生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_動物性角化組織の観察方法
出願番号:2002266001
年次:2007
IPC分類:G01N 1/28,G01N 1/32,G01N 33/50


特許情報キャッシュ

増川 克典 真砂 賢次 棚町 宏人 儘田 明 JP 3951867 特許公報(B2) 20070511 2002266001 20020911 動物性角化組織の観察方法 花王株式会社 000000918 特許業務法人田治米国際特許事務所 110000224 田治米 登 100095588 田治米 惠子 100094422 増川 克典 真砂 賢次 棚町 宏人 儘田 明 20070801 G01N 1/28 20060101AFI20070712BHJP G01N 1/32 20060101ALI20070712BHJP G01N 33/50 20060101ALI20070712BHJP JPG01N1/28 FG01N1/32 BG01N33/50 H G01N 1/00-1/44 G01N 33/50 JSTPlus(JDream2) 特開平07−209292(JP,A) 特開平11−344489(JP,A) 特開昭63−113358(JP,A) 特開2002−014041(JP,A) 特開2000−111550(JP,A) 飯野博夫、外5名,染色した羊毛,ナイロン6織物のスパッタエッチングによる色彩変化,繊維と工業,社団法人繊維学会,1996年 4月10日,Vol.52,No.4,p.213−219 脇田登美司,常圧低温プラズマ加工,テキスタイル&ファッション,財団法人一宮地場産業ファッションデザインセンター,1995年 7月20日,Vol.12,No.4,p.194−206 大矢義博,ミクロの世界に見る髪の表情,明星大学高分解能分析電子顕微鏡センターニュースμ,1987年 3月24日,No.1,p. 14〜19 6 2003227821 20030815 9 20050106 野村 伸雄 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、動物性角化組織の観察方法及び動物性角化組織画像の形成方法に関する。【0002】【従来の技術】動物性角化組織は、生細胞(ケラチノサイト、毛母細胞等)がアポトーシスによって変化(角化)した組織であり、皮膚の角質層、爪、毛髪などがある。皮膚の角質層には細胞間脂質が含まれ、毛髪には内在脂質が含まれており、これらは皮膚あるいは毛髪を健常に保つためのバリヤー機能や保水機能、又は力学的物性に関与するとされている。【0003】皮膚の角質層の細胞間脂質は、主にセラミド、コレステロール、脂肪酸、コレステロールエステル、硫酸コレステロールからなり、角質層の細胞間にてラメラ層を形成している(例えば、芋川、油化学,44,p751-766(1995))。また、ヒト毛髪の内在脂質は、主に脂肪酸、ワックスエステル、スクワレン、トリグリセリド、コレステロール、セラミドからなり、キューティクル及びコルテックスの細胞間にて細胞膜複合体を形成している(例えば、Hilterhaus‐Bong等,Int.J.Cosmetic Sci.,11,p167-174(1989))。そして、スキンケアあるいはヘアケアにおいては、これら脂質の減少を補うために、ケア剤として油脂類の浸透を目的とした組成物が多く使用されている。【0004】また、皮膚の角質層の細胞間脂質あるいはヒト毛髪の内在脂質を観察する方法には、通常、光学顕微鏡、又は透過型若しくは走査型電子顕微鏡が用いられる。【0005】【非特許文献1】芋川、油化学,44,p751-766(1995)【非特許文献2】Hilterhaus‐Bong等,Int.J.Cosmetic Sci.,11,p167-174(1989)【0006】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、光学顕微鏡を用いる方法では脂質の存在部位を明瞭に観察することが困難である。【0007】脂質の存在部位を明瞭に観察する方法としては、皮膚の角質層やヒト毛髪を樹脂に包埋した後、超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡を利用する方法がある。透過型電子顕微鏡を利用した方法によれば、皮膚の角質層の細胞間脂質のラメラ層を観察でき(例えば、Swartzendruber等,J.Invest.Dermatol,92,p251-257(1989))、ヒト毛髪の細胞膜複合体の層構造(β層、δ層、β層)を観察できる(例えば、円山等,JSCCJ,27,p144-151(1993))。しかしながら、透過型電子顕微鏡を利用した方法は熟練を要するとともに、多大な時間と労力を要するという問題点がある。【0008】脂質の存在部位を観察するために走査型電子顕微鏡を利用することもできる。しかしながら、走査型電子顕微鏡の場合、表面の凹凸に由来する二次電子像を観察するため、皮膚の角質層の表面やヒト毛髪の表面を観察するためには有用であるが、皮膚の角質層あるいはヒト毛髪の切断面からその内部構造を観察することは困難である。【0009】一方、皮膚の角質層あるいはヒト毛髪への化学物質の浸透挙動を観察する方法として、光学顕微鏡、蛍光顕微鏡(共焦点レーザーを含む)、電子顕微鏡を用いる方法がある。しかしながら、光学顕微鏡や蛍光顕微鏡を用いる方法では、浸透部位を詳細に観察することが困難である。さらに、観察できる化学物質が可視領域に吸収を有する、あるいは蛍光を有する色素等に限られるため(例えば、Sideris等,J.Soc.Dyers Colour,106,p131-135(1990))、油脂類の浸透挙動の観察に適用することは困難である。【0010】また、羊毛については、金属を結合した化学物質を羊毛に浸透させ、それを樹脂に包埋し、その超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡を利用する方法が知られている(Leeder等, Proc.7th Int.Wool Text.Res.Conf.,Tokyo,V,p99-108(1985))。この方法においては電子濃染帯を浸透部位と同定できるが、金属結合した化学物質と元の化学物質とは浸透挙動が異なるため、本来の化学物質の浸透部位を観察することはできない。さらに、油脂類の浸透挙動を観察する場合には、電子染色によって浸透部位を特定することは困難である。【0011】このような従来の課題に対し、本発明は、動物性角化組織、特にその脂質を簡便かつ明瞭に観察する方法、さらには、動物性角化組織への油脂類の浸透挙動を簡便かつ明瞭に観察する方法を提供すること、また、動物性角化組織の観察画像を簡便かつ明瞭に形成できるようにすることを目的とする。【0012】【課題を解決するための手段】本発明者は、動物性角化組織の切断面を、不活性ガスを用いてスパッタリングした後に走査型電子顕微鏡で観察すると、動物性角化組織の脂質を明瞭に観察できること、さらにこの観察方法を、動物性角化組織に油脂類を浸透させた後に適用すると、それらの浸透挙動も観察できることを見出した。【0013】 即ち、本発明は、動物性角化組織の切断面を不活性ガスを用いてスパッタリングし、スパッタリング面のメラニン顆粒、脂質または油脂類を凸状構造物として顕微鏡観察する動物性角化組織の観察方法を提供する。【0014】さらに、本発明は、上述の観察方法において、動物性角化組織に油脂類を浸透させた後、スパッタリングを行う方法を提供する。【0015】また、本発明は、上述の観察方法において、顕微鏡写真を撮る動物性角化組織画像の形成方法を提供する。【0016】なお、本明細書において、スパッタリングとは、スパッタリング装置にて、動物性角化組織の切断面をターゲットに設置し、不活性気体イオンをその切断面に衝突させる操作をいう。【0017】また、本明細書において油脂類とは、1分子内に炭素数8以上のアルキル鎖を有するHLB10以下の化合物、又は1分子内に炭素数8以上のステロイド環若しくはシリコーン鎖を有する化合物をいう。例えば、高級アルコール、エステル油、アシド油、エーテル油、炭化水素、シリコーン油、脂肪酸、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、ワックスエステル、ステロール、ステロールエステル、セラミド、セレブロシド、高級アルコール、スクワレン等が挙げられる。中でも、高級アルコール、エステル油、脂肪酸、ワックスエステルが好ましい。【0018】【発明の実施の形態】本発明の観察方法においては、動物から採取した動物性角化組織の切断面を顕微鏡観察する前に、予めその切断面にスパッタリングをする。【0019】この切断面は、顕微鏡観察を明瞭に行えるようにするため平滑に形成することが好ましく、そのために予め動物性角化組織を樹脂に包埋し、その樹脂に包埋した角化組織を切断して形成することが好ましい。【0020】ここで、樹脂へ包埋する動物性角化組織としては、動物性角化組織自体の形態観察を目的とする場合には、採取した角化組織をそのまま用いればよい。【0021】一方、動物性角化組織への油脂類の浸透挙動を観察する場合には、予め溶剤にて動物性角化組織を脱脂して用いることが好ましい。この場合には、リファレンス(油脂類の浸透処理をしていない動物性角化組織)を同時に観察することが必要となる。動物性角化組織の脱脂方法には特に制限はなく、例えば、生化学において脂質抽出の常法となっているブライ・ダイヤー抽出法あるいはこの変法によることができる。【0022】また、動物性角化組織への油脂類の浸透挙動を観察する場合において、浸透処理は、これらの油脂類を溶剤で溶解した溶液に動物性角化組織を浸漬したり、油脂類を融点以上に保持した状態で動物性角化組織を浸漬することによって行う。【0023】動物性角化組織を包埋する樹脂としては、その樹脂に動物性角化組織を包埋後、それを切断する際、あるいはその切断面を鏡面研磨などする際に、強度的に耐えられ、平滑な断面を形成し得るものを使用する。このような樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、メタクリレート系樹脂等がある。より具体的には、エポキシ樹脂としては、例えば、三次元的に重合し、重合時の収縮が少ない、TAAB社のTAAB812、Agar社のAgar812、出来上がりの粒状性に優れたCiba−Geigy社のAraldite、低粘度で浸透性に優れたTAAB社のSpurr、日新EM社のQuetol651等が挙げられる。アクリル系樹脂としては、例えば、低粘度で低温で紫外線重合のできる日新EM社のLowicryl、日新EM社のLRホワイトレジン等がある。ポリエステル樹脂としては、例えば、日新EM社のリゴラック、スンプ社のSump等が挙げられる。【0024】樹脂への包埋の方法は、各樹脂の特性により、常法に従うことができる。【0025】動物性角化組織の切断面の形成は、通常の透過型電子顕微鏡の切片調製用に用いられているナイフ等を用いて行うことができる。この場合、切断面は平滑に形成することが好ましく、そのためにナイフとしてはダイヤモンドナイフを使用することが好ましい。さらに、ガラスナイフでトリミングした後、ダイヤモンドナイフで鏡面研磨することが好ましい。切断面を平滑、好ましくは鏡面にすることにより、明瞭な観察が可能となる。【0026】本発明においては、樹脂に包埋した動物性角化組織の切断面に対し、スパッタリングを行う。スパッタリング装置としては、市販のグロー放電型スパッタリング装置を用いることができ、例えば、日立社のE−1030 ion sputterのetching unit付等を用いる。【0027】スパッタリングは、スパッタリング装置のターゲット部に、上述の動物性角化組織の切断面を設置し、真空度1〜100Pa、放電電圧0.1〜1.5kV、放電電流1〜20mA とし、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等の不活性気体を導入したグロー放電下で行うことが好ましい。より具体的には、例えば、日立社のE‐1030 ion sputterのetching unit付を用いた場合、グロー放電下において、電極と切断面との距離20〜40mm、好ましくは25〜35mm、真空度5〜20Pa、好ましくは10〜15Pa、放電電圧0.1〜0.8kV、より好ましくは0.2〜0.4kV(あるいは、放電電流2〜16mA、好ましくは4〜8mA)、スパッタリング時間200〜500秒、好ましくは300〜400秒で行う。【0028】本発明においては、こうしてスパッタリングした動物性角化組織の切断面を顕微鏡観察する。この観察に使用する顕微鏡としては、解像度及び凹凸観察の点から、走査型電子顕微鏡又は走査型プローブ顕微鏡が好ましい。走査型電子顕微鏡あるいは走査型プローブ顕微鏡としては、一般に市販されているものを使用できる。特に、走査型電子顕微鏡の場合、二次電子像を観察でき、その画像を出力し得るものであればいずれでも良いが、電子ダメージの点から、フィールドエミッションタイプの走査型電子顕微鏡が好ましい。これに類するものとして、例えば、日立社のS−4000、日本電子社のJSM−6335F等がある。また、走査型プローブ顕微鏡の場合、Z軸方向の標高像が得られる原子間力顕微鏡が好ましく、これに類するものとして、例えば、Digital Instruments社のNano−Scope 4等がある。【0029】また、スパッタリングした動物性角化組織の切断面を走査型電子顕微鏡を用いて観察する場合には、スパッタリングした切断面に金属の蒸着被膜を形成しても良い。これにより、高電圧観察が可能となり、高分解で鮮明な画像を得ることができる。例えば、金属蒸着をしない場合には、走査型電子顕微鏡での加速電圧は、通常、0.5〜1kVとするのに対し、金属蒸着した場合には5〜10kVとすることができる。【0030】金属蒸着は常法に従って行うことができる。例えば、日立社のE−1030 ion sputterを用いて白金−パラジウムを蒸着する場合、真空度10〜15Pa、放電電流15〜25mA、蒸着時間60〜100秒とする。【0031】このようにして走査型電子顕微鏡又は走査型プローブ顕微鏡を用いて得られる動物性角化組織の観察画像では、メラニン顆粒、動物性角化組織中の脂質、または動物性角化組織へ浸透した油脂類が凸状構造物として観察される。【0032】本発明の動物性角化組織画像の形成方法は、上述のように走査型電子顕微鏡、走査型プローブ顕微鏡等の顕微鏡を用いて動物性角化組織画像の顕微鏡写真を撮る方法である。【0033】本発明の観察方法において、動物性角化組織中のメラニン顆粒と脂質あるいは動物性角化組織へ浸透した油脂類が凸状構造物として観察される機構は次のように考えられる。【0034】まず、メラニン顆粒が凸状に観察される理由としては、公知の生物試料におけるイオンエッチング効果(例えば、永谷等,細胞,7,p136-142(1975)、Humphreys等,J.Microsc.,116,p255-264(1979))に類似するものと推察される。即ち、メラニン顆粒は周囲のケラチン性タンパクに比べて、硬いあるいは強いため、イオンエッチングされにくく、凸状構造物を形成すると推察される。【0035】一方、動物性角化組織中の脂質あるいは動物性角化組織へ浸透した油脂類は、これとは全く異なる、本発明者により見出された新たな機構により次のように凸状構造物を形成すると推察される。【0036】(1)スパッタリングにより切断面の最表面に熱が発生する。【0037】(2)最表面近傍の細胞間脂質あるいは内在脂質が熱により溶解し、最表面の角質層細胞間あるいは細胞膜複合体の領域に染み出す。【0038】(3)染み出した脂質が、脂質同士あるいはタンパクとの間で化学結合を生じる。【0039】(4)化学結合した脂質が凸状構造物を形成する。【0040】このうち、(1)は、スパッタリング後のヒト毛髪の切断面を光学顕微鏡で観察すると、焦げたような黒い変色が観察されることから支持される。【0041】(2)は、脂質の融点が80℃前後であること、ヒト毛髪の場合、透過型電子顕微鏡との像合わせから凸状構造物が細胞膜複合体の領域に形成されているという結果が得られたこと、脂質が染み出し得ない程度の超薄の切片(厚さ100nm以下)を観察対象とした場合には凸状構造物が観察されないという結果が得られたことから支持される。また、スパッタリング前に切断面を溶剤洗浄により脱脂処理すると、スパッタリング後に細胞膜複合体の領域に凸状構造物は現れず、脱脂処理した切断面に再度油脂類を浸透させると、スパッタリング後に細胞膜複合体の領域に凸状構造物が現れるようになるという結果からも支持される。【0042】(3)、(4)は、スパッタリング前に切断面を溶剤洗浄により脱脂処理すると、スパッタリング後に細胞膜複合体の領域に凸状構造物が現れないのに対し、スパッタリング前には切断面を溶剤洗浄せず、スパッタリング後に切断面を溶剤洗浄した場合には、凸状構造物は消失しないという結果から支持される。さらにスパッタリング前後での切断面の変化を表面解析手法である減衰全反射赤外分光法(ATR)、X線光電子分光法(XPS)によって調べた結果、エステル結合が切断面の最表面において増加しており、脂質が化学結合を形成した可能性が示唆される点からも支持される。【0043】本発明の動物性角化組織の観察方法及び角化組織画像の形成方法は、動物性角化組織の脂質を形態観察する方法として有用であり、特に皮膚の角質層や毛髪のケアにおいてケア対象となる脂質分の存在量や存在状態を簡便かつ明瞭に評価することができる。また、この観察方法を用いて油脂類の浸透挙動を観察することにより、ケア対象に対するケア剤の浸透度合いも評価することが可能となる。【0044】【実施例】実施例1、比較例1ユカタンマイクロミニブタの皮膚断片をシリコンベッドに置き、TAAB社のEpon812(エポキシ樹脂)4.6g、TAAB社のDDSA3.0g、TAAB社のMNA2.4g、TAAB社のDMP−30 0.15g、プロピレンオキサイド 10mLの混合液を流し込み、37℃で24時間、60℃で12時間重合した。【0045】こうして樹脂に包埋した豚の皮膚断片をガラスナイフにてトリミングし、その角質層の断面をダイヤモンドナイフにて鏡面研磨した。【0046】スパッタリング装置としては、日立社のE−1030 ion sputterのetching unit付を用い、アルゴンを不活性気体とし、鏡面研磨した切断面を電極の距離が30mm になるようにターゲットに設置し、真空度13Pa、放電電流6mA(この際、放電電圧0.3kV)、時間360秒によりスパッタリングを行った。次に、スパッタリングした切断面に、日立社のE−1030 ion sputterを用いて、白金‐パラジウムを、真空度10Pa、放電電流20mA、時間80秒の条件で蒸着した。【0047】こうして得た観察試料を、フィールドエミッションタイプの走査型電子顕微鏡(日立社のS−4000)にて加速電圧5kVで観察した(実施例1)。この観察画像を図1に示す。【0048】また、対照として、スパッタリングを実施しない以外は同様に観察試料を調製し、走査型電子顕微鏡で観察した(比較例1)。この観察画像を図2に示す。【0049】これにより、スパッタリングを行う本実施例によれば、皮膚の角質層の切断面に、細胞間脂質が凸状構造物として明瞭に観察される(図1)が、スパッタリングを行なわない比較例の場合には平滑面として観察されること(図2)がわかる。【0050】実施例2、比較例2ブタの皮膚断片に代えてヒト毛髪を使用する以外は実施例1、比較例1と同様にしてヒト毛髪の切断面を観察した。この観察画像を図3、図4に示す。【0051】これにより、スパッタリングを行う本実施例によれば、毛髪の切断面に、細胞膜複合体の内在脂質が凸状構造物として明瞭に観察される(図3)が、スパッタリングを行なわない比較例の場合には平滑面として観察されること(図4)がわかる。【0052】実施例3ブタの皮膚断片に代えて、クロロホルム:メタノール:水=18:9:1の溶液に24時間浸漬することにより脱脂したヒト毛髪を使用する以外は実施例1と同様にしてヒト毛髪の切断面を観察した。この観察画像を図5に示す。【0053】これにより、脱脂したヒト毛髪の切断面においては、細胞膜複合体の内在脂質に由来する凸状構造物が観察されないことがわかる。【0054】実施例4実施例3と同様にして毛髪を脱脂した後、イソプロピルパルミテートに80℃で24時間浸漬することによりイソプロピルパルミテートの浸透処理を行った。【0055】ブタの皮膚断片に代えて、このイソプロピルパルミテートの浸透処理を行ったヒト毛髪を使用する以外は実施例1と同様にしてヒト毛髪の切断面を観察した。この観察画像を図6に示す。【0056】イソプロピルパルミテートの浸透部位である細胞膜複合体に凸状構造物が形成されていることがわかる。また、以上の実施例2、3、4から、細胞膜複合体の内在脂質に由来して凸状構造物が観察されることがわかる。【0057】【発明の効果】本発明によれば、動物性角化組織、特にその脂質を簡便かつ明瞭に観察し、その観察画像を得ることができ、また、動物性角化組織への油脂類の浸透挙動を簡便かつ明瞭に観察し、その観察画像を得ることが可能となる。【0058】したがって、本発明によれば、スキンケアあるいはヘアケアにおいてケアの対象とする皮膚の角質層の細胞間脂質あるいはヒト毛髪の内在脂質の存在状態を評価でき、さらに、皮膚の角質層やヒト毛髪に対するケア剤の浸透状態を評価することが可能となる。【図面の簡単な説明】【図1】 ブタの皮膚断片の実施例の方法による観察画像(走査型電子顕微鏡写真)である。【図2】 ブタの皮膚断片の比較例の方法による観察画像(走査型電子顕微鏡写真)である。【図3】 ヒト毛髪の実施例の方法による観察画像(走査型電子顕微鏡写真)である。【図4】 ヒト毛髪の比較例の方法による観察画像(走査型電子顕微鏡写真)である。【図5】 脱脂処理したヒト毛髪の実施例の方法による観察画像(走査型電子顕微鏡写真)である。【図6】 イソプロピルパルミテートの浸透処理をしたヒト毛髪の実施例の方法による観察画像(走査型電子顕微鏡写真)である。 動物性角化組織の切断面を不活性ガスを用いてスパッタリングし、スパッタリング面のメラニン顆粒、脂質または油脂類を凸状構造物として顕微鏡観察する動物性角化組織の観察方法。 動物性角化組織に油脂類を浸透させた後、スパッタリングを行う請求項1記載の観察方法。 スパッタリング面に金属蒸着し、顕微鏡観察する請求項1又は2記載の観察方法。 動物性角化組織が皮膚の角質層である請求項1〜3のいずれかに記載の観察方法。 動物性角化組織が獣毛又はヒト毛髪である請求項1〜3のいずれかに記載の観察方法。 請求項1〜5のいずれかに記載の観察方法において、顕微鏡写真を撮る動物性角化組織画像の形成方法。


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