生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_アンギオテンシン変換酵素阻害ペプチド
出願番号:2002226829
年次:2004
IPC分類:7,C07K7/06,C07K5/062,C07K5/09,C12N9/99,C12P21/06


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片山 員典 府中 英孝 杉山 雅昭 河村 幸雄 六車 三治男 JP 2004067553 公開特許公報(A) 20040304 2002226829 20020805 アンギオテンシン変換酵素阻害ペプチド 丸大食品株式会社 591105801 三枝 英二 100065215 掛樋 悠路 100076510 小原 健志 100086427 中川 博司 100090066 舘 泰光 100094101 斎藤 健治 100099988 藤井 淳 100105821 関 仁士 100099911 中野 睦子 100108084 片山 員典 府中 英孝 杉山 雅昭 河村 幸雄 六車 三治男 7 C07K7/06 C07K5/062 C07K5/09 C12N9/99 C12P21/06 JP C07K7/06 C07K5/062 C07K5/09 C12N9/99 C12P21/06 4 OL 8 特許法第30条第1項適用申請有り 平成14年3月20日 社団法人日本畜産学会発行の「日本畜産学会 第100回大会 講演要旨」に発表 4B064 4H045 4B064AG21 4B064CA21 4B064CB06 4B064DA01 4H045AA10 4H045AA20 4H045BA11 4H045BA12 4H045BA13 4H045BA14 4H045BA15 4H045CA40 4H045DA57 4H045DA75 4H045EA23 4H045FA33 4H045FA70 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、アンギオテンシン変換酵素阻害剤等として有用なペプチドに関する。【0002】【従来の技術】アンギオテンシン変換酵素(ACE)は主にヒトの血管の内皮細胞、肺、腎臓及び脳に存在する。この酵素は、血管の収縮を引き起こし、血圧を上昇させるために、C末端から2つのアミノ酸(His−Leu)を切断することにより、不活性なアンギオテンシンIを活性なアンギオテンシンIIに変換し得る。したがって、ACEは血圧を上昇させることができる。【0003】アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACEI)のACEへの結合はアンギオテンシンIIの生成を減少し得る。ACEIを食品に加えると、高血圧症状を減少させるのにプラスの効果を引き起こすであろう。現在のところ、多くのペプチドがACEの阻害についての効果を有することが知られている。それらは異なったアミノ酸配列と長さを有する。【0004】【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、豚肉由来の機能性成分として、高血圧予防効果が期待されるアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害ペプチドを提供することを主な課題とする。【0005】【課題を解決するための手段】本発明は、豚肉由来の新規なアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害ペプチドを見出した。【0006】本発明は、以下の項1〜4の活性ペプチド、並びにアンギオテンシン変換酵素阻害剤およびその製造法に関する。項1. 以下の2種の少なくとも1種からなるポリペプチド:Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro−Thr−Lys;及びArg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro。項2. 以下の7種の少なくとも1種からなるアンギオテンシン変換酵素阻害剤:Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro−Thr−Lys;Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro−Thr;Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro;Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr;Arg−Met−Leu;Thr−Pro;及びThr−Lys。項3. トロポニンをペプシンで加水分解することを特徴とするアンギオテンシン変換酵素阻害剤の製造法。項4. アンギオテンシン変換酵素阻害剤がArg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro−Thr−Lysである項3の製造法。【0007】【発明の実施の形態】本発明は、豚肉由来の機能性成分として、高血圧予防効果が期待されるアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害ペプチドに関する。【0008】本発明において、豚肉由来のタンパク質から抽出することができる粗精製トロポニンをペプシンで加水分解すると、ACE阻害活性を有するペプチドArg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro−Thr−Lys(RMLGQTPTK、以下9merと言う)が生成することが見出された。このペプチドは、骨格筋トロポニンC(Lorkin PA & Lehmann H, FEBS Letter, 153: 81−87,1983)の44−52位由来である。【0009】9merの部分構造ペプチドであるArg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro(RMLGQTP、以下7merと言う)、Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr(RMLGQT)、Arg−Met−Leu(RML)、Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro−Thr(RMLGQTPT)、Thr−Pro(TP)及びThr−Lys(TK)もACE阻害活性を有することが分かった。【0010】本発明のペプチド9merは豚肉由来のタンパク質から抽出した粗精製トロポニンをペプシンで加水分解することによって得られる。また、ペプチド9merの部分構造ペプチドは、Fmoc固相合成などの公知の方法に従い合成できる。【0011】本発明のペプチド9merは、粗精製トロポニンのペプシン加水分解生成物を、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、逆相HPLCなどを組み合わせて精製することにより得られる。【0012】本発明のACE阻害ペプチドは、ウサギ肺由来及びウシ肺由来のACEに対して阻害活性を有する。【0013】下記実施例において、より具体的に本発明を説明する。【0014】【実施例】以下実施例において測定されたACEに対する50%阻害活性(IC50)は、ウシ肺由来のACEに対するもので、Cushman −Cheungの方法(Biochemical Pharmacology, 20: 1637−1648, 1971)で測定した。【0015】実施例1国産の豚ロース肉から抽出した粗精製トロポニンをペプシンで加水分解した。この粗精製トロポニンのペプシン加水分解物のウシ肺由来のACEに対する50%阻害活性(IC50)は225g/mlであった。未加水分解トロポニンにはACE阻害活性が認められなかったことから、活性の発現はペプシン分解で生じたペプチドに由来することが分かった。【0016】該加水分解物をまず、DE53カラム(Whatman International Ltd., Kent, UK) (16 x 150 mm)を用いる陰イオン交換クロマトグラフィーに供した。すなわち、20mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(酢酸でpH 7.5に調整したもの)で該加水分解物をアプライし、同バッファーを含むNaCl水溶液によるグラジェント(0−300 mM)溶出を行った。流速は1.13 ml/分とし、7分毎(7.91 ml)に分画した。この画分をSEP−PAK Plus C18カートリッジ(Waters Co., Milford, MA, USA)を用いて脱塩し、吸着画分を50%アセトニトリルで溶出させて得られた画分を濃縮して、その活性を測定した。ここで得られた活性画分をCosmosil 5C18 AR−II (4.5 x 150mm) (Nacalai Tesque Inc., Kyoto Japan)を用いる逆相(RP)−HPLCに供し、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含むアセトニトリルの1−80%のグラジェント溶出(流速0.5ml/分)で分画した。活性画分はさらに、同じカラムで0.1%TFAを含む14%アセトニトリルでイソクラティック溶出(流速0.5ml/分)した。RP−HPLCで得られた活性画分をTSK−gel G2000SWXL (7.8 x 300mm) (Tosoh Co., Tokyo, Japan) を用いるゲル濾過HPLCに供して、20 mMリン酸Na緩衝液(pH 7.0)でイソクラティック溶出(流速0.5ml/分)した。最後に、活性画分をCosmosil 5PE−MS (4.6 x 250mm) (Nacalai Tesque)を用いるRP−HPLCに供し、0.1%TFAを含む12%アセトニトリルでイソクラティック溶出(流速1ml/分)した。いずれの場合も、215nmの吸光度をモニターした。【0017】精製で得られた画分のアミノ酸配列を、プロテインシーケンサー(PPSQ−10, Shimadzu Co., Kyoto, Japan)でシーケンス解析した。得られたペプチドは骨格筋トロポニンCの44位から52位にあたるRMLGQTPTK(9mer)であると認められた。これはこれまでに報告のない、新規なACE阻害ペプチドであった。9merのACE阻害活性は34M(35μg/ml)であった。【0018】実施例2:9merの部分構造ペプチドの合成9merの部分構造ペプチドであるRMLGQTPT 、RMLGQTP(7mer)、RMLGQT、RMLG、RML、RM、ML、LG、GQ、QT、TP、PT、TK、PTK及びTPTKをFmoc固相合成法で合成した。これら合成ペプチドのIC50、分子量、及びRP−HPLC(Cosmosil 5C18 AR−II (4.5 x 150mm) (Nacalai Tesque)で0.1% TFAを含むアセトニトリルの1−30%のグラジェント溶出(流速1ml/min))の保持時間(RT)を表1に示す。また、9merのデータも表1に示す。【0019】【表1】【0020】実施例3:アンギオテンシン変換酵素との反応性Fujitaら(Journal of Food Science, 65: 564−569, 2000)の方法を参考にして、ペプチド合成した9merおよび7mer(1mg/ml)をそれぞれ、ウシ肺由来ACE(20 mU/ml)と混合し、37℃で20時間まで反応させた。バッファー条件は、通常のACE阻害活性測定と同様とした。反応終了後は、95℃で20分加熱してACEを失活させた。Cosmosil 5C18 AR−II (4.5 x 150mm) (Nacalai Tesque)を用いるRP−HPLCに供し、0.1% TFAを含むアセトニトリルの1−30%のグラジェント溶出(流速0.5ml/min)で分画して分解程度を分析した。また、ACEによる分解産物の同定は、HPLC溶出時間を合成ペプチドと比較することで行った。ペプチド濃度はHPLCピーク面積で算出した。【0021】その結果を図1に示す。9merは経時的にゆっくりとACEにより加水分解され、反応60分後には63%の基質が残存していることが示された。一方、7merはACEにより速やかに分解されており、60分後には19%の基質残存率であった。7merのC末端ジペプチドTP、さらにその次のジペプチドGQは急速に遊離していることが認められた。【0022】これらの結果から、9merではC末端ジペプチドTKが遊離しにくいために、その後のTPやGQの遊離速度が抑えられているものと考えられた。すなわち、7merはACEの非常に優れた基質である一方、9merはACEによる分解を比較的受けにくい基質であることが分かった。【0023】実施例4:消化酵素耐性経口で摂取したときの有効性を評価するために、消化酵素に対する耐性を検討した。【0024】9merの合成品(1 mg/ml)を、それぞれa−キモトリプシン、ペプシン、及びトリプシンと、基質:酵素比100:1で反応させた。バッファーは10 mM トリス−HCl (pH7.5)を使用し、37℃で6時間分解した。反応終了後は、95℃、20分間加熱して酵素を失活させた。Cosmosil 5C18 AR−II (4.5 x 150mm) (Nacalai Tesque)を用いるRP−HPLCに供し、0.1% TFAを含む14%アセトニトリルでイソクラティック溶出(流速0.5ml/min)で分画して分解程度を分析した。ペプチド濃度はHPLCピーク面積で算出した。【0025】その結果を表2に示す。37℃、6時間の反応にも関わらず、いずれの酵素でも基質残存率が高く、ペプシンおよびキモトリプシンでは75%、トリプシンでは86%の基質が残存していた。【0026】分解物全体のACE阻害活性を測定したところ、未分解ペプチドの活性に近い32−38g/mlのIC50を示し、ACE阻害活性に対する分解産物の寄与率が低いことが分かった(表2)。【0027】【表2】【0028】【発明の効果】本発明により、豚肉タンパク質由来の新規なアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害ペプチドを提供することができる。【0029】9merは有原らが報告したミオシン由来ペプチド(Meat Science, 57: 319−324,2001)よりも強いACE阻害活性を示し、7merは同等の活性だった。これまでに報告されている動物筋肉食品由来のACE阻害ペプチドは、構造タンパク質であるミオシンやアクチンおよび水溶性タンパク質から見出されていた。本発明のペプチドは、調節タンパク質から見出された初めての例である。【0030】ACE阻害活性が比較的強い9merがACEによる加水分解を受けにくいということは、その活性を失いにくいことを意味しており、短期的に有効なACE阻害剤としての利用が期待される。【0031】9merのACE阻害活性に対する分解産物の寄与率が低いことから、9merペプチドは消化酵素に対する耐性が比較的高く、経口投与した際に消化管中で消化されにくい可能性が示唆され、インヴィボでの有効性が期待される。【0032】一般的にジペプチドもしくはトリペプチドなどの小さなペプチドのみが、腸管から吸収される(Adibi et al. Clinical research, 17: 376, 1969) とされているが、一方では、Pappenheimer et al. (Proceedings of the National Academyof Sciences of the United States of America, 91: 1942−1945, 1994) はオクタペプチドがparacellularlyに腸管から吸収されることを示している。Shimizu et al. (Peptides, 18: 681−687, 1997) は疎水性ノナペプチドが経細胞輸送により上皮細胞を通過することを明らかにしている。さらにSatake et al. (Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 66: 378−384, 2002)は消化酵素に対する耐性が高く腸管内に長時間滞留するペプチドの場合は、なんらかのトランスポート機能を利用して吸収される可能性を示唆している。これらのことから、本発明による消化耐性のある新規ACE阻害ペプチド9merも腸管から吸収される可能性があると考えられる。すなわち、9merが腸管から吸収されて、ACE阻害剤として有効に機能する可能性が期待される。【図面の簡単な説明】【図1】図1は、実施例3のACEとペプチド 9mer(a)及び7mer(b)の反応における、反応時間とペプチド濃度の関係を表すグラフである。 以下の2種の少なくとも1種からなるポリペプチド:Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro−Thr−Lys;及びArg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro。 以下の7種の少なくとも1種からなるアンギオテンシン変換酵素阻害剤:Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro−Thr−Lys;Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro−Thr;Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro;Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr;Arg−Met−Leu;Thr−Pro;及びThr−Lys。 トロポニンをペプシンで加水分解することを特徴とするアンギオテンシン変換酵素阻害剤の製造法。 アンギオテンシン変換酵素阻害剤がArg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro−Thr−Lysである請求項3の製造法。 【課題】本発明の課題は、豚肉由来の機能性成分として、高血圧予防効果が期待されるアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害ペプチドを提供することである。【解決手段】豚肉由来のタンパク質から抽出した粗精製トロポニンをペプシンで加水分解し、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害ペプチドを得る。【選択図】 なし


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特許公報(B2)_アンギオテンシン変換酵素阻害ペプチド

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タイトル:特許公報(B2)_アンギオテンシン変換酵素阻害ペプチド
出願番号:2002226829
年次:2008
IPC分類:C07K 7/06,C07K 5/09,C12N 9/99,C12P 21/06,A61K 38/55


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片山 員典 府中 英孝 杉山 雅昭 河村 幸雄 六車 三治男 JP 4106539 特許公報(B2) 20080411 2002226829 20020805 アンギオテンシン変換酵素阻害ペプチド 丸大食品株式会社 591105801 三枝 英二 100065215 中野 睦子 100108084 林 雅仁 100115484 片山 員典 府中 英孝 杉山 雅昭 河村 幸雄 六車 三治男 20080625 C07K 7/06 20060101AFI20080605BHJP C07K 5/09 20060101ALI20080605BHJP C12N 9/99 20060101ALI20080605BHJP C12P 21/06 20060101ALI20080605BHJP A61K 38/55 20060101ALN20080605BHJP JPC07K7/06C07K5/09C12N9/99C12P21/06A61K37/64 C07K 7/06 REGISTRY/CAplus(STN) PubMed 特開2001−261698(JP,A) 特開平04−120093(JP,A) 特開2001−233898(JP,A) 3 2004067553 20040304 7 20050415 特許法第30条第1項適用 2002年3月30日武蔵野スイングホールにおいて開催された第100回日本畜産学会大会で発表 深草 亜子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、アンギオテンシン変換酵素阻害剤等として有用なペプチドに関する。【0002】【従来の技術】アンギオテンシン変換酵素(ACE)は主にヒトの血管の内皮細胞、肺、腎臓及び脳に存在する。この酵素は、血管の収縮を引き起こし、血圧を上昇させるために、C末端から2つのアミノ酸(His−Leu)を切断することにより、不活性なアンギオテンシンIを活性なアンギオテンシンIIに変換し得る。したがって、ACEは血圧を上昇させることができる。【0003】アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACEI)のACEへの結合はアンギオテンシンIIの生成を減少し得る。ACEIを食品に加えると、高血圧症状を減少させるのにプラスの効果を引き起こすであろう。現在のところ、多くのペプチドがACEの阻害についての効果を有することが知られている。それらは異なったアミノ酸配列と長さを有する。【0004】【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、豚肉由来の機能性成分として、高血圧予防効果が期待されるアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害ペプチドを提供することを主な課題とする。【0005】【課題を解決するための手段】本発明は、豚肉由来の新規なアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害ペプチドを見出した。【0006】本発明は、以下の項1〜4の活性ペプチド、並びにアンギオテンシン変換酵素阻害剤およびその製造法に関する。項1. 以下の2種の少なくとも1種からなるポリペプチド:Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro−Thr−Lys;及びArg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro。項2. 以下の7種の少なくとも1種からなるアンギオテンシン変換酵素阻害剤:Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro−Thr−Lys;Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro−Thr;Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro;Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr;Arg−Met−Leu;Thr−Pro;及びThr−Lys。項3. トロポニンをペプシンで加水分解することを特徴とするアンギオテンシン変換酵素阻害剤の製造法。項4. アンギオテンシン変換酵素阻害剤がArg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro−Thr−Lysである項3の製造法。【0007】【発明の実施の形態】本発明は、豚肉由来の機能性成分として、高血圧予防効果が期待されるアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害ペプチドに関する。【0008】本発明において、豚肉由来のタンパク質から抽出することができる粗精製トロポニンをペプシンで加水分解すると、ACE阻害活性を有するペプチドArg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro−Thr−Lys(RMLGQTPTK、以下9merと言う)が生成することが見出された。このペプチドは、骨格筋トロポニンC(Lorkin PA & Lehmann H, FEBS Letter, 153: 81-87,1983)の44-52位由来である。【0009】9merの部分構造ペプチドであるArg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro(RMLGQTP、以下7merと言う)、Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr(RMLGQT)、Arg−Met−Leu(RML)、Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro−Thr(RMLGQTPT)、Thr−Pro(TP)及びThr−Lys(TK)もACE阻害活性を有することが分かった。【0010】本発明のペプチド9merは豚肉由来のタンパク質から抽出した粗精製トロポニンをペプシンで加水分解することによって得られる。また、ペプチド9merの部分構造ペプチドは、Fmoc固相合成などの公知の方法に従い合成できる。【0011】本発明のペプチド9merは、粗精製トロポニンのペプシン加水分解生成物を、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、逆相HPLCなどを組み合わせて精製することにより得られる。【0012】本発明のACE阻害ペプチドは、ウサギ肺由来及びウシ肺由来のACEに対して阻害活性を有する。【0013】下記実施例において、より具体的に本発明を説明する。【0014】【実施例】以下実施例において測定されたACEに対する50%阻害活性(IC50)は、ウシ肺由来のACEに対するもので、Cushman -Cheungの方法(Biochemical Pharmacology, 20: 1637-1648, 1971)で測定した。【0015】実施例1国産の豚ロース肉から抽出した粗精製トロポニンをペプシンで加水分解した。この粗精製トロポニンのペプシン加水分解物のウシ肺由来のACEに対する50%阻害活性(IC50)は225g/mlであった。未加水分解トロポニンにはACE阻害活性が認められなかったことから、活性の発現はペプシン分解で生じたペプチドに由来することが分かった。【0016】該加水分解物をまず、DE53カラム(Whatman International Ltd., Kent, UK) (16 x 150 mm)を用いる陰イオン交換クロマトグラフィーに供した。すなわち、20 mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(酢酸でpH 7.5に調整したもの)で該加水分解物をアプライし、同バッファーを含むNaCl水溶液によるグラジェント(0-300 mM)溶出を行った。流速は1.13 ml/分とし、7分毎(7.91 ml)に分画した。この画分をSEP-PAK Plus C18カートリッジ(Waters Co., Milford, MA, USA)を用いて脱塩し、吸着画分を50%アセトニトリルで溶出させて得られた画分を濃縮して、その活性を測定した。ここで得られた活性画分をCosmosil 5C18 AR-II (4.5 x 150mm) (Nacalai Tesque Inc., Kyoto Japan)を用いる逆相(RP)-HPLCに供し、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含むアセトニトリルの1-80%のグラジェント溶出(流速0.5ml/分)で分画した。活性画分はさらに、同じカラムで0.1%TFAを含む14%アセトニトリルでイソクラティック溶出(流速0.5ml/分)した。RP-HPLCで得られた活性画分をTSK-gel G2000SWXL (7.8 x 300mm) (Tosoh Co., Tokyo, Japan) を用いるゲル濾過HPLCに供して、20 mMリン酸Na緩衝液(pH 7.0)でイソクラティック溶出(流速0.5ml/分)した。最後に、活性画分をCosmosil 5PE-MS (4.6 x 250mm) (Nacalai Tesque)を用いるRP-HPLCに供し、0.1%TFAを含む12%アセトニトリルでイソクラティック溶出(流速1ml/分)した。いずれの場合も、215nmの吸光度をモニターした。【0017】精製で得られた画分のアミノ酸配列を、プロテインシーケンサー(PPSQ-10, Shimadzu Co., Kyoto, Japan)でシーケンス解析した。得られたペプチドは骨格筋トロポニンCの44位から52位にあたるRMLGQTPTK(9mer)であると認められた。これはこれまでに報告のない、新規なACE阻害ペプチドであった。9merのACE阻害活性は34M(35μg/ml)であった。【0018】実施例2:9merの部分構造ペプチドの合成9merの部分構造ペプチドであるRMLGQTPT 、RMLGQTP(7mer)、RMLGQT、RMLG、RML、RM、ML、LG、GQ、QT、TP、PT、TK、PTK及びTPTKをFmoc固相合成法で合成した。これら合成ペプチドのIC50、分子量、及びRP-HPLC(Cosmosil 5C18 AR-II (4.5 x 150mm) (Nacalai Tesque)で0.1% TFAを含むアセトニトリルの1-30%のグラジェント溶出(流速1ml/min))の保持時間(RT)を表1に示す。また、9merのデータも表1に示す。【0019】【表1】【0020】実施例3:アンギオテンシン変換酵素との反応性Fujitaら(Journal of Food Science, 65: 564-569, 2000)の方法を参考にして、ペプチド合成した9merおよび7mer(1mg/ml)をそれぞれ、ウシ肺由来ACE(20 mU/ml)と混合し、37℃で20時間まで反応させた。バッファー条件は、通常のACE阻害活性測定と同様とした。反応終了後は、95℃で20分加熱してACEを失活させた。Cosmosil 5C18 AR-II (4.5 x 150mm) (Nacalai Tesque)を用いるRP-HPLCに供し、0.1% TFAを含むアセトニトリルの1-30%のグラジェント溶出(流速0.5ml/min)で分画して分解程度を分析した。また、ACEによる分解産物の同定は、HPLC溶出時間を合成ペプチドと比較することで行った。ペプチド濃度はHPLCピーク面積で算出した。【0021】その結果を図1に示す。9merは経時的にゆっくりとACEにより加水分解され、反応60分後には63%の基質が残存していることが示された。一方、7merはACEにより速やかに分解されており、60分後には19%の基質残存率であった。7merのC末端ジペプチドTP、さらにその次のジペプチドGQは急速に遊離していることが認められた。【0022】これらの結果から、9merではC末端ジペプチドTKが遊離しにくいために、その後のTPやGQの遊離速度が抑えられているものと考えられた。すなわち、7merはACEの非常に優れた基質である一方、9merはACEによる分解を比較的受けにくい基質であることが分かった。【0023】実施例4:消化酵素耐性経口で摂取したときの有効性を評価するために、消化酵素に対する耐性を検討した。【0024】9merの合成品(1 mg/ml)を、それぞれa-キモトリプシン、ペプシン、及びトリプシンと、基質:酵素比100:1で反応させた。バッファーは10 mM トリス-HCl (pH7.5)を使用し、37℃で6時間分解した。反応終了後は、95℃、20分間加熱して酵素を失活させた。Cosmosil 5C18 AR-II (4.5 x 150mm) (Nacalai Tesque)を用いるRP-HPLCに供し、0.1% TFAを含む14%アセトニトリルでイソクラティック溶出(流速0.5ml/min)で分画して分解程度を分析した。ペプチド濃度はHPLCピーク面積で算出した。【0025】その結果を表2に示す。37℃、6時間の反応にも関わらず、いずれの酵素でも基質残存率が高く、ペプシンおよびキモトリプシンでは75%、トリプシンでは86%の基質が残存していた。【0026】分解物全体のACE阻害活性を測定したところ、未分解ペプチドの活性に近い32-38g/mlのIC50を示し、ACE阻害活性に対する分解産物の寄与率が低いことが分かった(表2)。【0027】【表2】【0028】【発明の効果】本発明により、豚肉タンパク質由来の新規なアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害ペプチドを提供することができる。【0029】9merは有原らが報告したミオシン由来ペプチド(Meat Science, 57: 319-324, 2001)よりも強いACE阻害活性を示し、7merは同等の活性だった。これまでに報告されている動物筋肉食品由来のACE阻害ペプチドは、構造タンパク質であるミオシンやアクチンおよび水溶性タンパク質から見出されていた。本発明のペプチドは、調節タンパク質から見出された初めての例である。【0030】ACE阻害活性が比較的強い9merがACEによる加水分解を受けにくいということは、その活性を失いにくいことを意味しており、短期的に有効なACE阻害剤としての利用が期待される。【0031】9merのACE阻害活性に対する分解産物の寄与率が低いことから、9merペプチドは消化酵素に対する耐性が比較的高く、経口投与した際に消化管中で消化されにくい可能性が示唆され、インヴィボでの有効性が期待される。【0032】一般的にジペプチドもしくはトリペプチドなどの小さなペプチドのみが、腸管から吸収される(Adibi et al. Clinical research, 17: 376, 1969) とされているが、一方では、Pappenheimer et al. (Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 91: 1942-1945, 1994) はオクタペプチドがparacellularlyに腸管から吸収されることを示している。Shimizu et al. (Peptides, 18: 681-687, 1997) は疎水性ノナペプチドが経細胞輸送により上皮細胞を通過することを明らかにしている。さらにSatake et al. (Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 66: 378-384, 2002)は消化酵素に対する耐性が高く腸管内に長時間滞留するペプチドの場合は、なんらかのトランスポート機能を利用して吸収される可能性を示唆している。これらのことから、本発明による消化耐性のある新規ACE阻害ペプチド9merも腸管から吸収される可能性があると考えられる。すなわち、9merが腸管から吸収されて、ACE阻害剤として有効に機能する可能性が期待される。【図面の簡単な説明】【図1】図1は、実施例3のACEとペプチド 9mer(a)及び7mer(b)の反応における、反応時間とペプチド濃度の関係を表すグラフである。 以下の2種の少なくとも1種からなるポリペプチド:Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro−Thr−Lys;及びArg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro。 以下の5種の少なくとも1種からなるアンギオテンシン変換酵素阻害剤:Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro−Thr−Lys;Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro−Thr;Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro;Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr;及びArg−Met−Leu。 トロポニンをペプシンで加水分解する工程、及び該加水分解物を精製してアンギオテンシン変換酵素阻害活性のあるペプチドを単離する工程を有することを特徴とするアンギオテンシン変換酵素阻害剤Arg−Met−Leu−Gly−Gln−Thr−Pro−Thr−Lysの製造法。


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