タイトル: | 公開特許公報(A)_魚鱗由来ゼラチン及びカルシウムアパタイトの製造方法 |
出願番号: | 2002364143 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C07K14/78,A23J1/06,C01B25/32,C07K1/14,A23L1/30 |
黒川 泰弘 小川 勝利 田中 一平 川島 恵利子 JP 2004059568 公開特許公報(A) 20040226 2002364143 20021216 魚鱗由来ゼラチン及びカルシウムアパタイトの製造方法 チッソ株式会社 000002071 黒川 泰弘 小川 勝利 田中 一平 川島 恵利子 JP 2002167714 20020607 7 C07K14/78 A23J1/06 C01B25/32 C07K1/14 A23L1/30 JP C07K14/78 A23J1/06 C01B25/32 Q C07K1/14 A23L1/30 A 4 OL 11 4B018 4H045 4B018LE03 4B018MD64 4B018MD74 4B018ME14 4B018MF01 4H045AA10 4H045AA20 4H045CA52 4H045EA01 4H045EA15 4H045FA71 4H045GA01 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は魚鱗からゼラチン及びカルシウムアパタイトを製造する方法に関する。詳しくは、工程が簡単で耐酸仕様の材質を必要とせず一般的な装置で実施可能な、低廉なコストで魚鱗由来の高品質ゼラチン及びカルシウムアパタイトを製造する方法に関する。【0002】【従来の技術】従来、動物骨や魚骨を原料とするゼラチンの工業的な製造方法としては、原料を粉砕し化学的に脱脂処理し、脱灰処理(カルシウム成分を化学的に除去処理することをいう)した後、アルカリで前処理し、次いで水でゼラチンを抽出する方法が知られている。また、高温の水蒸気で加圧(オートクレーブ)下で抽出処理する方法も知られている。これらの方法は、設備に耐腐食性や耐圧性が求められる上、高温加圧水処理の場合には、熱分解によってゼラチンが着色し、不純物も多く、ゼリー強度等の物理特性も低いという問題がある。魚皮や魚骨を原料とし、原料中の鱗や魚肉等をゼラチンを分解しないプロテアーゼで除去した後、脱脂処理および温水抽出してゼラチンを抽出し、更に抽出ゼラチンをリパーゼ処理する方法(例えば、特許文献1参照)も提案されているが工程が複雑である。尚、魚鱗よりカルシウムアパタイトを得る方法は、魚鱗を焼成して有機物を除き粉砕する方法及び魚鱗を酸で溶解して不溶解成分であるコラーゲンを除き、酸溶解液にアルカリ物質を添加して再沈殿させる方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。【0003】【特許文献1】特開平10−276680号公報【特許文献2】特開平8−104508号公報【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、工程が簡単で耐酸仕様の材質を必要とせず一般的な装置で実施可能な、低廉なコストで魚鱗由来の高品質ゼラチン及びカルシウムアパタイトを製造する方法を提供することである。【0005】【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記の課題を解決するため鋭意研究した。その結果、魚鱗原料を必要に応じて洗浄し、乾燥し、機械的に乾式または湿式粉砕した後、脱灰処理することなく100℃未満の温度の水に浸漬して、魚鱗中のゼラチンを抽出するゼラチンの製造方法、及びゼラチン製造後の魚鱗残さを用いるカルシウムアパタイトの製造方法によって課題が解決されることを知り、この知見に基づいて本発明を完成した。【0006】本発明は以下によって構成される。(1)魚鱗を脱灰処理することなく100℃未満の温度の水に浸漬して、魚鱗中のゼラチンを抽出することを特徴とするゼラチンの製造方法。【0007】(2)魚鱗が、ゼラチンを抽出する前に機械的に乾式または湿式粉砕されることを特徴とする(1)項記載のゼラチンの製造方法。【0008】(3)魚鱗の機械的な粉砕が、30℃以下の温度で行われることを特徴とする(2)項記載のゼラチンの製造方法。【0009】(4)(1)〜(3)項のいずれか1項記載の製造方法によるゼラチンの製造で生じる魚鱗残さを用いることを特徴とするカルシウムアパタイトの製造方法。【0010】【発明の実施の形態】本発明は、必要に応じて機械的に乾式または湿式粉砕した魚鱗を、化学的な脱灰処理(カルシウム成分を化学的に除去処理することをいう)なしに水に浸漬し、水抽出により魚鱗からゼラチンを製造する方法である。更に本発明は、ゼラチンを抽出した後の魚鱗から粗製カルシウムアパタイトを製造する方法である。粗製カルシウムアパタイトは精製することによって高純度カルシウムアパタイトとすることが可能である。本発明の方法で製造されるゼラチンは食品、医用カプセル等に好適に利用できる他にコラーゲンペプチドの原料として用いることができる。また、カルシウムアパタイトは食品、健康食品、歯磨き粉、触媒担体として利用できる。尚、本発明で粗製カルシウムアパタイトとは、カルシウムアパタイトを主成分とし有機化合物を少量含む未精製の混合物をいう。主成分とは、混合物中に占めるカルシウムアパタイトの量が最も多いことを意味する。また、高純度カルシウムアパタイトとは、粗製カルシウムアパタイトを精製したものをいう。【0011】本発明で用いる魚鱗を得るための魚種は特に限定されない。水産加工場の選別ラインよりロータリースクリーン等で現在も鱗が回収されている鰯や秋刀魚や、水産加工場でフィーレや切り身加工の際にジェット水流で鱗を剥ぐ真鯛等を例示することができる。この他にもスケソウ鱈、エソ、鮭、ニシン、鯉、テラピア等の鱗も使用することができる。本発明で用いられる魚鱗はその鮮度及び純度ができるだけ高いものが好ましい。青魚である秋刀魚や鰯の水産加工場より回収された魚鱗中には魚体や魚肉、巻き網漁で混在した鰭、海藻、その他の夾雑物が含まれる場合が多く、回収後直ちに、これらの夾雑物を水洗等により除くことが好ましい。魚肉の自己消化や鱗粉により発生した有臭物質付着や着色が鱗に生じると、得られるゼラチン及びカルシウムアパタイトの品質が損なわれる恐れがある。高純度のゼラチン及び粗製カルシウムアパタイトを得るためには、かかる魚肉や鰭、海藻等の夾雑物は、できるだけ少ないことが好ましい。【0012】本発明では、魚鱗を粉砕せずにゼラチンの製造に用いることができる。しかし、ゼラチンの回収率を高めるため、予め洗浄して夾雑物を除いた後の洗浄鱗を、機械的に乾式または湿式粉砕することが好ましい。粉砕方法は、水分を含んだままの魚鱗を粉砕する湿式粉砕、魚鱗を乾燥させた後に粉砕する乾式粉砕の何れであってもよい。魚鱗の粉砕に用いる粉砕機の種類は特に限定されない。例えば、中速回転運動機構を備えた衝撃やせん断で粉砕するタイプの粉砕機、及び高速回転運動機構を備えた衝撃にて粉砕するタイプの粉砕機が好ましい。具体的には、セイシン企業社製インペラーミル及び中央化工機社製振動ミルが好適に使用できる。魚鱗の湿式粉砕には、振動ミルやボールミル等が好適に使用できる。粉砕時の温度は、魚鱗の鮮度低下を避けるため100℃未満が好ましく、30℃以下がより好ましい。粉砕時の温度上昇を抑える目的で液体窒素等にて鱗を冷凍状態にして粉砕することも可能であり、冷凍状態であれば、中高速回転運動機構以外の往復、旋回、低速回転、ロール、自公転、容器回転、容器振動、ジェット噴射等の運動機構を備えた粉砕機機種も使用可能となる。乾式または湿式粉砕された魚鱗は、一般に綿状乃至粉末状の形状となる。【0013】本発明の方法においては、魚鱗を脱灰処理することなく100℃未満、好ましくは55℃以上100℃未満、より好ましくは65℃以上100℃未満、の温度の水に浸漬することによって、魚鱗中のゼラチンが抽出される。抽出水の温度が100℃未満であるため、製造設備が簡単で低コストであり、実施が容易である。水抽出に用いられる水は、飲料水、工業用水、蒸留水、イオン交換水等特に限定はされないが、酸またはEDTAのようなカルシウムと反応して溶解させる物質を含まないことが好ましい。【0014】本発明の方法は、脱灰処理に用いる酸の使用がないため、従来法に比べ工程が短く、得られるゼラチンの脱塩処理が不要であり、コストを低くすることができる。また、脱灰処理に伴うゼラチンのロスがないため、これらの回収率が高くなり効率的である。尚、得られるゼラチンを、必要に応じて公知の方法により脱色、脱臭して精製することもできる。【0015】本発明によって製造されるカルシウムアパタイトは、非晶性及び/または結晶性カルシウムアパタイト(カルシウム欠損の炭酸型を含む)、非晶性及び/または結晶性第三燐酸カルシウム、その他燐酸カルシウム化合物の混合物である。これら化合物の含有比率は魚種、漁期及び抽出分離後の精製法により異なる。本発明によって製造されるカルシウムアパタイトの粉末は、ポーラスで比表面積が大きく、重金属捕捉能力が高い。また生体適合性に優れるので歯科用充填材等の医学的な用途に適している。カルシウム補強の食品や健康食品としても最適である。【0016】粗製カルシウムアパタイトを精製して高純度カルシウムアパタイトを製造する方法としては、空気中で600℃以上の温度で焼成して、少量含まれる有機物を熱分解除去する方法、または酸溶解後に不溶解成分をろ過等の手段で分離した溶解液にアルカリ物質を添加して高純度カルシウムアパタイトを再沈殿させる方法が好ましい。また、アルカリにて残存せる蛋白質を溶解除去する方法も好ましい。酸を用いる処理の場合は、カルシウム等と反応して不溶性の塩を生成しない酸の使用が好ましい。本発明で好ましい酸の種類は塩酸と酢酸であり、該酸の濃度は処理温度によっても変動するが、一般的に0.1mol/l〜10mol/l程度の濃度が好ましい。【0017】粗製カルシウムアパタイト中に残存する蛋白質の溶解除去に好適に用いられるアルカリとしては、食品に使用可能であれば特に限定されない。例えば水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの食品に用いられるグレードが挙げられる。使用する濃度はその後のアルカリ除去または中和を考え極力希薄な方が望ましい。使用するアルカリ濃度と作用時間は、粗製カルシウムアパタイトの粒度が細かい程、低アルカリ濃度、短作用時間であることが好ましいが、蛋白質の溶解除去には相応のアルカリ濃度と処理時間が必要である。また、アルカリ処理の影響を軽減するため、蛋白分解の目的で1種の酵素または複合酵素を使用してもよい。使用する酵素の種類は食品に使用できるものであれば特に制限されないが、一般的には細菌プロテアーゼ等が使用できる。【0018】【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。実施例及び比較例中、特に断らない限り%は重量%を表す。また、実施例、比較例で用いられた試験方法は以下の通りである。(a)ゼリー強度の測定測定はJIS K 6503「にかわ及びゼラチン」の方法に準じて行った。(b)灰分の測定粗製カルシウムアパタイトの乾燥粉末約10gを予め600℃で恒量とした磁性ルツボ中に入れルツボごと精秤した。該ルツボを200℃電気炉に入れて600℃まで昇温させ、600℃で6時間焼成した後デシケーター中で放冷した後、灰分重量を測定した。【0019】実施例1(真鯛鱗の採取、洗浄、乾燥)フィーレ加工する際に真鯛を1匹づつ水流ジェット式鱗剥離機にかけて、真鯛鱗を水と共にSUS製網カゴに捕集し、水できれいに洗浄し、天日乾燥した(水分8%)。この真鯛鱗を更に105℃で12時間乾燥し水分を除いたものを、ケルダール分解して、窒素含有率(%)を求めた。コラーゲン量はケルダール法窒素測定値に1963年米国農商務省発表食品成分表の窒素分からのコラーゲン換算係数5.55を掛けて算出した。また、カルシウムアパタイト量はカルシウムアパタイトの分子式をCa10(PO4)6(OH)2として、ICP分析の結果に基づき計算により求めた。鱗を硝酸、過塩素酸ソーダで分解後に塩酸に溶解させたものをICP分析して、CaとP量を測定した。P量をPO4に換算した値にCa量を加え、更に水酸基に相当する量を補正して求めた。その結果、真鯛鱗は、コラーゲン42.1%、カルシウムアパタイト57.9%の組成であり、この数値を基準値に用いて回収率を算出した。【0020】(真鯛鱗の冷凍粉砕)粉砕にはフィーダー、ターボミル、サイクロン、バグフイルターよりなるシステム(セイシン企業社製)を使用した。液体窒素にてシステム全体を冷却状態にしてから、フィーダーより真鯛乾燥鱗をフィードした。ターボミル回転数は6,000rpm、出口温度を−10〜−30℃に管理しながらフィード量を調節した。得られた粉砕鱗は殆どが綿状で、嵩比重が0.066と嵩高く、粒径35μm付近の粉末含有量が2%、水分含有量が7.6%であった。尚、嵩比重はJIS K 6721−1977「塩化ビニル樹脂試験方法」に記載された「かさ比重」の測定方法に準じて求めた。【0021】(ゼラチン抽出と分離)粉砕鱗94gに蒸留水1,250mlを加えて、94℃で1時間ゼラチンを抽出した。ゼラチン量は粗製カルシウムアパタイト粉末をろ過分離した溶液を凍結乾燥して得た粉末重量を測定して求めた。粗製カルシウムアパタイト量は水抽出溶液をろ過分離し、水洗、105℃で12時間乾燥して得た不溶解分の粉末重量を測定して求めた。真鯛鱗からのゼラチンと粗製カルシウムアパタイトの回収率は、原料真鯛鱗の組成をコラーゲン42.1%、粗製カルシウムアパタイト57.9%とし、これらが回収されたときの回収率をそれぞれ100%として、計算により求めた。尚、コラーゲンはゼラチンとして回収されるものとした。また、ゼラチンのゼリー強度と粗製カルシウムアパタイトの灰分を測定した。尚、ゼリー強度測定時の6.67%ゼラチン水溶液のpHは25℃で6.0〜6.5であった。試験結果を表1に記載した。【0022】実施例2ゼラチンの抽出時間を1時間から2時間に変更した以外は実施例1と同様に操作を実施した。試験結果を表1に記載した。【0023】実施例3実施例1の冷凍粉砕を常温(20〜30℃)粉砕に変更した以外は実施例1と同様に操作を実施した。粉砕システムには冷凍粉砕と同じものを使用した。室温20℃でターボミル回転数6,000rpmでミルの外筒が30℃以下で運転できる様に調節した。得られた粉砕鱗は極く僅かに粉末を含む綿状で、嵩比重が0.060と嵩高く、粒径35μm付近の粉末含有量が1%、水分含有量が7.7%であった。試験結果を表1に記載した。【0024】実施例4粉砕用機器を実施例1〜3で使用したシステムから中央化工機社製MB−1型振動ミルに変更して常温(20〜30℃)粉砕し、ゼラチン抽出温度を60℃とした以外は実施例3と同様に操作を実施した。尚、粉砕はSUS粉砕筒(3.6リットル)に粉砕媒体としてSUSロッド16本を充填(充填率60%)し、真鯛乾燥鱗100gに水400gを加えて60分間30℃以下で粉砕した。レーザー式粒度分布計での測定では、粉砕鱗の粒度は4.1〜120μmに分布していた。試験結果を表1に記載した。【0025】実施例5ゼラチン抽出温度を60℃から70℃に変更した以外は実施例4と同様に操作を実施した。試験結果を表1に記載した。【0026】実施例6ゼラチン抽出温度を60℃から80℃に変更した以外は実施例4と同様に操作を実施した。試験結果を表1に記載した。【0027】実施例7ゼラチン抽出温度を60℃から94℃に変更した以外は実施例4と同様に操作を実施した。試験結果を表1に記載した。【0028】【表1】【0029】表1からわかるように、ゼラチン抽出時間は1時間より2時間の方が回収率が高かった。尚、ここには示していないが抽出時間を2時間以上に長くしても回収率の上昇は僅かであり、却ってゼリー強度が低下する傾向が観察された。また、ゼラチン抽出温度は、ゼリー強度の点から70℃以上、94℃以下の80℃付近が最適温度を示した。尚、動物の皮や骨を用いたアルカリ前処理法及び酸前処理法の場合は、ゼラチン抽出温度tpゼリー強度の関係は60℃より70℃の方が高く、80℃の方がより高く、94℃では70℃より低くなった。ゼラチン抽出後のろ過残分である粗製カルシウムアパタイト粉末は回収率が100%を超えているものを600℃焼成した場合、灰分が純白でなく灰色を呈することから有機物が含有されていると推定された。【0030】実施例8(片口鰯鱗の採取、洗浄、乾燥)水産加工場の選別ラインの末端に取り付けられたロータリースクリーンから排出された片口鰯鱗から魚体等大きな夾雑物を目視除去した後、水で綺麗に洗浄し、乾燥し乾燥鱗を得た。この片口鰯鱗を更に105℃で12時間乾燥し水分を除いたものを、ケルダール分解して、窒素含有率(%)を求め実施例1の場合と同様に係数5.55を乗じて、鱗中のコラーゲン量を算出した。片口鰯鱗の組成はコラーゲン36.6%、粗製カルシウムアパタイト54.2%であった。【0031】(片口鰯鱗の常温粉砕)洗浄乾燥した片口鰯鱗をダルトン社製パワーミルにてほぐした(平均水分10.5%)後、室温20℃でインペラーミル(IMP−250型、セイシン企業社製)を使用し回転数6,000rpmで粉砕した。粉砕鱗を篩分測定した粒度分布は8mm〜2mmが53.3%、2mm〜1mmが25.7%、1mmパスが21%であった。【0032】(ゼラチン抽出と分離)粉砕鱗94gに蒸留水1,250mlを加えて、94℃で1時間抽出を行った。ゼラチン量は粗製カルシウムアパタイト粉末をろ過分離した溶液を凍結乾燥して得た粉末重量を測定して求めた。粗製カルシウムアパタイト量は水抽出溶液をろ過分離し、水洗し、105℃で12時間乾燥して得た不溶解分の粉末重量を測定して求めた。片口鰯鱗からのゼラチンと粗製カルシウムアパタイトの回収率は、原料片口鰯鱗の組成をコラーゲン36.6%、粗製カルシウムアパタイト54.2%とし、これらが回収されたときの回収率をそれぞれ100%として計算により求めた。尚、コラーゲンはゼラチンとして回収されるものとした。また、ゼラチンのゼリー強度を測定した。ゼリー強度測定時の6.67%ゼラチン水溶液のpHは25℃で6.0〜6.5であった。試験結果を表2に記載した。【0033】実施例9インペラーミルの回転数を6,000rpmから5,000rpmに変更した以外は実施例8と同様に操作を実施した。粉砕鱗の粒度分布は、8mm〜2mmが56.4%、2mm〜1mmが24.7%、1mmパスが18.8%であった。試験結果を表2に記載した。【0034】実施例10インペラーミルの回転数を6,000rpmから3,000rpmに変更した以外は実施例8と同様に操作を実施した。粉砕鱗の粒度分布は、8mm〜2mmが63.8%、2mm〜1mmが20.3%、1mmパスが16%であった。試験結果を表2に記載した。【0035】実施例11実施例8で用いられたと同様の片口鰯鱗を家庭用の電動コーヒーミルにて粉砕した鱗を篩い分けして、8mmパス〜2mmオンの粉砕鱗を用いた以外は、実施例8と同様に操作を実施した。試験結果を表2に記載した。【0036】実施例12実施例8で用いられたと同様の片口鰯鱗を家庭用の電動コーヒーミルにて粉砕した鱗を篩い分けして、2mmパス〜1mmオンの粉砕鱗を用いた以外は、実施例8と同様に操作を実施した。試験結果を表2に記載した。【0037】【表2】【0038】表2からわかるように、ゼラチン回収率は片口鰯鱗の粉砕の程度が大き程高い結果を示した。尚、ゼラチン抽出温度が94℃と高く、ゼラチン抽出時間が1時間と短いためにゼリー強度は70g〜94gと低い値を示した。【0039】実施例13実施例10と同様の条件で得た粉砕鱗を用いて、抽出温度を60℃とした以外は実施例10と同様に操作を実施した。試験結果を表3に示した。【0040】実施例14実施例10と同様の条件で得た粉砕鱗を用いて、抽出温度を70℃とした以外は実施例10と同様に操作を実施した。試験結果を表3に示した。【0041】実施例15実施例10と同様の条件で得た粉砕鱗を用いて、抽出温度を80℃とした以外は実施例10と同様に操作を実施した。試験結果を表3に示した。【0042】【表3】【0043】実施例16実施例8記載の乾燥鱗を粉砕せずに用いて、抽出温度を60℃とした以外は実施例8と同様に操作を実施した。試験結果を表4に示した。【0044】実施例17実施例8記載の乾燥鱗を粉砕せずに用いて、抽出温度を70℃とした以外は実施例8と同様に操作を実施した。試験結果を表4に示した。【0045】実施例18実施例8記載の乾燥鱗を粉砕せずに用いて、抽出温度を80℃とした以外は実施例8と同様に操作を実施した。試験結果を表4に示した。【0046】実施例19実施例8記載の乾燥鱗を粉砕せずに用いて、抽出温度を94℃とした以外は実施例8と同様に操作を実施した。試験結果を表4に示した。【0047】【表4】【0048】表3、表4の結果は、粉砕鱗と洗浄乾燥鱗は共に抽出温度が60℃、70℃と高くなる程ゼラチン回収率が高くなりゼリー強度も高くなることを示した。また、最大のゼリー強度を得る抽出温度は真鯛鱗と同様に80℃付近と推定された。尚、粉砕鱗と洗浄乾燥鱗の比較では明らかに粉砕鱗の方が回収率が高い結果であった。【0049】比較例1洗浄した片口鰯乾燥鱗100gを、0.6mol/l塩酸1,500mlに投入し、室温(20〜25℃)で24時間緩攪拌しながら脱カルシウム処理を行った。不溶解分であるコラーゲン成分をろ過して集め、0.3mol/l塩酸にて2回、水にて1回洗浄し粗コラーゲンを得た。得られた粗コラーゲンに蒸留水1,250ml加え、抽出温度70℃で2時間ゼラチンを抽出した。不溶分をろ過して取除いた後のゼラチン溶液を凍結乾燥して固体ゼラチンとした。試験結果を表5に示した。【0050】比較例2比較例1のゼラチン抽出後の液をろ過し、ろ過残分に蒸留水1,250ml加え、更に80℃で2.5時間抽出した。不溶分をろ過して取除いた後のゼラチン溶液を凍結乾燥して固体ゼラチンとした。試験結果を表5に示した。【0051】比較例3比較例2のゼラチン抽出後の液をろ過し、ろ過残分に蒸留水1,250ml加え、更に94℃で5時間抽出した。不溶分をろ過して取除いた後のゼラチン溶液を凍結乾燥して固体ゼラチンとした。試験結果を表5に示した。【0052】【表5】【0053】比較例1〜3の脱灰処理で得られた粗コラーゲン由来のゼラチンは、実施例の同じ抽出温度で、脱灰処理なしで得られた本発明によるゼラチンと比べ、明らかに回収率が低くゼリー強度も低かった。この原因としては、脱灰処理時に酸によるゼラチンの加水分解が一部生じたものと推定される。この結果から明らかなように、脱灰処理で得られた粗コラーゲン由来のゼラチンは、製造工程が煩雑で回収率も低く、品質も満足できるものではなかった。【0054】【発明の効果】本発明の製造方法は、魚鱗を脱灰処理(カルシウム成分の化学的除去処理)なしに、必要に応じて機械的に乾式または湿式粉砕した後に、大気圧下、100℃未満の水でゼラチンを抽出する方法である。このため、耐酸仕様の装置材質を必要とせず、一般的な装置材質でのゼラチンの製造が可能である。その上、本発明の製造方法は、工程数が脱灰処理を伴うプロセスより少なく、低廉なコストでゼラチン及びカルシウムアパタイトを製造するのに好適な方法である。 魚鱗を脱灰処理することなく100℃未満の温度の水に浸漬して、魚鱗中のゼラチンを抽出することを特徴とするゼラチンの製造方法。 魚鱗が、ゼラチンを抽出する前に機械的に乾式または湿式粉砕されることを特徴とする請求項1記載のゼラチンの製造方法。 魚鱗の機械的な粉砕が、30℃以下の温度で行われることを特徴とする請求項2記載のゼラチンの製造方法。 請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法によるゼラチンの製造で生じる魚鱗残さを用いることを特徴とするカルシウムアパタイトの製造方法。 【課題】工程が簡単で耐酸仕様の材質を必要とせず一般的な装置で実施可能な、低廉なコストで魚鱗由来の高品質ゼラチン及びカルシウムアパタイトを製造する方法を提供する。【解決手段】魚鱗原料を必要に応じて洗浄し、乾燥し、機械的に乾式または湿式粉砕した後、脱灰処理することなく100℃未満の温度の水に浸漬して、魚鱗中のゼラチンを抽出するゼラチンの製造方法、及びゼラチン製造後の魚鱗残さを用いるカルシウムアパタイトの製造方法。【選択図】なし。