タイトル: | 公開特許公報(A)_難分解性物質の分解方法 |
出願番号: | 2002208452 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,B09C1/02,A62D3/00,B09B3/00,B09C1/08,C07B37/06,C07C15/20,C07C19/01,C07C19/05,C07C21/10,C07D307/91,C07D319/24 |
宮本 秀夫 川端 孝博 鈴木 源士 JP 2004049985 公開特許公報(A) 20040219 2002208452 20020717 難分解性物質の分解方法 出光興産株式会社 000183646 大谷 保 100078732 宮本 秀夫 川端 孝博 鈴木 源士 7 B09C1/02 A62D3/00 B09B3/00 B09C1/08 C07B37/06 C07C15/20 C07C19/01 C07C19/05 C07C21/10 C07D307/91 C07D319/24 JP B09B3/00 304K A62D3/00 C07B37/06 C07C15/20 C07C19/01 C07C19/05 C07C21/10 C07D307/91 C07D319/24 B09B3/00 304G 8 OL 12 テフロン 2E191 4C037 4D004 4H006 2E191BA11 2E191BA12 2E191BA13 2E191BA15 2E191BB00 2E191BB01 2E191BC01 2E191BD11 4C037SA03 4D004AA36 4D004AA41 4D004AB06 4D004AB07 4D004CA35 4D004CA36 4D004CC11 4D004CC12 4D004CC15 4H006AA05 4H006AC26 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、難分解性物質の分解方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、過硫酸塩の使用量低減、反応時間の短縮、反応温度の低下、設備の腐食防止などを図ることができ、かつ安価な設備を用いることができる、過硫酸塩による難分解性物質の分解方法に関するものである。【0002】【従来の技術】従来、ダイオキシンなどの難分解性物質を分解、無害化する方法としては、例えば(1)熱分解法、(2)アルカリ分解法、(3)過酸化物分解法、(4)光分解法、(5)超臨界水分解法、(6)微生物分解法などが知られている。これらの方法の中で、1000℃以上の温度で分解する熱分解法や、300℃以上の加熱を伴うアルカリ分解法においては、分解に当たり、有害物質であるダイオキシンなどの一部が蒸発するため、排ガスを処理しなければならないという大きな欠点がある。一方、過酸化物分解法は、低温で分解できる上、排ガスを処理する必要がない点で有利であるが、過酸化物として過硫酸塩を用いる場合には、反応中に過硫酸の分解に伴う硫酸の生成により著しくpHが低下する。これまで、低pHがダイオキシンなどの分解には必要と考えられてきたが、pHが1以下にもなる反応状態を維持するための容器として、ガラスやポリ四フッ化エチレン(テフロン)コーティングなどの高価な材質を選択しなければならないため、実用化に至っていないのが実情である。【0003】また、オゾンや過酸化水素と紫外線を組み合わせた過酸化物分解法は、低温、中性で分解できるという利点はあるが、紫外線を用いるために、固形物や固形物を含む廃水には光が透過しにくいことから、適用できないという問題点がある。さらに、超臨界水分解法においては、高圧容器を必要とし、固形物を処理すると内部で固化しやすいため、連続分解処理が行いにくく、コスト高になるのを免れないという欠点があり、実用化の域には達していない。【0004】一方、ペルオクソ酸、特に過硫酸塩を用いる場合には、従来の条件では、(1)難分解性物質に対し、100倍モル以上の過硫酸塩が必要であること、(2)反応速度が遅く、加熱しても分解に数時間から十数時間かかること、(3)前述したように、過硫酸塩の分解により、pHが著しく低下し、通常の鉄製分解装置やセメント容器では腐食しやすく、防食のために高価な材質の容器やライニングなどが必要となる、などの問題点があった。ところで、過硫酸ナトリウムを用いて、アルカリ条件下で色素であるインジゴを分解、脱色できることが報告されているが、pHの低い酸性の方が脱色には、より効果的であると記載されている[「American Association of Text.Chem.Color」第224〜237ページ(1995年)]。【0005】また、水中の有機物を分解する方法として、過硫酸塩を水に溶かして紫外線を照射する技術が開示されている(特開平11−99395号公報)。この場合、水溶性の有機物を分解する技術であり、反応液のpHは調整されることなく実施されている。元来、オゾン、過酸化水素あるいは過硫酸塩に紫外線を照射して難分解性物質を分解する技術は、紫外線が透過できる反応系のみで利用できる技術であり、固形物を含む液体や固形物には利用できない。これに対し、本発明の技術は固体に吸着した難分解性物質を分解する技術であり、紫外線を用いることもない上、添加する過硫酸塩量も著しく異なる。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明は、過硫酸塩の使用量の低減、反応時間の短縮、反応温度の低下、設備の腐食防止などを図ることができ、かつ安価な設備を用いることができる、過硫酸塩による難分解性物質の分解方法を提供することを目的とするものである。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、分解反応液に、予め充分なアルカリを添加するか、あるいは反応中にアルカリを逐次添加し、pHが強酸性にならないように、ある値以上に維持することにより、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。すなわち、本発明は、(1)過硫酸塩を用いて難分解性物質を酸化分解するに際し、塩基性物質の存在下に、pH3以上に保持して酸化分解処理することを特徴とする難分解性物質の分解方法、(2)pH7以上に保持して酸化分解処理する上記(1)の難分解性物質の分解方法、(3)過硫酸塩が、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸カリウムの中から選ばれる少なくとも一種である上記(1)、(2)の難分解性物質の分解方法、(4)塩基性物質が、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物又は弱酸塩、アンモニア及び有機塩基性化合物の中から選ばれる少なくとも一種である上記(1)、(2)の難分解性物質の分解方法、(5)アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物がナトリウム、カリウム又はカルシウムの水酸化物である上記(4)の難分解性物質の分解方法、(6)アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物が、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、超酸化ナトリウム、超酸化カリウム、超酸化カルシウム又は超酸化バリウムである上記(4)の難分解性物質の分解方法、(7)有機塩基性化合物が、アミンである上記(4)の難分解性物質の分解方法、及び(8)難分解性物質が固体に吸着されている上記(1)、(2)の難分解性物質の分解方法、を提供するものである。【0008】【発明の実施の形態】本発明における難分解性物質としては、例えばハロゲン化ジオキシン類、ハロゲン化ベンゾフラン類、ポリ塩化ビフェニル類、アルキルフェノール類、ハロゲン化フェノール類、ハロゲン化アルカン類、ハロゲン化アルケン類、フタル酸エステル類、ビスフェノール類及び多環芳香族炭化水素類などが挙げられる。【0009】前記ハロゲン化ジオキシン類としては、例えば、2,3,7,8−テトラクロロジベンゾ−p−ジオキシン、1,2,3,7,8−ペンタクロロジベンゾ−p−ジオキシン、1,2,3,4,7,8−ヘキサクロロジベンゾ−p−ジオキシン、1,2,3,4,6,7,8−ヘプタクロロジベンゾ−p−ジオキシン、1,2,3,4,6,7,8,9−オクタクロロジベンゾ−p−ジオキシンなどの化合物が挙げられる。前記ハロゲン化ベンゾフラン類としては、例えば、2,3,7,8−テトラクロロジベンゾフラン、1,2,3,7,8−ペンタクロロジベンゾフラン、2,3,4,7,8−ペンタクロロジベンゾフラン、1,2,3,4,7,8−ヘキサクロロジベンゾフラン、1,2,3,6,7,8−ヘキサクロロジベンゾフラン、1,2,3,7,8,9−ヘキサクロロジベンゾフラン、2,3,4,6,7,8−ヘキサクロロジベンゾフラン、1,2,3,4,6,7,8−ヘプタクロロジベンゾフラン、1,2,3,4,6,7,8,9−オクタクロロジベンゾフランなどの化合物が挙げられる。【0010】前記ポリ塩化ビフェニル類としては、例えばオルト位以外に塩素原子が置換したコプラナー(Coplanar)PCB類があり、具体的には3,3′,4,4′−テトラクロロビフェノール、3,3′,4,4′,5−ペンタクロロビフェノール、3,3′,4,4′,5,5′−ヘキサクロロビフェノールなどの化合物が挙げられる。前記アルキルフェノール類としては、例えばt−ブチルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ペンチルフェノールなどの化合物が挙げられ、ハロゲン化フェノール類としては、例えばテトラクロロフェノール、ペンタクロロフェノールなどの化合物が挙げられる。【0011】前記ハロゲン化アルカン類やハロゲン化アルケン類としては、例えばジクロロプロパン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロエチレンなどの化合物が挙げられ、フタル酸エステル類としては、例えばジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレートなどの化合物が挙げられる。前記ビスフェノール類としては、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)や1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどの化合物が挙げられ、多環芳香族炭化水素類としては、例えばベンゾピレン、クリセン、ベンゾアントラセン、ベンゾフルオランセン、ピセンなどが挙げられる。【0012】本発明においては、前記難分解性物質として、固体に吸着されているものを処理するのが好ましい。難分解性物質が吸着された固体としては特に制限はなく、様々なものを適用し得るが、例えば該難分解性物質が吸着された土壌や灰などを好ましく適用することができる。ここで、難分解性物質が吸着された土壌としては、焼却場周辺の土壌、ごみや焼却灰埋立て地の土壌、海洋や河川、湖沼の底泥、農薬の撒布で汚泥された農地などを挙げることができる。また灰としては、ごみ焼却場や産業廃棄物焼却場、工場の加熱設備から発生する石炭灰などを挙げることができる。【0013】本発明の難分解性物質の分解方法においては、前述の土壌や灰に吸着された難分解性物質は、脱着操作を行うことなく、過硫酸塩により酸化分解されるが、この際、分解処理すべき難分解性物質以外の有機物はできる限り除去してから、分解処理することが好ましい。有機物を除去する方法としては、特に制限はなく、様々な方法を用いることができるが、例えば過マンガン酸カリウムなどの酸化剤で分解除去する方法や、硫酸などの強酸で分解除去する方法などを用いることができる。本発明においては、このようにして、難分解性物質以外の有機物が除去された、土壌や灰に吸着されている難分解性物質に、過硫酸塩を接触させる前に、所望により、微生物及び/又は酵素を接触させる前処理あるいは後処理を施すことができる。【0014】次に、この微生物や酵素による前処理を施す実施態様について説明する。この前処理において用いられる微生物としては、糸状菌が好適に使用される。該糸状菌としては、例えばトラメテス(Trametes)属、シゾフィラム(Schizophyiium)属、ファネロキーテ(Phanerochaete)属、ジェルカンデラ(Bjerkandera)属、イルペックス(Irpex)属、プレウロタス(Pleurotus)属、マイセリオソラ(Myceliophthora)属、レンチネラ(Lentinera)属、ピクノポラス(Pycnoporus)属、レンチナス(Lentinus)属、リゾクトニア(Rhizoctonia)属、フナリア(Funalla)属、メルリウス(Merulius)属、ミセリオプトラ(Myceliophthora)属、コプリヌス(Coprinus)属、アガリクス(Agaricus)属、フォリオタ(Phoriota)属、フラムリナ(Flammulona)属、カノデルマ(Ganoderma)属、ダニダレオブシス(Daedaieopsis)属、ファポラス(Favolus)属、リオフィラム(Lyophyllum)属、オーリクラリア(Auricularia)属、グロエオフィラム(Gloeophyllum)属、タイロマイセス(Tyromyces)属、コニオフォラ(Coniophora)属、ヘテロバシディオン(Heterobasidion)属、フォメス(Fomes)属、ケトミウム(Chaetomium)属、マイセリオフトラ(Myceliophthora)属、ニューロスポラ(Neurospora)属、スクレロテウム(Sclerotium)属、フミコーラ(Humicola)属、モニリア(Monilia)属、キシラリア(Xylalia)属、クラドリナム(Cladorrhinum)属、グラフィウム(Graphium)属、スコプラリプシス(Scopularipsis)属、スフェロプシス(Sphaeropsis)属、フザリウム(Fusarium)属、トリコデルス(Trichoders)属、ボツリティス(Botrytis)属、アスペルギルス(Aspsrgillus)属、アクレモニウム(Acremonium)属などに属する糸状菌が挙げられる。これら糸状菌の中でも、トラメテス(Trametes)属、シゾフィラム(Schizophyllum)属、ファネロキーテ(Phanerochaets)属、ジェルカンデラ(Bjerkandera)属、イルペックス(Irpex)属、プレウロタス(Pleurotus)属、マイセリオソラ(Myceliophthora)属、レンチネラ(Lentinera)属、ピクノポラス(Pycnoporus)属に属する木材腐朽菌が特に好適である。【0015】一方、酵素としては、特にセロビオースデヒドロゲナーゼ、ラッカーゼ、リグニンペルオキシダーゼ及びマンガンペルオキシダーゼの中から選ばれる少なくとも一種が好適に用いられる。これらの酵素は、微生物が産生して放出した酵素あるいは天然物中に含まれる酵素をイオン交換樹脂などを用いて培養液や天然物から分離したものを用いてもよいし、微生物の生菌体と酵素との混合物を用いてもよい。これらの酵素を用いる場合には、難分解性物質との接触に際して、電子供与体や過酸化水素の存在下、または過酸化水素を産生する微生物や酵素の存在下に行うのが効果的である。また、酵素としてラッカーゼを用いる場合には、その活性を最大限発揮させるために、メディエーターを添加することが好ましい。このメディエーターとしては、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールなどのフェノール性化合物や、2,2′−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)などのアニリン系化合物が好適に用いられる。【0016】前記糸状菌を培養する方法については、通常の微生物の培養方法と同様に行うことができる。例えば、少量の培養では、モルト−イースト培地で5〜30日間、10〜50℃程度で培養すればよく、また大量に培養する場合には、タンクによる液体培養や、オガクズや大麦、小麦の全粒やフスマなど植物由来の固体成分、糖のほか、窒素やリン、ミネラルなどを含浸させた無機多孔質担体などを用いて前記条件で固体培養してもよい。ここでの培養温度が10℃未満であると、微生物の増殖が遅くなって酵素の放出量が少なくなり、また、この培養温度が50℃を超えると、微生物の生育増殖が遅くなるおそれがある。そして、培養時のpHは3以上に調整するのが好ましく、さらに3.5以上に調整するのがより好ましい。これは、pHが3未満では、微生物からの酵素の放出量が少なくなり、酵素の至適pHの範囲から外れることになるからである。また、容器が鉄製のものでは、容器内部の腐食を生じるためである。さらに、これら微生物の培養においては、得られる培養物の菌濃度が、植物性有機物乾燥重量1gあたり、1×102cfu(コロニー形成単位)以上、好ましくは1×102〜1×108cfu、より好ましくは1×103〜1×107cfuの範囲とすればよい。また、これら糸状菌の培養に際しては、菌糸体、胞子のいずれも使用できるが、通常は、培養が容易な菌糸体を用いる。【0017】前記微生物及び/又は酵素を、固体に吸着された難分解性物質に接触させるに当っては、予め固体に付着している雑菌の滅菌処理を行い、無菌条件下で該微生物や酵素を接触させるのがよい。通常難分解性物質が吸着されている固体には、様々な雑菌が棲息しているので、これら雑菌を滅菌処理することにより、有用微生物を接種した後の有用微生物の生育に良好な条件が整うようになる。【0018】この滅菌処理法としては、加熱処理法や化学的処理法あるいは物理的処理法による方法を用いることができる。この加熱処理法による雑菌の滅菌処理を行う場合には、80〜125℃程度の温度で行えばよい。そして、加熱処理時間は、処理温度により異なるが、2秒間〜6時間程度とするのがよい。この処理温度は、ほとんどの雑菌が125℃では死滅するので、それを超える温度で処理する必要はない。【0019】また、化学的処理法による滅菌処理の場合には、処理剤としてエチルアルコール、二炭酸ジエチル、過酸化水素、過硫酸塩、次亜塩素酸、塩酸、エチレンオキサイド、オゾンまたはクロルピクリンを用いることができる。これら処理剤は、そのまま使用してもよいが、水などの希釈剤を用いた溶液を使用することもできる。例えば、エチルアルコールを使用する場合には、その濃度が60〜100g/100ミリリットル程度の水溶液が好適に用いられる。また、過酸化水素を使用する場合には、その濃度が30g/100ミリリットル未満の水溶液が好ましく、さらにエチルアルコールとの混合水溶液として使用してもよい。そして、物理的処理法による方法としては、紫外線照射処理による方法が好適に用いられる。【0020】また、固体に吸着された難分解性物質を微生物及び/又は酵素と接触させて分解するに際して、前記滅菌処理する方法以外の方法により、有用微生物が選択的に生育できるようにすることで、雑菌の増殖を抑制することができる。例えば、木材腐朽菌を用いる場合、炭素源としてセルロース源、好ましくは可溶性セルロース源であるカルボキシメチルセルロースや、水溶性セルロースエーテル、リン酸化セルロースなどを用いると、これら炭素源が雑菌の増殖に利用し難いことから雑菌の増殖を抑制することが可能である。【0021】このように加熱処理や化学的処理、物理的処理によって滅菌処理してなる固体に吸着された難分解性物質を、微生物と接触させて分解する場合には、該固体の存在下に、微生物の培養を行う方法が望ましい。この微生物による難分解性物質の分解反応を行う際の条件としては、これら微生物の生育条件と同様であり、温度は10〜50℃程度、好ましくは15〜35℃であり、pHは3以上、好ましくは3.5以上の範囲である。また、上記糸状菌は、好気性微生物であることから、分解反応器には少量の酸素含有ガス、好ましくは空気を供給しながら分解反応を行うようにする。このようにして、固体に吸着された難分解性物質の存在下に微生物を培養することにより、その菌体外に放出する難分解性物質分解酵素や難分解性物質分解ラジカルにより、これら酵素やラジカルによる難分解性物質の分解反応が進行するようになる。【0022】そして、この分解反応をより効果的に行うためには、ここで用いる糸状菌の栄養源の存在下に分解反応を行うのが好ましい。このような栄養源としては、様々な物質があるが、例えば、グルコースなどの糖類、ジャガイモエキスや糖蜜などの炭素源、アンモニウム塩や尿素などの窒素源、コーンスティープリカー、肉エキス、酵母エキスやペプトンなどの水溶性栄養源が用いられる。また、大麦や小麦、米、トウモロコシなどの穀物類や、その副産物であるフスマ、米ぬか、コーンブロス、オカラなどを用いることができる。このほか、木材チップやココヤシの繊維、カンキツ類の皮、多孔質粘土鉱物を添加することもできる。これら栄養源の添加量は、水溶性で当該固体に吸着されやすい栄養源の場合には、当該固体に対して0.01〜10重量%程度であり、また、吸着剤に吸着され難い固体栄養源の場合には、吸着剤に対して0.001〜10重量%程度である。【0023】また、過硫酸塩による分解を促進させるために、他の酸化剤、例えば過酸化水素やオゾンを共存させてもよい。さらに、この分解反応をより効果的に行うために、この反応系に有機溶剤を適宜量添加することができる。このような有機溶媒としては、炭素数3〜6のケトン類、炭素数1〜4のアルコール類、炭素数2〜6のカルボン酸エステル類の群から選択される有機溶媒が好適に用いられる。このうち、炭素数3〜6のケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。また、炭素数1〜4のアルコール類としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、各種ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどが挙げられる。さらに、炭素数2〜6のカルボン酸エステル類としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどが挙げられる。これら有機溶媒は、水との親和性が高く、微生物や酵素の活性を減退させることなく、難分解性物質を固体内部から固体表層部に溶出させた状態において、微生物や酵素との接触を効果的に行うことができるようになる。さらに、これら有機溶媒とともに、常温において液状のn−パラフィン類、シクロパラフィン類、高級脂肪酸エステル類などの溶媒を添加することにより、難分解性物質の固体内部への再吸着を防止することができる。このような再吸着防止溶媒としては、例えば、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカン、n−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、シクロオクタン、シクロデカン、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノレン酸メチル、リノレン酸エチルなどが挙げられる。【0024】本発明の難分解性物質の分解方法においては、このようにして、所望により、土壌や灰に吸着された難分解性物質に、微生物や酵素を接触させる前処理あるいは後処理を施したのち、過硫酸塩を接触させて、該難分解性物質を酸化分解する。過硫酸塩は加熱により分解して、重硫酸イオンラジカル、硫酸イオンラジカルやヒドロキシラジカルが発生して、このラジカルがダイオキシンなどの難分解性物質を分解するが、該ラジカルは短時間で電子を放出することから、分解効率を高めるために、難分解性物質を吸着した固体をスラリー状にして、攪拌することが好ましい。この攪拌は激しいほどラジカルと難分解性物質が接触する確率が高まるために有利であるが、攪拌には限度があり、分解容器の容量やスラリーの粘度などにより、経済的に著しく不利にならない範囲で激しく行うことが好ましい。【0025】本発明で用いる過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどが挙げられ、これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、固体に吸着された難分解性物質のモル数を基準にして、好ましくは100倍モル以上、より好ましくは104〜109倍モル、さらに好ましくは105〜108倍モルの範囲で選定される。本発明においては、前記の過硫酸塩により酸化分解処理する際に、発生する硫酸を中和して、pH3以上、好ましくは5以上、より好ましくは7以上に保持するために、塩基性物質の存在下に、酸化分解処理を行う。前記塩基性物質としては、過硫酸塩により酸化されない化合物であって、処理後のスラリーを埋め立て場などの最終処分地に移送、処分する際、二次汚染をもたらさない化合物を選択することが肝要である。【0026】このような塩基性物質としては、例えばアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物及び弱酸塩、さらにはアンモニアや有機塩基性化合物の中から、適宜一種又は二種以上選択して用いることができる。前記アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物の例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウムなどの水酸化物が好ましく挙げられ、また、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物の例としては、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、超酸化ナトリウム、超酸化カリウム、超酸化カルシウム、超酸化バリウムなどが好ましく挙げられる。前記化合物の中で超酸化物は、酸化剤としての作用も有しており、好ましい。さらに、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の弱酸塩の例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなどが好ましく挙げられ、有機塩基性化合物としては、各種アミンを挙げることができる。【0027】これらの塩基性物質は、予め土壌やスラリー中に添加しておいてもよいし、反応中に逐次添加してもよい。このようにして、分解反応液のpHを3以上、好ましくは5以上、より好ましくは7以上に保持することにより、高価な耐食性の反応容器を使用する必要がなく、安価な鉄製反応容器を使用することができる。酸化分解処理温度は高いほど分解速度及び分解率が高まるが、被処理物が水分を含んでいる場合には、水分の沸騰温度(塩濃度が高くなると100℃より高くなる)以上で分解処理すると圧力容器を必要とするため、沸騰温度以下の大気圧下で分解処理することが好ましい。なお、沸騰温度以上の大気圧下で分解処理を行う場合、水分の蒸発と共に、ダイオキシンなどの難分解性物質も温度が高くなるほど蒸発するため、二次汚染防止の観点から、排ガス処理設備を設けることが必要となる。【0028】本発明においては、加熱する場合、加熱方式としては特に制限はなく、電熱式、加熱水供給式、蒸気吸込み式、ボイラー式など、いずれも用いることができるが、加熱水供給式の場合には、水分量が多くならないように注意を要する。水分量が多くなりすぎると、反応のための過硫酸塩濃度が低下する。酸化分解処理時間については、処理温度やその他の条件などにより左右され、一概に定めることはできないが、通常10分ないし50時間程度である。【0029】なお、分解処理にあたっては、過硫酸塩を予め土壌や灰に十分接触させ、内部に浸透させたのち加熱等を行い難分解性物質を酸化分解することが望ましい。このような酸化分解処理条件を採用することにより、(1)過硫酸塩の使用量を低減させることができる、(2)反応時間を短縮することができる、(3)反応温度を低下することができる、(4)反応容器の腐食を防止することができる、などの効果を奏する。【0030】また、難分解性物質が吸着された土壌や灰が固着性の強い場合、例えば焼却炉から排出される焼却灰などの場合、粉砕機で該固体を粉砕しながら、粉末状の過硫酸塩を添加混合し、その後加熱処理する、あるいは土壌においては超音波処理して微粒子化するのが有利である。このようにして過硫酸塩により難分解性物質を酸化分解したのち、所望により、微生物及び/又は酵素を接触させる後処理を施すことができる。この場合、雑菌の滅菌処理は行わなくてもよい。前記の過硫酸塩による処理で、雑菌はほとんど死滅するからである。また、難分解性物質を吸着した土壌や灰を塩基性物質の存在下にpH3以上に保つことにより、最終的に廃棄する場合においてpHが著しく低くなるため、自然環境に悪影響を及ぼすことが少ない。【0031】【実施例】次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。実施例1〜11及び比較例1〜3、参考例1〜3【0032】焼却場洗煙排水の飛散により汚染された土壌50gの水分を35%に調整し、500ml容のテフロン製の蓋付き容器に分注し、この容器に4モル/リットル濃度の水酸化ナトリウム水溶液を第1表に示す量加えた。次いで、これに第1表に示す種類と量の過硫酸塩を添加し、テフロンコートしたマグネットを入れ、該容器を所定の温度に保持されたオイルバスに設置し、第1表に示す速度で攪拌しながら、第1表に示す温度及び時間にて分解反応を行った。なお、分解反応中に硫酸が生成し、pHは変化するため、予め過硫酸塩添加量及び水酸化ナトリウム添加量と分解反応後のpHの関係を測定し、過硫酸塩の添加量に対する水酸化ナトリウム量を決定した。分解反応終了後、pH試験紙で反応液のpHを測定し、残存ダイオキシン量と共に、第1表に示した。【0033】【表1】【0034】【表2】【0035】【発明の効果】本発明の難分解性物質の分解方法によれば、過硫酸塩を用い、pH3以上に保持して難分解性物質を酸化分解処理することにより、過硫酸塩の使用量低減、反応時間の短縮、反応温度の低下、装置の腐食防止などを図ることができ、かつ鉄製などの安価な装置を用いることができる。 過硫酸塩を用いて難分解性物質を酸化分解するに際し、塩基性物質の存在下に、pH3以上に保持して酸化分解処理することを特徴とする難分解性物質の分解方法。 pH7以上に保持して酸化分解処理する請求項1記載の難分解性物質の分解方法。 過硫酸塩が、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸カリウムの中から選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2記載の難分解性物質の分解方法。 塩基性物質が、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物又は弱酸塩、アンモニア及び有機塩基性化合物の中から選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2記載の難分解性物質の分解方法。 アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物が、ナトリウム、カリウム又はカルシウムの水酸化物である請求項4記載の難分解性物質の分解方法。 アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物が、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、超酸化ナトリウム、超酸化カリウム、超酸化カルシウム又は超酸化バリウムである請求項4記載の難分解性物質の分解方法。 有機塩基性化合物が、アミンである請求項4記載の難分解性物質の分解方法。 難分解性物質が、固体に吸着されている請求項1又は2記載の難分解性物質の分解方法。 【課題】薬剤の使用量低減、反応時間の短縮、反応温度の低下、装置の腐食防止などを図ることができ、かつ安価な装置を用いることができる難分解性物質の分解方法を提供すること。【解決手段】過硫酸塩を用いて難分解性物質を酸化分解するに際し、塩基性物質の存在下に、pH3以上に保持して酸化分解処理する難分解性物質の分解方法である。【選択図】 なし