タイトル: | 特許公報(B2)_酒類の地下直下式貯蔵庫 |
出願番号: | 2002345696 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12H1/22 |
天木 嘉清 世古 富夫 JP 3646804 特許公報(B2) 20050218 2002345696 20021128 酒類の地下直下式貯蔵庫 天木 嘉清 593143924 加藤 誠 100087608 天木 嘉清 世古 富夫 20050511 7 C12H1/22 JP C12H1/22 7 C12H 1/22 特開2002−115408(JP,A) 特開2002−262853(JP,A) 特開2003−093037(JP,A) 特開平10−084940(JP,A) 特開平04−272578(JP,A) 3 2004173629 20040624 6 20021128 内田 淳子 【0001】【発明の属する技術分野】 この発明はワインなどの酒類を貯蔵する貯蔵庫に関するものであり、特に地下に設けた貯蔵設備に簡易かつ効率的に貯蔵可能な貯蔵庫に関するものである。【0002】【従来の技術】 一般にワインと呼ばれる葡萄を原料とした果実酒を始めとして、広くアルコール性飲料と呼ばれる酒類は、その性質が非常にデリケートで保存には極めて細かな気づかいが必要であることが知られている。例えばワインであれば、直射日光が当ることは厳禁であるし、その温度は摂氏10度から18度程度を常時保つことが要求され、適当な湿度(70〜90%)が必要であるし、振動を与えず、空気に触れず、雑菌が入らないことという厳しい条件が求められる。【0003】 他方酒類は、醸造や蒸留して出来たてのものを楽しむこともあるが、長年保存して熟成を待ってから味わうことにより、より深みのある熟成の度合いが増したものを楽しむことが酒の味わい方の好ましいスタイルであると定評がある。ワインだけでなく、ブランデーなどの洋酒や泡盛の古酒などもこのような楽しみ方が定着している。前記したように、酒類の保存には極めてデリケートな配慮が必要で、長年これらを貯蔵して保存するには、極めて長期的で繊細な管理体制が必要となる。【0004】 このような保存に必要な条件を満たすことは通常の場所では困難で、専用のセラー(貯蔵庫)を設け、この中で管理して保存することが一般的になされてきた。様々な条件を満たすそのセラーとしては、光の当らない、温度の安定している地下壕、洞窟、廃坑、地下室が使用され、これらの中で長年の間保存してきた。【0005】【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、企業や専門店やレストランで大掛りなセラーを確保することは可能であっても、大きな地下室や洞窟などを一般の家庭が利用するのは不可能である。しかしながら近年は家庭で、それも家の中でワインの貯蔵が可能なように、小型の冷蔵庫のような電気式のワインセラーが販売されるに至っている。開閉式のドアによって密封して、冷却機能によって中の温度を保ち、地下などと近い保存環境を得ようとするものである。【0006】 前記した冷蔵庫様のセラーにはいくつかの課題がある。湿度を保つために定期的に水を補給する必要がある。つまりは補給を忘れると湿度が足りなくて乾燥し切ってしまうこともあり、長年の貯蔵期間内に一度でも忘れることがあると、酒類の品質が一変してしまう恐れがある。比較的高い湿度が要求されるため、セラー内にはカビが発生することがあり、定期的な清掃を欠かせない。家庭で冷蔵庫の他に大きなセラーを設置することも出来ず、比較的小型のものが多く、収納する本数に限りがある。勿論、セラーを設置すれば家の中のスペースはそれに占められることになる。電気式であるので電気代がかかるのは勿論、一本取出すたびにドアを開閉するため、その度に温度と湿度を保つために電気を使用し、長期的な使用により電気代は馬鹿にならない。【0007】【課題を解決するための手段】 この発明は以上のような課題を解決するためになされたもので、貯蔵場所として地中を採用し、地中に密封可能なパイプを埋め込んで、このパイプ内に数本のボトルを降下させ、数本単位で別個のパイプ内で貯蔵することにより、温度や湿度を保ち酒類の地下直下式貯蔵庫を提供することを目的とするものである。【0008】【発明の実施の形態】 この発明にかかる酒類の地下直下式貯蔵庫は、地面に孔を掘下げ、この孔にパイプを設置するものである。ここでいう直下式とは、地面に真下に向けて孔を掘削することであり、通常の平坦な土地であれば、建物の床下であろうが、庭であろうが、いずれでも孔を掘削することが可能であるという意味である。孔の大きさは貯蔵する酒類の本数によって様々であるが、その孔の深さとしては地表から2〜3m程度が好適である。場合によってはそれ以上の深さに掘削してもよいが、反対に余り浅いと、中の温度が地上と変らなくなってしまい、2m以上が好適であると考えられる。孔を掘下げるのは地面に真下に掘下げればよく、その場所は、例えば家屋の床下の地面などである。家屋によって完全に日光が遮られ、貯蔵場所としてより好適となる。家屋の床に開口部を形成し、開閉式の扉などを設けるなどする。【0009】 この孔の中にパイプを縦に設置する。パイプの材質としては塩化ビニールなどの合成樹脂、ステンレス鋼などの鋼など様々な材質のものが採用できるが、土中に設置するものであるため、防錆性、腐蝕防止処理されたものであることが必要である。パイプは円筒形のものが一般的であるが、その直径は例えばワインボトルが縦にすっぽり入る程度のものを採用する。パイプは密封可能なものであることが必要で、底は封鎖してあり、上部には着脱式の蓋などを取付けて、密封可能とする。パイプは複数本を孔の中に設置するのが通常であって、縦にして束ねるようにして全長を、或いはほぼ全長を孔の中に入れる。隣合うパイプ同士は接触していてもよいが、より保温効果を保つためには、パイプ同士は少し間隔を空けて設置し、パイプ同士の隙間には土砂やコンクリート材の硬化材、或いはウレタン発泡材を埋めたり、注入することも採用できる。【0010】 以上のようなパイプを採用した貯蔵庫に、ワインなどのボトルに収納された酒類を貯蔵する。ボトルには一本一本にワイヤーや紐を結び付けておき、紐の先端にはワインの銘柄や貯蔵年などを記載したタグをつけておく。コルクで封したワインなどであれば、口元を下、つまりは逆さの状態にしてパイプの中に吊り下ろす。コルクが乾燥しないようにするためである。ワインはパイプの底部近くに至らせる。つまり余り地表近くであると温度が戸外近くになってしまうため、2m程度の深さの孔ならば、底部に二本程度を積上げる。ボトルに結わえた紐は、タグをパイプの上から出して蓋によって密封する。【0011】 以上のような構成を実験の結果、例えば床下に形成した直径2mの孔で60本のパイプを設置でき、それぞれ二本づつを底部まで至らせて貯蔵し、つまりは合計120本のボトルを貯蔵可能であった。パイプの中の温度は摂氏十度程度を恒常的に保ち、湿度も70%程度を維持した。ワインの性質には熟成以外の変化はなく、極めて好ましい保存状態を保てた。酒類を取出すときは、タグを確認し、パイプの蓋を開けて紐を引いて引き上げる。逆さ状態にしてあったボトルはコルクの乾燥もなく、数時間通常の状態に立ててオリを沈めてから好適な状態で飲むことができた。ワインを逆さに収納する場合に、コルクやボトルの口元の保護のため、針金やアルミニウム箔で口元を覆うことも採用できる。【0012】 以上の方法は、孔からボトルを引き上げる手段として、パイプ内にワイヤなどを繋いだボトルを収納し、ワイヤを引くことによってボトルを孔から引き上げている。しかしながら、パイプ自体を孔から引き上げて開閉可能としたパイプの底部からボトルを取出すことも可能である。例えば、孔の直上、家屋の天井に昇降可能なクランパを設置しておき、クランパを降下させて所望のパイプを掴み、上昇させてパイプごと孔から引き上げ、底部を開けてボトルを取出すなどである。この場合、引抜くときに他のパイプが孔の中で動かないよう予め孔に仕切りを設けておき、その中にパイプを個別に収納することも考えられる。また、パイプは孔の中に設置したままで、このパイプの中に、ボトルを収納したケースを吊り下ろして、ケースごとボトルを昇降してパイプから出し入れすることも考えられる。【0013】【実施例】 以下、図1に示す実施例に基づきこの発明を詳細に説明する。図は本願発明の貯蔵庫を実施した例の斜視図であり、その1は地面に掘削した円形の孔である。図2に示すように孔1は家屋4の直下に掘削されており、家屋の床に形成された開口部に開閉式の扉5が設けられている。孔1の直径は2mであり、その深さも2mである。この中に塩化ビニール製のパイプ2を複数本縦にして設置してあり、60本程度が収納されている。パイプ2は底部が封されており、上部には着脱式の蓋3がそれぞれ取付けられている。【0014】 各パイプ2内にボトル6内に入ったワインを貯蔵する。各ボトル6にそれぞれワイヤ7を結びつけ、その先端には銘柄等を記載したタグ8を取付けておき、タグ8をパイプ2から出した状態でボトル6を逆さに吊り下ろす。タグ8をパイプ2の外に出した状態で蓋3をして貯蔵する。ボトル6を取出す場合は、タグ8を確認して蓋3を開け、所望のボトル6のわいや7を引いて引き上げる。【0015】 図3に示すのは、孔1から引き上げ可能としたパイプ2を使用したもので、天井から吊り下ろした昇降可能なクランパ9によって所望のパイプ2を掴み、クランパ9を上昇させてパイプ2を引き上げるものである。パイプ2は、孔1の中に設けた仕切り10の中に挿入されて出し入れ可能となっている。パイプ2の上端には収納してある銘柄等が記載してある。パイプ2が引きあがったら、底部を開けてボトル6を取出せばよい。このようにパイプ2自体を引き上げる方法であると、ワイヤ7を結び付ける手間が不要であるし、ボトル6の取出しも容易である。その他、孔を屋外の庭などに設ける場合には、孔の上に遮光のための屋根を設けることも採用できる。【0016】 図4に示すのはその他の実施例であって、孔1の中にはパイプ2を設置したままで、ボトル6は円筒形のケース11の中に収納し、ケース11ごと上げ下げしてパイプ2から出し入れするものである。ケース11にはワイヤ7を結び付けておき、そのワイヤ7の先端のリング12に家屋4に取付けた巻取り装置13のフックをかけて巻き上げることによってパイプ2からケース11を引き上げるようにするものである。ケース11は一部側面が開閉可能となっており、ボトル6の出収納に使用する。【0017】【発明の効果】 この発明は以上のような構成を有し、以下の効果を得ることができる。*ボトルをパイプに収納するため、パイプが入るだけの孔を掘削すればよく、地下室のような大掛りな掘削は不要で、設備費は極めて安価となる。*地中での貯蔵は地下室と洞窟とおなじであって、同様に一定の温度と湿度を保つことができ、酒類の貯蔵には最適の環境となる。カビの発生もなく、清掃の手間も不要である。*電気を使用しないので、光熱費が不要であるのと、地球環境(生態系)への影響を全く生じさせない。*ボトルはパイプに収納することによって整理された状態での収納となり、小さな孔でも沢山の数のボトルを効率よくまた取出し易い状態で収納できる。*孔は建物床下や専用の屋根下に設けることにより遮光ができ、より好適な環境を確保できる。*パイプ同士の間に土砂やウレタンなどの断熱材料を詰めることにより、断熱効果を高め、外の環境の影響を少なくできる。*各ボトルにはワイヤをつけ、これにタグをつけたり、パイプの上に銘柄等を記載しておくことによって整理した状態の保存が可能となる。【図面の簡単な説明】【図1】 この発明にかかる酒類の地下直下式貯蔵庫を実施した斜視図である。【図2】 床下に孔を設けた場合の実施例の断面図である。【図3】 パイプごと引き上げる方法の一実施例の斜視図である。【図4】 パイプ内にボトルを収納したケースを出し入れする実施例の斜視図である。【符号の説明】 1 孔 2 パイプ 3 蓋 4 建物 5 扉 6 ボトル 7 ワイヤ 8 タグ 9 クランパ 10 仕切り 11 ケース 12 リング 13 巻取り装置 建物下などの地面に孔を掘下げ、この孔の中にパイプを設置し、ボトル詰めされた果実酒などをこのパイプ内に降下させて底部近傍に収納し、孔からボトルを引き上げる手段を備えて出し入れ可能としてなる酒類の地下直下式貯蔵庫。 孔の中には複数本のパイプを設置し、各パイプ間には土壌や断熱材料を埋めてなることを特徴とする請求項1記載の酒類の地下直下式貯蔵庫。 孔は建物床下などに掘下げて形成し、建物床には開閉式の開口部を設けたことを特徴とする請求項1記載の酒類の地下直下式貯蔵庫。