生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを含有する癒着防止材
出願番号:2002210461
年次:2004
IPC分類:7,A61K31/717,A61K9/10,A61K9/14,A61K9/70,A61K31/722,A61K31/728,A61K31/734,A61K31/765,A61P41/00


特許情報キャッシュ

梅田 俊彦 宮田 喜明 高橋 浩一 JP 2004051531 公開特許公報(A) 20040219 2002210461 20020719 水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを含有する癒着防止材 電気化学工業株式会社 000003296 梅田 俊彦 宮田 喜明 高橋 浩一 7 A61K31/717 A61K9/10 A61K9/14 A61K9/70 A61K31/722 A61K31/728 A61K31/734 A61K31/765 A61P41/00 JP A61K31/717 A61K9/10 A61K9/14 A61K9/70 A61K31/722 A61K31/728 A61K31/734 A61K31/765 A61P41/00 4 OL 17 4C076 4C086 4C076AA22 4C076AA30 4C076AA71 4C076BB21 4C076CC37 4C076FF01 4C076FF68 4C086AA01 4C086EA20 4C086EA21 4C086EA23 4C086MA01 4C086MA02 4C086MA04 4C086MA23 4C086MA32 4C086MA43 4C086NA05 4C086NA10 4C086ZC54 【0001】【発明の属する技術分野】組織治癒を補助・促進するために用いる特定の溶解性半減期である水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを含有する癒着防止材に関する。【0002】【従来の技術】セルロースを水に可溶性としたセルロース誘導体として、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース等が知られている。その中でカルボキシメチル基が導入されたカルボキシメチルセルロース(以後、一般的呼称に準じてカルボキシメチルセルロースはカルボキシメチルセルロースナトリウムを指す)は代表的なものであり、その増粘剤としての機能に加え、分散性,保型性,耐酵素性,耐酸性,ゲル化等の機能を有することから、食品分野や医薬化粧品,飼料,繊維等で広く利用されている。【0003】医療分野へのカルボキシメチルセルロースの応用に関しては、カルボキシメチルセルロース水溶液やそれを乾燥させて成形したものを用いた癒着防止材としての効果確認に関する報告がなされているが、十分な効果は得られていない(American Journal of Surgery, Vol. 169, 154−159(1995))。特開平1−301624号や米国特許第5906997号等には化学的架橋剤又は化学的修飾剤を用いたカルボキシメチルセルロース組成物の癒着防止材が開示されており、また特表平5−508161号、特表平6−508169号を基に開発されたヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースをカルボジイミドで修飾したものからなる組成物でフィルム状の癒着防止剤「セプラフィルム」(Genzyme社製)が市販されている。一方架橋剤又は修飾剤を用いない、すなわち実質的に改質されていないカルボキシメチルセルロースを癒着防止材に用いる例は米国特許第 5,906,997号,同第6,017,301号や同第6,034,140号、国際公開特許第01/34214号に開示されている。【0004】体表面に適用する創傷被覆剤について見てみると、特開平11−322615号にはカルボキシメチルセルロースとフィブリン、特開平7−109220号にはカルボキシメチルセルロースと各種消毒剤、独国特許第1397893号にはカルボキシメチルセルロースと抗炎症剤からなる創傷治癒剤が開示されている。また、特表平8−505258号や欧州特許第47647号では架橋されたカルボキシメチルセルロースを用いた創傷被覆剤が開示されている。これらはいずれも可溶性であるカルボキシメチルセルロース又は化学的架橋剤等で架橋されたカルボキシメチルセルロースを用いており、癒着防止材への適用を試みた場合にもその安全性が懸念されていた。【0005】癒着は6つのステップにより形成されると考えられている(人工臓器, 1994−95, 282−285)。すなわち、まず開腹手術等による損傷や炎症などによる異常をきたした部位へ体液,血液等の漏出が起き、フィブリノーゲンが滲出してフィブリンが形成されフィブリン網が形成される。この過程は分単位で進行する。次に時間単位でこのフィブリン網に白血球等の炎症細胞、マクロファージ、線維芽細胞が侵入し、これらの細胞から出される種々の酵素によりフィブリン網が溶解される。続いてこれらの細胞が出す種々の成長因子により繊維芽細胞の侵入が活発となり、細胞周囲のフィブリン網がコラーゲン繊維に置換される。この過程は日単位で進行するが、癒着組織の基本的構造が形成されるために不可逆的なものとなる。さらに週単位で複雑なコラーゲン走行の構築を持つ細胞線維性組織が形成され、これらの細胞の栄養要求性のために無数の毛細血管が侵入し、肉芽組織が形成される。その後月単位で一部の組織は創傷治癒の過程をたどるが、残存する組織はコラーゲン組織が大半を占めることになり、非常に強固な、丈夫な組織である瘢痕組織と称される状態となる。そして年単位で瘢痕組織のコラーゲン量の減少により周囲組織に ”引きつり” 現象を生じさせることになる。【0006】癒着を防止するためには癒着する可能性のある組織,器官の間隙を隔絶させておくこと、上述の不可逆的状態に進む前の段階でフィブリン析出,細胞侵入,コラーゲン繊維産出などの過程を抑えること、位置的に癒着しそうな組織をたびたび動かして接触状態を維持させないことなどが考えられる。一般に漿膜損傷後の中皮細胞再生には5〜8日間必要とされており、この期間損傷を受けた組織と周辺組織とを物理的に隔離して接触を遮断すれば、癒着の形成を防止・軽減することが期待できる。一方整形外科領域での手術により組織が損傷を受けた場合にも同様に、一定期間損傷部位と他の組織とを隔離することにより癒着を防止することができる。【0007】癒着は組織修復という生理的現象の一つであるため、癒着を希望しない部位のみの癒着を防止することが必要である。そのためには癒着する可能性のある組織、器官の間隙を隔絶させておくことが望ましい。これまで、例えばカルボキシメチルセルロースの粘弾性等の材料特性を向上させるために特開平10−251447号記載のグリオキサールによる化学架橋カルボキシメチルセルロース、特開昭63−37143号記載の多価金属イオンとの混合をおこなったカルボキシメチルセルロースゲル、特開平7−090121号記載の二価、又は三価金属塩によるカルボキシメチルセルロースゲル、さらには特開平11−106561号記載の塩基性酢酸アルミニウムの添加によるカルボキシメチルセルロースゲルなどが考案されている。しかし、こうした修飾カルボキシメチルセルロースは、化学架橋剤の使用や金属イオンが添加がされており、医療品として用いる場合には安全性の観点からこれらを含まない材料が望ましい。【0008】実質的に改質されていないカルボキシメチルセルロースを用いた癒着防止材としては、上述の米国特許5,906,997号、同6,017,301号や同6,034,140号に基づいて開発されたカルボキシメチルセルロースとポリエチレンオキサイドからなるフィルム状のオキシプレックス(Oxiplex;FizioMed 社)が市販されている。オキシプレックスはカルボキシメチルセルロースとポリエチレンオキサイド間の水素結合がその構造と考えられており、水素結合の数及び強さにより体内での貯留性が異なることが予想されるが、生体外すなわち in vitro での溶解性と癒着防止効果との関係は開示されていない。【0009】カルボキシメチルセルロースを水難溶性化する技術は特開昭58−104901号、特開昭54−36388号や特表昭55−500785号において既に公開されているが、これらの方法により得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを癒着防止材に適用した例、WO01/34214号に開示されている。【0010】一方、手術現場での医療用具の適用を見てみると、適用部位識別のために着色されているものが見受けられる。縫合糸はその代表的なものであり、例えばジョンソン・エンド・ジョンソン社のコーテッドバイクリルやサージカルシルクには紫色や黒色、青色といった着色がなされており、血液や体液の存在下でも縫合部位の識別を容易なものとしている。特表平3−502704号にはヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースをカルボジイミドで修飾しブリリアントブルーRで着色されたフィルムが開示されているが、市販されている癒着防止材で着色されているものは見あたらず適用部位の識別が容易なものが望まれていた。【0011】【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記目的を達成するために、カルボキシメチルセルロース自体の物理化学的性質と生体に対する効果を鋭意検討してきた。その結果、水難溶性化したカルボキシメチルセルロースの in vitro の溶解性と癒着防止に相関があることを見出した。さらにフィルム状以外の形状の物についても同様の相関があることを発見し本発明を完成させるに至った。また水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを着色することにより、本発明品の手術部位への適用状態の観察を容易なものとすることが可能となった。【0012】【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、(1)溶解性半減期が5時間〜30時間である水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを含有することを特徴とする癒着防止材、(2)更に、他の生体適合性高分子化合物を配合することを特徴とする(1)記載の癒着防止材、(3)水難溶性化したカルボキシメチルセルロースの形態がシート状、フィルム状、スポンジ状、紐状、懸濁液状、及び粉末状からなる群から選ばれた1種であることを特徴とする(1)又は(2)記載の癒着防止材、(4)癒着防止材の適用部位の識別を容易にするために着色されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項記載の癒着防止材である。【0013】【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する本発明でいう癒着防止材とは、生体内の粘膜、血管、骨、腱のような組織や胃あるいは腸のような消化器官、または子宮の表面に貼付したり体表付近に生じた創傷部位及びその周辺に留置することにより、外科的な手術により手術部位やその周辺等に生ずる癒着の程度を軽減あるいは癒着を防止するものを意味する。例えば、一般的な手術の際に引き起こされる外科的損傷、手術部位の縫合部、骨折やアキレス腱断裂等に見られる物理的損傷に対して適用することを指す。さらに体表あるいは体内に適用されるものであることから生体適合性のあるものであることを意味する。【0014】本発明に用いられるカルボキシメチルセルロースの分子量は、特に規定されるものではないが、約1×104 〜約5×105 ダルトンの範囲内のものが好ましい。また、上記範囲内の分子量をもつものであれば、より高分子量のものから、加水分解処理等をして得た低分子量のものでも同様に好ましく使用できる。また、カルボキシメチルセルロースのもうひとつのパラメーターであるエーテル化度については、水難溶性化が起こる範囲のものであればその利用に関し何ら制限されない。尚、本発明にいうカルボキシメチルセルロースは、そのアルカリ金属塩、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等の塩をも包含する概念で使用される。【0015】水難溶性化したカルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチルセルロースの酸性溶液の凍結・解凍を用いる方法、カルボキシメチルセルロース濃度を5質量%以上になるように酸溶液と混和し非凍結温度下で放置する方法、カルボキシメチルセルロースの酸性溶液を静置する方法、カルボキシメチルセルロースの酸性溶液と極性有機溶媒を混合する方法、陽イオン交換カラムにカルボキシメチルセルロースを通液させる方法、カルボキシメチルセルロースの酸性溶液を濃縮する方法等により得ることが可能である。このうち酸性溶液の凍結・解凍を用いる方法及び非凍結温度下で放置する方法は簡便で多量の水難溶性化したカルボキシメチルセルロースの取得が可能である。これらの方法では用いるカルボキシメチルセルロースの分子量、酸性溶液中のカルボキシメチルセルロース濃度、凍結時間あるいは放置時間等の条件を適宜選択することにより水難溶性化したカルボキシメチルセルロースの溶解率を制御することが可能であり、さらに得られる水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを種々の形態に形成しやすいという利点を有する。【0016】本発明で用いられるリン酸緩衝生理食塩水とは、水難溶性化したカルボキシメチルセルロースが生体に適用されることを考慮し、生体適合性のある溶液が好ましく、具体的には細胞培養の際に一般的に用いられるカリウム−ナトリウム系リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)が好ましい。【0017】本発明における水難溶性化したカルボキシメチルセルロースの溶解性半減期とは、水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを60℃のリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中に静置し、水難溶性化したカルボキシメチルセルロースから溶出したカルボキシメチルセルロースの量が水難溶性化したカルボキシメチルセルロース量の50%になるまでの時間のことである。溶解性半減期が短い場合には適用部位における貯留性が短く、癒着の形成ステップのうちの不可逆的状態に進む前の段階での組織あるいは器官の間隙の隔絶が困難となるため、癒着防止効果は期待できない。一方、溶解性半減期が長すぎる場合には、炎症細胞、マクロファージや繊維芽細胞が水難溶性化したカルボキシメチルセルロース組成物内に侵入し、癒着組織の基本的構造が形成される不可逆的状態を維持することになるため、逆に癒着形成を助長することとなる。【0018】好ましい癒着防止効果を得るための溶解性半減期は、好ましくは5時間以上であり、より好ましくは5時間〜30時間、更に好ましくは10時間〜20時間である。【0019】更に水難溶性化したカルボキシメチルセルロースに、他の生体適合性高分子合化物を配合して用いることも可能である。高分子化合物は、天然高分子化合物、合成高分子化合物、水溶性高分子化合物、非水溶性高分子化合物を問わず用いることができ、組織への炎症性や障害性等の有害作用を有さないものであれば何ら制限されるものではない。【0020】配合して用いられる高分子化合物の代表例としては、多糖類、蛋白質、核酸類、及び合成高分子類からなる群から選択されるがこれにより何ら制限されないものである。多糖類の例としては、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン類(ヘパリン、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸等)、コンドロイチン硫酸塩(コンドロイチン−6−硫酸等)、ケラチン硫酸塩、アルギン酸及びその生物学的に受容な塩、セルロース、キチン、キトサン、デキストラン、澱粉、アミロース、ポリ乳酸、カラギーナン等が挙げられる。【0021】また、蛋白質の例としては、コラーゲン、ゼラチン、アルブミン、エラスチン、種々のグロブリン、カゼイン、グルテン等、及びそれらの生物学的に受容な合成誘導体等が挙げられる。【0022】また、合成高分子の例としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリグルコール酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ乳酸、それらのコポリマー、及びアクリル酸もしくはメタクリル酸ポリ(ヒドロキシエチル)エステル、ポリアクリルアミド等、ポリビニルアルコール、マレイン酸やフマール酸のコポリマー等のような誘導体等が挙げられる。尚、本発明は、これらの高分子化合物に何ら制限されないものである。【0023】本発明の水難溶性化したカルボキシメチルセルロースの形態は、シート状、フィルム状、スポンジ状、糸状、懸濁液状、粉末状等で外科手術に用いることができる。用いられる形態としては、例えば内臓表面にシート状、フィルム状又はスポンジ状として直接貼付したり、懸濁液状又は粉末状として創傷表面及びその周辺に適用したりすることが好ましい。貼付する場合にはシート、フィルム又はスポンジの大きさは創傷の形状や大きさ等により適宜選択することができる。貼付が困難な平面の少ない組織に対しては懸濁液状又は粉末状がさらに有効である。また懸濁液状の水難溶性化したカルボキシメチルセルロースは注射器等で腹腔鏡手術に用いることができる。さらに手指における腱裂断時の手術の際には、これらの形状に加えて紐状とした水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを用いることが可能である。このように本発明で用いられる水難溶性化したカルボキシメチルセルロースは適用部位により形状を選択することができ、また複数の形状のものを組み合わせて使用しても何ら問題はない。【0024】次に、医療用具として必要な滅菌処理について述べる。カルボキシメチルセルロースの糖鎖構造は熱や放射線等に比較的安定であるために、水難溶性化したカルボキシメチルセルロースからなる組織被覆性医療材料にはγ線滅菌、電子線滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌、プラズマガス滅菌あるいはオートクレーブ滅菌などの種々の滅菌方法が採用できる。例えばシート状あるいはスポンジ状といった固形形状の水難溶性化したカルボキシメチルセルロースにはγ線滅菌やエチレンオキサイド滅菌等が有効であり、懸濁液状のような液体形状の水難溶性化したカルボキシメチルセルロースの場合にはオートクレーブ滅菌や乾熱滅菌を用いることができる。こうした滅菌という過酷な処理により水難溶性化したカルボキシメチルセルロースの in vitro での溶解性ひいては生体内貯留性が変化する現象が確認されるが、製造条件を変化させてあらかじめより安定な、すなわちより溶解性半減期の長い水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを製造しておき、滅菌処理後の生体内貯留性を制御することも可能である。【0025】本発明品を着色する場合には、非経口的に投与された場合での安全性が確認されている色素を用いることが必要である。例えば医薬品添加物事典(日本医薬品添加剤協会編集)に記載されているカンゾウエキス、三二酸化鉄、銅クロロフィリンナトリウム、パーマネントバイオレット−R−スペシャル、ベンガラ、薬用炭等による着色が可能であり、色については適用部位や適用方法によって任意に決められ何ら制限されるものではない。【0026】以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明はこれらにより限定されるものではない。【0027】実施例125℃での1%粘度が150〜250mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム(エーテル化度0.62〜0.68、換算分子量1.28×105〜1.35×105ダルトン、第一工業製薬社製)を蒸留水に1質量%になるように溶解した。こうして調製された水溶液のpHを1N硝酸で1.5に調整し、酸性水溶液15mlを30mlのポリスチレン製容器に入れ、−20℃に設定した冷凍庫に入れた。3日間静置した後、25℃で解凍した。その後水及び100mM濃度のリン酸緩衝液(pH6.8)により中和を行い、スポンジ状の水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを得た。【0028】実施例2実施例1における−20℃での静置期間を5日間とし、スポンジ状の水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを得た。【0029】実施例325℃での1%粘度1000〜2800mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム(エーテル化度0.65〜0.95、換算分子量約3.0×105ダルトン、ハーキュレス社製)を蒸留水に1質量%になるように溶解した。こうして調製された水溶液のpHを1N硝酸で1.5に調整し、酸性水溶液15mlを30mlのポリスチレン製容器に入れ、−20℃に設定した冷凍庫に入れた。1日間放置した後、25℃で解凍した。その後水及び100mM濃度のリン酸緩衝液(pH6.8)により中和を行い、スポンジ状の水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを得た。【0030】実施例4実施例3における−20℃での静置期間を3日間とし、スポンジ状の水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを得た。【0031】実施例5実施例1で用いたカルボキシメチルセルロースを20質量%になるように1N硝酸と室温で混和した後、3日間4℃の冷蔵庫で保管した。その後、水及び100mM濃度のリン酸緩衝液(pH6.8)により中和を行い、塊状の水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを得た。【0032】実施例6 水難溶性化したカルボキシメチルセルロースの溶解性試験次の組成からなるpH7.4のリン酸緩衝生理食塩水を調製した。リン酸緩衝生理食塩水塩化カリウム   0.02質量%リン酸一カリウム  0.02質量%リン酸二ナトリウム12水和物 0.29質量%塩化ナトリウム   0.81質量%得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを、乾燥重量で50mgのカルボキシメチルセルロースを含む水難溶性化したカルボキシメチルセルロースに対して50mlのリン酸緩衝生理食塩水の割合で、リン酸緩衝生理食塩水中に浸漬した。60℃の静置下でリン酸緩衝生理食塩水中に溶出するカルボキシメチルセルロースの割合を、リン酸緩衝生理的食塩水中のカルボキシメチルセルロース濃度から求めた。従って、中性の60℃の水溶液中での水難溶性化したカルボキシメチルセルロースの溶解性は、上記試験により規定されるものである。【0033】カルボキシメチルセルロース濃度の測定リン酸緩衝生理食塩水中のカルボキシメチルセルロースの濃度は、ゲルろ過クロマトグラフ法(GPC)を使って示差屈折率検出器のピーク面積から求めた。すなわち、経時的に採取したリン酸緩衝生理食塩水を0.45μmのフィルターでろ過後GPCに注入し、得られたピーク面積と既知量のCMCのピーク面積を比較することにより算出した。その結果を表1に示す。【0034】【表1】【0035】表1より、例えば、実験No.1の実施例1で得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースについては、カルボキシメチルセルロースの溶解率が3時間後では25質量%、5時間後では35質量%、10時間後では58質量%であった。すなわち3時間後においては75質量%が、5時間後においても65質量%が水難溶性化したカルボキシメチルセルロースとして残存していた。他の実施例で得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースについても同様であり、これらの溶解率より実施例1〜実施例5で得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースの溶解性半減期はそれぞれ約7時間、約12時間、約15時間、約18時間及び約8時間であった。【0036】さらに実験No.1と実験No.2の比較、実験No.3と実験No.4の比較からカルボキシメチルセルロースの分子量が同じ場合でも製造条件により溶解性半減期が制御できることが明らかとなった。また実験No.1と実験No.5の比較ではほぼ同等の溶解性半減期が得られており、異なる製造方法においても用いる条件により溶解性半減期を制御できることが判明した。【0037】実施例7実施例1で得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースに生理食塩水をカルボキシメチルセルロース濃度が1質量%となるように加えた後、マイクロホモジナイザー(NISSEI EXCEL AUTO HOMOGENIZAER)による破砕を行い、水難溶性化したカルボキシメチルセルロースのスラリーを得た。このスラリーを印刷用スクリーン上に展開し、約40℃での乾燥により水難溶性化したカルボキシメチルセルロース約2mg/cm2を含むフィルムとした。得られたフィルムの溶解性半減期は約6時間であった。【0038】実施例8実施例3で得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースに生理食塩水をカルボキシメチルセルロース濃度が1質量%となるように加えた後、マイクロホモジナイザー(NISSEI EXCEL AUTO HOMOGENIZAER)による破砕を行い、水難溶性化したカルボキシメチルセルロースのスラリーを得た。このスラリーを印刷用スクリーン上に展開し、約40℃での乾燥により水難溶性化したカルボキシメチルセルロース約2mg/cm2を含むフィルムとした。得られたフィルムの溶解性半減期は約13時間であった。【0039】比較例1実施例1において、−20℃での静置時間を変更し実施例6の溶解性試験で溶解性半減期が約3時間である水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを得た。得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースに生理食塩水をカルボキシメチルセルロース濃度が1質量%となるように加えた後、マイクロホモジナイザー(NISSEI EXCEL AUTO HOMOGENIZAER)による破砕を行い、水難溶性化したカルボキシメチルセルロースのスラリーを得た。このスラリーを印刷用スクリーン上に展開し、約40℃での乾燥により水難溶性化したカルボキシメチルセルロース約2mg/cm2を含むフィルムとした。得られたフィルムの溶解性半減期は約2時間であった。【0040】比較例2実施例3において、−20℃での静置時間を変更し実施例6の溶解性試験で溶解性半減期が約5時間である水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを得た。得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースに生理食塩水をカルボキシメチルセルロース濃度が1質量%となるように加えた後、マイクロホモジナイザー(NISSEI EXCEL AUTO HOMOGENIZAER)による破砕を行い、水難溶性化したカルボキシメチルセルロースのスラリーを得た。このスラリーを印刷用スクリーン上に展開し、約40℃での乾燥により水難溶性化したカルボキシメチルセルロース約2mg/cm2を含むフィルムとした。得られたフィルムの溶解性半減期は約4時間であった。【0041】実施例9 ラット盲腸擦過モデルのおける癒着防止試験癒着誘導法ラット(SD、メス、9週齢以上)に麻酔剤(ケラタン溶液)を筋注し麻酔後、仰向けに固定してイソジンにて腹部皮膚を消毒後、剪毛を行った。ラット腹筋を正中線に沿って開腹し、盲腸を腹腔内から取りだし、盲腸を有孔(φ16mm)ポリテトラフルオロエチレンシートで固定した。孔から露出した盲腸部分にガーゼをかぶせた回転棒(φ13mm)を押し当て約120回擦過した(片面2カ所)。擦過部に実施例7、実施例8、比較例1及び比較例2で得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロース約4cm×4cm片をあて、盲腸を元に戻して縫合を行った。また、癒着防止材を処置せず、そのまま盲腸を戻したものをコントロールとした。こうした処置はコントロールを含めた各実験で10〜16匹づつのラットを用いた。術後一週間程度で剖検し、以下の判定基準(Fertility and Sterility 66, 5, 814−821)によりスコアリングを行い、平均癒着スコアとして癒着防止効果を評価した。結果を表2に示す。<判定基準>0:癒着無し1:容易に確認できる面を持つフィルム状の癒着2:自由に剥離できる面を有する軽い癒着3:面の剥離が困難な中程度の癒着4:剥離不可能な面を有する密集した癒着【0042】【表2】【0043】表2より、溶解性半減期が約6時間及び約13時間である実施例7及び実施例8のフィルムでは、コントロールと比較して癒着スコアが半分以下であり、また癒着の発生率も低く優れた癒着防止効果が認められた。これに対し溶解性半減期の短い、すなわち溶解性半減期が4時間以下であるフィルムについては癒着防止効果が認められなかった。【0044】実施例10実施例3において得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースに生理食塩水をカルボキシメチルセルロース濃度が1質量%となるように加えた後、超高圧式ホモジナイザー(SMT社製LAB1000)による破砕を行い、水難溶性化したカルボキシメチルセルロースのスラリーを得た。このスラリーを印刷用スクリーン上に展開し、約40℃での乾燥により水難溶性化したカルボキシメチルセルロース約2mg/cm2を含むフィルムとした。得られたフィルムは実施例6の溶解性試験で溶解性半減期が約12時間であった。【0045】実施例11実施例3において−20℃での静置時間を変更し、また実施例10と同様の操作を行い溶解性半減期が約20時間である水難溶性化したカルボキシメチルセルロース約2mg/cm2を含むフィルムを得た。【0046】実施例12実施例3において−20℃での静置時間を変更し、また実施例10と同様の操作を行い溶解性半減期が約30時間である水難溶性化したカルボキシメチルセルロース約2mg/cm2を含むフィルムを得た。【0047】比較例3実施例3において−20℃での静置時間を変更し、また実施例10と同様の操作を行い溶解性半減期が約40時間である水難溶性化したカルボキシメチルセルロース約2mg/cm2を含むフィルムを得た。【0048】実施例13実施例10、実施例11、実施例12及び比較例3について、実施例9に記載したラット盲腸擦過モデルのおける癒着防止試験を行った。結果を表3に示す。【0049】【表3】【0050】表3より、実施例10(実験No.11)と実施例8(実験No.7)を比較すると、得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースの破砕条件が異なっていたが、溶解性半減期がほぼ同等であり癒着防止効果も同等であることが明らかとなった。また溶解性半減期が長い水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを用いた場合でも癒着防止効果を有することが判明した。しかしながら実験No.14の結果のように長すぎる溶解性半減期のフィルムには効果が認められなかった。従って、癒着防止効果発現のためには適切な溶解性半減期の範囲が存在することが明らかとなった。【0051】実施例14実施例5において得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースに生理食塩水をカルボキシメチルセルロース濃度が1質量%となるように加えた後、マイクロホモジナイザー(NISSEI EXCEL AUTO HOMOGENIZAER)による破砕を行い、水難溶性化したカルボキシメチルセルロースのスラリーを得た。【0052】実施例15実施例10において、得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースをスラリーのままとし、フィルム化を行わなかった。【0053】実施例16実施例11において、得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースをスラリーのままとし、フィルム化を行わなかった。【0054】実施例17実施例12において、得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースをスラリーのままとし、フィルム化を行わなかった。【0055】実施例18実施例15で得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースのスラリーに対し、分子量約2×106ダルトンのヒアルロン酸ナトリウム(電気化学工業社製)を水難溶性化したカルボキシメチルセルロースに対し質量比で5分の1となるように添加して溶解し、ヒアルロン酸ナトリウムを含有する水難溶性化したカルボキシメチルセルロースのスラリーを得た。【0056】実施例19実施例15で得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースのスラリーに対し、アルギン酸ナトリウム(フナコシ社製)を水難溶性化したカルボキシメチルセルロースに対し質量比で等量となるように添加して溶解し、アルギン酸ナトリウムを含有する水難溶性化したカルボキシメチルセルロースのスラリーを得た。【0057】実施例20実施例15で得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースのスラリーに対し、キトサン(和光純薬社製)を水難溶性化したカルボキシメチルセルロースに対し質量比で10分の1となるように添加して溶解し、キトサンを含有する水難溶性化したカルボキシメチルセルロースのスラリーを得た。【0058】実施例21実施例15で得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースのスラリーに対し、重合度1500のポリビニルアルコール(和光純薬社製)を水難溶性化したカルボキシメチルセルロースに対し質量比で等量となるように添加して溶解し、ポリビニルアルコールを含有する水難溶性化したカルボキシメチルセルロースのスラリーを得た。【0059】実施例22実施例15で得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースのスラリーに対し、重合度1500のポリビニルアルコール(和光純薬社製)を水難溶性化したカルボキシメチルセルロースに対し質量比で2分の1となるように添加して溶解し、ポリビニルアルコールを含有する水難溶性化したカルボキシメチルセルロースのスラリーを得た。【0060】実施例23実施例3において−20℃での静置時間を変更し、実施例6の溶解性試験における溶解性半減期が約40時間の水難溶性化したカルボキシメチルセルを得た。得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースに生理食塩水をカルボキシメチルセルロース濃度が1質量%となるように加えた後、マイクロホモジナイザー(NISSEI EXCEL AUTO HOMOGENIZAER)による破砕を行い、水難溶性化したカルボキシメチルセルロースのスラリーを得た。このスラリー100mlを200mlの細胞培養用メディウムビンに入れ、オートクレーブで121℃,20分間の滅菌処理を行った。滅菌処理後再度実施例6の溶解性試験を行い、溶解性半減期が約18時間の水難溶性化したカルボキシメチルセルロースのスラリーを得た。【0061】実施例24実施例14ないし実施例23で得られたスラリーについて、実施例9に記載したラット盲腸擦過モデルにおける癒着防止試験を行った。各種スラリーを1ml〜5mlの注射筒に取り、18Gの注射針を装着した後に水難溶性化したカルボキシメチルセルロースがラット当たり10mgとなるように擦過部位に適用した。結果を表4に示す。【0062】【表4】【0063】表4より、溶解性半減期が30時間以内の水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを用いたスラリーで癒着防止効果が認められ、水難溶性化したカルボキシメチルセルロースにヒアルロン酸ナトリウム(実験No.19)、アルギン酸ナトリウム(実験No.20)、キトサン(実験No.21)、ポリビニルアルコール(実験No.22、23)等の他の高分子化合物を添加した場合にも効果が確認された。さらに実験No.24で認められたように、表3の実験No.14で効果が認められなかった水難溶性化したカルボキシメチルセルロース(比較例3)の溶解性半減期をオートクレーブ処理で約18時間に調節することにより効果を発現させることが可能であった。【0064】実施例25実施例10において得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースのスラリーをニトロセルロース膜を用いてろ過し水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを分取した。この水難溶性化したカルボキシメチルセルロースに対し水難溶性化したカルボキシメチルセルロースが1質量%となるようにエタノールを加え、ろ過により水難溶性化したカルボキシメチルセルロースのエタノール洗浄を行った。この洗浄操作をさらに2回繰り返して得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを真空乾燥し、溶解性半減期が約10時間の粉末状の水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを得た。得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロースに対し、10倍質量の乳糖を添加して乳鉢により混合した。この組成物を日本薬局方記載の1号カプセルに封入し水難溶性化したカルボキシメチルセルロース含有カプセルを得た。【0065】実施例26実施例9に記載したラット盲腸擦過モデルにおける癒着防止試験を行い、水難溶性化したカルボキシメチルセルロースがラット当たり10mgとなるように擦過部位に小型噴霧器を用いて適用した。結果を表5に示す。【0066】【表5】【0067】表5より、粉末状とした水難溶性化したカルボキシメチルセルロースにも癒着防止効果が認められた。一方、分散剤として用いた乳糖には癒着防止効果が認められなかった。【0068】実施例27実施例18において得られたヒアルロン酸ナトリウムを含む水難溶性化したカルボキシメチルセルロースのスラリーをポリスチレン製角シャーレ上に展開し、40℃にて乾燥し1cm2当たりヒアルロン酸ナトリウム0.5g、カルボキシメチルセルロース2gを含むフィルムを得た。【0069】実施例28実施例18において得られたヒアルロン酸ナトリウムを含む水難溶性化したカルボキシメチルセルロースのスラリーに水難溶性化したカルボキシメチルセルロースに対し質量比で20分の1となるように銅クロロフィリンナトリウムを添加した。この着色スラリーをポリスチレン製角シャーレ上に展開し、40℃にて乾燥し1cm2当たりヒアルロン酸ナトリウム0.5g、カルボキシメチルセルロース2gを含む着色フィルムを得た。【0070】実施例29 ウサギ腹壁欠損モデルにおける癒着防止試験癒着誘導方法ウサギ(ニュージーランドホワイト種、雄、1.8〜2.2kg)をネンブタール(第日本製薬製)麻酔下で仰向けに固定してイソジンにて腹部皮膚を消毒後、剪毛を行った。ウサギ腹筋を正中線に沿って開腹し、左腹壁に3cm×5cmの範囲で欠損創を作成した。欠損部位の周辺を4−0バイクリルで連続縫合し、さらに欠損創の各辺及び各角に結び目を作成した。盲腸の腹側及び背側の第2膨起から第20膨起について外科用ブラシによる擦過を行い鬱血を作成した。腹壁欠損部に実施例27及び実施例28で得られたフィルム約4cm×8cm片をあて縫合を行った。またフィルムを適用せずに閉復したものをコントロールとした。こうした処置はコントロールを含めた各実験で5〜6羽づつのウサギを用いた。術後2週間程度で剖検し、以下の判定基準(Fertility and Sterility 66, 5, 814−821)によりスコアリングを行い、腹壁欠損部が癒着に関与する範囲及び形成された癒着の剥離の容易さにより癒着防止効果を評価した。結果を表6に示す。<癒着範囲の判定基準>0:癒着無し1:腹壁欠損部の25%までの範囲が癒着に関与2:腹壁欠損部の50%までの範囲が癒着に関与3:腹壁欠損部の75%までの範囲が癒着に関与4:腹壁欠損部の100%までの範囲が癒着に関与<癒着剥離の容易さの判定基準>0:癒着なし1:容易に剥離可能2:剥離が困難3:剥離不可能【0071】【表6】【0072】表6より、実験No.28と実験No.29の適用時の状況を比較すると、実施例28のフィルム(実験No.29)では着色により血液存在下においても適用箇所の識別が容易であり、適用15時間後においても適用部位が確認された。また着色の有無によらず癒着防止効果が確認され、着色に用いた色素が癒着形成の助長といった悪作用を引き起こさないことが確認できた。【0073】実施例30 水難溶性化したカルボキシメチルセルロースの細胞毒性試験実施例1〜実施例5、実施例7、実施例8、実施例11、実施例12、実施例18〜実施例21及び実施例28で得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロース、ならびに水難溶性化したカルボキシメチルセルロース組成物について細胞毒性試験を行った。正常ヒト皮膚由来線維芽細胞培養において本発明で得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロース類を非接触下で共存させ、細胞増殖挙動の観察によりその細胞毒性を評価した。調製品をリン酸緩衝生理食塩水に浸漬したのち凍結乾燥体とした。その凍結乾燥体を機械的に粉砕したもの20mgをファルコン社製のセルカルチャーインサート(ポアサイズ:3μm)中に入れ、細胞を播種した培地に浸した。また、水難溶性化したカルボキシメチルセルロース非共存下での培養をコントロールとした。培養条件 プレート :細胞培養用12ウェルプレート培地 :DMEM培地+10%ウシ胎児血清,2ml/ウェル温度 :37℃(5%CO2下)播種細胞数 :1×104個/ウェル【0074】培養開始後2日、5日及び8日後に、細胞密度を倒立顕微鏡を用いて観察した。水難溶性化したカルボキシメチルセルロースが共存していてもコントロールと同様に良好な増殖を示し、本発明で得られた水難溶性化したカルボキシメチルセルロース及びその組成物には細胞毒性作用がないことが見出された。【0075】【発明の効果】以上、本発明によれば、何ら化学的架橋剤や化学的修飾剤を使用することなく得られる水難水溶性化したカルボキシメチルセルロースは、in vitro での溶解性を制御することにより癒着防止効果が得られる。化学的架橋剤や化学的修飾剤を使用することに起因する生体適合性への悪影響が避けられ、さらに形態の制御が容易なため手術時における癒着防止材に有用である。また着色により適用部位の識別が容易となり、外科的手術の最終段階における術者の負担軽減にも有効である。 溶解性半減期が5時間〜30時間である水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを含有することを特徴とする癒着防止材。 更に、他の生体適合性高分子化合物を配合することを特徴とする請求項1項記載の癒着防止材。 水難溶性化したカルボキシメチルセルロースの形態がシート状、フィルム状、スポンジ状、紐状、懸濁液状、及び粉末状からなる群から選ばれた1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の癒着防止材。 癒着防止材の適用部位の識別を容易にするために着色されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の癒着防止材。 【課題】in vitro での溶解性が制御された、何ら化学的架橋剤や化学的修飾剤を使用することなく得られた水難水溶性化したカルボキシメチルセルロースを含有する癒着防止材を提供すること。【解決手段】(1)溶解性半減期が5時間〜30時間である水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを含有することを特徴とする癒着防止材、(2)更に、他の生体適合性高分子化合物を配合することを特徴とする(1)項記載の癒着防止材を構成とする。【選択図】   なし


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