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タイトル:公開特許公報(A)_ヒトSNK蛋白質に対するモノクローナル抗体及び甲状腺癌判別方法
出願番号:2002189518
年次:2004
IPC分類:7,C12N15/02,C07K16/18,C12N5/10,C12P21/08


特許情報キャッシュ

山下 俊一 杉山 啓一 吉田 由紀 浦野 健 古川 鋼一 JP 2004024195 公開特許公報(A) 20040129 2002189518 20020628 ヒトSNK蛋白質に対するモノクローナル抗体及び甲状腺癌判別方法 株式会社ファルマデザイン 500386563 山下 俊一 502234215 浦野 健 502042551 山下 俊一 杉山 啓一 吉田 由紀 浦野 健 古川 鋼一 7 C12N15/02 C07K16/18 C12N5/10 C12P21/08 JP C12N15/00 C C07K16/18 C12P21/08 C12N5/00 B 11 OL 24 4B024 4B064 4B065 4H045 4B024AA11 4B024BA53 4B024CA04 4B024CA07 4B024DA06 4B024GA03 4B024GA11 4B024HA15 4B064AG27 4B064CA10 4B064CA20 4B064CC24 4B064DA13 4B065AA26X 4B065AA92X 4B065AA93Y 4B065AB01 4B065AB05 4B065AC14 4B065BA02 4B065BA08 4B065CA24 4B065CA25 4B065CA46 4H045AA11 4H045AA20 4H045AA30 4H045BA10 4H045BA41 4H045CA40 4H045DA76 4H045DA89 4H045EA51 4H045FA72 4H045FA73 4H045FA74 4H045GA26 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、甲状腺に生じた腫瘍の悪性/良性の判別に使用することができるヒトSNK蛋白質に対するモノクローナル抗体、このモノクローナル抗体を用いたヒト甲状腺腫瘍の悪性/良性判別方法及びヒト甲状腺腫瘍の悪性/良性判別用試薬キットに関するものである。【0002】【従来の技術】甲状腺腫瘍は、良性の甲状腺腫瘍と悪性の甲状腺腫瘍とに分類され、悪性の甲状腺腫瘍(いわゆる甲状腺癌)は、他臓器へ転移により全身衰弱を引き起こす。さらに、甲状腺癌は、乳頭腺癌、濾胞腺癌、髄様癌、悪性リンパ腫及び未分化癌に分類される。乳頭腺癌と濾胞腺癌とは両方合わせて「分化がん」と呼ばれ、乳頭腺癌は甲状腺癌全体の約90〜95%、濾胞腺癌は約5%とこの2つで甲状腺癌のほとんどを占めている。乳頭腺癌は、前記のように最も一般的な甲状腺癌で、男性よりも女性に圧倒的に多く、40〜60歳代でみつかることが大半であるが、若い年齢層で発見されるケースもある。頚部に結節状のしこりを触れる以外には特に症状はない。進行は他の臓器のがんに比べ非常に遅いが、リンパ節や肺などに転移がみられる場合もある。濾胞腺癌は、乳頭腺癌と同様に進行はゆっくりであるが、手術前に診断がつきにくく、骨(特に脊椎骨)に転移しやすいという特徴がある。髄様癌は、甲状腺癌全体の1〜2%を占める比較的珍しい癌で、甲状腺のC細胞と呼ばれる細胞から発生し、カルシトニンや CEA という物質を分泌する。散発性のものと遺伝性のものがある。悪性リンパ腫は、リンパ組織を構成する細胞成分の腫瘍性増殖により起こる疾患で、甲状腺に原発することはまれで、甲状腺癌全体の2%程度を占めている。未分化癌は、髄様癌と同様に非常に稀な癌で、前記の分化癌が変化(転化ともいう)して発生するものと考えられる。分化癌と比較しやや高齢者(60〜70歳以上)に多く、発生に男女差はほとんどない。分化癌とは逆に進行がきわめて速く、全身的な症状を伴ってくるのが特徴である。【0003】現在、甲状腺癌は、超音波検査(エコー)、頸部CTスキャン、頸部軟線撮影、核医学検査、穿刺吸引細胞診等により行なわれている。超音波検査は、超音波を用いて、甲状腺腫瘍の有無やリンパ節への転移を観察する方法である。体に害のない検査であるため比較的頻繁に用られているが、体型などによっては、臓器の観察が容易でなかったり、検査を行う術者の技量によって、診断の信頼性に差が出るという欠点がある。頸部CTスキャンは、レントゲンを用いて、人体の輪切り像を見る検査で、甲状腺の腫瘍の有無やリンパ節への転移を観察する方法である。頸部軟線撮影は、レントゲン写真の一種で、甲状腺の石灰化の検出に用いられる。核医学検査は、放射性元素をもちいて、甲状腺の形態、機能を検査する方法である。穿刺吸引細胞診は、甲状腺に細い針を刺し、腫瘍細胞を採取し、細胞を直接検査する方法である。この検査で癌細胞が検出されれば、100%近く癌と診断できるが、癌細胞が存在するにも拘わらず採取されていなかったり、癌細胞の数が極端に少なかったりするために癌細胞が検出されない場合や、濾胞性腫瘍の場合は、良性と悪性の鑑別が臨床上、治療法の決定や予後を考える上で問題となる。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明は、甲状腺に生じた腫瘍の悪性/良性の判別に使用することができるヒトSNK蛋白質に対するモノクローナル抗体、このモノクローナル抗体を含む生化学的研究用試薬、ヒト甲状腺腫瘍の悪性/良性判別方法及びヒト甲状腺腫瘍の悪性/良性判別用試薬キットを提供することを目的とする。【0005】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、ヒトSNK蛋白質を免疫原として作製したモノクローナル抗体を使用することによって、ヒト甲状腺腫瘍の悪性/良性を判別することに成功し、本発明を完成するに至った。【0006】すなわち、本発明は、以下の(1)〜(11)である。(1) ヒトSNK蛋白質に結合するモノクローナル抗体又はその断片。(2) 配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質に結合するモノクローナル抗体又はその断片。(3) 配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質とタグ蛋白質との融合蛋白質を免疫原として得られる請求項1記載の抗体又はその断片。(4) タグ蛋白質が、グルタチオンS−トランスフェラーゼであることを特徴とする上記(3)の抗体又はその断片。(5) 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号FERM P−18855として寄託されているハイブリドーマより得られる上記(1)〜(4)のいずれかのモノクローナル抗体又はその断片。【0007】(6) ヒトSNK蛋白質で免疫した哺乳動物の脾臓細胞と、当該哺乳動物と同種又は異種の動物由来の自己増殖能を有する細胞とを融合し、当該融合細胞をクローン化することにより得られる、上記(1)〜(5)のいずれかのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。(7) ハイブリドーマが、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号FERM P−18855として寄託されたものである、上記(6)のハイブリドーマ。(8) 上記(6)又は(7)のハイブリドーマを培養し、培養上清から上記(1)〜(5)のいずれかに記載のモノクローナル抗体を採取することを特徴とするモノクローナル抗体の製造方法。(9) 被検者から採取したヒト甲状腺腫瘍細胞中に存在するヒトSNK蛋白質の分布状態を指標として当該被検者の甲状腺腫瘍の悪性/良性を判別することを特徴とするヒト甲状腺腫瘍の悪性/良性判別方法。(10) ヒト甲状腺腫瘍細胞中に存在するヒトSNK蛋白質の分布状態を、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のモノクローナル抗体又はその断片を用いる免疫組織染色法により調べることを特徴とする上記(9)のヒト甲状腺腫瘍の悪性/良性判別方法。(11) 上記(1)〜(5)のいずれかのモノクローナル抗体又はその断片を含むことを特徴とするヒト甲状腺腫瘍の悪性/良性判別用試薬キット。以下、本発明を詳細に説明する。【0008】【発明の実施の形態】本発明は、甲状腺に生じた腫瘍の悪性/良性の判別に使用することができるヒトSNK蛋白質(hSNK蛋白質ともいう)に対するモノクローナル抗体、このモノクローナル抗体を用いたヒト甲状腺腫瘍の悪性/良性判別方法及びヒト甲状腺腫瘍の悪性/良性判別用試薬キットである。以下に、本発明のハイブリドーマおよびモノクローナル抗体の調製法について詳述する。【0009】本発明で用いられるhSNK蛋白質としては、天然由来のものでもよく、また、遺伝子工学的手法により製造されたものでもよい。また、hSNK蛋白質としては、その一部が変異されたムテインでもよい。本発明のモノクローナル抗体を製造するには、hSNK蛋白質(免疫原)で適当な哺乳動物を免疫し、当該免疫動物の脾臓細胞と、当該動物と同種又は異種の哺乳動物のリンパ球様細胞とを融合し、次いでこの融合細胞をクローン化することにより製造することができる。具体的製造方法は次の通りである。哺乳動物の免疫に際して免疫原として使用するhSNK蛋白質としては、例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるhSNK蛋白質や配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるhSNK蛋白質由来部分ペプチド(例えば、hSNK蛋白質の1番目アミノ酸から397番目アミノ酸までの配列からなるペプチド)を使用することができる。また、それらの免疫原である蛋白質のC末又はN末にタグ蛋白質を融合させた融合蛋白質を免疫原として用いることもできる。ここで、「タグ蛋白質」とは、目的蛋白質のアフィニティー精製により分離を容易に行うためやその他、目的蛋白質の挙動を追跡するため等の目的で、所望の蛋白質の末端に余分に付加する蛋白質をいう。タグ蛋白質としては、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、プロテインA、β−ガラクトシダーゼ、マルトース−バインディングプロテイン(MBP)などが挙げられる。【0010】hSNK蛋白質で免疫するための哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ等が挙げられるがこれらに限定されない。免疫に際しての免疫原の投与経路は特に限定されず、例えば皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内等のいずれの経路でも投与することができる。具体的には、例えばBALB/cマウスに、hSNK蛋白質を数日〜数週間おきに数回接種する。接種量は一匹当たり、一回につき1〜1000μgのhSNK蛋白質を使うのが好ましい。【0011】上記hSNK蛋白質で免疫されたマウスより脾臓を摘出し、遠心分離により抗体産生細胞(脾臓細胞)を得る。この細胞は増殖能が無いので、自己増殖能を有する細胞と融合させる。自己増殖能を有する細胞としてはミエローマ細胞等のリンパ球様細胞が特に好ましい。ミエローマ細胞としては、抗体産生細胞を得た動物と同種の動物のものを用いるのが好ましく、また、抗体を分泌しないものを選択するのが好ましい。かかるミエローマ細胞としては、例えばマウスミエローマ細胞P3/NS1/1−Ag4−1(ATCC TIB−18)[Eur. J. Immunol. 6:511−519(1976)]、Sp2/0−Ag14(ATCC CRL−1581)[Nature 276:269−270(1978)]、P3X 63Ag8(ATCC TIB−9)[Nature 256:495−497(1975)]などが挙げられる。抗体産生細胞とミエローマ細胞等との融合は、常法に従い、例えばこれら細胞をポリエチレングリコール等の細胞融合剤を含む溶液(又は懸濁液)で処理することにより実施できる。抗体産生細胞とミエローマ細胞の使用割合は、細胞数比で約3:1〜10:1とするのが好ましい。【0012】得られた融合細胞を限界希釈法により分離し、分離した融合細胞を増殖させ、各ウェルにおいて産生される抗体を、hSNK蛋白質固相化プレートを使用するELISA法において試験し、さらに必要に応じて、免疫組織染色法によって、甲状腺腫瘍組織との反応性を調べ、その結果から所望の抗体を産生するハイブリドーマを選択する。すなわち、hSNK蛋白質をアルキレンジアルデヒドおよび塩基性ポリペプチド又は塩基性合成ポリマーの存在下に固相化させて、hSNK蛋白質特異抗体アッセイプレートを調製する。このアッセイプレートを用い、上記融合細胞の産生する抗体をELISA法で試験し、hSNK蛋白質に反応する抗体を産生するハイブリドーマを選択する。 なお、hSNK蛋白質に反応する抗体を産生するハイブリドーマ株(名称:αSNK2−7−4)は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番3号)に、平成14年5月15日付で受託番号FERM P−18855として寄託されている。【0013】本発明のモノクローナル抗体は、上記において選択されたハイブリドーマを適当な培地を用いて培養して得られる培養上清から常法(例えば、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィー、プロティンAを用いるアフィニティークロマトグラフィー等)により容易に取得することができる。また、上記ハイブリドーマを適当な哺乳動物(例えば、マウス等)の腹腔内に接種し、ハイブリドーマ細胞を増殖させた後、当該哺乳動物の腹水、血清等から所望のモノクローナル抗体を採取することもできる。【0014】得られたモノクローナル抗体は、そのまま使用することもできるが、活性フラグメントとして断片化して使用することもできる。活性フラグメントとしては、F(ab’)2、Fab’、Fab等の各種フラグメントで、hSNK蛋白質への特異的結合活性が失われていないものであればよい。これら活性フラグメントの調製は、精製モノクローナル抗体に対してパパイン、ペプシン、トリプシン処理などの公知の方法を適用することで行うことができる(例えば、「免疫生化学研究法(続生化学実験講座5)」、日本生化学会編、89頁(1986年)参照)。【0015】後述する実施例に示したように、本発明のモノクローナル抗体を用いた免疫組織染色法で、被検者の甲状腺腫瘍を染色すると、良性の甲状腺腫瘍と悪性の甲状腺腫瘍とでは、染色パターンが異なっていた。すなわち、良性の濾胞腺腫(Follicular adenoma)では核が選択的に染色されるのに対し、悪性の濾胞腺癌(Follicular carcinoma)及び悪性の乳頭腺癌(Papillary carcinoma)では、核の染色性は低下し、細胞質と同程度(Follicular carcinoma)もしくはほとんど染色されなかった(Papillary carcinoma)。従って、本発明の抗体を用いることによって、甲状腺腫瘍が悪性腫瘍であるのか否かを判別することができる。【0016】本発明のモノクローナル抗体は、従来、浸潤の有無をもって癌細胞であるのか否かを判定していた甲状腺腫瘍において、細胞浸潤前に、悪性であるか否か(すなわち、癌細胞であるか否か)を判別することができるため、臨床応用を考える場合、極めて有用な抗体であると言える。即ち、本発明の抗体は、免疫組織染色あるいは細胞質蛍光抗体法によって生検試料中の甲状腺癌細胞を検出するなど、診断の目的に用いることができる。このモノクローナル抗体を用いると、甲状腺腫瘍の悪性/良性の判別において非常に精度の高い診断結果を得ることができる。【0017】本発明のモノクローナル抗体を用いる免疫組織染色法、細胞質蛍光抗体法による診断法の詳細は以下のとおりである。 免疫組織染色は、Vectstain ABCキット(Vector社、Burlingame CA、米国)を使用することができる。染色手順は、組織切片の載ったプレートを内因性ペルオキシダーゼをブロックするため、30%H2O2とメチルアルコールを1:100の割合で混合させたもので20分間処理する。次いで、PBSにて3回洗浄し、1%BSAを含むPBSで10倍に希釈した正常馬血清を加え、非特異的反応をブロックする。20分間室温でインキュベートした後、モノクローナル抗体を加える。モノクローナル抗体は、1%BSAを含むPBSで2μg/mlから10μg/mlに希釈したものを使用する。室温にて1時間あるいは、4℃で一晩放置した後、PBSにて3回洗浄する。PBSにて3回洗浄後、ビオチン化した馬抗マウス抗体を1%BSAを含むPBSで1000倍に希釈して加える。30分間室温で放置した後、PBSで3回洗浄する。次いで、ペルオキシダーゼが結合したアビジン−ビオチン結合物を加える。濃度はPBSにて1000倍に希釈したものを加える少なくとも30分前に調製する。室温で30分間反応させた後、PBSで洗浄を3回行う。発色は、0.2Mトリスアミノメタン25ml、0.2N塩酸19.2mlに蒸留水を加え100mlとしたものに、ジアミノベンチジン塩酸塩20mgを溶解させる。更にH2O2を0.03ml程の割合で加える。以上の液にプレートを7分間反応させる。その後、発色を停止させる。核染色はヘマトキシリンで行う。【0018】細胞質蛍光抗体法1〜5×104の標的細胞を、スライドグラス上に95%アセトンで10分間固定し、−70℃に保存しておいたものを標的細胞として用いる。 第一次抗体としてハイブリドーマ培養上清25μlを用いて4℃または25℃にて30分間反応させる。PBSで洗浄後、2次抗体として20〜40倍希釈蛍光標識抗マウスウサギ抗体を25℃にて30分間反応させる。反応は蛍光顕微鏡下で蛍光の有無によって判定する。【0019】本発明による悪性腫瘍の判別方法は、常法により作製した組織標品切片または細胞懸濁液を、本発明の抗体で処理し、鏡検により抗体結合の有無、その分布を観察することにより、悪性腫瘍であるか否かを判定する。この際、ローダミンやテキサスレッド等の色素やFITCなどの蛍光色素で標識した抗体を用いれば、形態学的観察は容易となる。あるいはペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼなどの酵素やビオチンなど標識した抗体を用い、抗体処理後にその酵素反応を利用した特殊染色を行なってもよい。この際には観察を容易にするため核染色を行まってもよい。またこのような標識抗体を使わない場合には、抗体処理後に抗IgG抗体で処理し、ペルオキシダーゼ・抗ペルオキシダーセ法などにより特殊染色する免疫組織化学的観察を行なってもよい。電子顕微鏡により抗体結合の有無を観察する場合には、フェリチン標識した抗体を用いるのが好ましい。この場合には通常の電子顕微鏡標品の作製手順に従って鏡検試料を作製する。【0020】本発明のモノクローナル抗体又はその断片を主要構成要素とするヒト甲状腺腫瘍の悪性/良性判別用試薬キットを構築することも、本発明の好ましい態様の一つである。その場合には必要に応じて、発色試薬、反応停止用試薬、標準抗原試薬、サンプル前処理用試薬などの各試薬から測定法に応じた適当な試薬を適宜選択し、本発明のキットに添付すればよい。【0021】【実施例】以下に、本発明の実施例を示して具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。〔実施例1〕 本発明のモノクローナル抗体の作製(1) 免疫原蛋白質の調製ヒト甲状腺単層培養細胞から採取したRNAより、プライマーペア〔5’− atgtcgaccatggagcactctcactcgcacaag−3’(配列番号4)及び5’− tgtccatcttcttcaacatactctacat−3’(配列番号5)〕を用いたRT−PCRでhSNK蛋白質をコードする全長cDNA(配列番号3)をクローニングした。次いで、得られた全長cDNAを鋳型とし、プライマーペア〔5’− cgcggatccatggagcttttgcggactatc−3’(配列番号6)及び5’−ccgctcgagtcagttacatctttgtaagag−3’(配列番号7)〕を用いたPCRにより、hSNK蛋白質のN端側にBamHI部位、C端側にXhoI部位を付加したcDNAを作成した。このcDNAの397/398アミノ酸コード部分にあるHindIII部位を利用し、全長hSNKからBamHI−HindIIIで1−397アミノ酸コード部分を切り出し、それをGST/pGEX4T−1ベクターに挿入した。このcDNAをBL21にトランスフォームし、大腸菌から得られたグルタチオンS‐トランスフェラーゼ(タグ蛋白質)とhSNK蛋白質との融合蛋白質〔以下、GST?SNK(BH)ともいう〕をグルタチオン−セファロースビーズで精製し、以下においてモノクローナル抗体作製用の免疫原として用いることにした。【0022】(2)マウスの免疫上記(1)で調製したGST‐SNK(BH)50μgに不完全アジュバント(SIGMA社)150μlを加え、室温で5分間vortexし、エマルジョンを形成させた。これを8週齢BALB/Cマウス(♀)の皮下に注入し、初回免疫を行った。2週間後に今度はGST?SNK(BH)100μgに完全アジュバント(SIGMA社)200μlを加え、同様にvortexし、エマルジョン化したものを同マウスに皮下注した。翌週、この免疫マウスの尾から約500μlの血液を採取した。37℃で45分インキュベートし、補体を失活させた後、12,000rpmで5分間(4℃)で遠心し、上清の血清を分離した。この血清を500倍に希釈し、COS−7細胞に強発現させたmyc−SNKを認識しうるかをポジティブコントロールに抗myc抗体を用いてウエスタンブロットで確認したが、まだ有意なバンドは検出されず、抗体価が十分に上昇していないと考えられたので、引き続きに2週間に一度の免疫を行った。初回から合計して7回目の免疫を行い、翌週採血して同様にウエスタンブロットを行ったところ、有意なバンドが検出された。そこで、このマウスの脾臓から感作されたB細胞を採取し、NS−1細胞と融合させ、ハイブリドーマを作成することにした。【0023】(3) 抗hSNK蛋白質モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの調製まず、以下のようにしてハイブリドーマの生存・増殖を助けるためのフィーダー細胞を調製した(細胞融合処理の1〜2日前に準備)。すなわち、まず96ウエル平底プレートには一枚あたり7ml弱(1ウエル当たり一滴)入るので、7×12mlの1×HAT・20%FCS−RPMI培地を準備した。一方、4〜8週齢のBALB/cマウス(♀)を6〜8匹用意した。PBSをシリンジに取り、腹腔内に6ml注入した。針を刺したまま丹念に腹部をtappingし、腹腔中のリンパ球を十分にPBS中に浸出させた。次いで、脂肪を吸ったり、腸管を傷つけたりしないように注意してPBSを回収した。回収したPBSを50ml遠心チューブに集め、1,500rpmで5分遠心し、上清を吸引した後、ペレットをtappingした。30mlのPBSで一度、細胞を洗浄した。洗浄後、残ったペレットをtappingした後、1×HAT・20%FCS−RPMI培地に懸濁した。得られた懸濁液を96穴プレートのウエルに一滴ずつ分注することによりフィーダー細胞調製プレートを得た。【0024】一方、ミエローマ細胞NS−1を以下のようにして調製した。NS−1細胞は、予め10〜20μg/mlの8−アザグアニン存在下の10%FCS−RPMI培地で培養することにより、復帰変異によるHGPRT活性の獲得を防いだ。融合処理当日に対数増殖期になるように、10%FCS−RPMI培地中で培養した。培養器中の細胞をはがし、50ml遠心チューブに集めた。1,500rpmで5分遠心し、上清を吸引した後、ペレットをtappingした。細胞を、一度washingした後、5mlのRPMIに懸濁し、0.1〜1×108個/mlの細胞数であることを確認し、このようにして得たミエローマ細胞NS−1を細胞融合に使用した。【0025】また、B細胞を以下のようにして調製した。抗体産生能を高めるために融合処理の3〜4日前に、上記(2)において得られた感作マウスの静脈洞もしくは腹腔に可溶性免疫原蛋白質を150μg注射した。免疫したマウスより脾臓を取り出し、RPMIを5ml入れた6cm dishに移した。dish内で脾臓を2本の注射針でできるだけ細かくほぐした。上清だけを15ml遠心チューブに回収した。RPMI(plain)を5ml加えて、残りの細胞を同様に回収した。1,500rpmで5分間遠心し、上清を吸引した後、ペレットをtappingした。RPMIで1回洗浄後、RPMI5mlに懸濁した。得られた懸濁液10μlに対し、40μlのRPMIを加え(5倍希釈)、細胞数が1×108個/ml以上存在することを確認した。【0026】次いで、以下のようにして細胞融合処理を行った。予め0.5mlの50%PEG/PBS、1 mlの20%FCS−RPMI、9mlの20%FCS−RPMIをそれぞれ15ml容チューブに取り37℃で温めておいた。NS−1細胞:B細胞=1:10になるようにNS−1細胞を取り、B細胞の入っているチューブに入れた。up/downしてよく混ぜた後、チューブ一杯までRPMIを加え洗浄した。0.5mlの50%PEG/PBSを先の長いパスチュアパイペットに取り、90秒掛けてゆっくり添加した。このとき、ペレットが十分ほぐれるように混ぜ合わせた。1mlの20%FCS−RPMIを60秒掛けて同様に添加した。9mlの20%FCS−RPMIを4分掛けてゆっくり加えた。洗浄後、20%FCS−RPMIに懸濁した。得られた懸濁液を、フィーダー細胞を撒いたプレートに一滴ずつたらした。3〜4日後に2×HAT・20%FCS−RPMIを一滴ずつ添加した。融合処理1〜2週後にコロニーを形成しているウエルの細胞上清を採取し、数回にわたりELISAを試行した。その結果、ここできわめて強い陽性の結果が得られたNo.2−7−4(αSNK2−7−4と命名)を選択した。【0027】〔実施例2〕 本発明のモノクローナル抗体による甲状腺腫瘍の良性/悪性の判別血清(ポリクローナル抗体)の抗体価をチェックしたときと同じように、COS−7に発現させたmyc−SNKを認識できるかどうかをウエスタンブロット法で確認した。この際、このクローンNo.2−7−4はendogenous SNKも認識しうることが確認された。そこで、このクローンを培養し、他の用途についても可能かどうかの検討を行った。【0028】培養した細胞の培養液を回収し、50mlに達したので、この中に抗マウスIgG beads(1:1)を200μl加え、4℃で一晩incubateし、抗hSNK抗体beadsを作成した。これをmyc?SNKを強発現させたCOS−7の細胞溶解液と混合し、4℃で90分incubateした。Beadsを十分にwashingした後、SDS−PAGEで蛋白を分離し、抗myc抗体でdetectionしたところ、myc?SNKを認識したことから、この抗体は免疫沈降にも用いることが可能であると判断した。そこでより高濃度の抗体を得るために、マウスの腹腔内にハイブリドーマを注入し、腹水として採取することにした。10cmdish 4枚分(1×105個)のハイブリドーマを集め、3,000rpmで10分遠心し、ペレットを500μlのPBSに懸濁し、BALB/cマウスの腹腔内に注入した。数週後にハイブリドーマが生着し、腹水が十分たまったところでマウスを屠殺し、その腹水を採取した。この腹水を1000倍に希釈してウエスタンブロットを行ったところ、培養細胞の上清と同じ結果が得られたので、腹水中にも抗hSNK抗体は存在し、ウエスタンブロット及び免疫沈降反応(IP:Immuno−precipitation)に使用可能であると判断した。【0029】ところで、このhSNKは細胞内ではきわめて不安定な存在であり、通常はウエスタンブロットでもほとんど確認できない。Proteosome inhibitorであるLLnLを加えることにより、初めてdetectすることが可能となる。得られた腹水を100倍に希釈し、蛍光免疫染色を行ったところ、LLnLで処理したCOS−7およびNPA(甲状腺癌細胞株)で細胞質が染色されたが、未処理の細胞は染色されなかった。この結果はウエスタンブロットの結果と合致した。腹水を200倍希釈し、これを一次抗体としてABC法で甲状腺癌各種を組織染色したところ、以下の所見が得られた。【0030】正常の甲状腺濾胞細胞は一般にhSNKの発現は認めないが、ごく一部の細胞のみ核が染色されていた(図1)。バセドウ病や腺腫様過形成組織では、全体に発現の上昇がみられ、その発現は特に核に局在していた(図2及び図3)。良性の腺腫(Follicular adenoma)でも、バセドウ病と同様に核に局在が認められ、細胞質の発現は低く、全体的な発現量はバセドウ病に比べて、さらに上昇していた(図4)。一方、濾胞腺癌(Follicular carcinoma)では、細胞質にhSNKの発現を認めるようになり、逆に核の染色は低下し、多くの癌細胞で核と細胞質が共に染色された(図5)。乳頭腺癌(Papillary carcinoma)ではさらに核が染色されず、細胞質のみが染色される細胞の割合が増加していた(図6及び図7)。未分化癌(Anaplastic carcinoma)も同様に核の染色性が低下し、核、細胞質全体が染色されていたが、一部に分裂期と思われる染色体が染色されており、このSNKの発現が細胞周期と何らかの関係がある可能性が示唆された(図8)。また、上記の結果より、本発明のヒトSNK蛋白質に対するモノクローナル抗体は甲状腺癌の判別に応用できることが判明した。【0031】【発明の効果】本発明は、腫瘍組織標品をヒトSNK蛋白質に対する抗体で処理し、抗体の結合状態を形態学的に観察するものであり、甲状腺に生じた腫瘍の悪性/良性の判別に有用である。本発明により、甲状腺腫瘍の悪性/良性判別キットが提供される。【0032】【配列表】【0033】【配列表フリーテキスト】配列番号4:合成DNA配列番号5:合成DNA配列番号6:合成DNA配列番号7:合成DNA【図面の簡単な説明】【図1】図1は、正常の甲状腺濾胞細胞を本発明の抗体で免疫組織染色した結果を示した写真である。【図2】図2は、バゼドウ病の甲状腺腫を本発明の抗体で免疫組織染色した結果を示した写真である。【図3】図3は、甲状腺腫様過形成組織を本発明の抗体で免疫組織染色した結果を示した写真である。【図4】図4は、良性の腺腫(Follicular adenoma)を本発明の抗体で免疫組織染色した結果を示した写真である。【図5】図5は、濾胞腺癌(Follicular carcinoma)を本発明の抗体で免疫組織染色した結果を示した写真である。【図6】図6は、乳頭癌(Papillary carcinoma)を本発明の抗体で免疫組織染色した結果を示した写真である。【図7】図7は、乳頭癌(Papillary carcinoma)を本発明の抗体で免疫組織染色した結果を示した写真である。【図8】図8は、未分化癌(Anaplastic carcinoma)を本発明の抗体で免疫組織染色した結果を示した写真である。 ヒトSNK蛋白質に結合するモノクローナル抗体又はその断片。 配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質に結合するモノクローナル抗体又はその断片。 配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質とタグ蛋白質との融合蛋白質を免疫原として得られる請求項1記載の抗体又はその断片。 タグ蛋白質が、グルタチオンS−トランスフェラーゼであることを特徴とする請求項3記載の抗体又はその断片。 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号FERM P−18855として寄託されているハイブリドーマより得られる請求項1〜4のいずれかに記載のモノクローナル抗体又はその断片。 ヒトSNK蛋白質で免疫した哺乳動物の脾臓細胞と、当該哺乳動物と同種又は異種の動物由来の自己増殖能を有する細胞とを融合し、当該融合細胞をクローン化することにより得られる、請求項1〜5のいずれかに記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。 ハイブリドーマが、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号FERM P−18855として寄託されたものである、請求項6記載のハイブリドーマ。 請求項6又は7記載のハイブリドーマを培養し、培養上清から請求項1〜5のいずれかに記載のモノクローナル抗体を採取することを特徴とするモノクローナル抗体の製造方法。 被検者から採取したヒト甲状腺腫瘍細胞中に存在するヒトSNK蛋白質の分布状態を指標として当該被検者の甲状腺腫瘍の悪性/良性を判別することを特徴とするヒト甲状腺腫瘍の悪性/良性判別方法。 ヒト甲状腺腫瘍細胞中に存在するヒトSNK蛋白質の分布状態を、請求項1〜5のいずれかに記載のモノクローナル抗体又はその断片を用いる免疫組織染色法により調べることを特徴とする請求項9記載のヒト甲状腺腫瘍の悪性/良性判別方法。 請求項1〜5のいずれかに記載のモノクローナル抗体又はその断片を含むことを特徴とするヒト甲状腺腫瘍の悪性/良性判別用試薬キット。 【課題】ヒトSNK蛋白質に対するモノクローナル抗体及び甲状腺癌判別方法の提供。【解決手段】甲状腺に生じた腫瘍の悪性/良性の判別に使用することができるヒトSNK蛋白質に対するモノクローナル抗体、このモノクローナル抗体を用いたヒト甲状腺腫瘍の悪性/良性判別方法及びヒト甲状腺腫瘍の悪性/良性判別用試薬キット。【選択図】 なし


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