タイトル: | 特許公報(B2)_パーフルオロアダマンチルアクリル酸エステル類及びその中間体 |
出願番号: | 2002324257 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07C 69/653,C07C 35/52,C07C 67/08,C08F 20/22 |
田中 慎司 吉留 俊英 小土井 浩一 大野 英俊 畠山 直良 JP 4173352 特許公報(B2) 20080822 2002324257 20021107 パーフルオロアダマンチルアクリル酸エステル類及びその中間体 出光興産株式会社 000183646 大谷 保 100078732 田中 慎司 吉留 俊英 小土井 浩一 大野 英俊 畠山 直良 JP 2001390972 20011225 JP 2002220729 20020730 20081029 C07C 69/653 20060101AFI20081009BHJP C07C 35/52 20060101ALI20081009BHJP C07C 67/08 20060101ALN20081009BHJP C08F 20/22 20060101ALN20081009BHJP JPC07C69/653C07C35/52C07C67/08C08F20/22 C07C 69/653 C07C 35/52 C07C 67/08 C08F 20/22 CA(STN) REGISTRY(STN) Journal of Organic Chemistry,1995年,60(7),1999-2002 Journal of Organic Chemistry,1996年,61(15),5073-5076 Journal of the American Chemical Society,1995年,117(27),7088-7091 Journal of Organic Chemistry,1992年,57(15),4297-4300 3 2004123687 20040422 19 20050624 本堂 裕司 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、新規なパーフルオロアダマンチルアクリル酸エステル類及びその中間体に関し、さらに詳しくは、機能性樹脂などの原料として有用性の高いパーフルオロアダマンチルアクリル酸エステル類及びその中間体に関する。【0002】【従来の技術】アダマンタン骨格を有するアクリル酸エステル類やメタクリル酸エステル類は、それらを重合することにより、耐熱性に優れ、かつ耐衝撃性や表面硬度などの機械的強度や光学的特性に優れた重合体が得られることが知られている(例えば特許文献1参照)。その特許文献1においては、アダマンタン骨格の5,7位にハロゲン原子や水酸基を有するジアクリレートやジメタクリレートおよびそれらの重合体が提案されている。そして、このような構造単位を有するアクリル系樹脂やメタクリル系樹脂は、無色透明で表面硬度が高く、しかも光屈折率が大きいことから、レンズやプリズム、感光材料、光ファイバー、光ディスクなどの光学機器部材の素材として有用性が高く、また、一般に用いられているアクリル系樹脂やメタクリル系樹脂に較べて融点や表面硬度が格段に高いことから、アクリル系樹脂やメタクリル系樹脂成形体の耐熱被覆形成材料としても有用性の高いものである。しかしながら、このアクリル系樹脂は、低波長領域では透明性が充分でないという難点がある。【0003】このように、ある種の化学構造を持つアダマンタン骨格を有するアクリル酸エステル類やメタクリル酸エステル類は、機能性樹脂の原料として有用性の高いものであるが、さらに光学的性質や耐熱性などの機能性を高めたアクリル系樹脂やメタクリル系樹脂を得ることのできる多様な化学構造を有するアクリル酸エステル類やメタクリル酸エステル類の開発が要望されている。【0004】【特許文献1】特開昭63−307844号公報(第1頁)【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明は、機能性樹脂などの原料として有用性の高いパーフルオロアダマンチルアクリル酸エステル類及びその中間体を提供することを目的とするものである。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するため種々検討を重ねた結果、特定の化学構造を有するパーフルオロアダマンチルアクリル酸エステル類によれば、前記目的を達成することができることを見出し、これら知見に基づいて本発明を完成するに至った。【0007】すなわち、本発明の要旨は、下記のとおりである。(1) 下記一般式〔1〕【0008】【化4】【0009】〔式〔1〕中、R1 は水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示し、Xはフッ素原子、ヒドロキシル基またはCH2 =C(R )COO−基(ただし、R は水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す)を示す。また、mは12を示す。〕で表されるパーフルオロアダマンチルアクリル酸エステル類。(2) 下記一般式〔2〕【0010】【化5】【0011】〔式〔2〕中、R1 は水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示し、R2 は水素原子、メチル基、エチル基または炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を示す。〕で表されるパーフルオロアダマンチルアクリル酸エステル類。(3) 下記一般式〔3〕【0012】【化6】【0013】〔式〔3〕中、R3はメチル基、エチル基または炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を示す。〕で表されるパーフルオロアダマンタノール類。【0014】【発明の実施の形態】本発明のパーフルオロアダマンチルアクリル酸エステル類は、前記一般式 〔1〕または前記一般式〔2〕で表されるものである。また、本発明のパーフルオロアダマンタノール類は、前記一般式〔2〕で表されるパーフルオロアダマンチルアクリル酸エステル類の中間体(原料)であり、前記一般式〔3〕で表されるものである。ここで、一般式〔2〕及び〔3〕において、R2 が表わす炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基が挙げられる。【0015】そして、この一般式〔1〕で表されるパーフルオロアダマンチルアクリル酸エステル類としては、例えば、下記のものが挙げられる。【0016】【化7】【0017】【化8】【0018】【化9】【0019】【化10】【0020】また、前記一般式〔2〕で表されるパーフルオロアダマンチルアクリル酸エステル類としては、例えば、下記のものが挙げられる。【0021】【化11】【0022】【化12】【0023】さらに、前記一般式〔3〕で表されるパーフルオロアダマンタノール類としては、例えば、2−メチル−2−パーフルオロアダマンタノール、2−エチル−2−パーフルオロアダマンタノール、2−トリフルオロメチル−2−パーフルオロアダマンタノール、2−ペンタフルオロエチル−2−パーフルオロアダマンタノール、2−ヘプタフルオロプロピル−2−パーフルオロアダマンタノール、2−ノナフルオロブチル−2−パーフルオロアダマンタノールが挙げられる。【0024】つぎに、本発明における一般式〔1〕で表されるパーフルオロアダマンチルアクリル酸エステル類を製造する方法については、パーフルオロアダマンタノール類とアクリル酸類を溶媒の還流下に共沸脱水する方法によることができる。ここで用いる原料のパーフルオロアダマンタノール類としては、パーフルオロ−1−アダマンタノール、パーフルオロ−1,3−アダマンタンジオール、パーフルオロ−1,3,5−アダマンタントリオール、パーフルオロ−1,3,5,7−アダマンタンテトラオールが挙げられる。また、アクリル酸類としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸が挙げられる。そして、反応溶媒としては、トルエンやキシレンなどが好適に用いられる。【0025】さらに、この場合の反応条件については、一般的な共沸脱水反応と同様であり、反応温度は−78〜200℃とすることができるが、その反応圧力での溶媒の沸点とするのがより好ましく、反応圧力は0.1〜10MPa、反応時間は1〜24時間、好ましくは3〜6時間である。そして、反応溶媒に溶解させる原料の濃度は、飽和溶解度以内であればよいが、好ましくは0.5〜1.0モル/リットルである。【0026】そして、本発明における一般式〔2〕で表されるパーフルオロアダマンチルアクリル酸エステル類を製造する方法においては、原料のパーフルオロアダマンタノール類として、2−H−2−パーフルオロアダマンタノール、2−メチル−2−パーフルオロアダマンタノール、2−エチル−2−パーフルオロアダマンタノール、2−トリフルオロメチル−2−パーフルオロアダマンタノール、2−ペンタフルオロエチル−2−パーフルオロアダマンタノールなどのパーフルオロアダマンタノール類を使用すればよく、反応条件については、上記と同様にすればよい。【0027】また、これらパーフルオロアダマンタノール類とアクリル酸類との反応を、脱水剤を用いて脱水エステル化する方法で製造してもよい。この方法による場合、脱水剤としては、一般的な脱水エステル化反応で用いるモレキュラーシーブや無水硫酸ナトリウム、無水硫酸マグネシウム、無水リン酸などの酸性脱水剤が好適に用いられる。そして、反応溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒や、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒が用いられる。さらに、この場合の反応条件については、反応温度は−78〜200℃とすることができるが、室温ないし反応圧力での溶媒沸点の範囲とするのが好ましく、反応圧力は0.1〜10MPa、好ましくは大気圧であり、反応時間は1〜24時間、好ましくは3〜6時間である。そして、反応溶媒に溶解させる原料の濃度は、飽和溶解度以内であればよいが、好ましくは0.5〜1.0モル/リットルである。【0028】さらに、これらパーフルオロアダマンチルアクリル酸エステル類は、塩基の存在下に、パーフルオロアダマンタノール類とアクリル酸クロライド類とのエステル化反応によって製造することができる。ここで用いる塩基としては、トリメチルアミンやトリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリンなどが挙げられる。また、反応溶媒は、必ずしも必要ではないが、ジクロロメタンやクロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素や、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒を用いることができる。そして、この場合の反応条件については、反応温度は−78〜100℃とすることができるが、−78℃〜室温の範囲とするのが好ましく、反応圧力は0.1〜10MPa、反応時間は1〜24時間、好ましくは1〜3時間である。さらに、反応溶媒を用いる場合には、原料の濃度は、飽和溶解度以内であればよいが、好ましくは0.5〜1.0モル/リットルである。【0029】また、これらパーフルオロアダマンチルアクリル酸エステル類は、パーフルオロアダマンチルアルコキシドと、アクリル酸クロライド類とのエステル化反応によって製造することができる。この場合の反応溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒を用いることができる。そして、この場合の反応条件については、反応温度は−78〜100℃とすることができるが、−78℃〜室温の範囲とするのが好ましく、反応圧力は0.1〜10MPa、反応時間は1〜24時間、好ましくは1〜3時間である。さらに、反応溶媒に溶解させる原料の濃度は、飽和溶解度以内であればよいが、好ましくは0.5〜1.0モル/リットルである。【0030】そして、この反応に用いるパーフルオロアダマンチルアルコキシドは、上記のパーフルオロアダマンタノール類をアルコキシ化剤と反応させることによって得ることができる。このアルコキシ化剤としては、リチウム金属、ナトリウム金属、カリウム金属、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウムなどが用いられる。また、この場合、反応溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒が用いられる。【0031】さらに、この反応に用いるアクリル酸クロライド類は、上記のアクリル酸類に塩素化剤を反応させることによって得ることができる。この塩素化剤としては、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン、安息香酸クロライド、フタル酸クロライドなどが好適に用いられる。そして、この反応においては、溶媒は必ずしも必要ではないが、ジクロロメタンやクロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素や、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒を用いることができる。さらに、必要に応じて、N,N−ジメチルホルムアミドやヘキサメチルフォスフォリックトリアミド、ピリジンなどの触媒や、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライドなどの反応促進剤を用いてもよい。この場合の反応条件は、反応温度は0〜200℃、好ましくは室温〜100℃の範囲であり、反応圧力は0.1〜10MPa、反応時間は1〜24時間、好ましくは1〜6時間である。さらに、反応溶媒に溶解させる原料の濃度は、飽和溶解度以内であればよいが、好ましくは0.5〜1.0モル/リットルである。【0032】最後に、前記一般式〔3〕で表されるパーフルオロアダマンタノール類の製造方法について述べる。なお、原料はいずれもパーフルオロアダマンタノンである。(1)R3がメチル基、エチル基の場合▲1▼グリニヤー試薬によるカルボニル基への付加反応溶媒中で原料とグリニヤー試薬を反応させ、生成物を酸で加水分解して得られる。溶媒として、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素系、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系のものが使用される。グリニヤー試薬として、アルキルマグネシウムクロライド(RMgCl)、アルキルマグネシウムブロマイド(RMgBr)、アルキルマグネシウムアイオダイド(RMgI)が使用される。前半の反応条件については、常圧下、通常−78〜200℃(好ましくは0℃〜室温)で、反応時間は、通常1〜24時間である。反応溶媒に溶解させる原料の濃度は、飽和溶解度以内であればよいが、好ましくは0.5〜1.0モル/リットルである。【0033】▲2▼リチウム試薬によるカルボニル基への付加反応溶媒中で原料とリチウム試薬を反応させ、生成物を酸で加水分解して得られる。溶媒として、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素系、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系のものが使用される。リチウム試薬として、アルキルリチウム(RLi)、ジアルキルメチルマグネシウムキュプレート〔R2LiCu〕が使用される。前半の反応条件については、常圧下、通常−78〜200℃(好ましくは0℃〜室温)で、反応時間は、通常1〜24時間である。反応溶媒に溶解させる原料の濃度は、飽和溶解度以内であればよいが、好ましくは0.5〜1.0モル/リットルである。【0034】(2)R3がRf(パーフルオロアルキル基:CF3〜C4F9)の場合▲1▼トリメチルシラニルパーフルオロアルカン〔RfSi(CH3)3〕によるカルボニル基への付加反応溶媒中で、触媒の存在下、原料とトリメチルシラニルパーフルオロアルカン〔RfSi(CH3)3〕を反応させ、生成物を酸で加水分解して得られる。溶媒として、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素系、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系のものが使用される。触媒として、テトラブチルアンモニウムフルオリド〔(C4H9)4NF〕が使用される。前半の反応条件については、常圧下、通常−78〜200℃(好ましくは0℃〜室温)で、反応時間は、通常1〜24時間である。反応溶媒に溶解させる原料の濃度は、飽和溶解度以内であればよいが、好ましくは0.5〜1.0モル/リットルである。【0035】▲2▼パーフルオロアルキルアイオダイド(RfI)によるカルボニル基への付加反応溶媒中で、触媒の存在下、原料とパーフルオロアルキルアイオダイド(RfI)を反応させ、生成物を酸で加水分解して得られる。溶媒として、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素系、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが使用される。触媒として、亜鉛(Zn)/ジシクロペンタジエニルチタンジクロリド(Cp2TiCl2)(共存系)が使用される。前半の反応条件については、常圧下、通常−78〜200℃(好ましくは0〜100℃)で、反応時間は、通常1〜24時間である。反応溶媒に溶解させる原料の濃度は、飽和溶解度以内であればよいが、好ましくは0.5〜1.0モル/リットルである。なお、この反応においては、超音波洗浄器による超音波活性化を併用するのが好ましい。【0036】このようにして得られるパーフルオロアダマンチルアクリル酸エステル類は、熱安定性や化学的安定性、潤滑性、電気絶縁性などの特性に優れ、光学的性質や耐熱性の要求される機能性樹脂の原料や、耐熱性向上剤などの樹脂添加剤、酸性増加剤や脂溶性増加剤などの添加剤、塗料や印刷インキなどのコーティング剤、潤滑油、作動油、熱媒体、接着剤、光ファイバーの被覆剤、医薬・農薬中間体などの幅広い分野で有用性の高いものである。【0037】【実施例】つぎに、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。〔実施例1〕内容積50ミリリットルのフラスコに、パーフルオロ−1−アダマンタノール2.1g(5.0ミリモル)を入れ、ついで溶媒のテトラヒドロフラン10ミリリットルを加え、さらに塩基としてトリエチルアミン0.84ミリリットル(6.0ミリモル)を加えて攪拌した。【0038】つぎに、このフラスコを氷浴につけ、このフラスコ内にアクリル酸クロライド0.4ミリリットル(5.0ミリモル)をゆっくりと滴下した。このアクリル酸クロライドを滴下すると直に塩が生成して、反応液が白濁した。そして、アクリル酸クロライドを滴下した後、15分経過した後にフラスコを氷浴から外して、室温において攪拌下に3時間反応させた。【0039】反応終了後、得られた反応液はフィルターを取り付けたキャヌラーでろ過し、フラスコ内をテトラヒドロフラン5ミリリットルで2回洗い込んだ。そして、この反応液から溶媒を留去した後、ガラスチューブオーブンで精製することにより、目的とするパーフルオロ−1−アダマンチルアクリレートを得た。収量は1.4g(2.9ミリモル)であり、収率は59%であった。【0040】ここで得られたパーフルオロ−1−アダマンチルアクリレートについては、核磁気共鳴分光法(NMR法)による分析の結果、 1H−NMR〔270MHz〕において、6.16(dd,Jvic-trans =10.4Hz,Jgem =1.5Hz,1H)、6.25(dd,Jvic-trans =10.4Hz,Jvic-cis =16.3Hz,1H)、6.64(dd,Jvic-cis =16.3Hz,Jgem =1.5Hz,1H)に吸収が認められ、また、13C−NMR〔68MHz〕において、123.4、136.12、157.47に吸収が認められた。また、19F−NMR〔254MHz〕においては、−221.55(s,3F)、−121.17(s,6F)、−114.61(s,6F)に吸収が認められた。また、ガスクロマトグラフィー質量分析の結果は、476(M+,2.4%)、456(1.8%)、55(100%)であった。【0041】〔実施例2〕実施例1において原料に用いたアクリル酸クロライドに代えて、メタクリル酸クロライド0.49ミリリットル(5.0ミリモル)を用いた他は、実施例1と同様にして反応を行った。この結果、目的とするパーフルオロ−1−アダマンチルメタクリレートを得た。収量は1.6g(3.3ミリモル)であり、収率は65%であった。【0042】ここで得られたパーフルオロ−1−アダマンチルメタクリレートについては、核磁気共鳴分光法(NMR法)による分析の結果、 1H−NMR〔270MHz〕において、3.03(s,3H)、5.88(s,1H)、6.33(s,1H)に吸収が認められ、また、13C−NMR〔68MHz〕において、18.34、130.46、158.79に吸収が認められた。また、19F−NMR〔254MHz〕においては、−221.65(s,3F)、−121.18(s,6F)、−114.55(s,6F)に吸収が認められた。また、ガスクロマトグラフィー質量分析の結果は、490(M+,20%)、471(19%)、69(100%)であった。【0043】〔実施例3〕(1)α−(トリフルオロメチル)アクリル酸クロライドの製造内容積200ミリリットルのフラスコに、α−(トリフルオロメチル)アクリル酸42.0g(300ミリモル)を入れ、室温において、フタル酸ジクロライド70.0ミリリットル(450ミリモル)をゆっくりと加えて、攪拌した。引き続いて、135℃のオイルバス中で加熱しながら、2時間反応させることにより、オレンジ色の反応液を得た。【0044】ついで、この反応液を常圧蒸留することにより、無色透明な液状生成物41.2g(収率86.6%)を得た。この生成物について核磁気共鳴分光法(NMR法)による分析を行った結果、 1H−NMR〔270MHz〕においては6.91(s,1H)、7.11(s,1H)に吸収が認められ、また、13C−NMR〔68MHz〕においては、120.91(quar,JC-F =273.9Hz)、135.25(quar,JC-CF3 =31.8Hz)、139.28、161.92に吸収が認められ、α−(トリフルオロメチル)アクリル酸クロライドであることが確認された。【0045】(2)パーフルオロ−1−アダマンチル−α−(トリフルオロメチル)アクリレートの製造実施例1で原料に用いたアクリル酸クロライドに代えて、上記(1)で得られたα−(トリフルオロメチル)アクリル酸クロライド801mg(5.1ミリモル)を用いた他は、実施例1と同様にして反応を行った。この結果、目的とするパーフルオロ−1−アダマンチル−α−(トリフルオロメチル)アクリレートを得た。収量は1.2g(2.2ミリモル)であり、収率は44%であった。【0046】ここで得られたパーフルオロ−1−アダマンチル−α−(トリフルオロメチル)アクリレートについては、核磁気共鳴分光法(NMR法)による分析の結果、1H−NMR〔270MHz〕において、7.92(quar,J=2.8Hz,1H)、8.04(quar,J=2.8Hz,1H)に吸収が認められ、また、13C−NMR〔68MHz〕において、121.15(quar,JC-F =268.5Hz)、131.85(quar,JC-CCF3=5.0Hz)、132.74(quar,JC-CF3 =31.8Hz)、159.79に吸収が認められた。また、19F−NMR〔254MHz〕においては、−221.51(s,3F)、−121.99(s,6F)、−114.44(s,6F)、−66.41(s,3F)に吸収が認められた。また、ガスクロマトグラフィー質量分析の結果は、544(M+,5.4%)、523(4.3%)、123(100%)であった。【0047】〔実施例4〕(1)2−メチル−2−パーフルオロアダマンタノールの製造パーフルオロ−2−アダマンタノン24.1g(60ミリモル)を500ミリリットルのナス型フラスコに入れ、そこへ乾燥したジエチルエーテル180ミリリットルを加え溶解させた後、フラスコを氷浴につけ、攪拌しながら3モル/リットルのメチルマグネシウムブロマイド溶液21ミリリットル(63ミリモル)を滴下した。30分後、ガスクロマトグラフィーによる分析を行い、原料ピークの消失が確認された。反応液を氷水に注いだ後、無機物が水相に溶解するよう希塩酸を加えた。分液漏斗で有機相を分離し、乾燥後、溶媒を留去することで、粗生成物22.9gを得た。その粗生成物をカラムにより精製し、メタノール−ヘキサンにより再結晶を行い、目的物を得た。収量は8.1g(19.4ミリモル)であり、収率は32.3%であった。なお、ガスクロによる純度は84.1%[area]であった。【0048】ここで得られた2−メチル−2−パーフルオロアダマンタノールについては、核磁気共鳴分光法(NMR法)による分析の結果、1H−NMR〔500MHz〕において、1.81(s,3H,CH3)に吸収が認められ、また、13C−NMR〔126MHz〕において、19.68(t,J =13.2Hz,CH3)に吸収が認められた。また、19F−NMR〔471MHz〕においては、−223.11(s,1F,d or e)、−222.71(s,1F,e ord)、−217.94(s,2F,a)、−123.62(quar,J=240Hz,1F)、−121.11(s,2F,f)、−118.52(d,J=271Hz,2F)、−117.46(s,1F)、−116.90(s,1F)、−116.34(s,1F)、−114.39(d,J=271Hz,2F)に吸収が認められた。また、ガスクロマトグラフィー質量分析の結果は、418(M+,0.38%)、403(6.0%)、131(85.2%)、69(100%)であった。さらに、示差走査熱量測定(DSC)による融点は、69.7〜79.5℃であった。以上の分光データによる構造解析の結果、下記の構造式を確認した。【0049】【化13】【0050】(2)2−メチル−2−パーフルオロアダマンチルメタクリレートの製造2−メチル−2−パーフルオロアダマンタノール0.836g(2.0ミリモル)を50ミリリットルのナス型フラスコに入れ、そこへテトラヒドロフラン20ミリリットル加え溶解させ、フラスコを氷浴につけ、更にトリエチルアミン0.33ミリリットル(2.4ミリモル)とメタクリル酸クロライド0.22ミリリットル(2.0ミリモル)を加え攪拌を開始した。15分後氷浴を外し、室温で更に48時間反応させた。反応液は襞折ろ紙でろ過し、反応器をジエチルエーテル5ミリリットルで2回洗浄した。分液漏斗で塩を除き、有機相を回収した。カラムにより分離し、溶媒を留去した結果、目的の2−メチル−パーフルオロ−2−アダマンチルメタクリレートを得た。収量は0.17g(0.35ミリモル)であり、収率は17.5%であった。なお、ガスクロによる純度は97.6%[area]であった。【0051】ここで得られた2−メチル−パーフルオロ−2−アダマンチルメタクリレートについては、核磁気共鳴分光法(NMR法、CDCl3)による分析の結果、 1H−NMR〔500MHz〕において、1.93(s,3H,f)、2.16(s,3H,c)、5.71(s,1H,a1)、6.12(s,1H,a2)に吸収が認められ、また、13C−NMR〔126MHz〕において、15.04(f)、18.31(c)、128.54(a)、130.50(b)、162.32(d)に吸収が認められた。また、19F−NMR〔471MHz〕においては、−221.65(s,3F)、−121.18(s,6F)、−225.55(s,2F,g or j)、−209.76(s,2F,j or g)、−121.07(s,2F,k)、−116.72(q,6F,i)、−114.30(d,2F,h)に吸収が認められた。また、ガスクロマトグラフィー質量分析の結果は、486(M+,1.4%)、400(1.4%)、381(2.4%)、181(7.1%)、86(100%)であった。また、示差走査熱量測定(DSC)による融点は、54.7〜57.1℃であった。以上の分光データによる構造解析の結果、下記の構造式を確認した。【0052】【化14】【0053】〔実施例5〕1,3−パーフルオロアダマンタンジオール1)62.3g(150ミリモル)を500ミリリットルのナス型フラスコに入れ、そこへジエチルエーテル200ミリリットル加えて溶解させ、フラスコを氷浴につけ、さらにトリエチルアミン25.1ミリリットル(180ミリモル)とアクリル酸クロライド12.2ミリリットトル(150ミリモル)を加え攪拌を開始した。1時間後氷浴を外し、室温でさらに約15時間反応させた。反応液を襞折ろ紙でろ過し、反応器をジエチルエーテル50ミリリットルで2回洗い込んだ。次いで、分液漏斗で塩を除き、有機層を回収した。カラムにより分離し、溶媒を留去した結果、目的の3−ヒドロキシ−1−パーフルオロアダマンチルアクリレート2)〔実収率:18.6g(39.2ミリモル)、収率:26.1%、ガスクロ純度:96.5%[area]〕と1,3−パーフルオロアダマンチルジアクリレート〔実収率:8.6g(16.2ミリモル)、収率:10.8%、ガスクロ純度:95.3%[area]〕を得た。注1)不純物として、25.4%の2−ヒドロ−1,3−パーフルオロアダマンタンジオールを含んでいる。注2)3−ヒドロキシ−1−パーフルオロアダマンチルアクリレート及び1,3−パーフルオロアダマンチルジアクリレートは、それぞれ不純物として、10.7%の2−ヒドロ−3−ヒドロキシ−1−パーフルオロアダマンチルアクリレート及び18.7%の2−ヒドロ−1,3−パーフルオロアダマンチルジアクリレートを含んでいる。【0054】ここで得られた3−ヒドロキシ−1−パーフルオロアダマンチルアクリレートについては、核磁気共鳴分光法(NMR法、CDCl3)による分析の結果、 1H−NMR〔500MHz〕において、4.95(br,1H)、6.14(d,J=10.1Hz,1H)、6.24(dd,J=10.1Hz,J=17.2Hz,1H)、6.62(J=17.2,1H)に吸収が認められ、また、13C−NMR〔126MHz〕において、125.88(CH2=)、135.96(−CH=)、158.05(C=O)に吸収が認められた。また、19F−NMR〔471MHz〕においては、−219.30(s,2F)、−120.69(s,6F)、−113.61(s,6F)に吸収が認められた。また、赤外分光法(IR)による分析の結果、1765.6cm−1(C=O)に吸収が認められた。さらに、示差走査熱量測定(DSC)による融点は、69.7〜79.5℃であった。【0055】また、得られた1,3−パーフルオロアダマンチルジアクリレートについては、核磁気共鳴分光法(NMR法、CDCl3)による分析の結果、 1H−NMR〔500MHz〕において、6.12(d,J=10.9Hz,2H)、6.24(dd,J=10.9Hz,J=16.6Hz,2H)、6.62(J=16.6,2H)に吸収が認められ、また、13C−NMR〔126MHz〕において、126.09(CH2=)、135.78(−CH=)、161.55(C=O)に吸収が認められた。また、19F−NMR〔471MHz〕においては、−219.01(t,J=29Hz,2F)、−121.19(s,2F)、−120.49(d,J=249Hz,2F)、−119.07(d,J=264Hz,2F)、−117.19(d,J=249Hz,2F)、−113.81(d,J=29Hz,2F)、−113.49(d,J=264Hz,2F)に吸収が認められた。また、赤外分光法(IR)による分析の結果、1781.8cm−1(C=O)に吸収が認められた。さらに、示差走査熱量測定(DSC)による融点は、92.4〜106.7℃であった。【0056】【発明の効果】本発明によれば、光学的性質や耐熱性に優れた機能性樹脂の原料や、耐熱性向上剤などの樹脂添加剤、酸性増加剤や脂溶性増加剤などの添加剤、塗料や印刷インキなどのコーティング剤、潤滑油、作動油、熱媒体、接着剤、光ファイバーの被覆剤、医薬・農薬中間体などの幅広い分野で有用性の高いパーフルオロアダマンチルアクリル酸エステル類を提供することができる。 下記一般式〔1〕〔式〔1〕中、R1 は水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示し、Xはフッ素原子、ヒドロキシル基またはCH2 =C(R )COO−基(ただし、R は水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す)を示す。また、mは12を示す。〕で表されるパーフルオロアダマンチルアクリル酸エステル類。 下記一般式〔2〕〔式〔2〕中、R1 は水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示し、R2 は水素原子、メチル基、エチル基または炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を示す。〕で表されるパーフルオロアダマンチルアクリル酸エステル類。 下記一般式〔3〕〔式〔3〕中、R3はメチル基、エチル基または炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を示す。〕で表されるパーフルオロアダマンタノール類。