タイトル: | 特許公報(B2)_血液検体キャリアー構成体 |
出願番号: | 2002310693 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | G01N 33/49,G01N 33/48 |
平田 稔 岡 昌則 岩堀 友志 JP 4339570 特許公報(B2) 20090710 2002310693 20021025 血液検体キャリアー構成体 株式会社エスアールエル 390037006 水野 昭宣 100097582 平田 稔 岡 昌則 岩堀 友志 20091007 G01N 33/49 20060101AFI20090910BHJP G01N 33/48 20060101ALI20090910BHJP JPG01N33/49G01N33/48 HG01N33/48 E G01N 33/48 G01N 33/49 特開平10−132800(JP,A) 特開平05−209877(JP,A) 特表平11−505327(JP,A) 4 2004144636 20040520 23 20051021 淺野 美奈 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、少量の血液を臨床検査などのための検体として使用するための血液検体キャリアーシート構成体に関する。本発明は、さらに、該血液検体キャリアーシート構成体から溶出した検体試料を使用して測定を行うことを特徴とする血液検体測定方法に関する。【0002】【従来の技術】血液を検体として使用して、そこに含まれる成分を分析検査測定することは、例えば臨床医学、法医学、環境汚染のチェックあるいはそれらに関連したその他の領域といった分野で広く行われている。最近では、生活習慣病のチェック、例えば糖尿病、コレステロール値、肝機能、腎機能、痛風などに関連した検査を行い、病気の事前の予防や生活習慣の改善に資する目的で、簡単且つプライバシーを保護しながら、定常的に検査を行うことが求められている。しかしながら、通常、血液成分の検査をする場合には、医師又は看護婦等により上腕の静脈から注射器で3〜10 ml の血液を採取し(普通には、5 mlの血液を採取する)、こうして採血された血液を遠心分離機を用いて処理して、検査材料である血清や血漿を得ていることから、このような採血法では、個人が簡単に採血するというわけにもいかず、必ず医療機関で医師や看護婦等により行う必要がある。さらに、注射器で採血する方法では、患者などの負担が大きく、より少量の血液を得るだけで済ます方法の開発が求められている。したがって、個人の責任で、ほんの少量の血液を簡便に採取しうる方法並びにそうした血液検体を使用しての検査方法の確立が求められている。【0003】また、上記のような注射器を使用した採血法では得られたサンプルは液体であるため取り扱いが面倒であるし、その輸送にも特別な配慮が要求され、さらに一旦得られた血液を遠心分離機などを備えた専門の機関で処理するということも必要であり、さらに当該処理も場合によっては採血後迅速に行う必要があるため、そのための設備を備えたところでないと扱えないという問題もある。また、非常に多数の血液検体を扱う場合(定常的に検査を実施するなら、非常に多数の検体を同時に処理する必要が生じることになる)、こうした作業は、大変なものとなる。従来、一部の血液検査の部門では、採血器ランセットを用いて指先から少量の血液を採取し、濾紙(フィルターマトリックスシート)に血液を染み込ませ、その染み込んだ部分から血液を溶出するなどして測定を行う試みがなされている。こうした従来の濾紙血を使用する検査では、血球(主に赤血球)を含んだ全血をそのまま測定に使用している。これは、濾紙に血液を染み込ませる方法では、取り扱う血液量は極めて少量とならざるを得ない(採血器ランセットを用いてのパーソナルな採血法では、各個人の慣れにより解決されるという期待もあるが、通常、一度に1〜3滴程度、多くても5滴程度の血液を得るのがせいぜいである)し、かつ血液中に含まれている血球(主に赤血球)、血餅などの固形成分を、その測定の前に分離するなどということは到底できず、それをそのまま測定系に存在せしめざるを得ないからである。【0004】血液中に溶けている可溶性成分を検知・測定して、臨床上の情報を得ることが広く行われている。ところが、検体として得られた全血中には赤血球、白血球などの血球成分が含まれ、それらはそうした臨床検査において妨害物質となることから、全血を測定対象試料として使用するような検査用以外は一般的には採血したなら速やかに赤血球などの血球成分と血清成分又は血漿成分に分離することが必要である。また、血液は保存中に溶血を起こし、ヘモグロビンなどの有色物質が血中可溶性成分の測定の際の深刻な妨害物質となる。微量の血液を臨床検査などの検体として使用することを目的として、ランセットなどを使用し、採血された一滴あるいは二滴といった微量の血液を血球と血清に分離する働きを有する濾紙に染み込ませて、検体血液のキャリアー機能と血清・血球分離機能を利用することが知られている(特許文献1、2及び3)。【0005】【特許文献1】特開平5−209877号公報【特許文献2】特開平10−132800号公報【特許文献3】特開2001-221794号公報【0006】【発明が解決しようとする課題】採血器ランセットなどの採血器具を用いて指先などから少量の血液を採取する(パーソナル採血法)といった個人の責任で、ほんの少量の血液を簡便に採取し、こうして採取された少量の血液を使用して、生活習慣病のチェックなど広範囲に血液を検体として使用して検査・測定を行う手法の開発が求められている。1滴とか2滴といったような少量の血液検体を用いる場合、従来の濾紙血を使用する手法では、全血での測定となり、血球成分の影響により、大部分の場合その測定をなすことが不可能であった。血球成分の影響を受け易い対象を目的として、普通の濾紙を使用した場合、そこに付着あるいは吸着させた血液の量は微量であり、当該濾紙から溶出した後に血清成分と血球成分などに分離するなどといった処理を行うことは不可能である。【0007】これを解決するため、血球成分と血清あるいは血漿成分とを分離する働きを有する濾紙(フィルターマトリックスメディウムあるいはフィルターマトリックスシート)を利用する試みが提案されているが、微量の血液を検体として使用する場合において、該血液検体のキャリアーとして血球−血清分離シート(血球−血清分離濾紙;血球−血清分離メディウム又は血球−血清分離担体)を使用しても、血液の染み込みが悪くて、扱う血液が微量にも拘らずその表面の上を血液が流れてしまったりして効率よく分離ができなかったり、血液が該シートの中を均一に流れず、シート片の中央よりも縁の方が、血液の展開速度が速く、V字状の展開を示す。したがって、血球と血清とに分離された後のシート上の血球領域と血清領域との形状が複雑な形状をなすこととなり、該血球−血清分離シートを切り取るなどしてサンプリングする場合、例えば血清部分だけを採ろうとする場合、該血清領域のシート部分を得ることが困難であり、さらに十分量の血清検体を得ることも困難となるという問題がある。さらに、血球部分から分離した血清部分の、分離距離が小さく、血清の分離回収が必ずしも満足のいくものでなく、その結果、該血清中の成分などに関する検査測定が不正確となったり、測定自体が不可能となったり、サンプリング操作が複雑になったり困難となるという問題がある。上記問題は、扱う採取血液量が極端に微量のものであることに必然的に起因するものであり、従来この点を解決する指針は一切見当たらない。【0008】微量の血液を臨床検査などのための検体として使用する目的の一つは、採血自体を個人が自己により簡単に行い、そして病院などの専門の施設に赴いて医師・看護人などの専門家による採血を経ずして、日常的に行いうることを可能にすることである。しかし、こうした被検者各人が自ら採血して、検体キャリアーのシートに血液を付着せしめる場合、一般的には、傷口から滲出した少量の血液を、該キャリアーシート面に該傷口を当てて接触せしめて血液を該キャリアーシートに付着させ移行せしめることがなされる。もしキャリアーシートの血液適用部位に人体に悪影響を及ぼすかもしれないような薬剤などが存在すると、傷口をキャリアーシート面に接触せしめた場合、当該薬剤が人体側に移行する恐れがあるという問題もある。さらに、材質によっては吸水性のフィルターマトリックスシート(一般には単に「濾紙」とも呼称される)から、血清などの検体試料を抽出するなどのサンプリングを行うと、クズなどが遊離して測定試料中に混入し、測定・検査の妨害になったりして正確な測定、迅速な測定に障害となることから、こうした問題のないものが求められている。【0009】【課題を解決するための手段】上記課題を解決すべく鋭意研究の結果、特定の材質からなる血液キャリアー用シートを選択するばかりでなく、少なくとも二種の血液キャリアー用シートを組み合わせて、特定の形態の血液検体キャリアー構成体とすることにより、優れた血球−血清分離能を示すと共に、人体に対してもその使用法如何に拘らず問題の発生の恐れのないものであることを見出し、本発明を完成させた。【0010】本発明は、〔1〕 極微量の血液を検体として使用する目的で運搬する場合に使用される血液検体キャリアー構成体であって、(A) 該キャリアー構成体は、支持体シート及び血液キャリアー用シートを組み合わせて構成されるものであり、該血液キャリアー用シートは繊維状マトリックスから構成されているもので、(B) 該血液キャリアー用シートは、(1) 長方形の形状を有しており、該長方形のシートの面の一か所に血液を付着せしめると横方向に液体が移動し、血球成分と血清成分あるいは血漿成分に分離して、血球成分を主に含む血球成分領域と血清成分あるいは血漿成分を主に含む可溶性血液成分領域とを少なくともその一部が空間的に区別可能な形態で形成することのできるもので、且つ、(2) 該血液キャリアー用シートには、界面活性剤、ブロッキング剤及び蛋白安定化剤から成る群から選ばれたものが含ませてあるものであり、(C) 支持体シートの上に上記(B) のシートの順で配置されているものであることを特徴とする血液検体キャリアー構成体;【0011】〔2〕 上記〔1〕(B) (2) の界面活性剤、ブロッキング剤又は蛋白安定化剤が、Tween 20、NP40、Triton X100 、Lipidure BL A03 、Lipidure BL B03 、Lipidure BL D05 、Lipidure BL E02 、Lipidure BL G04 、Lipidure BL J02 、N101、N102及びH100などの親水性化合物から成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔1〕記載の血液検体キャリアー構成体;〔3〕 上記〔1〕(B) のシートが、界面活性剤、ブロッキング剤又は蛋白安定化剤などを適度な濃度に希釈した水溶液でもって該繊維状マトリックスから構成されているシートを含浸せしめた後乾燥させて得られたものであることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕記載の血液検体キャリアー構成体;〔4〕 上記〔1〕(B) のシートが、約4 〜10 mm × 約 40 〜120 mmであることを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一記載の血液検体キャリアー構成体;〔5〕 上記〔1〕(B) のシートが、ヘマセップ L (Hemasep L, 商品名、米国ポール・コーポレーション社) などのキャリアー用シートであることを特徴とする上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一記載の血液検体キャリアー構成体;〔6〕 該キャリアー構成体が、支持体シート及び少なくとも二種の血液キャリアー用シートを組み合わせて構成されるものであり、(a) 該血液キャリアー用シートの一方は、上記〔1〕(B) 記載のものであり、(b) 該血液キャリアー用シートの他方は、(i) 採血される血液を適用する部位を構成するもの(血液滴下シートとも称する)であって、付着せしめられた血液を一時的に保持可能であり、且つ適用された血液を上記(a) のシートに移動せしめることが可能であり、上記(a) の長方形のシートの平面の少なくとも一か所に接して配置せしめられているもので、且つ、(ii) 該血液キャリアー用シートは、実質的に血液接触に関し人体に対して非毒性のものであり、(c) 支持体シートの上に上記(a) のシート、その上記(a) のシートの上に上記(b) のシートの順で少なくとも部分的に配置されているものであることを特徴とする上記〔1〕記載の血液検体キャリアー構成体;〔7〕 上記〔6〕(b) のシートが、約4 〜10 mm × 約4 〜10 mm であることを特徴とする上記〔6〕記載の血液検体キャリアー構成体;【0012】〔8〕 上記〔6〕(b) のシートの非毒性とは、界面活性剤、ブロッキング剤及び蛋白安定化剤などから成る群から選ばれたものが含まれていないことを意味するものであることを特徴とする上記〔6〕又は〔7〕記載の血液検体キャリアー構成体;〔9〕 上記〔6〕(b) のシートが、 F147-11 (商品名、Whatman 社) などのキャリアー用シートであることを特徴とする上記〔6〕〜〔8〕のいずれか一記載の血液検体キャリアー構成体;〔10〕 上記〔6〕(b) のシートが、 20 〜100 μl の量の血液を滴下するためのものであることを特徴とする上記〔6〕〜〔9〕のいずれか一記載の血液検体キャリアー構成体;〔11〕 血液検体キャリアー構成体が、 20 〜100 μl の量の血液を運ぶものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔10〕のいずれか一記載の血液検体キャリアー構成体;及び〔12〕 添付の図1〜3のいずれか一を参照して本明細書で説明された構造又は機能を有するものであることを特徴とする上記〔1〕記載の血液検体キャリアー構成体を提供する。【0013】本発明の好ましい態様では、当該分離せしめられた血清部分の血清分離シートを分離して、そこから血清試料が溶出せしめられ、及び/又は当該分離せしめられた血球部分の血清分離シートを分離して、そこから検査試料が溶出せしめられ、溶出された試料を用いて測定検査が実施される。本発明の特に好ましい態様では、定量測定を行うことができる。本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。【0014】【発明の実施の形態】本発明の血液検体キャリアーシート構成体は、典型的には全血をそこに適用されるものであって、採血した場所から所定の検査を行う場所まで検体を運搬・保持する目的で使用されるものである。対象血液検体は、通常極く少量を予定しており、例えば1滴から2滴といった血液量を扱って、実質的な血液成分についての検査・測定を達成することを目的としている。通常、1滴の血液量とは、場合によっても異なるが、通常、約30〜45μl であり、典型的な場合、約40μl である。本発明では、血液を検体試料とする検査・測定において、採血器ランセットなどの採血器具を用いて指先などから少量の血液を採取し、こうして採取された少量の血液を血液検体キャリアーシート構成体に染み込ませ、その染み込んで且つ血球成分と血清あるいは血漿成分とに分離せしめられた領域のうち、血清成分あるいは血漿成分を保持する領域(1) と血球成分などの固形成分保持領域(2) とを分離せしめ、ついで該領域(2) から分けられた当該領域(1) を溶出処理に付し、及び/又は該領域(1) から分けられた当該領域(2) を溶出処理に付し、次いで得られた溶出物を検体試料として使用することを特徴とする血液検体測定方法を提供する。【0015】新鮮な血液を放置すると、血液凝固が起こり、ついで血球並びにフィブリンは塊状に収縮し、透明な上清が遊離してくるが、この上清を血清という。したがって、血清とは、血液の液体成分で、普通全血からフィブリン塊と血球を除いたものをいうが、検査測定に好適に利用できる取扱の簡単な血液の液体成分であれば特に限定されない。血漿とは、生体を循環する血液の液性成分をいい、新鮮な全血から赤血球その他の有形成分を除いた部分に相当するものであり、通常採血後シュウ酸塩、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)塩、あるいはヘパリンなどの抗血液凝固剤を加えるか、あるいは低温に保って血液凝固の進行を阻止したのち、放置又は遠心操作により有形成分を分離して除いて得られるものをいうが、検査測定に好適に利用できる血液の液体成分であれば特に限定されない。【0016】本発明に従って製造された血液検体キャリアーシート構成体の例について、図1〜3を参照しながら以下説明をする。図1は、当該血液検体キャリアーシート構成体を上方から見た平面図を示すものであり、図2は該血液検体キャリアーシート構成体を一つの側面から見た図であり、図3は該血液検体キャリアーシート構成体の斜視俯瞰図を示す。図1〜3は説明のため部分的には誇張されており、そのサイズ自体並びに互いの相対的な大きさについては必ずしも実物を反映した物でないことは注意されるべきである。図中、1は、採血される血液を適用する部位、すなわち、血液をその部分に接触せしめてそこに浸透あるいは吸収させるシートである。該シートは、血液滴下シートであり、一般的には採血を行う人体の傷口などに直接接触するか、血液を介して間接的に人体の傷口などに接触する可能性がある。本発明の好ましい態様では、該シートはワットマン社より入手できる濾紙、F147-11 (商品名)である。そのサイズは特に限定されるものではないが、1滴の血液を浸透あるいは吸収させる場合では、約5 mm(幅) ×約10 mm (長さ) のサイズで、通常血液の展開方向が長さの方向となるように配置される。採血される血液を適用(滴下)する部位のシートは、血液が浸透あるいは吸収し易いが、所定の区分以外に当該血液が流れて出てしまうようなものでは都合が悪い。【0017】図中、2は、図示された展開方向に血液が浸透移動してゆき、血球成分と血清成分あるいは血漿成分に分離することのできるシート(血球・血清分離シート)である。本発明の好ましい態様では、該シートは以下説明してあるようにそれに限定されるものではないが、ヘマセップ L (Hemasep L) (商品名:米国ポール コーポレーション(Pall Corporation, USA) から入手可能)メディウムとして市販されているものである。そのサイズは特に限定されるものではないが、1滴の血液を浸透あるいは吸収させる場合では、約5 mm(幅) ×約100 mm(長さ) のサイズで、通常血液の展開方向が長さの方向となるように配置される。図2及び3を参照しても明らかなように、2のシートは支持体シート3(一般的には「台紙」とも呼称される)の上に両面粘着テープなどで固定され、部分的に1のシートの下にもぐり込むようになっている。1のシートの台紙3の上の部分は両面粘着テープなどでその台紙3に固定されている。好ましい態様では、シート1とシート2との重なりは、約2〜3 mm 程度である。別の観点では、本発明の血液検体キャリアーシート構成体は、血液滴下シート1と血球・血清分離シート2とが、その大部分の面で互いが重なっていないことが特徴のものであってもよい。該血液検体キャリアーシート構成体としては、例えば約30〜98% 、あるいは約50〜90% の血液滴下シートの領域が、血球・血清分離シート面と重ならないものなどが挙げられる。【0018】図を参照して明らかなごとく、本発明の代表的な血液検体キャリアーシート構成体は、台紙3、血球成分と血清成分あるいは血漿成分に分離することのできるシート2及び血液滴下シート1から構成され、少なくともその一部において台紙3、血球成分と血清成分あるいは血漿成分に分離することのできるシート2、そして血液滴下シート1の順序で積層された構造を有するものである。また、本発明の代表的な血液検体キャリアーシート構成体は、血液採取時に血球成分と血清成分あるいは血漿成分に分離することのできるシート2に血液を適用するものでなく、一旦、血液滴下シート1上に適用されるという特徴を有している。一つの態様としては、血液滴下シート1と血球成分と血清成分あるいは血漿成分に分離することのできるシート2との組み合わせのユニットは、台紙3上に複数個設けられていることもできる。【0019】本明細書において、シートの面の一か所に血液を付着せしめると横方向に液体が移動し、血球成分と血清成分あるいは血漿成分に分離して、血球成分を主に含む血球成分領域と血清成分あるいは血漿成分を主に含む可溶性血液成分領域とを少なくともその一部が空間的に区別可能な形態で形成することのできるもの(例えば、添付図面の符号2で示されたシート)としては、いわゆるフィルターマトリックスから構成されるシート形態のものが挙げられる。こうしたフィルターマトリックスから構成されるシートは、繊維状のマトリックスから構成されるものであって、一般的には濾紙(フィルターペーパー)とも呼ばれる。本明細書では、全血をそれに適用すると血球成分と血清成分あるいは血漿成分に分離することから、「血球・血清分離シート」あるいは「血球・血清分離濾紙」と呼称することもある。【0020】該「血球・血清分離シート」としては、血液を浸透せしめること及び/又は吸着できるとともに、その浸透せしめられた血液及び/又は吸着された血液をクロマトグラフィー原理による分離をなし、分離を受けた血液中の成分を分離された状態で保持することができるもの、あるいは血清とそれ以外の成分とに分離し、該血清成分を分離された状態で保持することができるもの、あるいは血漿とそれ以外の成分とに分離し、該血漿成分を分離された状態で保持することができるものが挙げられ、好ましくは、繊維構造のものが挙げられる。特にこうしたものとしては、天然の重合体、グラスファイバーの繊維あるいは合成高分子の繊維からなる構造体であるものが挙げられる。該重合体としては、セルロース系物質、例えば濾紙又は繊維含有紙、修飾された天然ポリマーあるいは合成ポリマーなどが含まれていてよい。該合成高分子繊維構造体は合成高分子樹脂からなるもので、好ましくは熔融吹き込みプロセスによって凝集ウェブを形成するのに使用され得るものが挙げられる。【0021】こうした合成高分子樹脂(ポリマー)としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート類、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリエチレン、弗化ポリビニリデンなどのポリアルキレン類、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ナイロン6、ナイロン610 、ナイロン7、ナイロン11、ナイロン12などの各種のポリアミド類、ポリスルホン類、ポリカーボネート類等が挙げられる。好ましくはこうしたポリマーは、繊維シート(繊維マット)の形状の成形体(構造体)に加工されて用いられるのである。こうしたポリマー繊維からなるシートは、その表面をグラフト化し、血液に対して繊維シートが良好に濡れることにより所定の血液の浸透能及び/又は吸着能が得られるように改質されたものが好ましい。また該グラスファイバー繊維構造体は、当該分野で知られたものから選択して用いることができ、その繊維からなるシートも、同様に、その表面をグラフト化されていてよい。【0022】該繊維構造のものとしては、特に好ましくは全血を血球などの成分と血漿成分とに、あるいは血餅と血清成分とにクロマトグラフィー原理で分離することのできる性状を持った繊維構造から構成されたものが挙げられる。こうしたものとしては、繊維構造の表面に出来る限り高い密度のヒドロキシル基を有するようグラフト化したもの、ヒドロキシル基とカルボキシル基が混在するようにグラフト化したもの、ヒドロキシル基とメチル基が混在するようにグラフト化したもの、あるいはアミン基を有するようにグラフト化したものなどが挙げられる。望ましいプロセスでは、ヒドロキシル基を呈示するモノマーを使い、これらモノマーを水性環境下で重合化することによっても得られる。当該分野の当業者であれば、如何なるモノマーを選択するかとか、どのようにしてグラフト化を行うかの条件の選択はその目的に応じて容易に行うことが出来よう。【0023】本発明で使用されるシート(あるいは繊維構造物、代表的には濾紙形態のもの)は、好適には例えば親水性でポリアミド材あるいはグラスファイバー材から成るものが挙げられる。該ポリアミドの代表的なものとしては、ナイロンが挙げられる。好ましいナイロンとしてはポリヘキサメチレンアジペート、ポリ−ε−カプロラクタム、ポリメチレンセバカミド、ポリ-7- アミノヘプタノアミド、あるいはポリヘキサメチレンアゼレアミド等が挙げられ、特に好ましいものとしてはポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)が挙げられる。更に特に好ましいのは無皮質の実質上アルコール不溶性の親水性ポリアミド材が挙げられる。これらのシート(繊維)はまた好適には約5:1 から約7:1 の範囲内のメチレンCH2:アミドNHCOの比をもつものであることもできる。この好ましいタイプの材の性質は少なくとも一部は、表面上のポリアミドのアミン末端基およびカルボキシルの末端基の濃度から生ずる。この「表面」あるいは「材表面」としては、一つの構成材あるいは複数の構成材を用いることにより、目に見えるよう露出されているような外部表面、並びに繊維により構成されたシートの内部に存在する材の内部表面などが挙げられる。すなわち、表面は流体、特に液体によって接触されることができる材の部分である。【0024】制御された表面性質をもつ親水性のポリアミド材やグラスファイバー材が好ましいものとして挙げられる。特には制御された表面性質をもつ親水性で微孔質の無皮質ポリアミド材あるいはグラスファイバー材が好ましいものとして挙げられる。該制御された表面性質をもつ親水性で実質上アルコール不溶性の材は、例えば上述のタイプのアルコール不溶性ポリマー樹脂、すなわちメチレンCH2:アミドNHCOの比が約5:1 から約7:1 の範囲にある樹脂などを、官能性極性基をもつ水溶性の表面変性用ポリマーと一緒に同時に紡糸あるいは延伸することによって形成することもできる。該有用である制御された表面性をもつポリアミド材及びグラスファイバー材をつくるのに用いる表面変性ポリマーは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミン基およびイミン基のような親核性の化学的官能基の実質的部分を含むものである。その結果、構造材はその表面の上に、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミン基あるいは相互に反応しない上記の基のいずれかの組合せといったような高濃度の官能基を含むこととなる。制御された表面性質をもつこれらのポリアミドは、制御された表面性質をもたないポリアミド樹脂、すなわち好ましいポリアミド樹脂から形成されるが、しかし表面変性ポリマーで以て被覆されていないそれら出発ポリアミドなどよりも高濃度のカルボキシル基あるいはアミン基をもつ。【0025】特に有用であるのは、高濃度のカルボキシル成分を含むことによって生ずる制御された表面性質をもつ、前述のメチレンCH2:アミドNHCOの比をもつヘキサメチレンアジパミドから形成された、親水性で微孔質の実質上アルコール不溶性のポリアミド材である。表面カルボキシル成分を含ませることはそのナイロンを多量のカルボキシル基を含むコポリマーと一緒に同時に成形処理して製造できる。また、特に有用であるその他の物質は、制御された表面性質をもち、そのナイロンを豊富な一級および二級アミン基を含むポリマーと一緒に同時に成形処理することによってアミン官能基で以って表面が変性されているものである。こうして得られるヒドロキシル基変性表面を含むポリヘキサメチレンアジパミドから形成される材も本発明において有用である。こうした材料は多量のヒドロキシル基を含むポリマーと一緒にナイロン樹脂を同時延伸することによってつくられる。【0026】これらのポリマーなどから成る繊維マットは好適に血液(例えば、全血)と接触してその血液を含浸せしめるものであることが必要である。こうした目的のためには、該繊維マットの湿潤性を賦与することのできる表面張力の臨界値(湿潤性賦与表面張力臨界値)は、通常いずれも約46ダイン/cm 以下であるから、これを65ダイン/cm 以上、望ましくは95ダイン/cm 以上、更に望ましくは 110ダイン/cm 以上に上げる必要がある。ここで湿潤性賦与表面張力臨界値とは特定の表面張力を有する液体の特定の量をその表面に滴下し、その表面が湿潤するか否かを測定することにより決めることが出来るものである。例えば、ある液体を材料の表面に10滴ずつ滴下して、そのまま静置された場合、その滴下された場所で液体が吸収されるか、あるいは滴下された10滴のうちの9滴までが明らかに吸収された場合を湿潤が生起したとされ、その反対にその滴下された場所で液体が吸収されることがないか、あるいは滴下された10滴のうちの9滴までもが吸収されることがない場合を湿潤が生じないとされる。そして表面張力が26ダイン/cm の液体を滴下した場合には、速やかな湿潤が生起したが、表面張力が29ダイン/cm の液体を滴下した場合には、湿潤が生じないままであった場合に、その材料(マット)の湿潤性を賦与することのできる表面張力の臨界値(湿潤性賦与表面張力臨界値)は、27.5ダイン/cm とされることになる。この湿潤が生起するか湿潤が生じない場合の値は、勿論構成材料を構成する物質の表面物性や、液体と相互作用する面に存在する孔のサイズによっても異なることになる。例えば全血を含浸せしめるためには、湿潤性賦与表面張力臨界値ができるだけ高いことが好ましい。湿潤性賦与表面張力臨界値が65ダイン/cm 、より望ましくは110 ダイン/cm を越えることが、本発明にとって望ましい製品のめやすでもある。該グラスファイバー材についても、上記ポリアミド材と同様に、上記で説明したような性状、物性を持つものは好適であり、同様な手法で得ることのできるものであってよい。【0027】本発明において、血液(例えば、全血)を浸透及び/又は吸着できるとともに、その浸透及び/又は吸着された血液をクロマトグラフィー原理による分離をなし、分離を受けた血液中の成分を分離された状態で保持することができる繊維構造のものは、成形体、例えば繊維シート(あるいは繊維マット、代表的には濾紙)などの構造物に成形される。血液を浸透及び/又は吸着させた領域、例えば血液を浸透及び/又は吸着させる領域からその血液からの所要の成分の現れる場所、例えば血清あるいは血漿の現れる場所までの動きの方向は、重要なデザインを行うためのファクターであり、これを流れの方向と称することとする。【0028】該繊維構造の材料はそれを一体形状化して、好ましい構造物にすることができる。例えば多層構造体は、二つの運動ベルトから成ることを特徴とする積層オーブン中に製品を通過させ、そしてそのオーブン中で圧力ロールを用いて材料を所定の密度とすることができる。この操作によりその層同志を結合させて単一の一体型のシートとし、次に、使用に望まれるサイズに裁断することができよう。望ましい条件を得るために行われるグラフト化は積層の前でも後でもかまわない。また熱盤の間で圧縮することによりレイアップを行い、積層シートを得ることもできる。さらに、加熱ダイを用いて特殊な形状としたり、隣接する領域の間の気孔サイズを変えてもよい。熱成形によってあらかじめ成型された形として圧延シート状に成形することもできる。例えば、直径が3μm以下である繊維からなる多層繊維マットは常温成型することができ、それは用いるに十分可能なものである。【0029】血液がクロマトグラフィー原理の分離を受ける場合、例えば全血から血清を分離して得る場合、全血中の各成分がそれぞれ全く別個になるよう分離が生起する必要はなく、所要の測定あるいは分析にあたり問題とならない範囲で分離が達成できれば十分である。ある場合には全血中の液体成分が殆ど血清成分として実質的に回収できるものであることが望ましい。同様に、例えば全血から血漿を分離して得る場合も、所要の測定あるいは分析にあたり問題とならない範囲で分離が達成できれば十分である。【0030】本発明では血液検体を保持するのに使用される構造体は、指向性分離シートの性状を持つものが好ましく且つ便利に用いられる。特に好ましい指向性分離シート(あるいは指向性分離マットと呼ぶこともできる)は、全血を血球成分などの血餅と血清成分とに、あるいは血液の有形成分と血漿成分とに、クロマトグラフィー原理で分離することのできる性状を持ったものである。こうした指向性分離シートでは、その分離の生起する領域の中にバリヤー層を設けて血清成分又は血漿成分の移動は許容するが、血餅など血清成分から除いておきたい成分、あるいは赤血球などの血漿成分から除いておきたい成分の通過を実質的に防止することのできる層(防護層)を設けておくこともできる。防護層としては、多孔質であるもの、より好ましくは微孔質膜であるものが挙げられる。こうした微孔質膜の表面は親水性樹脂膜であるものが好ましい。また指向性分離シートには、血清又は血漿を保持するのに適した強い毛細管吸引力を有する構造を設けてあってよい。こうした構造としては、上記した微孔質膜であるものが挙げられる。こうした血液検体を保持するのに使用される構造物としては、例えば特開平5-312802号公報に開示されたようなものが挙げられる。また好ましくはヘマセップ L (Hemasep L) (商品名:米国ポール コーポレーション(Pall Corporation, USA) から入手可能)として市販されているものなどが挙げられる。【0031】本発明で指向性とは血液試料を浸透及び/又は吸着させた部位から見て得られた血清成分又は血漿成分の保持されている部位が特定の方向に実質的に偏っており、クロマトグラフィー原理による分離が一定の方向性を持って達成されていることを意味する。従って指向性分離シートに血液試料を浸透及び/又は吸着させると、一定の方向に向かってクロマトグラフィー移動して分離が生起して、所要の部位で分離された血清成分又は血漿成分の保持が生起し、こうした性状を持つものであれば指向性があるとすることができる。【0032】本発明では、該血球・血清分離シートは、親水性化合物を含有しているものである。該親水性化合物としては、親水性を付与することが知られたものから選択することができる。本発明では、該血球・血清分離シートは、界面活性剤、ブロッキング剤などを含有しているものである。界面活性剤としては、血液成分の移動が展開方向に向かっての位置がシートの端部と中央部との間で可能な限り均等な進行速度を与えるものが好ましい。代表的な界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が挙げられ、より好ましくは溶血性の少ないものが好ましい。該界面活性剤の具体例としては、ソルビタンと高級脂肪酸との部分エステルの遊離水酸基にポリオキシエチレン残基が付加したソルビタンエステル類(高級脂肪酸残基としては、ラウレート、パルミテート、ステアレート、オレエート、ステアレートとパルミテートの混合物などが挙げられ、ポリオキシエチレン残基としては、ソルビタン1モル当たり約8〜25モルのオキシエチレン単位を含有するものなどである)、ポリオキシエチレンンアルキルアリールエーテル類(ポリオキシエチレン残基としては、アルキルアリール残基1モル当たり約5〜20モルのオキシエチレン単位を含有するものが挙げられ、アルキルアリール残基としては、オクチルフェニル基などが挙げられる)などが挙げられる。特に好ましい界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween 20(商品名))、ポリオキシエチレン(9)オクチルフェニルエーテル(NP-40(商品名))、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X-100(商品名))などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、当業者であれば本明細書に記載に従い、試験を行うなどして、適切なものを選択することが可能である。【0033】該血球・血清分離シートは、第四級アンモニウム塩基とリン酸エステル残基とを有する有機化合物、例えば2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC) を単独あるいはその他のモノマーと重合させて得られたリン脂質ポリマーを含有するもの、該MPC あるいは該リン脂質ポリマーを蛋白質と組み合わせて、適度な分子量及び親水性・疎水性を調整されたものなどを含有しているものである。代表的な該血球・血清分離シートは、人工蛋白質、例えばリピジュア(商標名: Lipidure)BLシリーズ(日本油脂(株)製造、(株)第一器業販売)を含有しているものである。好ましくは、該血球・血清分離シートは、Lipidure BL A03,同 B03, 同 D05, 同 E02, 同 G04, 同 J02などから選ばれたものを含有しているものである。さらに、該血球・血清分離シートは、アッセイ用試薬として販売されているブロッキング試薬、安定化試薬などから選ばれたものを含有しているものである。該ブロッキング試薬としては、例えば合成ポリマーからなるもので、安定化能あるいは非特異的吸着能に優れるものが挙げられる。代表的な該血球・血清分離シートは、例えば免疫学的測定用ブロッキング試薬N101又はN102(日本油脂(株)製造、(株)第一器業販売)などを含有しているものである。該安定化試薬としては、例えば合成ポリマーからなるもので、蛋白質溶液の安定化効果を示すもの、蛋白質溶液の凍結、凍結乾燥に対して安定化効果を示すものなどが挙げられる。代表的な該血球・血清分離シートは、例えば免疫学的測定用ペルオキシダーゼ安定化試薬H100(日本油脂(株)製造、(株)第一器業販売)などを含有しているものである。【0034】該血球・血清分離シートに 界面活性剤、ブロッキング剤などを含浸せしめるには、例えば精製水で適度に希釈した当該成分を含有する希釈液に、当該血球・血清分離シートを浸し、適当な温度の下、適当な時間乾燥処理を行えばよい。例えば希釈は市販の試薬を約5〜100 倍程度に希釈して用いることができる。乾燥処理は、例えば常温、代表的には室温で、約1時間〜約2日間、例えば一晩でよい。場合によっては、血球・血清分離シートは当該希釈液に浸す前にメタノールなどのアルコールに浸して、水溶液の希釈液の浸透性を増進させておくこともできる。【0035】本発明では、血液滴下シートは、血液吸収の速いもの、溶血を起こさないものあるいは起こし難いもの、血球・血清分離シートでの血清成分あるいは血漿成分の分離に好ましい作用を及ぼすもの、それ単独でも血液をある程度血球成分と血清成分あるいは血漿成分とに分離する能力を有するもの、部分的に接する部位を介して血球・血清分離シートへの所定成分を移行せしめる能力のあるものあるいは好ましくはその能力の高いもの、及び結果として回収される蛋白が原血漿に近いものから成る群から選ばれた性状あるいは特性をもつものから選択される。該血液滴下シートは、本血液検体キャリアーシート構成体のサイズが比較的小さいことに鑑み、その加工性の良いものから選択することもできる。当業者であれば、本明細書の記載を参考にして試験を行うことにより、選択すべきものを容易に決定できよう。本発明で使用するに適した血液滴下シートは、いわゆるフィルターマトリックスから構成されるシート形態のものが挙げられる。こうしたフィルターマトリックスから構成されるシートは、繊維状のマトリックスから構成されるものであって、一般的には濾紙(フィルターペーパー)とも呼ばれるものである。当該血液滴下シートは、Whatman International Ltd., Springfield Mill James Whatman Way Maidstone Kent, Englandなどからも入手可能である。該血液滴下シートの具体例としては、例えばグレード GF/AVA, F487-09, F487-14, F147-11, GF/D, F145-02, GF/DVA (いずれもWhatman 社製) などが挙げられ、特に好ましい血液滴下シートとしては、例えば F487-09, F487-14, F147-11, GF/AVAなどが挙げられ、とりわけF147-11 は好適に用いることができる。【0036】該血液滴下シートのサイズは、滴下される血液を十分に吸い取ることが可能な程度とするのがよいが、一方では血球・血清分離シートへ極力所定の血清成分あるいは血漿成分を移行せしめる必要があるので、自ずからそのサイズは決定できる。通常は1滴の血液量を当該シート外の部分に移行せしめずに(例えば、台紙などに漏れることがないような程度)、血球・血清分離シートへ浸透させて、該血球・血清分離シート上で血清成分あるいは血漿成分の領域を十分に与えることができればよい。したがって、実験などによりそのサイズは適宜決定できる。該血液滴下シートの形状はほぼ正方形、長方形、円形、楕円形など適宜選択することが可能であるが、加工性の観点からは、血球・血清分離シートとほぼ同程度の幅(血球・血清分離シートにおける血液の展開方向に対して直角の方向)でその長さは上記した機能を果たすに十分な長さ(例えば、約7 〜 12 mm程度) を有する方形のものが挙げられる。該支持体シートとしては、いかなるものもそれに適していれば使用することができるが、通常紙が使用できる。該紙としては、洋紙、和紙、板紙のいずれからも選択でき、さらには化学繊維紙を用いることもできる。該紙の表面は、プラスチック、金属で被覆されているもの、それらで表面処理されているもの、印刷されたものであってもよい。その他、特開平10-132800 号公報及び特開2001-221794号公報の記載を参照して血球・血清分離シート及び支持体シートをデザインしたり、その使用法を応用することができ、該文献の記載はそれを参照することによりその内容は本明細書に含まれる。【0037】指血あるいは耳朶血を被検試料として用いる場合の血液採取法としては、より具体的には、被検者の指先あるいは耳朶を穿刺前によくマッサージあるいは暖めて充血させておき、消毒ガーゼで穿刺部位を拭いて乾燥させ、ディスポーザブル・ランセット、あるいは簡易メス刃で指先あるいは耳朶を穿刺して出血させる。この場合、創口はなるべく小さい(3mm以下程度)ことが好ましい。ランセットを使用して血液を得る方法が簡単で好ましく用いられる。普通穿刺部から十分に出血させた後血液検体キャリアー構成体の血液滴下シート部に吸い取らせる。場合によっては、最初の血滴を拭い去って後にこのシート部の繊維に吸着させることをしてもよい。通常血液検体キャリアー構成体のシートは検体を吸着させるまでは乾燥した状態に保持されている。また、適用される血液量としては、通常指先の場合で出血が直径 5〜6 mmの玉状のものが好ましく、1滴で20〜50μL 程度(例えば、約25〜40μL 程度) である。臨床検査の場合には、それに限定されるものではないが、例えば数滴、普通、1〜5滴の血液、より普通には1〜3滴あるいは1〜2滴(例えば、約20μL 〜90μL 、あるいは約25〜55μL)の血液である。各個人が自分で該ランセットなどを使用して採血する場合(パーソナル採血法)、各個人が手技に通じているか否かにより異なるけれども、通常は一回に1〜2滴の血液、多くても5滴程度までを得るのが限界であると考えられる。それ以上の出血を期待するのはあまり現実的でないと推察される。【0038】出血させた血液を該血液検体キャリアー構成体のシートに吸い取らせると、しみ込んだ血液は、その下にある血球・血清分離シートに移行して、血液は横方向に展開して行き、血清分離が行われる。すなわち、血清成分が、血球 (主に赤血球からなる) などの固形成分から分離され、それぞれ該血球・血清分離シートの血清成分担持部分と血球などの担持部分とをハサミで切るなどして分けることが可能となる。血清への分離処理は、 1〜15分間程度、通常2〜5分間程度で完結することができる。通常、出血させた血液一滴毎に、各該血液検体キャリアー構成体の短冊一枚に吸い取らせることが好ましい。本発明の血液検体キャリアー構成体を使用すれば、血球・血清分離シートと血液滴下シートとが別構造体から構成されているので、サンプリング(成分抽出) を容易にするため血清成分領域あるいは血漿成分領域を良好な形態(展開方向に対して血液がほぼ均等に浸透あるいは移動してカッティングなどが容易な形状及び/又は展開方向に対して長い区域となるなど)とするための処理(例えば、界面活性剤及び/又はブロッキング剤などの薬剤による処理など)を加えても、出血している傷に接触するのは、そうした処理を施していない血液滴下シートであるので、安全面での問題がないあるいは少ないという利点がある。そして一方では、優れたサンプリング性状を与えるなどの良好な取扱い性能を有する微量血液運搬具となり、また個人での取扱も可能で安全性もあり、多数の検体でも嵩張らないなどの利点も生かすことが出来る。【0039】血清分離処理が完結した後、通常の処理では必要に応じ血液検体キャリアー構成体のシートを乾燥させてよい。分離処理された血液検体は、好適には自然乾燥(風乾)させることができる。充分自然乾燥させた後、血清を保持する血液検体キャリアー構成体(あるいは血清を保持する血球・血清分離シートだけでもよい)は、それを吸湿を避けて冷蔵庫(2〜8℃)に保管することができる。分離処理された血清部分を湿った状態に保ちたい場合には、血液検体キャリアー構成体全体を密封可能な袋等の容器内に収納後その袋の口を密封してもよい。【0040】こうして保存及び/又は輸送された血清を保持する血液検体キャリアー構成体は、検査実施時には次のように取り扱うことができる。血液検体キャリアー構成体のうちの血球・血清分離シート上の血清部分を該シートごとハサミで切り取る。特には検査に使用する所要部分を選択して切り取る。切取りは、ハサミを使用して行うこともできるし、シート上の血清部分を選択的に認識する機構を備えたコンピューター制御のカッターを使用して行うこともできる。通常、切取りの際には、血清あるいは血漿を担持する部分と、血球などを担持する部分とが別々となるようにし、できるだけ血清あるいは血漿を担持する部分が多く得られるようにすることが望ましい。その切り取られた血清部分のシートからそこに保持された被検成分を液相へ溶出し、こうして得られた検体を所要の測定・分析にかける。また検体として使用を希望する成分の位置する分離シート部分を任意に選択して切り取って用いることもできる。本発明の血液検体キャリアー構成体を使用することで、血清領域あるいは血漿領域をより広くすることが可能であり、サンプリングが楽になり、安定したサンプリング処理、迅速なサンプリング処理ができ、得られる検査結果についても信頼性を高めることが可能となる。【0041】該シートに保持された被検成分を、液相へ実質的にネイティブ (native) な溶出を行うことが可能である限り、この溶出を行うための溶出用溶液ないし溶出方法は特に制限されない。通常は緩衝液を用いて溶出処理できる。該緩衝液を調製するに用いる緩衝剤としては、生化学測定法を適用して測定対象アナライトを測定するにあたり、測定に障害をもたらさないものが好ましいが、当該分野でそれら測定・検査法において通常使用されるものあるいは容易に使用できるもののうちから選択して使用できる。例えば、緩衝剤としては、リン酸、N-(2- ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(2- エタンスルホン酸)(HEPES)、ピペラジン-N,N'-ビス(2- エタンスルホン酸)(PIPES)、3-( シクロヘキシルアミノ)-1-プロパンスルホン酸(CAPS)、3-(N- モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、ホウ酸、クエン酸、バルビタール、イミダゾール、あるいはそれらの塩などが挙げられる。これらは単独でも、任意に組合わせるなどして配合しても用いることができる。【0042】また適当な酸、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、酢酸、クエン酸、マレイン酸、フマール酸などの有機酸などやアルカリ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ水酸化物、トリエチルアミンなどの有機塩基などにより、pHを適切な値に調節できるようにして、任意にそれらを組合わせたり、配合しても用いることができる。好ましくは水溶液が使用され、例えばリン酸塩緩衝液、TES 緩衝液、HEPES 緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、バルビタール緩衝液、イミダゾール−塩酸緩衝液などが挙げられるが、できる限りネイティブに溶出を行う点からは、リン酸緩衝液等の緩衝液(pH6.8〜8.2 、好ましくは pH7.0〜8.0)を溶出用溶液として用いることが好ましい。【0043】通常該シートに保持された被検成分は非常に少量あるいは極微量であることから、使用する溶出用溶液の量は、有効な溶出が達成可能であれば、可能な限り少ない量を使用できるが、被検成分を保持する該分離シートの容積がある程度あることから、あまり少量であると該溶出用溶液に該分離シートが浸らないという問題も生じるのでこの点を考慮したり、さらに測定装置の必要とする量など測定の都合からその下限値は決定できる。一方、あまり大量の溶出用溶液を用いると該分離シートに保持された被検成分は非常に少量であることから、測定可能濃度のものが得られないという問題をきたす。これは、別の観点からは、一方では一旦溶出した液中に存在する被検成分の濃度を調整すること自体かなり困難であることをも意味する。【0044】溶出する時の温度及び溶出時間としては、有効な溶出が達成できれば特に限定されないが、溶出温度では、通常冷蔵温度から常温で実施でき、例えば 0℃〜40℃、より普通には 10 ℃〜30℃、より一般的には15℃〜26℃である。溶出時間としては、特に制限はなく、効率の点ではより短時間であることは好ましいが、通常5分間〜24時間程度、好ましくは10分間〜6時間程度、より好適には20分間〜4時間程度で、代表的には30分間〜2時間程度である。溶出は、静置して行っても、適度に溶出用溶液を撹拌あるいはそれに振動を与えながら行ってもよい。溶出用溶液の量は、検体試料が希釈されて測定不能にならない範囲であれば特に制限はなく、例えば 600μL までの量、好適には 550μL 以内の量を使用してよい。【0045】上記した溶出液中の各種測定が可能である限り、該測定の方法は特に制限されない。アナライトの測定には、例えば高速液体クロマトグラフィー、ネフェロメトリー、化学発光法、競合性蛋白結合分析法、ラジオレセプターアッセイ、螢光法、比色法、電気泳動法、超遠心法、沈殿法、原子吸光分析法、ガスクロマトグラフィー、免疫測定法などが挙げられる。【0046】また特異的結合を利用した方法、例えば、相補的核酸配列、エフェクターとレセプター、酵素とインヒビター、受容体とリガンド、補体結合反応などの反応を利用した方法などを用いることもできる。上記相補的核酸配列を利用した方法としては、ポリメラーゼ・チェイン・リアクション(PCR) 法、リバース・トランスクリプターゼ・ポリメラーゼ・チェイン・リアクション(RT-PCR)法、ASPCR (allele-specific PCR) 法、in situ ハイブリダイゼーション、サザンブロット・ハイブリダイゼーションなどが挙げられる。その他遺伝子診断法も利用でき、例えば、RFLP (restriction fragment length polymorphism) 法などが挙げられる。【0047】本発明の血清分離シートを用いて得られた被検サンプル、例えば、血清や血漿などは、各種測定にかけることができる。これら検査・測定としては、必要であれば、例えば田中久及び横山節男編集、医薬品の開発 10巻、診断薬、廣川書店、平成2年3月15日発行;株式会社エスアールエル、総合検査案内 1995、1995年4月作成、60,000▲1▼NEにリストされた各種検査を挙げることができ、その内容及びそこで引用されている文献に記載された内容は本明細書において参照事項として本明細書の内容のうちに含められる。【0048】【実施例】以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。【0049】実施例1(1) 微量の血液を吸収させ、乾燥させた後、運搬し、次いで抽出処理をすることから、使用するマトリックスシート(濾紙)から濾紙かすが多くでると、測定に悪影響を及ぼすと考えられるので、基礎的検討として、濾紙かすの出にくいものを選別するための試験を行った。各種濾紙を所定のサイズとし、生理食塩水 (0.9%NaCl水溶液) の中に入れ、断続的に撹拌を行い、30分間処理をした後、抽出液から濾紙を取り除いた。抽出液の吸光度を測定した。測定は、6 mm disk の濾紙3 枚当たり1.5ml の0.9%NaCl水溶液で滲出処理後、260 nm OD, 280 nm OD及び660 nm OD を測定して比較した。280 nm OD は蛋白の定量に通常よく使用されるが、280 nm OD の値の大きいものは濾紙かすが多く出ていると判断される。Hemasep L (Pall Corporation)が良好なものであることを確認した。【0050】(2) 次に、各種の濾紙に血液を滴下せしめ、得られた血球領域と血漿領域とを測定して、血球と血漿とへの分離性状につき調べた。極力、広い血漿領域を与え、その両者間の区域の識別が容易なものを優れた性状のものとする。また、溶血の有無についても調べた。結果を表1に示す。Hemasep L (Pall Corporation)が比較的クリアーな血漿領域区分を有し且つ長い血漿領域を与え、良好なものであることを確認した。【0051】【表1】【0052】(3) 上記(2) で血液を濾紙に滴下して血球成分と血漿成分とに分離する性状を調べたもののうち、比較的良好な分離性状を示すものにつき、血漿領域から抽出処理を行って、溶血の発生について調査を行った。抽出はできるだけ血漿成分領域の濾紙部分を切取り、1.5 mlの0.9%NaCl水溶液で断続的に撹拌を行い、30分間処理をして抽出した。濾紙を取り除いて得られた液につき測定を行った。406 nm OD の測定値が大きいもの程ヘモグロビンに起因する吸収があると考えられ、溶血が起こっていると思われる。Hemasep L (Pall Corporation)が比較的溶血が少ないと判断された。【0053】(4) 血球成分と血漿成分とに分離する機能を使用するシート(濾紙)としてHemasep L (Pall Corporation)を使用し、それに血液(全血)を滴下すると、血液がシート上を流れたり、分離されて生ずる血漿成分領域の形態が不揃いになる。血漿成分領域の長さをより良いものとする(血漿の分離をより良くする)目的で、Hemasep L 単独のものと、Hemasep L とHemasep V (Pall Corporation)とを組み合わせて使用する場合とで比較を行った。血液滴下部位にほぼ円形に切り抜いたシート(濾紙)を置いて、血液をそこに滴下した時の展開の様子を調べた。血液滴下部位に置いた濾紙としては、Hemasep V を使用した。血液は全血40μl を矢印の滴下位置にたらした。Hemasep L のサイズは、5 × 55 mm、Hemasep V のサイズは、6 mm disc とした。観察結果の概念図を図4に示す。さらに、Hemasep V をHemasep L の端に載せて、血液(全血40μl)を、Hemasep L の端若しくはHemasep V の上に滴下し、各領域の分離の長さを測定し、比較した。結果を表2に示す。二種の濾紙を組み合わせた場合の方が、50% 程度血漿部分の領域が長くなっていることから、有効であると判断される。【0054】【表2】【0055】(5) 二種の濾紙を組み合わせた構造体のHemasep L (Pall Corporation)の上に載せるサンプル滴下用の濾紙としてサンプルの吸収性が優れていることからGF/D (Whatman 社) を使用していたが、柔らかい濾紙でその加工性が劣ると思われる。すなわち、この柔らかい濾紙を 5×5 mmの大きさに均一に細切りすることは難しいと思われる。そこでHemasep L (5×55 mm) の一端に表3に挙げた濾紙片(5 mm 幅×長さ) を載せ、その上に血液(40μl)を滴下した。血液は、EDTA採血管に採血したものを使用した。展開した後長さを測定。血漿成分領域は、PBS 1 mlで抽出し、分光光度計で測定。結果を、表3に示す。サンプル滴下用の濾紙としてF147-11 (Whatman社) が好適と判断された。【0056】【表3】【0057】(6) 血球成分と血漿成分とに分離する機能を使用するシート(濾紙)としてHemasep L (Pall Corporation)は優れた性状を示すと評価されたが、それに血液(全血)を滴下すると、血液がシート上を流れたり、分離されて生ずる血漿成分領域の形態が不揃いになる。そこでシート(濾紙)を各種の試薬で処理したものについて検討した。所定のサイズの濾紙をブロッキング剤として通常使用されている界面活性剤あるいはリン脂質系化合物を用いて処理したものについて、その適性を調査した。ブロッキング剤としては次のものを次の濃度で用いた。1 Tween 20 5%/PBS2 NP40 5%/PBS3 Triton 100 5%/PBS4 Glycerol 5%/PBS5 Lipidure BL A03 5%/PBS6 Lipidure BL B03 5%/PBS7 Lipidure BL D05 5%/PBS8 Lipidure BL E02 5%/PBS9 Lipidure BL G04 5%/PBS10 Lipidure BL J02 5%/PBS**リピジュア(商標名: Lipidure)は、 日本油脂(株)製造、(株)第一器業販売されているブロッキング剤である。〔前処理〕ミリQ水で各試薬を×50希釈 (0.1%) し、濾紙 (Hemasep L, 5×55 mm)をこれら希釈液に浸した。濾紙をキムワイプの上で乾燥させ、さらに37℃で乾燥を続けた。濾紙はその日のうちに検討に使用した。〔血液展開処理〕濾紙(Hemasep L) の上に径6mm の濾紙(GF/D)を乗せた。この上にEDTA血を40μl 垂らした。血球と血漿の分離を見た。対照として未処理の濾紙についても行った。サンプル血液は2種類について行った。血球から分離した血漿部分の長さを測定した。次に血漿の分離した部分(血漿保持領域) を切り取り、チューブに入れた。そこにPBS 200 μl を加え、30min 攪拌(攪拌機の目盛り2)、それから4℃に2時間放置後、蛋白濃度の測定(総蛋白、ワコー(和光純薬(株))を日立7070((株)日立製作所)で行った。ヘモグロビン濃度も測定した。【0058】結果から判断して、血球と血漿の分離は良かった。ただ、アルミホイルの上に濾紙を直に置いたせいか、対照とした未処理のHemasep L の血漿分離部分の裏側に血球が存在した。そのために、対照のHb濃度は高めになっている。分離する血漿の形状(濾紙上の形状)については、未処理の濾紙では中央が窪んだY字型になったが、前処理した濾紙ではそのようないびつな形にはならなかった。総蛋白については、サンプルの血液が40μl であり、その半分が血漿とすると、血漿は20μl となる。PBS 200 μl で抽出しているので、STD は、×10希釈して使用して、比較とした。STD の7.2g/dl が平均的蛋白濃度であるならば、本測定で7.2g/dl を越えたNo. 11の対照の濾紙は、血漿が20μl 以上回収された、ということになる。濾紙を上記試薬で処理することで、血球から分離する血漿の長さは伸び、形状も改善された。免疫学的測定用ブロッキング試薬N101及びN102(日本油脂(株)製造、(株)第一器業販売)、そして免疫学的測定用ペルオキシダーゼ安定化試薬H100(日本油脂(株)製造、(株)第一器業販売)での処理も有利な結果を与える。【0059】(7) 濾紙から抽出される試料の改善をめざして、さらに濾紙の処理に使用するブロッキング剤の濃度について検討を行った。濾紙は、Hemasep L と GF/D の組み合わせで行い、Hemasep L をブロッキング剤等 (NP40, Triton 100, BL E02, BL J02) を使用し、その処理濃度を0.1%より×5倍の希釈の5濃度とした。組み合わせは、未処理 GF/D + 処理 Hemasep Lとした。サンプルは、EDTA全血とし、濾紙を並べ、その上へサンプルを滴下 (40μl)した。濾紙による分離血漿の長さを測定し、ついで血漿部分を切り出し、細切しチューブに入れ、PBS 200 μl を加え、攪拌15分間(攪拌機の目盛り 2.5)を行って抽出した。抽出液につき、日立7070((株)日立製作所)による総蛋白の測定、そして測定残液をPBS で×5希釈し、分光光度計による測定をした。結果を表4に示す。【0060】【表4】【0061】(8) 濾紙による分離、抽出の再現性について調べた。濾紙のうち、Hemasep L をブロッキング剤で処理した。処理は、ミリQ水、NP40、E02 (各 0.05%)で行った。サンプル血液(EDTA, 全血)は3種使用し、40μl をキャリアー構成体の血液滴下部のシートに滴下した。血漿部分の長さを測定後、切り出し、抽出処理(200 μl, 15min, 攪拌機目盛り2.5)した。抽出液を日立7070による総蛋白(TP)測定をし、残液を×5希釈して、分光光度計による測定にかけた。検討用濾紙は、50 mm の Hemasep Lの一端にGF/D(5×5 mm) を乗せた。比較のために従来の濾紙(Hemasep L, 4×80 mm 、サンプルは濾紙の中央に滴下)にもサンプルを滴下した。血漿部分は両端から切り取った。一つの条件について濾紙10本使用した。10回測定の再現性を比較した。血球と血漿の境界は従来のものが最も良かった。これは展開に時間がかかり、凝固が進むためと考えられる。従来の濾紙は、濾紙への浸透に時間がかかり、濾紙の裏へ血液が回り込むことがあった。処理したものの中では、E02 がはっきりしていた。NP40、ミリQでは、境界がぼやける例もあった。なお、従来濾紙とは、特開2001-221794号公報に記載のものに対応するものである。ワコーTPキット(和光純薬(株))を使用し、STD は×10希釈し、表示値はそのままで測定した(g/dl)。【0062】本発明の血液検体キャリアー構成体の血液滴下シートの血液を付着あるいは吸収させ、該構成体の血球・血清分離シートにおいて分離のための血液の展開を行うと、血球・血清分離シートの中を血液が均一に流れず、該血球・血清分離シートの中央よりも縁のほうが血液の展開速度が速く、V字状の展開を示し、さらに血球部分から分離した血清部分の、分離距離が小さく、血清の分離回収が必ずしも満足のいくものでないとの問題点が改善され、より当該シートの中を血液が均一に流れるようになり、血清の展開する距離がより大きくなるという改善を得られる。本発明の血液検体キャリアー構成体の血球・血清分離シートは、ブロッキング剤、例えばLipidure BL (商品名、日本油脂(株))などのリン脂質系物質を含浸処理してあることから、血液は該シートの中を比較的均一に流れ、また血球から分離する血清の分離距離も格段に長くなり、血清の溶出、回収が容易となる。本発明の血液検体キャリアー構成体の血液滴下シートに血液滴下を行うことで、該血液滴下シートは未処理シートであるので、薬剤の処理による人体への影響という問題も避けることができる。【0063】【発明の効果】本発明によれば、微量の血液検体を安心して採血でき、その取扱も極めて簡便にできるようになる。また、本発明の血液検体キャリアー構成体は、それ自体で血球成分と血清成分あるいは血漿成分とに分離する働きを有する利点を活用しつつ、良好な分離性状を引き出して、検体試料として使用するに十分な分離を達成することができ、且つそのキャリアー構成体からの測定試料の採取も好適に行うことを可能にする。本発明の血液検体キャリアー構成体を使用すれば、個人が簡単に検査のための血液検体を採取して、検査機関に渡すことを可能にするし、大量の微量検体を扱うことを可能とする。本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。【図面の簡単な説明】【図1】本発明に基づいた血液検体キャリアー構成体の平面図を示す。【図2】本発明に基づいた血液検体キャリアー構成体の側面図を示す。【図3】本発明に基づいた血液検体キャリアー構成体の俯瞰斜視図を示す。【図4】血球・血清分離シートにおける適用血液の展開の様子を描いた図面である。【符号の説明】1−血液滴下シート、2−血球・血清分離シート、3−支持体シート 極微量の血液を検体として使用する目的で運搬する場合に使用される血液検体キャリアー構成体であって、(A) 該キャリアー構成体は、支持体シート及び少なくとも二種の血液キャリアー用シートを組み合わせて構成されるものであり、該血液キャリアー用シートはいずれも繊維状マトリックスから構成されているもので、(B) 該血液キャリアー用シートの一方は、 (1) 長方形の形状を有しており、該長方形のシートの面の一か所に血液を付着せしめると横方向に液体が移動し、血球成分と血清成分あるいは血漿成分に分離して、血球成分を主に含む血球成分領域と血清成分あるいは血漿成分を主に含む可溶性血液成分領域とを少なくともその一部が空間的に区別可能な形態で形成することのできるもので、且つ、 (2) 該血液キャリアー用シートには、リン脂質ポリマーブロッキング剤が含ませてあるものであり、(C) 該血液キャリアー用シートの他方は、 (i) 採血される血液を適用する部位を構成するものであって、付着せしめられた血液を一時的に保持可能であり、且つ適用された血液を上記(B)のシートに移動せしめることが可能であり、上記(B)の長方形のシートの平面の少なくとも一か所に接して配置せしめられているもので、且つ、 (ii) 該血液キャリアー用シートは、実質的に血液接触に関し人体に対して非毒性のものであり、(D) 支持体シートの上に上記(B)のシート、その上記(B)のシートの上に上記(C)のシートの順で少なくとも部分的に配置されているもので、(E) 上記(B)のシートが、ヘマセップ L(Hemasep L,商品名、米国ポール・コーポレーション社)のキャリアー用シートであり、(F) 上記(C)のシートが、F147-11(商品名、Whatman社)のキャリアー用シートである(G) 上記(B)(2)のリン脂質ポリマーブロッキング剤が、Lipidure BL A03、Lipidure BL B03、Lipidure BL D05、Lipidure BL E02、Lipidure BL G04及びLipidure BL J02(Lipidureは日本油脂(株)の商品名)から成る群から選ばれたものであることを特徴とする血液検体キャリアー構成体。 請求項1(B)のシートが、リン脂質ポリマーブロッキング剤を適度な濃度に希釈した水溶液でもって該繊維状マトリックスから構成されているシートを含浸せしめた後乾燥させて得られたものであることを特徴とする請求項1記載の血液検体キャリアー構成体。 請求項1(B)のシートが、約4〜10mm×約40〜120mmであることを特徴とする請求項1又は2記載の血液検体キャリアー構成体。 請求項1(C)のシートの非毒性とは、界面活性剤、ブロッキング剤及び蛋白安定化剤などから成る群から選ばれたものが含まれていないことを意味するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一記載の血液検体キャリアー構成体。