タイトル: | 公開特許公報(A)_ドミナントネガティブなカルコンシンターゼをコードする遺伝子配列およびその使用 |
出願番号: | 2002233324 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C12N15/09,A01H5/00,C12N5/10 |
ママサ ハナンマパ ゴウ チョイ ギルツ チョイ JP 2004065209 公開特許公報(A) 20040304 2002233324 20020809 ドミナントネガティブなカルコンシンターゼをコードする遺伝子配列およびその使用 錦湖石油化學株式會▲社▼ 502289868 山本 秀策 100078282 安村 高明 100062409 森下 夏樹 100113413 ママサ ハナンマパ ゴウ チョイ ギルツ チョイ 7 C12N15/09 A01H5/00 C12N5/10 JP C12N15/00 A A01H5/00 A C12N5/00 C 12 OL 38 2B030 4B024 4B065 2B030CA14 2B030CA17 4B024AA08 4B024BA07 4B024CA03 4B024DA01 4B024EA04 4B024GA11 4B024HA01 4B065AA89X 4B065AA89Y 4B065AB01 4B065AC14 4B065BA02 4B065CA27 4B065CA53 【0001】【発明の属する技術分野】(発明の分野)本発明は、CHSをドミナントネガティブに阻害する改変されたCHS酵素をコードする改変されたMazusCHS核酸、および植物を遺伝的に変更して植物体中のアントシアニンの含有量を減少させるためのこの核酸の使用に関する。【0002】【従来の技術】(発明の背景)花色は、重要な園芸形質であり、そして主にフラボノイド色素である、アントシアニンによって生成される。花粉提供者を魅了するために主に生成されるが、フラボノイドはまた、UV損傷、害虫、病原体から植物体およびその生殖器を保護する(BrouillardおよびCheminat、1988;Gronquistら、2001)。古典的な品種方法が、色およびその強度の両方において異なる花を有する品種の開発に広く使用されてきた。生物化学的レベルおよび分子レベルでの花の着色についての最近の知識の進歩は、遺伝子操作によってこれを達成することを可能にした(Tanakaら、1998)。【0003】3つの異なる分類のアントシアニンが、多くの被子植物において、花色の主な色調を担う:ペラルゴニジン(オレンジ〜赤レンガ)、シアニジン(赤〜ピンク)、およびデルフィニジン(紫〜青)。アントシアニンの生合成経路が十分確立され、そして合成に関与する酵素のほとんどが同定された(図1)(HoltonおよびCornish、1995;Winkel−Shirley、2001)。これは、カルコンシンターゼ(CHS)による4−クマロイル(coumaroyl)−CoAおよびマロニル−CoAの濃縮に始まり、テトラヒドロキシカルコンを生成する。これは、カルコンイソメラーゼ(CHI)およびフラバノン3−ヒドロキシラーゼ(F3H)の連続する作用によって、ジヒドロフラボノールに変換される。第一に生成されるジヒドロフラボノールは、ジヒドロケンペロール(DHK)である。次いで、DHKは、フラボノールシンターゼ(FLS)によってケンペロールか、またはジヒドロフラボノール4−レダクターゼ(DFR)によってロイコペラルゴニジンのいずれかに変換される。あるいは、DHKは、フラボノイド3’−ヒドロキシラーゼ(F3’H)またはフラボノイド3’5’−ヒドロキシラ−ゼ(F3’5’H)によってジヒドロケルセチン(DHQ)またはジヒドロミリセチン(DHM)に、ヒドロキシル化される。DHQおよびDHMはさらに、FLSによってこれらのそれぞれのフラボノール(ケルセチンおよびミリセチン)に変換されるかまたは、DFRによって還元されてロイコアントシアニジン(ロイコシアニジンおよびロイコデルフィニジン)を生じ得る。アントシアニジンシンターゼ(ANS)によってロイコシアニジンから合成されるアントシアニジンは、次いで、フラボノイド3−O−グルコシルトランスフェラーゼ(3GT)によってグリコシル化されてアントシアニンを生成する。ラムノシル化、メチル化、またはアシル化によるさらなる改変は、広範な種々のアントシアニンを生じる(Kroonら、1994;Ronchiら、1995;Fujiwaraら、1997;Yoshidaら、2000;Yabuyaら、2001)。花色におけるスペクトルの差異は主に、異なる分類のアントシアニンの比率および他の因子(例えば、液胞のpH、共同色素沈着(co−pigmentation)、金属イオンの錯体化および分子のスタッキング)によって決定される(Holtonら、1993;MarkhamおよびOfman、1993;Molら、1998;Tanakaら、1998;Aidaら、2000)。最終的な色調は、上皮細胞の形状またはクリームのような感じを与えるデンプンの存在を含む種々の因子によってさらに変更され得る(MarkhamおよびOfman、1993;Nodaら、1994;Molら、1998;van Houwelingenら、1998)。【0004】花色を変更するための遺伝子操作は、種々の遺伝子を使用して試みられてきた。この経路における生合成遺伝子の不在または酵素の基質特異性に起因して、いくつかの種は、特定の色を欠く。例えば、カーネーションはF3’5’Hの非存在に起因して、青/紫色の花を欠き、一方でペチュニアは、DHKを還元するそのDFRの不能に起因してオレンジおよび赤レンガの花を欠く(Geratsら、1982;ForkmanおよびRuhnau、1987)。青/紫色のカーネーションの遺伝子操作は、ペチュニアのF3’5’H遺伝子の導入によって達成され、そしてオレンジ色のペチュニアは、他種からDFRを導入することによって開発された(Meyerら、1987;Bruglieraら、2000;Johnsonら、2001)。色の強度の調節は、遺伝子操作の別の標的となってきた。センス方向またはアンチセンス方向でのCHS、F3HおよびDFRのような生合成遺伝子の発現は、最も活用された方法である(van der Krolら、1990;Courtney−Guttersonら、1994;Jorgensenら、1996;Tanakaら、1998)。得られたセンス抑制またはアンチセンス阻害は、集合的に、転写後の遺伝子サイレンシング(silencing)(PTGS)と呼ばれる。これらのアプローチは、色素合成のダウンレギュレーションにおいてかなり成功したが、特定の種または近縁の種から目的の遺伝子をクローニングする必要性が、主な欠点である。さらに、PTGSを特定の組織に限定することは困難である(Palauquiら、1997;VoinnetおよびBaulcombe、1997;Voinnetら、1998;FagardおよびVaucheret、2000;Creteら、2001;Vaucheretら、2001)。あるいは、アントシアニン生合成遺伝子の転写を活性化し得るかまたは抑制し得るかのいずれかである転写因子は、モデル植物(例えば、Arabidopsis、タバコ、およびPetunia)における色の強度の調節において有用であることが示されている(Lloydら、1992;Molら、1998;Borevitzら、2000;Aharoniら、2001)。しかし、転写因子の過剰発現は、一般的に多くの遺伝子の発現を変更し、従って、これらのトランスジェニック花の商業的な実行可能性は、いまだ決定されなければならない(Lloydら、1994;Bruceら、2000)。【0005】CHSの生物化学的特徴および構造的特徴は、花色の強度を調節するために使用され得るドミナントネガティブなCHSを設計する可能性を示唆する。CHSは、アントシアニンを含む種々のフラボノイドの合成における最初の酵素である。CHSは、ホモ二量体として機能し、そして単一の活性部位で一連の反応を実行する(Tropfら、1995)。この酵素は、4−クマロイル−CoAの分子と3つのマロニル−CoAを濃縮し、テトラケチド(tetarketide)中間体を芳香環構造に折りたたむ(Schroder、1999)。部位特異的な変異誘発およびインヒビターの研究は、CHSの触媒機能に重要な保存されたシステイン残基およびヒスチジン残基を同定した(Lanzら、1991;Suhら、2000)。アルファルファCHSの結晶構造は、保存されたCys164、Phe215、His303およびAsn336が触媒活性部位を形成することを示す(Ferrerら、1999)。さらに、この結晶構造はまた、隣接する単量体由来のMet137が、CHSの環化ポケット中に伸びていることを示す。このことは、CHS単量体が、その活性のために隣接する単量体由来のメチオニンを必要とすることを示唆する。この構造的な情報に基づいて、本発明者らは、活性部位でシステインの代わりにアラニンを有し、かつメチオニンの代わりにグリシンまたはリジンのいずれかを有するCHSを生成した。システインのアラニンへの変異は、CHSの不活化形態を生じるが、メチオニンのグリシンまたはリジンへの変異は、結晶構造によって示唆されるようにメチオニンが本当に重要である場合、隣接するCHSの機能を不活化する。トランスジェニックArabidopsisを使用して、本発明者らは、変異したCHSが本当にドミナントネガティブであることを実証する。本発明者らの結果は、メチオニン残基の重要性を確認し、そして、遠縁の種においてさえも、ドミナントネガティブCHSの、花色の強度の調節における有用性を実証する。【0006】【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、改変されたMazus CHSを提供することであり、このMazus CHSは、Mazus CHSの165番目のアミノ酸でシステインの代わりにアラニンを有し、かつMazus CHSの138番目のアミノ酸でメチオニンの代わりにグリシンまたはリジンのいずれかを有する、改変されたカルコンシンターゼをコードする。【0007】本明細書中の目的はまた、植物体における減少したアントシアニンの含有量によって特徴付けられる表現型を付与する改変されたMazus CHSを発現するトランスジェニック植物体を提供することである。【0008】【課題を解決するための手段】本発明は、カルコンシンターゼ(配列番号2)をコードする、単離されたMazusカルコンシンターゼ(CHS)核酸(配列番号1)を提供する。【0009】本発明の好ましい実施形態では、上記のカルコンシンターゼをコードするための改変されたカルコンシンターゼ核酸であり、ここで、任意のアミノ酸が、Mazus CHSの165番目のシステイン残基および138番目のメチオニン残基を置換し得る、改変されたカルコンシンターゼ核酸を提供する。【0010】本発明の好ましい実施形態では、上記の改変されたカルコンシンターゼ(配列番号4)をコードするための上記改変されたMazus CHS核酸(配列番号3)であり、ここで、上記残基で、アラニンがシステインを置換し、かつグリシンがメチオニンを置換する、改変されたカルコンシンターゼ核酸を提供する。【0011】本発明の好ましい実施形態では、上記の改変されたカルコンシンターゼ(配列番号6)をコードするための上記改変されたMazus CHS核酸(配列番号5)であり、ここで、上記残基で、アラニンがシステインを置換し、かつリジンがメチオニンを置換する、改変されたカルコンシンターゼ核酸を提供する。【0012】本発明の好ましい実施形態では、植物細胞中に形質転換されるためのベクターであって、上記改変されたCHS核酸の少なくとも一部を含む植物において、アントシアニンの含有量を減少させる、ベクターを提供する。【0013】本発明は、植物細胞中に形質転換されるためのベクターであって、上記改変されたCHS核酸の少なくとも一部を含む植物において、アントシアニンの含有量を減少させる、ベクターを提供する。【0014】本発明は、植物細胞中に形質転換されるためのベクターであって、上記改変されたCHS核酸の少なくとも一部を含む植物において、アントシアニンの含有量を減少させる、ベクターを提供する。【0015】本発明は、上記改変されたCHS核酸の少なくとも一部を含むベクターで形質転換された細胞の少なくとも1つを含むトランスジェニック被子植物であって、ここで、この植物が、減少した量のアントシアニンを有する、被子植物、を提供する。【0016】本発明は、上記改変されたCHS核酸の少なくとも一部を含むベクターで形質転換された細胞の少なくとも1つを含むトランスジェニック被子植物であって、ここで、この植物が、減少した量のアントシアニンを有する、被子植物を提供する。【0017】本発明は、上記改変されたCHS核酸の少なくとも一部を含むベクターで形質転換された細胞の少なくとも1つを含むトランスジェニック被子植物であって、ここで、この植物が、減少した量のアントシアニンを有する、被子植物を提供する。【0018】本発明は、減少したアントシアニンの含有量によって特徴付けられる表現型を有するトランスジェニック植物を生成するための方法であって、以下の工程:i)上記改変されたCHS核酸の少なくとも一部を含むベクターで植物細胞を形質転換する工程;ii)この形質転換された植物細胞の1つ以上から植物を再生する工程;およびiii)減少した含有量のアントシアニンを有する少なくとも1つの植物を選択する工程、の少なくとも1つを含む、方法を提供する。【0019】本発明は、上記の方法に従って生成された、トランスジェニック被子植物を提供する。【0020】(発明の要旨)これらの目的に従って、本発明は、Mazus CHSの165番目のアミノ酸でシステインの代わりにアラニンを有し、かつMazus CHSの138番目のアミノ酸でメチオニンの代わりにグリシンまたはリジンのいずれかを有する、改変されたMazus CHSをコードする、改変されたMazus CHS核酸を含む。改変されたCHSの特性は、CHSをドミナントネガティブに阻害するその能力によって特徴付けられる。【0021】本発明はまた、改変されたCHS核酸の少なくとも一部を含むベクターで形質転換された細胞の少なくとも1つを有する植物体を含む。このような植物体は、減少したアントシアニンの含有量によって特徴付けられる表現型を有する。【0022】本発明はまた、植物細胞を形質転換させてアントシアニンの含有量を減少させ得るベクターを含む。【0023】本発明はまた、減少したアントシアニンの含有量を有する植物体を生成するための方法を含む。この方法は、改変されたCHS遺伝子を含むベクターで植物細胞を形質転換する工程;形質転換された細胞から植物体を再生する工程、および減少したアントシアニンの含有量を有する植物を選択する工程を包含する。【0024】【発明の実施の形態】(発明の詳細な説明)(Mazus japonicus CHSのクローニングおよび機能的特徴付け)推定のCHSを、Scrophulariaceaeに属する一般的な園芸植物である、Mazus japonicusからクローニングした(GenBank登録番号AY131328)。Mazusは、ラベンダーがかった花筒を有する白い花を、両側に対称的に有する。本発明者らは、Mazus由来の全てのアントシアニン生合成遺伝子のクローニングの一部として、推定CHS遺伝子をクローニングした。系統発生的な分析は、Mazus由来の推定CHSが、他の公知のCHS酵素、特に、同様にScrophulariaceaeに属するキンギョソウ(Antirrhinum majus)およびトレニア(Torenia hybrida)のCHS酵素に、非常に類似する(図2)。おそらくこの遺伝子は、真のCHSをコードするが、系統樹においてスチルベンシンターゼ(STS)および他のCHS様酵素は別々に分岐しないので、さらなる実験的証拠が必要とされた(Tropfら、1994)。【0025】Mazusから単離された推定CHSが、機能的なCHSをコードするか否かを決定するため、本発明者らは、野生型のArabidopsis(Ler)およびchs変異体(tt4)両方のバックグラウンドで、この遺伝子を発現させた。いくつかの独立したホモ接合体系統を確立し、各々3つの系統をさらなる分析のために無作為に選択した。推定CHSがtt4変異を補完し得るか否かを決定するため、本発明者らは、3%のショ糖を含む水寒天プレート上で実生を生育させた。図3Aに示したように、推定CHSを発現する野生型の植物および3つ全てのトランスジェニック系統が、紫の子葉を示したが、tt4は黄色がかった子葉を示した。一致して、野生型種子およびトランスジェニック種子の両方は、tt4変異体の黄色い種皮色とは異なった、茶色の種皮色を示した(図3A 挿入図)。トランスジェニック系統におけるアントシアニン生成の回復は、Mazus由来の推定CHSが、機能的CHSをコードすることを示した。従って、本発明者らは、この遺伝子をMjCHSという。【0026】トウモロコシCHSのArabidopsisにおける過剰発現は、アントシアニンの生成を増大させなかった(Dongら、2001)。MjCHSの過剰発現がArabidopsisにおいてアントシアニンを増大させ得るか否かを試験するため、本発明者らは、2%ショ糖を含むMS寒天プレート上で野生型Arabidopsis植物体およびトランスジェニックArabidopsis植物体の両方を生育させ、そして分光光度計を使用してアントシアニン含有量を定量した。LerバックグラウンドにおいてMjCHSを発現する無作為に選択された3つのホモ接合体系統のうち2つが、より多いアントシアニンを蓄積した(図3B)。この増大がMjCHSの発現を反映するか否かを調査するため、本発明者らは、ノーザン分析を行った。図3Cに見られるように、より高いアントシアニンの量を示した2つの系統がMjCHSを発現したが、野生型と類似の量を示した第三の系統は、トランスジーンを発現しなかった。この結果は、MjCHSの過剰発現がArabidopsisにおいてアントシアニンレベルを増大させ得ることを示す。トウモロコシCHSの過剰発現からの対照的な結果は、2つのCHS酵素における僅かな差異または本実験に使用された異なるアッセイ条件に起因し得た。【0027】(2つのドミナントネガティブMjCHSの開発)アルファルファCHSの結晶構造は、単量体由来の保存されたメチオニンが、隣接する単量体の機能にとって必要であることを示唆した(Ferrerら、1999)。このメチオニンが機能的に重要である場合、メチオニンの他のアミノ酸への変更は、隣接するCHSの機能を阻害し、従ってこの変異は、ドミナントネガティブである。これを試験するため、本発明者らは、部位特異的変異誘発によって2つの変異MjCHS遺伝子を生成した(図4A)。1つの変異MjCHS(mCHSG)は、138番目の残基でメチオニンの代わりにグリシンを有する。グリシンはメチオニンの側鎖と比較してより小さな側鎖を有することから、隣接する単量体の基質結合ポケットは、変更される。他の変異MjCHS(mCHSK)は、138番目の残基でメチオニンの代わりにリジンを有する。リジンは、正に荷電しているため、隣接する単量体の基質結合ポケットの電気化学的な特性は、変更される。変異MjCHSの触媒活性を排除するため、本発明者らはまた、触媒的に重要な165番目のシステインをアラニンに変化させた。このシステインのセリンまたはアラニンのいずれかへの変異は、CHSを不活性化することが示されている(Lanzら、1991;Tropfら、1995;Jezら、2000)。【0028】変異MjCHS酵素が、ドミナントネガティブな様式で挙動するか否かを決定するため、本発明者らは、変異mCHSGおよびmCHSKを発現するいくつかのトランスジェニックArabidopsisを作製し、そしてさらなる分析のために3つのホモ接合体を無作為に選択した。この分析のために、野生型およびトランスジェニック系統を、2%のショ糖を含むMS寒天プレート上で生育させた。アントシアニン含有量を、分光光度計によって定量した(図4B)。mCHSGトランスジェニック系統およびmCHSKトランスジェニック系統の両方が、アントシアニンの減少したレベルを示した。この減少は、トランスジェニック系統における内在性のArabidopsis CHSの、より低い発現に起因しない(図4C)。【0029】CHS二量体中の各単量体は、独立して機能し得、そしてシステイン残基の変異による単量体の不活性化は、隣接する単量体の活性に影響しない(Tropfら、1995)。従って、mCHSGトランスジェニック系統およびmCHSKトランスジェニック系統における減少したアントシアニンレベルは、変異MjCHS酵素がドミナントネガティブに挙動することを示す。必然的に、二量体化パートナーの環化ポケットへのメチオニンの伸長は、隣接する単量体の活性にとって機能的に重要である。mCHSGおよびmCHSKの両方のドミナントネガティブな作用は、側鎖の長さの変化または電気化学的特性の変化のいずれかによる基質結合ポケットの変更が、CHS活性を阻害し得ることをさらに示唆する。【0030】ドミナントネガティブ性の程度は、ドミナントネガティブなタンパク質の量に依存する。従って、トランスジェニック植物体におけるアントシアニン含有量は、変異MjCHS酵素の発現レベルに逆に相関すると予想される。この仮説を試験するために、本発明者らは、MjCHS RNAのノーザン分析を行った。しかし、図4Cに示したように、相関は検出されなかった。アントシアニンレベルにおける多様性は、翻訳された変異タンパク質の実際の量に寄与され得る。あるいは、異なったトランスジェニック系統がMjCHSの異なった組織発現プロフィールを有し得るので、アントシアニンの大半が生成されるトランスジェニック実生の頸部(neck)および子葉領域における異なった変異MjCHS発現レベルが、総MjCHSメッセージによってマスクされる可能性がある。【0031】(ドミナントネガティブなMjCHSによる、花色の調節)異種の系において、ドミナントネガティブMjCHSを使用して、花色の強度を調節し得るか否かをさらに試験するため、本発明者らは、Petunia xhybrida cv Blueを、mCHSKで形質転換した。いくつかの形質転換体が得られ、その全てが類似の表現型を示した。図5に示されるように、mCHSKを発現するペチュニア形質転換体は、野生型に比べて減少した花色強度を示し、これは、変異MjCHSがまた、ペチュニアのCHSを阻害し得ることを示す。センス抑制系統またはアンチセンス阻害系統において観察された種々の色のパターンとは異なり、ドミナントネガティブCHSを発現する全てのトランスジェニックペチュニア系統は、さらなる花色の強度の減少を示した。変異MjCHS酵素のドミナントネガティブ作用は、内在性のCHS酵素とヘテロ二量体化するその能力に依存する。アントシアニン生成の阻害は、MjCHSがArabidopsis CHSおよびペチュニアのCHSの両方とヘテロ二量体化し得ることを示した。2つの異なる種においてアントシアニン生成を調節する能力は、多くの園芸種において花色強度を調節するためのドミナントネガティブMjCHSのさらなる有用性を示唆する。【0032】本発明はまた、改変されたMazus CHS核酸の少なくとも一部を含むベクターで形質転換された細胞を有する植物を提供する。このような植物は、改変されたCHSによって特定化される、減少したアントシアニン含有量によって特徴付けられる表現型を有する。好ましい実施形態において、本発明は、改変されたカルコンシンターゼをコードする、改変されたMazus CHS核酸の少なくとも一部を含むベクターで形質転換された細胞を有する植物を提供する。このような植物は、減少したアントシアニン含有量によって特徴付けられる表現型を有する。本発明を実施するために使用され得る植物は、被子植物(Magnoliphyta)門の植物、すなわち、双子葉植物および単子葉植物を含む被子植物を含む。改変されたCHS核酸の広い適用可能性は、分岐した植物分類における、アントシアニンの生合成におけるCHS酵素の普遍的な機能に基づく。本発明を実施するために使用され得る親植物は、野生型の改変体、変異誘発によって作製された変異体、または組換え技術によって作製されたトランスジェニック系統であり得る。【0033】本発明はまた、改変されたCHS核酸の少なくとも一部を含む、植物形質転換ベクターを提供する。【0034】植物の形質転換は、植物分子生物学の分野の当業者に公知の、任意の種々の形質転換方法によって、本発明に従って実行され得る。形質転換のための特定の方法としては、マイクロインジェクション、ポリエチレングリコール、エレクトロポレーション、またはマイクロボンバードメント(microbombardment)による植物細胞への核酸の移入が挙げられる。あるいは、植物細胞は、改変されたCHS核酸の少なくとも一部を含む、Agrobacterium保有ベクターによって形質転換され得る。【0035】形質転換された細胞からの植物体の再生は、当業者に公知の任意の方法によって実行され得る。例えば、前出のMethods in Enzymology;Methods in Enzymology、Vol 118;およびKleeら、Annual Review of Plant Physiology 38:467−486を参照のこと。形質転換された細胞または植物体は、抗生物質のような特定の化学物質に対するその耐性に基づいて、あるいは減少したアントシアニン含有量によって特徴付けられるその表現型に基づいて選択される。形質転換された植物体は、自家受精されるかまたは他の植物体と交配され得る。受精後に、改変されたCHS核酸の少なくとも一部を発現する植物体は、抗生物質のような特定の化学物質に対するその耐性に基づいて、あるいは減少したアントシアニン含有量によって特徴付けられるその表現型に基づいて選択され得る。あるいは、形質転換された細胞または形質転換された植物体の一部は、他の植物体に移植され得る。【0036】【実施例】以下は、実施例として示され、本発明の範囲の限定として解釈されるべきではない。【0037】(実施例)(Mazus japonicus由来のCHSのクローニングおよび特徴付け)推定CHS遺伝子のフラグメントを、変性されたプライマー【0038】【化1】を使用して、Scrophulariaceae科に属する一般的な園芸植物、Mazus japonicusからクローニングした。全長のCHS遺伝子を、Marathon RACEキットを使用して、特定のプライマー【0039】【化2】および製造業者(Clontech、Palo Alto、CA、USA)によって提供されたAP2プライマーでクローニングした。【0040】推定CHS遺伝子が機能的CHSをコードするか否かを決定するため、この遺伝子を、プライマー【0041】【化3】で増幅し、そしてXbaIで切断したこの増幅産物を、GUS−欠失pBI121ベクターのXbaI部位にクローニングした。このベクターにクローニングされた遺伝子を、Agrobacterium株GV3101に導入し、そしてArabidopsis野生型Landsberg erecta(Ler)またはtt4変異体中に形質転換した。確立されたいくつかの独立なホモ接合体株のうち3つの株を、さらなる分析のために無作為に選択した。【0042】tt4変異を補完する推定CHSの能力を決定するため、本発明者らは、3%のショ糖を含む水寒天プレート(0.05%のMES、0.8%の植物寒天(phytoagar)、3%のショ糖、pH5.7)上で、5日間トランスジェニックtt4株を生育させた。【0043】(ドミナントネガティブCHSの構築および特徴付け)全長MjCHSを、pTOPOIIベクターにクローニングした。165番目の残基でシステインをアラニンに変異させるために(Cys165Ala)、本発明者らは、pTOPOII中のMjCHSを、適切なプライマーセット【0044】【化4】を使用して、Pfuポリメラーゼで増幅した。この増幅産物を、ポリヌクレオチドキナーゼによってリン酸化し、そしてT4DNAリガーゼによって連結した。この連結産物を、E.coli中に形質転換した。この変異クローンを、配列決定によって確認した。Cys165Ala変異と共に、138番目のメチオニンをリジン(mCHSK)またはグリシン(mCHSG)のいずれかに変異させるために、本発明者らは、pTOPOII中のCys165Ala変異CHSクローンを、K−プライマーセット【0045】【化5】またはG−プライマーセット【0046】【化6】のいずれかで増幅した。この増幅産物を、ポリヌクレオチドキナーゼによってリン酸化し、そしてT4DNAリガーゼによって連結した。この変異遺伝子を、変異を確認するために配列決定した。変異全長MjCHS遺伝子を、二つのベクターにクローニングし、そしてArabidopsisに導入した。アントシアニンの定量の後に、ホモ接合体株に再び番号を付けた。【0047】(アントシアニンの定量)トランスジェニック植物体におけるアントシアニンレベルを決定するために、冷却−吸水種子を、2%のショ糖を含むMS寒天プレート(1X MS塩、0.05%のMES、0.8%の植物寒天、2%のショ糖、pH5.7)上に蒔き、そして連続的な白色光(2mW/cm2)の下で5日間生育させた。定量は、前に記載のように行った(Shirleyら、1995)。簡単に言うと、50個の実生を選定し、そして0.5mlの抽出溶液(100%のメタノール+0.5%のHCl)に、4℃で一晩浸した。次の朝、これらのサンプルを、短時間遠心分離し、そしてこの溶液を分光光度アッセイのために使用した。アントシアニンを、OD530での吸光度によって定量した。アントシアニンの含有量の指示として、サンプルのOD530の値から、tt4のOD530の値を引いた。この実験を、三連で行った。【0048】(ノーザン分析)ノーザン分析を、以前に記載されたように行った(Shinら、2002)。簡単に言うと、2%のショ糖を含むMS寒天上で連続的な白色光の下で、アントシアニン抽出についてと同様に生育させた5日齢の実生から、総RNAを抽出した。15μgの総RNAを、各レーンにロードし、そしてナイロン膜に移した。この膜を、32P−標識したArabidopsisの全長CHSまたはMazusの全長CHSでプローブした。【0049】(ペチュニアの形質転換)ペチュニア(Petunia x hybrida cv Blue)を、Johnsonら(1999)によって記載されたように、mCHSK遺伝子を含むベクターで形質転換した。形質転換体を、開花するまで土壌で生育させた。コントロールとして、ベクターのみを有する形質転換体を作製し、そして隣合わせで生育させた。【0050】本発明は、改変されたMazusカルコンシンターゼ(CHS)核酸を含み、この核酸は、Mazus CHSの165番目のアミノ酸でシステインの代わりにアラニンを有し、そしてMazus CHSの138番目のアミノ酸でメチオニンの代わりにグリシンまたはリジンのいずれかを有する、改変されたカルコンシンターゼをコードする。コードされた改変されたMazus CHSの特性は、そのドミナントネガティブなCHSの阻害によって特徴付けられる。本発明はまた、この改変されたMazus CHSを発現する少なくとも1つの細胞を有する植物体を含む。このような植物体は、アントシアニンの減少した含有量によって特徴付けられる。本発明はまた、この改変されたMazus CHS核酸の少なくとも一部を含むベクターを含む。本発明はまた、アントシアニンの減少した含有量を有する植物を生成するために、このようなベクターを使用する方法を含む。【0051】【発明の効果】本発明は、改変されたMazus CHSを提供する。このMazus CHSは、Mazus CHSの165番目のアミノ酸でシステインの代わりにアラニンを有し、かつMazus CHSの138番目のアミノ酸でメチオニンの代わりにグリシンまたはリジンのいずれかを有する、改変されたカルコンシンターゼをコードする。【0052】本発明はまた、植物体における減少したアントシアニンの含有量によって特徴付けられる表現型を付与する改変されたMazus CHSを発現するトランスジェニック植物体を提供する。【0053】【配列表】【図面の簡単な説明】【図1】図1は、主要な酵素を示す、一般的なアントシアニン生合成経路である。PAL、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ;C4H、桂皮酸4−ヒドロキシラーゼ;4CL、4−クマル酸補酵素Aリガーゼ;CHS、カルコンシンターゼ;CHI、カルコンイソメラーゼ;F3H、フラバノン3−ヒドロキシラーゼ;FLS、フラボノールシンターゼ;F3’H、フラボノイド3’ヒドロキシラーゼ;F3’5’H、フラボノイド3’5’ヒドロキシラーゼ;DFR、ジヒドロフラボノール4−レダクターゼ;ANS、アントシアニジンシンターゼ;3GT、3−O−グルコシルトランスフェラーゼ。【図2】図2は、Mazus由来のCHSと他の種由来のCHSとの間の相同性を示す、系統樹である。ger ps1、ガーベラピロンシンターゼ 1;sts 1、スチルベンシンターゼ 1。【図3】図3は、ArabidopsisにおけるMjCHSの機能分析である。(A)MjCHSは、CHS変異体tt4の黄色い子葉および種子(挿入図)の色をレスキューし得る。tC1、2、および3は、Mazus由来のCHSを発現する、独立したtt4のホモ接合体性系統である。(B)Mazus由来のCHSを発現する実生における、アントシアニンのレベル。LC1、2および3は、独立したホモ接合体性トランスジェニック系統を示す。(C)過剰発現系統における、MjCHS発現の分析。MjCHSは、AtCHSとクロスハイブリダイスせず、そしてLC3における発現の欠如は、アントシアニンのレベルに対応する。【図4】図4は、ドミナントネガティブ系統の分析である。(A)隣接する単量体の機能に重要であると予測された四角で囲んだ残基Met138、および触媒性システインであることが示されたCys165を示す、CHSのアミノ酸アラインメント。番号付けは、Mazusの配列に基づく。mCHSGおよびmCHSKは、誘導された変異を示す。alf、アルファルファ;arab、Arabidopsis thaliana;pet、ペチュニア;snap、キンギョソウ;tor、トレニア。(B)ドミナントネガティブのMjCHSを発現するLerの実生における、アントシアニンの蓄積。(C)Lerおよびドミナントネガティブ系統における、内在性CHS(AtCHS)(上のパネル)およびトランスジーン(MjCHS)(中のパネル)の発現。下のパネルは、リボソームRNAを示す。【図5】図5は、ドミナントネガティブMjCHS(mCHSK)を発現するトランスジェニックペチュニア系統における花色の強度。TR1およびTR2は、独立したトランスジェニック系統を示す。WT、野生型。 カルコンシンターゼ(配列番号2)をコードする、単離されたMazusカルコンシンターゼ(CHS)核酸(配列番号1)。 請求項1に記載のカルコンシンターゼをコードするための改変されたカルコンシンターゼ核酸であり、ここで、任意のアミノ酸が、Mazus CHSの165番目のシステイン残基および138番目のメチオニン残基を置換し得る、改変されたカルコンシンターゼ核酸。 請求項2に記載の改変されたカルコンシンターゼ(配列番号4)をコードするための前記改変されたMazus CHS核酸(配列番号3)であり、ここで、前記残基で、アラニンがシステインを置換し、かつグリシンがメチオニンを置換する、改変されたカルコンシンターゼ核酸。 請求項2に記載の改変されたカルコンシンターゼ(配列番号6)をコードするための前記改変されたMazus CHS核酸(配列番号5)であり、ここで、前記残基で、アラニンがシステインを置換し、かつリジンがメチオニンを置換する、改変されたカルコンシンターゼ核酸。 植物細胞中に形質転換されるためのベクターであって、請求項2に記載の前記改変されたCHS核酸の少なくとも一部を含む植物において、アントシアニンの含有量を減少させる、ベクター。 植物細胞中に形質転換されるためのベクターであって、請求項3に記載の前記改変されたCHS核酸の少なくとも一部を含む植物において、アントシアニンの含有量を減少させる、ベクター。 植物細胞中に形質転換されるためのベクターであって、請求項4に記載の前記改変されたCHS核酸の少なくとも一部を含む植物において、アントシアニンの含有量を減少させる、ベクター。 請求項2に記載の前記改変されたCHS核酸の少なくとも一部を含むベクターで形質転換された細胞の少なくとも1つを含むトランスジェニック被子植物であって、ここで、該植物が、減少した量のアントシアニンを有する、被子植物。 請求項3に記載の前記改変されたCHS核酸の少なくとも一部を含むベクターで形質転換された細胞の少なくとも1つを含むトランスジェニック被子植物であって、ここで、該植物が、減少した量のアントシアニンを有する、被子植物。 請求項4に記載の前記改変されたCHS核酸の少なくとも一部を含むベクターで形質転換された細胞の少なくとも1つを含むトランスジェニック被子植物であって、ここで、該植物が、減少した量のアントシアニンを有する、被子植物。 減少したアントシアニンの含有量によって特徴付けられる表現型を有するトランスジェニック植物を生成するための方法であって、以下の工程:i)前記改変されたCHS核酸の少なくとも一部を含むベクターで植物細胞を形質転換する工程;ii)該形質転換された植物細胞の1つ以上から植物を再生する工程;およびiii)減少した含有量のアントシアニンを有する少なくとも1つの植物を選択する工程、の少なくとも1つを含む、方法。 請求項11に記載の方法に従って生成された、トランスジェニック被子植物。 【課題】改変されたMazus CHSを提供すること。このMazus CHSは、Mazus CHSの165番目のアミノ酸でシステインの代わりにアラニンを有し、かつMazus CHSの138番目のアミノ酸でメチオニンの代わりにグリシンまたはリジンのいずれかを有する、改変されたカルコンシンターゼをコードする。植物体における減少したアントシアニンの含有量によって特徴付けられる表現型を付与する改変されたMazus CHSを発現するトランスジェニック植物体を提供すること。【解決手段】特定のアミノ酸配列を有するカルコンシンターゼをコードする、単離された特定の塩基配列を有するMazusカルコンシンターゼ(CHS)核酸。【選択図】なし