タイトル: | 特許公報(B2)_リン酸塩系埋没材用の練和液 |
出願番号: | 2002167233 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | B22C 9/04,A61C 13/20,A61K 6/00,B22C 1/08 |
田中 怜 北村 敏夫 JP 4091347 特許公報(B2) 20080307 2002167233 20020607 リン酸塩系埋没材用の練和液 株式会社松風 390011143 青山 葆 100062144 矢野 正樹 100106231 田中 怜 北村 敏夫 JP 2001342765 20011108 JP 2001357293 20011122 20080528 B22C 9/04 20060101AFI20080501BHJP A61C 13/20 20060101ALI20080501BHJP A61K 6/00 20060101ALI20080501BHJP B22C 1/08 20060101ALI20080501BHJP JPB22C9/04 EB22C9/04 JA61C13/20 AA61K6/00 CB22C1/08 C B22C 1/00- 9/30 F27D 19/00 A61C 8/00-13/34 A61K 6/00- 6/10 特開平10−296386(JP,A) 特開昭59−181204(JP,A) 特開平09−141387(JP,A) 特開平06−128017(JP,A) 15 2003220446 20030805 15 20050111 國方 康伸 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は金属の鋳造、特にロストワックス鋳造に用いるリン酸塩系埋没材用の練和液に関する。【0002】【従来の技術】ロストワックス鋳造、特に鋳枠等内に埋没材を投入することによってロウ模型を埋没させるようにした方式のロストワックス鋳造においては、ロウ模型に埋没させる埋没材の粉材は、練和液と混合され、練られて、スラリー状とされる。ロウ模型に埋没させたスラリーは、その後硬化し、焼成炉に入れてワックスを脱ロウし、鋳型を焼成し、その鋳型の鋳込み空間に、溶融された金属を流し込むことによって鋳造がなされる。【0003】前記ロストワックス鋳造において、埋没材としてリン酸塩系埋没材を用いる場合がある。このリン酸塩系埋没材では、その粉材の主成分としてはシリカ、酸化マグネシウムおよび第一リン酸アンモニウムがある。【0004】リン酸塩系埋没材を用いる場合、低融点の金合金、金銀パラジウム合金、陶材焼付用プレシャス合金、陶材焼付用セミプレシャス合金、陶材焼付用ノンプレシャス合金、歯科鋳造用ノンプレシャス合金、純チタン、チタン合金等を鋳造することができる。【0005】一般的には、金合金や金銀パラジウム合金を鋳造する場合は、低コストの石こう系埋没材が利用されることが多い。また、陶材焼付用合金にはリン酸塩系埋没材が主に用いられている。歯科鋳造用ノンプレシャス合金は金属床の鋳造に用いられ、これの鋳造の場合にも、リン酸塩系埋没材が主に用いられている。【0006】そして、前記リン酸塩系埋没材に用いる練和液として、アルカリ性に調整されたコロイダルシリカ水溶液が用いられている。使用に際しては、リン酸塩系埋没材の粉材とコロイダルシリカ水溶液を練和し、ロウ模型が置かれた鋳型枠内に投入することで、スラリーの中にロウ模型を埋没させる。スラリーは、一般的には、10〜20分で硬化し、埋没後1時間程度放置する必要があった。そして、硬化した鋳型を室温から徐々に埋没材の焼成温度(リン酸塩系埋没材の場合では、800〜900℃)まで昇温させ、鋳型を十分に係留し、金属を鋳造する。【0007】鋳造方法の一つとして、硬化した埋没材を600℃以上の高温状態に制御した焼成炉に投入する短時間鋳造法と呼ばれる方法がある。これは、室温から徐々に昇温する場合に比べて大幅に作業時間を短縮することができる。【0008】陶材焼付用の合金を鋳造する場合、鋳型枠は金属の鋳造用リング内に置き、鋳造用リングに緩衝材としてリングライナーを巻くことによって短時間鋳造法が可能な埋没材もある。これは、硬化した埋没材が鋳造用リングでカバーされており、通常比較的小さい鋳造用リングを用いるためである。こうした埋没材はリングレスで室温から徐々に昇温することはできるが、急速加熱を行った場合、鋳型にクラックや割れが生じ、鋳造体にバリが発生するという問題を抱えていた。【0009】また、歯科鋳造用ノンプレシャス合金やチタン、チタン合金等で金属床を作成する場合、鋳型が大きくなり、鋳造後の作業性、つまり鋳造体の掘り出し易さを考慮してリングレス方式を採用する。このような大きな鋳型をリングレスで短時間鋳造を行った場合、鋳型は焼成炉内での割れという問題を抱えていた。従って、歯科技工士は鋳造体作製をやり直さなければならないために時間を要するという間題があった。【0010】また、チタン鋳造の場合、鋳型を室温から時間をかけて昇温し、長時間係留しなければならず、係留時間経過後、焼成炉から取り出して、鋳型を冷やす必要がある。鋳型は急冷すると割れが生じることが多いため、焼成炉の中で徐冷する必要があり、埋没してから鋳造まで5〜7時間以上を要するという問題を抱えていた。【0011】このような背景下、特開昭59−181204号公報には、石こう系埋没材の練和液が開示されている。しかし、この発明によれば、練和液を強酸にしないとリン酸アルミニウムの溶解度が高くならないため、硬化が不十分となる。この練和液はリン酸塩系埋没材へは適用できず、鋳造面が荒れ、鋳型強度が不十分になるという間題があった。【0012】また、特開昭61−147943号公報には、エチルシリケート系埋没材の硬化液(練和液)が開示されている。これは、硬化液中にケイ酸エステル、触媒、有機溶媒、水からなるバインダーにコロイダルシリカを添加するものであるが、この液をリン酸塩系埋没材に適用した場合、操作性が悪くなるという間題があった。【0013】また、特開平1−301608号公報には、歯科鋳造で用いられるリン酸塩系埋没材用の練和液が開示されている。これは、微細なコロイダルシリカに大粒径のコロイダルシリカを配合して大きな硬化膨張と組織強化とを達成することを目的としたものであるが、硬化膨張は得られるものの、急速加熱をするとクラックを生じ、鋳造できないという問題を抱えていた。【0014】また、特開平4−108709号公報には、石こう系埋没材組成物が開示されている。この組成物は、半水石こうに酸、塩基や塩を加えて流動性を改善しようとするものであるが、リン酸塩系埋没材へは適用できないものであった。【0015】また、特開平4−329948号公報および特開平4−330006号公報には、石こう系埋没材のクラックの発生や割れを防止することが開示されている。これらの公報に記載されている通気度増大成分は粉材には適用できるが、液材に入れると沈殿を生ずるものであり、リン酸塩系埋没材では、大きな効果が認められないものであった。【0016】また、特開平6−336409号公報には、トリジマイトを添加して急速加熱を行うことが開示されている。しかし、この方法でも、リン酸塩系埋没材の場合、練和液としてコロイダルシリカを使用するものであり、リングレスで急速加熱を行った場合、クラックや割れを生じるという問題を抱えていた。【0017】また、特開平7―2617号公報には、半水石こうにメタリン酸金属塩を含有させることが開示されている。しかし、メタリン酸塩はリン酸塩埋没材では効果が無く、液材に入れた場合には、やはり沈殿を生じるという問題があった。【0018】また、本出願の発明者のうち一人は、特開平10−296386号(特許第3062454号)において、コロイダルシリカを分散させた練和液のpHを中性ないし弱酸性とすることによって鋳型が割れるのを抑えるようにした練和液を提供した。【0019】この練和液は下記の事情のもとに発明されたものである。すなわち、ロストワックス鋳造、特に鋳枠等内に埋没材を投入することによってロウ模型を埋没させるようにした方式のロストワックス鋳造においては、ロウ模型を埋没させる埋没材は、練和液と混合され、練られて、スラリー状とされる。ロウ模型を埋没させたスラリーは、その後で乾燥され、前記ロウ模型が脱ロウされた後、加熱操作によって焼成硬化され、鋳込み空間を構成した鋳型とされる。そしてこの鋳型の鋳込み空間に、溶融された金属を流し込むことで鋳造がなされる。【0020】前記練和液の役割は、埋没材に混合されて練り合わされることで、埋没材をスラリー状にするという役割の他に、埋没材を加熱硬化させて強度のある鋳型にするための硬化材としての役割を果たす。【0021】前記ロストワックス鋳造において、埋没材としてリン酸塩系埋没材を用いる場合がある。このリン酸塩系埋没材としては、その主成分としてSiO2(シリカ)粉を含み、その他にMgO等の金属酸化物粉を含み、これにNH4H2PO4(第一リン酸アンモニウム)を混ぜ合わせたものが一般に用いられている。具体的な例としては、例えば前記SiO2を80重量%含み、MgO等の金属酸化物(MeXO2)を10重量%弱、NH4H2PO4を10重量%弱、含有させたものがある。【0022】そして前記リン酸塩系埋没材に対する練和液としては、例えばNa2Oを0.2〜0.5重量%程度含む水酸化ナトリウム水溶液にSiO2を30〜40重量%弱分散させて、pHを9〜10程度のアルカリ性に調整した練和液が現在、一般に用いられている。【0023】前記リン酸塩系埋没材に練和液を練り合わせることでスラリー状となり、これをロウ模型が置かれた鋳型枠等内に投入することで、スラリーの中にロウ模型を埋没させる。そして適当な時間放置して全体を乾燥させ、適当に硬化させる。その後、ロウ模型が融ける温度まで加熱して脱ロウする。そしてその後更に、鋳型全体を1000〜1100℃程度まで加熱、昇温して、鋳型の硬化を図る。【0024】しかし、前記の事情のもとに完成された特開平10−296386号の練和液では鋳型の強度が不十分であり、焼成,係留温度より低い温度の焼却炉に入れなければならず、例えば焼成温度が800℃であっても600℃に調整した焼成炉に入れなければならなかった。埋没材を焼成炉に入れると炉内の温度が下がることが多く、従って、それに伴い、係留時間が長くなるという問題を抱えていた。また、強度不足から鋳造体にバリが発生するという問題も抱えていた。【0025】【発明が解決しようとする課題】本発明の1つの目的は、特開平10−296386号公報開示の練和液の問題点を解消し、ロストワックス鋳造に用いられるリン酸系埋没材に混ぜ合わされる練和液として、焼成時やその後において割れ等が生じ難い十分な強度をもった鋳型を得ることができるロストワックス鋳造に用いる埋没材の練和液を提供することにある。【0026】また、従来のリン酸塩系埋没材用の練和液は、リン酸塩系埋没材の粉材と練和した後の硬化体は、金属の鋳造用リングが必要であり、リングレス状態で硬化した埋没材を埋没後20〜60分後に800℃以上の焼成炉に直接投入することができなかった。従って、本発明のもう1つの目的は、焼成炉にリングレスの状態で直接投入でき、割れやクラックが生じないリン酸塩系埋没材用の練和液を提供することにある。【0027】また、従来は、ワックスパターンとのヌレ性が悪く、リン酸塩系埋没材の埋没後の強度が十分でなかったため、クラックや割れが発生し、通気性が少ないために十分に金属を鋳込むことができない場合があった。従って、本発明のさらにもう1つの目的は、ワックスパターンとのヌレ性がよく、埋没後の強度が十分で、通気性に優れたリン酸塩系埋没材用の練和液を提供することにある。【0028】また、従来は、鋳造体の表面は粗造となることがあり、酸化膜ができやすく、鋳造体にバリ等が発生することも少なくなかった。また、焼成後は掘り出しやすいリン酸塩系埋没材の練和液が望まれていた。従って、本発明のさらなる目的は、バリが発生せず、焼成後に掘り出しやすいリン酸塩系埋没材用の練和液を提供することにある。【0029】さらに、従来は、チタン鋳造において、焼成係留後、鋳型を室温に放置してもクラックや割れを生じやすかった。従って、本発明のなおさらなる目的は、チタン鋳造においてクラックや割れが生じないリン酸塩系埋没材用の練和液を提供することにある。【0030】【課題を解決するための手段】これらの課題について本発明者らは、鋭意研究した結果、本発明に到ることができた。【0031】本発明は、(1)鋳枠等内に置かれたロウ模型に対して、埋没材に練和液を混ぜてなるスラリーを投入し、これによって前記ロウ模型を埋没させ、その後に前記ロウ模型を脱ロウして鋳込み空間を形成すると共に前記埋没材を加熱硬化させて鋳型とする方式を採るロストワックス鋳造において、前記埋没材として第一リン酸アンモニウムを含むリン酸塩系埋没材を用いた場合に該リン酸塩系埋没材に対して混合されるべき練和液であって、少なくともコロイダルシリ力を2〜3重量%、第一リン酸ナトリウムを2〜50重量%含有させた水酸化ナトリウム水溶液からなり、かつ水溶液のpHを4.0〜13.0に調整してあることを特徴とするロストワックス鋳造に用いる埋没材の練和液を提供する。【0032】また、本発明は、(2)第一リン酸ナトリウムの一部または全部を第一リン酸カリウムで置き換え、水酸化ナトリウムの一部または全部を水酸化カリウムで置き換えたことを特徴とする前記(1)記載のロストワックス鋳造に用いる埋没材の練和液を提供する。【0033】また、本発明は、(3)鋳枠等内に置かれたロウ模型に対して、埋没材に練和液を混ぜてなるスラリーを投入し、これによって前記ロウ模型を埋没させ、その後に前記ロウ模型を脱ロウして鋳込み空間を形成すると共に前記埋没材を加熱硬化させて鋳型とする方式を採るロストワックス鋳造において、前記埋没材として第一リン酸アンモニウムを含むリン酸塩系埋没材を用いた場合に該リン酸塩系埋没材に対して混合されるべき練和液であって、第一リン酸ナトリウムを2〜50重量%含有させた水溶液であり、かつ水溶液をpH4.0〜13.0に調整してあることを特徴とするロストワックス鋳造に用いる埋没材の練和液を提供する。【0034】また、本発明は、(4)第一リン酸ナトリウムの一部または全部を第一リン酸カリウムで置き換え、水酸化ナトリウムの一部または全部を水酸化カリウムで置き換えたことを特徴とする前記(3)記載のロストワックス鋳造に用いる埋没材の練和液を提供する。以下、(1)および(2)の発明を第1発明、(3)および(4)の発明を第2発明という。【0035】本発明は、(5)酸性化合物および/または塩基性化合物を1重量%以上の量で含むことを特徴とするリン酸塩系埋没材用の練和液を提供する。また、本発明は、(6)酸性化合物としての有機酸を0.5重量%以上および/または塩基性化合物としての有機アルカリ化合物を0.5重量%以上含むことを特徴とする前記(5)記載の練和液を提供する。【0036】また、本発明は、(7)酸性化合物が有機酸および/または無機酸であることを特徴とする前記(5)記載の練和液を提供する。また、本発明は、(8)塩基性化合物が有機アルカリおよび/または無機アルカリであることを特徴とする前記(5)または(7)記載の練和液を提供する。【0037】また、本発明は、(9)酸性化合物が無機酸であって、塩基性化合物が無機アルカリであることを特徴とする前記(5)、(7)または(8)記載の練和液を提供する。【0038】また、本発明は、(10)無機酸がリン酸、塩酸、硝酸および硫酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の無機酸であることを特徴とする前記(5)、(7)または(8)記載の練和液を提供する。また、本発明は、(11)無機アルカリがアルカリ金属を含むことを特微とする前記(5)、(7)、(8)または(9)記載の練和液を提供する。【0039】また、本発明は、(12)酸性化合物の濃度が3重量%以上であって、塩基性化合物の濃度が3重量%以上であることを持徴とする前記(5)記載の練和液を提供する。【0040】また、本発明は、(13)練和液のpHが3.0〜7.0の範囲の水溶液であることを特徴とする前記(5)〜(12)いずれか1記載の練和液を提供する。また、本発明は、(14)さらに、界面活性剤を含むことを特徴とする前記(5)〜(12)いずれか1記載の練和液を提供する。【0041】また、本発明は、(15)練和液で埋没材を練和し、硬化させた埋没材硬化体を、予め係留温度から係留温度+400℃の間の初期設定温度に設定された焼成炉に投入する入炉段階と、初期設定温度以下で鋳型を係留する係留設定温度に焼成炉を調整する係留調整段階と、焼成炉の温度が埋没材入炉段階にて炉内温度が低下した後に係留温度に達して係留する係留段階とを含むことを特徴とするリン酸塩系埋没材の焼成方法を提供する。以下、(5)〜(15)の発明を第3発明という。【0042】【発明の実施の形態】以下に、本発明に係るリン酸塩系埋没材用の練和液について具体的に説明する。例示されるものに関しては持に限定されるものではない。【0043】(第1発明および第2発明)酸性の第一リン酸ナトリウムを多量に含有させた練和液をpH4.0〜13.0に調整するのに、かなりの量の水酸化ナトリウムも練和液に含有させている。強度に優れた鋳型を最終的に得ることができる。【0044】第1発明および第2発明は、適用できる埋没材の種類、成分組成が広がることで、種々の埋没材に対して、より一般的に、汎用的に用いることが可能となる。【0045】第一リン酸ナトリウムの一部または全部を第一リン酸カリウムで置き換えても、十分な量の第一リン酸イオンを練和液に含有させることができる。また水酸化ナトリウムの一部または全部を水酸化カリウムで置き換えても、金属イオンを練和液に含有させることができる。【0046】ロストワックス鋳造に用いられる第一リン酸アンモニウムを含むリン酸塩系埋没材に対して、練り合わされるべき本発明に係る典型的な練和液の態様を、その製造方法を用いて説明する。【0047】ロストワックス鋳造に用いられるリン酸塩系埋没材の例としては、その主成分としてSiO2(シリカ)粉を含み、その他にMgO等の金属酸化物粉を含み、これにNH4H2PO4(第一リン酸アンモニウム)を混ぜ合わせたものを一般に用いることができる。具体的な例としては、前記SiO2を80重量%含み、MgO等の金属酸化物(MexO2)を10重量%弱、NH4H2PO4を10重量%弱、含有させたものを用いることができる。【0048】また前記第1発明に係る典型的な練和液の作成ないし製造は、コロイダルシリカを分散させた水に第一リン酸ナトリウムを溶かして水溶液とする。そして更に、この酸性の水溶液に水酸化ナトリウムを添加してゆき、pHを4.0〜13.0に調整することで行う。第2発明はコロイダルシリカおよび水酸化ナトリウムを必須としないところが第1発明と異なり、それらを含んでも含まなくてもよく、水に第一リン酸ナトリウムを溶かし、適宜、pHを4.0〜13.0に調整して練和液が得られる。【0049】第一リン酸ナトリウムは2〜50重量%含有させる。この量は特開平10−296386号における発明の練和液での含有量の4〜100倍に達する。第一リン酸ナトリウムは、好ましくは10〜20重量%とする。【0050】前記水酸化ナトリウムは練和液のpHが4.0〜13.0になるように調整しながら加える。一方、本練和液の水溶液が中性から更にアルカリ状態になっても、埋没材の加熱焼成が可能である。pHが13.0を超えてくると、鋳型が割れたりしやすくなる。【0051】前記アルカリの範囲に関しては、pH9.0以下がより好ましいが、pH13.0以下であれば使用することが可能である。第1および第2発明は、焼成時の昇温により耐えることができ、よって昇温時間を短縮して、より短い時間で焼成を完了することができる。【0052】また本練和液はpHが4.0〜13.0の酸性からアルカリ性までの範囲が可能であるので、該練和液に他の添加物として、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の添加や、リン酸、珪酸等の添加調整が容易に行える。特にアルカリに調整できるので、添加が容易であるメリットがある。【0053】以上のようにして得られた第1および第2発明の練和液は、リン酸塩系埋没材と練り合わされ、スラリーとしてロウ模型を埋没させる。そして乾燥後に、ロウ模型を加熱によって脱ロウし、鋳込み空間を得る。この鋳込み空間を有する鋳型を炉内で1000〜1100℃まで加熱して、強固な鋳型に焼成する。この焼成に際して、従来は、全体として5〜6時間かけて1000℃程度まで昇温していた。【0054】本発明においては、中性から酸性(pH4.0〜7.0)に調整した練和液では、予め所定の温度(1000〜1100℃)に昇温された炉内に直接入れて昇温することも可能である。またアルカリ性(7.0<pH≦13.0)に調整した練和液においても、常温から所定の温度(1000〜1100℃)までの昇温時間を、十分短時間にすることが可能である。【0055】上記においては、練和液の成分として第一リン酸ナトリウムを用いたが、代わりに第一リン酸カリウムを用いてもよい。この場合、第一リン酸カリウムの溶解度は第一リン酸ナトリウムよりも小さいので、含有量を2〜30重量%とする。好ましくは10〜20重量%とする。また練和液の成分として、水酸化ナトリウムの代わりに水酸化カリウムを用いることができる。【0056】(第3発明)本発明のリン酸塩系埋没材用の練和液は、酸性化合物として無機酸や有機酸、また、塩基性化合物として無機アルカリや有機アルカリを含む水溶液が好ましい。無機酸としては、具体的には、リン酸、塩酸、硝酸、硫酸や炭酸が挙げられ、また、ポリリン酸、ピロリン酸やメタリン酸を用いることもできる。とりわけ、リン酸、塩酸、硝酸および硫酸が好ましく、リン酸が特に好ましい。【0057】有機酸としては、具体的には、カルボキシル基を含む酸として、クエン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸、シュウ酸、ケイ皮酸やマレイン酸が挙げられ、とりわけ、クエン酸および酒石酸が好ましい。【0058】この他にも酸基を有するモノマー、ポリマーで水溶性のものであれば用いることができる。ポリマーは一分子鎖中に2個以上の酸基を有するものであればよく、重合度は、好ましくは、10〜1000である。また、酸基としてはカルボキシル基やリン酸基が特に好ましい。【0059】具体的には、アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、ケイ皮酸やイタコン酸から誘導される繰り返しユニットを含有するポリマー類またはコポリマー類が例示される。【0060】無機アルカリとしては、具体的には、アルカリ金属を含む化合物、例えば、酸化物や水酸化物が挙げられ、とりわけ、水酸化物が好ましい。具体的には、リチウム、ナトリウムやカリウムの水酸化物が挙げられ、とりわけ、水酸化ナトリウムが特に好ましい。アルカリ金属に加えて、アルカリ土類金属やアルミニウムの水酸化物や酸化物を加えてもよい。具体的には、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム等が挙げられ、とりわけ、酸化マグネシウムが特に好ましい。【0061】有機アルカリとしては、具体的には、脂肪族第一アミン、脂肪族第二アミン、脂肪族第三アミン、水酸化第四アンモニウム、スルホニウム塩基等が挙げられ、とりわけ、水酸化第四アンモニウムが特に好ましい。【0062】練和液に含まれる酸性化合物および塩基性化合物の濃度は、練和液全量に対して1重量%以上である。すなわち、酸性化合物または塩基性化合物が単独で含まれている場合は、各々、1重量%以上であり、酸性化合物および塩基性化合物が共に含まれている場合はその全濃度が1重量%以上である。また、有機酸を0.5重量%以上および/または有機アルカリを0.5重量%以上含む濃度が好ましい。【0063】次に、練和液に含まれる酸性化合物の濃度は3〜40重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。また、塩基性化合物の濃度は3〜40重量%が好ましく、3〜15重量%がより好ましい。無機酸の濃度は3〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。また、有機酸の濃度は、2〜30重量%がより好ましく、2〜10重量%がさらに好ましい。無機アルカリの濃度は3〜20重量%が好ましく、3〜15重量%がより好ましい。また、有機アルカリの濃度は2〜30重量%がより好ましく、2〜15重量%がさらに好ましい。【0064】次に、無機酸、無機アルカリ、有機酸や有機アルカリなどの酸性化合物および塩基性化合物を水に溶解させるときの方法であるが、酸性化合物および塩基性化合物を共に溶解させる場合は、同時にまたはいずれの順に溶解させてもよく、また、一部を塩として、すなわち無機塩、有機塩、または有機無機複合塩として溶解させ、必要量の無機酸、無機アルカリ、有機酸または有機アルカリを追加して加えてもよい。換言すれば、結果として酸性化合物および塩基性化合物が1重量%以上の量で溶解しているのと同じ状態が実現できればよい。【0065】また、練和液に親水性の有機化合物や非イオン性の水溶性高分子を加えてもよい。具体的には、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロ―スなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどのビニル化合物、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、でんぷんなどの多糖類やその誘導体、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、グリセリン、ワセリン等が挙げられ、これらを単独で、あるいは2種以上併用して用いることができる。【0066】次に、練和液のpHは、3.0〜13.0が好ましく、3.0〜9.0がより好ましく、3.0〜7.0が特に好ましい。【0067】次に、練和液には界面活性剤を配合するのが好ましい。界面活性剤としては、ワックスパターンクリーナーに使用できる公知のものが使用でき、アニオン性、カチオン性および非イオン性界面活性剤を用いることができる。好ましくは、非イオン性界面活性剤を用いる。【0068】非イオン性界面活性剤としては、ポリエーテル系やポリエステル系のものを用いることができ、具体的には、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸ビスフェニルエーテル、フツ素系界面活性剤等が挙げられる。【0069】アニオン系界面活性剤としては、アルキルスルフェート、ポリオキシエチレンスルフェート、アルキルベンゼンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキルフエニルエーテルスルホネート、脂肪酸塩が挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンザルコニウムクロライド等が挙げられる。練和液への配合量としては0.1〜1.0重量%が好ましい。【0070】練和液に、沈殿物が生じない範囲でコロイダルシリカを含んでもよい。コロイダルシリ力の濃度は2〜3重量%が好ましい。コロイダルシリカの一次粒子径は10〜30nmが好ましい。【0071】練和液に着色し、硬化過程を明解にするために、pH指示薬を入れてもよい。具体的には、メチルオレンジ、メチルレッド、ブロモチモルブルー、フェノールフタレイン等が挙げられる。【0072】本発明に配合された各成分は、完全に溶解している必要がなく、ほぼ均一に分散していれば足りる。好ましくは、酸性化合物および塩基性化合物は23.0℃においての溶解度以下の配合量であることが好ましい。また、不溶性の沈澱物が発生しても問題はないが、不溶性の沈澱物を有しないほうが好ましい。【0073】次に、本練和液の使用に際しては、練和するリン酸塩系埋没材は、第一リン酸アンモニウムと酸化マグネシウムを結合材とするものであればよく、粉材との混液比は流動性を損なわない範囲であればよい。本発明のリン酸塩系埋没材に用いられる練和液は、歯科用のリン酸塩系埋没材に用いるのが好ましい。【0074】次に、焼成方法として、従来実施することができない焼成方法を見い出すことができた。その焼成方法は液を使用して埋没材と練和した埋没材硬化体の焼成方法であるが、予め係留温度から係留温度に400℃を加えた温度の間の温度に初期設定しておき、埋没材硬化体の投入後にその埋没材硬化体の係留温度に設定変更して、埋没材の係留時間を短くすることができるものである。【0075】通常、埋没材硬化体は焼成炉に投入した場合、焼成炉の温度が下がる。従って、係留温度に至るまで約10〜20分程度の時間を必要としていた。しかし、初期設定温度を係留温度〜係留温度に400℃加えた温度に設定することにより、鋳造作業中の焼成時間を短縮することができる。初期設定温度は、係留温度〜係留温度に400℃加えた温度であるが、好ましくは係留温度に50℃加えた温度〜係留温度に150℃加えた温度である。【0076】温度範囲で示すと900℃〜1300℃、好ましくは1000℃〜1100℃である。具体的には、1050℃に設定した焼成炉に埋没材を入れ、焼成炉の温度が850℃〜900℃に降温し、投入後に係留温度を900℃に設定することである。その結果、係留時間が10〜20分程度短縮できる。また、上記焼成方法に用いる埋没材を練和する練和液として、本発明の埋没材用練和液で練和することが好ましい。【0077】【実施例】以下に、本発明を実施例によって説明するが本発明はこれら実施例に限定されるものではない。【0078】原料として、蒸留水、85重量%リン酸、ポリリン酸ナトリウム、クエン酸、水酸化ナトリウム48重量%水溶液(以下、水酸化ナトリウム溶液という)、塩化カリウム、酸化マグネシウム、ポリアクリル酸(重合度100)、コロイダルシリカ水溶液(固形分30重量%)(日産化学製)、およびポリオキシエチレンセチルエーテルを準備した。以下の組成にて各成分を配合して練和液を調製した。【0079】【表1】【0080】前記で得られた練和液の特性を調べた。鋳造性の確認実施例1〜6、および比較例1〜3に関して、リン酸塩系埋没材として松風社製スノーホワイトを用い、混液比は粉材100gに対して18mLとし、練和条件は真空攪拌器(松風製パワ―リフトミキサー)で30秒間とした。40×25mmの長方形で厚み1mmのワックスパターンを植立し、リング高さ55mm、および内径60mmのプラスティックリングに練和したスラリーを流し込み、埋没20分後にプラスティックリングを外した。埋没30分後に1000℃に昇温してある焼成炉に投入し、800℃まで温度が降下したところで設定温度を800℃に変更し、40分間係留した。40分間係留した後、歯科用金属(松風ユニメタル)を鋳造し、その鋳造性を確認した。鋳型に全くクラックのないものを○、亀裂はあるが鋳造が可能であったものを△とし、鋳型に亀裂が入り鋳造不能もしくは焼成炉内で鋳型が破裂したものは×とした。また、鋳造面を確認し、バリが全くないものを○、バリがあるものを×とした。【0081】ヌレ特性値の測定混液比を粉材100gに対して18mLとし、練和した埋没材を長さ50mmおよび内径35mmの円筒形リングに流し込み、ガラス板上とパラフィンワックス上での流動性を測定し、その比率を求め、これをヌレ特性値とした。【数1】ヌレ持性値=(パラフィンワックス上での流動性)/(ガラス板上での流動性)×100【0082】圧縮強度試験JIS T 6608−2001に準拠して試験体を作製し、練和開始埋没から2時間後の圧縮強度と、埋没後30分経過後、30分間800℃で焼成し、室温まで徐冷した後の圧縮強度を求めた。【0083】結果を以下の表にまとめる。【表2】【0084】【発明の効果】本発明により、埋没材に練和液を練り合わせた際に、強度に優れた鋳型を最終的に得ることができる。本発明により、リン酸塩系埋没材の粉材と練和可能であり、埋没後、20〜60分後に800〜1100℃の焼成炉にリングレスの状態で直接投入することができ、割れやクラックが生じないリン酸塩系埋没材用の練和液を得ることができた。【0085】本発明により、ワックスパタ一ンとのヌレ性がよく、リン酸塩系埋没材の埋没後の強度を向上させ、通気性に優れる練和液が得られた。本発明により、鋳造体の表面は滑沢であり、酸化膜がつきにくく、鋳造体にバリ等が発生することなく、鋳造後は鋳造体を掘り出しやすいリン酸塩系埋没材用の練和液を得ることができた。また、チタン鋳造において焼成係留後、室温に放置して急冷しても割れやクラックの生じないリン酸塩系埋没材用の練和液を得ることができた。 鋳枠等内に置かれたロウ模型に対して、埋没材に練和液を混ぜてなるスラリーを投入し、これによって前記ロウ模型を埋没させ、その後に前記ロウ模型を脱ロウして鋳込み空間を形成すると共に前記埋没材を加熱硬化させて鋳型とする方式を採るロストワックス鋳造において、前記埋没材として第一リン酸アンモニウムを含むリン酸塩系埋没材を用いた場合に該リン酸塩系埋没材に対して混合されるべき練和液であって、少なくともコロイダルシリカを2〜3重量%、第一リン酸ナトリウムを2〜50重量%含有させた水酸化ナトリウム水溶液からなり、かつ水溶液のpHを4.0〜13.0に調整してあることを特徴とするロストワックス鋳造に用いる埋没材の練和液。 第一リン酸ナトリウムの一部または全部を第一リン酸カリウムで置き換え、水酸化ナトリウムの一部または全部を水酸化カリウムで置き換えたことを特徴とする請求項1に記載のロストワックス鋳造に用いる埋没材の練和液。 鋳枠等内に置かれたロウ模型に対して、埋没材に練和液を混ぜてなるスラリーを投入し、これによって前記ロウ模型を埋没させ、その後に前記ロウ模型を脱ロウして鋳込み空間を形成すると共に前記埋没材を加熱硬化させて鋳型とする方式を採るロストワックス鋳造において、前記埋没材として第一リン酸アンモニウムを含むリン酸塩系埋没材を用いた場合に該リン酸塩系埋没材に対して混合されるべき練和液であって、第一リン酸ナトリウムを2〜50重量%含有させた水溶液であり、かつ水溶液をpH4.0〜13.0に調整してあることを特徴とするロストワックス鋳造に用いる埋没材の練和液。 第一リン酸ナトリウムの一部または全部を第一リン酸カリウムで置き換え、pHの調整で用いる水酸化ナトリウムの一部または全部を水酸化カリウムで置き換えたことを特徴とする請求項3記載のロストワックス鋳造に用いる埋没材の練和液。 酸性化合物および/または塩基性化合物を1重量%以上の量で含むことを特徴とするリン酸塩系埋没材用の練和液。 酸性化合物としての有機酸を0.5重量%以上および/または塩基性化合物としての有機アルカリを0.5重量%以上含むことを特徴とする請求項5記載の練和液。 酸性化合物が有機酸および/または無機酸であることを特徴とする請求項5または6記載の練和液。 塩基性化合物が有機アルカリおよび/または無機アルカリであることを特徴とする請求項5または7記載の練和液。 酸性化合物が無機酸であって、塩基性化合物が無機アルカリであることを特徴とする請求項5、7または8記載の練和液。 無機酸がリン酸、塩酸、硝酸および硫酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の無機酸であることを特徴とする請求項5、7または8記載の練和液。 無機アルカリがアルカリ金属を含むことを持徴とする請求項5、7、8または9記載の練和液。 酸性化合物の濃度が3〜40重量%であって、塩基性化合物の濃度が3〜40重量%であることを持徴とする請求項5記載の練和液。 練和液のpHが3.0〜7.0の範囲の水溶液であることを特徴とする請求項5〜12いずれか1記載の練和液。 さらに、界面活性剤を含むことを持徴とする請求項5〜12いずれか1記載の練和液。 埋没材を練和し、硬化させた埋没材硬化体を、予め係留温度から係留温度+400℃の間の初期設定温度に設定された焼成炉に投入する入炉段階と、初期設定温度以下で鋳型を係留する係留設定温度に焼成炉を調整する係留調整段階と、焼成炉の温度が埋没材入炉段階にて炉内温度が低下した後に係留温度に達して係留する係留段階とを含むことを持微とするリン酸塩系埋没材の焼成方法。