生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ファルネシルトランスフェラーゼ阻害性1,2−環付加キノリン鏡像異性体
出願番号:2002504258
年次:2012
IPC分類:A61K 31/519,A61P 19/02,A61P 29/00,C07D 487/04


特許情報キャッシュ

ブネ,マルク・ガストン アンジボー,パトリク・ルネ エンド,デイビツド・ウイリアム JP 4919575 特許公報(B2) 20120210 2002504258 20010613 ファルネシルトランスフェラーゼ阻害性1,2−環付加キノリン鏡像異性体 ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ 390033008 JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP 特許業務法人小田島特許事務所 110000741 ブネ,マルク・ガストン アンジボー,パトリク・ルネ エンド,デイビツド・ウイリアム EP 00202181.4 20000622 20120418 A61K 31/519 20060101AFI20120329BHJP A61P 19/02 20060101ALI20120329BHJP A61P 29/00 20060101ALI20120329BHJP C07D 487/04 20060101ALN20120329BHJP JPA61K31/519A61P19/02A61P29/00A61P29/00 101C07D487/04 145 A61K 31/519 A61P 1/00-43/00 C07D 487/04 CAPLUS/REGISTRY(STN) 特許第4725940(JP,B2) 国際公開第00/001411(WO,A1) 15 EP2001006747 20010613 WO2001098302 20011227 2004501153 20040115 11 20080528 伊藤 幸司 【0001】本発明は、新規な1,2−環付加(annelated)キナゾリン鏡像異性体、その製造、該新規化合物を含んでなる製薬学的組成物および薬物としてのこの化合物の使用ならびに該化合物を投与することによる治療方法に関する。 がん遺伝子は、しばしば、細胞増殖とマイトジェン生成(mitogenesis)の刺激をもたらすシグナル伝達経路のタンパク質成分をコードしている。培養細胞におけるがん遺伝子発現は、軟寒天における細胞の増殖能と、非トランスフォーム細胞によって示される接触阻止を欠く濃密な細胞塊としての細胞増殖とを特徴とする、細胞のトランスフォーメーションをもたらす。ある種のがん遺伝子の変異および/または過剰発現は、しばしば、ヒトのがんを伴う。がん遺伝子の特定の群は、哺乳動物、鳥類、昆虫類、軟体動物、植物、真菌および酵母において同定されたrasとして知られている。哺乳動物のrasがん遺伝子のファミリーは、3つの主要メンバー(「イソ型」):H−ras、K−rasおよびN−rasがん遺伝子からなる。これらのrasがん遺伝子は、p21rasとして一般に既知の高度に関連するタンパク質をコードしている。一旦、原形質膜に接着すると、p21rasの変異または発がん型は、悪性腫瘍細胞のトランスフォーメーションと無制御の増殖に対するシグナルを与えることができる。このトランスフォーム能を獲得するためには、p21rasオンコプロテインの前駆物質が、カルボキシル末端のテトラペプチドに位置するシステイン残基の酵素的に触媒されるファルネシル化を受ける必要がある。したがって、この改変を触媒する酵素、すなわちファルネシルトランスフェラーゼの阻害剤は、p21rasの膜接着を防ぎ、そしてras−トランスフォーメーション腫瘍の異常増殖を阻止することができる。それ故、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤が、rasがトランスフォーメーションの一因となる腫瘍に対して抗がん剤として非常に有用になり得ることは、当該技術分野において一般に受け入れられる。【0002】rasの変異発がん型が、しばしば、多くのヒトのがん、もっとも注目されるのは、結腸および膵臓がん腫の50%以上において見いだされる(Kohl et al.,Science,vol260,1834−1837,1993)ので、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤がこれらの種類のがんに対して非常に有用であることが示唆された。【0003】WO97/16443,WO97/21701,WO98/40383およびWO98/49157には、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害活性を示す2−キノロンが記述されている。ファルネシルトランスフェラーゼ阻害活性を有する他のキノロン化合物がWO00/12498,00/12499および00/47574に記述されている。WO00/39082は、窒素−もしくは炭素結合イミダゾールを担持している新規な1,2−環付加キノリンおよびキナゾリン化合物類を記述していて、これらはファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害活性を示す。後者の特許明細書に記述されたそのような化合物の中に、鏡像異性体混合物の形態で得られる(±)−5−(3−クロロフェニル)−α−(4−クロロフェニル)−α−(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)テトラゾロ[1,5−a]キナゾリン−7−メタンアミンがある。本発明者らは、ここに、混合物を分離し、そして(−)鏡像異性体が鏡像異性体混合物と比較して特に有利な薬理学的性質を有することを見い出した。【0004】かくして、本発明は、(−)−5−(3−クロロフェニル)−α−(4−クロロフェニル)−α−(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)テトラゾロ[1,5−a]キナゾリン−7−メタンアミンおよびその製薬学的に許容しうる酸付加塩に関する。【0005】上記(−)鏡像異性体は、これ以後、本発明による化合物と言及される。【0006】本発明の化合物は、一般に、実質的に純粋な形態、すなわち、反対の(+)鏡像異性体を実質的に含有しない、例えば後者の鏡像異性体の5%w/w以下、好ましくは2%w/w以下、そして有利には1%w/w以下を含有する形態において存在する。【0007】上記の製薬学的許容しうる酸付加塩は、本発明の化合物が形成できる治療的に活性な無毒の酸付加塩型を含むことを意味する。後者の化合物は、適当な酸を用いて該酸型を処理することによって、その製薬学的許容しうる酸付加塩に転化することができる。適当な酸は、例えば、ハロゲン化水素酸、例えば塩化水素酸もしくは臭化水素酸;硫酸;硝酸;リン酸およびそれに類する酸のような無機酸;または、例えば、酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸(すなわちブタン二酸)、マレイン酸、フマール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、パモ酸およびそれに類する酸のような有機酸を含む。【0008】また、用語酸付加塩は、本発明の化合物が形成できる水和物および溶媒付加型を含む。そのような形態の例は、例えば、水和物、アルコラートおよびそれに類するものである。【0009】これ以降で使用される場合は常に、用語「本発明の化合物」は、製薬学的に許容しうる酸付加塩をまた含むことを意味する。【0010】本発明による(−)鏡像異性体は、前記WO00/39082に記述される親の鏡像異性体混合物の分離によって製造されてもよい。分離は、例えば、適当なキラル酸、例えば(+)−6−アミノペニシラン酸、DもしくはLアスパラギン酸、(1S,3R)もしくは(1R,3S)−ショウノウ酸、(1S)もしくは(1R)−10−ショウノウスルホン酸、カルボベンジルオキシ−L−プロリン、コール酸、デヒドロコール酸、デオキシコール酸、(2S,3S)もしくは(2R,3R)ジベンゾイル酒石酸、(2S,3S)もしくは(2R,3R)ジアセチル酒石酸、(2S,3S)もしくは(2R,3R)−酒石酸、(2S,3S)もしくは(2R,3R)ジトルオイル酒石酸;2,3:4,6−ジ−O−イソプロピリデン−2−ケト−L−グロン酸、(+)−3,4−2H−1−ベンゾピラン−2−カルボン酸、(R)もしくは(S)−4−(2−クロロフェニル)−2−ヒドロキシ−5,5−ジメチル−1.3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシド、D−グルコン酸、DもしくはL−グルタミン酸、D−イソアスコルビン酸、(S)もしくは(R)−2−ヒドロキシプロパン酸、ラクトビオン酸(lactobionic acid)、DもしくはL−リンゴ酸、(R)もしくは(S)−マンデル酸、L−2−((4−メトキシフェニル)スルホニル)アミノペンタン二酸、L−2−((4−メチルフェニル)スルホニル)アミノペンタン二酸、(S)−6−メトキシ−α−メチル−2−ナフタレン酢酸、(S)−2−(フェニルカルバモイルオキシ)プロパン酸、(−)−3−ピナンカルボン酸、(R)もしくは(S)−2−ピロリドン−5−カルボン酸、または(R)−チアゾリジン−4−カルボン酸との反応によって、慣用の方式において実施されてもよい。得られる塩型は、続いて、例えば選択的または分別晶出によって分離され、そして所望の鏡像異性体がアルカリによってそこから遊離される。【0011】本混合物から所望の鏡像異性型を分離する代替方式は、キラル固定相を用いる液体クロマトグラフィーを必要とする。また、鏡像異性型は、反応が立体化学的に起きるならば、適当な出発材料の対応する純粋な鏡像異性型から誘導されてもよい。また、純粋な鏡像異性型は、反応が立体化学的に起きるならば、適当なラセミ体出発材料から出発して得られてもよい。純粋な鏡像異性型は、親の鏡像異性体混合物をある種のキラル剤、例えば酸もしくは酸塩化物の1種の鏡像異性体と反応させてジアステレオマー混合物を得て、それを、例えば、選択もしくは分別晶出によるか、または液体クロマトグラフィーによって分離することによって、純粋なジアステレオマーに製造することができる。次いで、適当なジアステレオマーは所望の鏡像異性体に分割することができる。親の鏡像異性体混合物は、先のWO00/39082に記述される方法にしたがって、またはより具体的には本明細書に記述されるように製造されてもよい。【0012】本発明の化合物およびその製薬学的に許容しうる酸付加塩は、それらが、親の鏡像異性体混合物と比較して驚くほど強力であるファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ(FPTアーゼ)阻害効果を有することにおいて、価値ある薬理学的性質を有する。かくして、後者の混合物が1.1nMのIC50 FPTアーゼ阻害活性を有するのに対して、(−)鏡像異性体は0.7nMの対応する活性を有する。【0013】本発明は、本発明の化合物の有効量を投与することによって、トランスフォームした細胞を含む細胞の異常増殖を阻止する方法を提供する。細胞の異常増殖は正常な調節機構に依存しない(例えば接触阻止の欠如)細胞増殖を指す。これは、(1)活性なrasがん遺伝子を発現する腫瘍細胞;(2)rasタンパク質がその他の遺伝子の発癌性変異の結果として活性化される腫瘍細胞;(3)異常なras活性化が生じる他の増殖性疾患の良性および悪性細胞:の異常増殖を含む。さらにまた、rasがん遺伝子は、腫瘍細胞増殖への直接効果によってイン・ビボの腫瘍の増殖に寄与するのみならず、また、間接的に、すなわち腫瘍誘導性血管形成を促進することによって寄与するということが文献において示唆されている(Rak,J.et al,Cancer Research,55,4575−4580,1995)。それ故、薬理学的に標的とする変異rasがん遺伝子は、部分的には、腫瘍誘導性血管形成を阻止することによってイン・ビボでの固形腫瘍の増殖をおそらく抑制できるであろう。【0014】また、本発明は、そのような処置の必要な被験者、例えば哺乳動物(およびより特別にはヒト)に本発明の化合物の有効量を投与することによって腫瘍の増殖を阻止する方法を提供する。特に、本発明は、本発明の化合物の有効量を投与することによって、活性化されたrasがん遺伝子を発現する腫瘍の増殖を阻止する方法を提供する。阻止されるであろう腫瘍の例は、限定されるものではないが、肺がん(例えば、腺がんおよび非小細胞肺がんを含む)、膵臓がん(例えば、外分泌膵臓がん腫のような膵臓がん腫)、結腸がん(例えば、結腸腺がん腫および結腸腺腫のような結腸直腸がん腫)、類リンパ直系の造血性腫瘍(例えば、急性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫)、骨髄性白血病(例えば、急性髄鞘発生性白血病(AML))、甲状腺胞状がん、脊髄異形成症候群(MDS)、間葉起源の腫瘍(例えば、繊維肉腫および横紋筋肉腫)、黒色腫、奇形がん腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、皮膚の良性腫瘍(例えば、角質乳頭腫)、乳がん腫(例えば、進行性乳がん)、腎臓がん腫、卵巣がん腫、膀胱がん腫および表皮がん腫である。【0015】また、本発明は、rasタンパク質が遺伝子における発がん性変異の結果として異常に活性化される、良性および悪性の両増殖性疾患を阻止する方法を提供できる。そのような処置の必要な被験者への本明細書に記述される化合物の有効量の投与によって該阻止が達成される。例えば、rasがチロシンキナーゼがん遺伝子の変異または過剰発現により活性化される良性の増殖性疾患神経繊維腫症または腫瘍は、本発明の化合物によって阻止することができる。【0016】本発明による化合物は、他の治療目的のために使用されてもよい、例えば:a)例えばWO00/01411に記述されるように、がんを治療するための腫瘍の照射前、中もしくは後に本発明による化合物を投与することによる放射線療法への腫瘍の感作;b)例えばWO00/01386に記述されるように、類リューマチ性関節炎、骨関節炎、若年性関節炎、痛風、多発関節炎、乾癬性関節炎、硬直性脊椎炎および全身性紅斑性狼瘡のような関節症の治療;c)例えばWO98/55124に記述されるように、血管増殖性疾患、アテローム性動脈硬化症および再度狭窄を含む平滑筋細胞増殖の抑制;d)潰瘍性大腸炎、クローン病、アレルギー性鼻炎、移植片対宿主病、結膜炎、喘息、ARDS、ベーチェット病、移植拒絶、ウチカリア(uticaria)、アレルギー性皮膚炎、円形脱毛症、強皮症、発疹、湿疹、皮膚筋炎、面皰、糖尿病、全身性紅斑性狼瘡、川崎病、多発性硬化症、気腫、嚢胞性繊維症および慢性気管支炎のような炎症症状の治療;e)子宮内膜症、子宮類繊維腫、異機能子宮出血および子宮内膜過形成の治療;f)網膜および脈絡膜血管に影響する血管病を含む眼の血管新生の治療;g)次の生物機能または障害;臭覚、味覚、視覚、知覚、神経伝達、神経変性、内分泌および外分泌腺機能、自己分泌およびパラ分泌調節、血圧、胚形成、ウイルス感染、免疫機能、糖尿病、肥満症に関連する疾患を含む、ヘテロトリマーGタンパク質膜固定(fixation)からもたらされる病気の治療;h)例えば、D型肝炎ウイルスの大デルタ抗原(large delta antigen)のようなウイルスタンパク質のプレニル化またはプレニル化後反応を阻害することによるウイルス形態形成の抑制、およびHIV感染症の治療;i)多嚢性腎疾患の治療;j)酸化窒素を含む誘導性酸化窒素の誘導またはサイトカイン仲介障害、敗血症ショックの抑制、アポトーシスの阻止および酸化窒素細胞障害の阻止;k)マラリアの治療。【0017】それ故、本発明は、薬物としての使用のための本発明の化合物ならびに1種以上の上記症状を治療する薬物の製造のためのこの化合物の使用を開示する。【0018】上記症状の治療のために、本発明の化合物は、例えば、プラチナ配位化合物、例えばシスプラチンもしくはカルボプラチン、タキサン化合物、例えばパクリタキセルもしくはドセタキセル、カンプトテシン化合物、例えばイリノテカンもしくはトポテカン、抗腫瘍性ビンカアルカロイド、例えばビンブラスチン、ビンクリスチンもしくはビノレルビン、抗腫瘍性ヌクレオシド誘導体、例えば5−フルオロウラシル、ゲムシタビンもしくはカペシタビン、ナイトロジェンマスタードもしくはニトロソウレアアルキル化剤、例えばシクロホスファミド、クロラムブシル、カルムスチンもしくはロムスチン、抗腫瘍性アントラサイクリン誘導体、例えばダウノルビシン、ドキソルビシンもしくはイダルビシン;HER2抗体、例えばトラストズマブ;および抗腫瘍性ポドフィロトキシン誘導体、例えばエトポシドもしくはテニポシド;およびエストロゲン受容体アンタゴニストもしくは選択的エストロゲン受容体モジュレーター好ましくはタモキシフェンを含む抗エストロゲン剤、あるいはまたトレミフェン、ドロロキシフェン、ファスロデックスおよびラロキシフェン、またはアロマターゼインヒビター、例えばエクセメスタン、アナストロゾール、レトラゾールおよびボロゾールから選ばれる、1種以上の他の抗がん剤と組み合わせて有利に使用することができる。【0019】その有益な薬理学的性質にかんがみて、主題の化合物は、投与目的の種々の製薬剤形に製剤化できる。【0020】本発明の製薬学的組成物を製造するために、有効成分としての、塩基もしくは酸付加塩型における本化合物の有効量が、製薬学的に許容しうるキャリアーとの直接混合物において組み合わされるが、このキャリアーは、投与に望ましい製剤の形態に応じて、広範な種々の剤形をとることができる。これらの製薬学的組成物は、好ましくは、経口的、肛門内、経皮的、または非経口的注射による投与に適当な単位用量剤形で存在するのが望ましい。例えば、経口用量剤形の組成物を製造するには、例えば、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤および液剤のような経口液状製剤の場合における、水、グリコール、オイル、アルコール等:あるいは散剤、丸剤、カプセル剤および錠剤の場合における、固形キャリアー、例えば澱粉、糖、カオリン、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等のような、いかなる通常の製薬媒質でも使用できる。投与が容易であることから、錠剤およびカプセル剤が、もっとも有利な経口用量単位剤形を表し、この場合には、固形製薬キャリアーが使用されることは明らかである。非経口組成物では、他の成分が、例えば溶解性を助けるために含まれてもよいけれども、キャリアーは、通常は、少なくとも大部分、滅菌水を含むであろう。例えば、注射用液剤は、キャリアーが、生理食塩溶液、グルコース溶液もしくは生理食塩水とグルコース溶液の混合液を含む状態で製造されてもよい。また、注射用懸濁剤は、適当な液状キャリアー、懸濁化剤等が使用されてもよい場合には製造されてもよい。経皮投与に適する組成物では、キャリアーは、場合によっては、添加物が皮膚に対して有意な悪影響を惹起しない、微量で何らかの性質をもつ適当な添加物と組み合わされて、場合によっては、浸透促進剤および/または適当な湿潤剤を含む。該添加物は、皮膚への投与を容易にし、そして/または所望の組成物を製造するのに役立つであろう。これらの組成物は、種々の方法、例えば経皮パッチとして、スポット・オンとして、軟膏剤として投与されてもよい。【0021】前述の製薬学的組成物を、投与の簡易性および用量の均一性のために、用量単位剤形において製剤化することは、特に得策である。本明細書および請求範囲において使用される用量単位剤形は、単回用量として適当な物理的に分割された単位を指し、各単位は、必要な製薬キャリアーと一緒になって所望の治療効果を生むように計算された有効成分の予め決定された量を含有している。そのような用量単位剤形の例は、錠剤(刻み目をつけたり、コーティングされた錠剤を含む)、カプセル剤、丸剤、粉末包装剤、ウェーファー剤、注射用液剤もしくは懸濁剤、ティースプーン剤(teaspoonfuls)、テーブルスプーン剤(tablespoonfuls)等、およびそれらの分割される集合物である。【0022】当業者は、先に提示された試験結果から、容易に、有効量を決定できるであろう。一般には、有効量は、0.01mg/kg〜100mg/kg体重、特に、0.05mg/kg〜10mg/kg体重であろうと考えられる。成人では、有効成分10〜600mg、有利には50〜500mg、特に100〜400mgの1日用量を投与することが一般に好適であり、用量200もしくは300mgが特に好適である。必要な用量を、1日を通じて、適当な間隔で2、3、4またはそれ以上の分割用量として、投与するのが適当であろう。該分割用量は、例えば、1単位用量剤形当たり有効成分10〜500mg、特に、50mg〜300mgを含んでいる単位用量剤形として製剤化されてもよく;有効成分50mg,100mg,200mgもしくは300mgを含有する用量単位が特に好適である。【0023】次の実施例は、具体的説明の目的で提供される。【0024】実験の部これ以降、「THF」はテトラヒドロフランを意味し、「DIPE」はジイソプロピルエーテルを意味し、そして「EtOAc」は酢酸エチルを意味する。【0025】実施例a)【0026】【化1】【0027】POCl3(100ml)中、WO98/49157に記述されるように製造された6−(4−クロロベンゾイル)−4−(3−クロロフェニル)−2(1H)−キナゾリノン(中間体1)(0.0506mol)の混合液を撹拌し、そして1時間還流した。溶媒を蒸発乾固した。残渣をCH2Cl2中に数回採取した。溶媒を蒸発乾固した。残渣をCH2Cl2中に採取した。混合液を氷/NH4OH中に注入した。有機層を分離し、乾燥(MgSO4)し、濾過し、そして溶媒を蒸発乾固した。残渣(24.2g)をCH3CNから結晶化した。沈殿を濾取し、そして乾燥して、中間体(2)19.8g(94%)、mp.152℃を得た。【0028】b)【0029】【化2】【0030】ヘキサン中n−ブチルリチウム溶液(1.6M)(90ml)を、−70℃、N2下でTHF(120ml)中1−メチルイミダゾール(0.144mol)の混合液に流入した。混合液を−70℃で15分間撹拌した。クロロトリエチルシラン(0.148mol)を−70℃で滴下し、そして混合液をこの温度で15分間撹拌した。ヘキサン中n−ブチルリチウム溶液(1.6M)(80ml)を滴下した。混合液を−70℃で15分間撹拌した。THF(300ml)中中間体(2)(0.0822mol)の混合液を滴下した。混合液を−70℃で1時間撹拌し、加水分解し、EtOAcで抽出し、そしてデカントした。有機層を乾燥(MgSO4)し、濾過し、そして溶媒を蒸発した。残渣をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによって精製した。純粋な画分を収集し、そして溶媒を蒸発して、中間体(3)24.9g(61%)を得た。【0031】【化3】【0032】c)N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)(20ml)中、中間体(3)(0.0061mol)およびアジ化ナトリウム(0.0079mol)の混合液を50℃で18時間撹拌した。混合液を室温まで冷却し、そして氷水中に注いだ。沈殿を濾取し、H2Oで十分に洗浄し、そしてCH2Cl2に採取した。有機溶液を乾燥し、濾過し、そして溶媒を蒸発した。残渣をCH3CN DIPEから結晶化した。沈殿を濾取し、そして乾燥して、(±)−5−(3−クロロフェニル)−α−(4−クロロフェニル)−α−(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)テトラゾロ[1,5−a]キナゾリン−7−メタノール(中間体4)2.3g(75%);mp.232−233℃を得た。【0033】d)中間体(4)(0.0573mol)およびスルホニル尿素(300g)の混合液を160℃で5時間撹拌し、次いで冷却した。氷水、次いで塩化メチレンを添加し、そして混合液をセライトで濾過した。有機層を分離し、乾燥(MgSO4)し、濾過し、そして溶媒を蒸発乾固した。残渣をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによって精製した。純粋な画分を収集し、そして溶媒を蒸発して、(±)−5−(3−クロロフェニル)−α−(4−クロロフェニル)−α−(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)テトラゾロ[1,5−a]キナゾリン−7−メタンアミン(中間体5)7.5g(26%)を得た。【0034】e)中間体(5)をChiralpakADRでのカラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/EtOH50/50;15−35μm)によってその鏡像異性体に分割し、そして精製した。純粋な最初の(A)画分を回収し、そして溶媒を蒸発して残渣3.3gを得て、これをCH3CN/DIPEから結晶化した。沈殿を濾取し、そして乾燥して、(−)−5−(3−クロロフェニル)−α−(4−クロロフェニル)−α−(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)テトラゾロ[1,5−a]キナゾリン−7−メタンアミン(化合物1)2.55gを得た、[α]D20=−7.16°(c=5mg/mlMeOH);mp.178−180℃;1H−NMR(DMSO,400MHz)δ ppm:8.73(d,J=8.6Hz,1H),8.38(dd,J=8.6Hz,J=1.5Hz,1H);7.74−7.67(m,3H);7.64(s,1H);7.62−7.56(m,2H);7.40(d,J=8.6Hz,2H);7.21(d,J=8.6Hz,2H);5.93(s,1H);3.43(s,3H);3.40(s,broad,2H):MS(エレクトロスプレー,モードpos.oR=50V)m/z:501−505(M+H)+;473−477,391−395,83;Anal.(C25H18C12N8)C計算値59.89測定値59.71、H計算値3.62測定値3.52,N計算値22.35測定値22.17。この化合物は、HPLC(ChiralpakADR10μm 溶出液ヘキサン/エタノール50/50)によって測定されたように(+)鏡像異性体0.5%w/w以下を含有した。【0035】第2の(B)画分を回収し、そして溶媒を蒸発して残渣3.3gを得て、これをCH3CN/DIPEから結晶化した。沈殿を濾取し、そして乾燥して、(+)−5−(3−クロロフェニル)−α−(4−クロロフェニル)−α−(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)テトラゾロ[1,5−a]キナゾリン−7−メタンアミン(化合物2)2.6gを得た、[α]D20=+5.9°(c=5mg/mlMeOH)。この化合物は、HPLC(ChiralpakADR10μm 溶出液ヘキサン/エタノール50/50)によって測定されたように(−)鏡像異性体4%w/wを含有した。【0036】C.薬理学的実施例例C.1:「ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼの阻害についてのイン・ビトロアッセイ」:ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼの阻害についてのイン・ビトロアッセイは、本質的には、WO98/40383,page33−34に記述されるように行われた。【0037】例C.2:「ras−トランスフォームされた細胞の表現型復帰アッセイ」ras−トランスフォームされた細胞の表現型復帰アッセイは、本質的には、WO98/40383,page34−36に記述されるように行われた。【0038】例C.3:「ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼインヒビター2次腫瘍モデル」ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼインヒビター2次腫瘍モデルは、WO98/40383,page37に記述されるように使用された。【0039】D.組成物実施例:フィルム被覆錠剤錠剤コアの製造本発明の化合物100g、乳糖570gおよび澱粉200gの混合物をよく混合し、その後、水約200ml中ドデシル硫酸ナトリウム5gおよびポリビニル−ピロリドン10gの溶液により湿潤化する。湿潤粉末混合物を篩別し、乾燥し、そして再び篩別する。次いで、微結晶セルロース100gおよび水素化された植物油15gを添加した。全体をよく混合し、錠剤に圧縮して、各々が式(I)の化合物10mgを含有している錠剤10,000個を得た。【0040】コーティング変性エタノール75ml中メチルセルロース10gの溶液に、ジクロロメタン150ml中エチルセルロース5gの溶液を添加する。次いで、ジクロロメタン75mlおよび1,2,3−プロパントリオール2.5mlを添加する。ポリエチレングリコール10gを融解し、ジクロロメタン75mlに溶解する。後者の溶液を前者に添加し、次いで、オクタデカン酸マグネシウム2.5g、ポリビニル−ピロリドン5gおよび濃厚色素懸濁液30mlを添加し、そして全体を均質にする。コーティング装置においてこのようにして得られた混合液を用いて錠剤コアをコーティングする。 製薬学的に許容しうるキャリヤー、および(−)−5−(3−クロロフェニル)−α−(4−クロロフェニル)−α−(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)テトラゾロ[1,5−a]キナゾリン−7−メタンアミンもしくはその製薬学的に許容しうる酸付加塩、の治療学的に有効な量を含んでなる製薬学的組成物。 有効成分が(−)−5−(3−クロロフェニル)−α−(4−クロロフェニル)−α−(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)テトラゾロ[1,5−a]キナゾリン−7−メタンアミンである、請求項1において請求される製薬学的組成物。 用量単位剤形における請求項1もしくは請求項2において請求される製薬学的組成物。 各単位用量剤形において有効成分50〜300mgを含有する、請求項3において請求される製薬学的組成物。 錠剤の剤形における請求項3もしくは請求項4において請求される製薬学的組成物。 治療学的に有効な量の有効成分が製薬学的に許容しうるキャリヤーと密接に混合される、請求項1〜5のいずれかにおいて請求される製薬学的組成物の製造方法。 腫瘍増殖を阻止するための薬物の製造における、(−)−5−(3−クロロフェニル)−α−(4−クロロフェニル)−α−(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)テトラゾロ[1,5−a]キナゾリン−7−メタンアミンもしくはその製薬学的に許容しうる酸付加塩の使用。 (−)−5−(3−クロロフェニル)−α−(4−クロロフェニル)−α−(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)テトラゾロ[1,5−a]キナゾリン−7−メタンアミンもしくはその製薬学的に許容しうる酸付加塩の有効量を含む、被験者における腫瘍の増殖を阻止するための製薬学的組成物。 化合物が1日用量10〜600mgで投与される、請求項8において請求される組成物。 化合物が1日用量50〜500mgで投与される、請求項9において請求される組成物。 (±)−5−(3−クロロフェニル)−α−(4−クロロフェニル)−α−(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)テトラゾロ[1,5−a]キナゾリン−7−メタンアミンもしくはその製薬学的に許容しうる酸付加塩を、成分(+)および(−)鏡像異性体を分離するために処理し、そして(−)鏡像異性体もしくはその製薬学的に許容しうる酸付加塩を単離することを含む、(−)−5−(3−クロロフェニル)−α−(4−クロロフェニル)−α−(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)テトラゾロ[1,5−a]キナゾリン−7−メタンアミンもしくはその製薬学的に許容しうる酸付加塩の製造方法。 関節症の治療のための、(−)−5−(3−クロロフェニル)−α−(4−クロロフェニル)−α−(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)テトラゾロ[1,5−a]キナゾリン−7−メタンアミンもしくはその製薬学的に許容しうる酸付加塩を含んでなる製薬学的組成物。 関節症が、類リューマチ性関節炎、骨関節炎、若年性関節炎、痛風、多発関節炎、乾癬性関節炎、硬直性脊椎炎または全身性紅斑性狼瘡である、請求項12において請求される組成物。 炎症症状の治療のための、請求項1または2に記載の化合物を含んでなる製薬学的組成物。 炎症症状が、潰瘍性大腸炎、クローン病、アレルギー性鼻炎、移植片対宿主病、結膜炎、喘息、ARDS、ベーチェット病、移植拒絶、ウチカリア(uticaria)、アレルギー性皮膚炎、円形脱毛症、強皮症、発疹、湿疹、皮膚筋炎、面皰、糖尿病、全身性紅斑性狼瘡、川崎病、多発性硬化症、気腫、嚢胞性繊維症または慢性気管支炎である、請求項14において請求される組成物。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る