タイトル: | 特許公報(B2)_ジベンゾイル酒石酸及びその酸無水物の製造方法 |
出願番号: | 2002144195 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07D 307/56,C07C 67/29,C07B 61/00 |
小林 幸基 浅輪 智丈 藤野 年弘 荻田 祥宏 JP 4301766 特許公報(B2) 20090501 2002144195 20020520 ジベンゾイル酒石酸及びその酸無水物の製造方法 日本軽金属株式会社 000004743 成瀬 勝夫 100082739 中村 智廣 100087343 小泉 雅裕 100085040 東レ・ファインケミカル株式会社 000187046 成瀬 勝夫 100082739 小林 幸基 浅輪 智丈 藤野 年弘 荻田 祥宏 20090722 C07D 307/56 20060101AFI20090702BHJP C07C 67/29 20060101ALI20090702BHJP C07B 61/00 20060101ALN20090702BHJP JPC07D307/56C07C67/29C07B61/00 300 C07D 307/56 C07C 67/29 C07B 61/00 CA/REGISTRY(STN) CASREACT(STN) 特開平06−166683(JP,A) 特開平07−138247(JP,A) 6 2003335766 20031128 7 20041224 渕野 留香 【0001】【発明の属する技術分野】この発明は、例えば各種のラセミアミン類の光学分割剤等の用途や各種の有機合成中間体等の用途に重要な化合物であるジベンゾイル酒石酸及びその酸無水物の製造方法に関する。【0002】【従来の技術】酒石酸を原料にしてジベンゾイル酒石酸やその酸無水物を製造する方法については、これまでに以下の方法が提案されている。すなわち、第一の方法は、酒石酸に塩化ベンゾイルを反応させてジベンゾイル酒石酸無水物を製造し、また、このジベンゾイル酒石酸無水物を加水分解してジベンゾイル酒石酸を製造する方法であり、例えば、D-酒石酸にその3倍モル量の塩化ベンゾイルを反応させてジベンゾイルD-酒石酸無水物を製造し、また、これを加水分解してジベンゾイルD-酒石酸を製造する方法が提案されている(例えば、C. L. Butlar and Leonard H. Cretcher, J. Am. Chem. Soc., 55(1933), p2605等)。【0003】しかしながら、この第一の方法では、酒石酸に対して3倍モル量の塩化ベンゾイルが使用され、ベンゾイル化反応に消費されない過剰分の1倍モル量の塩化ベンゾイルはジベンゾイル酒石酸の無水化物に消費されてその際に1倍モル量の安息香酸を生成する。このため、ジベンゾイル酒石酸無水物を製造する際には勿論、このジベンゾイル酒石酸無水物を加水分解してジベンゾイル酒石酸を製造する際にも、副生した安息香酸を分離して除去しなければならず、更にこの副生した安息香酸についてはその回収再利用のために精製等の後処理が必要になるが、そのための工程が複雑で経済的でない。【0004】また、第二の方法として、酒石酸に塩化ベンゾイルと塩化チオニルとを反応させてジベンゾイル酒石酸無水物を製造し、また、このジベンゾイル酒石酸無水物を加水分解してジベンゾイル酒石酸を製造する方法があり、例えば、塩化チオニルの存在下に酒石酸に2倍モル量の塩化ベンゾイルを反応させてジベンゾイル酒石酸無水物を製造し、また、これを加水分解してジベンゾイル酒石酸を製造する方法が提案されている(例えば、ハンガリー特許第191,051号明細書等)。【0005】しかしながら、この第二の方法では、塩化ベンゾイルのほかに塩化チオニルを使用するため製造コストの点で不利であり、更に発生する二酸化硫黄ガスを処理する設備が必要である等の問題がある。【0006】【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者らは、上述した従来の方法において不可避であった種々の問題を解決し、面倒な後処理を必要とする安息香酸や二酸化硫黄ガス等の副生物の生成がなく、ジベンゾイル酒石酸及びその酸無水物を工業的に有利に製造することができる方法について鋭意検討した結果、酒石酸に塩化ベンゾイルとベンゾトリクロライドとを反応させることにより、目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。【0007】従って、本発明の目的は、面倒な後処理を必要とする安息香酸や二酸化硫黄ガス等の副生物の生成がなく、ジベンゾイル酒石酸及びその酸無水物を工業的に有利に製造することができるジベンゾイル酒石酸及びその酸無水物の製造方法を提供することにある。【0008】【課題を解決するための手段】 すなわち、本発明は、酒石酸とこの酒石酸に対して1.0〜1.2倍モル量の塩化ベンゾイル及びベンゾトリクロライドとを有機溶媒中で反応させてジベンゾイル酒石酸無水物を得るジベンゾイル酒石酸無水物の製造方法である。また、本発明は、酒石酸と塩化ベンゾイル及びベンゾトリクロライドとを有機溶媒中で反応させて得られたジベンゾイル酒石酸無水物を加水分解してジベンゾイル酒石酸を得るジベンゾイル酒石酸の製造方法である。【0009】本発明において、原料として用いる酒石酸については、光学活性体であるL-酒石酸であっても、また、D-酒石酸であってもよく、更には、これらL-酒石酸とD-酒石酸の混合物(ラセミ体等)であってもよい。この酒石酸としては、市販のものを使用してもよいし、また、公知の方法で合成したものを用いてもよい。【0010】本発明において、酒石酸と塩化ベンゾイル及びベンゾトリクロライドとの反応は、有機溶媒中で酒石酸に塩化ベンゾイルとベンゾトリクロライドとの混合物を添加して行ってもよく、また、有機溶媒中で酒石酸に、先ず塩化ベンゾイル及びベンゾトリクロライドのいずれか一方を添加し、次いで塩化ベンゾイル及びベンゾトリクロライドの他方を添加して行ってもよい。好ましくは、酒石酸に塩化ベンゾイルを反応させ、次いでベンゾトリクロライドを添加して反応させるとよい。【0011】そして、この酒石酸と塩化ベンゾイル及びベンゾトリクロライドとの反応において、これら酒石酸と塩化ベンゾイル及びベンゾトリクロライドとの反応割合は、酒石酸に対して、塩化ベンゾイルの添加量が0.8〜1.5倍モル量、好ましくは1.0〜1.2倍モル量であって、ベンゾトリクロライドの添加量が0.8〜1.5倍モル量、好ましくは1.0〜1.2倍モル量である。塩化ベンゾイルの添加量について、0.8倍モル量より少ないと未反応原料の酒石酸が残留して収率が低下し、反対に、1.5倍モル量より多くなると未反応の塩化ベンゾイルが残留して経済的でない。また、ベンゾトリクロライドの添加量について、0.8倍モル量より少ないと未反応原料の酒石酸が残留して収率が低下するほか、安息香酸が製品中に混入して製品の品質が低下するので好ましくなく、反対に、1.5倍モル量より多くなると過剰分のベンゾトリクロライドが反応終期に分解して製品ジベンゾイル酒石酸の着色原因になるので好ましくない。【0012】本発明においては、酒石酸と塩化ベンゾイル及びベンゾトリクロライドとの反応に際して有機溶媒を用いるが、この有機溶媒としては、ハロゲン化炭化水素や芳香族炭化水素が好ましく、具体的には、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トルエン、キシレン等が好適に用いられ、好ましくはトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、及びキシレンである。これらの有機溶媒については、その1種のみを単独で用いることができるほか、2種以上を混合して混合溶媒として用いることもできる。【0013】更に、本発明においては、上記ベンゾイル化の反応を無触媒で行ってもよいが、この反応の際にその触媒としてルイス酸系の触媒を添加してもよく、この触媒添加により反応速度が上昇し、反応時間を短縮化できるという利点が生じる。この目的で添加されるルイス酸系の触媒としては、例えば、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、五塩化アンチモン、塩化チタン、塩化亜鉛、塩化スズ、及び三フッ化ホウ素等を挙げることができ、触媒活性及び副生成物生成量の観点から、好ましくは塩化第二鉄である。これらのルイス酸触媒についても、その1種のみを単独で用いることができるほか、2種以上の混合物として用いることもできる。【0014】本発明のベンゾイル化の反応における反応条件については、通常のこの種の反応と同様でよいが、反応温度については、好ましくは70〜150℃、より好ましくは80〜130℃であるのがよく、反応温度が70℃より低いと反応速度が遅くなって反応終了まで長時間を要し、また、150℃より高くなると原料の酒石酸や生成物のジベンゾイル酒石酸無水物が熱分解して収率が低下する。このベンゾイル化の反応の際には、ジベンゾイル酒石酸無水物が生成して塩化水素ガスが副生するが、この塩化水素ガスについては、アルカリ中和処理等の除害処理をしてもよいほか、塩酸吸収塔に導入して処理し、副生塩酸として取り出してもよい。【0015】次に、ジベンゾイル酒石酸は、上記のベンゾイル化反応により得られたジベンゾイル酒石酸無水物を加水分解することにより製造することができる。このジベンゾイル酒石酸無水物の加水分解反応については、通常の酸無水物の加水分解反応と同様にして行うことができ、例えば、特許第3,208,971号明細書に記載されている方法等を好適に適用することができる。【0016】【発明の実施の形態】以下、実施例に基づいて、本発明方法の好適な実施の形態を具体的に説明する。【0017】実施例1コンデンサー、排ガス除去装置、及び加熱装置を備えた反応容器に、テトラクロロエチレン143.0g(88.1ml)及びL-酒石酸60.0g(0.400モル)を仕込み、次いで触媒の塩化第二鉄0.24g(1.5ミリモル)を加え、攪拌下に反応温度を120〜130℃に維持しながら、先ず塩化ベンゾイル62.6g(0.445モル)を、次いでベンゾトリクロライド86.5g(0.443モル)をそれぞれ0.52g/分及び0.48g/分の速度で滴下し、これらの塩化ベンゾイル及びベンゾトリクロライドの滴下終了後、反応混合物を0.5時間反応温度に維持して熟成させた。【0018】その後、反応混合物を室温まで冷却し、析出した結晶を濾過したのち、テトラクロロエチレンで洗浄してジベンゾイルL-酒石酸無水物123.2g(0.362モル)を得た。このベンゾイル化反応の過程で副生した塩化水素ガスについては、排ガス除害装置に導いて中和処理した。【0019】得られたジベンゾイルL-酒石酸無水物を液体クロマトグラフィー(LC)で分析した結果、ジベンゾイルL-酒石酸無水物のLC純度は99.3%であって、ジベンゾイルL-酒石酸無水物の収率は原料のL-酒石酸基準で90.5%であった。【0020】実施例2コンデンサー、排ガス除去装置、及び加熱装置を備えた反応容器に、テトラクロロエチレン141.0g(86.9ml)及びL-酒石酸60.0g(0.400モル)を仕込み、次いで触媒の塩化第二鉄0.24g(1.5ミリモル)を加え、攪拌下に反応温度を115〜130℃に維持しながら、塩化ベンゾイル62.6g(0.445モル)とベンゾトリクロライド86.6g(0.443モル)との混合物を0.54g/分の速度で滴下し、この混合物の滴下終了後、反応混合物を1.0時間反応温度に維持して熟成させた。【0021】その後、反応混合物を室温まで冷却し、析出した結晶を濾過したのち、テトラクロロエチレンで洗浄してジベンゾイルL-酒石酸無水物134.1g(付着液を含む)を得た。このベンゾイル化反応の過程で副生した塩化水素ガスについては、排ガス除害装置に導いて中和処理した。【0022】次に、コンデンサー、排ガス除去装置、及び加熱装置を備えた反応容器に、水240.0g(13.3モル)とトルエン30.0g(0.326モル)とを仕込み、これに上記ジベンゾイルL-酒石酸無水物を添加して混合し、攪拌下に反応温度を80℃まで上昇させて2.0時間反応させ、その後、反応混合物を室温まで冷却してジベンゾイルL-酒石酸を析出させ、得られた反応混合物を濾過し乾燥してジベンゾイルL-酒石酸126.3g(0.346モル)を得た。【0023】得られたジベンゾイルL-酒石酸を液体クロマトグラフィー(LC)で分析した結果、ジベンゾイルL-酒石酸のLC純度が99.8%であり、水分量が1.80重量%であって、ベンゾイルL-酒石酸の収率は原料のL-酒石酸基準で86.6%であった。【0024】実施例3コンデンサー、排ガス除去装置、及び加熱装置を備えた反応容器に、トリクロロエチレン142.8g(98.1ml)及びL-酒石酸60.0g(0.400モル)を仕込み、次いで触媒の塩化第二鉄0.24g(1.5ミリモル)を加え、攪拌下に反応温度を80〜90℃に維持しながら、先ず塩化ベンゾイル56.2g(0.400モル)を、次いでベンゾトリクロライド78.2g(0.400モル)を順次0.45g/分の速度で滴下し、これらの塩化ベンゾイル及びベンゾトリクロライドの滴下終了後、反応混合物を2.0時間反応温度に維持して熟成させた。【0025】その後、反応混合物を室温まで冷却し、析出した結晶を濾過したのち、トリクロロエチレンで洗浄し、乾燥してジベンゾイルL-酒石酸無水物111.0g(0.326モル)を得た。このベンゾイル化反応の過程で副生した塩化水素ガスについては、排ガス除害装置に導いて中和処理した。【0026】得られたジベンゾイルL-酒石酸無水物を液体クロマトグラフィー(LC)で分析した結果、ジベンゾイルL-酒石酸無水物のLC純度は99.9%であって、ジベンゾイルL-酒石酸無水物の収率は原料のL-酒石酸基準で81.5%であった。【0027】実施例4コンデンサー、排ガス除去装置、及び加熱装置を備えた反応容器に、パラキシレン51.6g(59.9ml)及びL-酒石酸60.0g(0.400モル)を仕込み、次いで触媒の塩化第二鉄0.018g(0.11ミリモル)を加え、攪拌下に反応温度を110〜130℃に維持しながら、先ず塩化ベンゾイル62.4g(0.444モル)を、次いでベンゾトリクロライド86.4g(0.442モル)をそれぞれ0.52g/分及び0.41g/分の速度で滴下し、これらの塩化ベンゾイル及びベンゾトリクロライドの滴下終了後、反応混合物を3.0時間反応温度に維持して熟成させた。【0028】その後、反応混合物を室温まで冷却し、析出した結晶を濾過したのち、パラキシレンで洗浄し、乾燥してジベンゾイルL-酒石酸無水物117.1g(0.344モル)を得た。このベンゾイル化反応の過程で副生した塩化水素ガスについては、排ガス除害装置に導いて中和処理した。【0029】得られたジベンゾイルL-酒石酸無水物を液体クロマトグラフィー(LC)で分析した結果、ジベンゾイルL-酒石酸無水物のLC純度は99.9%であって、ジベンゾイルL-酒石酸無水物の収率は原料のL-酒石酸基準で86.0%であった。【0030】実施例5コンデンサー、排ガス除去装置、及び加熱装置を備えた反応容器に、パラキシレン51.6g(59.9ml)及びL-酒石酸60.0g(0.400モル)を仕込み、次いで触媒の塩化第二鉄0.06g(0.44ミリモル)を加え、攪拌下に反応温度を120〜130℃に維持しながら、先ず塩化ベンゾイル62.4g(0.444モル)を、次いでベンゾトリクロライド86.4g(0.442モル)をそれぞれ0.42g/分及び0.48g/分の速度で滴下し、これらの塩化ベンゾイル及びベンゾトリクロライドの滴下終了後、反応混合物を2.0時間反応温度に維持して熟成させた。【0031】その後、反応混合物を室温まで冷却し、析出した結晶を濾過したのち、パラキシレンで洗浄してジベンゾイルL-酒石酸無水物108.2g(0.318モル)を得た。このベンゾイル化反応の過程で副生した塩化水素ガスについては、排ガス除害装置に導いて中和処理した。【0032】得られたジベンゾイルL-酒石酸無水物を液体クロマトグラフィー(LC)で分析した結果、ジベンゾイルL-酒石酸無水物のLC純度は99.0%であって、ジベンゾイルL-酒石酸無水物の収率は原料のL-酒石酸基準で79.5%であった。【0033】【発明の効果】本発明によれば、面倒な後処理を必要とする安息香酸や二酸化硫黄ガス等の副生物の生成がなく、各種のラセミアミン類の光学分割剤等の用途や各種の有機合成中間体等の用途に重要な化合物であるジベンゾイル酒石酸及びその酸無水物を工業的に有利に製造することができる。 酒石酸とこの酒石酸に対して1.0〜1.2倍モル量の塩化ベンゾイル及びベンゾトリクロライドとを有機溶媒中で反応させてジベンゾイル酒石酸無水物を得ることを特徴とするジベンゾイル酒石酸無水物の製造方法。 有機溶媒が、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トルエン及びキシレンから選ばれた1種の有機溶剤又は2種以上の混合溶剤であることを特徴とする請求項1記載のジベンゾイル酒石酸無水物の製造方法。 酒石酸に塩化ベンゾイルを反応させ、次いでベンゾトリクロライドを反応させることを特徴とする請求項1又は2に記載のジベンゾイル酒石酸無水物の製造方法。 ルイス酸触媒の存在下に反応を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のジベンゾイル酒石酸無水物の製造方法。 ルイス酸触媒が、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、五塩化アンチモン、塩化チタン、塩化亜鉛、塩化スズ、及び三フッ化ホウ素から選ばれた1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする請求項4記載のジベンゾイル酒石酸無水物の製造方法。 請求項1〜5記載のいずれかの方法で得られたジベンゾイル酒石酸無水物を加水分解してジベンゾイル酒石酸を得ることを特徴とするジベンゾイル酒石酸の製造方法。