タイトル: | 特許公報(B2)_Rho−イソアルファ酸ホップ製品とその製造方法 |
出願番号: | 2002507755 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C12C 5/02 |
ウィルソン,リチャード,ジェイ.,エイチ. ジンベル,アダム,エム. ロバーツ,トレバー,アール. スミス,ロバート,ジェイ. JP 4638121 特許公報(B2) 20101203 2002507755 20010629 Rho−イソアルファ酸ホップ製品とその製造方法 エス.エス.スタイナー,インコーポレイテッド 598139863 越場 隆 100092277 ウィルソン,リチャード,ジェイ.,エイチ. ジンベル,アダム,エム. ロバーツ,トレバー,アール. スミス,ロバート,ジェイ. US 60/215,408 20000630 20110223 C12C 5/02 20060101AFI20110203BHJP JPC12C5/02 C12C 5/02 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) CiNii WPI G-Search 食品関連文献情報(食ネット) 特表平10−508838(JP,A) 特公昭45−001237(JP,B1) 6 US2001020907 20010629 WO2002002497 20020110 2004502413 20040129 18 20080627 太田 雄三 【0001】【発明の分野】本発明は、麦芽飲料(malt beverages)の製造に用いられるホップベースの風味付け組成物の改良方法と、この改良された風味付け組成物を用いた麦芽飲料の改良された醸造方法に関するものである。本発明は2000年6月30日出願の米国仮特許出願第60/215,408号の利益を請求するものである。【0002】【従来の技術】従来の醸造法でホップから抽出される材料中には、油脂、ワックス、特性不明の樹脂および蒸留精油(特に、特定のモノ−およびセスキ−テルペンとその酵素添加誘導体)等の多くの非酸性有機化合物の他に、下記の構造Iの「α−酸」および構造IIの「β−酸」とよばれる化合物が含まれている(ここで、Rは各種の単純な炭化水素基、特にイソプロフィル、イソブチルおよびs−ブチル等を表す):【0003】【化1】麦汁沸騰中にα−酸は「イソ−α−酸」として知られる下記構造IIIの化合物に異性化される。【0004】【化2】【0005】残念なことに、通常のホップ製品を用いて醸造した麦芽飲料(ラガービール、エールビール、スタウトビール等)は光に露出すると「日光臭」を発生するということが古くから知られている。この不快臭は主として近紫外線波長の光による分解作用で構造IIIのイソヘキセノイル測鎖が部分的に分裂し、分離した1,1−ジメチルアリール基が天然中に存在するメルカプト基(−SH)を含む化合物と反応して刺激臭の強いメルカプタン、3−メチル−2−ブテン−1−チオール(MBT)を形成するためであると考えられている。メルカプト基(−SH)を含む化合物は「嫌な(skunky)」と表現される一般に不快な硫黄臭を発する。【0006】従来法ではホップコーンから抽出した抽出物を精留してα−酸、β−酸およびホップオイルに分離する。例えば参照として下記文献(その内容は本明細書の一部をなす)にはこの分離方法が記載されている。【特許文献1】米国特許第5,917,093号明細書分離後に単離したα−酸を異性化したものは上記の光に対して不安定なイソ−α−酸で、これが伝統的ビールの「苦味」の主成分であることは知られている。α−酸、イソ−α−酸またはβ−酸を還元して下記の構造IVのテトラヒドロイソ−α−酸(「THIAA's」)、構造Vのヘキサヒドロイソ−α−酸(「HHIAA's」)にすることによって光安定性を大幅に改良した方法も公知である:【0007】【化3】【0008】この還元形のイソ−α−酸は光分解作用に耐久性があるので、このタイプの水素化イソ−α−酸材料を用いて醸造したビールはMBTによる不快臭を発生することはなくなる。THIAA'sおよびHHIAA'sの製造方法は下記文献に記載されている。【特許文献2】米国特許第5,013,571号明細書これらの化合物はイソ−α−酸と同様に弱アルカリ性のカリウム塩水溶液として商業的に市販されている。【0009】しかし、これらの化合物の溶解度はイソ−α−酸に比べて限定される。例えばイソ−α−酸は一般に30%w/w濃度の安定した溶液で提供されているが、THIAA'sは10%w/w濃度でしか販売されていない。さらに、これらの化合物はイソ−α−酸より溶解度が小さいため従来は未発酵の麦汁ではなく、発酵済みのビールに直接添加している(釜での沸騰前、沸騰中または沸騰後)。そうすることによって沈殿による苦味物質の実質的ロスを避けている。しかし、添加のための特殊な計量装置の設置と運転が必要なためこの方法は明らかに不利である。さらに、この方法で得られるビールはホップ、ホップペレットまたはホップ抽出物を沸騰終了前に麦汁に加えることによって得られていた残留ホップオイルによる伝統的な「ホップ」風味に欠けるであろうことは明らかである。【0010】光安定性に優れたビールをrho−イソ−α−酸(下記の構造VI)を用いて製造する方法も公知である。このrho−イソ−α−酸は水素化ホウ素ナトリウムを用いてイソ−α−酸を化学還元して得られる二水素化誘導体である。この反応を行うための工業的プロセスの初期モデルせ下記文献に記載されている。【特許文献3】米国特許第3,044,879号明細書【0011】【化4】【0012】rho−イソ−α−酸はTHIAA'sまたはHHIAA'sより可溶性が高く、非特異的分光光度(「スペクトロ」)分析で測定した35%(w/w)濃度で一般に市販されている(一般的なHPLCで測定した真の濃度は約23〜30%)。しかし、この溶液は貯蔵中に沈殿物が生じるため発酵後に添加剤として用いる前に加熱して沈殿物を再溶解しなければならないことが多い。【0013】β−酸は醸造には特に役立っていないと考える醸造者もいる。例えば下記文献では「一般にホップのβ−酸はホップの無駄な成分であると考えられてきた」(第2欄第42〜43行目)と記載されている。【特許文献4】米国特許第4,918,240号明細書上記文献には「無駄な」β−酸を望ましいTHIAA'sに変換する際の触媒毒の除去方法が記載されている。しかし、従来の醸造法で麦汁からβ−酸と精油を全て除去することは望しい味にするためには有害であると考えている醸造者もいる。こうした醸造者はβ−酸とホップオイルが作業釜に存在して初めて光安定性が改良され且つ従来の醸造ビールに匹敵する味が得られると考えている。この点に関しては下記文献を参照されたい。【特許文献5】米国特許第3,798,332号明細書【特許文献6】米国特許第4,324、810号明細書【特許文献7】米国特許第5,583,262号明細書【特許文献8】欧州特許出願第94301014.0号明細書【0014】【発明が解決しようとする課題】【課題を解決する手段】本発明は、その1つの観点から、構造VI(Rはイソプロピル、イソブチル、s−ブチルおよびこれらの混合物から成る群の中から選択される)のrho−イソ−α−酸と、ホップのβ−酸およびホップオイルとを組み合せた新規な組成物(以下、「ベータアロマRho」または単に「BARho」という)を提供する。本発明の風味付け組成物を用いることによって外観および組成が従来の釜抽出物を用いて作った釜製品(kettle product)と同じで、日光臭の発生に対して耐久性のあるビールを製造することができる。本発明のBARhoはα−酸、イソ−α−酸、THIAA's、HHIAA'sまたはホップコーンまたはペレット抽出物に由来する残留有機溶剤分子を含まないという点に注目されたい。一方、本発明のBARhoはホップの釜抽出物中の伝統的な望ましい成分は全て含んでいる。【0015】本発明の別の実施例では、室温で安定性な一部水性の高濃度の還元(rho−イソ−α−酸のアルカリ金属塩組成物と、その新規な製造方法とが提供される。本発明のこのrho−イソ−α−酸組成物は醸造プロセスで直接用いることができ、また、ホップ抽出物のBARho誘導体の製造材料として用いることができる。本発明は最も簡単な方法、基本的には従来の釜用ホップ(kettle hopping)をBARhoに代えるだけで光安定性に優れたビールを製造する方法を醸造者に提供するもので、醸造者は使用率に対する従来の先入観を持たずに、ホップ風味の特性を大幅に自由に変更することができる。本発明は図面を参照した下記の詳細な説明からよりよく理解できるであろう。なお、類似部品には類似の参照番号を付けた。【0016】【実施の形態】高固形分で一部が水性のRho−イソ−α−酸組成物の製造[図1]は高固形分で室温安定性に優れた一部が水性のrho−イソ−α−酸組成物の製造方法を示す本発明の一実施例によるフローチャートである。段階10で酸性樹脂状態のrho−イソ−α−酸混合物を加熱して液状にする。液状とはrho−イソ−α−酸混合物の粘性率が約500センチボイズ以下、好ましくは約100センチボイズ以下となることである。液状にするにはrho−イソ−α−酸混合物を少なくとも約40℃、好ましくは約50〜70℃の温度、最も好ましくは約55℃〜約65℃の温度に加熱する。【0017】段階12で加熱した混合物を激しく撹拌またはかき混ぜる。窒素等の不活性雰囲気下でマルチブレード式混合装置を有する機械的撹拌機を用いて撹拌するのが好ましい。加熱した混合物を超音波振動機等で不活性雰囲気下で撹拌することもできる。段階14で加熱、撹拌したrho−イソ−α−酸混合物に水酸化アルカリ水溶液を加えて酸を中和し、単相の濃縮水溶液にする。水酸化アルカリ溶液は飽和溶液またはほぼ飽和溶液として加えるのが好ましい。好ましい水酸化アルカリは水酸化カリウムで、45重量%溶液で添加する。しかし、本発明ではIA族の他のアルカリ金属の水酸化物、例えば水酸化ナトリウム等を用いてもよい。【0018】得られた加熱されたrho−イソ−α−酸混合物を激しく撹拌またはかき混ぜながら水酸化アルカリ溶液を段階的に加える。その際、pHを注意深く観察し、水酸化アルカリ溶液を1分当たり約0.01〜約0.2当量、好ましくは約0.02〜約0.1当量、最も好ましくは約0.04〜約0.1当量の速度で加えるのが好ましい。加熱および撹拌したrho−イソ−α−酸混合物に水酸化アルカリ水溶液を加えて得られる水性混合物のpHは少なくとも約5に上昇する。好ましくは得られた水性混合物のpHが約6〜約11、最も好ましくは約9になるようにする。高濃度の粘性溶液中でpH値を直接測定することは実際にはできない。従って、pHとは上記混合物を脱塩水で少なくとも約2〜約35%以下のrho−イソ−α−酸を含む溶液(低pH値では懸濁液)に稀釈し、HPLCで測定した水溶液のpHを意味する。【0019】飽和またはほぼ飽和状態の水酸化アルカリ溶液を用いて酸を中和することによってrho−イソ−α−酸の高濃縮溶液が得られる。目標pHに達した水溶液はrho−イソ−α−酸の濃度(HPLC)が約55〜約85重量%のrho−イソ−α−酸のアルカリ塩混合物溶液を含む。この量は配合物を構成するアルカリ材料とrho−イソ−α−酸樹脂の純度とに依存する。【0020】段階16でrho−イソ−α−酸のアルカリ塩の混合物(撹拌は少なくするか、中断してもよい)を冷却し(冷却速度は1分当たり約1℃〜約10℃、好ましくは約3℃〜約10℃、最も好ましくは約5℃〜約10℃)て室温にする。rho−イソ−α−酸が高濃度であるが、このアルカリ塩は予想外に溶液状態を維持する。すなわち、得られた高固形分で粘性のある一部が水性のrho−イソ−α−酸アルカリ塩混合物は室温で少なくとも一時的には安定している。室温で安定とは水性混合物が単一相のままで、沈殿物を直ちに形成しないことを意味する。この高濃度溶液は分光光度測定で約35%(w/w)あるいは約15%(w/w、分光光度測定)の低濃度で従来の溶液のように沈殿物を生じることがない。rho−イソ−α−酸のアルカリ金属塩水溶液はこれよりはるかに低濃度でも沈殿するということは周知である。そのため商業的にはrho−イソ−α−酸は最大でも約35%濃度(w/w、分光光度測定)で提供されている。しかし、沈殿物を生じる性質があるため、配合物をビールに加える前に沈殿物を加熱して再溶解しなければならず、従って、発酵後の添加剤としてこの配合物を用いることは困難である。この理由だけで麦汁釜に市販の製品を添加して沈殿物の問題を回避している醸造者もいる。当然、rho−イソ−α−酸の利用効率が低下するが、それは容認している。【0021】rho−イソ−α−酸の溶解度には明らかに限度があるので、HPLCで少なくとも約55%w/w(分光光度測定では少なくとも約64%)のrho−イソ−α−酸濃度の高濃度かつ高粘性の均質rho−イソ−α−酸アルカリ塩溶液が調製できたということは驚くべきことである。なぜ可能になったその理由は不明である。従来濃度の約2倍、さらには3倍の半流動性のrho−イソ−α−酸が調製、包装、貯蔵、輸送できるということは包装、貯蔵および輸送コストを大幅に削減できるということを意味する。本発明製品は、従来のホップ抽出物を用いていた醸造者が一般に用いているラッカー缶(lacquer-lined tin)に包装でき、従来と同じように穴を開けて作業釜に入れることができる。【0022】濃縮したrho−イソ−α−酸アルカリ塩は、それを調製するための酸性樹脂とは違って、加熱または沸騰した麦汁中に容易に分散、溶解する。さらに、濃縮rho−イソ−α−酸アルカリ塩は化学的にはるかに安定している。従って、本発明の濃縮アルカリ塩は釜に直接添加できる安定な製品にするか、脱塩水に溶解して発酵後に添加可能な溶液にするか、さらには、本発明の濃縮アルカリ塩を十分に加熱して、予め稀釈せずに従来法でビールの製造ライン中に注入できる流動性のある均質流体にしてビールに添加することができる。さらには、以下で説明するように、rho−イソ−α−酸を高濃度rho−イソ−α−酸アルカリ金属塩組成物とβ−酸およびホップオイルとを組み合わせて醸造酒の調製に有用な風味付け組成物として用いることもできる。【0023】BARhoの調製BARhoを調製するにはまずホップ抽出物(好ましくは液体または超臨界CO2を用いて抽出する)を調製しなければならない。この抽出物のα−酸を例えばα−酸の異性化、β−酸およびホップオイルからのイソ−α−酸の単離と、それに続くアルカリ金属ホウ化水素、好ましくはホウ化ナトリウムを用いたイソ−α−酸への還元の一連の行程で還元してrho−イソ−α−酸にする。こうして得られたrho−イソ−α−酸に、既に述べたように、水酸化アルカリ金属の濃縮溶液を添加して高濃度の部分水溶液に還元する。最後に、単離しておいたβ−酸およびホップオイルを前記のrho−イソ−α−酸アルカリ金属塩の濃縮物に戻して混合し、作業釜へ添加するのに適したBARho製品にする。上記のβ−酸およびホップオイルは単数または複数の留分として回収され、前記の(還元されていない)イソ−α−酸をわずかでも含んでいてはならない。或いは、[図2]に示すように、先ず、酸性状態のrho−イソ−α−酸にβ−酸およびホップオイル(単数また複数の留分を含む)を戻して混合した後、rho−イソ−α−酸の大部分または全てをアルカリ金属塩状に還元するのに十分な水酸化アルカリ金属の濃縮水溶液を制御しながら加えて所望の生成物に調製することもできる。ホップを有機溶剤、例えばヘキサン、塩化メチレン、トリクロロエチレン、メタノールまたはエタノールで抽出した場合には、ホップオイルを戻して混合しなければならないことがある。ホップオイルは、当業者に周知のエタノール抽出法またはCO2抽出法を用いて別のホップのエタノール抽出物またはCO2抽出物のから得ることもできる。例えばホップをエタノール抽出した場合、エタノール抽出物はホップオイルを含む。このエタノール抽出物を真空下で水蒸気蒸留してホップ樹脂からホップオイルを単離し、周知の方法(遠心分離、蒸留)によってホップオイル留分を回収する。ホップオイルはさらに、例えば向流でCO2を流した後、ホップオイルを高比率で含むCO2抽出物を単離、回収するCO2抽出で得ることもできる。これらは全て周知の方法である。ホップからホップオイルを単離するさらに他の方法は例えば下記文献に記載されている。これらの特許の内容は本明細書の一部を成す。【特許文献9】米国特許第4,282,259号【特許文献10】欧州特許公報第94301014号【0024】本発明の第2実施例では、還元イソ−α−酸(rho−イソ−α−酸)からホップ風味付け組成物を調製する。この組成物は約20%(w/w)〜約50%、好ましくは約30%〜約45%、最も好ましくは約35%〜約40%のrho−イソ−α−酸と、約5%(w/w)〜約30%、好ましくは約10%〜約25%、最も好ましくは約15%〜約20%の量のβ−酸と、約1%(v/w)〜約15%、好ましくは約3%〜約10%、最も好ましくは約5%〜約8%の量のホップオイルとを含む。本発明は、本発明製品の製造方法と、ビール醸造での本発明製品の使用とを記載した以下の実施例からよりよく理解できよう。【0025】【実施例】実施例1高固形分で水性のrho−イソ−α−酸組成物の調製156.0gの遊離酸状態の還元(rho−)イソ−α−酸樹脂(測定されたrho−イソ−α−酸の含有量はHPLCで83.4%、分光光度分析で100.2%)をガラスビーカーに計量する。次に、この粘性樹脂に16mlの脱塩水を加える。全体を52℃に温め、プロペラ型撹拌機を用いて激しく撹拌する(640RPM)。次に36mlの45%(w/w)KOHを11分間かけて添加する。温度は最高68℃まで上昇した。撹拌をさらに19分続けると、樹脂酸が全て溶解し、濃赤色の粘性のある透明で、室温に冷却後も均質なままの溶液ができる。試料を取り、測定した結果、rho−イソ−α−酸の含有量はHPLCで74.5%、分光光度分析で62.7%であった。この試料を稀釈して約35%(w/w、分光光度分析)の濃度にした。pHは9.6と測定された。さらに、標準化のために30mlの脱塩水を加えて従来濃度の2倍の溶液にした(そうすることで一般に粘性が小さくなる)。199.0gの濃縮溶液と12.8mlの脱塩水とを混合して、70%(w/w、分光光度分析)のrho−イソ−α−酸を含む標準溶液を調製した。この配合物は釜抽出物として用いるのに適しているが、例えば50℃に加熱して粘性を小さくするか、脱塩水で稀釈して室温または貯蔵所の温度でより容易に分散する薄い溶液とし、発酵後の添加物として直接用いることもできる。【0026】実施例2BARhoの調製Zeusホップの超臨界CO2抽出物から予め製造した下記成分(a)および(b)(約40℃に予備加熱する)を混合してBARhoを製造した:(a)rho−イソ−α−酸樹脂(6.04kg)(HPLCで78.0%のrho−イソ−α−酸と1.0%のβ−酸とを含む)、(b)β−酸/ホップオイル留分(3.81kg)(49.5%のβ−酸、18.6%(v/w)のホップオイル、0.07%のα−酸と0.04%のイソ−α−酸を含む)上記混合物にさらに、(c)Nuggetホップの超臨界CO2抽出物から製造した少量(0.19kg)のβ−酸/ホップオイル留分を添加し、サーモスタット付き水ジャケットを有する円錐形底のステンレス鋼製混合容器内でプロペラ型撹拌機を用いて激しく撹拌した。次に、得られた混合物(38℃)に合計1000mlの45%(w/w)KOH溶液を(蠕動ポンプを用いて)段階的に移した。この行程に38分かかった。混合物の温度は最高で58℃に上昇した。試料をとり、10滴の樹脂混合物を約10mlの熱い脱塩水に分散させてpHを決定した。測定したpH値は6.2〜6.3であった。次の1時間でさらにKOH溶液を加える(50mlの部分標本を段階的にポンピングする)。KOHを混合物に分散される毎にpHを調べた。合計1250mlのKOH(すなわち50mlの水酸化アルカリ溶液を5回)を加えるとpH値は6.5に上昇した。さらに50分撹拌してから、BARho生成物を4kgのHDPEプラスチックのバケツに入れ、室温に冷却した。2種類の試料を2×250gのネジ蓋式密封HDPE容器に詰めた。元のZeusCO2抽出物2×250gも同様に詰めた。下記の醸造試験で用いるまでこれらの抽出物は冷蔵庫中に貯蔵した。生成物の試料からHPLCによってホップ樹脂酸の含有量を求め、GC分析で精油留分の組成を得た([表1])。【0027】【表1】【0028】[表1]のBARhoの分析値は本発明のBARho組成物の一実施例を分析したものである。この実施例は約40.4%のrho−イソ−α−酸と、約17.6%のβ−酸と、約6.6%のホップオイルとを含む。2つの抽出物は共に室温でかなり粘性がある。自動添加装置を用いてこれらの材料を注入または投与する場合には使用前に各抽出物を予熱するのが望ましい。しかし、2つの抽出物は物理的に類似しているので、本発明のBARho組成物の取扱特性は元となる抽出物と基本的に同じであり、従って、添加法は従来の釜抽出物で用いられる方法と同じにすることができる。【0029】実施例3醸造試験上記で得られたBARhoをビールの風味付け組成物として評価するため、試験用醸造スケールで4種類の醸造を行った。4つの中の2種の醸造物はBARho(実施例2で調製)で風味付けし、残りの2種の醸造物は前記のZeusホップから調製した超臨界2酸化炭素抽出物(「CO2X」)を用いて風味付けした。各醸造物から製造したビールは試験醸造所でガラス壜に詰めた。完成品のビールの(ほぼ)非ホップ関連のパラメターの詳細は以下の通り:【0030】アルコール: 平均4%OG: 9.75°PPG: 2.0°P色: 5EBC単位濁り: <1.0EBC単位pH: 3.9CO2: 2.5ボリュームDO2: <0.3ppm【0031】下記の4種のヘクトリットル醸造を連続する日で実施した:醸造1: BARho−1回添加(「前」)醸造2: BARho−2回添加(「後」)醸造3: CO2X−1回添加(「前」)醸造4: CO2X−2回添加(「後」)醸造装置は試験開始前に2重洗浄して、残留ホップ材料が試験醸造物を汚染する危険性を無くした。BARhoビールを最初に醸造して、CO2抽出醸造からのイソ−α−酸で汚染されないようにした。【0032】各対の1番目の醸造(すなわち「前」の醸造)では60分間の沸騰開始時に各抽出物の全てを添加した。一方、2番目の(すなわち「後」の)醸造では沸騰の開始時(前の添加)と約50分後(後の添加)の2回に分けて抽出物を添加した。対照となるCO2Xでは「後」添加の醸造4でα−酸を重量で66:34に分けた。対応するBARho醸造2では後の添加量をRho−イソ−α−酸の重量で70:30に分けた。この分割はBARhoの芳香成分とCO2Xの芳香成分の後添加量をほぼ等しくするために決めたバランスである。BARhoのホップオイル含有量はCO2Xのホップオイル含有量より少ないが(6.6%対8.1%)、ミルセンの比率が低いため(18.7%対41.6%)、ミルセン無しの成分(抽出物の全含有量5.4%対4.7%)に対してバランスを取り戻したものである。しかし、ミルセン無しの留分の実際の組成が同一でないため、可能性のある調味料全ての添加が適していることを確認するのは不可能である。各醸造時に加えた抽出物のタイミングおよび量を[表2]に示す。【0033】【表2】醸造の全詳細は[表3]に示してある。【0034】醸造の詳細【表3】【0035】ホップ抽出物の添加量は2つの主要係数すなわち(i)予想利用率(「前」および「後」の釜への添加に対する)と(ii)知覚された(すなわち味見された)イソ−α−酸とrho−イソ−α−酸の相対苦味とを組み合わせたものを基にして計算した。その意図は全ての醸造物で同じ苦味が知覚されるようにするためであることは当然である。これらの係数の添加比率に対する影響度を[表4]に示す。【0036】【表4】【0037】醸造試験開始の何日か前に各抽出物を十分に混合し、各醸造に対して計算された量を正確に測って、HDPE製のネジ蓋式容器に入れ、冷蔵庫に貯蔵した。抽出物を用いる前に温めて室温にした。釜からの熱い麦汁を抽出物と十分に混合し、添加点から混合物を釜に流し込んだ。抽出物が確実に全て添加されるように、最後に容器を熱い麦汁で2度洗浄し、洗浄液を釜に戻し、目に見える残留物が全く無いようにした。【0038】後に続く発酵では、醸造物を無菌濾過し(1回)、2×50リットルの樽に入れた。次に分析および味見のために手動で充填機(single head filler)を用いて285mlの透明ガラス壜(各12本)と330mlの茶色ガラス壜(各84本)に各醸造物を詰めた。試験まで各種類のボトルを全て冷蔵庫に入れた。ビールの分析結果を[表5]に示す。主要な物理的特性パラメターの濁りおよび泡の点では2組の醸造のいずれにも有意差は全く見られなかった。どのビールにも泡噴出試験を実施しなかったが、味見の際に4種の全ての醸造物から醸造直後の壜を開けた時でも噴出の徴候は全く見られなかった。【0039】【表5】【0040】抽出物から完成ビールへのα−酸またはrho−イソ−α−酸の利用率を2つの異なる方法を用いて計算した。[表6]にBU分析による利用率の結果を示す。【0041】【表6】【0042】上記のBU分析(「醸造研究所」法で実施)では、275nmで測定されたイソオクタン溶液の吸光度に基準係数の50をかける。感覚刺激の比較から、予め異性化した釜抽出物(すなわち異性化ホップペレット)を用いる場合はこの係数を55〜58に上げるべきことが分かる。またrho−イソ−α−酸にはさらなる係数(1.11x)を適用して、イソ−α−酸に対して低い減衰係数を考慮する。こうした係数の増加を適用すると、上記の利用率はHPLC分析で止めた下記の[表7]に示される実際の利用値により等しくなる。この[表7]にはさらに、HPLCで求めたイソ−α酸、rho−イソ−α−酸および残留α−酸の実際の濃度がmg/リットル(=ppm)単位で示してある。【0043】【表7】【0044】HPLC分析がイソ−α酸およびrho−イソ−α−酸に固有の方法であるため、BU法で測定した吸光度に有意量の非苦味材料および非ホップ材料が含まれているのに対して、HPLC分析は苦味の知覚をより正確に実際の状況を反映している(rho−イソ−α−酸はイソ−α−酸より苦味が少ない点を考慮する必要がある。[表7]参照)。【0045】BARho醸造の利用率はrho−イソ−α−酸の結果のみを考慮して計算した。両方の結果でBARho醸造はCO2Xの対照基準に比べて実質的な利用率が増加することを明らかに示している。この効果は沸騰後半に添加した場合に特に明らかである。沸騰開始時に得られる利用率が全ての醸造において一定であるとすると、後添加によって実際に得られた近似の利用率のみを計算できる。[表8]にはこれらの数字を示し、ホップ抽出添加物の配合における最初の仮定と比較した。試験醸造所の条件下では、前および後添加の実際の利用率が共に初めの予想値よりかなり高くなった。【0046】【表8】【0047】抽出物および得られたビールのGC分析によって各ビールの精油含有量を計算した(結果を[表9]に示す)。測定した精油含有量は予想通り、後にホップを加えた醸造で大きかった。【0048】【表9】【0049】ビールから回収されたオイル留分のクロマトグラフィー分析によってそれぞれが約20種のホップと関係があると思われる化合物(大部分が未知)を含んでいることが示された。[表10]にはガスクロマトグラフからの溶離順にこれらの化合物を挙げてある(値はppb単位の濃度)。【0050】【表10】【0051】BARhoビールにはCO2Xの対照よりホップ由来油分の全体量が多く、後にホップを添加する醸造の方が前にホップ全部を添加したものより油分が多い。【0052】2種の抽出物のオイル留分のGCチャートの調査からBARhoオイルの化合物のバランスが片寄っており、CO2Xのオイルより比較的多くの揮発分の少ないオイル(一般に調味化合物および酸化添加)を含んでいることが分かった。この違いはCO2Xの処理中に熱によって引き起こされた変化のためであると推測される。この変化は単に揮発分の蒸発による損失および何らかの化学変化によるものと思われ、両者とも梱包したホップの熟成中に自然に生じる変化(好ましいことが多い)を連想させる。しかし、ビールを味見すると、分析の違いに関わらず、いずれのビールにも味の違いが無いことが明らかになった。これらのビールに後にホップを添加した場合の顕著な特性が見られないことから、抽出物を後に添加する相対量が十分でなかったか、この特性がはっきり現れるまでには時間が十分でなかったことが示される。【0053】瓶詰めしたビールに対する光安定性試験を実施した。特別な冷却室(10℃に維持)内で、2つの透明ガラス壜を蛍光灯に72時間露出した。シーヴァース化学ルミネセンス検出機を用いた硫黄揮発分のヘッドスペース分析によって、醸造物を分析して「嫌な風味の」硫黄化合物すなわち3−メチル−2−ブテン−1−チオール(MBT)を検出した。対照として茶色ガラス壜のビールも分析した。これらのビールは予め光に露出していない。[表11]に結果をまとめた。【0054】【表11】【0055】[表11]にすように、MBTは蛍光灯に露出した全てのビールで生成しているが、BARho醸造物中の量よりCO2X対照物中の量の方がずっと多かった。この結果から、BARhoが相対的に「光安定」な化合物であることが明らかである。【0056】下記に醸造実験の結果をまとめる:a. 試験抽出物は対照抽出物とその物理的コンシステンシーおよび用途が非常に類似している。従って、醸造時にBARhoをCO2X抽出物と類似の方法で処理できることが明らかである。b. BARho釜抽出物を沸騰開始時に加えて75%のrho−イソ−α−酸(HPLCで測定した)の利用率が達成された。このことから93%の対照のCO2X抽出物と比較して利用率が上昇したことが分かる。c. 後添加したBARho(醸造2)でも同様な75%の利用率(HPLCで測定)が達成された。このことから沸騰時の同じ時間に加えた対照CO2X抽出物の対応物(醸造4)と比べて利用率が約300%改良されることが分かる。【0057】d. BARhoを後添加することでオイルの回収が大きく改良された。e. BARhoが醸造に大きな光安定性を与えることは明らかである。透明ガラス壜に詰めるビールを醸造する場合には、BARhoは釜のCO2X抽出物よりかなり改良され、不都合な味の違いは全く示していない。f. 相対的に光安定性に優れた類似したビールが必要な場合には、CO2X抽出物の代わりにBARhoを用いることによって従来の材料の使用量が大きく減少することが上記データから明らかである。g. BARhoを釜へ単に添加するだけで光安定性が相対的に向上し、必要な場合には釜にホップを添加することで「ホップ風味」のビールを簡単かつ自由に得ることができる。【0058】本発明の精神および範囲を逸脱しない限り、種々の変更を加えることができるということは明らかである。例えば、rho−イソ−α−酸の中和に水酸化カリウムを用いた例を示したが、他の水酸化アルカリ金属を用いてもよい。濃縮rho−イソ−α−酸およびBARhoを調製するのに適した抽出物を得る手段として、超臨界CO2を用いたホップ抽出法を記載したが、液体CO2抽出法および有機溶剤抽出法を含む他の抽出法を用いることもできる。すなわち、本発明は上記に示し、説明した操作の詳細或いは化合物、組成物、方法、手順または実施例に限定されるものではなく、本発明は特許請求の範囲にのみ限定される。特許請求の範囲で還元(rho−)イソ−α−酸およびβ−酸の定義はHPLC分析で定義される。【図面の簡単な説明】【図1】 本発明の1つの観点から提供される高固形分で室温安定性に優れたrho−イソ−α−酸カリウム塩水性混合物の製造方法を示すフローチャート。【図2】 従来法で醸造したビールの大部分の特性を維持したまま光安定性を良くしたビールを醸造するために、従来の液体または超臨界CO2ホップ抽出物の代りとして用いられる本発明の第2実施例による釜抽出物の改良された製造方法を示すフローチャート。 下記(A)と(B)の段階を順次行うことを特徴とする、還元(rho-)iso-α酸を含む、安定な、固形分量の多い部分的に水性の組成物の形成方法:(A) 酸性樹脂形の還元(rho-)iso-α酸の混合物を液体状態に加熱し、(B) 得られた加熱混合物中に、濃縮されたアルカリ金属水酸化物の水溶液を加え、撹拌して、還元(rho-)iso-α酸のアルカリ金属塩を含む単一相の濃縮された水溶液を形成する。 上記の濃縮されたアルカリ水酸化物の水溶液を、中性またはわずかにアルカリ性のpHになるまで、上記還元(rho-)iso-α酸の加熱混合物中に段階的に混合する請求項1に記載の方法。 上記の段階(B)の還元(rho-)iso-α酸のアルカリ金属塩を含む単一相の濃縮された水溶液を冷却する段階(C)をさらに含む請求項1または2に記載の方法。 上記の濃縮されたアルカリ金属水酸化物の水溶液が水酸化カリウムの水溶液である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。 上記の水酸化カリウムの水溶液が45重量パーセントの水酸化カリウムを含む飽和した水溶液である請求項4に記載の方法。 上記の単一相の濃縮された水溶液が還元(rho-)iso-α酸のアルカリ金属塩を55〜85重量%含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。