タイトル: | 公開特許公報(A)_シリコン単結晶インゴットの点欠陥分布を測定する方法 |
出願番号: | 2002243651 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,H01L21/66,G01N27/00 |
栗田 一成 古川 純 JP 2004087591 公開特許公報(A) 20040318 2002243651 20020823 シリコン単結晶インゴットの点欠陥分布を測定する方法 三菱住友シリコン株式会社 302006854 須田 正義 100085372 栗田 一成 古川 純 7 H01L21/66 G01N27/00 JP H01L21/66 N G01N27/00 Z 4 1 OL 13 2G060 4M106 2G060AA08 2G060AD01 2G060AE01 2G060AF20 2G060EB06 2G060EB08 2G060HC06 2G060KA10 2G060KA16 4M106AA01 4M106AA10 4M106BA04 4M106CB14 4M106CB19 4M106DB11 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、チョクラルスキー法(以下、CZ法という。)により引上げられたp型シリコン単結晶インゴット(以下、インゴットという。)内に形成される欠陥分布を測定する方法に関する。【0002】【従来の技術】近年の半導体集積回路の超微細化にともないデバイスの歩留まりを低下させる要因として、結晶に起因したパーティクル(Crystal Originated Particle、以下、COPという。)や、酸化誘起積層欠陥(Oxidation Induced Stacking Fault、以下、OISFという。)の核となる酸素析出物の微小欠陥や、或いは侵入型転位(Interstitial−type Large Dislocation、以下、L/Dという。)の存在が挙げられている。COPは、鏡面研磨されたシリコンウェーハをアンモニアと過酸化水素の混合液でSC−1洗浄すると、ウェーハ表面に出現する結晶起因のピットである。このウェーハをパーティクルカウンタで測定すると、このピットがパーティクル(Light Point Defect、LPD)として検出される。COPは電気的特性、例えば酸化膜の経時絶縁破壊特性(Time Dependent dielectric Breakdown、TDDB)、酸化膜耐圧特性(Time Zero Dielectric Breakdown、TZDB)等を劣化させる原因となる。またCOPがウェーハ表面に存在するとデバイスの配線工程において段差を生じ、断線の原因となり得る。そして素子分離部分においてもリーク等の原因となり、製品の歩留りを低くする。【0003】OISFは、結晶成長時に形成される微小な酸素析出が核となっていると考えられ、半導体デバイスを製造する際の熱酸化工程等で顕在化する積層欠陥である。このOISFは、デバイスのリーク電流を増加させる等の不良原因になる。L/Dは、転位クラスタとも呼ばれたり、或いはこの欠陥を生じたシリコンウェーハをフッ酸を主成分とする選択エッチング液に浸漬すると方位を持ったエッチングピットを生じることから転位ピットとも呼ばれる。このL/Dも、電気的特性、例えばリーク特性、アイソレーション特性等を劣化させる原因となる。以上のことから、半導体集積回路を製造するために用いられるシリコンウェーハからCOP、OISF及びL/Dを減少させることが必要となっている。【0004】このCOP、OISF及びL/Dを有しない無欠陥のインゴット及びこのインゴットからスライスされたシリコンウェーハが米国特許番号6,045,610号に対応する特開平11−1393号公報に開示されている。この無欠陥のインゴットは、インゴット内での空孔型点欠陥の凝集体及び格子間シリコン型点欠陥の凝集体がそれぞれ検出されないパーフェクト領域を[P]とするとき、パーフェクト領域[P]からなるインゴットである。パーフェクト領域[P]は、インゴット内で空孔型点欠陥が優勢であって過飽和な空孔が凝集した欠陥を有する領域[V]と、格子間シリコン型点欠陥が優勢であって過飽和な格子間シリコンが凝集した欠陥を有する領域[I]との間に介在する。【0005】また特開2001−102385号公報には、点欠陥が凝集した欠陥を有しないパーフェクト領域[P]が空孔型点欠陥が優勢である領域[Pv]と、格子間シリコン型点欠陥が優勢である領域[Pi]とに分類されることが示される。領域[Pv]は領域[V]に隣接し、かつOISF核を形成し得る最低の空孔型点欠陥濃度未満の空孔型点欠陥濃度を有する領域である。領域[Pi]は領域[I]に隣接し、かつ侵入型転位を形成し得る最低の格子間シリコン型点欠陥濃度未満の格子間シリコン型点欠陥濃度を有する領域である。パーフェクト領域[P]からなるインゴットは、インゴットの引上げ速度をV(mm/分)とし、シリコン融液とシリコンインゴットの固液界面近傍におけるインゴット鉛直方向の温度勾配をG(℃/mm)とするとき、熱酸化処理をした際にリング状に発生するOISF(Pバンド)がウェーハ中心部で消滅し、かつL/D(Bバンド)を発生しない領域のV/G(mm2/分・℃)の範囲内で作られる。【0006】無欠陥のシリコンウェーハを製造するためには、軸方向及び径方向の点欠陥濃度分布を制御することが重要であることから、従来、インゴット内の熱処理によって生じた2次欠陥、即ち凝集した欠陥分布を測定するためには次の方法が採られていた。先ず軸方向及び径方向の点欠陥濃度分布評価には無欠陥領域が形成される結晶引上げ条件でシリコン単結晶インゴットを作製する。次いでインゴットを軸方向にスライスしてサンプルを作製する。次にこのサンプルをミラーエッチングした後、窒素又は酸化性雰囲気下で800℃で4時間熱処理し、更に続いて1000℃で16時間熱処理する。この熱処理したサンプルを銅デコレーション(copperdecoration)、セコエッチング(secco−etching)、X線トポグラフ像(X−Ray Topography)分析、ライフタイム(lifetime)測定等の方法により測定する。図4及び図5に示すように、上記熱処理により酸素析出物がインゴット内に出現するため、この酸素析出物から各領域及び各境界を識別、判別していた。ここで図4は、無欠陥のシリコン単結晶インゴットを作製可能なホットゾーンを有する結晶引上げ装置で引上げ速度を高速から低速に変化させて作製された領域[V]、領域[Pv]、領域[Pi]及び領域[I]を含むサンプルに酸素析出熱処理した場合の再結合ライフタイムの面内分布を示す図であり、図5は図4のA−A線断面における再結合ライフタイムを示す図である。【0007】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記測定方法の場合、再結合ライフタイムの測定値がサンプル内の酸素濃度、酸素析出熱処理条件に著しく依存することが知られている。例えば、インゴット内に固溶する酸素濃度が低濃度である場合、酸素析出熱処理によって形成される酸素析出物の密度は、酸素濃度が高濃度に固溶するサンプルと比較して低密度であることから、少数キャリア拡散長の測定値の差分値が小さくなる。一方、インゴット内に固溶する酸素濃度が高濃度である場合についても、領域[Pv]及び領域[Pi]において固溶する酸素濃度に依存して酸素析出物量が析出過多となり両者の少数キャリア拡散長の測定値の差分値が小さく、優位性が明確にならない。このように低酸素濃度、高酸素濃度において、領域[Pv]と領域[Pi]との境界領域を明確にすることができない問題があった。更に、酸素析出熱処理には長時間の熱処理が必要なだけでなく、熱処理条件によってインゴット内の酸素析出に影響を与えることから点欠陥領域の境界領域が領域[Pv]又は領域[Pi]のいずれかの領域側にシフトすることになる。従って、本来の点欠陥領域を識別、判別することが困難となっていた。【0008】本発明の目的は、インゴットに固溶する酸素濃度に依存することなくインゴット内の領域[Pv]及び領域[Pi]並びにこれらの境界を高い精度でかつ短時間に識別する、シリコン単結晶インゴットの点欠陥分布を測定する方法を提供することにある。【0009】【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、図1に示すように、(a) ホウ素をドープしたシリコン融液から引上げ速度を変えて引上げられたp型シリコン単結晶インゴットを軸方向にスライスして、領域[V]、領域[Pv]、領域[Pi]及び領域[I]を含む測定用サンプルを作製する工程と、(b) 遷移金属Mが1〜1000ppmの濃度で溶解している遷移金属溶液をサンプルの表面に塗布して金属汚染する工程と、(c) 金属汚染されたサンプルをアルゴン、窒素、酸素、水素、又はそれらの混合ガス雰囲気下、600℃〜900℃の第1温度に保持された熱処理炉内に素早く投入することによりサンプルを3.3℃/分以上の昇温速度で急速加熱して0.5時間〜4時間熱処理し、熱処理炉内から素早く引出すことによりサンプルを3.3℃/分以上の降温速度で急速冷却してサンプル表面に塗布した遷移金属Mをサンプル内部に拡散させる拡散熱処理工程と、(d) サンプルをアルゴン、窒素、酸素、水素、又はそれらの混合ガス雰囲気下、第1温度より150℃〜450℃低い450℃〜550℃の第2温度に保持された熱処理炉内に素早く投入することによりサンプルを3.3℃/分以上の昇温速度で急速加熱して0.5時間〜4時間熱処理し、熱処理炉内から素早く引出すことによりサンプルを3.3℃/分以上の降温速度で急速冷却してサンプル内部に拡散した遷移金属Mから金属シリサイドを形成させるシリサイド形成熱処理工程と、(e) サンプルをアルゴン、窒素、酸素、水素、又はそれらの混合ガス雰囲気下、第2温度より450℃〜550℃高い900℃〜1100℃の第3温度に保持された熱処理炉内に素早く投入することによりサンプルを3.3℃/分以上の昇温速度で急速加熱して0.5時間〜4時間熱処理し、熱処理炉内から素早く引出すことによりサンプルを3.3℃/分以上の降温速度で急速冷却してサンプル内部に形成された金属シリサイドを溶解させる溶解熱処理工程と、(f) 溶解熱処理されたサンプル全体における遷移金属Mの形成する再結合中心の濃度を測定し、この測定結果より相関関数を求める工程と、(g) 溶解熱処理されたサンプル全体における少数キャリア拡散長を測定する工程と、(h) サンプルに熱又は光エネルギーを注入する工程と、(i) 熱又は光エネルギーを注入したサンプル全体における少数キャリア拡散長を測定する工程と、(j) 上記(g)工程の測定結果と上記(i)工程の測定結果から少数キャリア拡散長の差分を求める工程と、(k) 上記(f)工程で得られた相関関数と上記(j)工程で得られた少数キャリア拡散長の差分から、サンプルにおける領域[Pv]及び領域[Pi]並びにこれらの境界を規定する工程とを含むシリコン単結晶インゴットの点欠陥分布を測定する方法である。但し、領域[V]は空孔型点欠陥が優勢であって過剰な空孔が凝集した欠陥を有する領域、領域[Pv]は空孔型点欠陥が優勢であって空孔が凝集した欠陥を有しない領域、領域[Pi]は格子間シリコン型点欠陥が優勢であって格子間シリコンが凝集した欠陥を有しない領域及び領域[I]は格子間シリコン型点欠陥が優勢であって格子間シリコンが凝集した欠陥を有する領域である。【0010】請求項1に係る発明では、遷移金属Mの高い溶解熱処理温度依存性を用いることで、インゴット内に固溶する酸素濃度に依存することなく、高い精度でかつ短時間に領域[Pv]及び領域[Pi]並びにこれらの境界を規定する。【0011】請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、遷移金属MがFeである測定方法である。請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明であって、(g)工程及び(i)工程における少数キャリア拡散長をSPV(表面起電力法)を用いて測定する測定方法である。請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明であって、(f)工程における遷移金属Mの形成する再結合中心の濃度をDLTS(過渡容量分光法)を用いて測定する測定方法である。【0012】【発明の実施の形態】(1) 本発明の測定方法の対象となるインゴット本発明の測定方法の対象となるインゴットは、ホウ素をドープしたシリコン融液から領域[V]、領域[Pv]、領域[Pi]及び領域[I]を含むようにV/G比を制御して引上げられる。こうしたインゴットは、CZ法又はMCZ法によりホットゾーン炉内のシリコン融液からボロンコフ(Voronkov)の理論に基づいて引上げられる。一般的に、CZ法又はMCZ法によりホットゾーン炉内のシリコン融液からシリコン単結晶のインゴットを引上げたときには、シリコン単結晶における欠陥として、点欠陥(point defect)と点欠陥の凝集体(agglomerates:三次元欠陥)が発生する。点欠陥は空孔型点欠陥と格子間シリコン型点欠陥という二つの一般的な形態がある。空孔型点欠陥は一つのシリコン原子がシリコン結晶格子で正常的な位置の一つから離脱したものである。このような空孔が凝集し空孔型欠陥を形成する。一方、格子シリコンが凝集し格子間シリコン型欠陥を形成する。【0013】点欠陥は一般的にシリコン融液(溶融シリコン)とインゴット(固状シリコン)の間の接触面で導入される。しかし、インゴットを継続的に引上げることによって接触面であった部分は引上げとともに冷却していく。冷却の間、空孔又は格子間シリコンは拡散や対消滅反応をする。約1100℃まで冷却した時点での過剰な点欠陥が空孔型欠陥の凝集体(vacancy agglomerates)又は格子間シリコン型欠陥の凝集体(interstitial agglomerates)を形成する。言い換えれば、過剰な点欠陥が凝集体を形成して発生する三次元構造である。空孔型欠陥の凝集体は前述したCOPの他に、LSTD(Laser Scattering Tomograph Defects)又はFPD(Flow Pattern Defects)と呼ばれる欠陥を含み、格子間シリコン型欠陥の凝集体は前述したL/Dと呼ばれる欠陥を含む。FPDとは、インゴットをスライスして作製されたシリコンウェーハを30分間セコエッチング(Secco etching、HF:K2Cr2O7(0.15mol/l)=2:1の混合液によるエッチング)したときに現れる特異なフローパターンを呈する痕跡の源であり、LSTDとは、シリコン単結晶内に赤外線を照射したときにシリコンとは異なる屈折率を有し散乱光を発生する源である。【0014】ボロンコフの理論は、欠陥の数が少ない高純度インゴットを成長させるために、インゴットの引上げ速度をV(mm/分)、シリコン融液とシリコンインゴットの固液界面近傍の温度勾配をG(℃/mm)とするときに、V/G(mm2/分・℃)を制御することである。この理論では、図2に示すように、V/Gをよこ軸にとり、空孔型欠陥濃度と格子間シリコン型欠陥濃度を同一のたて軸にとって、V/Gと点欠陥濃度との関係を図式的に表現し、空孔領域と格子間シリコン領域の境界がV/Gによって決定されることを説明している。より詳しくは、V/G比が臨界点(V/G)c以上では空孔濃度が上昇したインゴットが形成される反面、V/G比が臨界点(V/G)c以下では格子間シリコン濃度が上昇したインゴットが形成される。図2において、[I]は格子間シリコンが優勢であって格子間シリコンが凝集した欠陥を有する領域((V/G)1以下)を示し、[V]は空孔が優勢であって空孔が凝集した欠陥を有する領域((V/G)2以上)を示し、[P]は空孔型欠陥の凝集体及び格子間シリコン型欠陥の凝集体が存在しないパーフェクト領域((V/G)1〜(V/G)2)を示す。領域[P]に隣接する側の領域[V]との境界にはOISF核を形成するPバンド領域((V/G)2〜(V/G)3)が存在する。Pバンド領域は微小な板状析出物が存在し、酸化性雰囲気下での熱処理でOISF(積層欠陥)が形成される。また領域[P]に隣接する側の領域[I]の境界にはBバンド領域((V/G)4〜(V/G)1)が存在する。Bバンド領域とは、格子間シリコンの凝集体が核となり熱処理によって酸素析出が高濃度に発生している領域である。【0015】このパーフェクト領域[P]は更に領域[Pi]と領域[Pv]に分類される。[Pi]はV/G比が上記(V/G)1から臨界点までの領域であり、格子間シリコンが優勢であって凝集した欠陥を有しない領域である。[Pv]はV/G比が臨界点から上記(V/G)2までの領域であり、空孔が優勢であって凝集した欠陥を有しない領域である。即ち、[Pi]は領域[I]に隣接し、かつ侵入型転位を形成し得る最低の格子間シリコン濃度未満の格子間シリコン濃度を有する領域であり、[Pv]は領域[V]に隣接し、かつOISF核を形成し得る最低の空孔濃度未満の空孔濃度を有する領域である。従って、本発明の測定方法の対象となるインゴットは、領域[V]、領域[Pv]、領域[Pi]及び領域[I]を含むためには、V/G比が上記(V/G)4以下から臨界点、(V/G)3以上とそれぞれの領域を含むように制御されて引上げられることになる。(2) 本発明の測定方法次に図1及び図3に基づいて本発明の測定方法を説明する。図1に示すように、先ずp型のテストインゴットから測定用サンプルを作製する(工程(a))。即ち、CZ法又はMCZ法に基づく引上げ装置の石英るつぼに貯留されたホウ素をドープしたシリコン融液からp型のインゴットを引上げる。このとき上述した領域[V]、領域[Pv]、領域[Pi]及び領域[I]がインゴットの軸方向に含むように、インゴットの引上げ速度V(mm/分)を高速(トップ側)から低速(ボトム側)又は低速(ボトム側)から高速(トップ側)に速度を変えて引上げる。次いで、図3に示すように、テストで得られたインゴットを軸方向にスライスし、かつミラーエッチングすることにより、500〜2000μmの厚さを有する、表面が鏡面化した測定用サンプルが作られる。図3(a)では、引上げ速度V(mm/分)を高速(トップ側)から低速(ボトム側)に速度を変えて引上げている。【0016】次いで図1に戻って、測定用サンプルに遷移金属Mが1〜1000ppmの濃度で溶解している遷移金属溶液を塗布してこのサンプルを金属汚染する(工程(b))。遷移金属MとしてはFeが好ましい。遷移金属溶液は遷移金属Mが1〜1000ppm、好ましくは1〜100ppmの濃度で溶解している溶液である。特にFeが10〜100ppmの濃度で溶解している原子吸光用標準溶液が入手が可能でかつ濃度精度に優れるため好ましい。塗布方法としては、スピンコート法、ディッピング法が挙げられる。遷移金属溶液の濃度が下限値未満では、各領域の境界が十分に判別できず、上限値を越えると試料表面に金属が析出する不具合を生じる。以下、本実施の形態では遷移金属MにFeを用いた場合について説明する。【0017】次に、測定用サンプルをアルゴン、窒素、酸素、水素又はそれらの混合ガス雰囲気下、600℃〜900℃の第1温度に保持された熱処理炉内に素早く投入することによりサンプルを3.3℃/分以上の昇温速度で急速加熱して0.5時間〜4時間熱処理し、熱処理炉内から素早く引出すことによりサンプルを3.3℃/分以上の降温速度で急速冷却して、表面に塗布したFeをサンプル全体に拡散させる(工程(c))。本明細書で急速加熱とはサンプルを3.3℃/分以上の昇温速度、好ましくは5℃/分以上、更に好ましくは10℃/分以上で加熱することをいい、サンプルが反ったり、割れたりしない限り、昇温速度は高い方が好ましい。また同様に、急速冷却とはサンプルを3.3℃/分以上の降温速度、好ましくは5℃/分以上、更に好ましくは10℃/分以上で冷却することをいう。本発明で行われる熱処理方法は、従来の熱処理方法で行われるランピング処理は施さず、3.3℃/分以上の昇温速度で急速加熱、3.3℃/分以上の降温速度で急速冷却するために、サンプルの熱処理炉内への投入及び引出しを10cm/分〜150cm/分の速度で行う。この(c)工程を施してサンプル中にFeを拡散させると、拡散したFeは格子点位置に存在しているホウ素(B)とドナーアクセプタペアーであるFe−B結合を形成する。この結合は正イオンのFeイオンと負イオンのBイオンが静電引力で結合し、シリコンのエネルギーバンドギャップ中に0.1eVの深いエネルギー準位を形成している。拡散熱処理を施したサンプルのFe−B結合の濃度は結晶中に固溶している酸素濃度に依存する。これは真性点欠陥の各領域において析出核形成密度が異なるからである。例えば、高酸素濃度結晶の場合、各領域での析出が促進され、領域[Pv]、領域[Pi]におけるFe−B濃度に優位性がなくなる。従って、単に拡散熱処理を施しただけのサンプルでは、各境界領域をFe−B濃度で規定することができない。この拡散熱処理では800〜900℃の第1温度で0.5〜1時間熱処理することが好ましい。第1温度及び保持時間が下限値未満では遷移金属が十分にサンプル内に拡散しない。【0018】次に、測定用サンプルをアルゴン、窒素、酸素、水素又はそれらの混合ガス雰囲気下、第1温度より150℃〜450℃低い450℃〜550℃の第2温度に保持された熱処理炉内に素早く投入することによりサンプルを3.3℃/分以上の昇温速度で急速加熱して0.5時間〜4時間熱処理し、熱処理炉内から素早く引出すことによりサンプルを3.3℃/分以上の降温速度で急速冷却してサンプル全体に拡散したFeから金属シリサイドを形成させる(工程(d))。この(d)工程でのサンプルの熱処理炉内への投入及び引出しは上記(c)工程と同様に10cm/分〜150cm/分の速度で行われる。この(d)工程を施すことにより、サンプル中に拡散して各領域にFe−B結合を形成している格子間Feの一部はβ−FeSi2を形成する。そのため、格子間に固溶する格子間Fe濃度は減少する。但し、領域[Pv]と領域[Pi]でのβ−FeSi2の生成率は各領域の真性点欠陥の種類により異なると考えられる。例えば、領域[Pi]ではβ−FeSi2の生成率が領域[Pv]と比較して高いことから各領域でのFe−B濃度の差に優位性がなくなる。この(d)工程は、各領域における点欠陥の種類とβ−FeSi2の生成率依存性を利用して結晶中に固溶しているFe濃度を面内一定にするために施される。このシリサイド形成熱処理では500〜550℃の第2温度で0.5〜1時間熱処理することが好ましい。第2温度及び保持時間が下限値未満では十分に金属シリサイドが形成されない。また上限値を越えると結晶中において酸素析出物が形成される不具合を生じる。【0019】更に、サンプルをアルゴン、窒素、酸素、水素又はそれらの混合ガス雰囲気下、第2温度より450℃〜550℃高い900℃〜1100℃の第3温度に保持された熱処理炉内に素早く投入することによりサンプルを3.3℃/分以上の昇温速度で急速加熱して0.5時間〜4時間熱処理し、熱処理炉内から素早く引出すことによりサンプルを3.3℃/分以上の降温速度で急速冷却してサンプル内部に形成された金属シリサイドを溶解させる(工程(e))。この(e)工程でのサンプルの熱処理炉内への投入及び引出しは上記(c)工程及び(d)工程と同様に10cm/分〜150cm/分の速度で行われる。(e)工程を施すことにより、上記(d)工程で形成したβ−FeSi2をα−FeSi2に相変化させて電気的に不活性とする。更に、上記(d)工程でβ−FeSi2を形成せずにFe−B結合を保持していた格子間Feを放出させる。この溶解熱処理では900〜1000℃で0.5〜1時間熱処理することが好ましい。第3温度及び保持時間が下限値未満では十分に金属シリサイドが溶解されない。また上限値を越えると結晶中において酸素析出物が形成される不具合を生じる。【0020】上記工程(c)〜工程(e)の各種熱処理を施したサンプル全体におけるFeの形成する再結合中心の濃度をDLTSにより測定し、この測定値を基に相関関数を求める(工程(f))。サンプルの少数キャリア拡散長をSPV法(表面起電力法)により測定する(工程(g))。この(g)工程及び後述する(i)工程において、各領域におけるFeの再放出量の点欠陥種依存性を利用して、結晶中に固溶している電気的に活性な欠陥である格子間FeのみをSPV法により測定する。サンプルに熱又は光エネルギーを注入する(工程(h))。サンプルに100W程度の白色光源を照射するのが好ましい。サンプルに白色光源を照射することにより、サンプル中に存在しているFe−B結合は容易に乖離し、0.45eVの深いエネルギー準位がシリコン単結晶のエネルギーバンドギャップ中に形成される。この乖離によって、少数キャリア拡散長は減少することになる。熱又は光エネルギーを注入して乖離した正イオンのFeイオンは結晶の格子間を拡散し、再び最も近接するホウ素とFe−B結合を形成する可逆的反応が行われる。【0021】次に、熱又は光エネルギーを注入したサンプルの少数キャリア拡散長をSPV法により測定する(工程(i))。白色光源の照射前の上記(g)工程における測定値と照射後の上記(i)工程における測定値から少数キャリア拡散長の差分を求める(工程(j))。上記(g)工程と上記(i)工程から得られた差分はサンプル中に固溶しているFe濃度と相関する。上記(f)工程で得られた相関関数と上記(j)工程で得られた少数キャリア拡散長の差分から、サンプルにおける領域[Pi]と領域[Pv]並びにこれらの境界を規定する(工程(k))。Feの再放出量は点欠陥領域の種類に顕著に依存するため、相関関数と少数キャリア拡散長の差分との積を求めることで、サンプルにおける領域[Pi]と領域[Pv]並びにこれらの境界を規定することができる。【0022】SPV測定装置に予めDLTSから得られた相関関数を測定ソフトに組込むことで、白色光源照射前後での少数キャリア拡散長の測定値と前述の相関関数を用いてウェーハの指定された位置で拡散長をそれぞれ測定することにより、面内のFe濃度の定量化を実現する。空孔濃度が低濃度である領域[Pi]では、ゲッタリングシンクであるホウ素にトラップされてFe−B結合を形成していた遷移金属(Fe)が溶解熱処理により格子間に再放出される。空孔濃度が高い領域[Pv]では、Fe−B結合を形成していたFeが溶解熱処理により空孔に取り込まれて、析出が促進される。従って、領域[Pi]の遷移金属の濃度は領域[Pv]の遷移金属の濃度と比較しておよそ3倍以上の高濃度となる。このようにサンプル全体におけるFeの形成する再結合中心の濃度を測定することにより、各領域の境界を明確にすることができる。本発明の測定方法では、インゴット内に固溶する酸素を測定対象とした識別方法ではないため、インゴット内に固溶する酸素濃度に依存することがなく、長時間の酸素析出熱処理も不要である。また酸素析出熱処理条件に左右されることがないため、高い精度で識別することができる。【0023】【実施例】次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。<実施例1〜3及び比較例1〜5>先ず、ホウ素をドープしたシリコン融液から領域[V]、領域[Pv]、領域[Pi]及び領域[I]をそれぞれ含むように引上げ速度を変えてインゴットを引上げ、図4のA−A線に位置する領域[Pv]及び領域[Pi]を含む位置でインゴットを径方向にスライスして8枚のサンプルを得た。次いで、8枚のサンプルの表面にスピンコート法により100ppmのFe溶液を塗布し、サンプル表面を金属汚染させた。次に、下記表1に示す条件で8枚のサンプルにそれぞれ熱処理を施した。【0024】【表1】【0025】各種条件での熱処理を終えたサンプルをDLTS法によりサンプル全体におけるFeの形成する再結合中心の濃度を測定し、この測定値を基に相関関数を求めた。続いてSPV法を用いて少数キャリア拡散長を測定した。各サンプルに白色光源を照射した。白色光源照射後のサンプルをSPV法を用いて少数キャリア拡散長を測定した。白色光源照射前後の少数キャリア拡散長の差分を求めた。相関関数と少数キャリア拡散長の差分から、サンプル内のFeの再結合中心の濃度の拡散長(面内分布)を測定した。図6にFe拡散試料の各種点欠陥領域から得られたFe再結合中心濃度の径方向分布を示す。また図7に図6のウェーハ中心から0mm及び50mmにおけるFe再結合中心濃度分布図を示す。更に図8〜図13に実施例2,3、比較例1,2,4及び5における領域[Pv]と領域[Pi]のFe濃度のウェーハ面内分布図を示す。【0026】図6より明らかなように、それぞれの領域においてFe濃度が熱処理温度条件により顕著に異なることが判る。Fe濃度が最も高いのは実施例2の領域[Pi]であり、Fe濃度が最も低いのは比較例4の領域[Pv]であった。このように熱処理条件とそれぞれの領域によって検出されるFe濃度が異なることが判る。この結果は、Fe濃度の溶解熱処理温度依存性を用いて各領域の識別、判別が可能であることを示している。図7より明らかなように、900℃以上の溶解熱処理を施した実施例1〜3は、領域[Pv]と領域[Pi]のFe濃度比が3倍以上になることが判った。図8〜図13は、実施例2,3、比較例1,2,4及び5における領域[Pv]と領域[Pi]のFe濃度のウェーハ面内分布である。拡散熱処理のみの比較例1及び溶融熱処理を施していない比較例2は、Feが十分に再結合されていないため、十分な面内分布をとっておらず、各領域を識別することができていない。900℃未満の溶解熱処理を施した比較例4及び5も十分な再結合分布をとっておらず、各領域を判別することができない。これに対して900℃以上の溶解熱処理を施した実施例2及び3では、領域[Pv]と領域[Pi]のFe濃度の差が明確となり、点欠陥の境界領域を高い精度で評価できることが判った。【0027】【発明の効果】以上述べたように、本発明のシリコン単結晶インゴットの点欠陥分布の測定方法は、先ずp型シリコン単結晶インゴットを軸方向にスライスして得られた領域[V]、領域[Pv]、領域[Pi]及び領域[I]を含む測定用サンプルを遷移金属好ましくはFeで強制汚染させる。次いで第1温度で熱処理を施して遷移金属をサンプル内に拡散させ、第2温度で熱処理を施して金属シリサイドを形成させ、第3温度で熱処理を施して金属シリサイドを溶解させる。次にDLTS法により遷移金属の再結合中心の濃度を測定し、その測定値より相関関数を求め、熱又は光エネルギー注入前後におけるSPV法により測定した少数キャリア拡散長の差分を算出する。相関関数と差分から遷移金属の再結合中心の濃度分布を測定する。これらの工程を経ることにより、インゴット内の領域[Pv]及び領域[Pi]並びにこれらの境界を高い精度でかつ短時間に識別することができる。本発明の測定方法により領域[Pv]及び領域[Pi]を明確に判別できることから、従来無欠陥シリコン単結晶を製造する際に問題となっていたV/G制御を精密に制御することができ、無欠陥シリコン単結晶の安定した量産を実現できる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の測定方法における測定用サンプルに関するフローチャート。【図2】ボロンコフの理論を基づいた、V/Gをよこ軸にとり、空孔型点欠陥濃度と格子間シリコン型点欠陥濃度を同一のたて軸にとって、V/Gと点欠陥濃度との関係を示す図。【図3】インゴットからサンプルを作製する状況を示す図。【図4】無欠陥のシリコン単結晶インゴットを作製可能なホットゾーンを有する結晶引上げ装置で作製された領域[V]、領域[Pv]、領域[Pi]及び領域[I]を含むサンプルに析出熱処理した場合の再結合ライフタイムの面内分布を示す図。【図5】図4のA−A線断面における再結合ライフタイムを示す図。【図6】実施例1〜3及び比較例1〜5のFe再結合中心濃度の径方向分布図。【図7】図6のウェーハ中心から0mm及び50mmにおけるFe再結合中心濃度分布図。【図8】実施例2における領域[Pv]と領域[Pi]のFe濃度のウェーハ面内分布図。【図9】実施例3における領域[Pv]と領域[Pi]のFe濃度のウェーハ面内分布図。【図10】比較例1における領域[Pv]と領域[Pi]のFe濃度のウェーハ面内分布図。【図11】比較例2における領域[Pv]と領域[Pi]のFe濃度のウェーハ面内分布図。【図12】比較例4における領域[Pv]と領域[Pi]のFe濃度のウェーハ面内分布図。【図13】比較例5における領域[Pv]と領域[Pi]のFe濃度のウェーハ面内分布図。 (a) ホウ素をドープしたシリコン融液から引上げ速度を変えて引上げられたp型シリコン単結晶インゴットを軸方向にスライスして、領域[V]、領域[Pv]、領域[Pi]及び領域[I]を含む測定用サンプルを作製する工程と、(b) 遷移金属Mが1〜1000ppmの濃度で溶解している遷移金属溶液を前記サンプルの表面に塗布して金属汚染する工程と、(c) 前記金属汚染されたサンプルをアルゴン、窒素、酸素、水素、又はそれらの混合ガス雰囲気下、600℃〜900℃の第1温度に保持された熱処理炉内に素早く投入することにより前記サンプルを3.3℃/分以上の昇温速度で急速加熱して0.5時間〜4時間熱処理し、前記熱処理炉内から素早く引出すことにより前記サンプルを3.3℃/分以上の降温速度で急速冷却して前記サンプル表面に塗布した遷移金属Mを前記サンプル内部に拡散させる拡散熱処理工程と、(d) 前記サンプルをアルゴン、窒素、酸素、水素、又はそれらの混合ガス雰囲気下、前記第1温度より150℃〜450℃低い450℃〜550℃の第2温度に保持された熱処理炉内に素早く投入することにより前記サンプルを3.3℃/分以上の昇温速度で急速加熱して0.5時間〜4時間熱処理し、前記熱処理炉内から素早く引出すことにより前記サンプルを3.3℃/分以上の降温速度で急速冷却して前記サンプル内部に拡散した遷移金属Mから金属シリサイドを形成させるシリサイド形成熱処理工程と、(e) 前記サンプルをアルゴン、窒素、酸素、水素、又はそれらの混合ガス雰囲気下、前記第2温度より450℃〜550℃高い900℃〜1100℃の第3温度に保持された熱処理炉内に素早く投入することにより前記サンプルを3.3℃/分以上の昇温速度で急速加熱して0.5時間〜4時間熱処理し、前記熱処理炉内から素早く引出すことにより前記サンプルを3.3℃/分以上の降温速度で急速冷却して前記サンプル内部に形成された金属シリサイドを溶解させる溶解熱処理工程と、(f) 前記溶解熱処理されたサンプル全体における前記遷移金属Mの形成する再結合中心の濃度を測定し、前記測定結果より相関関数を求める工程と、(g) 前記溶解熱処理されたサンプル全体における少数キャリア拡散長を測定する工程と、(h) 前記サンプルに熱又は光エネルギーを注入する工程と、(i) 前記熱又は光エネルギーを注入したサンプル全体における少数キャリア拡散長を測定する工程と、(j) 前記(g)工程の測定結果と前記(i)工程の測定結果から少数キャリア拡散長の差分を求める工程と、(k) 前記(f)工程で得られた相関関数と前記(j)工程で得られた少数キャリア拡散長の差分から、前記サンプルにおける領域[Pv]及び領域[Pi]並びにこれらの境界を規定する工程とを含むシリコン単結晶インゴットの点欠陥分布を測定する方法。但し、領域[V]は空孔型点欠陥が優勢であって過剰な空孔が凝集した欠陥を有する領域、領域[Pv]は空孔型点欠陥が優勢であって空孔が凝集した欠陥を有しない領域、領域[Pi]は格子間シリコン型点欠陥が優勢であって格子間シリコンが凝集した欠陥を有しない領域及び領域[I]は格子間シリコン型点欠陥が優勢であって格子間シリコンが凝集した欠陥を有する領域である。 遷移金属MがFeである請求項1記載の測定方法。 (g)工程及び(i)工程における少数キャリア拡散長をSPV(表面起電力法)を用いて測定する請求項1記載の測定方法。 (f)工程における遷移金属Mの形成する再結合中心の濃度をDLTS(過渡容量分光法)を用いて測定する請求項1記載の測定方法。 【課題】インゴットに固溶する酸素濃度に依存することなく領域[Pv]及び領域[Pi]並びにこれらの境界を高い精度でかつ短時間に識別する。【解決手段】p型シリコン単結晶インゴットを軸方向にスライスして得られた領域[V]、領域[Pv]、領域[Pi]及び領域[I]を含む測定用サンプルの表面を遷移金属汚染させる。サンプルを第1温度で熱処理して遷移金属をサンプル内に拡散させ、第2温度で熱処理してサンプル内に拡散した遷移金属から金属シリサイドを形成させ、第3温度で熱処理してサンプル内に形成された金属シリサイドを溶解させる。サンプル全体における遷移金属の形成する再結合中心の濃度を測定して相関関数を求める。熱又は光エネルギー照射前後のサンプルの少数キャリア拡散長を測定し、その差分を求める。相関関数と差分から、サンプルにおける領域[Pv]及び領域[Pi]並びにこれらの境界を規定する。【選択図】 図1