生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_簡易DNA抽出法
出願番号:2002372345
年次:2006
IPC分類:C12N 15/09,C07B 63/00


特許情報キャッシュ

皆川 敏一 皆川 和也 JP 3789429 特許公報(B2) 20060407 2002372345 20021224 簡易DNA抽出法 皆川 敏一 503003061 皆川 和也 503003072 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 田中 夏夫 100111741 皆川 敏一 皆川 和也 20060621 C12N 15/09 20060101AFI20060601BHJP C07B 63/00 20060101ALI20060601BHJP JPC12N15/00 AC07B63/00 B C12N 15/00-15/90 JICSTファイル(JOIS) 白子からDNAを抽出する,いきいき生物のびのび実験,日本,新生出版,1999年,64−65 浮田忠之進,医学・生物学のための有機化学 核酸,日本,朝倉鉱造,1965年,第1版,161 1 2004201525 20040722 6 20050614 森井 隆信 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、生物材料からのDNAの抽出方法に関する。【0002】【従来の技術】従来から、分子生物学の教育の一環として、学校、博物館等でDNAに関する実験を行いたいとの要望は多かった。特に、種々の生物体からDNAを抽出し、そのDNAを用いてさらに進んだ実験を行えるようにすることについての要望が多かった。【0003】DNA抽出法としては種々のものが公知である(例えば、特許文献1、非特許文献2および非特許文献3参照)。しかし、これらの抽出法は、時間を要し、また一般には入手が容易ではないプロテイナーゼKなどのタンパク質分解酵素またはフェノール、クロロホルム等の危険な有機溶剤を使い、さらに遠心分離器を用いるので、教育レベルでのDNA実験法としては適さなかった。【0004】一方、学生や一般人を対照とした体験学習等に適したDNA抽出法として、クロロホルム等の有機溶剤を用いず、短時間で行える簡易な方法も考案されている(非特許文献3および非特許文献4参照)。しかし、簡易な方法の多くは、最終的にDNAを主に含む高分子物質を白い綿状の可視的な状態で取り出すことを目的としている。従って、抽出されたDNAの純度は問われず、タンパク質等の夾雑物が少なからず含まれていた。また、クロロホルム等の有機溶剤を用いずにタンパク質を除去するために、加熱による熱変性によりタンパク質を沈殿・除去しており、加熱の過程でDNaseが働きDNAが分解されてしまう可能性が高い。さらに、これらのDNA抽出法においては、膜を溶解させるために界面活性剤を用いており、抽出したDNAをPCR反応に用いる場合、界面活性剤の混入がPCR反応に影響を与えるおそれがある。さらに、従来の簡易なDNA抽出法では、ある程度の純度のDNAを得るためには同じ操作を2、3回繰り返す必要があるので、結局DNAを抽出するまでに長時間を要した上、さらに長時間の操作の間にDNaseによりDNAが分解する危険性も大きかった。【0005】【特許文献1】特開平11-253158号公報【非特許文献1】日本生化学会編,「新生化学実験講座2 核酸I 分離精製」,東京化学同人,1991年7月10日,p.13-35【非特許文献2】中山広樹、他1名,「バイオ実験イラストレイテッド 2遺伝子解析の基礎 細胞工学別冊」,秀潤社,1995年9月25日,p.117-128【非特許文献3】望月淳子,「ブロッコリーからDNAを取ってみよう」、青少年のための科学の祭典200 全国大会 実験解説集、財団法人日本科学技術振興財団発行、2002年8月【非特許文献4】森田保久、"森田保久の高校生物関係の部屋 1.生徒実験・演示実験 −オリジナル編― (1)DNA抽出実験(2001.11.17一部更新)"、[online]、2001年11月17日、森田保久、[平成14年10月23日検索]、インターネットURL:http//village.infoweb.ne.jp/~yasuhisa/DNAext.htm【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明は、簡易でかつ高純度のDNAが得られるDNA抽出法およびDNA抽出キットの提供を目的とする。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者は、従来知られているDNA抽出法よりも簡易に行え、かつ高純度のDNAを得られるDNA抽出法の開発について鋭意検討を行い、薬品として塩化ナトリウム溶液およびエタノールのみを用い、取り扱いに注意を要する有機溶剤も、界面活性剤も用いず、また加熱処理も遠心分離処理も行わなくても生物体から高純度のDNAを抽出できることを見出した。なお、ここでいう従来法で用いられている「取り扱いに注意を要する有機溶剤」としては、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,2-ジブロモエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、o-ジクロロベンゼン等のハロゲン化合物、2,2,2-トリフルオロエタノール、フェノール、フルフラール等のアルデヒド、ニトロメタン、ヒトロベンゼン等のニトロ化合物、スルホラン等の硫黄化合物などの水不溶性有機溶剤が挙げられる。また、従来法で用いられている界面活性剤としては、SDS、CTAB(Cetyl trimethylammonium bromide)、台所用中性洗剤等が挙げられる。本発明者は、さらにDNAの抽出条件につき鋭意検討を行った結果、以下のような利点を有する本発明を完成させるに至った。本発明の方法においては、生物材料を磨砕後、多量のDNA抽出液(塩化ナトリウム溶液)を添加するため、磨砕された材料を含む液の粘度が減少し以後の操作が迅速に行え、また磨砕された材料を含む液中のDNase濃度も低くなり、DNAが分解を受けにくくなる。また、本発明の方法では、適度な目の粗さを有するフィルターを用いて粉砕材料を含む液をろ過するため、ろ過操作も迅速に行うことができ、また以後の操作において固形物の混入を避けることができる。さらに、加熱を必要としないので、加熱過程でDNaseによりDNAが分解されることもない。さらに、ろ液に添加するエタノール量も多いので、水相からエタノール相への不純物の混入も少ない。さらに、エタノール添加後に水相とエタノール相の界面において気泡が生じ、DNAが気泡に吸着した状態で析出するので、従来法のようにDNAを回収するために棒でかき混ぜる必要もなく、せん断力によるDNAの分解も防止できる。このように、本発明者等は、従来法に比較して高純度のDNAを特別な試薬を用いずに容易かつ迅速に抽出することができる本発明を完成させた。【0008】すなわち、本発明は以下の通りである。(1) (a) 生体材料を磨砕し、(b) 磨砕した生体材料に、タンパク質分解酵素も水不溶性有機溶剤も界面活性剤も添加することなく、生体材料磨砕液の5〜10倍量のDNA抽出試薬を添加し攪拌し、ここでDNA抽出試薬は0.5〜6Mの塩化ナトリウム溶液からなり、(c) 攪拌した溶液をろ過し、(d) ろ液に10〜20倍量のエタノールを添加し、(e) 水相とエタノール相の界面に起泡分離したDNAを回収する、ことを含み、加熱処理を含まない、生体材料からのDNA抽出法、(2) 薬品として(a) 0.5〜6Mの塩化ナトリウム溶液からなるDNA抽出液および(b) エタノールのみを含み、さらに(c) フィルター、(d) チューブを含む、生体材料からのDNA抽出キット、および(3) さらに、(e) すりおろし器、(f) スポイトを含む請求項2記載の生体材料からのDNA抽出キット。以下、本発明を詳細に説明する。【0009】【発明の実施の形態】本発明のDNA抽出法においては、DNAを抽出しようとする生物体を乳鉢等を用いて磨砕し、塩化ナトリウム溶液に懸濁させ、ろ過し、ろ液にエタノールを添加し、エタノール相中に析出したDNAを回収することより、高純度のDNAを得ることができる。【0010】生物体は、動物、植物由来のものを用いることができ、動物の肉、精巣、動物細胞、植物の葉、芽、茎、根等いずれも用いることができる。学習目的で本発明のDNA抽出法を実施する場合は、DNAが多量に含まれ、入手が容易という点で、例えば鶏のレバー、魚の精巣、ブロッコリーの芽等が好適に用いられる。生物体材料は乳鉢やホモジナイザーを用いて磨砕する。ここで、「磨砕」とは、大きな固形物が肉眼で明瞭に認められない程度に生物材料をすりつぶし、粉砕し、またはホモジナイズすることをいう。この際、最初にミキサー等を用いて、材料を細かく砕いておき、その後に乳鉢・乳棒を用いると効率的に磨砕することができる。肉眼で観察した場合に、固形物がほぼ認められなくなるまで磨砕する。DNAaseの作用でDNAが分解されるのを防止するために、この操作は冷却しながら行うことが望ましい。また、磨砕は、短時間、好ましくは数分から十数分以内に行う。磨砕が完了した後は、直ちに次の操作に移行することが望ましいが、時間を置く必要がある場合は、磨砕した生物材料に少量の液体窒素を加える等により冷凍しておいてもよい。また、乳鉢・乳棒等が準備できない場合は、家庭用のすりおろし器を用いてもよい。この際、柔らかい生物材料は凍結させることにより、容易にすりおろし器で磨砕することができる。【0011】次いで、磨砕した生物材料液に、5〜10倍量の塩化ナトリウム溶液(DNA抽出液)を添加して、よく攪拌する。塩化ナトリウム溶液はミリQ水等の精製水を用いて作製しておく。この際、精製水はあらかじめ混入の可能性があるDNaseを失活させるためオートクレーブをかけておくことが望ましい。塩化ナトリウム溶液の濃度は、0.5M〜6M、好ましくは0.5M〜2M、特に好ましくは2Mである。【0012】次いで、塩化ナトリウムに溶解させた生物材料液をろ過する。この際、フィルターは目の粗いものを用いる。フィルターの材質は限定されず固形分を除去できれば良い。特にコーヒーろ紙が望ましい。また、例えば、粒子保持能が20〜25μmのろ紙も用いられ、具体的にはワットマンろ紙グレードNo.4等が挙げられる。さらに、グラスフィルター、キッチンペーパー、ティッシュ等を用いてもよい。磨砕した生物体材料を含む塩化ナトリウム溶液の粘度が高い場合は、ガーゼを用いてもよい。【0013】次に、ろ液に10〜20倍量のエタノール(純度75%以上、好ましくは95%以上)を水相とエタノール相の界面が乱れないように静かに添加し、静置する。この際、エタノールは4℃で冷却しておくことが望ましい。エタノール添加後、エタノール相と塩化ナトリウム溶液相の界面に気泡が生じ、DNAは気泡に吸着され、DNAの周囲に細かい気泡が付着した状態でエタノール相に析出される(起泡分離)。エタノール相より析出したDNAをスポイト、ガラス棒等を用いて回収することにより、DNAを得ることができる。【0014】本発明の方法により抽出できたDNAの量および純度は公知の生化学的方法により測定することができる。例えば、DNAの濃度は、260nmの吸光度の測定により算出することができる。すなわち、[260nmにおける吸光度(A260)]×[DNA固有の計数]×[吸光度測定に用いたセルの光路長(mm)/10](μg/mL)の式により算出することができる。ここで、DNA固有の計数は、2本鎖DNAで50、1本鎖DNAで33である。また、DNAの純度は、[260nmにおける吸光度(A260)]/[280nmにおける吸光度(A280)]の式により算出することができる。通常、DNAをPCR等の実験目的で用いる場合、A260/A280値は、1.8以上が必要であり、1.5以下の場合は再精製が必要である。【0015】本発明により抽出されるDNAのA260/A280値は1.7以上、好ましくは1.8以上である。本発明のDNA抽出方法により抽出されるDNAは、高純度であり、PCR等の実験材料としても用いることができる。【0016】本発明は、本発明のDNA抽出方法を実施するためのキットも包含する。このキットは、すくなくとも塩化ナトリウム溶液、エタノール、ろ紙等のフィルター、チューブを含み、さらにすりおろし器、スポイト等を含んでいてもよい。塩化ナトリウム溶液濃度は前記の通りであり、またフィルターの種類も前記の通りである。【0017】【実施例】〔実施例1〕 ブロッコリーからのDNAの抽出DNA抽出液は、オートクレーブを用いて加熱処理したミリQ水1Lに塩化ナトリウム120gを溶解させて作製した(2M NaCl溶液)。ブロッコリーの芽の部分3〜5gを、氷浴上で乳鉢と乳棒を用いて固形物が認められなくなり青汁様になるまで、磨砕した(磨砕完了までの所要時間3分)。磨砕したブロッコリー液(1〜2mL)に、DNA抽出液を20mL添加しよくかき混ぜた。かき混ぜた液をコーヒーろ紙(カリタ社製)でろ過した(DNA抽出液添加からろ過までの所要時間1分)。ろ液の0.2mLをとりスクリューびんに入れ、4mLのエタノール(99.5%、関東化学株式会社製、特級)を静かに添加し静置した。界面付近で気泡が生じ、該気泡に白いDNAが析出して付着しているのが観察された。元々のブロッコリーの成分は水相中に残っていた。さらに、DNAが付着した気泡はエタノール相上部に浮上した。スポイトで下層の水相を除去した。さらに、析出したDNAをガラス棒を用いて回収した(エタノール添加からDNA回収までの所要時間3分)。【0018】生物材料の磨砕開始から、DNA回収までに要したトータルの時間は約7分であった。回収したDNAを1mlの2M NaCl溶液に溶解し、バイオラッド社製の吸光度計を用いてA260およびA280を測定した。DNA抽出を3度行い回収した2つのDNA溶液について、A260およびA280を測定した。濃度は、15.4μg/mL、9.5μg/mLおよび13.8μg/mLであり、A260/A280値は1.74、1.93および2.05であった。【0019】【発明の効果】本発明の方法によれば、容易に入手できる生物材料から容易かつ迅速にDNAを抽出することが可能である。この際、有機溶剤等の危険な試薬も必要とせず、遠心分離操作も必要とせず、またDNAの分解の原因となり得る加熱処理も不要であり、さらに得られたDNAを用いてPCR等の実験を行う際に干渉物質となり得る界面活性剤も不要である。実施例に示すように、本発明のDNA抽出法により得られたDNAの純度は十分高く、PCR実験等にも用いることが可能である。特に、本発明は、学校や博物館等における分子生物学の教育学習等に最適である。 (a) 植物の葉、芽、茎および根からなる群から選択される植物由来の生体材料を磨砕し、(b) 磨砕した生体材料に、タンパク質分解酵素も水不溶性有機溶剤も界面活性剤も添加することなく、生体材料磨砕液の5〜10倍量のDNA抽出試薬を添加し攪拌し、ここでDNA抽出試薬は0.5〜6Mの塩化ナトリウム溶液からなり、(c) 攪拌した溶液をろ過し、(d) ろ液に10〜20倍量のエタノールを添加し、(e) 水相とエタノール相の界面に起泡分離したDNAを回収し、(f) 回収したDNAを0.5〜6Mの塩化ナトリウム溶液に溶解させる、ことからなり、加熱処理を含まない、生体材料からのDNA抽出法であって、2Mの塩化ナトリウム溶液中で測定した場合のA260/A280値が1.8以上のDNA溶液を得る迅速かつ簡易な高純度DNA抽出法。


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