生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_三次元皮膚モデル
出願番号:2002500671
年次:2011
IPC分類:C12N 5/07,C12Q 1/02,G01N 33/566


特許情報キャッシュ

ノール,ミヒャエラ グラエバ,トーマス JP 4751005 特許公報(B2) 20110527 2002500671 20010529 三次元皮膚モデル フラウンホファー ゲセルシャフト ツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ. 500242786 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 田中 夏夫 100111741 ノール,ミヒャエラ グラエバ,トーマス DE 100 26 789.0 20000531 DE 100 62 623.8 20001215 20110817 C12N 5/07 20100101AFI20110728BHJP C12Q 1/02 20060101ALI20110728BHJP G01N 33/566 20060101ALI20110728BHJP JPC12N5/00 202C12Q1/02G01N33/566 C12N1/00-7/28 PubMed JSTPlus(JDreamII) BIOSIS/WPI(DIALOG) 米国特許第05945101(US,A) 25 EP2001006074 20010529 WO2001092477 20011206 2004505614 20040226 16 20080513 山中 隆幸 【0001】本発明は真皮同等物および表皮同等物からなる皮膚特異的な三次元の、好ましくはヒトの、インビトロ皮膚同等物、ならびにこの皮膚同等物およびその構成分の製造、培養ならびに使用方法に関するものである。【0002】インビトロ皮膚同等物とも呼ばれる皮膚特異的な完全皮膚モデルは、物質例えば可能性のある医薬または化粧品、または光線および熱のような因子をそれらの薬理学的作用、特に刺激、毒性、および炎症作用に関して、ならびにそれらの許容性に関して調べるために特に皮膚科学およびアレルギー学において試験用皮膚として使用されうる。かかる系はその上、多様な免疫学的、組織学的および分子生物学的な問題提起に使用されうる。これには例えば傷の治癒ならびに物質の浸透および吸収が数えられる。このような完全皮膚モデルでの物質の調査ないし試験は動物実験およびヒト被験体を用いる実験に比較して本質的な利点を提供するものである、というのは、それを用いて得られた結果が再現可能であることならびにその調査が価格的に好都合でかつより速やかに実施されうるからである。【0003】粗製物質および生成物を検査するために近年大抵ヒト細胞培養物がインビトロ系として使用されてきた。細胞培養技術のもう一つの発展は三次元の、器官類似のヒト細胞構造物および同時培養系である。それを用いて得られた結果は単独細胞培養物で得られた結果よりもさらに良好にヒトに適用できる。RheinwaldおよびGreen (Rheinwald, J. G. ら、”Serial cultivation of strains of human epidermal keratinocytes: The formation of keratinizing colonies from single cells”, Cell, 6 (1975), 331-344; Green, H, ら、”Growth of cultured human epidermal cells into multiple epithelia suitable for grafting”, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 76 (1979), 5665-5668) による開発で、ヒトのケラチン生成細胞の培養および火傷用医薬におけるおよびインビトロ皮膚科学におけるその使用が始まった。過去において再構成された皮膚の種々のモデルがインビトロで調製された。【0004】EP 0 197 090 B1は皮膚同等物の形成方法を開示しており、そこでは酸性コラーゲン溶液を収縮性細胞例えば線維芽細胞と混合することにより水和されたコラーゲン格子が調製された。pH値の中和後コラーゲン格子中にコラーゲンフィブリルが沈殿される。収縮性細胞がコラーゲン格子中に堆積しそしてその収縮を起こさせ、その上で真皮同等物が生成する。このコラーゲン格子中に皮膚パンチバイオプシーを導入することによりケラチン生成細胞がパンチバイオプシーから真皮同等物表面上に成長し、その上で皮膚同等物が形成される。【0005】EP 0 285 474 B1には、コラーゲンおよび線維芽細胞から得られた真皮同等物および多層表皮同等物を包含する皮膚同等物が開示されている。その際、表皮同等物を得るために、真皮同等物にヒトまたは動物性外植片例えば毛嚢が植付けられる。【0006】EP 0 020 753 B1には組織、特に皮膚組織の形成方法が記載されており、その場合同様に線維芽細胞を水和されたコラーゲン格子中に導入しそしてコラーゲン格子の収縮後に組織が形成される。この組織上に予めインビトロ培養されたケラチン生成細胞または包皮から抽出されたケラチン生成細胞を置くことができ、そこで皮膚代替物が生成する。【0007】EP 0 418 035 B1からは組織同等物が知られており、このものは線維芽細胞のような収縮性薬剤を用いて収縮された水和されたコラーゲン格子および透過性要素と接触したコラーゲンゲルを含みている。その場合コラーゲンと収縮性薬剤との混合物をコラーゲンゲルの上に載せると、コラーゲンゲルと透過性要素例えばポリカーボネートメンブランとの間の接触によりコラーゲン格子の放射状または側面の収縮が停止され、従ってその格子はその厚みに関してのみ収縮する。真皮同等物の形成後、ケラチン生成細胞を播くことができ、そこで皮膚同等物が生成する。【0008】さらに米国特許第5 861 153号には、担体上の表皮同等物からなり、ここでこの表皮同等物がケラチン生成細胞及び誘導されたかまたは誘導されていないランゲルハンス細胞の前駆体を包含するものである皮膚同等物が開示されている。この担体は、線維芽細胞かもしくは表皮が除去された真皮切片を含有するコラーゲン格子、人工膜、コラーゲンまたは合成物質に基づく皮下代替物であってもよい。【0009】米国特許第 4 963 489号は、生物適合性物質例えばセルロースからなる基本骨格をストローマ細胞例えば線維芽細胞が被覆したインビトロ調製されたストローマ組織について記載している。ここに記載された系は例えば三次元皮膚培養系の製造に使用でき、ここでケラチン生成細胞およびメラニン形成細胞は真皮同等物すなわち三次元ストローマ―担体マトリックス上に適用される。【0010】米国特許第 5 755 814号はインビトロ試験系でも、また治療目的にも使用されうる皮膚モデル系について記載している。この系は線維芽細胞を含有する不溶性コラーゲンの三次元架橋マトリックスならびに分化した表皮細胞の層状化層を含み、表皮細胞層はコラーゲン―マトリックスと直接接触した状態にある。マトリックスの架橋は水除去下の加熱処理によってもまた化学的薬剤例えばカルボジイミドによっても行われうる。【0011】米国特許第 5 882 248号には、米国特許第 5 755 814号記載のヒト皮膚モデル系に及ぼす化学物質または因子の効果を決定する方法が記載されている。皮膚モデル系と試験すべき物質との間の相互作用はその皮膚モデル系の細胞による物質の放出ならびにこれらの細胞の代謝、増殖、分化および再編成に及ぼす効果に基づき決定される。【0012】WO 95/10600にはその上、表皮同等物を取得できる方法が記載されている。この表皮同等物は医薬および/または化粧品の日焼け試験に使用されうる。【0013】公知の皮膚モデルには、これらが大抵は1層または数層のみのケラチン生成細胞の表皮層からなるという欠点がある。層状となった表皮が得られる場合、元来病原体での汚染の危険を有する組織外植片が使用され、このことは後日この皮膚同等物が試験用皮膚として使用された場合に誤った結果を招来しうる。記載された皮膚モデルが皮膚部分を有する限り、このものはしばしば、コラーゲンと並んでそのほかにさらに他の非皮膚種物質を含有しうるスポンジ状の、架橋した物質からなる。先行技術に記載される皮膚同等物において皮膚部分がコラーゲンと線維芽細胞とからなるかぎり、このものはコラーゲンゲルの強い収縮およびそこからの液体流出をもたらす非限定的収縮工程にかけられる。このことは、先行技術に記載された皮膚同等物が限定された規模においてのみ限定された大きさの試験用皮膚としてのみ適しそしてそれによって得られた結果が制限された程度でのみ本来のヒトの皮膚に転用されうるということになる。【0014】本発明の土台となっている技術的問題はすなわち、広範囲の天然のヒトの皮膚に相当する三次元ヒトインビトロ完全皮膚モデルならびにその製造のための方法および手段を提供することにあり、ここで前記モデルは決して非限定収縮工程にはかけられずそして例えば薬理学的および化粧品的作用を調査するための特定の大きさの試験用皮膚として使用されうるものである表皮層も真皮層も有するものである。【0015】本発明は単離された皮膚線維芽細胞の分化および/または増殖のための方法を提供することによりその根底にある問題を解決するものであり、ここで前記線維芽細胞は三次元ゲル状バイオマトリックス中で培養されそしてその中で増殖しうる。このバイオマトリックスは培養すべき線維芽細胞に加えてコラーゲン溶液から構成されたヒトまたは動物性コラーゲンからなる骨格すなわち組織特異的なマトリックスタンパク質を含有する。このコラーゲン―線維芽細胞ゲルは本発明に従い好ましくは1~2日間の深部培養にかけられる。繊維芽細胞を含有するバイオマトリックス上に次にケラチン生成細胞幹細胞が播種される。特に好ましい実施形態においては、好ましくは比較的高い割合例えば0.5%、1%、2%、5%、8%または10%のケラチン生成細胞細胞集団を有するケラチン生成細胞であるか、または未分化幹細胞のみを包含するものが使用される。特にバイオマトリックス系の数日の深部培養およびそれに続く数日のエアリフト培養を包含する特別の培養条件および特別の培地を使用すると、ケラチン生成細胞は多層表皮層へと分化する。本発明によればその上、ケラチン生成細胞の播種の前、間または後に他の細胞種および/または他の組織種の他の細胞例えば免疫系細胞もバイオマトリックス上に播種されうることが好ましい実施において想定される。【0016】従って、本発明方法に従えば2種の組織特異的層、すなわち真皮同等物および表皮同等物、から構築された器官類似のインビトロ皮膚モデルが得られる。この器官特異的皮膚モデルは組織学的にも機能的にも本来の皮膚に実質的に同じである。【0017】コラーゲン抽出のための特別な方法によりおよびバイオマトリックスの形成に使用されたコラーゲン懸濁液の組成の助けで、真皮同等物は培養期間中に決して未限定の収縮過程にはかけられなくなる。使用された培養方法および特別の表面被覆を有する細胞培養挿入物の使用ゆえに、皮膚部分は垂直方向に限定された収縮にかけられるだけで、一方水平方向の収縮が妨げられる。それにより特定の直径、均一の表面および培養挿入物のへりに対して特定の終了のある皮膚同等物が得られる。試験表面として使用された完全皮膚モデルの均一な寸法および均一な性質により、薬理学的および/または化粧品的効果に関する物質の試験において結果の質が高められそして試験結果が再現可能となる。【0018】本発明の特に好ましい実施形態は、線維芽細胞の増殖のためまたは真皮同等物および/または皮膚同等物を製造するために三次元バイオマトリックス中で皮膚線維芽細胞を培養することを包含する。【0019】本発明に関し、「細胞の培養」なる用語は、適当な環境中例えば物質代謝―抽出物および―生成物の添加および除去の下、好ましくはインビトロで行われる細胞、例えば線維芽細胞、の生存機能の保持、特にまた細胞の増殖を意味する。【0020】本発明に関し、「皮膚線維芽細胞」とは、天然に存在する線維芽細胞、特に真皮に存在する線維芽細胞もしくは遺伝子工学的に改変された線維芽細胞、またはそれらの前駆体と理解される。線維芽細胞は、皮膚線維細胞の前駆体、すなわち卵形の核と長い突起を備えた皮膚結合組織の紡錘形細胞である。この線維芽細胞は動物起源のものであってもヒト起源のものであってもよい。【0021】線維芽細胞の培養のためのバイオマトリックスは、かくして培養すべき線維芽細胞およびコラーゲン骨格を含むものであり、これは、ヒト起源または動物起源の好ましくは新鮮なコラーゲン溶液から、バイオマトリックス1mlあたりコラーゲンを少なくとも3mg、好ましくは3.5〜4.5mg含む濃度で新たに構成されるものである。このコラーゲン骨格は好ましくは細胞不含のコラーゲンIの酸性溶液から得られ、その際コラーゲン溶液のタンパク質濃度は5〜7mg/mlに達するのが好ましい。コラーゲン溶液のpH値は0.1〜6.9、好ましくは2.0〜5.0、より好ましくは3.0〜4.5、特に3.2〜4.2、そして特に好ましくは3.8である。本発明の線維芽細胞含有バイオマトリックスを製造するために、好ましくは5倍濃縮された細胞培地(好ましくは5倍濃縮M199-細胞培地)、緩衝液(好ましくはHepes緩衝液)、血清(好ましくはウシ胎児血清(FCS))、およびコンドロイチン-(4/6)-硫酸を含有する溶液と、好ましくは1.5×105/mlの線維芽細胞(特に予め培養された線維芽細胞)とを、コラーゲン溶液に2℃〜10℃で(好ましくは4℃で)加え、そしてよく混合する。この混合物を、24ウエルマイクロタイタープレートのウエル(ここで各ウェルの直径は10 mmである)に加えて、さらに温度を例えば室温または37℃に高めることによりゲル化させる。線維芽細胞-コラーゲンゲルをゲル化させた後、フィブロネクチン(好ましくはヒトフィブロネクチン)をこのゲル上に加える。フィブロネクチンは線維芽細胞により産生される構造タンパク質または接着タンパク質であり、インビボにおけるその機能は他の巨大分子(例えばコラーゲン)への結合、および細胞の隣接細胞への接着にある。すなわち、線維芽細胞-コラーゲンマトリックスへのフィブロネクチンの添加により、コラーゲンに対する線維芽細胞の結合と線維芽細胞の相互の結合との両方が促進される。続くコラーゲンゲル中における線維芽細胞の培養は、好ましくは深部培養にて行われる。本発明に関連して「深部培養(Submers-Kultivierung)」または「深部培養する(Submers-Kultur)」なる用語は、細胞の培養方法と理解され、ここで細胞は栄養溶液で覆われているものとする。繊維芽細胞を含有するバイオマトリックスをこのようにして細胞培地層で覆いそして37℃でインキュベートする。【0022】本発明の好ましい実施形態においては、バイオマトリックス中で培養された線維芽細胞を再びバイオマトリックスから取り出しそして場合により新たにバイオマトリックス中に導入することができ、この場合それによってこれら細胞はそれらに特有の代謝能およびそれらの分化状態を失わない。したがって本発明の方法により、バイオマトリックス中における線維芽細胞の中間培養の実施が可能となる。それゆえ本発明による方法は、線維芽細胞の出発物の量が少ない場合に真皮同等物および/または皮膚同等物の製造に充分な細胞材料を得ることができるという利点を提供する。【0023】本発明のもうひとつの好ましい形態においては、その機能、その形態学および/またはその分化状態を検査すべき皮膚線維芽細胞を、先にあげた三次元バイオマトリックス中に導入し、培養し、そしてその間におよび/またはその後に検査する。それゆえ本発明はまた、線維芽細胞を前記した方法に従って培養し、そしてその間におよび/または続いて例えば薬理学的、毒物学的、生理学的、形態学的および/または分子生物学的パラメーターについて検査することができる、皮膚線維芽細胞を使用して実施されるスクリーニング方法および診断方法にも関するものである。【0024】さらに好ましい本発明の実施形態においては、皮膚線維芽細胞を前記のように三次元バイオマトリックス中で培養し、続いて真皮同等物を得ることができる。本発明に関連して、「真皮同等物」とは、天然の真皮に実質的に対応する、コラーゲンと線維芽細胞とからなる結合組織様の層と理解される。【0025】かくして得られる真皮同等物は、スクリーニング方法および診断方法、具体的には、化学物質、例えば可能性のある医薬もしくは化粧品成分または他の因子の作用を調べるための方法に使用されうる。本発明に関連して、「因子」なる用語は、具体的には皮膚または皮膚細胞に影響を与える物理的手段、例えば光、熱等と理解される。それゆえ本発明は、本発明により製造された真皮同等物を使用するスクリーニング方法および診断方法にも関するものである。【0026】本発明の1つの好ましい実施形態は、検査すべき物質および/または検査すべき因子の存在下および非存在下における真皮同等物の処理、ならびに真皮同等物の細胞または細胞成分に対して観察された影響の比較を含む。【0027】本発明のさらにもう一つの好ましい実施は、本発明に従って製造された真皮同等物を使用し、かつ真皮同等物および表皮同等物からなる本発明の皮膚同等物を使用して、物質の浸透を検査する方法を含む。【0028】本発明の特に好ましい実施形態は、真皮同等物および表皮同等物からなる皮膚同等物を製造するための、バイオマトリックス中における皮膚線維芽細胞の前記培養方法にも関するものである。この方法においては、コラーゲン-線維芽細胞ゲルの前記製造およびインキュベーションの1〜3日後、好ましくは2日後にケラチン生成細胞をゲル上に播種する。【0029】本発明に関連して「ケラチン生成細胞」とは、角化偏平上皮を形成する表皮細胞もしくは遺伝子工学的に改変されたケラチン生成細胞、またはそれらの前駆体と理解されるが、ここでこの細胞は動物起源のものであってもヒト起源のものであってもよい。完全に角化している十分に分化した表皮の形成は、使用されたケラチン生成細胞中の基底幹細胞の割合に大きく依存するため、コラーゲンゲル上に播種するケラチン生成細胞はできるだけヒト生検組織からの未分化ケラチン生成細胞-幹細胞、すなわちサイトケラチン19-陽性またはインテグリンβ1-陽性の基底幹細胞であることが好ましい。その場合好ましくは予備培養した細胞、特に好ましくは第1代または第2代細胞継代のケラチン生成細胞である。バイオマトリックス上へのケラチン生成細胞の播種は好ましくは細胞培地中、特に好ましくは5%ウシ胎児血清を含有するKBM培地(Clonetics)中へ行う。次にこのバイオマトリックスを、ヒト表皮成長因子(hEGF)(0.1μg/500ml培地)、BPE(15mg/500ml培地)および0.8mM CaCl2を含有するKBM培地で覆い、そして好ましくは1〜3日間深部培養に供する。ケラチン生成細胞層の完全な分化は、hEGFおよびBPEを含有しない1.8mM CaCl2含有KBM培地を用いるエアリフト培養により達成される。本発明に関連して「エアリフト培養」とは、栄養培地レベルの高さをバイオマトリックスの高さより充分に上になるように調整し、その一方でケラチン生成細胞またはケラチン生成細胞により形成された細胞層は栄養培地レベルよりも上にあって栄養培地によって覆われない培養と理解される。すなわちこの培養は、空気-栄養培地の境界で実施され、その培養物は栄養を下方から供給される。この目的のために、播種物を24ウェルマイクロタイタープレートから、それぞれのウェルの直径が3.5cmである6ウェルマイクロタイタープレートのウェルに移す。好ましくは12〜14日間のエアリフト培養の後に、真皮同等物および表皮同等物からなる皮膚特異的インビトロ完全皮膚モデルが形成される。【0030】本発明によるインビトロ完全皮膚モデルの製造方法は好ましくは、ケラチン生成細胞の播種前、播種時または播種後に他の皮膚細胞種例えばメラノサイト、免疫細胞および/または内皮細胞をバイオマトリックス上に播種し、そしてさらに培養しうるように変更できる。【0031】本発明はそれゆえ、本発明による方法および場合によりそれに続くかおよび/または先行する慣用の種類の培養方法により製造されたものであって、少なくとも2〜4層の増殖性のある程度分化した細胞層および少なくとも4〜5層の角化細胞層を含有する皮膚特異的インビトロ完全皮膚モデル、特にヒトのインビトロ完全皮膚モデルにも関する。ここでインビトロ完全皮膚モデルにおいて、表皮同等物は基底層、有棘層、顆粒層および角質層を含み、真皮同等物と表皮同等物との間にはマトリックスタンパク質からなる機能性基底膜が存在し、さらに皮膚特異的タンパク質、例えばフィルグリン(Fillgrin)、Ki-67およびサイトケラチン10が発現される。【0032】製造された皮膚モデルの複雑性のために、これらは化学-薬学工業および化粧品工業の種々の問題を解決するために使用されうる。本発明により製造された皮膚同等物は、特に物質試験、例えば有効性、望ましからぬ副作用(例えば刺激、毒性および炎症作用またはアレルギー惹起性作用)、または物質の許容性に関する物質試験のために好適である。それらの物質は、医薬特に皮膚病薬としての使用の可能性が考えられる物質、または化粧品の成分である物質であってもよい。本発明により製造された皮膚同等物は、例えば物質の吸収、輸送および/または浸透の研究にも使用されうる。その上例えば光毒性、すなわち細胞構造物への種々の波長の光の傷害作用、の研究を目的とした、光および熱のような他の因子の調査にも好適である。本発明により製造された皮膚同等物は、当然、創傷治癒の研究にも使用されうる。【0033】ヒトの皮膚に及ぼす物質または因子の影響は、例えば、ヒト皮膚モデル系の細胞による物質の遊離(例えばサイトカインまたはメディエーターの遊離)に基づき、ならびにこれら細胞の遺伝子発現、物質代謝、増殖、分化および再編成に及ぼす影響に基づき、決定することができる。細胞損傷を定量する方法を用いることにより、特に生体染色用色素例えばテトラゾリウム誘導体を用いることにより、例えば皮膚細胞に及ぼす細胞傷害性効果が確認されうる。本発明によるヒト皮膚同等物における物質または因子の試験は、組織学的方法と免疫学的および/または分子生物学的方法の両方を含んでもよい。【0034】それゆえ本発明の好ましい実施形態は、本発明により製造されたヒト皮膚同等物を使用する、ヒト皮膚に及ぼす物質または因子の影響、特に薬理学的効果の研究方法を含む。その際特に好ましい実施形態においては、EZ4U試験が実施される。EZ4Uは無毒性の水溶性黄色テトラゾリウム塩であって、生存細胞によって強度に着色したホルマザンに還元されうる。この還元は無傷のミトコンドリアを必要とし、そしてそれゆえこの試験は細胞の生存能力の判定に使用されうる。【0035】本発明のさらに他の好ましい実施形態は、本発明により製造された真皮同等物と本発明により製造された皮膚同等物との両方を、調査すべき物質で処理し、さらに両方の系で得られた結果を相互に比較することを含む、物質の浸透の調査方法を含む。【0036】本発明の特に好ましい実施形態においては、特定の皮膚種に及ぼす化学物質または他の因子の影響が調査される。その場合所与の皮膚種、例えば色素の少ない皮膚種および/または色素の多い皮膚種の細胞を用いて、本発明による皮膚同等物を構築し、次いでそれらを物質または因子の作用に関して試験する。【0037】他の本発明の特に好ましい実施形態においては、本発明により製造された皮膚同等物を、皮膚疾患の研究のためおよび皮膚痛のための新たな治療上の選択肢を開発するためのモデル系として使用する。例えば、特定の皮膚疾患に罹患した患者由来の細胞系を用いて、患者特異的な皮膚モデル系を構築し、そしてそれらを用いて特定の治療および/または薬剤の有効性を調べたり評価したりすることができる。【0038】本発明はまた、前記培養方法を実施できる好ましくはゲル状のバイオマトリックス、すなわち皮膚線維芽細胞を含有するバイオマトリックスにも関する。本発明によるバイオマトリックスとその中に培養された皮膚線維芽細胞からなる組み合わせ物は、前記したように皮膚同等物および/または器官様の完全皮膚モデルの製造に使用されうる。【0039】「バイオマトリックス」とは、コラーゲン、細胞培地、血清および緩衝液(例えばHepes緩衝液)を包含するゲル構造物と理解される。バイオマトリックスの製造に使用されるコラーゲン溶液は、高含量の未変性天然コラーゲンを好ましくはpH値3.8の酸性水性媒体(例えば酢酸、好ましくは0.1%酢酸溶液)中に含有する溶液である。高含量の未変性コラーゲンとは、溶液中における総コラーゲン含量が、50%以上、特に60%以上、70%以上、80%以上、90%以上または95%以上、好ましくは99%以上であるものを意味する。その場合好ましい実施形態では、凍結乾燥コラーゲンはこの目的には使用されない。溶液のコラーゲン含量は好ましくは溶液1mlあたりコラーゲン3mg〜溶液1mlあたりコラーゲン8mg、好ましくは溶液1mlあたりコラーゲン5mg〜溶液1mlあたりコラーゲン7mg、最も好ましくは溶液1mlあたりコラーゲン6mgである。その場合、コラーゲンは、例えばラットの尾から抽出されたのち、0.1%酢酸中、3〜14日間にわたり撹拌しながら4℃でインキュベートされることが好ましく、そして不溶性コラーゲン部分は遠心分離除去される。好ましい細胞培地はDMEM(ダルベッコ改良イーグル培地)およびM199である。しかしながら、線維芽細胞の培養が可能な他のあらゆる任意の細胞培地も使用されうる。血清としては好ましくはウシ胎児血清(FCS)が使用され、そして緩衝液としては例えばHepes緩衝液が使用される。細胞培地、緩衝液および血清からなる溶液のpH値は好ましい実施形態においては7.5〜8.5、例えば7.6〜8.2、特に7.8である。当然、バイオマトリックスは他の因子例えば成長因子、接着因子、抗生物質、選択薬剤等を含有してもよい。【0040】それゆえ本発明はまた、皮膚線維芽細胞を含有するバイオマトリックスの製造方法であって、第1段階ではヒトまたは動物起源の(例えばラットの尾からの)新鮮なコラーゲンを、まずコラーゲン含有組織から抽出されたコラーゲン線維を緩衝溶液中に集め、アルコール中でその表面を消毒し、次に緩衝溶液中で洗浄し、そして次にpH値0.1〜6.9、好ましくは2.0〜5.0、特に好ましくは3.0〜4.0、特に3.3の酸性溶液、例えば0.1%酢酸溶液中に移すことにより、調製する該方法に関する。次にさらなる段階で、溶液中に存在するコラーゲンを2〜10℃、特に4℃で数日間、例えば3〜14日間にわたって撹拌し、溶解しなかったコラーゲン部分を遠心分離除去しそしてコラーゲン含量3mg/ml〜8mg/mlのコラーゲン溶液を2〜10℃、例えば4℃で保存する。当然、その溶液を凍結状態例えば-10℃〜-80℃、特に-20℃で一時的に保存することも可能である。本発明による線維芽細胞含有バイオマトリックスの製造には、第3段階で、細胞培地、血清および緩衝液からなる好ましくは5倍濃縮した溶液を、予備培養および遠心分離した好ましくは1×105〜2×105細胞/ml、より好ましくは1.5×105細胞/mlの線維芽細胞と混合する。PH値7.5〜8.5、好ましくは7.6〜8.2、特に7.8のこの溶液または懸濁液を、次に前記コラーゲン溶液と、特に好ましくは1:2の比率で、2℃〜10℃、特に4℃で混合する。次にこのゲル溶液を培養容器中にピペットで移し、そして37℃でゲル化後、培地で覆う。それからバイオマトリックスを少なくとも2日間培養し、それに続いてケラチン生成細胞をその上に適用することができる。【0041】他の好ましい本発明の形態は明細書の記載から明らかとなろう。【0042】本発明は後述の図面および実施例からより詳細に説明される。【0043】実施例1三次元ヒト皮膚同等物の調製ゲル溶液の調製5倍濃縮されたM199細胞培地(Life Technologies)20部、HEPES緩衝液(PBS溶液100ml中4.76g、pH値7.3)10部およびコンドロイチン-(4,6)-スルフェート(PBS中5mg/ml)1部を混合し、そしてこの混合物のpH値を7.8に調整する。この混合物を滅菌濾過し、続いてウシ胎児血清10部を加える。【0044】コラーゲン溶液の調製コラーゲン溶液を調製するには、例えばラットの尾からの腱のようなコラーゲン含有組織を使用する。全ての作業は無菌条件下にて、無菌物質を用いて実施される。ラットの尾を-20℃で貯蔵後、70%アルコールを用いて表面消毒する。ラット尾の皮膚をはがしそして個々のコラーゲン線維を取り出す。他の出発組織を使用する場合は、場合により存在する細胞を機械的、酵素的または化学的処理により丁寧に除去することができる。コラーゲン線維をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH 7.2)中に集め、70%アルコール中で10分間表面消毒し、そして次にPBSで充分に洗浄する。線維の重量を測定し、そしてこの線維を0.1%酢酸溶液中に移す(最終濃度約8〜12mg/ml)。この調製物を約3〜14日間、4℃で撹拌し、次に未溶解コラーゲン部分を遠心分離を用いて除去する(1,000 rpm、 1時間、8℃)。結果として、コラーゲンが溶解され、そして線維、ネットワーク(network)またはマトリックス形態では存在しない。【0045】皮膚線維芽細胞含有コラーゲンゲルの調製(24挿入物の調製)コラーゲン溶液16mlを50ml遠心分離管に加え氷上に置く。予備培養した皮膚線維芽細胞を回収し、そして計数する。1.2 x 106個の線維芽細胞を氷冷ゲル溶液8ml中にとり、よく懸濁させ、そして気泡を伴うことなくコラーゲン溶液に加える。ゲル溶液および線維芽細胞をよく混合する。この混合物各600μlを24ウエルマイクロタイタープレート(各ウエルの直径10mm)のウエル中に注意深く注ぐ。2分間37℃でインキュベートすることにより混合物をゲル化する。混合物のゲル化後、それぞれフィブロネクチン50μl(5μl/ml)を各挿入物に加える。37℃で10分間のインキュベーションまたは室温で30分間のインキュベーション後に、各ウエルにM199培地1mlを加えると挿入物が培地で覆われる。ゲル中に含有される線維芽細胞を37℃で1〜2日間のこの深部培養(submerse cultivation)にかけ、その際、12時間ごとに培地を新たな培地と交換する。【0046】ケラチン生成細胞の播種および皮膚同等物の培養ケラチン生成細胞の播種に先立ち初めにマイクロタイタープレートのウエルおよびゲルから培地を注意深く吸引する。次に5%FCSを含有するKBM培地(Clonetics)500μlを各ウエルに加える。ゲルを各フィブロネクチン溶液50μlで被覆し、そして37℃で1時間インキュベートする。次に5%FCSを含有するKBM培地50〜100μl中の100,000個のケラチン生成細胞を各ゲルに播種し、37℃で1〜2時間インキュベートする。続いて5%FCS、8mM CaCl2、hEGF (0.1μg/500ml培地)およびBPE (15mg/500ml培地)を含有するKBM培地500μlを加え、このゲルを1〜3日間の深部培養にかける。ここでは培地は毎日新たな培地と交換する。次いで、2%FCS、8mM CaCl2、hEGFおよびBPEを含有するKBM培地1〜1.5ml中でゲルをそれぞれさらに2〜3日間の深部培養にかける。次に、発達性皮膚同等物を有するこのゲルをエアーリフト培養にかける。この目的にはゲルを6個のウエルを有するプレート中に移し、そしてCaCl2含量1.88mMで、hEGFおよびBPEを含まないKBM培地1.5〜2mlを各ウエルに加える。その際、培地レベルは正確にゲルの高さに適合され、一方でケラチン生成細胞またはケラチン生成細胞により形成された層は培地によって被覆されない。エアーリフト培養は少なくとも12〜14日間継続される。【0047】図1は天然のヒト皮膚と本発明によるヒトの皮膚同等物との比較を示す。【0048】実施例2三次元ヒト皮膚同等物での化学物質試験物質試料がヒト皮膚同等物での試験に使用された。目的は完全皮膚モデルに及ぼす試料のありうる刺激効果を48時間インキュベーション後にEZ4U代謝を介して試験することであった。Il1αおよびPEG2の分泌は培地上清中24時間および48時間後にELISAを用いて測定される予定であった。また参照物質として種々の濃度のSDSで行った。終わりに、全ての試験された皮膚同等物を固定し、そして染色したパラフィン切片について形態学的構造を検査し、評価した。【0049】参照物質として使用されたSDSでは、1% SDSから曝露時間(Et50)が測定され、およびEc50濃度が24時間または48時間のインキュベーション時間にわたって測定された。【0050】皮膚同等物はそれぞれ培地(hEGF、BPEを含まず、および1.8mM CaCl2を含有するKBM)1mlを有する6-ウエル中で調製された。対応する皮膚モデル表面上での試料のインキュベーションは下記のスケジュールに従い行われた:第1日:朝および午後に物質3μlを適用。第2日:培地交換およびIl1αおよびPGE2測定のための培地上清の凍結。朝および午後に物質3μlを処理。第3日:Il1αおよびPGE2測定のための培地上清の凍結。2時間にわたるEZ4U試験における細胞代謝の測定。組織学的評価のためにスライドの固定および染色したパラフィン切片の調製。【0051】また、実施された陰性対照は対応してPBS3μlを用いて処理された。用いた参照物質または陽性対照は、種々の濃度(0.01%, 0.05%, 0.1%, 0.5%, 1%)のSDSであった。全ての試料に対して二重に調製された。【0052】EZ4U試験は以下のようにして実施された:48時間のインキュベーション後、個々の皮膚同等物の細胞代謝を生体染色(テトラゾリウム誘導体)を用いて測光法により測定した。全ての同等物をEZ4U試験の実施前にPBS1.5mlで注意深く3回洗浄した。陰性対照、陽性対照および試料で処理された同等物の代謝回転動力学を450nm (参照波長として620nm)で2時間にわたって記録した。この目的のために、既に記載したとおり、1挿入物あたりアッセイ培地750mlおよび色素75μlを37℃でインキュベートした。SDSに関してはEc50およびEt50の双方を測定した。Et50の測定は1% SDSの種々の曝露時間(3秒、30秒、60秒、5分、15分)に従って行われた。【0053】試料の24時間および48時間インキュベーション後の培地上清中のIl1αおよびPGE2の含量は、市販のELISA試験キットを用いて、それらの使用説明書に従って測定された。【0054】スライドをブアン(Bouin’s)溶液中で固定し、そしてパラフィン中に埋めこみ、組織学的切片を調製し、そして染色することにより、皮膚同等物を組織学的に調査した。【0055】陰性対照、参照または陽性対照および試料同等物の細胞代謝の測定は吸光度の差(△OD)を計算することにより行われた。種々の濃度における参照標準によるおよび試料の48時間インキュベーションによる△ODの変化は未処理対照(陰性対照、100%)に対するパーセントに換算された。【0056】測定された値からSDSに関して用量/効果曲線または時間/効果曲線を作成し、そして50%細胞傷害を引き起こす曝露時間(Et50)または濃度(Ec50)を決定した。試料の全ては未希釈形態のみで48時間にわたりインキュベートされたので、それぞれ測定された△ODは対照に対するパーセントで示した。【0057】結果a)試料の細胞傷害性試料の細胞代謝を48時間インキュベーション後に測光法により測定した。EZ4U代謝回転動力学を用いて、細胞代謝のそれぞれの変化を測定し、未処理対照に対するパーセントとして計算し、そしてまた実施された参照物質と比較した。表1はこの試験の結果を示す。図2は種々の濃度のSDS参照物質と皮膚同等物との48時間インキュベーション後の皮膚同等物の細胞代謝の変化を示す。【0058】【表1】表1:未処理対照(100%)に対する、試料との48時間インキュベーション後の細胞代謝変化(パーセント)【0059】b)インターロイキン1a(II1a)を例とするサイトカイン分泌誘導されたサイトカインIl1αの分泌を、まず試験物質と24時間のインキュベーション後に、および続いてさらなる24時間のインキュベーション後に同等物の培地上清中においてELISAにより定量した。試験物質としては試料ならびに種々の濃度のSDSが使用された。【0060】SDS刺激後のIl1αの分泌Il1αの分泌はSDS濃度が上昇するに伴い皮膚モデル中で連続的に高まり、そして1%SDSで皮膚同等物あたり100pg/mlより高い最大値に達する。2回目のインキュベーション後ではこの値は総体的に依然として上昇する。【0061】試料とのインキュベーション後のIl1αの分泌試料によるIl1α分泌は、24時間インキュベーション後の皮膚モデルにおいては比較的小さかった(15〜25pg/ml)が、しかしながら、2回目の24時間インキュベーション後では明らかに高いIl1α値を測定できた。【0062】図3は、SDS参照物質を用いて得られた結果を示す。図4は試験された試料を用いて得られた結果を示す。【0063】c)プロスタグランジン(PGE2)エイコサノイドの発現PGE2炎症性メディエーターの合成を、皮膚モデルで試験物質との1回目の24時間インキュベーション後および続く2回目の24時間インキュベーション後に同等物の培養上清中においてELISAにより定量的に測定した。試験物質としては試料186〜355ならびに種々の濃度のSDSが使用された。【0064】SDS刺激後のPGE2の分泌PGE2の合成は、SDS濃度0.5%まで皮膚モデル中でほとんど変化なく低いレベルのままであるが、しかし濃度1%SDSでは最初の24時間後にすでに急上昇し、皮膚同等物あたり4000pg/ml以上まで達する。この値は2回目の24時間インキュベーション後で実質的に変化しない(図5)。【0065】試料とのインキュベーション後のPGE2の合成皮膚モデルにおいては試料により明らかにPGE2合成が誘導された。【0066】図5は本発明の皮膚同等物におけるPGE2合成に及ぼすSDS参照物質の影響を示し、一方図6はPGE2合成に及ぼす試験された試料の影響を示す。【0067】まとめると、皮膚モデルは刺激に対して非常に敏感に反応し、分化すると言うことができる。例えば、SDSによるIl1α分泌の間に、濃度依存的上昇を観察することができる。また調査された試料は、インキュベーション時間の増大につれ、Il1α分泌の明らかな増大を示した。【0068】PGE2合成の調査により、皮膚モデルにおいては刺激により分泌の増大が引き起こされることが示される。例えば、PGE2合成が実質的に上昇する。この値はSDS Ec50の刺激閾値0.73%に匹敵する。また明確な値は試料をインキュベートした後にも測定できた。【0069】d)皮膚同等物の組織学的変化すべての試験された同等物の形態学的構造をEZ4U試験の後に組織学的に調べて評価した。組織学的切片は刺激の程度に依存して区別された傷害を示した。調査された試料は、試料の数回適用を伴った2回の24時間インキュベーション後には、角化の部分的な軟化、増殖性細胞層の緩みを示し、そして多少とも傷害した。【図面の簡単な説明】【図1】 図1は天然のヒト皮膚の縦断面および本発明により製造されたヒト皮膚同等物の縦断面を示す。【図2】 図2は、EZ4U試験で、試験すべき物質とともに48時間インキュベートした皮膚同等物の細胞代謝の変化率(%)を示す棒グラフを示す。【図3】 図3は種々のSDS濃度で24時間(24h-1)および48時間(24h-2)にわたりインキュベートした皮膚同等物の培地上清中のインターロイキン1α含量の変化を示すグラフである。【図4】 図4は試験すべき物質と24時間(24h-1)および48時間(24h-2)にわたりインキュベートした皮膚同等物の培地上清中のインターロイキン1α含量の変化を示す。【図5】 図5は種々のSDS濃度で24時間(24h-1)および48時間(24h-2)にわたりインキュベートした皮膚同等物の培地上清中のPGE2含量の変化を示す。【図6】 図6は試験すべき物質とともに24時間(24h-1)および48時間(24h-2)にわたりインキュベートした皮膚同等物の培地上清中のPGE2含量の変化を示すグラフである。 緩衝された血清含有細胞培地中に3.5〜4.5mg/mlのコラーゲンを含有する三次元のゲル状バイオマトリックス中に皮膚線維芽細胞を埋め込み、そして該皮膚線維芽細胞を培養してインビトロ真皮同等物を形成させることを含み、ここで前記バイオマトリックスは、凍結乾燥されていない未変性の天然コラーゲンを少なくとも90%の含量で含むコラーゲン溶液をゲル化することによって調製されるものである、インビトロ真皮同等物の製造方法。 皮膚線維芽細胞の培養が少なくとも1〜2日間の深部培養を包含する、請求項1記載の方法。 前記天然コラーゲンがラット尾腱から調製されたものである、請求項1または2記載の方法。 前記コラーゲン溶液が前記天然コラーゲンを酸性溶液中に含むものである、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。 前記コラーゲン溶液が、不溶性コラーゲンの遠心分離除去を経て調製されたものである、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。 コラーゲン含有組織の抽出、このコラーゲン含有組織の酸性溶液への移行、酸性溶液に移行されたコラーゲン組織の2〜10℃でのインキュベーション、不溶性コラーゲン部分の遠心分離除去、得られたコラーゲン溶液の皮膚線維芽細胞、細胞培地、血清および緩衝液を含有する溶液との2〜10℃での混合、そして温度を高めることによる前記混合溶液のゲル化を含む、請求項1〜5のいずれか1項記載のインビトロ真皮同等物の製造方法。 皮膚線維芽細胞を三次元のゲル状バイオマトリックス中で培養後そこから取り出しそしてインビトロ真皮同等物が得られるようにより高い細胞密度でさらに培養する、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。 緩衝された血清含有細胞培地中に3.5〜4.5mg/mlのコラーゲンを含有する三次元のゲル状バイオマトリックス中に皮膚線維芽細胞を埋め込み、そして該皮膚線維芽細胞をこの中で少なくとも1〜2日間の深部培養にかけ、そしてその後に細胞培地中のケラチン生成細胞をバイオマトリックス上に播種し、次いで該ケラチン生成細胞をさらに培養して三次元のインビトロ皮膚同等物を形成させることを含み、ここで前記バイオマトリックスは、凍結乾燥されていない未変性の天然コラーゲンを少なくとも90%の含量で含むコラーゲン溶液をゲル化することによって調製されるものである、三次元インビトロ皮膚同等物の製造方法。 前記天然コラーゲンがラット尾腱から調製されたものである、請求項8記載の方法。 前記コラーゲン溶液が前記コラーゲンを酸性溶液中に含むものである、請求項8または9記載の方法。 前記コラーゲン溶液が、不溶性コラーゲンの遠心分離除去を経て調製されたものである、請求項8〜10のいずれか1項記載の方法。 前記ケラチン生成細胞の培養が少なくとも5〜6日間の深部培養および少なくとも12〜14日間のエアリフト培養を包含する、請求項8〜11のいずれか1項記載の方法。 前記ケラチン生成細胞が未分化基底幹細胞を含有する、請求項8〜12のいずれか1項記載の方法。 ケラチン生成細胞の播種前、播種中または播種後に他の皮膚細胞種を前記バイオマトリックス上に播種しそして培養する、請求項8〜13のいずれか1項記載の方法。 他の皮膚細胞種が、メラノサイト、免疫細胞および/または内皮細胞である、請求項14に記載の方法。 コラーゲン含有組織の抽出、このコラーゲン含有組織の酸性溶液への移行、酸性溶液に移行されたコラーゲン組織の2〜10℃でのインキュベーション、不溶性コラーゲン部分の遠心分離除去、得られたコラーゲン溶液の皮膚線維芽細胞、細胞培地、血清および緩衝液を含有する溶液との2〜10℃での混合、温度を高めることによるこの混合溶液のゲル化、ゲル化した混合物の37℃でのインキュベーションおよびこのインキュベーションされたゲル化した混合物上へのケラチン生成細胞および/または他の皮膚細胞種の播種を含む、請求項8〜13のいずれか1項記載の三次元インビトロ皮膚同等物の製造方法。 組織から単離されたコラーゲン線維を酸性溶液中3〜14日間2〜10℃で撹拌し、不溶性コラーゲン部分を遠心分離除去しそして得られたコラーゲン含量3mg/ml〜8mg/mlを有する最終コラーゲン溶液を、皮膚線維芽細胞、細胞培地、血清および緩衝液を含有する溶液と2〜10℃で混合しそして次により高い温度でゲル化させることにより埋め込まれた皮膚線維芽細胞を含有するバイオマトリックスを製造する、請求項1〜16のいずれか1項記載の方法。 前記酸性溶液が酢酸溶液である、請求項17記載の方法。 細胞培地、血清および緩衝液を含有する溶液が1:2の比率でコラーゲン含有溶液と混合される、請求項17または18記載の方法。 請求項1〜7のいずれか1項記載の方法により製造されたインビトロ真皮同等物。 ヒト皮膚線維芽細胞を使用して製造された請求項20記載のヒトインビトロ真皮同等物。 請求項8〜16のいずれか1項記載の方法により製造された三次元インビトロ皮膚同等物。 ヒト皮膚線維芽細胞およびヒトケラチン生成細胞、またはヒト皮膚線維芽細胞およびヒトケラチン生成細胞に加えて他のヒト皮膚細胞種を使用して製造された請求項22記載のヒト三次元インビトロ皮膚同等物。 化学物質または因子を請求項20または21記載のインビトロ真皮同等物と接触させそして真皮同等物と化学物質または因子との間の相互作用を測定することを含む、真皮細胞に及ぼす化学物質または因子の作用を測定する方法。 化学物質または因子を請求項22または23記載の三次元インビトロ皮膚同等物と接触させそして皮膚同等物と化学物質または因子との間の相互作用を測定することを含む、皮膚細胞に及ぼす化学物質または因子の作用を測定する方法。


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