生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_食品中のキトサン含量の定量法
出願番号:2002172867
年次:2004
IPC分類:7,G01N33/02,G01N21/78,G01N31/00,G01N33/52


特許情報キャッシュ

星野 躍介 北原 さくら 小野 嘉洋 JP 2004020266 公開特許公報(A) 20040122 2002172867 20020613 食品中のキトサン含量の定量法 株式会社ニチロ 000233620 大津 洋夫 100103698 星野 躍介 北原 さくら 小野 嘉洋 7 G01N33/02 G01N21/78 G01N31/00 G01N33/52 JP G01N33/02 G01N21/78 Z G01N31/00 V G01N31/00 Y G01N33/52 C 1 OL 8 2G042 2G045 2G054 2G042AA01 2G042BD19 2G042CA10 2G042CB06 2G042DA08 2G042FA11 2G042FB02 2G045AA40 2G045BA01 2G045BB05 2G045FA11 2G045FB11 2G045GC12 2G054AA06 2G054BA01 2G054CA16 2G054CE01 2G054EA06 2G054GB05 【0001】【発明が属する技術分野】本発明は、食品中に含有するキトサン含量の定量法に関するものである。【0002】【従来の技術】健康食品として販売されているキトサン含有食品は、キトサン含有量の表示が必要となっている。【0003】従来、一般にキチン・キトサンの定量法は、キトサンを含有する食品を硫酸や塩酸で直接的に加水分解し、生成するβ−D−グルコサミン量を測定するものである。そのために食品中の成分、特に澱粉と蛋白質が加水分解され、生じたグルコースとアミノ酸が後のグルコサミンの定量に影響を及ぼし正確な定量値が求めにくいものであった。【0004】上記のような課題を解消する手段として、キチン及びキトサンを含む食品中の澱粉や蛋白を加水分解酵素により予め取り除いた後、残存するキチン及びキトサンを硫酸を用いて加水分解し、生成するグルコサミンを定量するものがあった(特開平5−252997)。この従来技術において、食品中から加水分解酵素により澱粉や蛋白を取り除く方法としては、プロスキー法を用いている。また、生成したグルコサミンを定量する方法としては、インドール塩酸法により比色定量しているものである。【0005】すなわち、従来技術ではキトサンを含む食物繊維をプロスキー法で処理し、この食物繊維をセライトをひいたグラスフィルターで回収し恒量を出したのち、グラスフィルターの食物繊維全量をセライトごと、容器に移して硫酸分解を行う。そして、硫酸分解後、適当な濃度に希釈し、キトサン分解物をインドール塩酸法により比色定量し、キトサン含量を算出する方法である。【0006】ここでプロスキー法とは、食品(試料)からの食物繊維の分離方法であり、また、インドール塩酸法とは、グルコサミン及びキトサン分解物を発色の度合いによりキトサンを定量する方法である。【0007】従来の食品中のキトサン含量を定量する方法について説明すると、食品試料としては、30メッシュパスのものを用い、液状または水分が多い試料の場合は、凍結乾燥を行った後、粉砕して定量分析に供する。また、粗脂肪が6%以上の食品試料の場合は、30分間の静置脱水を3〜4回行って用いるものである。【0008】従来法のプロスキー法では、まず第1に食品試料から食物繊維を分離する。従来のプロスキー法による食物繊維の分離工程は、試料を正確に秤量して、リン酸緩衝液を加え懸濁した後、沸騰水浴中で時々攪拌しながら30分間酵素処理を行う。酵素処理後、室温まで冷却し水酸化ナトリウムを加え、水酸化ナトリウムまたはリン酸で、pHを調整する。【0009】次いで耐熱性プロテアーゼにリン酸緩衝液を用いて濃度調整した酵素液を加え、攪拌しながら60℃で30分間酵素処理を行う。終了後、室温まで水冷しリン酸を加え、水酸化ナトリウムまたはリン酸で、pHを調整する。続いてアミログルコシダーゼを加え、攪拌しながら60℃で30分間酵素処理を行う。終了後、加温したエタノールを加え室温で1時間放置する。放置後、酸洗浄したセライトを均一に敷き詰めたガラスフィルター(Prosity−2:pore size40−90μm)で吸引濾過する。濾過終了後、吸引しながらエタノールでトールビーカーに残っている食物繊維をフィルター上に回収する。この回収操作を2回繰り返した後、フィルター上の残渣をエタノールで2回、アセトンで2回洗浄し、一晩乾燥させ食物繊維残渣を得るものである。【0010】第2に得られた食物繊維残渣を希硫酸により加水分解する。上記により得られた食物繊維残渣を遠沈管にとり、硫酸を加えガラス棒でよく攪拌した後、2時間室温で放置する。その後、脱イオン水をガラス棒に付着したキトサンを洗浄しながら加え、密閉または冷却管を付して6時間100℃で加水分解を行う。分解後、分解熱が熱いうちに遠心分離を行い、セライトを沈殿させ、上清を回収する。遠沈管に残ったセライトに硫酸を加えよく攪拌し100℃まで加熱した後、同様に遠心分離を行って上清を回収する。このセライト洗浄操作を更に1回繰り返した後、上清は脱イオン水でキトサン濃度として0.02〜0.4mg/mlになるように定容して、次の発色試験に供する。【0011】第3にグルコサミンの発色はインドール塩酸法を用いる。まず、試験管に加水分解液をとり、試験1では亜硝酸ナトリウム、試験2では亜硝酸ナトリウムの代わりに脱イオン水を加え攪拌する。続いて、酢酸を加えよく攪拌し、室温で10分間放置する。放置後、スルファミン酸アンモニウムを加え、時々攪拌しながら室温で30分間放置する。この試料に塩酸を加えた後、インドール−エタノール溶液を加え混合し、沸騰水中で5分間反応させた後、エタノールを加え、室温に冷却した後、ただちに490nmと520nmの吸光度を測定する。検量線はグルコサミン塩酸塩水溶液を用い、上記のインドール塩酸法の操作から試験試料と同様に発色させ、OD値を算出する。【0012】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のプロスキー法を用いた定量法によれば、キトサンの回収率が低くなり、バラツキが多くなるものであった。その原因としては次のようなことが推察される。【0013】第1にプロスキー分解において、リン酸緩衝液中のリン酸がキトサンと結合するなどの原因により、食物繊維量が2〜3割増える。このことは正確な食物繊維量が得られないほか、結合したリン酸などが原因で比色定量を正解に行うことが出来ないことが考えられる。【0014】第2にプロスキー分解後、セライトをひいたグラスフィルターでキトサンを含む食物繊維を回収し、乾燥して恒量を検出する操作があるが、この操作を行ったあと、グラスフィルターの食物繊維全量をセライトごと、硫酸分解する容器に移し、硫酸分解を行う。この際に食物繊維全量を容器に移すが、グラスフィルターなどに付着した食物繊維を完全に回収することが困難なため、最終的にキトサンの回収率が下がる。【0015】第3に硫酸分解後、硫酸分解を行ったサンプル中のセライトを除去する際に遠心分離を行うが、その際に高温を保ったまま遠心分離を行わなければ、キトサン分解物の硫酸塩と思われる細かな結晶がセライトとともに沈殿し、結果としてキトサンの回収率が下がることがあり操作が複雑である。【0016】第4に硫酸分解後の遠心によるセライト除去を行った上澄み液をメスフラスコに移し、メスアップしたサンプルを一部採取し、これを比色定量するものである。この際に硫酸分解したサンプルは、キトサン分解物の硫酸塩と思われる細かな結晶が沈殿し、メスアップしたサンプルから一部採取する時に、均一になるように良く攪拌しなければ、キトサンの回収率が低下する。【0017】従来のプロスキー法を用いた定量法により、キトサンにリン酸が結合して食物繊維量が増加することを示すため、キトサンを含む食品「キトサン・小麦粉混合物」について食物繊維量を測定した結果、下記の表1に示すとおりであった。【0018】【表1】※1:小麦粉由来の繊維量計算値は、小麦粉100%のサンプルより得られた食物繊維量より小麦粉の添加量に合わせて計算した値。※2:キトサン由来食物繊維量計算値は、プロスキー法による総食物繊維量測定値から小麦粉由来食物繊維量計算値を差し引いた値。【0019】上記の測定結果からみて、キトサン添加率と見かけ上のキトサン重量増加量には明らかに相関が見られる(図1参照)。この現象はプロスキー法で分解する際、リン酸緩衝液中のリン酸が結合するために生ずる現象であると思われる。このことからみても従来のプロスキー法ではキトサンを含む食品の食物繊維量を正確に測ることはできないという課題を有していた。【0020】本発明は上記のようなプロスキー法及びインドール塩酸法を用いたキトサン含量の定量法による課題を解消すると共に、食品中のキトサン含有値の回収率が高くなると共に、バラツキが少ない新規な食品中のキトサン含量の定量法を提供するのが目的である。【0021】【課題を解決するための手段】本発明は上記のような課題を解決する手段として、次のような手段を講じたものである。特許を受けようとする発明は、キトサンを含有する食品を、リン酸を含まないTris−酢酸緩衝液を用いたプロスキー法でキトサンを含む食物繊維を回収する工程と、この食物繊維をセライトの引いていないグラスフィルターで回収することにより恒量を測定して食物繊維量を算出する工程と、グラスフィルターの食物繊維の一部を分取して6N塩酸を加え脱気下で加水分解を行う工程と、塩酸加水分解後、適当な濃度に希釈し、キトサン分解物をインドール塩酸法により比色定量してキトサン含量を定量する工程とからなる食品中のキトサン含量の定量法である。【0022】本発明における食品中のキトサン含量の定量法は、上記の各工程により定量するものであり、ここでプロスキー法とは、食品(試料)からの食物繊維の分離方法であり、また、インドール塩酸法とは、酸による加水分解を行った試料中のグルコサミン及びキトサン分解物の存在量を発色の度合いによりキトサンを定量する方法である。【0023】なお、比色定量法としては、インドール塩酸法の他にエルソン・モルガン法がある。キトサンを定量するにあたって酸分解を行い、キトサンを低分子化し比色定量可能なグルコサミン及びキトサンオリゴ糖にする必要があるが、酸分解の条件としては、キトサンが完全に分解された形のグルコサミンだけの状態にし、且つ出来るだけグルコサミンが分解されて減少しないような条件で酸分解を行うことが理想である。しかしながら、塩酸・硫酸のいずれで分解する場合であっても、グルコサミンの分解を出来る限り抑えることが一番重要である。その分解を抑えるために温和な条件下で酸分解を行うが、この場合、キトサンは完全に分解されずグルコサミン及びキトサンオリゴ糖の混合状態となる。【0024】エルソン・モルガン法では単糖であるヘキソサミン類(グルコサミン)のみを定量する。このためキトサンがグルコサミンにまで完全に分解されていなければ、キトサン含量が低くなるということになる。しかし、他の夾雑物の影響をほとんど受けずヘキソサミン類(グルコサミン)だけを定量することが可能なので、キトサンの酸分解を厳密にコントロールすることができ、キトサンのグルコサミンへの分解率が分かれば、よりキトサンに対して特異性の高い定量法になる可能性がある。両比色定量法には長短があり、本発明の比色定量法としては、インドール塩酸法を用いるものである。インドール塩酸法は、グルコサミン及びキトサンオリゴ糖の両方を測定することができるため、本方法を用いた。【0025】本発明においては、第1にリン酸を含まないTris−酢酸緩衝液を用いたプロスキー法でキトサンを含む食物繊維を回収する工程を経るものである。そのために、リン酸塩のキトサンに対する特異的吸着が起こらず、キトサンを含む食物繊維量が正確に算出できると共に、回収したキトサンを含む食物繊維中の不純物がより少なくなる。また、キトサンを含む食物繊維をグラスフィルターで回収する際に、セライトを引かずに直接回収し、キトサンを含む食物繊維量を決定し、その一部を採取し塩酸で加水分解を行うので、キトサンを含む食物繊維の含有比率を正確に測定することができる。【0026】これにより従来方法で問題となる食物繊維のグラスフィルターへの付着による、回収率の低下を防ぐことができる。更に、セライト濾過を行わないので、従来のプロスキー法のようにセライトの除去を行わなくて済み、操作が簡便であり、キトサン酸分解物の結晶の大量発生によって生じるサンプリングの誤差による回収率の低下が起こらないものとなる。【0027】【発明の効果】このように本発明の定量法では、恒量を測定したキトサンを含む食物繊維の一部を採取し、塩酸で加水分解することによって、従来の定量法の課題である食物繊維のグラスフィルターへの付着による、回収率の低下を防ぐことができる。また従来法のようにセライト濾過を行わないため、セライトの除去操作の必要がないので操作を簡便化することができる。そして、硫酸分解のときのような、キトサン酸分解物の発生による回収率の低下が起こらない。更に正確な食物繊維量が出るので、食物繊維中のキトサン含量を算出することも可能である。【0028】【実施例】以下、本発明の態様を試験例1及び試験例2により具体的に説明する。【0029】【試験例1】本発明方法によるキトサン含量の測定値と、従来方法によるキトサン含量の測定値とを比較するため、従来のプロスキー法により食物繊維に分解したものと、改良したプロスキー法により食物繊維に分解したものを下記の表2に示す。なお、キトサン含有食品試料として市販健康食品「カニパワー」(株式会社ニチロ製)を用いた。また、食品試料である市販健康食品に表示されているキトサン等の配合率は下記の表3に示すとおりである。【0030】【表2】【0031】【表3】【0032】その後、上記の従来方法により分解した食物繊維をインドール塩酸法で硫酸分解したものと、同塩酸分解したもの、及び改良したプロスキー法により硫酸分解したもの、本発明方法により塩酸分解したものを下記の表4に示す。【0033】【表4】【0034】本発明方法は、Tris−酢酸緩衝液を用いた本発明法によりキトサンを含む食物繊維に分解した後、塩酸でキトサンを脱気下で加水分解し、生じたグルコサミン及びオリゴグルコサミン量をインドール塩酸法で比色定量しキトサン含量を算出した。【0035】上記の結果から見て、硫酸分解法と比較して塩酸分解の方が回収率が高くなる傾向があった。また、従来プロスキー法と改良プロスキー法で分解した際の差はほとんどないが、前述したように従来プロスキー法ではリン酸のキトサンに対する特異的吸着等の現象が見られ食物繊維量が実際より多く測定されるなど、不純物が含まれている可能性がある。したがって、より不純物が少ない改良プロスキー法でキトサンを含む食物繊維に分解した後、操作が簡便で回収率が良くなる塩酸分解を行い、生じたグルコサミン及びキトサン分解物をインドール塩酸法で比色定量してキトサン含量を算出することにより、従来法と比較して正確な値が得られることが確認された。【0036】なお、参考データとしてエルソン・モルガン法により比色定量したものを下記の表5に示す。【0037】【表5】【図面の簡単な説明】【図1】従来のプロスキー法を用いた定量法により、キトサンを含む食品の食物繊維量を測定した結果からキトサン添加率とキトサン重量増加量の相関関係を示すグラフである。 キトサンを含有する食品を、リン酸を含まないTris−酢酸緩衝液を用いたプロスキー法で夾雑物を分解しキトサンを含む食物繊維を回収する工程と、この食物繊維をセライトの引いていないグラスフィルターで回収することにより恒量を測定して食物繊維量を算出する工程と、この食物繊維の一部を分取して6N塩酸を加え脱気下で加水分解する工程と、塩酸加水分解後、適当な濃度に希釈してキトサン分解物をインドール塩酸法により比色定量してキトサン含量を定量する工程とからなる食品中のキトサン含量の定量法。 【課題】キトサンを含有する食品中のキトサン含量の定量法に関し、従来のプロスキー法及びインドール塩酸法を用いたキトサン含量の定量法による問題を解消すると共に、キトサンの回収率が高くなり、バラツキが少ない食品中のキトサン含量の新規な定量法を提供するのが目的である。【解決手段】キトサンを含有する食品を、リン酸を含まないTris−酢酸Bufferを用いた改良プロスキー法で夾雑物を分解しキトサンを含む食物繊維を回収する工程と、この食物繊維をセライトの引いていないグラスフィルターで回収して恒量を出して食物繊維量を算出する工程と、この食物繊維の一部を分取して6N塩酸を加え脱気下で加水分解する工程と、塩酸加水分解後、適当な濃度に希釈してキトサン分解物をインドール塩酸法により比色定量してキトサン含量を定量する工程とから構成した。【選択図】   なし


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