タイトル: | 公開特許公報(A)_フタルイミド誘導体の製造方法 |
出願番号: | 2002166384 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C07D209/48 |
大野 孝衛 佐藤 治代 JP 2004010538 公開特許公報(A) 20040115 2002166384 20020607 フタルイミド誘導体の製造方法 東レ株式会社 000003159 大野 孝衛 佐藤 治代 7 C07D209/48 JP C07D209/48 Z 4 OL 8 4C204 4C204AB01 4C204BB04 4C204CB04 4C204DB30 4C204EB03 4C204FB23 4C204GB01 4C204GB03 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、医薬や農薬の原料として有用なフタルイミド誘導体、具体的にはN−アルコキシカルボニルフタルイミドを製造する方法に関する。【0002】【従来の技術】N−アルコキシカルボニルフタルイミドの製造法として、(1)フタルイミドカリウムとアルキルハライドを、18−クラウン−6触媒の共存下で反応させる方法(ブレタン.ケミ.ソス.ジャパン.(1982)、55巻、1671頁 Bull.Chem.Soc.Japan )、(2)フタルイミドとクロル炭酸エチルをトルエン中で、水酸化カリウムとフタルイミドに対して0.25倍モルのアリカット336(アルドリッチ社製 4級アンモニウム塩の商品名)の共存下で反応させる方法(シンス.コミュニケーション.(1980)、10巻、611頁 Synth.Commun.)、(3)フタルイミドとクロル炭酸エチルをターシャリーブタノール中で、ポタシウム・ターシャリーブトキサイドとフタルイミドに対して0.05倍モルのテトラブチルアンモニウムクロリドの共存下で反応させる方法(シンス.コミュニケーション.(1997)、27巻、2081頁 Synth.Commun.)等が知られている。これらの方法は何れも優れた方法であるが、(1)は高価なフタルイミドカリウムや18−クラウン−6を使用していることから、工業的製造法にはなり得ない。また、(2)は安価なフタルイミドを直接反応させる点で有利であるが、大量のアリカット336を使用することから産業廃棄物が大量に発生する。また、改良法である(3)はテトラブチルアンモニウムクロリドの使用量は少ないものの、強アルカリ性で、高価なポタシウム・ターシャリーブトキサイドをフタルイミドと当量使用することから、何れも工業的製造法としては課題があり、安価なN−アルコキシカルボニルフタルイミドの製造法が求められている。【0003】【発明が解決しようとする課題】すなわち、本発明の目的は安価な原料から、高収率で、産業廃棄物を極力削減した安価なフタルイミド誘導体、具体的にはN−アルコキシカルボニルフタルイミドの製造法を提供することにある。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者らは前記課題を解決する方法について鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は一般式(1)【0005】【化5】【0006】(ここで、R1は水素、炭素数1〜3のアルキル基、クロルを示し、nは0〜3の整数である。)で表されるフタルイミドと、一般式(2)X−COOR2 (2)(ここで、R2は炭素数1〜6の低級アルキル基、アラルキル基、アリール基を示す。Xはクロル、ブロムを意味する。)で表されるハロ炭酸エステルを、有機溶媒中、3級アミンおよびピリジンから選ばれる塩基、ならびに原料のフタルイミドに対し0.15当量以下の4級アンモニウム塩を共存させて反応させることを特徴とする、一般式(3)【0007】【化6】【0008】(ここで、R1、R2、nは前記と同様)で表されるフタルイミド誘導体の製造である。ここで、反応後に反応で使用した3級アミンやピリジンなどの塩基は回収・リサイクル使用することができるために、産業廃棄物を大幅に削減した、省資源的なプロセスとなる。具体例を下図に示したが、フタルイミドとクロル炭酸エチルをトリエチルアミン共存下で反応させると、使用したトリエチルアミンは反応が進行するに従い塩酸塩となって反応系に存在するが、反応終了後に目的物のフタルイミド誘導体を精製するために反応系を水洗する工程を経由する。この工程でトリエチルアミン塩酸塩は水層に移行するが、この水層に水酸化ナトリウムを添加するとトリエチルアミンは遊離状態となり、上層に分離してくる。上層をそのまま使用、あるいは必要に応じて蒸留すれば、トリエチルアミンは回収・リサイクル使用することができ、産業廃棄物としては少量の4級アミンと食塩だけであり、グリーンケミストリーの思想に則った製造法と云える。【0009】【化7】【0010】【発明の実施の形態】本発明で使用する前記一般式(1)で表されるフタルイミドとして、無置換のフタルイミド、4−クロロフタルイミド、4−メチルフタルイミド等が使用できる。【0011】もう一方の原料である前記一般式(2)で表されるハロ炭酸エステルとしては、クロル炭酸メチル、クロル炭酸エチル、クロル炭酸−1−クロロエチル、クロル炭酸ブチル、クロル炭酸フェニル、クロル炭酸ベンジル、ブロモ炭酸イソプロピル等が使用できるが、好ましくはクロル炭酸メチル、クロル炭酸エチルである。使用量は一般式(1)で表されるフタルイミドに対して0.95〜1.5当量であり。好ましくは1.0〜1.2当量である。この範囲であれば高収率で、且つ産業廃棄物も少ない。【0012】共存させる塩基としては、3級アミンおよびピリジンから選ばれるものであり、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキル3級アミン類、N−メチルピロリジン等の環状3級アミン類、ピリジン、4−ジメチルピリジン等のピリジン類等が使用できるが、好ましくはトリエチルアミン、N−メチルピロリジン、4−ジメチルピリジンである。特に回収・リサイクル使用する場合には安価であり、且つ回収の容易なトリエチルアミンが好ましい。使用量は一般式(1)のフタルイミドに対して0.9〜1.5当量であるが、好ましくは1.0〜1.2当量、更に好ましくは1.01〜1.1当量である。この範囲であればフタルイミド誘導体が高収率で得られ、且つ産業廃棄物も少ない。反応は有機溶媒中で実施する。使用する有機溶媒はジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類であり、好ましくはジイソブチルエーテル、シクロヘキサン、トルエン、キシレンであり、更に好ましくはトルエン、キシレンである。使用量は反応が円滑に進行する量でよいが、原料のフタルイミドや、生成したフタルイミド誘導体が難溶性の場合には、攪拌に支障がない濃度に希釈すればよい。通常は一般式(1)のフタルイミドに対して4〜10重量倍、好ましくは5〜8重量倍である。この範囲であれば反応に支障をきたさない。また、4級アンモニウム塩としては、テトラブチルアンモニウムクロリド、トリ長鎖アルキルメチルアンモニウムクロリド(C8〜C20 アリカット336(アルドリッチ)等)、ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウムクロリド(C10〜C20 カチオンDS(三洋化成)等)、ベンザルコニウム等、市販の4級アンモニウムが使用できるが、好ましくはトリ長鎖アルキル・メチルアンモニウムクロリド(C8〜C20 アリカット336等)、ジ長鎖アルキル・ジメチルアンモニウムクロリド(C16〜C20 カチオンDS等)、ベンザルコニウムであり、特に好ましくは安価なジ長鎖アルキル・ジメチルアンモニウムクロリド(C16〜C20 カチオンDS等)である。使用量は一般式(1)のフタルイミドに対して0.15当量以下であり、好ましくは0.03当量以下、更に好ましくは0.01当量以下である。原料の種類によって4級アミンの最適使用量は異なるが、産業廃棄物を削減する目的から、できるだけ少量使用する事が好ましい。【0013】反応方法は特に限定しないが、通常は有機溶媒に一般式(1)のフタルイミドを加えて、10〜50℃、好ましくは20〜30℃で攪拌する。ここに、4級アンモニウム塩を仕込み、次いでハロ炭酸エチルを加えた後に、塩基を添加する。ここで、塩基を加えると発熱して反応液の温度は上昇するが、液温を40〜70℃、好ましくは45〜55℃に保ちながら添加する方法が好ましい。反応が進行するに従って、塩基の酸塩が析出してくる。反応終了後、反応液に水を加え、生成した塩基の酸塩を水層に移行させ、有機溶媒層を濃縮・晶析することで、フタルイミド誘導体が得られる。単離された一般式(3)のフタルイミド誘導体は高純度であり、通常は特別な精製工程を必要としない。また、分離した水層に水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物加えて塩交換させることで、3級アミン等の塩基が層分離してくるので、これを回収して、リサイクル使用することができる。【0014】【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定するものではない。【0015】なお、実施例において、反応液の組成分析や蒸留品の純度分析は、HPLCの面積%で算出した。実施例1攪拌機、滴下ロート、ジムロート、温度計を装着した2lの4口フラスコに、フタルイミド(三星薬品(株))176.6g(1.2モル)とトルエン1060gを仕込み、室温中にて攪拌しながらカチオンDS(三洋化成製、塩酸ジステアリルジメチルアンモニウム 主成分は(C18H37)2(CH3)2N+Cl−)0.88g(1.5ミリモル)を添加した。次いで、クロル炭酸エチル(東京化成(株)試薬1級)147g(1.35モル)を滴下してから液温を40〜50℃に昇温し、次いでトリエチルアミン126.2g(1.25モル)を約1時間で滴下した。更に1時間攪拌後、液温を35〜40℃に降温してから水126gを添加し、30分間攪拌した。静置後、水層を分液除去してからトルエン層を減圧で約740gを留出させた。濃縮液を氷冷下で攪拌しながら結晶を析出させ、減圧濾過した。析出結晶を真空乾燥し、N−エトキシカルボニルフタルイミド228.1g得た。収率は86.7%であり、HPLCではほぼ単一ピークであった。また、濾液母液を濃縮後、再晶析させ乾燥結晶22.5g得た。両者を併せると収率95.3%であった。【0016】攪拌機、ジムロート、温度計を装着した500mlの3口フラスコに、実施例1で分液除去した水層2219.5gを仕込み、20〜30℃で攪拌しながら水酸化ナトリウム52g(1.3モル)を加え、1時間攪拌した。静置後、上層を分液し、水層にトルエン200mlを添加し、1時間攪拌した。静置後、トルエン層を分液した。トルエン層と先に分液した上層を併せ、蒸留してトリエチルアミン116g得た。回収率は91.9%であった。【0017】実施例2攪拌機、滴下ロート、ジムロート、温度計を装着した200mlの4口フラスコに、フタルイミド14.7g(0.1モル)とトルエン88gを仕込み、室温中にて攪拌しながらカチオンDS(三洋化成製)0.07g(0.12ミリモル)を添加した。次いで、クロル炭酸メチル(東京化成(株)試薬1級)13.5g(1.43モル)を滴下してから液温を40〜50℃に昇温し、次いでトリエチルアミン10.8g(0.11モル)を約1時間で滴下した。更に1時間攪拌後、液温を35〜40℃に降温してから水10.8gを添加し、30分攪拌した。析出結晶を減圧濾過し、乾燥して粗N−メトキシカルボニルフタルイミド20.8g得た。僅かにHPLCで不純物ピークを検出した。得られた粗体を水で再洗浄し、濾過・乾燥して精製N−メトキシカルボニルフタルイミド17.5g得た。収率は85.4%であり、HPLCでは単一ピークであった。【0018】実施例3実施例2と同様ににして、トリエチルアミンに替えてピリジン8.7g(0.11モル)を使用した結果、粗N−メトキシカルボニルフタルイミド19.5g得た。【0019】実施例4実施例2と同様ににして、カチオンDSに替えてアリカット336(アルドリッチ、主成分(CH3N(CH2)7CH3)3Cl)0.1g (0.2ミリモル)を使用した結果、粗N−メトキシカルボニルフタルイミド20.1g得た。【0020】実施例5実施例2と同様ににして、カチオンDS(三洋化成製)0.7g(1.2ミリモル)を使用した結果、粗N−メトキシカルボニルフタルイミド20.1g得た。【0021】【発明の効果】本発明によれば、安価なフタルイミドからN−アルコキシカルボニルフタルイミドを高収率で得られる。更に、回収・リサイクル工程を組み合わせることで、省資源のプロセスが構築できる。 一般式(1)(ここで、R1は水素、炭素数1〜3のアルキル基、クロルを示し、nは0〜3の整数である。)で表されるフタルイミドと、一般式(2)X−COOR2 (2)(ここで、R2は炭素数1〜6の低級アルキル基、アラルキル基、アリール基を示す。Xはクロル、ブロムを意味する。)で表されるハロ炭酸エステルを、有機溶媒中、3級アミンおよびピリジンから選ばれる塩基、ならびに原料のフタルイミドに対し0.15当量以下の4級アンモニウム塩を共存させて反応させることを特徴とする、一般式(3)(ここで、R1、R2、nは前記と同様)で表されるフタルイミド誘導体の製造法。 4級アンモニウム塩の使用量が原料のフタルイミドに対し0.03当量以下であることを特徴とする請求項1記載のフタルイミド誘導体の製造法。 反応に使用する有機溶媒がエーテル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素から選ばれることを特徴とする請求項1または2に項記載のフタルイミド誘導体の製造法。 (i)一般式(1)(ここで、R1は水素、炭素数1〜3のアルキル基、クロルを示し、nは0〜3の整数である。)で表されるフタルイミドと、一般式(2)X−COOR2 (2)(ここで、R2は炭素数1〜6の低級アルキル基、アラルキル基、アリール基を示す。Xはクロル、ブロムを意味する。)で表されるハロ炭酸エステルを、有機溶媒中、3級アミンおよびピリジンから選ばれる塩基、ならびに原料のフタルイミドに対し0.03当量以下の4級アンモニウム塩を共存させて反応させ、一般式(3)(ここで、R1、R2、nは前記と同様)で表されるフタルイミド誘導体を製造する工程、(ii)水を加えて攪拌し、水溶性物質を水層へ移行させ、有機溶媒層と水層を分離する工程、(iii)有機溶媒層から一般式(3)で表されるフタルイミド誘導体を単離する工程、(iv)水層にアルカリ金属水酸化物を添加して、3級アミン類、ピリジン類を回収・リサイクル使用する工程、を含むことを特徴とするフタルイミド誘導体の製造法。 【課題】高純度のN−アルコキシカルボニルフタルイミド誘導体を安価に、省資源的に、且つ簡単なプロセスで工業的に製造する。【解決手段】一般式(1)【化1】(ここで、R1は水素、炭素数1〜3のアルキル基、クロルを示し、nは0〜3の整数である。)で表されるフタルイミドと、一般式(2)X−COOR2 (2)(ここで、R2は炭素数1〜6の低級アルキル基、アラルキル基、アリール基を示す。Xはクロル、ブロムを意味する。)で表されるハロ炭酸エステルを、有機溶媒中、3級アミンおよびピリジンから選ばれる塩基、ならびに原料のフタルイミドに対し0.15当量以下の4級アンモニウム塩を共存させて反応させ、一般式(3)【化2】(ここで、R1、R3、nは前記と同様)で表されるフタルイミド誘導体を製造する。【選択図】なし