タイトル: | 公開特許公報(A)_水浸超音波探傷による鋼中介在物検出方法 |
出願番号: | 2002251936 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,G01N29/04 |
佐藤海広 JP 2004093227 公開特許公報(A) 20040325 2002251936 20020829 水浸超音波探傷による鋼中介在物検出方法 山陽特殊製鋼株式会社 000180070 岸田 正行 100067541 水野 勝文 100087398 斉藤 秀俊 100120123 佐藤海広 7 G01N29/04 JP G01N29/04 503 5 2 OL 13 2G047 2G047AA07 2G047AB01 2G047AC08 2G047AD02 2G047BA03 2G047BB06 2G047BC11 2G047BC12 2G047CA01 2G047DB03 2G047DB12 2G047EA11 2G047EA21 2G047GE02 2G047GF11 2G047GG28 2G047GJ21 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、鋼中の介在物検出方法に関し、詳しくは、水浸超音波探傷による、迅速で信頼性の高い鋼中介在物検出方法に関する。【0002】【従来の技術】近年、高清浄度鋼も安定して製造されるようになってきており、鋼中における小中径領域の非金属介在物は、一段と少なくなっている(本明細書では、「非金属介在物」のことを単に「介在物」という場合がある)。【0003】その一方で、大型(√AREA100μm以上)の酸化物系介在物(例えばAl2O3、MgO・Al2O3、CaO・Al2O3+MgO・Al2O3など)は、依然として存在しており、例えば軸受鋼や機械構造用炭素鋼などの鋼材において疲労破壊の原因となっている。【0004】しかし、こうした大型介在物は、極めて低い確率で出現するために、その検出が非常に困難であった。【0005】従来、鋼中の介在物の検査方法としては、被分析対象の鋼材から試験片を採取して光学顕微鏡により試験片の表面を検査する等の方法が一般的であり、このための規格としては、「JIS G 0555 鋼の非金属介在物の顕微鏡試験方法」、「ASTM E45 Standard Practice for Determining the Inclusion Content of Steel」、などがある。しかしながら、顕微鏡による検査方法は、試験片の被検面積が例えば100〜200mm2/個と小さいため、大型介在物の検出精度が極めて低いという問題点があった。【0006】数10〜数100gオーダーの検査方法としては、鋼材料から酸溶解により介在物を抽出しその介在物の粒径を顕微鏡で評価する方法が提案されている(特開平9−125199号、特開平9−125200号)。しかし、酸溶解法は、介在物が酸に溶解したり、介在物まで溶損して介在物が小径化する場合がある。また、外乱物質にも注意しなくてはならない。さらに、酸溶解に時間がかかるなど、処理の迅速性に劣り、製品の量産工程に対応することも困難であった。【0007】数kgのオーダーの検査方法としてスライム法がある。しかし、この方法も迅速性に欠ける。【0008】高周波(50MHzなど)探触子では焦点距離が短く、十分な被検体積が得られない。また、この場合、極値統計法を用いることにより、小中径介在物の最大径を推定することができたが、大型介在物については、統計的に推定することができなかった。【0009】地疵の観点からは地疵試験がある。しかし、面検査になるため大型介在物の検査精度が低く、また、往々にしてMnS起因の地疵が検出されるため、酸化物系介在物の検出に対して必ずしも効率的でない。【0010】ランニング超音波探傷では、圧延まま且つ黒皮の材料使用のため介在物に対する必要十分な検出能が確保できず、√AREA100〜200μmレベルの介在物を検出できない。【0011】【発明が解決しようとする課題】本発明は、最近の冶金技術の向上に対応し、鋼中に存在する√AREA100μm以上の地疵状大型介在物の迅速で信頼性の高い検出方法を提供することを課題とする。【0012】【課題を解決するための手段】本発明者は、超音波探傷に供する試験片を、鋳片または鋼塊を所定の圧鍛比以上で圧鍛処理した鋼材より採取し、かつ所定の熱処理を施すことにより、高周波探触子を用いて介在物の検出評価を行うにあたり、従来統計的に推定できない√AREA100μm(幅30μm)以上の大型介在物が検出できることを見出し、係る知見に基づき本発明を完成させた。【0013】すなわち、本発明は、周波数5乃至25MHzの水浸超音波探傷により、鋼中の非金属介在物を検出する鋼中介在物検出方法であって、圧鍛比6以上となるように圧鍛処理し、かつ焼ならしまたは焼きなましを施した検査対象たる試験片を水浸超音波探傷に供することを特徴とする、水浸超音波探傷による鋼中介在物検出方法である。【0014】また、本発明は、亜共析鋼につき焼ならしを施して水浸超音波探傷に供することを特徴とする、請求項1に記載の水浸超音波探傷による鋼中介在物検出方法である。【0015】また、本発明は、過共析鋼につき焼なましを施して水浸超音波探傷に供することを特徴とする、請求項1に記載の水浸超音波探傷による鋼中介在物検出方法である。【0016】また、本発明は、共析鋼につき焼ならしまたは焼なましを施して水浸超音波探傷に供することを特徴とする、請求項1に記載の水浸超音波探傷による鋼中介在物検出方法である。【0017】また、本発明は、検査対象となる鋼が、機械構造用鋼または軸受鋼であることを特徴とする請求項1に記載の水浸超音波探傷による鋼中介在物検出方法である。【0018】【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面1に基づいて説明する。【0019】≪ステップ1≫試験片を作製する。ここで、試験片の作成にあたっては、丸棒鋼を用いるが、本発明においては、丸棒鋼に限られるものではない。【0020】まず、検査対象となる鋼の鋳片または鋼塊を圧鍛比6以上で圧鍛した丸棒鋼を用意する。この場合、亜共析鋼、共析鋼または、過共析鋼のいずれかを用いるものである。【0021】鋼材においては、一般に鋳造のままでは、ミクロの空洞が無数にあり、超音波探傷により走査すると無数の乱反射、ノイズが発生し、しばしば検査が困難となる。そこで、試験片を、検査対象鋼の鋳片または鋼塊を圧鍛比6以上で圧鍛した丸棒鋼より採取するようにすると、空洞部分が圧着され、乱反射などによる弊害を軽減することができる。【0022】次に、上記の丸棒鋼を図2に示す形状に切り出し、面A及び面Bをフライス加工により成形し、その後、熱処理を行う。この場合、亜共析鋼については焼ならしを、共析鋼については、焼ならし又は焼なましを、過共析鋼については焼なましを行なう。これにより、凝固まま、圧延まま、鍛伸ままの組織を消して、微細かつ均質な組織とし、機械的性質を改善する。そして、最後に、面A及び面Bについて平面研磨を行い、試験片の表面を平滑なものとし、超音波の伝達損失をより少ないものとする。【0023】なお、本発明においては、上述の鋳片または鋼塊を圧鍛比6以上で圧鍛して製造したコイル(線材)や鋼管についても超音波探傷を行なうことができる。その際、超音波が鋼材内に入りやすいように以下のような加工を行なう。【0024】コイルについては、例えば、直径20mmのものにつき平面研磨を行ない、図5に実線で示す形状に加工し平面を形成させて、試験片を作成する。【0025】鋼管については、図6に示すように、例えば、外径148mm、内径108mmのものを、図6に示す点線の間の部分を、図7に示す形状に切り出し、平面研磨を行って図8に示すように、薄い直方体状に加工して試験片を作成する。【0026】≪ステップ2≫次に、感度校正を行う。かかる感度校正は、具体的には、試験片のφ1.5mm、深さ6mmの平底穴(φ1.5FBH)について超音波探傷を行ない位置を特定し、そのφ1.5FBHに超音波の焦点を合わせたときに得られる最大反射波強度を80%となるように超音波探傷装置を設定した。このとき感度設定値を基準感度とし、これより18dB分増感した感度設定値を探傷感度とした。【0027】≪ステップ3≫次に、上述の≪ステップ1≫で作製した試験片1を水浸超音波探傷法により、鋼中介在物の検出を行なう。水浸超音波探傷法とは、接触媒質として水を用いるものであり、特に、全没式の超音波探傷法とは、試験片全体を水に沈めて行うものである。本発明においては、自動探傷に有利なので、全没式の超音波探傷が好ましい。【0028】本発明の鋼中介在物検出方法においては、超音波探傷を行うが、超音波探傷を行う装置は、様々な種類が市販されており、本発明ではこれらのものを用いることができる。好ましい探触子としては、焦点型探触子などが挙げられる。フラット型探触子の検出能は1/2波長といわれているが、焦点型探触子では、略1/4波長であり、本発明が目的とする検出対象であるとしている√AREA100μm程度以上の介在物の評価をするのに適している。【0029】図9に、焦点型探触子による超音波探傷装置の概略図を例示する。【0030】超音波探傷には、焦点型探触子を備えた、全没式の水浸超音波探傷装置を用いた。超音波探傷装置は、焦点型探触子11、超音波探傷ユニット12、走査ユニット13、マイクロプロセッサを備えたパーソナルコンピュータ(以下「PC」という)14、映像化ユニット15からなるものである。マイクロプロセッサには、図10に示すフローチャートに沿った演算処理プログラムが組み込まれる。このような、PCを超音波探傷装置に備えることにより、大量のデータ処理を迅速に行うことが可能となる。【0031】超音波探傷を行なうにあたっては、試験片1を水槽にセットした後、PC14に試験片のデータ、測定感度、焦点位置、ゲート位置及び探傷ピッチを入力する。【0032】そして、焦点型探触子11を作動させ、超音波探傷を開始させる。【0033】上記のように入力されたデータは、超音波探傷ユニット12及び走査ユニット13に伝達され、かかる条件の下において超音波探傷が開始される。【0034】すなわち、焦点型探触子11から超音波が発信され、対象物にあたり、その反射波を検出して、その反射波強度及び反射波形情報(グラフとして出力された波形、正半波強度、負半波強度など)に基づいて所望の情報を得るものである。焦点型探触子11による走査は、試験片1の所定の間隔をおいた複数箇所の超音波の発射、反射波の受信を行う(この間隔のことを「探傷走査ピッチ」または、単に「走査ピッチ」という)。【0035】試験片1に入射し、試験片表面、内部及び底面で反射した超音波は、焦点型探触子11に反射波形情報として受信され、PC14に保存される。PC14には、介在物を検出するための演算プログラムが組み込まれたマイクロプロセッサが備えられており、大量のデータを迅速に処理することが可能となっている。【0036】ここで、反射波強度と介在物径の関係は、図11に示すようになり、反射波強度より介在物径を推定することができることがわかる。また、図12に示すように本発明においては、幅30μm以上の介在物を検出することが可能である。【0037】なお、反射波形情報とは、反射波を受信して得られる情報であり、具体的には反射波強度、反射波形情報(グラフとして出力された波形、正半波強度、負半波強度など)などの情報である。正半波強度とは、基線より上に出ている反射波形の強度であり、負半波強度とは、基線より下に出ている反射波形の強度である。【0038】そして、超音波探傷の結果得られたデータに基づいて、鋼中の介在物を評価することができる。ここで得られるデータとは、介在物の数、位置、大きさなどであり、例えばこれらのデータに基づいて粒度分布をヒストグラムとして表して清浄度の評価を行うこともできる。また、得られた実測データから例えば、極値統計法などの統計的手法を用いて、被検査対象たる鋼材の中の最大介在物径を推定したデータを得ることもできる。【0039】これらの清浄度の評価は、例えば、あらかじめ所定性状を備えている金属材料について本発明の方法によりデータを得ておいて、このデータと別の試験片のデータを比較したり、また望まれる性状データと試験片のデータを比較することができる。【0040】なお、本発明は、鋼について広く用いることができ、鋼種を限定するものではない。亜共析鋼、共析鋼、過共析鋼の何れでもよく、炭素量で言えば、例えば、0.02%から2.14%の範囲であればよい。ただし、用途上、介在物の影響を重視する鋼は、機械構造用鋼や軸受鋼であることから炭素利用の上限値は、1.4%と見てもよい。ここで、機械構造用鋼や軸受鋼は、大型介在物の出現する確率は低いものの、出現した場合には、部品の強度を著しく低下させ、部品の信頼性に影響を及ぼすものである。よって、本発明により事前に検査を行なうことでかかる事態を未然に防止することが可能となるので、機械構造用鋼や軸受鋼については、本発明の利用価値は、極めて高いものである。【0041】【実施例】以下の実施例においては、鋼材の種類を問わず、切断面が380mm×490mmのCCブルームを直径167mmの丸棒鋼に圧鍛したものを用意する。【0042】次に、かかる丸棒鋼から図2に示す形状に試験片を切り出し、フライス加工で成形した後に熱処理を行い、その後フライス加工面を平面研磨し、a方向に40mm、b方向に80mm、c方向に167mmとし、面Aを走査面として、焦点型探触子(周波数15MHz、振動子径12.5mm、水中焦点距離150mm)を用いて本発明の介在物検出方法を実施する。また、検査を行なうにあたっては、測定条件として、測定感度は、基準感度+18dB、焦点位置は試験片の表面下20mm、ゲートは、試料の表面下10〜30mm、探傷ピッチとして0.2mm(平面走査)、また、図4に示すように、面Aの斜線で示した外周部分を避け、中ほどのd方向に70mm、e方向に150mmの範囲を走査するよう、機器を設定して検査を実施した。【0043】この際、探傷重量は略20kgとした。探傷重量は、(比重)×(走査範囲)×(ゲート幅)×(試験片の数)によって導き出されるもので、本実施例においては、試験片一つあたりの比重を7.9g/cm3、走査範囲は、上述の如く、面Aの斜線部で示した外周部分を避け、中ほどの部分、すなわち、d方向に70mm、e方向に150mmの範囲、ゲート幅は、上述の如く表面下10〜30mmであるので、20mmである。そして、試験片の数は、12個である。【0044】すなわち、1個の試験片あたり、(7.9g/cm3×(70×150mm)×20=)略1.66kgの範囲を走査するものであり、12個の試験片につき行なったものである。比較例として、熱処理を行なわない圧延まま材についても、熱処理をした場合と同様に超音波探傷を行なったものである。【0045】なお、以下に示す検出した介在物の個数は、12個の試験片から検出した介在物の個数の総和を探傷重量である略20kgで割り、試験片1kgあたりに含まれる介在物の個数を示すものである。【0046】なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。【0047】(実施例1)本発明の実施例の説明に先立ち、実施例1〜4では、本発明の原理とその効果について詳しく説明する。本発明の試験片については、事前に熱処理を行なうものである。そこで1つには、機械構造用鋼であるSCM420(亜共析鋼)については、前述したフライス加工後の熱処理として900℃で焼ならしをした焼ならし材及び850℃で焼なましをした焼なまし材を試験片として用いる。そして、これらと比較するために熱処理をなんら施さない圧延ままのものを用意した。これら焼ならし材、焼なまし材及び圧延まま材と比較することにより、焼ならしの効果について評定する。【0048】介在物があり、この介在物からの反射波を探触子で計測した場合、S/N比が大きければ反射波とノイズと識別され介在物と認識できるが、逆にS/N比が小さければ反射波とノイズが識別できず、介在物が認識不可能となることから、同じ鋼材を試験するにあたっては、S/N比が大きくなるような材料の事前調整方法を把握することが大切である。【0049】そこで、まず、材料ノイズ強度について比較する。この際、測定感度は、基準感度+34dBとし、その他の条件は介在物測定時と同様とし、図2に記載の形状を有する試験片を用いて、超音波探傷を行なった。その結果を図13のグラフ(1)(a)に示す。【0050】グラフ(1)(a)のx軸は、図2の試験片1のdを中心にm方向に+、n方向にマイナスとしてdからの距離を表示するものであり、y軸は、材料ノイズ強度を表したものであることを意味する。これは、後述するグラフ(2)(a)、(3)(a)及び図14のグラフ(a)においても同様である。【0051】そこで、材料ノイズ強度についてみると、グラフ(1)(a)より、焼ならし材は、中心部においては、焼なまし材よりも略3%、圧延まま材よりも略13%弱いことがわかる。【0052】次に、ゲート内の人工欠陥の反射波強度について測定する。本発明の優位性を評価するこの実施例においては、反射条件をそろえるため、介在物の代わりにB1エコーを利用して試験を行なう。すなわち、介在物の試験をする部位が前述の如く、図2のa方向の中心近傍である。よって、先の材料ノイズ強度を測定した試験片の下半分を削除し、図3に斜線で示した試験片の上側の面Aから超音波を入れ、下側の面A´からの反射波を測定した。なお、測定感度は、基準感度−14dBとし、その他の条件は介在物測定時と同様として超音波探傷を行なった。その結果を図13のグラフ(1)(b)に示す。【0053】ここで、グラフ(1)(b)のx軸は、図3の試験片2のdを中心にm方向に+、n方向にマイナスとしてdからの距離を表示するものであり、y軸は、試験片2の下側の面A´から反射してきた第1回目の底面エコーのエコー高さを表示するものである。「%」が高いほど、エコーの強度が強いことを意味する。これは、後述するグラフ(2)(b)、(3)(b)及び図14のグラフ(b)においても同様である。【0054】グラフ(1)(b)より、B1エコー強度については、中心部において、焼ならし材は、焼なまし材よりも略18%、圧延まま材よりも略55%強い。【0055】これらのことは、熱処理を施すことにより、鋼材中の結晶粒が微細化され、超音波の散乱減衰が抑制された結果であると考えることができる。本発明の熱処理を施せば同一の介在物から反射された反射波をよりS/N比の大きい信号として捉えることができる。【0056】上記結果より、機械構造用鋼であるSCM420においては、焼ならし材が最も材料ノイズ強度が弱く、また、反射波強度が強いため、鋼中介在物の検出をするのに最適であり、次いで、焼なまし材が適していることが明らかである。よって、焼ならし材又は、焼なまし材による試験片を用いて、介在物を測定するものである。【0057】そこで、機械構造用鋼である、SCM420については焼ならしをした試験片を用いて本願発明を実施したところ、1kgあたり5.3個の介在物が検出され、焼なまし材より作製した試験片からは、1kgあたり3.2個の介在物が検出されたが、圧延まま材より作製した試験片については、1kgあたり、0.4個の介在物しか検出されなかった。【0058】試験片にあらかじめ本発明における熱処理を施すことは、鋼材中の介在物の検査に際し、特に分塊後最終製品寸法にまで圧延する途中で一旦鋼材を中間検査し、最終製品の品質を予測し、これとユーザの品質仕様を対比しつつ、製品寸法にまで最終圧延をするような中間検査を行なう場合において、その鋼材中の介在物を検出するのに有効である。【0059】また、分塊圧延後最終製品についての最終検査を行なう場合においても、その鋼材中の介在物を検出する場合には、試験片にあらかじめ熱処理を施すことが有効である。【0060】なお、以下の実施例2、3及び4においても、実施例1と同様に、材料ノイズ強度の測定については図2に記載の形状の試験片を、B1エコー強度の測定については図3に斜線で示した形状の試験片を用いた。また、本発明の実施においては、図4の斜線で示す外周部を除いた範囲につき走査するものであり、それぞれの測定条件も実施例1と同様とした。【0061】(実施例2)機械構造用鋼であるSCM435(亜共析鋼)については、870℃で焼ならしを行なった試験片及び830℃で焼なましを行なった試験片を用いるものであるが、圧延まま材についても焼ならし材及び焼なまし材と同様の条件で超音波探傷を行ない、その材料特性を明らかにする。【0062】材料ノイズ強度については、グラフ(2)(a)より、焼ならし材は、中心部においては、焼なまし材よりも略2%、圧延まま材よりも略12%弱い。B1エコー強度については、グラフ(2)(b)より、焼ならし材は、中心部においては焼なまし材よりも略18%、圧延まま材よりも略44%強い。【0063】上記結果より、機械構造用鋼であるSCM435においても、焼ならし材が最も材料ノイズ強度が弱く、また、反射波強度が強いため、鋼中介在物の検出をするのに最適であり、次いで、焼なまし材も適していることが明らかである。よって、焼ならし材又は、焼なまし材による試験片を用いて介在物を測定するものである。【0064】そこで、焼ならし材より作製した試験片を用いて本発明を実施したところ、1kgあたり2.1個の介在物が検出され、焼なまし材より作製した試験片からは、1kgあたり1.1個の介在物が検出されたが、圧延まま材により作成した試験片からは、介在物を検出することができなかった。【0065】(実施例3)軸受鋼であるSUJ2(過共析鋼)については、800℃で焼なましを行なった試験片及び870℃で焼ならしを行なった試験片を用いるものであるが、圧延まま材についても焼きなまし材及び焼ならし材と同様の条件で超音波探傷を行ない、その材料特性を明らかにする。【0066】材料ノイズ強度については、グラフ(3)(a)より、中心部において、焼なまし材は、焼らし材よりも略2%、圧延まま材よりも略12%少ない。B1エコー強度については、グラフ(3)(b)より、中心部において、焼なまし材は、焼ならし材よりも略18%、圧延まま材よりも略58%高いことが明らかである。【0067】上記結果より、軸受鋼であるSUJ2においては、焼なまし材が最も材料ノイズ強度が弱く、また、反射波強度が強く、鋼中介在物の検出をするのに最適であり、次いで焼ならし材も適していることが明らかである。よって、焼なまし材又は、焼ならし材による試験片を用いて、介在物を測定するものである。【0068】焼なまし材による試験片を用いて本発明を実施すると1kgあたり0.10個の介在物が検出され、焼ならし材からは、0.06個の介在物が検出されたが、圧延まま材により作成した試験片からは、介在物を検出することができなかった。【0069】(実施例4)共析鋼である0.8%C鋼については、830℃で焼ならしを行なった試験片及び780℃で焼なましを行なった試験片を用いるものであるが、圧延まま材についても焼ならし材及び焼きなまし材と同様の条件で超音波探傷を行ない、その材料特性を明らかにする。【0070】材料ノイズ強度については、図14のグラフ(a)より、中心部において、焼ならし材及び焼なまし材は、圧延まま材よりも略3%弱い。B1エコー強度については、図14のグラフ(b)より、中心部において、焼ならし材及び焼なまし材は、圧延まま材よりも略35%強いことが明らかである。【0071】上記結果より、0.8%C鋼においては、圧延まま材よりも焼なまし材及び焼ならし材の材料ノイズ強度が弱く、反射波強度は、圧延まま材よりも強く、鋼中介在物の検出をするのに適していることが明らかである。よって、焼ならし材又は焼なまし材による試験片を用いて、介在物を測定するものである。【0072】焼ならし材による試験片を用いて本発明を実施すると1kgあたり0.2個の介在物が検出され、焼なまし材からも、0.2個の介在物が検出されたが、圧延まま材により作成した試験片からは、介在物を検出することができなかった。【0073】【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、鋼中に存在する√AREA100μm以上の地疵状大型介在物の迅速で信頼性の高い検出方法を提供することが可能となる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の実施の工程を示すフローチャートである。【図2】丸棒鋼より作成した試験片を示す斜視図である。【図3】反射波強度を測定するための試験片の斜視図である。【図4】試験片の探傷範囲を示す斜視図である。【図5】コイルより作成した試験片を示す斜視図である。【図6】試験対象たる鋼管を示す斜視図である。【図7】鋼管より作成した試験片のうち平面研磨を行なっていないものを示す斜視図である。【図8】鋼管より作成した試験片のうち平面研磨を行なったものを示す斜視図である。【図9】超音波探傷装置の概略図である。【図10】マイクロプロセッサに組み込まれた演算処理プログラムの概略図である。【図11】反射波強度−介在物径の関係図である。【図12】検出介在物の幅を表す図である。【図13】SCM420、SCM435、SUJ2より作成した試験片の材料特性を示すグラフである。【図14】0.8%C鋼より作成した試験片の材料特性を示すグラフである。【符号の説明】1・・試験片2・・試験片11・・焦点型探触子12・・超音波探傷ユニット13・・走査ユニット14・・PC15・・映像化ユニット 周波数5乃至25MHzの水浸超音波探傷により、鋼中の非金属介在物を検出する鋼中介在物検出方法であって、圧鍛比6以上となるように圧鍛処理し、かつ焼ならしまたは焼きなましを施した検査対象たる試験片を水浸超音波探傷に供することを特徴とする、水浸超音波探傷による鋼中介在物検出方法。 亜共析鋼につき焼ならしを施して水浸超音波探傷に供することを特徴とする、請求項1に記載の水浸超音波探傷による鋼中介在物検出方法。 過共析鋼につき焼なましを施して水浸超音波探傷に供することを特徴とする、請求項1に記載の水浸超音波探傷による鋼中介在物検出方法。 共析鋼につき焼ならしまたは焼ならしを施して水浸超音波探傷に供することを特徴とする、請求項1に記載の水浸超音波探傷による鋼中介在物検出方法。 検査対象となる鋼が、機械構造用鋼または軸受鋼であることを特徴とする、請求項1に記載の水浸超音波探傷による鋼中介在物検出方法。 【課題】水浸超音波探傷法を用いて鋼中に存在する非金属の介在物の検出方法を提供する。【解決手段】亜共析鋼、共析鋼、又は、過共析鋼の鋳片または鋼塊につき、6以上の圧鍛比率で圧鍛処理し、かつ、焼ならし、又は焼ならし処理を施して試験片を作成し(ステップ1)、次いで、水浸超音波探傷をする前に感度校正を行ない(ステップ2)、試験片1について周波数5乃至25MHzにより水浸超音波探傷を行ない(ステップ3)、鋼中の介在物を検出する(ステップ4)。【選択図】図2