タイトル: | 特許公報(B2)_ジメチルアミド化合物とカルボン酸を蒸留分離する方法及びその装置 |
出願番号: | 2002313609 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07C 231/24,B01D 3/14,B01D 3/36,C07C 233/03 |
和地 俊 太田 信久 前田 武和 木村 俊彦 林 敬蔵 JP 4271423 特許公報(B2) 20090306 2002313609 20021029 ジメチルアミド化合物とカルボン酸を蒸留分離する方法及びその装置 株式会社カネカ 000000941 楠本 高義 100094248 和地 俊 太田 信久 前田 武和 木村 俊彦 林 敬蔵 20090603 C07C 231/24 20060101AFI20090514BHJP B01D 3/14 20060101ALI20090514BHJP B01D 3/36 20060101ALI20090514BHJP C07C 233/03 20060101ALI20090514BHJP JPC07C231/24B01D3/14 AB01D3/36C07C233/03 C07C 231/24 B01D 3/14 B01D 3/36 C07C 233/03 JSTPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) CiNii 特開昭52−153907(JP,A) 特開昭57−130960(JP,A) 特開昭61−218563(JP,A) 特開平03−148244(JP,A) 特開2002−348270(JP,A) 特開2002−363150(JP,A) 特開2003−073359(JP,A) J.Chem.Eng.Data,1985年,30(4),p.455-459 16 2004149421 20040527 22 20050906 近藤 政克 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、カルボン酸とジメチルアミド化合物を含む混合溶液を各成分に分離する場合に用いる技術に関する。【0002】【従来技術および発明が解決しようとする課題】ジメチルアミド化合物としては、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドなどが溶剤として多くの生産プロセスに用いられている。これらは、各種のポリマー化合物の重合工程や繊維、人工皮革、膜などの成形工程における溶剤としても利用されている。【0003】これらの工程において、溶剤としてのジメチルアミド化合物にカルボン酸が混入する場合がある。具体的には、生産工程の処方で酢酸が混合されたり、また、無水酢酸の加水分解によって酢酸へと転化してもたらされる場合もある。あるいは、ジメチルホルムアミドの加水分解によって蟻酸が発生したり、ジメチルアセトアミドの加水分解で発生した酢酸が含まれる場合もある。【0004】このように生産工程における溶剤として使用されたり、反応原料が未反応のまま排出されたり、あるいは反応の生成物として排出される場合には、各種成分の混合状態であることが多い。溶剤や未反応物質は、各成分に分離して再び生産工程に使用したり、それらの物質が製品である生産工程についても目的物質を単独で分離して取り出すことが必要とされる。【0005】しかし、カルボン酸とジメチルアミド化合物を含む混合溶液からそれぞれの成分を分離して取り出すために蒸留操作を行なうと、これらの2成分が最高共沸混合物を形成するため、完全に分離することは困難である。【0006】例えば、酢酸の沸点は118℃、ジメチルホルムアミドの沸点は153℃であるが、常圧での蒸留操作において、例えば、酢酸とジメチルホルムアミドの比率を重量基準で約33/66とする混合溶液は、沸点が165℃程度まで上昇すると、その混合比率を維持したまま蒸発してくるので分離することができない。従って、例えば酢酸10gとジメチルホルムアミド90gの混合溶液を蒸留すると、酢酸10gとジメチルホルムアミド20gとが最高共沸混合物となるので、ジメチルホルムアミド70gは分離できるが、最高共沸混合物については分離回収することができない。【0007】また、ジメチルホルムアミドと蟻酸の場合、重量基準で約31/69の混合比において沸点163℃の最高共沸混合物を形成する。ジメチルアセトアミドも同様に、蟻酸や酢酸と最高共沸混合物を形成する。【0008】上記のように、カルボン酸とジメチルアミド化合物の混合液が、共沸混合組成物となってジメチルアミド化合物の回収が困難となる場合には、蒸留操作に先立って、酢酸成分を苛性ソーダなどのアルカリで中和反応処理する。そして、中和反応により酢酸ナトリウムなどの塩を生成させてから、蒸発処理などの手段を用いて、固形分となった塩を除去する。この方法によれば、酢酸を含まない溶液が得られる。例えば、ポリウレタン製造工程で排出される蟻酸を含有するジメチルホルムアミドに対して、アミノ化合物を中和点まで添加してからジメチルホルムアミドを蒸留精製する方法が知られている(例えば、特許文献1)。こうして得られた溶液を蒸留して、ジメチルホルムアミドを分離回収することができる。しかし、この方法では酢酸成分の回収はできないこと、中和反応・固形物分離操作の負荷が大きい上に、固形の廃棄物を処理しなければならないという困難が伴なう。【0009】蒸留分離における共沸混合組成の問題を解消する他の手段としては、エントレーナーとして作用する溶剤を添加する方法がある(例えば特許文献2、特許文献3など)。エントレーナーとしてトルエンを用い、トルエンと共に酢酸を共沸蒸留分離する方法では、酢酸を水に抽出して排水処理することができる。【0010】これに対し、イソキノリンなどをエントレーナーに用いる蒸留方式を利用する方法がある。この方法によれは、酢酸とジメチルホルムアミドの最高共沸混合組成を蒸留分離するために、イソキノリンを添加して共沸組成が酢酸の富む濃度方向へと移行させ、その結果として、共沸組成から過剰となったジメチルホルムアミドを蒸気として取り出すことができる。従って、この方法では、排水処理を必要とせずにそれぞれの成分を単離することができる。【0011】しかし、上記のようにして得られるジメチルホルムアミドを種々の用途に適用する場合、不純物の混入が大きな問題となる。たとえば、ポリイミド重合溶剤としてのジメチルホルムアミドを用いる場合、ジメチルホルムアミド中の水分の含有量を低くする必要がある(例えば、特許文献4)。【0012】ところが、キノリン化合物を添加する方法(例えば、特許文献5)で取り出されるジメチルホルムアミドには、不純物として水分を含有することが本発明の検討において見出された。すなわち、予め充分に脱水蒸留をして水分を除去した原料液を用いて試験しても、得られるジメチルホルムアミドに水が混入する問題が、本発明者らにより新たに見出されたのである。【0013】上記水の混入問題に伴って、ジメチルアミド化合物の加水分解反応による不純物が発生することも問題となった。たとえば、ジメチルホルムアミドの加水分解では、副反応により、ジメチルアミンと蟻酸が発生することが知られている(例えば、非特許文献1)。【0014】この条件において、水の発生理由は定かではない。酢酸が水と酸無水物に分裂していることが想定されるが、この反応の平衡は酢酸側に偏っており水が発生することは考えにくい。しかしながら、イソキノリン存在下でのみ起こる反応として、結果的に水が発生するのである。このような微量に発生する不純物である水が混入することは、キノリン化合物を利用した蒸留分離法を実施して新たに見出された現象であり、蒸留で取り出されるジメチルホルムアミドの純度が低下する原因となる。従って、高純度を必要とする用途においては、大きな問題となる。【0015】ジメチルホルムアミド中の水を除去する手段として、脱水蒸留方式が従来から知られている(例えば、非特許文献2、および非特許文献3)。この脱水蒸留操作においては、ジメチルホルムアミドの加水分解によりジメチルアミンと蟻酸が発生し、ジメチルアミンは水とともに低沸点物として除去される。しかし、蟻酸がジメチルホルムアミドと最高共沸混合組成を形成して残留する。従って、純度の高いジメチルホルムアミドを得るには、引き続いて蟻酸を分離除去する蒸留操作が必要とされ、蒸留設備および蒸留操作やエネルギー消費が大きいことが問題となっていた。【0016】本発明は、後者のキノリン化合物を用いた蒸留方式を改良して実用上の課題を改善しようとするものである。【0017】【特許文献1】特公昭58−57421号【特許文献2】日本特許出願2002−166994【特許文献3】日本特許出願2001−158870【特許文献4】特開平6−87958号【特許文献5】日本特許出願2001−158870【非特許文献1】化学工学論文集第16巻、2号、p391、藤原恒昭、1990年【非特許文献2】服部慎二;化学装置1980年11月号p.33〜50【非特許文献3】杉田正道;化学装置1984年3月号p.54〜58【0018】【課題を解決するための手段】このような従来方式における水発生が引き起こす不純物の混入を克服することを目指し、本発明者らは、鋭意検討した結果本発明を完成した。すなわち本発明は:ジメチルアミド化合物とカルボン酸とを含む原料混合液に、キノリン類を添加して蒸留する方法であって、ジメチルアミド化合物全取り出し量のうち、1重量%以上50重量%以下の量を蒸留塔の塔頂から留出させ、残りをさらに精製されたジメチルアミド化合物として蒸留塔の中間高さ位置から液抜出しすることを特徴とする、蒸留分離方法および装置である。【0019】【発明の実施の形態】本発明方法の蒸留に供する原料混合液は、酢酸をはじめとするカルボン酸とジメチルホルムアミド等のジメチルアミド化合物を含む混合液である。本発明ではキノリン類を原料混合液に添加して蒸留することを特徴とする。【0020】原料混合液としては、組成式(CH3)2NCORで表され、Rが、H,CH3,CHCH2からなる群から選択されるジメチルアミド化合物、および、組成式:CnH2n+1COOHで表され、nが0,1,2から選択されるカルボン酸、具体的には、酢酸、蟻酸等のカルボン酸、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のジメチルアミド化合物との組み合わせが挙げられる。例えば、原料混合液において、前記カルボン酸が酢酸であり、前記ジメチルアミド化合物がジメチルホルムアミドである組み合わせが挙げられる。原料混合液において、重量比で、カルボン酸よりジメチルアミド化合物の含有量が大きいことが好ましい。キノリン類としては、例えば、キノリン、イソキノリン、メチルキノリンがある。これらのカルボン酸とジメチルアミド化合物との混合液は、最高共沸混合組成を形成するため、通常の蒸留方法では分離が困難である。キノリン類については原料混合液に予め含まれていても良いし、蒸留操作のために添加することもできる。【0021】本発明の蒸留操作は、通常の蒸留塔を用いて行なうことができ、特別な装置を製作しなくてもよい。蒸留搭は、基本的にはジメチルアミド化合物を精製する蒸留搭1塔で、本発明の方法を実現することができる。蒸留搭は、2塔以上の組み合わせであってもよい。より効率よく精度のよい溶剤を分離するためには、2塔以上の組み合わせが好ましい。【0022】蒸留塔へ原料混合液を供給する。原料混合液は、蒸留塔中段位置付近から供給することが好ましい。なお、原料混合液の供給は、蒸留搭中段位置付近での一個所あるいは、複数の箇所からでも選択しうる。供給された原料液は、蒸留搭に導入され蒸留操作に供されることにより、加熱蒸発させて塔上部に留出する成分と、塔底部からの成分とに分けて取り出すことができる。「中段位置」とは、蒸留搭の塔底よりも上であって、精製ジメチルアミド化合物取り出し位置よりも下の位置である。【0023】塔底部の成分は、沸点の高い、カルボン酸とジメチルアミド化合物の最高共沸組成物と、添加されたキノリン類であり、これらがともに塔底部へ溜まり缶出される。塔頂部には、最高共沸組成よりも過剰なジメチルアミド化合物が、相対的に沸点が低いため蒸発して塔頂部へ到達している。このジメチルアミド化合物が留出される。【0024】本発明の最大の特徴であり必須の実施形態は、蒸発して塔頂部へ到達したジメチルアミド化合物のうち、1重量%以上で50重量%以下の量を塔頂部から留出させ、残りをさらに精製されたジメチルアミド化合物(以下,精製ジメチルアミド化合物という。)として蒸留塔の中間高さ位置から取り出すことである。また、本発明においては、蒸留塔底部の塔底液のキノリン類の濃度を10重量%〜95重量%とすることができる。【0025】本発明における、精製ジメチルアミド化合物を蒸留塔から取り出す「中間高さ位置」とは、蒸留搭へ原料液を供給する高さ位置を基準にして少なくとも理論段数で1段以上高い位置であり、かつ蒸留搭の塔頂還流液を供給する位置を基準にして少なくとも1段以上低い位置である。より好ましい「中間高さ位置」としては、蒸留搭へ原料液を供給する高さ位置を基準にして5段以上高い位置であり、蒸留搭の塔頂還流液を供給する位置を基準にして5段以上低い位置である。ここで「蒸留搭への原料液の供給高さ」は蒸留搭の中段位置である。また、「蒸留搭の塔頂還流液を供給する位置」は塔頂である。【0026】精製ジメチルアミド化合物を蒸留搭から取り出す位置が、蒸留搭へ原料液を供給する高さ位置を基準にして高い位置にするほど、中間高さから抜出される精製ジメチルアミド化合物中に、不純物としてのカルボン酸の混入や高沸点物質のキノリン類の混入を容易に低減することができること、あるいは蒸留における塔頂還流比を小さくして熱エネルギーを削減できることが利点である。また、蒸留搭の塔頂還流液を供給する位置を基準にして低い位置にするほど、中間高さから抜出される精製ジメチルアミド化合物中に、低沸点の不純物としてのジメチルアミンおよび水の混入を容易に低減することができること、あるいは蒸留における塔頂還流比を小さくして熱エネルギーを削減できることが利点である。従って、蒸留搭の中間高さ位置は、原料供給位置と塔頂還流液を供給する位置との中間位置であることが好ましい。この蒸留搭の中間高さ位置から抜出される精製されたジメチルアミド化合物は、蒸留搭の塔頂から留出されるジメチルアミド化合物より、含まれる不純物が、重量比で1/1000〜1/3と、顕著に少ない精製程度となりうる。【0027】ここで、「1段」とは、棚段式蒸留搭においては実際の棚段1段であるが、充填材を利用した気液接触方式であって棚段が用いられていない場合についても、棚段1段に相当する蒸留分離性能をもたらす充填材の高さを意味する。このような、充填材の理論段については、例えば理化学辞典第4版(岩波書店、1987年発行)第134ページにおいて、「HETP」(height equivalent to a theoretical plate)として説明されている。その定量的な取り扱いについては、例えば化学工学便覧改訂6版(化学工学会編、丸善、1999年発行)第598ページに明確に記載されている。【0028】種々の不純物は、以下のように挙動する。すなわち、塔頂部ではコンデンサーで凝縮された液を留出させるとともに、その一部は塔上部から還流され液と蒸気が接触する。接触することにより、蒸気に含まれる不純物のうち低沸点の成分が、さらに塔頂へ運ばれ濃縮されて排出される。また、キノリン類を用いるこの蒸留方式では、水が発生することが本発明の検討において見出されているが、比較的低沸点である水は、蒸留塔の上部へ向かって濃縮されて行く。この水が原因となってジメチルアミド化合物が加水分解を起こしジメチルアミンが発生する。このジメチルアミンは沸点が低いので、更に塔上部へと排出される。また、この加水分解反応で同時に発生する蟻酸は、ジメチルアミド化合物と最高共沸混合物を形成して高沸点物質として挙動し、蒸留塔の塔底部へ濃縮される。【0029】上述したように、塔頂でコンデンサーで凝縮された液が、還流されて流下する過程において、蒸留成分蒸気と接触することにより、水およびジメチルアミンなどの低沸点不純物が上部へ放散され、蟻酸は塔底部へ分離される。従って、塔中間高さから取り出すジメチルホルムアミドを主成分とする液は、不純物の少ない、より精製されたジメチルアミド化合物として得ることができる。【0030】このような水が発生したり加水分解が起こる副反応は、操作温度が高いほど著しくなるが、蒸留塔の運転圧力を低下させて蒸留温度を低くすることにより、調整することができる。この観点において、蒸留温度の好適な範囲は、50℃〜200℃であるが、より好ましくは80℃〜120℃である。【0031】ジメチルアミド化合物留分のうち、塔頂部から抜き出す割合を増加させると、塔中間高さ位置から取り出す精製されたジメチルアミド化合物液へ、水やジメチルアミンなどの不純物が混入することを抑えることができる。しかし、一方で、より精製されたジメチルアミド化合物の抜き出し量は減少する。従って、塔頂留出分のジメチルアミドの全取り出し量に対する割合は、1重量%以上で50重量%以下の範囲が好ましい。より好ましくは5重量%以上の場合、より安定的に水分を排除することができる。また、30重量%以下の場合、塔中間高さ位置から取り出す精製ジメチルアミド化合物の量が多くなり、より効率的に操作できる。【0032】また、蒸留塔頂部の還流比(=還流液量/留出液量)を増大すると、精製ジメチルアミド化合物中の不純物を低下することができる。還流比は1〜50程度にすることができ、好ましくは5〜20の範囲である。【0033】本発明では、蒸留塔の中間高さ位置から、ジメチルアミド化合物液を抜き出すことを特徴とする。好ましい実施方式としては、蒸留塔の一定の位置から流下する液のみを全量払出し、一定量をより精製されたジメチルアミド化合物として抜き出し、残りの液を蒸留塔に戻して流下させることができる。この際、蒸留塔内の蒸気成分は、抜き出されることなく塔内を上昇する。【0034】より具体的には、蒸留搭の中間高さ位置にて塔内断面全域を流下する液を塞き止めて、その液全量を払い出して受器へ導入する。ついで、その受器からポンプなどにより、一部の液を精製ジメチルアミド化合物として払出す。残りの液は、蒸留搭の液払い出しするために、塞き止めた位置の直下へと還流して、再び塔断面全域に分散させ、流下させることができる。この蒸留搭中間高さ位置で流下液は塞き止められるが、塔内の蒸留蒸気は、塞き止めることなく上昇させることができる。【0035】この場合、精製ジメチルアミド化合物として抜き出す液量は、塔内を流下する液量の半分以下とすることが好ましい。抜き出し液量が多すぎると、塔の下部における流下液量が少なくなって気液接触性能が低下する場合がある。また、抜き出し液量が過半量を超えて多くなると、その流量および塔内流下液量の僅かな変動が塔下部へ戻す流下液量に及ぼす影響が著しくなり、塔内下部に液が無くなる等の問題が起こる場合がある。【0036】本発明において、不純物として水が混入する問題は、蒸留塔への供給原料に混入して導入されたものを物理的に分離することによっては解決できない。水は、蒸留塔の内部において化学反応により発生していると推定される。しかし、本発明において、ジメチルアミド化合物の塔頂留出の際に水を濃縮し、かつ塔中間高さ位置の液から精製ジメチルアミド化合物を取り出すことによって、問題を解決することが見出された。すなわち、実質的に水の混入を排除できるとともに、水発生に関連すると考えられる酢酸、無水酢酸、キノリン類などの化学反応物質も、精製ジメチルアミド化合物には混入しない。【0037】本発明の方法において付加的な実施形態は、基本的な蒸留操作に先行して、脱水蒸留工程を備えた方法である。この方法において、ジメチルアミド化合物精製蒸留塔の塔頂部から留出する成分は、脱水蒸留工程に供する脱水蒸留塔へ供給して再循環させることができる。ジメチルアミド化合物に含まれていた水分が、脱水蒸留工程によって除去されることにより、水分濃度0.1重量%以下、さらに好ましくは0.01重量%以下となった混合溶液を、次の精製蒸留塔へ供給することができる。このようなジメチルアミド化合物の脱水蒸留操作では、加水分解反応によるジメチルアミンの副生が知られている。これを抑制するために、脱水蒸留工程の操作温度は、できるだけ下げることが好ましい。具体的には、減圧蒸留方式により、150℃以下あるいは、更に好ましくは、100℃以下にて実施しうる。【0038】本発明のさらに他の実施形態は、上記脱水蒸留工程に先行して、さらに加水分解工程を設ける方法である。この方法は、原料混合液に無水酢酸が含まれる場合に、より好ましい実施形態である。この場合、ジメチルアミド化合物精製蒸留塔の塔頂部から留出する成分は、加水分解工程に供する加水分解反応器への供給液として、再循環させることができる。「精製蒸留塔」塔頂部から留出して再循環するジメチルアミド化合物は、水分だけでなく加水分解副生物のうちで沸点の低いジメチルアミンを含んでいる場合がある。このジメチルアミンは、無水酢酸と速やかに反応させて、ジメチルアセトアミドに転化させることができる。加水分解工程では、無水酢酸の加水分解反応を生じさせることが主な目的であり、加水分解工程に供する加水分解反応器の内部温度は、温度が低すぎると反応の進行が遅い。一方、温度が高すぎると目的の反応以外に、ジメチルアミド化合物の加水分解が顕著になる。従って、50℃〜100℃の温度で操作することが好ましい。目的とする反応は、10分〜2時間程度で進行するため、回分型反応器あるいは流通式連続型反応器の何れかを用いることが好ましい。操作に際し、流通式連続型反応器を用いる場合、管型の反応器内を所定の滞留時間にわたって温度を維持することにより実現できる。管型の反応器の内部圧力は、原料液の貯蔵状態よりも高く設定するとよい。このような設定により、貯蔵中に原料液に溶解した空気などの気体成分が、加温した反応器において蒸発気化して気泡流となることを防止することができる。【0039】加水分解反応器へ供給する水の量は、原料液中に含まれる無水酢酸を反応するに必要な量よりも十分過剰にするが、原料液全量に対し1重量%〜30重量%となるようにすることが好ましく、より好ましくは10重量%〜30重量%とすることができる。水量が少ないと反応の進行が遅い。水量が多すぎると脱水蒸留が大規模になり蒸留に大量の熱エネルギーを要する。加水分解反応器による処理により、原料液中に、例えば5重量%程度の無水酢酸が含まれていても、その大部分を酢酸に転化して、無水酢酸含有を10ppm〜1000ppm程度にすることができる。【0040】なお、脱水蒸留搭塔頂部から留出する水には、低沸点の成分であるジメチルアミンのほか、微少量のジメチルアミド化合物やカルボン酸を含有することがある。上記のように再循環しない場合には、蒸留プロセスからの排水として無害化処理をすることが望まれる。従って、本発明においては、加水分解反応器へ供給する水は、原料液に含まれているものでも良いし追加添加しても良い。好ましい実施形態の一つとしては、脱水蒸留塔頂部から留出する水を加水分解反応器への供給水として再循環させる。この水を再循環させる方式では、プロセス排出水の量が減少するので、排水無害化処理の負担が小さくなる。【0041】脱水蒸留塔頂部から留出される水は、ジメチルアミド化合物の加水分解によって生成するジメチルアミンが含まれている。しかし、このジメチルアミンは、加水分解反応器にて無水酢酸と速やかに反応し、ジメチルアセトアミドに転化する。【0042】本発明において、更に付加的に選択できる実施形態としては、上記のジメチルアミド化合物精製蒸留塔(第1塔)に加えて、更に第2、第3の合計3つの蒸留塔を使って行なうことができる。例えば、2塔の蒸留搭を用いた場合、上記の第1の蒸留塔底部からジメチルアミド化合物とカルボン酸の共沸混合組成とキノリン類を取り出し、第2の蒸留塔へ導入して高沸点のキノリン類を濃縮して第2塔塔底部から取り出し、第1の蒸留塔へ循環供給することができる。また、3塔の蒸留搭を用いた場合、上記の第1の蒸留塔の塔底部からジメチルアミド化合物とカルボン酸の共沸混合組成とキノリン類を取り出し、第2の蒸留塔へ導入して高沸点のキノリン類を濃縮して第2塔塔底部から取り出し、第1の蒸留塔へ循環供給することができる。さらに、第2の蒸留搭の塔頂部からジメチルアミド化合物とカルボン酸の混合液を留出し、第3の蒸留搭へ供給することができる。第3の蒸留搭の塔頂部からカルボン酸を主成分とする液を留出させ、第3塔の塔底部からジメチルアミドの残留する液を取り出し、第1塔に循環供給することができる。【0043】ここで、この蒸留操作を長時間継続すると、微量の副反応により発生、または原料液に含まれているキノリン類の沸点よりも、高い沸点の不純物が蓄積する問題がある。キノリン類濃縮液を払い出せば、それに含まれる微量の高沸点不純物も同時に取り出されるので、払い出し量が多いほど、蒸留搭システム内部に蓄積されている微量の高沸点不純物の量を低減することができる。しかし、キノリン類濃縮液を払い出す量が多すぎると、その後キノリン類濃縮液から高沸点不純物を除去する工程の付加が大きくなる。【0044】そこで、本発明のひとつの付加的な実施形態としては、第2塔塔底部から取り出して第1の蒸留塔へ循環供給するキノリン類濃縮液のうち、半分以下の量、好ましくは、1重量%〜30重量%を抜出すことを特徴とする。この様にして取り出されたキノリン類濃縮液は、引き続いて別途キノリン類回収塔にて蒸留精製し、高沸点の不純物を除去した後、精製されたキノリン類を取り出すことができる。または、キノリン類濃縮液を、再び第1蒸留塔に供給して利用することができる。第2の蒸留塔の塔頂部からは、キノリン類が分離除去された残りのジメチルアミド化合物とカルボン酸の混合液が留出する。これを第3の蒸留塔に供給することによって、キノリン類不在下での最高共沸混合組成液が塔底部に分離し、余剰の酢酸を第3塔塔頂部に濃縮して留出させることができる。第3塔の塔底部の共沸組成は、キノリン類存在下に比べるとジメチルアミド化合物濃度が高い液であり、これを再び第1塔へ循環供給してジメチルアミド化合物を取り出すことができる。【0045】本発明の他の実施形態の特徴としては、この第3塔塔底部から抜き出して第1塔へ再循環供給する液の半分以下の量、好ましくは、1重量%〜30重量%を、缶出管の途中を分岐して流出させる方法を選択し得る。この流出成分には、ジメチルアミド化合物の加水分解による副生物が濃縮され、効率的に除去することができる。ジメチルホルムアミドを蒸留する場合の副生物は、蟻酸である。また、もう一つの加水分解副生物であるジメチルアミンが、酸無水物の無水酢酸と反応して発生するジメチルアセトアミドについてもこの流出成分に濃縮されて効率的な除去ができる。【0046】本発明のジメチルアミド化合物とカルボン酸を蒸留分離する装置の1の実施態様としては、上記の蒸留分離方法を実現できるものであって、3つの蒸留塔から構成される。【0047】3つの蒸留塔を用いる本発明の装置の実施態様を、図1により説明する。図1は、第1塔、第2塔、第3塔の3つの蒸留塔で構成される装置10の概念図である。3つの蒸留搭、すなわち第1塔12、第2塔14、第3塔16はそれぞれ配管で連結されている。【0048】第1塔12は、原料混合液供給管18および塔頂部留出管20を備えている。本発明のひとつの大きな特徴は、精製ジメチルアミド化合物液を取り出す配管が塔中間高さ位置に設けてあることである。この配管を「中間部払出し管」とする。この第1塔中間部払出し管22は、塔の中間高さ位置における蒸留流下液の一部を抜き出して、残りの流下液は更に下方へ流下させる構造である。第1塔12の中を上昇する蒸気は、抜き出されること無く上方へ流通する。【0049】第1塔塔底部缶出管24は、第2塔14に接続された第2塔供給管26に連結され、第1塔12の塔底部から払出された液を第2塔14に供給する。【0050】第2蒸留塔は、塔底部缶出管28があり、それがキノリン類を第1塔へ再び供給する循環供給管30に接続されている。【0051】この装置は、第2塔塔底部から第1塔供給に接続されている配管が分岐され、第1塔への供給量を、配管中の流量調節によって、流体の一部を流出させて調節する構成とすることもできる。具体的には、塔底部缶出管28の途中に分岐管を設けて、流体の一部を高沸点不純物を除去する処理工程へ流出させることができる。第2塔14の塔頂部留出管32は第3塔供給管34に接続され、第3塔16へ第2塔塔頂部留出液を供給している。【0052】第3塔16は、塔頂部留出管36および塔底部缶出管38を備えている。第3塔底部缶出管38は、循環供給管30に連結することにより第3塔塔底液は第1塔12に供給され得る。なお、循環供給管は、別個独立して設けても良いし、図1のように途中で合流する態様であってもよい。【0053】更に本発明の特徴としては、第3塔底部缶出管から第1塔供給に接続する管が、途中で分岐され、流量調節して流体の1部を流出させるように構成され得る。具体的には、分岐管39が設けられる。【0054】本発明のジメチルアミド化合物とカルボン酸を蒸留分離する装置の1の実施態様としては、上記の蒸留分離方法を実現できるものであって、2つの蒸留塔から構成される。【0055】2つの蒸留塔を用いる本発明の装置の実施態様を、図2により説明する。図2は、第1塔、第2塔の2つの蒸留塔で構成される装置50の概念図である。蒸留搭、第1塔52、第2塔54はそれぞれ配管で連結されている。【0056】第1塔52は、ジメチルアミド化合物とカルボン酸を含む原料液とキノリン類を供給する原料混合液供給管56を備えている。ジメチルアミド化合物とカルボン酸の共沸組成物とキノリン類とを、第1塔52の塔底部缶出管58から取り出す。基本的には、共沸組成混合比を上回る過剰量分のジメチルアミド化合物の1重量%以上で50重量%以下が、その第1塔塔頂部から流出され、残りの液を第1塔中間高さから中間部払出し管60により精製ジメチルアミド化合物として抜き出される。第1塔の塔底部抜き出し液は、塔底部缶出管58から第2塔供給管62により、第2塔54へ導入される。第2塔54は、塔頂部に塔頂部留出管61および塔底部に塔底部缶出管64が設置されている。そして、第2塔54で高沸点のキノリン類が濃縮され、第2塔54の塔底部缶出管64から缶出される。第2塔中間高さ位置に払い出し管65を設け、第1塔へ循環供給する循環供給管66に接続してもよい。第2塔底部缶出管64は、循環供給管66に連結され、第2塔塔底液は第1塔52へ供給され得る。なお、循環供給管は、別個独立に設けても良い。【0057】本発明の装置の付加的な実施形態として、上記2つまたは3つの蒸留搭に加水分解反応器、脱水蒸留塔、またはキノリン類回収蒸留塔のいずれか1つまたは2以上の装置を組み合わせるものである。基本的には、2つまたは3つの蒸留搭により本発明の目的は実現し得るが、混入する水や無水酢酸の除去等の観点から、上記付加的な態様が好ましく用いられ得る。組み合わせとしては、上記のいずれか1つ、または、加水分解反応器と脱水蒸留塔の2つの装置、または、加水分解反応器とキノリン類回収蒸留塔の2つの装置、または脱水蒸留塔とキノリン類回収蒸留塔の2つの装置、さらには、上記3つの加水分解反応器、脱水蒸留塔、およびキノリン類回収蒸留塔の3つの装置を付加しうる。【0058】本発明の付加的態様の装置の1例70を、図3により説明する。図3は、第1塔72、第2塔74の2つの蒸留搭に、加水分解反応器76、脱水蒸留塔78、またはキノリン類回収蒸留塔80を付加したものである。【0059】第1塔72は、原料混合液供給管82、第1塔塔頂部留出管84及び第1塔中間部抜出し管86を備えている。第1塔塔底部缶出管88は、第2塔74に第2塔供給管90に接続され、第1塔塔底液は、第2塔74に供給される。第2塔74は、第2塔塔頂部留出管92および、第2塔塔底部缶出管94を備えている。第2塔塔底部缶出管94は第1塔72の循環供給管96に接続されている。第2塔74には塔中間部からの払出し管98があり、この第2塔中間部払出し管98は、第1塔72への循環供給管96に接続されている。ここで更に本発明の特徴としては、第2塔中間部払出し管98から循環供給管96に接続する配管が分岐されている。具体的には、分岐管100が設けられ得る。これにより、第1塔への供給量の調節を、流量調節により配管内の流体の1部を流出させることにより行う構成とし得る。なお、循環供給管は、別個独立に設けても良いし、途中で合流する態様であってもよい。【0060】図3に示す装置においては、加水分解反応器76が脱水蒸留搭78に連結され、脱水蒸留搭78が、上記第1搭72に連結される構成となっている。加水分解反応器76は、原料混合液中に無水酢酸が混入しているときに設置することが好ましい。原料混合液は、まず原料供給管102により加水分解反応器76に供給される。【0061】加水分解反応器76により反応を経た原料混合液は、脱水蒸留搭供給管104により、脱水蒸留搭78に供給される。脱水蒸留搭78は、原料混合液中に混入している水分の多くを除去させる役割を果たす。脱水蒸留搭78の塔底部から払い出された液は、塔底液缶出管106から第1塔の供給管82を経て「第1塔」72に供給される。【0062】ここで、ジメチルアミド化合物精製蒸留塔である、第1塔72の塔頂部から留出する成分および、脱水蒸留工程に供する脱水蒸留塔78の塔頂部から留出する成分は、第1塔塔頂部留出管84、及び脱水蒸留塔78の塔頂部留出管108から循環供給管110により加水分解反応塔76への供給液として、再び循環させることができる。【0063】脱水蒸留搭塔頂部からの留出水を循環させるだけでは水の量が不足する場合には、原料液供給管102へ外部から水を加えて、水の含有量が原料液に対して、1重量%から50重量%となるように調整することが好ましい。原料供給液に予め水が含まれていて、脱水蒸留搭塔頂部留出水を全量循環すると水の量が過剰になる場合には、脱水蒸留搭塔頂部からの留出水の一部をプロセス排水として廃棄して必要な量だけを循環することができる。【0064】上記蒸留搭にキノリン類回収塔80を付加させる。キノリン類回収塔は、上記蒸留操作において蓄積する不純物を除去することを目的とする。図3においては、第2塔塔底部缶出管94から、缶出液を取り出して第1塔72へ循環供給するキノリン類濃縮液のうち、半分以下の量を抜き出し、引き続いてキノリン類回収塔80に供給管112により導入されて蒸留精製される。高沸点の不純物を除去された後の精製されたキノリン類を得ることができる。また、再び、第1塔に供給することもできる。【0065】第2塔74でキノリン類を除去した後の成分は、共沸混合組成よりもカルボン酸が過剰になっている。その過剰分のカルボン酸を蒸留塔の塔頂部から流出させ、残りの液は、塔中間高さから共沸混合組成として中間部払出し管98から流出させて循環供給管96により第1塔へ供給される。ここで第2塔の中間高さから払い出して第1塔供給へ循環する液の半分以下の量を分岐管100により流出させる方法を選択することができる。なお、循環供給管は、別個独立設けても良いし、途中で合流する態様であってもよい。【0066】2つの蒸留搭に付加的に装置を設置した例を図3に従って説明したが、本発明において、上記加水分解反応器、脱水蒸留塔、キノリン類回収蒸留塔は、蒸留搭1塔、であっても3塔であっても付加することができる。また、加水分解反応器、脱水蒸留塔、またはキノリン類回収蒸留塔のうち、いずれか1または2つの装置を付加してもよい。この場合、循環供給管は、本発明の態様における最初に原料混合液を供給する配管に連結することが好ましい。なお、循環供給管は、別個独立した複数の配管であってもよいし、図3の110のように途中で合流する態様であってもよい。また、3塔で構成される装置においては、第2塔塔底缶出管を分岐しキノリン類回収蒸留搭に配管を接続するとよい。【0067】なお、上記蒸留搭は、その機能を発揮させるために、塔頂部にはコンデンサー、および塔底部にはリボイラーが付帯されている。【0068】特に図においては、説明していないが、各蒸留搭の塔頂部の蒸気は、コンデンサーで凝縮液化され、その1部分は塔頂部留出液として取り出され、残りの液は塔頂部に還流される。また、蒸留搭の塔底液はリボイラーによって加熱蒸発され、蒸留搭内の上昇蒸気を発生する。【0069】以上、本発明にかかるジメチルアミド化合物とカルボン酸を蒸留分離する方法及びその装置について説明したが、本発明は、例えば、ポリイミド樹脂の合成に際し、本発明の方法を適用することができる。ポリイミド樹脂の合成において、成形する工程から排出される溶剤であるジメチルホルムアミドは、酢酸や無水酢酸を含んでおり、これらの溶剤の蒸留精製に、本発明を適用することができる。この溶剤が、成形加工段階や乾燥工程から蒸発気体の状態で排出される場合には、コンデンサーやスクラバーなどの方式によって冷却液化捕集してから、本発明方法の蒸留に供することができる。また、捕集された溶剤に無水酢酸が含まれている場合は、水を添加して無水酢酸を加水分解させ酢酸に変換してから、本発明方法の蒸留に供することができる。また、添加された水や溶剤捕集段階で予め水を含む場合には、本発明方法の蒸留に先だって、脱水処理を目的とした脱水蒸留をすることもできる。このように、本発明を適用して蒸留搭の中間高さ位置から回収された分離精製されたジメチルホルムアミドは、溶剤として再利用することが可能となる。精製度が高いため、例えば、ポリイミド樹脂の重合や製膜の用途に供することができる。【0070】以上、本発明について説明したが、本発明は、これらの実施の態様のみに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。【0071】【実施例】次に、本発明にかかるジメチルアミド化合物とカルボン酸を蒸留分離する方法及びその装置の実施の形態を以下の実施例により詳しく説明する。【0072】なお、実施例中、「%」とあるのは、重量%を示す。「g/h」は、単位時間当たりの流量を示す。DMFは、ジメチルホルムアミドをいう。DMAは、ジメチルアミンをいう。【0073】実施例1と比較例1は、蒸留搭2本用いた装置である。【0074】(実施例1)蒸留塔として、ステンレス製円筒(外径:60mm、内径:55mm、全長:約2500cm)に、充填材としてステンレス製ディクソンパッキン(6mmφ)を円筒内部に充填したものを2本用いた(第1塔、第2塔とする)。第1塔のステンレス円筒下部から150mmに充填材を充填し、その上に空間部250mmを設けて第2塔からの循環供給液のノズルを挿入した。その上に150mmの充填材を充填し上部の空間部250mmをおいてそこへ原料液供給ノズルを挿入した。さらに上に300mmの充填材を充填し、その上部空間450mmの部分に塔中間高さ位置の液抜出し部品をつけた。さらに続いてその上に450mmの充填材をいれてその上の空間部へ還流液供給ノズルを挿入した。第2塔は、ステンレス円筒下部から300mmに充填材をいれて、その上に空間部300mmを設けて、第1塔塔底部から払い出した液を導入する供給ノズルを挿入した。その上に150mmの充填材を充填し、その上部空間450mmの部分に塔中間高さ位置の液抜出し部品をつけた。さらに続いて上に450mmの充填材をいれてその上の空間部へ還流液供給ノズルを挿入した。第1塔、第2塔の塔頂部には、コンデンサーが、塔底部にはリボイラーが設置されている。【0075】以下の概要の装置を製作した。すなわち、第1蒸留搭は、原料液を供給して精製ジメチルホルムアミド液を取り出す。第2蒸留塔は、カルボン酸成分(酢酸)を塔頂部から取り出す。第1蒸留搭および第2蒸留搭の塔頂部には、コンデンサーが接続されている。コンデンサーは、蒸気を液化してその1部分を塔頂部留出液として取り出すとともに、残りの液を塔頂部に還流するように接続する。第1蒸留搭の塔頂部から30cmの充填材高さを隔てて下方に塔中間高さ位置の液抜出し部(サイドカット部)を設けた。サイドカット液からの配管は、サイドカット液を一部取り出し、残りの液を、その下方の充填材上部へ還流させる配管とした。サイドカット部からさらに30cmの充填材高さを隔てて下方の位置に原料供給管を設けた。原料供給管からさらに15cmの充填材高さを隔てて下方の位置に第2蒸留搭から再循環する液を供給する配管を設けた。さらに15cmの充填材高さを隔てて下方に塔底部液溜りを設けた。その塔底部にリボイラーを設け、塔底液を加熱蒸発させるとともに、一定量の塔底液を抜き出して第2塔へ供給する配管を設けた。【0076】第2蒸留塔の塔頂から45cm下部にサイドカット液抜出し配管を設けた。第2蒸留塔からサイドカット液の一部を抜き出し、残りの液をその下方の充填材上部へ還流させる配管とした。サイドカット位置から更に15cm下方に、第1塔塔底部抜き出し液の供給部を設けた。サイドカット部の更に30cm下方に、塔底部の液溜りを設けた。第2蒸留搭の塔底部にリボイラーを設けた。リボイラーで塔底液を加熱蒸発させて塔内部で蒸気を上昇させるとともに、一定量の塔底液を抜き出す配管とした。第2蒸留塔のサイドカット液および第2塔塔底部抜き出し液は第1塔へ再循環供給した。【0077】第1塔塔底液をリボイラーで100℃に加熱し、真空ポンプを用い排気することにより、塔内部空間の圧力条件を調整し、操作圧力は6.0kPa−abs.とした。第1塔への供給原料液は、ジメチルホルムアミド:79.5重量%、酢酸:14.8重量%、イソキノリン:5.1重量%の混合溶液であり、不純物として含まれている水分は:0.0030重量%である。供給液量は約98g/hである。【0078】第1蒸留塔塔頂部から流量8.5g/hの蒸留条件で取り出した。この液は、ジメチルホルムアミドの他、不純物として水分含有量7000ppm、ジメチルアミン6000ppmが検出された。【0079】また、第1蒸留搭サイドカットから流量65g/hの蒸留条件で取り出した。サイドカット液の成分比は、ジメチルホルムアミドを主成分とし、水分含有量20ppm、ジメチルアミン25ppmであった。サイドカットからのジメチルホルムアミドの取り出し割合は、88.5%である。第1蒸留塔塔底部から、流量291g/hの条件で抜出した混合液の組成はイソキノリン60%、ジメチルホルムアミド12%、酢酸12%を含んでいた。第2塔から再循環して第1塔へ導入される液は、流量267g/hであった。【0080】第2塔塔底液をリボイラーで150℃に加熱し、真空ポンプを用い排気することにより、塔内部空間の圧力条件を調整し、操作圧力は7.3kPa−abs.とした。第2塔サイドカットから流量70g/hを流出させ、そのうち7g/hをパージして、残りは第1塔へ再循環した。パージしたサイドカット液はジメチルホルムアミド45%、酢酸35%を含んでいた。第2塔塔底部から流量204g/hの条件でイソキノリンを主成分とした液を抜き出してサイドカット液とともに第1塔へ再循環した。第2蒸留塔塔頂部から流量12g/hの条件で留出させた留出液は、ジメチルホルムアミド25%、酢酸75%であった。【0081】(比較例1)第1塔にてサイドカットをしないことを除いては、実施例1と同じ装置にて同じ原料液組成を用いて、操作温度と圧力も同様に運転した。第1塔頂部から流量73.5g/hを流出させたところ、ジメチルホルムアミド中に不純物として水分853ppm及びジメチルアミン715ppmが含まれていた。第1塔のサイドカットはしないこと以外は、第1塔底部抜き出し、第1塔への原料供給および第2からの再循環液、第2塔運転条件について実施例1と同様に実施した。【0082】(実施例1と比較例1との比較)比較例1で得られたジメチルホルムアミドは水分853ppmとジメチルアミン715ppmを含んでいることに対して、本発明の方法による実施例1で得られたジメチルホルムアミド中の水分は20ppmおよびジメチルアミンは25ppmであり比較例に比べて不純物含有量を著しく低減することができた。【0083】【0084】以下、実施例2と比較例2は、蒸留搭1本用いた装置である。【0085】(実施例2)蒸留塔としてステンレス製円筒(外径:60mm、内径:55mm、全長:約2500cm)に、充填材としてステンレス製ディクソンパッキン(6mmφ)を円筒内部に充填したものを1本用いた。蒸留搭の構成は、実施例1の第1塔と同様にした。塔頂部はコンデンサーを設置し、凝縮液留出と塔頂部への還流を行なう。塔底部はリボイラーがあり液抜き出しする。塔の中ほどの高さ位置からは原料液供給とサイドカット液抜き出しを行なう。塔頂から30cm程度の充填部分を隔てた位置にサイドカット液抜出し位置を設け、サイドカット位置から更に下方30cm程度の充填部分を隔てたところに原料混合液を供給する。【0086】蒸留塔への原料混合液を流量368g/hで供給した。原料混合液の組成は、DMF:33.7%,酢酸:11.3%、イソキノリン:54.1%、水分:0.0047%である。塔頂部での還流比を約20として、流量150g/h程度の還流液を流下させた。蒸留塔頂部からの留出液は、流量7.4g/hとすると、その成分は概ねDMFであり水分が約0.5%、DMAが約0.1%含まれていた。【0087】サイドカット部では、塔頂部還流流下液(約150g/h)を全量塞き止めて、側近に設けた50ml程度の受槽へ導管を通じて流通させ、その液の一部(74g/h)をサイドカットして精製DMFとして抜き出した。残りの液は再び塔内に戻して落下させた。精製DMF中の水分は0.007%であり、ジメチルアミン含有量は0.002%程度、酢酸も0.003%であった。サイドカットからのジメチルホルムアミドの取り出し割合は、98.9%である。【0088】その下方に更に30cm程度の充填部を隔てて塔底部の液溜りがあり、リボイラーとして加熱蒸発させるとともに塔底液を一定量(流量271g/h)抜き出す。塔底部抜き出し液組成はDMF:16%,酢酸15%、イソキノリン:68%などであった。【0089】蒸留塔塔底液はリボイラーで100℃に加熱し、真空ポンプを用い排気することにより、塔内部空間の圧力条件を調整し、操作圧力は6.0kPa−abs.とした。【0090】(比較例2)実験に用いた蒸留塔はガラス製で内径30mmφ、全長約1500mmの円筒に充填材(ガラス製ラッシッヒリング3mmφ)を入れたものである。塔底部リボイラーから塔頂部コンデンサーまでの全高さは約2500mmである。塔中段位置からの原料液供給を流量122g/hとし、その組成はDMF29%,酢酸11%、イソキノリン59%で水0.005%程度である。【0091】サイドカット液の抜出しをすることはせず、塔頂部留出液を22g/hとしてDMFを取り出したところ、水分が0.08%程度、ジメチルアミン0.01%程度および無水酢酸0.0005%が検出された。塔頂部の還流比は1とした。【0092】塔底部払出し液を流量100g/hとし、組成はDMF15%,酢酸:13%、イソキノリン:72%程度、無水酢酸:0.0025であった。また、イソキノリンの0.005%程度がメチルイソキノリンに変成していることが検出された。蒸留塔の操作圧力は6.7kPa−abs.とした。温度は100℃程度とした。【0093】(実施例2と比較例2との比較)比較例2で得られたジメチルホルムアミドは水分0.08%とジメチルアミン0.01%を含んでいることに対して、本発明の方法による実施例2で得られたジメチルホルムアミド中の水分は0.007%およびジメチルアミンは0.002%であり比較例2に比べて不純物含有量を著しく低減することができた。【0094】【0095】実施例3と比較例3は、蒸留搭4本用いた装置である。【0096】(実施例3)蒸留塔としてステンレス製円筒(外径:60mm、内径:55mm)に、充填材としてステンレス製ディクソンパッキン(6mmφ)を円筒内部に充填したものを4本用いた。それぞれ脱水蒸留塔(長さ:約2000mm)、DMF精製蒸留塔(長さ:約2500mm)、酢酸除去蒸留塔(長さ:約2500mm)、イソキノリン回収蒸留塔(長さ:約1000mm)とした。DMF精製蒸留塔と酢酸除去蒸留塔は、実施例1の第1塔、第2塔と同様の構成とした。脱水蒸留塔は、リボイラーを塔底に接続し、塔底から充填材を25cm充填、空間部15cmを設け、さらに充填材を20cm充填し、その上の空間部15cmに原料液供給部を設ける。その上に充填材45cmを設け、その上を塔頂部とした。イソキノリン回収蒸留塔の構造は、リボイラーに接続した塔底から順にその上に充填材30cmを設け、この中間高さ15cmのところに原料液を供給する。その上を塔頂部とした。加水分解反応器+脱水蒸留器+DMF精製蒸留器+酢酸除去蒸留搭は、この順に配管で連結されている。加水分解反応器としてステンレスチューブ(内径4mmφ、長さ10mを用いた。DMF精製蒸留塔、酢酸除去蒸留塔、イソキノリン回収蒸留塔の塔頂部には、コンデンサーが接続されている。コンデンサーは、蒸気を液化してその1部分を塔頂部留出液として取り出すとともに、残りの液を塔頂部に還流するように接続した。【0097】原料液の組成はDMF:70%,酢酸:11%、無水酢酸:12%、イソキノリン:2.5%,水:3.5%程度であり、これを定量ポンプでにて流量42g/h送液して該加水分解反応器を流通させた。反応器温度を80℃に維持し、出口に圧力制御弁を付けて反応器内の圧力を0.2MPaとした。反応器出口では99%以上の転化率で無水酢酸が酢酸に変換された。反応器を出た液を引き続いて脱水蒸留塔に供給し、水を分離して塔頂部から留出させて、その留出水を再び加水分解反応器入口へ循環供給した。脱水塔頂部の還流比は0.5程度とした。脱水蒸留塔の操作圧力は12.0kPa−abs.とした。【0098】脱水蒸留塔頂部留出水にはジメチルアミンが生成して含まれていたが、加水分解反応器の出口ではジメチルアセトアミドに転化していた。脱水蒸留搭等頂から留出する水を主成分とする液を流量約10g/hで加水分解反応器入口へ循環供給することによって、加水分解反応器の水濃度が20重量%まで上昇するようにした。脱水蒸留塔塔底部から水分を取り除いた液を抜き出し、流量50g/h程度でジメチルホルムアミド精製蒸留塔の塔底部から充填材を300mm隔てた高さ位置に供給した。【0099】ジメチルホルムアミド精製蒸留塔の塔頂液は、コンデンサーで凝縮液化されて、その一部は塔頂部留出液とし、その残りは、蒸留搭塔頂部に還流する。還流比は約11で、操作圧力を6.0kPa−abs.とした。該精製蒸留塔頂部から流量8.5g/hの液を留出させ、これも加水分解反応器入口へ循環供給した。【0100】精製塔頂部留出DMFは水を約0.35%およびジメチルアミン約0.1%を含んでいた。塔頂から30cm程度下部の位置で精製DMFを流量26g/hでサイドカット抜出ししたところ、DMF中の不純物として水0.008%でDMAは0.002%であった。サイドカットからのジメチルホルムアミドの取り出し割合は、75.4%である。【0101】精製蒸留塔底部の液組成はDMF:23%,酢酸:15%、イソキノリン:43%などが主成分であり、約300g/hにて抜出して、酢酸除去蒸留塔の塔底部から上方に充填材を300mm隔てた位置へ供給した。酢酸除去蒸留塔の塔頂還流比は15として、圧力は7.3kPa−abs.で操作した。【0102】「酢酸除去蒸留搭」の留出液流量約10g/hの組成は酢酸:90%、DMF:10%程度になった。塔頂から30cmほど下の位置の液を流量約70g/hにてサイドカット抜出しし、その内3g/hをパージして残りをジメチルホルムアミド精製蒸留塔の塔底部から充填材を150mm隔てた高さの位置へ供給した。【0103】該サイドカット液の組成は、DMF:59%,酢酸:37%、ジメチルアセトアミド:4%などであった。「酢酸除去蒸留塔」塔底部には高沸点成分が濃縮されており、イソキノリンが80%程度含まれており、残りの成分は原料液に含まれている、さらに高沸点を有する各種未同定物質であった。その塔底液を抜出して約200g/hにてイソキノリン精製蒸留塔の塔底から上方へ充填材を150mm隔てた高さ位置へ供給した。【0104】酢酸除去蒸留塔底部のイソキノリンおよびその他の高沸点物質は、供給原料液から僅かずつもたらされ、徐々に蓄積増量してくる。このため、この増加分の液を抜出してイソキノリン回収蒸留処理する操作を行なった。試験規模が小さいので処理液を溜めてから流量約50g/hにてイソキノリン回収蒸留塔へ供給した。イソキノリン回収塔の塔頂還流比を10として圧力を5.3kPa−abs.で操作し、塔頂留出を約36g/hとすることにより純度95%以上の精製イソキノリンが得られた。塔底液は残存イソキノリン濃度20%程度まで濃縮して払出した。【0105】水発生の状況を調べるために観察を行なった。【0106】(参考例1)100ccのガラス容器にジメチルホルムアミド、酢酸およびイソキノリンを重量比でそれぞれ25%、10%、65%の混合比で仕込み、120℃に維持して、時間経過に伴う無水酢酸の濃度を分析測定した。仕込当初の無水酢酸は検出されなかったが、1時間経過後のガラス容器内の液からは0.014%、2時間経過後には0.029%の無水酢酸が検出された。【0107】参考例1の結果によればジメチルホルムアミド、酢酸、イソキノリンの混合溶液で無水酢酸が発生した。このことから推定すると、上記実施例1,2,3および比較例1,2において蒸留塔で水が発生している原因のひとつとして:酢酸 → 無水酢酸 +水の反応が生じている可能性が考えられる。【0108】ただし、比較例2で検出されている水の量に比べて無水酢酸量は極めて少量でありその他に原因があるものと考えられる。その他の原因としては、比較例2において観察されたメチルイソキノリンの発生と関係があることが考えられる。推定される反応としては:イソキノリン+酢酸→メチルイソキノリン+蟻酸蟻酸→水+一酸化炭素である。以上のような反応により、水が発生すると考えられる。【0109】【発明の効果】以上説明したように、本発明にかかるジメチルアミド化合物とカルボン酸を蒸留分離する方法によれば、キノリン化合物をエントレーナーとして用いた蒸留方式を改良し、不純物の混入を克服した純度の高い精製ジメチルアミド化合物を得ることができる。また、本発明の方法を適用した装置は、ジメチルアミド化合物精製蒸留塔にて、塔中間高さから精製ジメチルアミド化合物を取り出すことにより、微量不純物として蒸留塔内で発生した水は塔頂留出分へ濃縮されて分離でき、不純物の少ない純度の高いジメチルアミド化合物が得られる。【図面の簡単な説明】【図1】 3つの蒸留塔で構成される本発明のジメチルアミド化合物とカルボン酸を蒸留分離する装置の概念図である。【図2】 2つの蒸留塔で構成される本発明のジメチルアミド化合物とカルボン酸を蒸留分離する装置の概念図である。【図3】 2つの蒸留塔と付加装置で構成される本発明のジメチルアミド化合物とカルボン酸を蒸留分離する装置の概念図である。【符号の説明】10;本発明のジメチルアミド化合物とカルボン酸を蒸留分離する装置の1例12;第1塔14;第2塔16;第3塔18;第1塔原料液供給管20;第1塔塔頂留出管22;第1塔中間部払出し管24;第1塔塔底部缶出管26;第2塔供給管28;第2塔塔底部缶出管30;循環供給管32;第2塔塔頂留出管34;第3塔供給管36;第3塔塔頂留出管38;第3塔塔底部缶出管39;分岐管50;本発明のジメチルアミド化合物とカルボン酸を蒸留分離する装置の他の1例52;第1塔54;第2塔56;原料混合液供給管58;第1塔塔底部缶出管60;第1塔中間部払出し管62;第2塔供給管64;第2塔塔底部缶出管65;第2塔中間部払出し管66;循環供給管70;本発明のジメチルアミド化合物とカルボン酸を蒸留分離する装置のさらに他の1例72;第1塔74;第2塔76;加水分解反応器78;脱水蒸留器80;キノリン類回収蒸留塔82;原料液供給管84;第1塔塔頂留出液管86;第1塔中間部払出し管88;第1塔塔底部缶出管90;第2塔供給管92;第2塔塔頂留出管94;第2塔塔底部缶出管96;循環供給管98;第2塔中間部払出し管100;分岐管102;原料液供給管104;蒸留搭供給管106;蒸留塔塔底部缶出管108;脱水蒸留搭塔底部缶出管110; 循環供給管112;キノリン類供給管 ジメチルアミド化合物とカルボン酸とを含む原料混合液にキノリン類を添加して蒸留搭により蒸留し分離精製する方法であって、ジメチルアミド化合物の全取り出し量の1重量%以上50重量%以下のジメチルアミド化合物が該蒸留塔の塔頂から留出され、残りがさらに精製されたジメチルアミド化合物として該蒸留塔の「中間高さ位置」から液抜出しされる、ジメチルアミド化合物とカルボン酸の蒸留分離方法。 前記ジメチルアミド化合物が、組成式(CH3)2NCORで表され、Rが、H,CH3,CHCH2からなる群から選択される、請求項1記載の蒸留分離方法。 前記カルボン酸が、組成式:CnH2n+1COOHで表され、nが、0,1,2から選択される、請求項1または請求項2記載の蒸留分離方法。 前記原料混合液において、前記カルボン酸が酢酸であり、かつ前記ジメチルアミド化合物がジメチルホルムアミドである、請求項3記載の蒸留分離方法。 前記キノリン類が、キノリン、イソキノリン、メチルキノリンからなる群から選択される、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の蒸留分離方法。 前記原料混合液において、カルボン酸よりジメチルアミド化合物の含有量が大きい、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の蒸留分離方法。 第1蒸留搭、第2蒸留搭、第3蒸留搭(以下、第1塔、第2塔、第3塔という。)からなる3つの蒸留塔を用いた、ジメチルアミド化合物とカルボン酸を蒸留分離する方法であって、(1)該「第1塔」に、ジメチルアミド化合物とカルボン酸とを含む原料混合溶液とキノリン類とを、供給する工程、(2)該「第1塔」塔底部から液を缶出し、該「第1塔」塔底部缶出液を、該「第2搭」の中段位置に供給する工程、(3)該「第2塔」塔底部からキノリン類を缶出し、該キノリン類を該「第1搭」に供給する、キノリン類を循環させる工程、(4)該「第2塔」塔頂から、ジメチルアミド化合物とカルボン酸の混合液を留出させ、該混合液を該「第3塔」の中段位置へ供給する工程、(5)該「第3塔」塔頂からカルボン酸を主成分とする液を留出し、該「第3塔」塔底部からジメチルアミド化合物の残留する液を缶出し、該「第3塔」塔底部缶出液を「第1塔」に供給する工程、(6)ジメチルアミド化合物抜出し全量の1重量%以上で50重量%以下を「第1塔」の塔頂から留出させ、残りをさらに精製されたジメチルアミド化合物として「第1塔」の「中間高さ位置」から液抜出しする工程を含む、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の蒸留分離方法。 「第1搭」「第2搭」からなる2つの蒸留塔を用いて、ジメチルアミド化合物とカルボン酸とを含むの蒸留分離する方法であって、(1)該「第1塔」へ、ジメチルアミド化合物とカルボン酸の原料混合溶液とキノリン類とを供給する工程、(2)該「第1塔」塔底部から液を缶出し、該「第1塔」塔底液を「第2塔」の中段位置に供給する工程、(3)該「第2塔」塔底部からキノリン類を缶出して該「第1塔」に供給し、キノリン類を循環供給する工程、(4)該「第2塔」塔頂からカルボン酸を主成分とする留分を留出させる工程、(5)該「第2塔」の中間高さ位置からジメチルアミド化合物の残留する混合液を払い出し、「第1塔」に供給する工程、(6)ジメチルアミド化合物抜出し全量の1重量%以上で50重量%以下を「第1塔」の塔頂から留出させ、残りをさらに精製されたジメチルアミド化合物として「第1塔」の中間高さ位置から液抜出しする工程を含む、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の蒸留分離方法。 前記「第2塔」塔底部からキノリン類を缶出する工程が、「第2塔」塔底部の缶出液の半分以下の量を分岐して取り出す工程、および該液を蒸留してキノリン類に含まれる高沸点の不純物を分離除去する工程を含む、請求項7または請求項8に記載する蒸留分離方法。 さらに、ジメチルアミド化合物とカルボン酸およびその酸無水物との混合溶液を、まず加水分解反応器に流通させて酸無水物をカルボン酸に転化し、その後脱水蒸留塔に流通させ該「脱水蒸留搭」塔頂部から水を留出させ、「脱水蒸留塔」塔底部から、脱水処理された液を缶出させ、原料混合液として蒸留塔へ供給する工程、「第1塔」塔頂部から留出させた留出液を、該「脱水蒸留塔」に供給する工程を含む、請求項7乃至請求項9のいずれかに記載の蒸留分離方法。 さらに、前記「脱水蒸留塔」塔頂部から留出させた水を主成分とする液を加水分解反応器に供給する工程を含む、請求項10記載の蒸留分離方法。 「第1搭」「第2搭」「第3搭」からなる3つの蒸留塔と、該「第1塔」へジメチルアミド化合物とカルボン酸との原料混合溶液と、キノリン類とを供給する原料供給管と、該「第1塔」塔底部に設けられ、「第1塔」缶出液を缶出する「第1塔」塔底部缶出管と、該「第1塔」缶出液を「第2塔」に供給するため、該「第1塔」塔底部缶出管と連結し、「第2塔」の中段位置に設けられている「第2塔」供給管と、該「第2塔」塔底部に設けられ、キノリン類を缶出する「第2塔」塔底部缶出管と、該「第2塔」缶出液を「第1塔」へ供給するキノリン類循環供給管と、該「第2塔」塔頂部に設けられ、ジメチルアミド化合物とカルボン酸の混合液を留出する、「第2塔」塔頂留出管と、該「第3塔」に設けられ、該「第2塔」留出液を「第3塔」へ供給する「第3塔」供給管と、該「第3塔」塔頂部に設けられ、「第3塔」塔頂部からカルボン酸を主成分とする留分を取り出す、「第3塔」塔頂留出管と、該「第3塔」塔底部に設けられ、「第3塔」塔底部からジメチルアミド化合物の残留する「第3塔」缶出液を、缶出する「第3塔」塔底部缶出管と、該「第3塔」缶出液を「第1塔」へ供給する、「第1塔」供給管とを含む、ジメチルアミド化合物とカルボン酸を蒸留分離する装置であり、かつ、精製されたジメチルアミド化合物全量のうち、1重量%以上で50重量%以下を「第1塔」塔頂から留出させ、残りをさらに精製されたジメチルアミド化合物として「第1塔」の中間高さ位置から取り出すことができる、蒸留分離装置。 「第1搭」「第2搭」からなる2つの蒸留塔と、該「第1塔」へジメチルアミド化合物とカルボン酸との原料混合溶液と、キノリン類とを供給する、「第1塔」原料供給管と、該「第1塔」塔底部から缶出液を缶出する「第1塔」塔底部缶出管と、該缶出液を該「第2塔」の中段位置に供給する、「第2塔」供給管と、キノリン類を「第2塔」塔底部から缶出する「第2塔」塔底部缶出管と、「第1塔供給管」に連結し、該「第2塔」缶出液を「第1塔」へ循環供給する、キノリン類循環供給管と、「第2塔」塔頂からカルボン酸を主成分とする留分を取り出す、「第2塔」塔頂留出管と、ジメチルアミド化合物の残留する混合液を「第2塔」の中間高さ位置から抜出す「第2塔」中間部払出し管とを含み、該「第2塔」中間部払出し管が該「第1塔供給管」に連結している、ジメチルアミド化合物とカルボン酸を蒸留分離する装置であり、かつ、ジメチルアミド化合物の全取り出し量のうち、1重量%以上で50重量%以下を「第1塔」塔頂から留出させ、残りをさらに精製されたジメチルアミド化合物として「第1塔」の中間高さ位置から取り出すことができる、蒸留分離装置。 さらに、「第2塔」塔底部缶出管から分岐し、該缶出液の半分以下の量を、キノリン類回収塔に供給する分岐管と、および、その液を蒸留してキノリン類に含まれる高沸点の不純物を分離除去する、キノリン類回収塔、とを含む、請求項12または請求項13記載の蒸留分離装置。 さらに、ジメチルアミド化合物とカルボン酸およびその酸無水物との混合溶液を流通させ、該混合液に含まれる酸無水物をカルボン酸に転化する「加水分解反応器」と、該「加水分解反応器」から原料液を「脱水蒸留塔」に供給する供給管と、原料液に含まれる水を蒸留塔塔頂から留出させる「脱水蒸留搭」と、該「脱水蒸留塔」の塔底部に設けられ、「脱水蒸留塔」塔底部で得られる脱水処理された液を缶出し、該缶出液を原料混合液として供給するため「第1塔」原料供給管に連結している「脱水蒸留塔」缶出管と、「第1塔」塔頂部から留出させた液を「加水分解反応器」に供給する供給管と、を含む、請求項12乃至請求項14のいずれかに記載の蒸留分離装置。 さらに、前記「脱水蒸留塔」塔頂部から留出させた水を主成分とする液を前記「加水分解反応器」に供給する、水循環供給管と、を含む、請求項12乃至請求項15のいずれかに記載の蒸留分離装置。