数約1×109個/mLとなるようにリン酸緩衝生理食塩水(PBS、日水製薬社製)に懸濁した各乳酸菌株の懸濁液0.1mLを加えて、37℃、10分間、インキュベートした。その後、HO-1-N-1の単層をPBSで3回洗浄して、付着しなかった乳酸菌を除去した後、グラム染色し、光学顕微鏡を用いて、付着した乳酸菌数をカウントした。その結果、本発明のLactobacillus salivarius WB1004株及びLactobacillus salivarius WB21株のHO-1-N-1への付着性は、Lactobacillus rhamnosus GG株及びLactobacillus johnsonii La1株と比べて、著しく高いことを確認した(表6)。増殖性MRS brothで前培養(37℃、18時間)した各乳酸菌株を、MRS brothに接種し、37℃で静置培養した。9時間後に、培養液を適宜PBSで希釈して、MRS agar(Difco社製)に塗布し、37℃、24時間嫌気培養した。生じたコロニーを数えて生菌数colony forming unit(cfu)を測定し、増殖性を評価した。その結果、本発明の乳酸菌の増殖性は、Lactobacillus rhamnosus GG株及びLactobacillus johnsonii La1株並びに他の乳酸菌より著しく高かった(表7)。耐酸性人工胃液(0.32%となるように含糖ペプシンを添加し、HClでpH3に調整したMRS broth)に各乳酸菌を約1×108個/mLとなるように添加し、37℃で静置した。3時間後に人工胃液を適宜PBSで希釈して、BL agar(日水製薬社製)に塗布して、37℃、24時間嫌気培養した。生じたコロニーを数えて生菌数を測定し、耐酸性を評価した。その結果、本発明の乳酸菌の耐酸性は、Lactobacillus rhamnosus GG株及びLactobacillus johnsonii La1株より著しく高いことがわかった(表8)。本発明のプロバイオティクス製品(医薬又は食品)が、予防、保健又は治療に使用される疾患としては、従来のプロバイオティクス製品の機能に基づく薬理作用が期待される疾患であればいずれの疾患でもよいが、特に口腔を含む消化管の各種疾患や泌尿生殖器感染症等が挙げられる。この明細書において、「消化管疾患」とは、例えば、食中毒、齲歯(虫歯)、歯周病等の口腔疾患、下痢、便秘、軟便、腹部膨満感等の胃腸疾患、消化管感染症、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎及びクローン病に代表される難治性炎症性腸疾患、食物アレルギー、偽膜性大腸炎、出血性大腸炎、胃炎、及び胃・十二指腸潰瘍等の各種の症状及び疾患を含むものとする。本発明のプロバイオティクス製品は、医薬の場合、投与剤型としては例えば散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤などの形態が好ましく、経口的に投与することができる。これらの各種製剤は常法に従って、主薬に、賦形剤、結合剤、崩壊剤、コーティング剤、潤滑剤、安定剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、希釈剤などの医薬の製剤技術分野において通常使用しうる既知の補助剤を用いて製剤化することができる。ヒトに対する投与量は、対象疾患、使用目的(予防、保健又は治療)、年齢等によって異なるが、例えば成人に対して生菌数で1日1×106個以上を、好ましくは1×108〜1×l012個を必要に応じて1日1回又は数回に分けて投与することができる。しかしながら、本発明の乳酸菌は、安全性について問題がないので、上記範囲よりも多量に投与しても差し支えない。本発明のプロバイオティクス製品は、食品の場合、ヨーグルトを中心とした醗酵乳、乳酸菌飲料、粉末食品、顆粒状食品、ペースト状食品、錠菓等として摂取することが可能である。こられの食品は、該食品の製造に用いられている原材料を用いて、常法に従って製造できる。例えば牛乳や羊乳等に、ヨーグルト製造のスターター菌であるラクトバシラス・ブルガリカス、ラクトバシラス・アシドフィルス、ラクトバシラス・ヘルベチカス、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ストレプトコッカス・ラクチス等の酪農乳酸菌と本発明の乳酸菌を接種し、混合培養あるいは各々単独培養後に混ぜ合わせることによって醗酵乳を製造することができる。本発明の乳酸菌を純粋培養し、遠心分離などの方法により集菌後、適切な安定剤を加え凍結乾燥して得られる凍結乾燥菌体を用いて、常法に従って、粉末食品、顆粒状食品及び錠菓を製造することができる。有効成分の添加量は、任意でよいが、使用目的(予防、保健又は治療)に応じて適宜定めればよく、例えば生菌数で1日1×106個以上を、好ましくは1×l08〜1×l012個を必要に応じて1日1回又は数回に分けて摂取することができるように添加する。しかしながら、長期間にわたって保健上ないし健康維持の目的で摂取する場合には、上記範囲よりも少量であってもよいし、又、本発明の乳酸菌は、安全性について問題がないので、上記範囲よりも多量に摂取しても差し支えない。実施例以下に試験例、実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。この明細書中、「%」は他に明記しない限り「質量%」である。[試験例1]粘膜上皮細胞付着乳酸菌による乳酸産生試験本発明のラクトバシラス・サリバリウスが粘膜上皮細胞に付着して、増殖し、有用代謝産物である乳酸を産生することを確認するため、付着乳酸菌の乳酸産生量を調べた。Caco2を細胞濃度が1×104個/mLになるように、20%ウシ胎児血清を含むDMEM培地に懸濁させ、24穴マイクロプレートに1mL分注した。2日に1回培地交換しながら、37℃、16日間培養した。マイクロプレートに付着したCaco2を1mLのPBSで3回洗浄した、この単層細胞に、MRS brothで、一晩培養後、生菌数約5×108個/mLとなるようにリン酸緩衝生理食塩水(PBS、日水製薬社製)に懸濁した各乳酸菌株の懸濁液1mLを加えて、37℃、30分間、10%CO2インキュベーター内でインキュベートした。その後、Caco2の単層を1mLのPBSで3回洗浄して、付着しなかった乳酸菌を除去した後、MRS brothを1mL添加して、付着乳酸菌を37℃で培養した。6時間後に産生された乳酸をガスクロマトグラフで定量した。その結果、本発明の乳酸菌が粘膜上皮細胞に付着して産生する乳酸量は、Lactobacillus rhamnosus GG株及びLactobacillus johnsonii La1株より著しく高いことがわかった(表9)。[試験例2]乳酸菌の食中毒病原菌抑制試験本発明のラクトバシラス・サリバリウスの食中毒病原菌に対する抑制作用を調べた。食中毒病原菌として、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus ATCC25923)、サルモネラ(Salmonella Enteritidis 116-54)、腸管毒素原性大腸菌(enterotoxigenic Escherichia coli WHO 43)及び腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus ATCC17802)を使用した。試験培地には、1%となるようにグルコースを添加したGAM液体培地(日水製薬社製)を用いた。乳酸菌は試験培地に、腸炎ビブリオはGAM液体培地に、その他の食中毒病原菌はBHI液体培地(Difco社製)に接種し、37℃、1晩、前培養した。試験培地100mlに食中毒病原菌及び乳酸菌の前培養液をそれぞれ1%接種した。37℃で静置培養し、経時的に食中毒病原菌の生菌数を測定した。サルモネラ、腸管毒素原性大腸菌の測定には、DHL寒天培地(日水製薬社製)を、黄色ブドウ球菌にはスタヒロコッカス110寒天培地(日水製薬社製)を、腸炎ビブリオにはTCBS寒天培地(日水製薬社製)を使用した。その結果、Lactobacillus salivarius WB21株は強い食中毒病原菌抑制作用を有することが明らかとなった(表10)。[試験例3]乳酸菌のマウス消化管付着性試験本発明のラクトバシラス・サリバリウスのin vivoでの消化管付着性を調べるため、マウスを用いて試験した。ICRマウス(雄、5週齢)にアモキシシリン200μg/mL及びバンコマイシン10μg/mLを添加した飲水を5日間与え、消化管内の細菌を除菌した。18時間絶食したマウスに、MRS brothで37℃、18時間培養した乳酸菌を集菌し、約109/mLとなるようにPBSに懸濁した液0.1mLを経口投与した。投与1時間後に屠殺して、開腹し、ゾンデで、PBSを経胃投与して、小腸を3回洗浄した。洗浄後、小腸を取出し、切開いた。又、投与6時間後に屠殺して、結腸を取出し、切開いて、PBSで3回洗浄した。各臓器重量の9倍量のPBSを加えてガラスホモジナイザーでホモジナイズし、PBSで適宜希釈した後、LBS寒天培地(BBL社製)に塗布した。37℃、2日間嫌気培養後、生じたコロニーを数えて、各臓器に付着した乳酸菌数を測定した。その結果、本発明のLactobacillus salivarius WB21株の消化管粘膜への付着性は、Lactobacillus rhamnosus GG株及びLactobacillus johnsonii La1株より高いことが明らかとなった(表11)。[試験例4]乳酸菌の口腔内病原菌抑制試験本発明のラクトバシラス・サリバリウスの口腔内病原菌に対する抑制作用を調べた。口腔内病原菌として、虫歯菌(Streptococcus mutans JCM5705)及び歯周病菌(Porphyromonas gingivalis JCM8525)を使用した。試験培地には、1%となるようにグルコースを添加しGAM液体培地(日水製薬社製)を用いた。各菌株は試験培地に接種し、37℃、1晩、前培養した。試験培地100mlに口腔内病原菌及び乳酸菌の前培養液をそれぞれ1%接種して、37℃で単独培養及び乳酸菌との混合培養を行い、経時的に培養液を採取した。採取した培養液を適当に希釈し、口腔内病原菌の生菌数を以下の培地、培養条件で測定した。虫歯菌:バシトラシンを10μg/mlとなるように添加したGAM寒天培地(日水製薬社製)で、37℃で3日間嫌気培養。歯周病菌:硫酸ゲンタマイシンを10μg/mlとなるように添加したEG寒天培地(光岡知足編、腸内細菌学、475頁、朝倉書店、1990年)で、37℃で3日間嫌気培養。その結果、Lactobacillus salivarius WB21株は強い口腔内病原菌抑制作用を有することが明らかとなった(表12)。[試験例5]虫歯菌の不溶性グルカン産生に対するラクトバシラス・サリバリウスWB21の効果虫歯の原因となる虫歯菌による不溶性グルカン産生に対するラクトバシラス・サリバリウスWB21の抑制効果を調べた。虫歯菌として、Streptococcus mutans JCM5705を使用した。試験培地には、ショ糖を2%となるように添加したGAM液体培地(日水製薬社製)を用いた。試験培地でStreptococcus mutans JCM5705、ラクトバシラス・サリバリウスWB21を、37℃、一晩前培養し、各菌液を得た。この菌液0.1mlを10mlの試験培地に接種し、虫歯菌及び乳酸菌の単独培養及び混合培養を37℃で24時間行った。培養液を遠心分離(3000rpm、20分)して沈殿(菌体+不溶性グルカン)を回収し、10mlのPBSで3回洗浄した。0.1N NaOH 5mlを加えて、不溶性グルカンを溶解し、遠心分離(3000rpm、20分)して、上清を回収した。この上清中の糖濃度をフェノール硫酸法により測定し、不溶性グルカン産生量を調べた。上清0.2mlに5%フェノール0.2ml、濃硫酸1mlを加えて、10分間静置後、混和して、さらに20分間静置した。反応液の492nmの吸光度を測定し、グルコース溶液を用いて作成した検量線に基づき、不溶性グルカン濃度を算出した。表13に示したように、虫歯菌の不溶性グルカン産生に対し、ラクトバシラス・サリバリウスWB21は強い抑制作用を示した。[実施例1]ラクトバシラス・サリバリウスの乾燥菌末の調製ラクトバシラス・サリバリウスWB1004及びラクトバシラス・サリバリウスWB21を各々、0.3%の炭酸カルシウムを含むブリックス・リバー液体培地(光岡知足:腸内菌の世界、叢文社、1980年)に接種後、37℃で、18〜24時間静置培養を行った。培養終了後、7000rpm、15分間遠心分離を行い、培養液の1/100量の濃縮菌体を得た。次いで、各々の濃縮菌体にグルタミン酸ソーダ5%(重量)、可溶性澱粉5%(重量)、ショ糖5%(重量)および硫酸マグネシウム7水和物1%(重量)を含む分散媒と同量混合し、pH7.0に調整後、−40℃以下で凍結してから凍結乾燥を行った。得られた各々の凍結乾燥菌末を60メッシュのフルイで粉末化して両菌株の乾燥菌末を調製した。[実施例2]ラクトバシラス・サリバリウスWB21の配合錠剤の製造第13改正日本薬局方解説書製剤総則「錠剤」の規定に準拠し、実施例1で調製したラクトバシラス・サリバリウスWB21の乾燥菌末2mg(生菌数、5×108相当)と、乳糖(日局)61mg、澱粉(日局)216.2mg、結合剤としてポピドン(日局)20mg、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム(日局)0.8mgを加えて均一に混合し、打錠機で圧縮成型し1錠当たり300mgの素錠を作り、さらに、ヒドロキシプロピルセルロースを用いてフィルムコーティングを施して、白色のフィルムコーティングされた錠剤を製造した。この錠剤は、整腸用医薬品、特に整腸(便通を整える)、例えば、便秘、軟便、腹部膨満感を効能とする整腸用医薬として使用できる。[実施例3]ラクトバシラス・サリバリウスWB21の配合散剤の製造第13改正日本薬局方解説書製剤総則「散剤」の規定に準拠し、実施例1で調製したラクトバシラス・サリバリウスWB21の乾燥菌末1gに、乳糖(日局)400g、澱粉(日局)600gを加えて均一に混合し、散剤を製造した。この散剤は、整腸用医薬品、特に整腸(便通を整える)、例えば、便秘、軟便、腹部膨満感を効能とする整腸用医薬として使用できる。[実施例4]スターター菌ラクトバシラス・アシドフィルスとラクトバシラス・サリバリウスWB21の混合培養による醗酵乳の製造醗酵乳のスターター菌であるラクトバシラス・アシドフィルスを脱脂粉乳11.5%、酵母エキス0.5%、アスコルビン酸0.03%を含む還元脱脂乳培地に接種し、37℃で、16時間培養したものをバルクスターターとした。一方、生乳および脱脂粉乳からなる原料ミックスに実施例1で調製したラクトバシラス・サリバリウスWB21の培養液と、先に調製したバルクスターター(ラクトバシラス・アシドフィルスの培養液)をそれぞれ5%づつ接種し、38℃で、16時間培養を行い、醗酵乳を得た。本発明の乳酸菌を用いて製造した醗酵乳は風味が良好、且つ美味であり嗜好性の高い製品であった。[実施例5]ラクトバシラス・サリバリウスWB21含有粉末健康食品の製造ビタミンC40g又はビタミンCとクエン酸の等量混合物40g、グラニュー糖100g、コーンスターチと乳糖の等量混合物60gに実施例1で調製したラクトバシラス・サリバリウスWB21の乾燥菌末1gに、乳糖(日局)400g、澱粉(日局)600gを加えて均一に混合し、粉末健康食品を製造した。この粉末健康食品は乳酸菌配合健康食品であり、幼児から高齢者まで、誰が摂取しても良いが、主に整腸を介した保健の目的で適量を摂取することができる。さらに、乳酸菌のプロバイオティクス機能の一つである抗菌活性に基づき、食中毒、虫歯、歯周病等の予防・治療の目的で摂取してもよい。産業上の利用可能性本発明によれば、消化管等からの排出に抗してプロバイオティクス機能を高度に発揮できる、定着性の高い乳酸菌、これを有効成分として含有するプロバイオティクス製品を提供することができる。 ラクトバシラス・サリバリウスWB21株。 ラクトバシラス・サリバリウスWB21株を有効成分として含有するプロバイオティクス製品。 ラクトバシラス・サリバリウスWB21株を含有する食品。 ラクトバシラス・サリバリウスWB21株を有効成分として含有する医薬。 ラクトバシラス・サリバリウスWB21株を有効成分として含有する食中毒、又は、口腔疾患の予防及び/又は治療用組成物。


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