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タイトル:公開特許公報(A)_酢酸セルロースの製造方法
出願番号:2002186476
年次:2004
IPC分類:7,C08B3/06,C07H1/08,C07H3/06,C12P19/14,A23L1/236


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松尾 俊一 高村 孝次 JP 2004027056 公開特許公報(A) 20040129 2002186476 20020626 酢酸セルロースの製造方法 日本財経株式会社 502231340 中島 淳 100079049 加藤 和詳 100084995 西元 勝一 100085279 福田 浩志 100099025 松尾 俊一 高村 孝次 3405981 20030512 7 C08B3/06 C07H1/08 C07H3/06 C12P19/14 A23L1/236 JP C08B3/06 C07H1/08 C07H3/06 C12P19/14 Z A23L1/236 A 1 OL 15 4B047 4B064 4C057 4C090 4B047LB06 4B047LB08 4B047LG37 4B047LG57 4B047LP18 4B064AF04 4B064CA21 4B064CC03 4B064CD23 4C057AA02 4C057BB04 4C090AA04 4C090BA26 4C090BC10 4C090CA39 4C090DA10 4C090DA32 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、コーンコブミールを原料とする生分解性プラスチックとして有用な酢酸セルロースの製造方法、及び、甘味料として有用なキシロオリゴ糖の製造方法に関する。【0002】【従来の技術】生分解性プラスチックとは、使用している間は通常のプラスチックと同様に優れた機能を発揮し、使用後は微生物によって自然環境(例えば土壌中など)で速やかに分解され、最終的には土の有機成分や水及び二酸化炭素になるプラスチックのことをいい、現在廃棄物問題等で注目を浴びている。【0003】生分解性プラスチックとしては、これまでにも各種の製品が発表されている。例えば、トウモロコシや馬鈴薯などのでんぷんを乳酸菌により発酵させて得た乳酸を脱水重合したポリ乳酸が挙げられ、農業用マルチフィルムやコンポストバッグなどに利用されているが、原材料価格や加工コストが高く、また将来の食料事情を考慮した場合、必ずしも合理的な方法とはいえない。また、生分解性プラスチックとしてポリカプロラクトンも挙げられ、プラスチックとしての物性や生分解性については満足する性能は得られるものの、価格が高く農業用資材などへの使用が難しく、医療用素材などに利用されているに過ぎない。【0004】さらに、生分解性プラスチックとしてトウモロコシでんぷんにポリエチレンを混練しただけのプラスチックも販売されているが、これはでんぷんなどの天然物由来の成分は生分解されるがポリエチレンはまったく変化(分解)しないことが明らかになっており、本来の意味での生分解性プラスチックではなく、こうした製品は価格は安いが市場から駆逐されつつある。【0005】以上のように、これまでに発表されてきた生分解性プラスチックは、性能が思わしくなかったり、製造方法が複雑であり価格が高いことから普及が遅れている。しかし地球環境の保護の観点から今後の需要はますます拡大することが予想され、より性能が高く、よりコストの安い製品の出現が望まれている。このような状況下、植物に多く含まれるセルロース又はその誘導体を主成分とする生分解性プラスチックも検討されているが、他の生分解性プラスチックと同様にコストが問題となっている。【0006】一方、コーンコブを乾燥破砕したコーンコブミールは、キノコ栽培の菌床や豆類の研磨材あるいは動物の営巣材料などに利用されてはいるが、工業原料としての利用は極めて少なく、生産されるコーンコブの大半が廃棄物として捨てられており、その処理方法も焼却処分が中心のため環境を悪化させるなどの問題点も多く、コーンコブの有効利用も検討されている。上述のように、コーンコブは廃棄されているがその成分の大半はセルロース(リグノセルロース及びヘミセルロース)であり、コーンコブを原料としてセルロース又はその誘導体等を主成分とする生分解性プラスチックを製造すれば、農業生産者が負担していた廃棄物処理費用が掛からず、原料の集荷等にほとんど労力を要しないため原材料費がゼロとなり、他の生分解性プラスチックと比較して価格競争力が高くなることが考えられる。【0007】しかし、こうした特徴を持ちながらこれまでにコーンコブを原料としたセルロース又はその誘導体等を主成分とする生分解性プラスチックが開発されなかった理由として、コーンコブの主成分であるリグノセルロースからリグニンを分離することが難しく、エステル化等に要するコストが多く掛かるためと考えられる。これはコーンコブからセルロース又はその誘導体等を主成分とする生分解性プラスチックを製造するためには、リグノセルロースからリグニンを分離し、セルロース(高品質パルプ)を得る必要があるが、リグノセルロースからリグニンを分離するためには、コーンコブを石うすでたたき、アルカリで煮沸し、亜硫酸処理を施すという多工程を必要とすることに起因する。【0008】【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、従来廃棄されていたコーンコブミールを原料とした生分解性プラスチックとして有用な酢酸セルロースの低コストな製造方法を目的とする。更に、前記酢酸セルロースの製造の際発生する副生成物より甘味料として有用なキシロオリゴ糖の製造方法を提供することを目的とする。【0009】【課題を解決するための手段】前記課題は、下記の本発明により達成された。即ち、本発明は、<1> コーンコブミールを150〜250℃及び20〜29Mpaの圧力容器内にて蒸煮した後、濾過装置にて濾過することにより得られた固形物に、無水酢酸及び硫酸を加え脱水酢化処理することを特徴とする酢酸セルロースの製造方法である。<2> コーンコブミールを150〜250℃及び20〜29Mpaの圧力容器内にて蒸煮した後、濾過装置にて固形物を除去した濾液にキシラナーゼを加え、加水分解処理することを特徴とするキシロオリゴ糖の製造方法である。【0010】【発明の実施の形態】本発明の酢酸セルロース及びキシロオリゴ糖の製造方法は、コーンコブミールを150〜250℃及び20〜29Mpaの圧力容器内にて蒸煮(以下、「蒸煮処理」という場合がある。)した後、濾過装置にて固形物と濾液とを分離することを特徴とする。【0011】先ず、本発明における蒸煮処理について説明する。本発明における蒸煮処理はコーンコブミール(コーンコブを乾燥破砕、粉末化したもの)に水を添加し、亜臨界(超臨界一歩手前)状態である150〜250℃及び20〜29Mpaの圧力容器内にて蒸煮する工程をいう。本発明における蒸煮処理により、従来は多工程を要したリグノセルロースからのリグニン分離が可能となる。【0012】前記蒸煮処理は、温度を150〜250℃に、圧力を20〜29Mpaにする必要があり、温度を180〜200℃に、圧力を25〜28Mpaにすることが好ましい。また、水の添加量は、コーンコブミール100質量部に対して、10〜1000質量部が好ましく、50〜100質量部がより好ましい。前記蒸煮処理は10〜30分間行うことが好ましく、15〜20分間行うことがより好ましい。【0013】更に、前記蒸煮処理では水と共に亜硫酸化合物をコーンコブミールに添加することができる。該亜硫酸化合物をコーンコブミールに添加することにより、蒸煮処理時間を短縮することができる。該亜硫酸化合物としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カルシウム等が挙げられる。また、前記亜硫酸化合物の添加量はコーンコブミール100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、2〜5質量部がより好ましい。【0014】前記蒸煮処理は図1に示すシリンダー内が圧力密閉されている押出機によって好適に実施される。図1は本発明における蒸煮処理を行う圧力容器の一例であるシリンダー内が圧力密閉されている押出機の部分断面図である。該押出機は基部に材料投入口2を有するシリンダー1と、材料投入口2から投入されたコーンコブミール及び水(以下、単に「材料」ということがある。)を混練(蒸煮)して先端側に押出しする螺旋状のフライト4を有するスクリュー3と、シリンダー1を加熱するヒーター5と、スクリュー3を回転するための電源(図示せず)に接続されたモータ7や原動歯車9及び従動歯車10を有する減速ギア8等の駆動手段6と、蒸煮され押出しされた生成物を取出す取出口11と、シリンダー1及びヒーター5を覆う断熱保温材12等からなっている。なお、材料投入口2にはポンプ(図示せず)が取り付けられ、該ポンプより材料投入口2をとおしてシリンダー1内に材料が送り込まれる。また、スクリュー3の螺旋状のフライト4は、取出口11に近ずくにつれてピッチが短くなっている。更に、シリンダー1のスクリュー3の先端部近傍には温度センサー13及び圧力センサー14が配設されている。【0015】図1に記載の押出機による蒸煮処理は以下の手順でおこなわれる。不図示のポンプより材料投入口2をとおしてシリンダー1内に材料を投入し、ヒーター5によりシリンダー1内の温度を目的の温度に調整する。更に、モータ7側からみてモータ7の回転軸を時計回りに回転させることにより、原動歯車9を時計回りに、従動歯車10を反時計回りに回転させ、更にスクリュー3を反時計回りに回転させコーンコブミールを蒸煮しながら取出口11方向に押出す。スクリュー3の螺旋状のフライト4は、取出口11に近ずくにつれてピッチが短くなっているため、コーンコブミールは取出口11に近ずくにつれ圧縮され所定の圧力がかかる。蒸煮処理が終了したコーンコブミールは取出口11から押出される。本実施形態では温度センサー13及び圧力センサー14がシリンダー1のスクリュー3の先端部近傍に配設されているが、温度センサー13の配設位置はシリンダー1の軸方向の中心部よりスクリュー3の先端部側であればよく、圧力センサー14の配設位置はシリンダー1のスクリュー3の先端部側1/4の空間であればよい。【0016】図1に記載の押出機による蒸煮処理を行う場合は、温度センサー13及び圧力センサー14で測定した温度及び圧力が、150〜250℃、圧力:20〜29Mpaの条件を満たしている必要がある。【0017】更に、図1に記載の押出機を2台以上直列に連結して蒸煮処理する方法、つまり第一の押出機で蒸煮され取出口11から押出されたコーンコブミールと水との混合物を直接第二の押出機の材料投入口2に投入し更に蒸煮する方法も好適に行われる。図1に記載の押出機を2台以上直列に連結して蒸煮処理する場合、各押出機の蒸煮条件は、最後に連結した押出機の蒸煮条件が温度:150〜250℃、圧力:20〜29Mpaの条件を満たしていれば同一でも異なっていてもよい。各押出機の蒸煮条件が異なっている場合は、第一の押出機から最後に連結した押出機にすすむにつれて温度及び圧力が上昇していることが好ましい。【0018】上述のコーンコブミールの蒸煮処理により、リグノセルロースが分解して生成したポリフェノール(リグニンから変化することにより生成)及びセルロースと、可溶性のヘミセミロース(以下、「可溶性キシラン」という。)とが得られ、これを濾過装置にて濾過(濾過処理)することにより、固形物であるセルロース(高品質パルプ)と、ポリフェノール及び可溶性キシランの混合溶液とに分離できる。【0019】前記濾過処理により得られたリグニンの外れたセルロースは、水酸基同士が結合する水素結合をおこし、結晶化してしまい、水にも溶剤にも溶けない状態となっている。そこで、後述する脱水酢化処理を行い、分子内の水酸基の一部を酢酸基に変え、水にも溶剤にも可溶でプラスチック化された酢酸セルロース化が得られる。【0020】前記脱水酢化処理は、撹拌装置を備えた圧力容器内で、セルロースに無水酢酸及び硫酸を加えて反応させ、セルロースの水素結合のもとになる水酸基を酢酸基に置換するもので、重合度をn、置換度をmとしたとき、下記反応式(1)及び(2)によって表される。【0021】反応式(1){C6H7O2(OH)3}n+3n(CH3CO)2O→{C6H7O2(OCOCH3)3}n+3nCH3COOH反応式(2){C6H7O2(OCOCH3)3}n+n(3−m)H2O→{C6H7O2(OCOCH3)m(OH)3−m}n+n(3−m)CH3COOH【0022】反応式(1)は、セルロースと無水酢酸とが反応して完全に酢酸基に置換された酢酸セルロースと酢酸が生成していることを示している。一方、反応式(2)は、反応式(1)で生成した酢酸セルロースと水とが反応して、置換度mの酢酸セルロースと酢酸が生成していることを示している。前記反応式(1)及び(2)で生成した酢酸は再利用することができる。【0023】前記脱水酢化処理は以下の手順で行うことができる。先ず前記濾過処理により得られた固形分(セルロース)を水洗いしてアルカリ分を除去した後、硫酸及び無水酢酸を添加し反応させ、得られた反応生成物から脱水装置にて酢酸を除去(回収)し乾燥させる。以上の手順で酢化度51〜61の酢酸セルロースが得られる。また、硫酸の添加量は乾燥セミロース100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、3〜5質量部添加がより好ましい。無水酢酸の添加量は1〜20質量部が好ましく、5〜10質量部がより好ましい。更に、酢酸も好ましく添加することができ、その添加量はセミロース100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、3〜5質量部がより好ましい。【0024】前記脱水酢化処理条件としては、圧力は5〜15Mpaであることが好ましく、8〜10Mpaであることがより好ましい。温度は60〜100℃であることが好ましく、70〜90℃であることがより好ましい。攪拌速度は毎分30〜100回転が好ましく、毎分40〜60回転がより好ましい。処理時間は15〜30時間が好ましく、20〜24時間がより好ましい。【0025】酢酸セルロースはそれ自体が生分解性を有するプラスチックであるが、これをベースに種々の素材(例えばトウモロコシでんぷんやポリ乳酸等)を混練することにより特性の異なる生分解性プラスチックをつくることができる。【0026】一方、前記濾過処理により得られた可溶性キシランは、キシラナーゼによる加水分解処理(酵素処理)を行うことによりキシロオリゴ糖となる。前記酵素処理は以下の手順で行うことができる。撹拌装置を備え保温機構を有する反応容器内で、濾過装置にて固形物を除去した濾液にキシラナーゼを添加し反応させ、得られた反応生成物から濾過装置にて懸濁物質を除去し乾燥させる。以上の手順でキシロオリゴ糖が得られる。【0027】前記酵素処理におけるキシラナーゼの添加量は濾液100質量部に対し0.1〜5質量部が好ましく、0.5〜2質量部がより好ましい。また、前記酵素処理はpH3〜8の条件下で行うことが好ましく、pH4〜6の条件下で行うことがより好ましい。更に、処理温度は30〜50℃が好ましく、40〜45℃がより好ましい。攪拌速度は毎分60〜200回転が好ましく、100〜150回転がより好ましい。処理時間は15〜30時間が好ましく、20〜24時間がより好ましい。【0028】前記酵素処理により可溶性キシランがキシロオリゴ糖(甘味料)となるが、これは副次生成物であり、この工程を省いても生分解性プラスチックの製造方法として不都合を生じるものではないが、この工程を付加することにより原材料の利用率が格段に上がり、廃棄物が減るとともに有用な製品の副次的生産も可能となる。換言すれば酢酸セルロースの製造コストを下げることができる。ちなみにキシロオリゴ糖は虫歯を予防したり腸内細菌のバランスを整えて健康を増進する作用があることから各種の食品に利用されており、今後も需要は大きく伸びることが予想される。【0029】【実施例】以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。(実施例1)コーンコブミールの蒸煮を図1に示す圧力密閉された押出機と同様の押出機が直列に4基連なっているものにより行った。前記直列に4基連なっている押出機は第一の押出機の取出口11と第二の押出機の材料投入口2が連結され、以下同様に第四の押出機まで連結されており、第一の押出機により蒸煮された混練物が直接第二の押出機の材料投入口2を通してシリンダー1内に投入され、同様に第四の押出機の材料投入口2まで達する仕組みとなっている。【0030】コーンコブミール100質量部に亜硫酸カルシウム5質量部及び水50質量部を添加し、それを図1に示す圧力密閉された押出機の材料投入口2よりシリンダー1内に投入した。次に第一の押出機の温度・圧力を表1に記載の値に設定し、モーターを駆動しスクリュー3を回転させ5分間混練(蒸煮)した後、取出口11から押出す。取出口11から押出された混練物は直接第二の押出機の材料投入口2を通してシリンダー1内に投入され、同様に第四の押出機まで混練(蒸煮)を行った。各押出機の設定条件及び混練(蒸煮)時間は表1に示すとおりである。尚、表1に記載の温度及び圧力は、温度センサー13及び圧力センサー14で測定した値である。【0031】【表1】【0032】前記直列に4基連なっている押出機により蒸煮したコーンコブミールを濾過装置にて濾過し、得られた固形物(セルロース)を攪拌装置を備えた圧力容器に投入し、更に固形物100質量部に対して、酢酸5質量部、無水酢酸10質量部、及び硫酸5質量部を前記圧力容器に投入した後、圧力10MPa、攪拌速度毎分60回転で24時間反応させ、酢酸セルロースを得た。得られた酢酸セルロースの物性値を表2に示す。【0033】【表2】【0034】一方、前記蒸煮したコーンコブミールを濾過装置にて濾過することにより固形物を除去した濾液は、攪拌装置を備えた保温機構を有する反応容器内に投入し、更に濾液100質量部に対して、キシラナーゼ3質量部、水酸化ナトリウム0.1質量部を前記反応容器内に投入した後、温度45℃、攪拌速度毎分150回転で24時間反応させ、キシロオリゴ糖を得た。【0035】コーンコブミールを本発明における蒸煮処理を行うことにより、従来多工程を要したリグノセルロースからのリグニンの除去を一工程で行え、リグニンを除去したセルロースは酢酸に漬け込む等の前処理を行うことなく酢化処理することができ、従来より大幅に工程を削減して酢酸セルロースを得ることができた。また、前記蒸煮処理により生成した可溶性キシラン(従来は廃棄)からキシロオリゴ糖を得ることもでき、その結果コーンコブミールの95質量%以上を製品化することができた。また、キシロオリゴ糖は甘味料として活用できることから酢酸セルロースの製造コストを更に下げることができた。【0036】【発明の効果】本発明により、従来廃棄されていたコーンコブミールを原料とした生分解性プラスチックとして有用な酢酸セルロースの低コストな製造方法を目的とする。更に、前記酢酸セルロースの製造の際発生する副生成物より甘味料として有用なキシロオリゴ糖の製造方法を提供することができる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明における蒸煮処理を行う圧力容器の一例であるシリンダー内が圧力密閉されている押出機の部分断面図である。【符号の説明】1 シリンダー2 材料投入口3 スクリュー4 螺旋状のフライト5 ヒーター6 駆動手段7 モーター8 減速ギア9 原動歯車10 従動歯車11 取出口12 断熱保温材13 温度センサー14 圧力センサー コーンコブミールを150〜250℃及び20〜29Mpaの圧力容器内にて蒸煮した後、濾過装置にて濾過することにより得られた固形物に、無水酢酸及び硫酸を加え脱水酢化処理することを特徴とする酢酸セルロースの製造方法。 コーンコブミールを150〜250℃及び20〜29Mpaの圧力容器内にて蒸煮した後、濾過装置にて固形物を除去した濾液にキシラナーゼを加え、加水分解処理することを特徴とするキシロオリゴ糖の製造方法。 【課題】従来廃棄されていたコーンコブミールを原料とする、低コストな生分解性プラスチックとして有用な酢酸セルロースの製造方法を提供する。【解決手段】コーンコブミールを150〜250℃及び20〜29Mpaの圧力容器内にて蒸煮した後、濾過装置にて濾過することにより得られた固形物に、無水酢酸及び硫酸を加え脱水酢化処理することを特徴とする酢酸セルロースの製造方法。【選択図】  なし 20021216 A16330 全文 3 【特許請求の範囲】【請求項1】コーンコブミールを150〜250℃及び20〜29MPaの圧力容器内にて蒸煮した後、濾過装置にて濾過することにより得られた固形物に、無水酢酸及び硫酸を加え脱水酢化処理することを特徴とする酢酸セルロースの製造方法。【発明の詳細な説明】【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、コーンコブミールを原料とする生分解性プラスチックとして有用な酢酸セルロースの製造方法に関する。【0002】【従来の技術】生分解性プラスチックとは、使用している間は通常のプラスチックと同様に優れた機能を発揮し、使用後は微生物によって自然環境(例えば土壌中など)で速やかに分解され、最終的には土の有機成分や水及び二酸化炭素になるプラスチックのことをいい、現在廃棄物問題等で注目を浴びている。【0003】生分解性プラスチックとしては、これまでにも各種の製品が発表されている。例えば、トウモロコシや馬鈴薯などのでんぷんを乳酸菌により発酵させて得た乳酸を脱水重合したポリ乳酸が挙げられ、農業用マルチフィルムやコンポストバッグなどに利用されているが、原材料価格や加工コストが高く、また将来の食料事情を考慮した場合、必ずしも合理的な方法とはいえない。また、生分解性プラスチックとしてポリカプロラクトンも挙げられ、プラスチックとしての物性や生分解性については満足する性能は得られるものの、価格が高く農業用資材などへの使用が難しく、医療用素材などに利用されているに過ぎない。【0004】さらに、生分解性プラスチックとしてトウモロコシでんぷんにポリエチレンを混練しただけのプラスチックも販売されているが、これはでんぷんなどの天然物由来の成分は生分解されるがポリエチレンはまったく変化(分解)しないことが明らかになっており、本来の意味での生分解性プラスチックではなく、こうした製品は価格は安いが市場から駆逐されつつある。【0005】以上のように、これまでに発表されてきた生分解性プラスチックは、性能が思わしくなかったり、製造方法が複雑であり価格が高いことから普及が遅れている。しかし地球環境の保護の観点から今後の需要はますます拡大することが予想され、より性能が高く、よりコストの安い製品の出現が望まれている。このような状況下、植物に多く含まれるセルロース又はその誘導体を主成分とする生分解性プラスチックも検討されているが、他の生分解性プラスチックと同様にコストが問題となっている。【0006】一方、コーンコブを乾燥破砕したコーンコブミールは、キノコ栽培の菌床や豆類の研磨材あるいは動物の営巣材料などに利用されてはいるが、工業原料としての利用は極めて少なく、生産されるコーンコブの大半が廃棄物として捨てられており、その処理方法も焼却処分が中心のため環境を悪化させるなどの問題点も多く、コーンコブの有効利用も検討されている。上述のように、コーンコブは廃棄されているがその成分の大半はセルロース(リグノセルロース及びヘミセルロース)であり、コーンコブを原料としてセルロース又はその誘導体等を主成分とする生分解性プラスチックを製造すれば、農業生産者が負担していた廃棄物処理費用が掛からず、原料の集荷等にほとんど労力を要しないため原材料費がゼロとなり、他の生分解性プラスチックと比較して価格競争力が高くなることが考えられる。【0007】しかし、こうした特徴を持ちながらこれまでにコーンコブを原料としたセルロース又はその誘導体等を主成分とする生分解性プラスチックが開発されなかった理由として、コーンコブの主成分であるリグノセルロースからリグニンを分離することが難しく、エステル化等に要するコストが多く掛かるためと考えられる。これはコーンコブからセルロース又はその誘導体等を主成分とする生分解性プラスチックを製造するためには、リグノセルロースからリグニンを分離し、セルロース(高品質パルプ)を得る必要があるが、リグノセルロースからリグニンを分離するためには、コーンコブを石うすでたたき、アルカリで煮沸し、亜硫酸処理を施すという多工程を必要とすることに起因する。【0008】【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、従来廃棄されていたコーンコブミールを原料とする、低コストな生分解性プラスチックとして有用な酢酸セルロースの製造方法を提供することを目的とする。【0009】【課題を解決するための手段】前記課題は、下記の本発明により達成された。即ち、本発明は、コーンコブミールを150〜250℃及び20〜29MPaの圧力容器内にて蒸煮した後、濾過装置にて濾過することにより得られた固形物に、無水酢酸及び硫酸を加え脱水酢化処理することを特徴とする酢酸セルロースの製造方法である。【0010】【発明の実施の形態】本発明の酢酸セルロースの製造方法では、先ずコーンコブミールを150〜250℃及び20〜29MPaの圧力容器内にて蒸煮(以下、「蒸煮処理」という場合がある。)する。【0011】先ず、本発明における蒸煮処理について説明する。本発明における蒸煮処理はコーンコブミール(コーンコブを乾燥破砕、粉末化したもの)に水を添加し、亜臨界(超臨界一歩手前)状態である150〜250℃及び20〜29MPaの圧力容器内にて蒸煮する工程をいう。本発明における蒸煮処理により、従来は多工程を要したリグノセルロースからのリグニン分離が可能となる。【0012】前記蒸煮処理は、温度を150〜250℃に、圧力を20〜29MPaにする必要があり、温度を180〜200℃に、圧力を25〜28MPaにすることが好ましい。また、水の添加量は、コーンコブミール100質量部に対して、10〜1000質量部が好ましく、50〜100質量部がより好ましい。前記蒸煮処理は10〜30分間行うことが好ましく、15〜20分間行うことがより好ましい。【0013】更に、前記蒸煮処理では水と共に亜硫酸化合物をコーンコブミールに添加することができる。該亜硫酸化合物をコーンコブミールに添加することにより、蒸煮処理時間を短縮することができる。該亜硫酸化合物としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カルシウム等が挙げられる。また、前記亜硫酸化合物の添加量は、コーンコブミール100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、2〜5質量部がより好ましい。【0014】前記蒸煮処理は図1に示すシリンダー内が圧力密閉されている押出機によって好適に実施される。図1は本発明における蒸煮処理を行う圧力容器の一例であるシリンダー内が圧力密閉されている押出機の部分断面図である。該押出機は基部に材料投入口2を有するシリンダー1と、材料投入口2から投入されたコーンコブミール及び水(以下、単に「材料」ということがある。)を混練(蒸煮)して先端側に押出しする螺旋状のフライト4を有するスクリュー3と、シリンダー1を加熱するヒーター5と、スクリュー3を回転するための電源(図示せず)に接続されたモータ7や原動歯車9及び従動歯車10を有する減速ギア8等の駆動手段6と、蒸煮され押出しされた生成物を取出す取出口11と、シリンダー1及びヒーター5を覆う断熱保温材12等からなっている。なお、材料投入口2にはポンプ(図示せず)が取り付けられ、該ポンプより材料投入口2をとおしてシリンダー1内に材料が送り込まれる。また、スクリュー3の螺旋状のフライト4は、取出口11に近ずくにつれてピッチが短くなっている。更に、シリンダー1のスクリュー3の先端部近傍には温度センサー13及び圧力センサー14が配設されている。【0015】図1に記載の押出機による蒸煮処理は以下の手順でおこなわれる。不図示のポンプより材料投入口2をとおしてシリンダー1内に材料を投入し、ヒーター5によりシリンダー1内の温度を目的の温度に調整する。更に、モータ7側からみてモータ7の回転軸を時計回りに回転させることにより、原動歯車9を時計回りに、従動歯車10を反時計回りに回転させ、更にスクリュー3を反時計回りに回転させコーンコブミールを蒸煮しながら取出口11方向に押出す。スクリュー3の螺旋状のフライト4は、取出口11に近ずくにつれてピッチが短くなっているため、コーンコブミールは取出口11に近ずくにつれ圧縮され所定の圧力がかかる。蒸煮処理が終了したコーンコブミールは取出口11から押出される。本実施形態では温度センサー13及び圧力センサー14がシリンダー1のスクリュー3の先端部近傍に配設されているが、温度センサー13の配設位置はシリンダー1の軸方向の中心部よりスクリュー3の先端部側であればよく、圧力センサー14の配設位置はシリンダー1のスクリュー3の先端部側1/4の空間であればよい。【0016】図1に記載の押出機による蒸煮処理を行う場合は、温度センサー13及び圧力センサー14で測定した温度及び圧力が、150〜250℃、圧力:20〜29MPaの条件を満たしている必要がある。【0017】更に、図1に記載の押出機を2台以上直列に連結して蒸煮処理する方法、つまり第一の押出機で蒸煮され取出口11から押出されたコーンコブミールと水との混合物を直接第二の押出機の材料投入口2に投入し更に蒸煮する方法も好適に行われる。図1に記載の押出機を2台以上直列に連結して蒸煮処理する場合、各押出機の蒸煮条件は、最後に連結した押出機の蒸煮条件が温度:150〜250℃、圧力:20〜29MPaの条件を満たしていれば同一でも異なっていてもよい。各押出機の蒸煮条件が異なっている場合は、第一の押出機から最後に連結した押出機にすすむにつれて温度及び圧力が上昇していることが好ましい。【0018】上述のコーンコブミールの蒸煮処理により、リグノセルロースが分解して生成したポリフェノール(リグニンから変化することにより生成)及びセルロースと、可溶性のヘミセミロース(以下、「可溶性キシラン」という。)とが得られ、これを濾過装置にて濾過(濾過処理)することにより、固形物であるセルロース(高品質パルプ)を得ることができる。【0019】前記濾過処理により得られたリグニンの外れたセルロースは、水酸基同士が結合する水素結合をおこし、結晶化してしまい、水にも溶剤にも溶けない状態となっている。そこで、後述する脱水酢化処理を行い、分子内の水酸基の一部を酢酸基に変え、水にも溶剤にも可溶でプラスチック化された酢酸セルロースが得られる。【0020】前記脱水酢化処理は、撹拌装置を備えた圧力容器内で、セルロースに無水酢酸及び硫酸を加えて反応させ、セルロースの水素結合のもとになる水酸基を酢酸基に置換するもので、重合度をn、置換度をmとしたとき、下記反応式(1)及び(2)によって表される。【0021】反応式(1){C6H7O2(OH)3}n+3n(CH3CO)2O→{C6H7O2(OCOCH3)3}n+3nCH3COOH反応式(2){C6H7O2(OCOCH3)3}n+n(3−m)H2O→{C6H7O2(OCOCH3)m(OH)3−m}n+n(3−m)CH3COOH【0022】反応式(1)は、セルロースと無水酢酸とが反応して完全に酢酸基に置換された酢酸セルロースと酢酸が生成していることを示している。一方、反応式(2)は、反応式(1)で生成した酢酸セルロースと水とが反応して、置換度mの酢酸セルロースと酢酸が生成していることを示している。前記反応式(1)及び(2)で生成した酢酸は再利用することができる。【0023】前記脱水酢化処理は以下の手順で行うことができる。先ず前記濾過処理により得られた固形分(セルロース)を水洗いしてアルカリ分を除去した後、硫酸及び無水酢酸を添加し反応させ、得られた反応生成物から脱水装置にて酢酸を除去(回収)し乾燥させる。以上の手順で酢化度51〜61の酢酸セルロースが得られる。また、硫酸の添加量は乾燥セミロース100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、3〜5質量部添加がより好ましい。無水酢酸の添加量は1〜20質量部が好ましく、5〜10質量部がより好ましい。更に、酢酸も好ましく添加することができ、その添加量はセミロース100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、3〜5質量部がより好ましい。【0024】前記脱水酢化処理条件としては、圧力は5〜15MPaであることが好ましく、8〜10MPaであることがより好ましい。温度は60〜100℃であることが好ましく、70〜90℃であることがより好ましい。攪拌速度は毎分30〜100回転が好ましく、毎分40〜60回転がより好ましい。処理時間は15〜30時間が好ましく、20〜24時間がより好ましい。【0025】酢酸セルロースはそれ自体が生分解性を有するプラスチックであるが、これをベースに種々の素材(例えばトウモロコシでんぷんやポリ乳酸等)を混練することにより特性の異なる生分解性プラスチックをつくることができる。【0026】【実施例】以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。(実施例1)コーンコブミールの蒸煮を図1に示す圧力密閉された押出機と同様の押出機が直列に4基連なっているものにより行った。前記直列に4基連なっている押出機は第一の押出機の取出口11と第二の押出機の材料投入口2が連結され、以下同様に第四の押出機まで連結されており、第一の押出機により蒸煮された混練物が直接第二の押出機の材料投入口2を通してシリンダー1内に投入され、同様に第四の押出機の材料投入口2まで達する仕組みとなっている。【0027】コーンコブミール100質量部に亜硫酸カルシウム5質量部及び水50質量部を添加し、それを図1に示す圧力密閉された押出機の材料投入口2よりシリンダー1内に投入した。次に第一の押出機の温度・圧力を表1に記載の値に設定し、モーターを駆動しスクリュー3を回転させ5分間混練(蒸煮)した後、取出口11から押出す。取出口11から押出された混練物は直接第二の押出機の材料投入口2を通してシリンダー1内に投入され、同様に第四の押出機まで混練(蒸煮)を行った。各押出機の設定条件及び混練(蒸煮)時間は表1に示すとおりである。尚、表1に記載の温度及び圧力は、温度センサー13及び圧力センサー14で測定した値である。【0028】【表1】【0029】前記直列に4基連なっている押出機により蒸煮したコーンコブミールを濾過装置にて濾過し、得られた固形物(セルロース)を攪拌装置を備えた圧力容器に投入し、更に固形物100質量部に対して、酢酸5質量部、無水酢酸10質量部、及び硫酸5質量部を前記圧力容器に投入した後、圧力10MPa、攪拌速度毎分60回転で24時間反応させ、酢酸セルロースを得た。得られた酢酸セルロースの物性値を表2に示す。【0030】【表2】【0031】コーンコブミールを本発明における蒸煮処理を行うことにより、従来多工程を要したリグノセルロースからのリグニンの除去を一工程で行え、リグニンを除去したセルロースは酢酸に漬け込む等の前処理を行うことなく酢化処理することができ、従来より大幅に工程を削減して酢酸セルロースを得ることができた。【0032】【発明の効果】本発明により、従来廃棄されていたコーンコブミールを原料とする、低コストな生分解性プラスチックとして有用な酢酸セルロースの製造方法を提供することができる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明における蒸煮処理を行う圧力容器の一例であるシリンダー内が圧力密閉されている押出機の部分断面図である。【符号の説明】1 シリンダー2 材料投入口3 スクリュー4 螺旋状のフライト5 ヒーター6 駆動手段7 モーター8 減速ギア9 原動歯車10 従動歯車11 取出口12 断熱保温材13 温度センサー14 圧力センサー


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