タイトル: | 特許公報(B2)_火傷による損傷皮膚改善用外用剤 |
出願番号: | 2002360219 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61K 35/56,A61P 17/02,A61P 43/00 |
本多伸介 JP 4586178 特許公報(B2) 20100917 2002360219 20021212 火傷による損傷皮膚改善用外用剤 三省製薬株式会社 000176110 本多伸介 20101124 A61K 35/56 20060101AFI20101104BHJP A61P 17/02 20060101ALI20101104BHJP A61P 43/00 20060101ALI20101104BHJP JPA61K35/56A61P17/02A61P43/00 111 A61K 35/00-35/76 WPI JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2000−007548(JP,A) 特公昭48−019942(JP,B1) 特開昭58−088317(JP,A) 特開平06−240574(JP,A) 特開昭60−048995(JP,A) 特開平08−009902(JP,A) 特開平10−271970(JP,A) 特開平03−139291(JP,A) 中国特許出願公開第1037084(CN,A) 1 2004189676 20040708 8 20051209 遠藤 広介 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、損傷皮膚改善用外用剤に関するものであって、より詳しくは、棘皮動物の抽出物を有効成分とする創傷治癒効果に優れ、患部の疼痛と熱感を鎮静する効果に優れた火傷による損傷皮膚改善用外用剤に関する。【0002】【従来の技術】近年の高齢化の問題に伴い、いわゆる寝たきり老人の人口が増えている。これらの中でも外科手術で治療を受ける患者は、一般に体力の低下が著しく、周囲から多くの介護を必要とする。とりわけ、皮膚が損傷した患者は、術部の自然治癒に依存することなく、より早期の回復を望んでいる。このような事情に鑑み、近年になって漸く治療の質の問題、すなわちクオリティ オブ コントロール(QOL)が医療現場でも考慮されるようになってきた。【0003】創傷治癒に関しては、副作用の懸念される内服ではなく、細胞増殖等の創傷治癒促進剤を配合した外用剤を直接患部に適用することが種々試みられている。例えば、特開昭63−107935号公報、特開平1−505888号公報、特開平3−106823号公報および特開平3−115297号などがあげられる。【0004】創傷とは、胃腸の潰瘍、外科的療法による切開、熱や化学薬品により誘発された火傷、裂傷、床擦れと呼ばれる圧創またはただれ等によって生じた皮膚表面組織の損傷である。従って、塗布時に染みず、痛みがないという条件が重要視される。そういったことから最近では、外用剤の剤型もクリームや軟膏剤にとどまらず、患部を柔軟に保護でき、より快適な使用性を追求したパッドや貼付剤が使用されるようになっている。例えば、特開平3−77829号公報、特開平3−289961号公報、特開平6−145060号公報および特開平6−240574号公報などが挙げられる。【0005】しかしながら、これら従来製剤の欠点は、効果面においては即効性に劣るということ、治癒時の疼痛や不快な熱り感を鎮静できないことなどが挙げられ、使用面においては、貼付製剤の場合に生じる患部のムレ、皮膚刺激による中断などの問題が挙げられる。【0006】そこで発明者はこれらの問題を解決すべく、検討を重ねたところ、棘皮動物の抽出物に優れた治療特性を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明によれば、イトマキヒトデの水抽出物につき蛋白分解酵素で処理した液を有効成分とする創傷治癒効果に優れ、かつ、患部の熱感を鎮静する効果に優れた火傷による損傷皮膚改善用外用剤が提供される。【0008】【本発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前述した従来からの欠点を抜本的に解決するもので、創傷治癒効果に優れ、患部の疼痛および熱り感を鎮静する効果に優れた安全性の高い外用剤を提供することにある。【本発明を解決するための手段】本出願人は、棘皮動物由来の抽出物にひび、あかぎれ等の効果があることを見出し、当該知見に基づいて特許出願した(特開2000−7548号公報)が、さらにその素材特性を追試する過程において、損傷をうけた皮膚に対する細胞形成能を有することを見出し、本発明を完成するに至った。特に特徴的なのは、本発明の適用によってダメージを受けた皮膚の表皮細胞が正常化する過程で、先ずは疼痛が鎮静化し、その後に肉芽形成が促進される点である。【0009】すなわち、本発明によれば、イトマキヒトデの水抽出物につき蛋白分解酵素で処理した液を有効成分とする創傷治癒効果に優れ、かつ、患部の熱感を鎮静する効果に優れた火傷による損傷皮膚改善用外用剤が提供される。【0011】【発明の実施の形態】本発明で使用される棘皮動物の抽出物は、有棘目に属するイトマキヒトデで抽出することによって得られる抽出物である。本発明の有効成分である棘皮動物抽出物の好適な製造方法について、以下に述べる。【0012】先ず、原料であるヒトデに水を加え、室温で約10時間乃至24時間、特に好ましくは約1時間〜3時間抽出した後、ろ液をpH3.0乃至5.0に調整し、ろ過する。次に、このろ液をpH8.0に調整し、蛋白質分解酵素を加えて分解後、さらにpH6.0に調整し、限外ろ過する。最後にこの液につきメンブランフィルターを用いて除菌ろ過し、ろ液を滅菌容器に充填する。この場合、特異な臭いを抑えるためには、生きたヒトデを使用に供するのが好ましい。【0013】本発明において、前記棘皮動物の抽出物の配合量は、クリーム、ローション、乳液、パック、化粧水、エッセンス等の化粧品の場合と、軟膏剤、パップ剤、プラスター剤等の外用剤として使用する場合のいずれにおいても、製剤全体に対して0.001ないし30重量%、好ましくは0.1ないし5重量%の範囲で配合される。配合量が0.001重量未満の場合は、損傷皮膚患部の改善作用が不十分であり、また、30重量%を越えて用いてもそれ以下の場合と特に効果上の際はなく、この場合は経済的に不利であるという問題がある。【0014】本発明の外用剤の剤型は、外用施用上適するものであれば特に制限はなく、先にも挙げたように、パップ剤、プラスター剤、ペースト剤、クリーム、軟膏、エアゾール剤、乳剤、ローション、乳液、エッセンス、パック、ゲル剤、パウダー、ファンデーション、サンケア、バスソルトなどの医薬品、医薬部外品ならびに化粧品として公知の形態で幅広く使用に供されるものであるが、適用部位が損傷した皮膚であることから、好適には苦痛を伴わず、使い心地の良い液状系のローション、エアゾールおよびエッセンスなどが好適である。【0015】さらに、本発明の外用剤を調製する場合、皮膚損傷部位に対して安全に使用できる創傷治癒促進効果を有する公知の成分を併用する態様を含む他、通常に用いられる種々の公知の有効成分、例えば、塩化カルプロニウム、セファランチン、ビタミンE、ビタミンEニコチネート、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、ショウキョウチンキ、トウガラシチンキ等の末梢血管拡張剤、ヒノキチオール、塩化ベンザルコニウム、ウンデシレン酸等の抗菌剤、副腎皮質ホルモン、ε−アミノカプロン酸、塩化リゾチーム、グリチルリチン、アラントイン等の消炎剤、胎盤抽出物、甘草抽出物、紫根エキス、乳酸菌培養抽出物などの動物・植物・微生物由来の各種抽出物等を本発明の目的を損なわない範囲で、その時々の目的に応じて公知の適宜添加して使用することができる。さらに、前述の医薬品、医薬部外品、化粧品には公知の有効成分に加え、油脂類などの基剤成分のほか、必要に応じて公知の保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、香料、着色剤等種々の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で併用することができる。【0016】【実施例】次に、製造例、効果実験および処方例を開示して本発明を説明するが、これらの開示は本発明の好適な態様を示すものであって、本発明を何ら限定するものではない。【0017】<製造例1>生きたイトマキヒトデ1部に対して水3部を加え、室温で約3時間抽出した。この液に蛋白質分解酵素(アクチナーゼE,1×106PU/g)を加えて分解後、限外ろ過してエキス2.5Lを得た。【0018】<製造例2>イトマキヒトデを細切し、細切物1kgに3Lの水を加え、室温で約15時間抽出した。この液に蛋白質分解酵素(アクチナーゼE,1×106PU/g)を加えて分解後、限外ろ過してエキス2.5Lを得た。【0019】<参考例1>イトマキヒトデを細切し、細切物1kgに4Lの水を加え、室温下、20分間ホモジナイズし、遠心分離後の上清をろ過し、エキス3Lを得た。【0020】<参考例2>イトマキヒトデ10kgに防腐剤含有水10Lを加え1週間浸漬した。浸漬液をろ過後、エキス9.5Lを得た。【0021】<参考例3>ニチリンヒトデを細切し、細切物1kgに50%エタノール水3Lを加え、約2時間抽出し、濾過後、減圧下にエタノールを除去した(凍結乾燥すると38gの抽出物を得る)。濃縮液に水1Lを加え、水を飽和したブタノール500mLで洗浄し、水槽部を凍結乾燥して凍結乾燥物6gを得た。【0022】<参考例4>オニヒトデを細切し、細切物5Kgをクロロホルム−メタノール混液(1:4)5Lで約2時間抽出し、濾過して有機溶媒抽出液とヒトデ残渣を得た。有機溶媒抽出液を濃縮し、水2Lを加え、水を飽和した酢酸エチル−ブタノール混液(1:1)1Lで洗浄後、水槽を半量に濃縮して水性エキスを得た。ヒトデ残渣は風乾後粉砕して、水5Lで約2時間抽出し、遠心分離して上清をとった。この上清を上の水性エキスと混合し、エキス5Lを得た。【0023】<参考例5>キヒトデを細切し、細切物5Kgにアセトン2Lを入れ、水分と脂肪を取り除いた。30分後に濾過して得たヒトデ細切物を風乾し、粉砕した後水5Lで約2時間抽出後、遠心分離してエキス3Lを得た。【0024】<試験例1> リポキシゲナーゼ阻害活性試験a)試験方法測定は、「Holman,R.T.」の方法(Methods of Biochemical Analysis、Vol.II,113(1958))に準拠して実施した。所定の濃度(最終濃度500単位/3.0ml)のリポキシゲナーゼを含む0.2Mのホウ酸緩衝液に試料として<製造例1>及び<製造例2>、<参考例1>乃至<参考例5>のそれぞれを個別に加えて調製し、試験に供した。基質として、一定量のリノール酸を加え、酵素反応を開始した。酵素反応開始より3分経過時に、リポキシゲナーゼにより生成するリノール酸の過酸化物由来の吸光度(波長:234nm)変化を測定することにより、各試料のリポキシゲナーゼ阻害活性を測定した(各試料の測定回数は10回)。コントロールとしては、試料を加えない反応群を使用した。また、ブランクとして、リポキシゲナーゼの代わりにその溶媒のみを加えた反応群を使用した。【0025】b)試験結果と考察結果を表1に示したとおり、本発明の有効成分には明らかなリポキシゲナーゼ阻害作用があり、その作用は濃度依存的であった。このことから、生体内において、組織の損傷に対する抑制効果が示唆される。【0026】【表1】【0027】<試験例2> 火傷に対する治療試験a)試験方法火傷の患者を対象に、本発明のローション(処方例2)を朝晩の1日2回、塗布し、1カ月後に皮膚の改善度を調べた。試験は20名の軽度の局所的な火傷の対象患者を試験薬剤投与群(10名)と基剤投与群(10名)とにわけて実施した。その際の評価については、以下の基準で本発明および基剤の塗布開始時に対する改善度合いを目視で判定した。【0028】<判定基準>顕著に改善:試験開始時に比べ肌の損傷度が著しく改善し、疼痛及び不快な熱り感が消失かなり改善:試験開始時に比べ肌の損傷度が明らかに改善し、疼痛及び不快な熱り感がほんど消失やや改善 :試験開始時に比べ肌の損傷度がやや改善し、疼痛及び不快な熱り感がわずかに消失不変 :試験開始時に比べ肌の損傷度は改善せず、疼痛及び不快な熱り感もほとんど消失しなかった。悪化 :試験開始時に比べ肌の損傷度が悪化し、疼痛又は熱り感が増強した。【0029】b)試験結果と考察ローション使用前に対する皮膚の改善度を上記判定基準で評価した結果、本発明のローションに明らかな損傷皮膚の治癒改善効果が認められた。また、連続使用による皮膚異常は何ら認められなかった。結果を表2に示す。【0030】【表2】【0031】【処方例】以下に本発明の処方例を挙げる。なお、処方例中、「適量」とは処方全体が100%重量%になる量を意味する。<処方例1>クリーム1【0035】<処方例2>ローション (重量%)1. 製造例2抽出物 2.002. グリセリン 5.003. 1,3−ブチレングリコール 6.504. ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル 1.20 (20.E.O)5. エチルアルコール 8.006. センブリエキス 0.017. パラオキシ安息香酸エステル 0.108. 精製水 適 量【0036】<処方例3>クリームジェル (重量%)1. 製造例2抽出物 3.002. ポリエチレングリコール1500 5.003. ステアリン酸ジエタノールアミド 5.004. ステアリン酸 5.005. ミリスチン酸 0.506. ヤシ油 15.007. 天然ビタミンE 0.048. パラオキシ安息香酸エステル 0.209. dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム液 5.0010.エデト酸二ナトリウム 0.0111.精製水 適 量【0039】<処方例4>エッセンス (重量%)1. 製造例1抽出物 0.502. 製造例2抽出物 0.503. イソプロパノール 0.504. ベンジルアルコール 0.055. ケフィラン水溶液 1.506. ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド 2.007. ステアリン酸 0.508. リノレン酸 0.509. アボガド油 2.0010.タートル油 3.0011.天然ビタミンE 0.0412.パラオキシ安息香酸エステル 1.0013.1%カルボキシビニルポリマー溶液 5.0014.胎盤抽出液 0.1415.エデト酸二ナトリウム 0.0116.精製水 適 量上記の処方1ないし4は、いずれも表1に示したのと同様に、本発明において満足する効果を有する製剤であることが確認された。【0040】【発明の効果】本発明によれば、イトマキヒトデ、オニヒトデ、ニチリンヒトデおよびキヒトデの1種または2種以上から選択された棘皮動物の水抽出物につき蛋白分解酵素で処理した液を有効成分とする火傷による損傷皮膚改善用外用剤が提供され、この外用剤は優れた創傷治癒促進効果、及び皮膚の熱感を鎮静化する効果に著しく優れているものである。 イトマキヒトデの水抽出物につき蛋白分解酵素で処理した液を有効成分とすることを特徴とする火傷による損傷皮膚改善用外用剤。