タイトル: | 公開特許公報(A)_メチルヘキサヒドロフタル酸無水物の異性化 |
出願番号: | 2002165789 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C07D307/89,C07B61/00 |
鈴木 亨 JP 2004010535 公開特許公報(A) 20040115 2002165789 20020606 メチルヘキサヒドロフタル酸無水物の異性化 日立化成工業株式会社 000004455 鈴木 亨 7 C07D307/89 C07B61/00 JP C07D307/89 Z C07B61/00 300 2 OL 7 4C037 4H039 4C037RB14 4H039CA11 4H039CJ10 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を含むメチルヘキサヒドロフタル酸無水物の立体異性化方法に関する。【0002】【従来の技術】イソプレンと無水マレイン酸とのディールス・アルダー反応により生成するシス−4−メチル−Δ4−テトラヒドロ−シス、シス−フタル酸無水物の二重結合を水素化して作られるシス−4−メチルヘキサヒドロ−シス、シス−フタル酸無水物(以下シス−4−MHHPAと略す)はエポキシ樹脂硬化剤として速硬化性、透明性、耐熱劣化性等を有するため重用されている。しかしながら、融点が と高く、室温で固体となることがあった。このため、保存状態により結晶物が析出することがあり、保存安定性に問題を有していた。結晶物析出時には、エポキシ樹脂との混合時に加熱溶解等を行わなければならず、作業性が劣っていた。このため、ヘキサヒドロフタル酸無水物等の酸無水物との混合物やトランス−4−メチルヘキサヒドロ−シス、シス−フタル酸無水物(以下トランス−4−MHHPAと略す)の混合とし、液状の安定性化をはかった。シス−4−MHHPAをトランス−4−MHHPAに異性化する方法として、1.シス−4−MHHPAを触媒の被存在下に加熱すること。2.ナトリウムまたはカリウムのアルカリ金属存在下に加熱すること。(特開平2−72169)3.ナトリウム、カリウムまたはリチウムのアルカリ金属の水酸化物、酸化物、アルコラートまたはフェノラートの存在下に加熱すること。(特開昭54−160332、特開昭57−48739等)4.N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ジメチルメタノール等の三級アミン存在下に加熱すること。(特開昭54−151941等)5.塩化トリエチルベンジルアンモニウム等の四級アンモニウム塩の存在下に加熱すること。(特開昭54−144359等)6.シリカ−アルミナ触媒の存在下に加熱すること。などの方法が提案されている。しかしながら、加熱のみでは異性化時間が長く、触媒を用いる場合でも、触媒の取り扱いに注意を要する場合、触媒が蒸留等の容易な操作により完全に分離できない場合や残存した触媒の処理等の問題を有していた。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明は4MHHPA単独、または3−メチルテトラヒドロフタル酸無水物および3−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物およびの中から選ばれる二種以上の酸無水物混合物の立体異性化触媒として、取り扱いが容易であり、かつ、立体異性化反応後、蒸留等の操作により容易に触媒とが分離可能となる異性化触媒を提供するものである。【0004】【課題を解決するための手段】本発明は、 4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物単独、または4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、3−メチルテトラヒドロフタル酸無水物および3−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物およびの中から選ばれ少なくとも4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物を含む二以上の混合物を特定の触媒の存在下に加熱異性化する方法に関する。【0005】また、特定の触媒としてROM(ここでRは炭素数1から3からなる脂肪族モノカルボニル基または炭素数7から9からなる芳香族モノカルボニル基である。また、Mはカリウムまたはナトリウムである。)で表される化合物を一または二以上混合して触媒とする異性化方法に関する。【0006】【発明の実施の形態】本発明で、原料となるシス−4MHHPAの製法は特に規定されるものではないが、一般的に無水マレイン酸とイソプレンをディールス・アルダー反応により4−メチル−テトラヒドロ−シス、シス−フタル酸無水物を製造し、これをパラジウム炭素等の水素化触媒にて水素化することにより得られたシス−4MHHPAを用いる。また、同様に製法は特に規定されるものではないがシス−3−メチルテトラヒドロフタル酸無水物は、一般的に無水マレイン酸とピペリレンをディールス・アルダー反応により製造され、これをパラジウム炭素等の水素化触媒にて水素化することによりシス−3−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物を得た酸無水物を用いることができる。4MHHPA単独、または4MHHPA、3−メチルテトラヒドロフタル酸無水物および3−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物から選ばれる少なくとも4MHHPAを含む2以上の混合物よりなる酸無水物に対し、特定の触媒を加え溶媒の存在下または非存在下に加熱することにより異性化物を製造することができる。【0007】特定の触媒として、ROMここでRは炭素数1から3からなる脂肪族モノカルボニル基または炭素数7から9からなる芳香族モノカルボニル基である。また、Mはカリウムまたはナトリウムである。)で表される化合物である。具体的には、カリウム塩として蟻酸カリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、安息香酸カリウム、また、ヒドロキシ安息香酸のカリウム塩等があげられる。【0008】ナトリウム塩としては、蟻酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、また、ヒドロキシ安息香酸のナトリウム塩等があげられる。これらの化合物の中から、単独または2以上を混合して用いる。用いる触媒の量は、異性化する酸無水物全体の物質量に対して、0.0005物質量部以上0.02物質量以下であり、好ましくは、0.001物質量部以上0.006物質量部以下である。0.0005物質量部より触媒濃度が低いと異性化時間がかかり過ぎるかまたは異性化反応が進行しない。また、0.02物質量部を超えて高いと触媒と触媒の添加効果が著しく低下するばかりでなく酸無水物との分離が困難になり、収率が低下する。【0009】異性化反応温度は、125℃以上230℃以下であり、好ましくは150℃以上 180℃以下である。125℃未満であると異性化反応がほとんど進行せず、230℃以上であると収率の低下が起こる。反応時間は、触媒の濃度、反応時間により変化するが、たとえば、4MHHPAの平衡混合物を調製する場合、シス−4MHHPAに対し酢酸カリウム0.004物質量部、180℃で1時間が好ましい。この時間以上反応を行うと、異性化は平衡に達し、以後副反応が優先的に進行し、収率を低下させる。【0010】所望の異性化率に達した後、触媒と酸無水物の分離は、反応物を室温まで冷やした後濾過等により分離することができる。蒸留により完全に触媒を分離することが可能である。溶媒は特に用いる必要はないが、常圧または適当な圧力下のもとでトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を用いることができる。以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下において特に断らない限り、部および%は、それぞれ、重量部および重量%を意味する。また、原子吸光法によりカリウム分の測定を行った。さらに、トランス体比は、ガスクロマトグラフィーによって次式により算出した値を用いた。異性化率[%] = (トランス−4MHHPAの面積)/((トランス−4MHHPAの面積)+(シス−4MHHPA)の面積))×100【0011】【実施例】[実施例1]4MHHPA(東京化成工業(株)製、異性化率16%、カリウム濃度0.2ppm未満)50 gに酢酸カリウム0.12 g(和光純薬工業(株)、特級)を加え、150℃で1時間撹拌した。反応終了後、減圧蒸留により無色の液体46 gを得た。異性化率を表1に示す。また、蒸留液のカリウム濃度は0.2ppm未満であった。【0012】[実施例2]酢酸カリウムを0.12 gとし、反応温度を140℃した以外、実施例1と同様の操作を行った。異性化率を表1に示す。また、蒸留液のカリウム濃度は0.2ppm未満であった。【0013】[実施例3]酢酸カリウムを0.12 gとし、150℃、2時間反応した以外、実施例1と同様の操作を行った。異性化率を表1に示す。【0014】[実施例4]酢酸カリウムを0.03gとした以外、実施例1と同様の操作を行った。異性化率を表1に示す。【0015】[実施例5]酢酸カリウムを0.06gとした以外、実施例1と同様の操作を行った。異性化率を表1に示す。また、蒸留液のカリウム濃度は0.2ppm未満であった。【0016】[実施例6]酢酸カリウムを0.09gとした以外、実施例1と同様の操作を行った。異性化率を表1に示す。【0017】[実施例7]酢酸カリウムを0.14gとした以外、実施例1と同様の操作を行った。異性化率を表1に示す。【0018】[実施例8]酢酸カリウムを0.17gとした以外、実施例1と同様の操作を行った。異性化率を表1に示す。【0019】[実施例9]酢酸カリウムを0.23gとした以外、実施例1と同様の操作を行った。異性化率を表1に示す。【0020】[実施例10]反応温度を80℃とした以外、実施例1と同様の操作を行った。異性化率を表1に示す。【0021】[実施例11]反応温度を120℃とした以外、実施例1と同様の操作を行った。異性化率を表1に示す。【0022】[実施例12]反応温度を160℃とした以外、実施例1と同様の操作を行った。異性化率を表1に示す。【0023】[実施例13]反応温度を180℃とした以外、実施例1と同様の操作を行った。異性化率を表1に示す。【表1】【0024】[実施例14]4MHHPA(東京化成工業(株)製、異性化率16%、カリウム濃度0.2ppm未満)50 gに酢酸ナトリウム0.10 g(和光純薬工業(株)、特級)を加え、150℃で2時間撹拌した。反応終了後、減圧蒸留により無色の液体46 gを得た。異性化率を表2に示す。【0025】[実施例15]反応温度を160℃とした以外、実施例14と同様に操作を行った。異性化率を表2に示す。【0026】[実施例16]反応温度を170℃とした以外、実施例14と同様に操作を行った。異性化率を表2に示す。【0027】[実施例17]反応温度を180℃とした以外、実施例14と同様に操作を行った。異性化率を表2に示す。【0028】[実施例18]酢酸ナトリウムの代わりに蟻酸ナトリウム0.10gを用いた以外、実施例14と同様の操作を行った。異性化率を表2に示す。【0029】[実施例19]酢酸ナトリウムの代わりに蟻酸ナトリウム0.082gを用い、160℃で反応させた以外、実施例14と同様の操作を行った。異性化率を表2に示す。【0030】[実施例20]酢酸ナトリウムの代わりに蟻酸ナトリウム0.082gを用い、170℃で反応させた以外、実施例14と同様の操作を行った。異性化率を表2に示す。【0031】[実施例21]酢酸ナトリウムの代わりに酢酸カリウムを用いた以外、実施例14と同様の操作を行った。異性化率を表2に示す。【0032】[実施例22]酢酸ナトリウムの代わりに安息香酸ナトリウム0.17gを用いた以外、実施例14と同様の操作を行った。異性化率を表2に示す。【0033】[実施例23]酢酸ナトリウムの代わりに安息香酸ナトリウム0.17gを用い、反応温度を180℃とした以外、実施例14と同様の操作を行った。異性化率を表2に示す。【0034】[実施例24]酢酸ナトリウムの代わりに安息香酸カリウム0.19gを用い、反応時間を1時間とした以外、実施例14と同様の操作を行った。異性化率を表2に示す。【表2】【0035】[比較例1]酢酸ナトリウムの代わりに酢酸リチウムを用いた以外、実施例14と同様の操作を行った。異性化率を表3に示す。【0036】[比較例2]酢酸ナトリウムの代わりに酢酸ナトリウム0.21gを用いた以外、実施例14と同様の操作を行った。異性化率を表3に示す。【0037】[比較例3]酢酸ナトリウムの代わりにリチウムメトキシド0.046gを用いた以外、実施例14と同様の操作を行った。異性化率を表3に示す。【0038】[比較例4]酢酸ナトリウムの代わりにメタンスルホン酸ナトリウム0.14gを用いた以外、実施例14と同様の操作を行った。異性化率を表3に示す。【0039】[比較例5]酢酸ナトリウムの代わりにメタンスルホン酸ナトリウム0.14g用い、反応温度を180℃とした以外、実施例14と同様の操作を行った。異性化率を表3に示す。【0040】[比較例6]酢酸ナトリウムの代わりに硫酸ナトリウム0.17gを用い、反応温度を180℃とした以外、実施例14と同様の操作を行った。異性化率を表3に示す。【0041】[比較例7]酢酸ナトリウムの代わりに硫酸水素ナトリウム一水和物0.16gを用い、反応温度を180℃とした以外、実施例14と同様の操作を行った。異性化率を表3に示す。【0042】[比較例8]酢酸ナトリウムの代わりにヨウ化ナトリウム0.18gを用い、反応温度を180℃とした以外、実施例14と同様の操作を行った。蒸留物は着色した。異性化率を表3に示す。【0043】[比較例9]酢酸ナトリウムの代わりにヨウ化カリウム0.20gを用いた以外、実施例14と同様の操作を行った。異性化率を表3に示す。【表3】【0044】【発明の効果】本発明は4MHHPA単独、または3−メチルテトラヒドロフタル酸無水物および3−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物およびの中から選ばれる二種以上の酸無水物混合物の立体異性化触媒として、取り扱いが容易であり、かつ、立体異性化反応後、蒸留等の操作により容易に触媒とが分離可能となる異性化触媒を提供するものである。 4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物単独、または4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、3−メチルテトラヒドロフタル酸無水物および3−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物およびの中から選ばれ少なくとも4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物を含む二以上の混合物を特定の触媒の存在下に加熱異性化する方法。 請求項1記載の特定の触媒としてROM(ここでRは炭素数1から3からなる脂肪族モノカルボニル基または炭素数7から9からなる芳香族モノカルボニル基である。また、Mはカリウムまたはナトリウムである。)で表される化合物を一または二以上混合して触媒とする請求項1記載の異性化方法。 【課題】少なくとも 4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物を含む酸無水物を特定の触媒の存在下に加熱異性化する方法【解決手段】カリウムまたは/およびナトリウムの特定の塩を立体異性化触媒として用いることにより、少なくとも 4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物を含む酸無水物を加熱異性化する。【選択図】 なし