タイトル: | 特許公報(B2)_耐熱性L−アミノ酸酸化酵素 |
出願番号: | 2002326134 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C12N 9/06,C12N 1/20,C12R 1/07 |
石丸 恵美 矢田 貴子 眞田 浩一 小村 啓悟 JP 4150576 特許公報(B2) 20080704 2002326134 20021108 耐熱性L−アミノ酸酸化酵素 池田食研株式会社 000210067 石丸 恵美 矢田 貴子 眞田 浩一 小村 啓悟 JP 2001353608 20011119 20080917 C12N 9/06 20060101AFI20080828BHJP C12N 1/20 20060101ALI20080828BHJP C12R 1/07 20060101ALN20080828BHJP JPC12N9/06 BC12N1/20 AC12N9/06 BC12R1:07C12N1/20 AC12R1:07 C12N 1/00-15/90 BIOSIS/WPIDS(STN) PubMed JSTPlus(JDreamII) JMEDPlus(JDreamII) 特開平9−75097(JP,A) 5 FERM P-18599 2003210163 20030729 16 20051104 福間 信子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、耐熱性を有するL-アミノ酸酸化酵素の提供に関する。また、耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の製造方法、および当該酵素を生産する微生物の提供に関する。さらには、耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を用いる試料中のL-アミノ酸の消去方法、測定方法、ラセミ体化合物からの光学分割方法およびそれらの試薬ならびに試薬組成物、さらには2-オキソ酸の製造方法などを含む製造原料などの物質生産および分析の用途において使用が可能となる。【0002】【従来の技術とその課題】一般に、L-アミノ酸酸化酵素は、蛇毒、鼠腎臓、鳥肝臓、無脊椎動物、およびアカパンカビ(Neurospora crassa)や細菌(Proteus rettgeri)などの微生物由来から得られることが知られている。また、L-アミノ酸酸化酵素は、各種の産業的用途に有効に用いられており、既に幾つかの報告がある。例えば、DL-アミノ酸から選択的にD-アミノ酸を得ようとする報告(例えば、特許文献1〜4参照)、光学活性化合物を得ようとする報告(特許文献5参照)、医薬製造原料を得ようとする報告(特許文献6参照)、洗浄時の布の色移りを過酸化水素で防止しようとする報告(特許文献7参照)、パン生地に加えて改質に利用しようとする報告(特許文献8参照)などが挙げられる。【0003】【特許文献1】特開平9-75097号【特許文献2】特開平9-191895号【特許文献3】特開平10-80297号【特許文献4】特開平11-103887号【特許文献5】US特許5449823号【特許文献6】特開昭50-135280号【特許文献7】特表平8-509367号【特許文献8】US特許6039982号【0004】その他、アミノ酸の定量分析、アミノ酸を原料とする合成基質を用いるロイシンアミノペプチダーゼなどのペプチダーゼの活性測定系における合成基質から遊離されるアミノ酸の定量分析、尿毒症患者向けの2-オキソ酸の製造、染毛剤などにも、L-アミノ酸酸化酵素が効果的に用いられている。L-アミノ酸酸化酵素は、アミノ酸の定量に際し、例えば、L-フェニルアラニンを認識し、その結果フェニルケトン尿症の診断薬組成物に有効に用い得る。フェニルケトン尿症は遺伝子が原因で起こる疾患であり、物質代謝障害を示し、放置すると大部分が重度の身体的および精神的な発育障害を引き起こす。L-フェニルアラニンは、通常の栄養条件下で、全ての動物性および植物性蛋白質と共に吸収される。この病気の患者では、物質代謝障害の為に、血液および組織中にL-フェニルアラニンが蓄積する。L-フェニルアラニンの量が部分的に過剰に高くなると、物質代謝のバランスが壊れ、そのために様々な症状を通して、不可逆的な、進行性の精神障害を引き起こすことがある。【0005】フェニルケトン尿症は現在治癒不可能だが、身体独自の蛋白質の合成が成長および再生にとって最適に保証され、同時に血中のL-フェニルアラニン濃度が標準範囲内に入る様な量のL-フェニルアラニンだけが供給される様に、L-フェニルアラニンの濃度を低めた適切な摂取により、治療することができる。この為、フェニルケトン尿症の早期診断を簡便に行える診断薬組成物が求められている。【0006】しかし、上記の現在知られているL-アミノ酸酸化酵素を産生する生物および酵素を用いる限り、L-アミノ酸酸化酵素の生産能力が低く、得られる量が極めて乏しい。さらには、市販されている例えば、蛇毒由来のL-アミノ酸酸化酵素については、供給量が乏しく極めて高価である上に熱安定性が低いなどの問題があった。その結果、産業的用途に有効に用い得るL-アミノ酸酸化酵素が望まれている。【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した事情に鑑み、当業界における要望に応えるためになされたものであって、耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の提供に関し、特に耐熱性に優れた酵素であり、該酵素の用途としてL-アミノ酸の消去方法、定量方法、ラセミ体化合物からの光学分割方法、2-オキソ酸の製造方法と多彩に用いることができる。本発明は、よりすぐれた耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を新たに開発する目的でなされたものである。【0008】【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、本発明者らは、各方面から検討した結果、L-アミノ酸酸化酵素に着目した。L-アミノ酸酸化酵素は、酸素と水の存在下において、L-アミノ酸またはその類縁体を基質とし、2-オキソ酸、アンモニアおよび過酸化水素を生成する酸化酵素であり、例えば、酵素番号1.4.3.2.で示される酵素である。本発明者らは、L-アミノ酸酸化酵素を生産する各種微生物を鋭意検索した結果、耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の生産微生物および耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を見出した。【0009】本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素は、理化学的性質として少なくとも、酸素と水の存在下において、L-アミノ酸またはその類縁体を基質とし、2-オキソ酸、アンモニアおよび過酸化水素を生成し、50mM 酢酸緩衝液(pH5.5)存在下、70℃で15分の熱処理後も85%以上の残存酵素活性率を有する。本発明は、これらの理化学的性質を有する耐熱性L-アミノ酸酸化酵素に関し、または該耐熱性L-アミノ酸酸化酵素と実質的に同等な活性を有するタンパク質またはその塩について、該タンパク質をコードするアミノ酸配列あるいは当該配列に1またはそれ以上のアミノ酸残基の欠失、置換もしくは付加による変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的に活性で安定なタンパク質である耐熱性L-アミノ酸酸化酵素のアミノ酸配列に関する。【0010】本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素であるタンパク質およびその塩は、例えばバチルス属に属する微生物から生産され、バチルス属のなかでも特にバチルス・エスピー(Bacillus sp.)99502株の微生物が挙げられる。該バチルス属に属する微生物、または耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の生産能を有する微生物を栄養培地にて培養し、培養物中に耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を生成蓄積せしめこれを採取し、耐熱性L-アミノ酸酸化酵素であるタンパク質およびその塩を取得する。【0011】さらに、本発明は、本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を使用した物質生産および分析用途の提供に関し、医薬用または食品素材の加工への使用に関する。一例として、該耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を試料として生体物質を含む該試料中のL-アミノ酸の消去方法、測定方法およびそれらの試薬、試薬組成物に使用する。また、本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を用いてラセミ体化合物からの光学分割方法および光学分割試薬、試薬組成物に使用する。さらには、本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を用いた2-オキソ酸の製造方法および製造原料に使用する。本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素は、酸素と水の存在下において、L-アミノ酸またはその類縁体を基質とし、2-オキソ酸、アンモニアおよび過酸化水素を生成する酸化酵素である。本発明では、前記反応に本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を使用する。耐熱性L-アミノ酸酸化酵素としては、70℃で15分の熱処理後も85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の残存酵素活性率を有する酵素であれば、すべての耐熱性L-アミノ酸酸化酵素が使用可能である。耐熱性L-アミノ酸酸化酵素としては、限定されるわけではないが、該耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を生産する微生物に由来する耐熱性L-アミノ酸酸化酵素が好ましく、特に、バチルス属が好ましい。【0012】ついで、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)99502株由来の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の理化学的性質について説明する。(1)作用:酸素と水の存在下、L-アミノ酸を酸化し、過酸化水素、2-オキソ酸およびアンモニアを生成する酵素で、国際生化学連合(IUB)の分類では酵素番号1.4.3.2.に分類される。一例として、L-フェニルアラニンが基質の場合の反応式を次に示す。【0013】【化1】【0014】(2)基質特異性:下記する活性測定方法1でL-フェニルアラニンおよび他の各種アミノ酸(いずれも終濃度33mM L-チロシンのみ1.25mM)を使用した場合の相対反応性(基質特異性)は、L -フェニルアラニンに強く、L-メチオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-ロイシンには弱く作用した。(3)至適pH:pH5.5〜6(4)安定pH:pH6〜11(5)至適温度:50℃付近(6)熱安定性:精製酵素を50mM 酢酸緩衝液(pH5.5)に溶解し、各温度で15分間保持後、活性測定方法1を使用して残存酵素活性率を測定した。約70℃まで安定であり、70℃で15分の熱処理後も95%の残存酵素活性率を有する。本発明において、残存酵素活性率は耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を加熱処理する以前の活性値を100%として、残存の活性値を算出し示す。【0015】(7)分子量:耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の分子量は、ゲル濾過法で測定した結果、約440kDaであった。また、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法による測定値は、約55kDaの単一バンドを示した。従って、耐熱性L-アミノ酸酸化酵素は、分子量約55kDaのサブユニットの8量体からなるものと考えられる。(8)Km値:L-フェニルアラニン 6〜10mM、L-メチオニン 55〜65mM(9)等電点:等電点電気泳動法で測定した耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の等電点(pI)は、約5.5であった。(10)阻害剤:添加剤を添加しない対照区を100とした相対値において、3-メチル-2-ベンゾチアゾリノンヒドラゾン塩酸塩、塩酸ヒドロキシルアミンは約20%で、アクリフラビンは約3%であり阻害効果が強かった。一方、BaCl2、D-酒石酸、リンゴ酸は130%付近であり増強効果が見られた。【0016】耐熱性L-アミノ酸酸化酵素のアミノ酸配列およびそれをコードする遺伝子の塩基配列に関しても本発明に属する。本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の製造に際し、該製造に用いられる生物は、本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を生産可能な生物であれば良く、例えば、バチルス属に属する微生物を用いて効率的に製造することができる。特には、Bacillus sp.99502と命名され、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、FERM P-18599として寄託された微生物を用いても良い。該菌株は、本発明者らによって土壌中より分離され、その菌学的性質は、下記の通りである。なお、本発明においては、上記菌株の変異株も使用できる。変異株は、紫外線、エックス線などの放射線または化学的変異剤(NTGなど)などの処理によって得られる。【0017】(バチルス・エスピー(Bacillus sp.)99502株の菌学的性質)(1)形態的性質:ポテト・デキストロース寒天培地上で生育した該菌株の光学顕微鏡下での形態的特徴を以下に記述する。大きさが0.4〜0.8×1.0〜9μmの桿菌であり、胞子を形成する。運動性を有し、グラム染色は陽性である。【0018】(2)各培地での生育状態:(a)肉汁寒天平板培養;生育は普通であり、集落の表面は平滑であり、色はクリーム色であり、鈍い光沢を有する。(b)肉汁寒天斜面培地培養;糸状または拡帯状に生育し、肉汁寒天平板培養と同様の形状を呈する。(c)肉汁高層寒天培地培養;表面にのみ良好に生育し、穿刺部にはほとんど生育しない。(d)肉汁液体培養;生育は普通であり沈査が認められる。表面に菌膜は認められない。(e)肉汁ゼラチン穿刺培養;生育はするが、ゼラチンの液化は認められない。(f)リトマスミルク;不変【0019】(3)生理的性質:(a)硝酸塩の還元 ;陰性(b)脱窒反応 ;陰性(c)インドールの生成;陰性(d)クエン酸の利用コーサーの培地;陰性クリステンゼンの培地 ;陰性シモンズの培地 ;陰性(e)ウレアーゼ :陽性(f)オキシダーゼ ;陰性(g)カタラーゼ ;陽性(h)生育範囲;pH6〜9(至適pH6〜7)、生育温度;15〜55℃(至適温度20〜35℃)、塩化ナトリウム0?2%(i)酸素に対する態度;好気性(j)色素の産生 ;生産しない(k)OFテスト ;酸化(グルコース)(l)糖類からの酸およびガスの生成;L-アラビノース、D-キシロース、D-グルコース、D-マンノース、D-フラクトース、D-ガラクトース、マルトース、シュクロース、ラクトース、トレハロース、D-ソルビトール、D-マンニトール、イノシトール、グリセリン、デンプンを使用し、酸を生成するが、ガスは生成しない。【0020】以上の性質に基づきバージーのマニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー第2版の分類方法に従って検索を行った結果、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)99502株は、バチルス属に属することが判明した。本発明で使用される微生物の培養には、通常のバクテリア培養用培地が使用でき、炭素源、窒素源、無機物その他使用微生物が必要とする微量栄養素を程よく含有するものであれば、合成培地、天然培地の何れでも使用可能である。炭素源としては、グルコース、シュクロース、デキストリン、澱粉、グリセリン、糖蜜などが使用できる。窒素源としては、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどの無機塩類、DL-アラニン、L-グルタミン酸などのアミノ酸類、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、麦芽エキス、コーンスティープリカーなどの窒素含有天然物が使用できる。無機物としては、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化第二鉄などが使用できる。【0021】本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を得るための培養は、通常、振盪培養や通気攪拌培養で行う。培養温度は、通常15〜60℃、好ましくは20〜35℃の範囲で行う。培地のpHは、通常4〜10、好ましくは5〜7の範囲で行う。培養期間は、通常1〜7日間、好ましくは2〜4日間である。該培養方法により、培養物中、特に培養微生物内に耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を生成蓄積することができる。ついで、培養物中から耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を得る方法は、通常の蛋白質の精製方法が使用できる。即ち、微生物を培養後、培養液を遠心分離して培養微生物を得、適当な方法で該培養微生物を破砕し、破砕液から遠心分離などによって上清液を得る。この上清液中に含まれる耐熱性L-アミノ酸酸化酵素は、塩析、透析、イオン交換クロマトグラフィー、疎水吸着クロマトグラフィー、ゲルろ過、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動などの適当な精製操作を組み合わせることによって精製できる。【0022】また、本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素は、合成による耐熱性L-アミノ酸酸化酵素や遺伝子工学によって得られた組換え型耐熱性L-アミノ酸酸化酵素であっても良い。当業者は本発明の理化学的性質に由来するタンパク質およびその塩の開示に基づいて容易に耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を得ることができる。例えば、耐熱性L-アミノ酸酸化酵素については、バチルス属その他の微生物や動物などの天然物から抽出するほか、そのアミノ酸配列およびそれをコードする遺伝子の塩基配列をもとに合成法によって得ることができるし、該耐熱性L-アミノ酸酸化酵素遺伝子の遺伝子断片を市販の発現ベクターなど公知の発現ベクターに挿入し、得られたプラスミドを使用して大腸菌などの宿主を形質転換し、形質転換体を培養して目的の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を得るといった遺伝子工学によって該耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を工業的に製造することも可能である。【0023】本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の酵素活性は、次の2つの方法で定量できる。(1) 過酸化水素の比色検出法(活性測定方法1)1M リン酸カリウム緩衝液(pH6)0.3ml、25mM 4-アミノアンチピリン0.1ml、420mM フェノール溶液0.1ml、100units/ml西洋わさびペルオキシダーゼ0.1ml、50mM L-フェニルアラニン2mlおよび水0.35mlを光路長1cmの3ml石英セルに添加し、恒温セルホルダー付き分光光度計にセットして37℃で5分間インキュベート後、酵素溶液0.05mlを加えて攪拌し、500nmに於ける5分間の吸光度変化(ΔAbs/分)を測定する。酵素活性は次の式により算出する。なお、式中のnは希釈倍率である。【0024】【数1】【0025】(2) 2-オキソ酸のDNP検出法(活性測定方法2)1M リン酸カリウム緩衝液(pH6)0.3ml、50mM L-フェニルアラニン2mlおよび水0.65mlを試験管に添加し、37℃の恒温槽で5分間インキュベート後、酵素溶液0.05mlを加えて攪拌し、10分間反応させる。反応後、30%トリクロロ酢酸1mlを加えて反応を停止する。反応液2mlを別の試験管に取り、0.05% 2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNP)の2M 塩酸溶液2mlを加えてよく攪拌し、室温下に5分間放置後、トルエン6mlを加えて強く攪拌する。更に、上層(トルエン層)5mlを別の試験管に移し、これに10%炭酸ナトリウム溶液5mlを加えて強く攪拌し、DNP反応物を水層に抽出する。下層(水層)3mlを別の試験管に取り、これに4M 水酸化ナトリウム溶液1mlを加えてよく攪拌後、光路長1cmの3ml石英セルで470nmに於ける吸光度を測定する。酵素活性は、予めフェニルピルビン酸ナトリウム(mM単位)で作成した検量線の値(P mM)から、次の式により算出する。なお、式中のnは希釈倍率である。【0026】【数2】【0027】次に、本発明によって得られた耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の用途について説明する。耐熱性L-アミノ酸酸化酵素は、酸素の存在下にL-アミノ酸の酸化反応を触媒し、過酸化水素、2-オキソ酸およびアンモニアを生成する酵素であるから、この反応による変化が利用できる用途であれば、特に制限されない。例えば、耐熱性L−アミノ酸酸化酵素は、基質との組合せにより生成する過酸化水素の系を使用して、ペルオキシダーゼなどの酵素と組合せて洗剤添加物、洗剤組成物への使用、化粧品の保存のために使用することが可能である。また、製菓製パン改質剤に使用するなどアミノ酸を含有する食品素材の改質への使用や、医療分野、臨床分野への使用が可能であり、耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を使用した物質生産および分析の用途において使用が可能となる。【0028】直接反応生成物を利用するものとしては、2-オキソ酸の製造方法および前駆原料のL-アミノ酸側鎖を酸化し、光学活性化合物などを製造する方法が挙げられる。また、間接的に利用するものとしては、ラセミ混合物であるDL-アミノ酸混合物からL-体だけを酸化し、D-アミノ酸を製造する方法、あるいは2-オキソ酸の製造方法が挙げられる。また、反応生成物の量的変化を直接あるいは間接的にシグナルとして検出する基質のL-アミノ酸ならびにL-アミノ酸類縁体などの測定方法などが挙げられる。例えばアミノ酸の酵素的測定方法としては、アミノ酸にアミノ酸酸化酵素を作用させ生成する過酸化水素を定量する方法が、メソッズ・オブ・エンザイマティック・アナリシス(Methods of Enzymatic Analysis),第3版,第2巻,149ページ(1983年)および、同,第3版,第8巻,399ページ(1985年)、アカデミック・プレス(Academic Press)発行に記載されている。【0029】L-アミノ酸の生成を伴う別な酵素反応系の後にL-アミノ酸測定方法を結合した、末端にL-アミノ酸を有する前駆基質、例えば、ペプチドなどの測定方法、逆に、L-アミノ酸を有する合成ペプチドを基質として添加するエクソプロテアーゼ、ぺプチダーゼなどの酵素活性の測定方法、例えば、ロイシンアミノペプチダーゼ活性の測定などが挙げられる。本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素は、従来の酵素より安定性に優れ、従来使用が制限されていた領域にも応用可能になることは、言うまでもない。【0030】基質を測定する方法の一例として、L-フェニルアラニンの測定方法を使用して詳しく説明する。上記の反応式1(化1)から明らかな様に、反応生成物のフェニルピルビン酸、過酸化水素、アンモニアのいずれを検出しても良く、L-フェニルアラニンを定量することができる。具体的には、反応生成物のフェニルピルビン酸を検出する場合、L-アミノ酸酸化酵素の酵素活性測定で前記した「2-オキソ酸のDNP検出法」などが使用できる。反応生成物の過酸化水素を検出する場合、過酸化水素の検出法として公知の方法が使用でき、例えば、前記の「過酸化水素の比色検出法」を例示することができる。反応生成物のアンモニアを検出する場合、通常のアンモニア測定方法が使用でき、例えば、グルタミン酸脱水素酵素を使用するアンモニアの測定系がある。また、これらの測定方法は、反応速度上から、レートアッセイ法またはエンドポイント法の2つに分類されているが、いずれであってもよく、測定系、反応時間、基質のL-フェニルアラニンの濃度、検体の種類などの条件により、適宜選択可能である。基質L-アミノ酸を測定する場合、基質を含有する試料および耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を、約pH6〜11の緩衝液に加えて反応させればよい。耐熱性L-アミノ酸酸化酵素は、溶液状態の他、必要に応じて凍結乾燥品などの粉末状態、マイクロカプセル化、または担体に固定し不溶化状態にて使用することもできる。緩衝液としては、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、グッド緩衝液、グリシン緩衝液などが使用される。酵素は、通常1〜500μM濃度の基質に対し、0.5〜50U/mlの濃度で使用可能であり、酵素などの試薬組成の性質により適宜変更し、選択の上使用可能である。【0031】生成した過酸化水素の検出には、比色法、蛍光法、化学発光法、電極法などのいずれも使用できる。比色法では、ペルオキシダーゼなどの触媒により、過酸化水素でペルオキシダーゼの基質を酸化発色させ、発色濃度を分光光度計で測定する。ペルオキシダーゼの基質としては、o-フェニレンジアミン、5-アミノサリチル酸、4-アミノアンチピリンとフェノール、2,2'-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)、ビス〔3-ビス(4-クロロフェニル)メチル-4-ジメチル-アミノフェニル〕アミンなどが使用できる。蛍光法では、ペルオキシダーゼなどの触媒により、過酸化水素で基質を酸化して蛍光物質を生成させ、その蛍光強度を蛍光光度計で測定する。ペルオキシダーゼの基質としては、p-ヒドロキシフェニル酢酸、p-ヒドロキシフェニルプロピオン酸などが使用できる。化学発光法では、ペルオキシダーゼなどの触媒により、過酸化水素で基質を酸化して発光させ、その発光強度をルミノメーターで測定する。化学発光する基質としては、ルミノール化合物、ルシゲニン、アリルシュウ酸エステル類の化合物などが使用できる。耐熱性L-アミノ酸酸化酵素およびL-アミノ酸の検出に必要な前記の試薬成分を含む試薬を調製し、L-アミノ酸の測定組成物として診断薬に組み立てることができる。【0032】本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を使用したラセミ体化合物の光学分割方法は、例えば、L-アミノ酸を優先的または特異的に酸化して対応するオキソ酸に変換する触媒酵素である耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を、DL-アミノ酸に作用させた後、残存するD-アミノ酸を晶析法、イオン交換樹脂を用いた常法によって単離生成することが可能である。さらに、ラセミ体化合物の光学分割に際し、耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を含有する光学分割試薬を調製し、ラセミ体化合物の光学分割組成物として組み立てることができる。【0033】本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を使用した工業的な2-オキソ酸の製造が可能である。つまり、本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素は、アミノ酸のラセミ混合物中のL−体を酸化し2-オキソ酸に変換する。よって、2-オキソ酸とD−アミノ酸の分離は、当業者に公知の方法、例えば酸性水溶液中での選択的沈殿により、またはイオン交換クロマトグラフィーにより行うことができる。さらに、2-オキソ酸の製造に際し、本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を含有する製造用原料もしくは生成用原料を調製し、2-オキソ酸の生成用組成物として組み立てることができる。例えば、本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素は、L-アミノ酸の一つであるL-フェニルアラニンと作用し、フェニルピルビン酸を生成する。生成した該フェニルピルビン酸は、直接晶析法、イオン交換樹脂を用いた常法によって単離生成することが可能である。【0034】【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。以下の実施例に於ける耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の活性定量は上記に示した方法に従って行った。【0035】実施例1.バチルス・エスピー(Bacillus sp.)99502株の培養バチルス培地(酵母エキス(DIFCO社製)(0.4%)、ポリペプトン(BBL社製)(0.8%)、塩化ナトリウム(0.2%):水酸化ナトリウム溶液にてpH7.2に調整)をそれぞれ試験管(直径2.2cm×長さ19.5cm)4本に分注し、121℃で20分間殺菌して冷却したのち、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)99502株を一白金耳ずつ接種し、30℃で18時間振盪培養して、種培養液を調製した。2L容量の培養フラスコ4本に、上記バチルス培地400mlをそれぞれ分注し、これを121℃で20分間殺菌して冷却したのち、上記の種培養液16ml(試験管4本分)を各フラスコに4mlずつ接種し、30℃で18時間振とう培養して、前培養液とした。ついで、上記と同様の組成からなる培地に消泡剤「アデカノールLG126」(旭電化社製)0.01%(W/V)を添加した培地160Lを200L容量のジャーファーメンターに入れ、121℃で20分間殺菌して冷却したのち、上記の前培養液1.6Lを接種し、30℃で18時間、160L/分の通気量と200rpmの攪拌速度の条件で培養した。培養終了後、シャープレスでの遠心分離により菌体を回収した。【0036】実施例2. バチルス・エスピー(Bacillus sp.)99502株からの耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の単離以下のステップ1〜8により耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を単離した。1.無細胞抽出液の調製:上記培養で得られた菌体752gのうち73gをリン酸カリウム緩衝液(50mM、pH8)350mlに懸濁したのち、氷浴中で冷却しつつ超音波破砕装置「VC502」(レノバサイエンス社製)で30分間破砕した。破砕液を遠心分離して菌体残渣を除き、無細胞抽出液415mlを得た。2.熱処理:無細胞抽出液を60℃で20分間放置し、生じた沈殿物を遠心分離により除去して、上澄液を得た。3.DEAE-セルロファインA-500(生化学工業社製)による精製:上記上澄液を、予めリン酸カリウム緩衝液(50mM、pH8)で平衡化したDEAE-セルロファインA-500カラム(直径4cm×高さ13cm)に通液して酵素を吸着させ、同緩衝液で洗浄したのち、同緩衝液から0.6M KClを含む同緩衝液へのグラジエント溶出法で酵素を溶出させて活性画分を集めた。この活性画分は、ペンシル型膜濃縮モジュール「ACP-0013」(旭化成工業株式会社製)を用いて、同緩衝液による脱塩および濃縮を行った。4.セファクリルS-300HR(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)による精製:上記活性画分を、0.2M NaClを含む50mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)に溶解し、予め同緩衝液で平衡化したセファクリルS-300HRカラム(直径2.5cm×高さ85cm)にアプライし、同緩衝液で酵素を溶出させ活性画分を分取した。得られた酵素は、電気泳動的に均一な標品であり、比活性は18U/mgであった。【0037】実施例3. バチルス・エスピー(Bacillus sp.)99502株から単離した耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の性質試験実施例2より得た本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素について、至適pH、安定pH、至適温度、温度安定性、基質特異性および分子量を調べた。1.至適pH:上記の活性測定方法2に於ける活性測定用反応液の緩衝液を、酢酸緩衝液(pH4.5〜5.5)、リン酸カリウム緩衝液(pH6.0〜8.0)、トリス・塩酸緩衝液(pH7.5〜9.0)、またはグリシン-NaCl-NaOH緩衝液(pH8.5〜13)に代えて、酵素活性を測定した。該測定結果を図1に示した。その結果、耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の至適pHは5.5〜6.0であった。2.安定pH:耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を、50mM濃度の緩衝液、すなわち酢酸緩衝液(pH4.6〜5.4)、リン酸カリウム緩衝液(pH6.3〜7.8)、トリス・塩酸緩衝液(pH7.4〜8.7)、またはグリシン-NaCl-NaOH(pH8.8〜10.8)の各々に溶解し、60℃で30分間保持した後の残存酵素活性率を上記の活性測定方法1により測定した。該測定結果を図2に示した。その結果、耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の安定pHは、pH6〜11であった。3.至適温度:耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を50mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)に溶解し、上記の活性測定方法2により30℃〜60℃までの範囲で酵素活性を測定した。該測定結果を図3に示した。その結果、耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の至適温度は、50℃であった。【0038】4.熱安定性:耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を50mM 酢酸緩衝液(pH5.5)に溶解し、20℃〜80℃までの各温度で15分間保持したのち、残存酵素活性率を上記の活性測定方法1により測定した。該測定結果を図4に示した。その結果、耐熱性L-アミノ酸酸化酵素は熱安定性が極めて高く、70℃の温度まで安定であることが判明した。残存酵素活性率は、耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を加熱処理する以前の活性値を100%として、残存の活性値を算出し示した。熱安定性の測定方法は、耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を、14.6mg/mlとなるように50mM 酢酸緩衝液(pH5.5)に溶解し、その溶解した該溶液20μlを1.5ml容のエッペンドルフチューブに入れた後、20〜80℃の各温度で15分間保持する。各温度に保持した後、直ちに氷冷した。ついで活性測定方法1を使用して残存酵素活性率を測定した。これまで広くL-アミノ酸の測定方法、またはL-アミノ酸を介する測定方法に使用されてきた蛇毒由来のL-アミノ酸酸化酵素(シグマ社製、Crotalus atrox由来酵素、A-5144)と熱安定性について比較した。結果から、蛇毒由来のL-アミノ酸酸化酵素と比較して耐熱性L-アミノ酸酸化酵素は、極めて熱に安定であることが示された。該蛇毒由来のL-アミノ酸酸化酵素は、20℃〜60℃の範囲における残存酵素活性率は90%付近を維持するが、65℃付近において残存酵素活性率が33.0%と減少し、80℃付近においては0.4%を示した。耐熱性L-アミノ酸酸化酵素は、極めて熱に安定であることが前記で示されているように70℃までは残存酵素活性が95%以上を保持し、80℃付近においては66.3%を示し、まだ酵素活性を有していることが示された。【0039】5.基質特異性およびKm値:上記の活性測定方法1における活性測定用反応液の基質を、L-フェニルアラニンおよび他の各種アミノ酸(いずれも終濃度33mM L-チロシンのみ1.25mM)に代えて使用した場合の相対反応性(酵素活性)を測定した。結果は表1に示したとおりであり、L-フェニルアラニンには強く作用し、L-メチオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-ロイシンには弱く作用した。また、L-アラニン、L-プロリン、L-イソロイシン、L-ヒスチジン、L-グルタミン、L-セリン、L-リジン、L-アルギニン、L-スレオニン、L-アスパラギン、L-システイン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、グリシン、L-バリン、D-フェニルアラニン、D-メチオニン、D-トリプトファン、D-チロシン、D-ロイシンには、ほとんど作用しなかった。Km値は、L-フェニルアラニンが7.6mM、L-メチオニンが59.2mMであった。【0040】【表1】【0041】6.分子量およびサブユニット分子量:実施例2より得た本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を、0.2M NaClを含む50mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)に溶解し、移動相に同緩衝液を用いてTSKgel-G3000SWカラム(直径0.75×長さ60cm、東ソー社製)にて流速0.5ml/分の条件で分析した。分子量マーカー(オリエンタル酵母工業社製)との比較により、実施例2の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の分子量は約440kDaと推定された。10%ポリアクリルアミドゲルを用いLaemmliらの方法に従い、耐熱性L-アミノ酸酸化酵素をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)に掛けた。泳動後にクマシー・ブリリアント・ブルー染色し、移動度を分子量マーカー(アマシャム ファルマシア バイオテク社製)のそれと比較した結果、実施例2の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素のサブユニット分子量は約55kDaと推定された。【0042】7.阻害剤上記の活性測定方法2に、最終濃度が1mMになるように表2の各種添加物をそれぞれ加え、実施例2より得た本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の活性を測定した。対照区は、表2の添加物を加えない以外は活性測定方法2に従い行った。該対照区の値を基準に相対値として表2に示した。その結果、表2に示す阻害効果および増強効果が認められた。該効果は、各添加物により異なり、耐熱性L-アミノ酸酸化酵素に対する阻害効果としてはアクリフラビンが強く、増強効果はBaCl2、D-酒石酸、リンゴ酸が強いことが示された。【0043】【表2】【0044】実施例4.L-アミノ酸の定量実施例2より得た本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を用い、上記の活性測定方法1における50mM L-フェニルアラニンを、0〜1.0mMの範囲のL-フェニルアラニンに代えて使用した場合の吸光度の増加速度を測定した。すなわちL-フェニルアラニンの濃度が、0、0.01、0.1、0.3、0.5、1.0mMの各濃度における吸光度の増加速度を測定した。該測定結果を図5に示した。その結果、0〜1.0mMまで直線となる検量線が作成できた。この結果から耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を用いてL-フェニルアラニンの定量が可能であり、さらには本耐熱性L-アミノ酸酵素を用いることで、L-アミノ酸の定量が可能であることが示された。【0045】実施例5.光学分割方法1M リン酸カリウム緩衝液(pH6.0)0.03ml、5,200units/ml 牛肝臓由来カタラーゼ0.02ml、50mM DL-フェニルアラニン0.2mlおよび水0.03mlを、15ml容プラスチックチューブに添加・混合し、45℃で5分間インキュベートした。その後、該混合液中に185.5Units/mlに調整した実施例2より得た本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素溶液を0.02ml加えて攪拌し、45℃での反応を行った。該反応溶液 0.01mlを、反応開始から10分おきにサンプリングし、このサンプリングした0.01mlと、11.36mM 過塩素酸水溶液(pH2.0)0.09mlとを混合することで酵素反応を停止した。ついで、セントリカット超ミニW-10(分画分子量1万、倉敷紡績株式会社製)で、限外濾過した。分子量1万以下の溶液をHPLC(光学分割カラムを使用)にて分析し、D-フェニルアラニンおよびL-フェニルアラニンを定量した。HPLCの条件は、カラム;Opti-PakCE(3.9×150mm、日本ウォーターズ株式会社製)、溶離液;11.36mM 過塩素酸水溶液(pH2.0)、流速;0.8ml/min、検出;UV検出器を用い200nmの吸光度を測定、カラム温度;18℃、サンプルボリューム;10μLであった。該測定結果を図6に示した。【0046】その結果、約60分でL-フェニルアラニンが酵素反応により消失したのに対し、D-フェニルアラニン濃度は一定であった。なお、対照区は、耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を加えない以外は前述の方法に従い行った。該対照区では、D-フェニルアラニン、およびL-フェニルアラニンともに濃度変化は示されなかった。これらの結果から、本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を用いることで、DL-アミノ酸を光学分割することが可能であることが示された。【0047】実施例6.2-オキソ酸の合成1M リン酸カリウム緩衝液(pH6.0)0.03ml、5,200units/ml 牛肝臓由来カタラーゼ0.02ml、50mM L-フェニルアラニン0.2ml、および水0.03mlを、15ml容プラスチックチューブにて混合し、45℃で5分間インキュベートした。その後、該混合液に185.5Units/mlに調整した実施例2より得た本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を0.02ml加えて攪拌し、45℃での反応を行った。該反応溶液 0.01mlを、反応開始から10分おきにサンプリングし、このサンプリングした0.01mlと、11.36mM 過塩素酸水溶液(pH2.0)0.99mlとを混合することで酵素反応を停止した。ついで、セントリカット超ミニW-10(分画分子量1万、倉敷紡績株式会社製)で、限外濾過した。分子量1万以下の溶液をHPLCにて分析し、L-フェニルアラニンおよびフェニルピルビン酸を定量した。HPLCの条件は、カラム:TOSOH-TSKgel ODS-80TM(4.6×150mm、東ソー株式会社製)、溶離液;10mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0):メタノール=8:2、流速;1.0ml/min、検出;UV検出器を用い210nmの吸光度を測定、カラム温度;23℃、サンプルボリューム;10μlであった。該測定結果を図7に示した。【0048】その結果、約50分でL-フェニルアラニンが酵素反応により消去され、代わりにフェニルピルビン酸が生成した。なお、対照区は、耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を加えない以外は前述の方法に従い行った。該対照区では、フェニルピルビン酸は生成されなかった。これらの結果から、本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を用いることでL-アミノ酸から2-オキソ酸が合成可能であることが示された。【発明の効果】本発明によって、70℃で15分の熱処理後も85%の残存酵素活性率を保持する耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の提供が可能となった。さらには工業的生産に適した該耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の製造方法、その為の生産微生物が提供される。これによって、耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の産業的用途への応用が可能となり、詳細には、該耐熱性L-アミノ酸酸化酵素を用いた試料中のL-アミノ酸の消去方法、測定方法、ラセミ体化合物からの光学分割方法、2-オキソ酸の製造方法などを含む物質生産および分析の用途において使用が可能となり、医薬、臨床分野および食品分野での素材の改質加工に使用可能であるなど、利用価値の高い酵素の提供が可能となった。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の至適pHを示す相対活性とpHとの相関を示した図である。【図2】本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の安定pHを示す相対活性とpHとの相関を示した図である。【図3】本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の至適温度を示す相対活性(%)と温度との相関を示した図である。【図4】本発明の耐熱性L-アミノ酸酸化酵素の温度安定性を示す相対活性(%)と温度との相関を示した図である。【図5】L-フェニルアラニン測定のための検量線を示した図である。【図6】DL-フェニルアラニンの光学分割結果を示した図である。【図7】L-アミノ酸から2-オキソ酸を合成した結果を示した図である。 下記(1)〜(8)の理化学的性質を有し、バチルス属に属する微生物から生産される耐熱性L‐アミノ酸酸化酵素。(1)作用:酸素と水の存在下において、L‐アミノ酸を酸化し、2‐オキソ酸、アンモニアおよび過酸化水素を生成する。(2)基質特異性:L‐フェニルアラニンに強く、L‐メチオニン、L‐トリプトファン、L‐チロシン、L‐ロイシンには弱く作用する。(3)至適pH:pH5.5〜6(4)安定pH:pH6〜11(5)至適温度:50℃付近(6)熱安定性:50mM 酢酸緩衝液(pH5.5)存在下、70℃で15分の熱処理後も85%以上の残存酵素活性率を有する。(7)分子量:ゲル濾過法による分子量は約440kDa、ドデシル硫酸ナトリウム‐ポリアクリルアミドゲル電気泳動法による分子量は、約55kDaである。(8)Km値:L‐フェニルアラニンに対して6〜10mM、L‐メチオニンに対して55〜65mMである。 バチルス属に属する微生物がバチルス・エスピー(Bacillus sp.)99502株(FERM P‐18599)である請求項1に記載の耐熱性L‐アミノ酸酸化酵素。 バチルス属に属し、耐熱性L‐アミノ酸酸化酵素の生産能を有する微生物を、培養温度が15〜60℃、培地のpHが4〜10の範囲で培養し、耐熱性L‐アミノ酸酸化酵素を微生物中に生成蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載のL‐アミノ酸酸化酵素の製造方法。 請求項1記載の耐熱性L‐アミノ酸酸化酵素の生産能を有するバチルス・エスピー(Bacillussp.)99502株(FERM P‐18599)。 2‐オキソ酸の製造またはL‐アミノ酸の測定に使用される、請求項1〜2のいずれか1項に記載の耐熱性L‐アミノ酸酸化酵素。