タイトル: | 特許公報(B2)_徐放性医薬組成物 |
出願番号: | 2002139835 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | A61K 9/14,A61K 31/522,A61K 47/36,A61K 47/38,A61P 11/08 |
土肥 博文 山田 圭吾 鈴木 海 JP 5046463 特許公報(B2) 20120727 2002139835 20020515 徐放性医薬組成物 大塚製薬株式会社 000206956 三枝 英二 100065215 中野 睦子 100108084 林 雅仁 100115484 田中 順也 100124431 土肥 博文 山田 圭吾 鈴木 海 JP 2001146535 20010516 20121010 A61K 9/14 20060101AFI20120920BHJP A61K 31/522 20060101ALI20120920BHJP A61K 47/36 20060101ALI20120920BHJP A61K 47/38 20060101ALI20120920BHJP A61P 11/08 20060101ALI20120920BHJP JPA61K9/14A61K31/522A61K47/36A61K47/38A61P11/08 A61K9/00-9/72 A61K47/00-47/48 A61K31/00-31/80 特表平1−502668(JP,A) 特開昭63−196511(JP,A) 特開2000−103730(JP,A) 5 2003034632 20030207 16 20050203 2010004268 20100226 今村 玲英子 平井 裕彰 渕野 留香 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、所望の徐放性を備えながらも、飲み易さが改善されてなる1日1回の用時調製型の徐放性医薬組成物に関する。より詳細には、徐放性製剤の薬物の溶出性及び徐放性を損なうことなく、用時に水を加えることによって一定の粘稠性を有したゼリー状またはシロップ状となることによって飲み込みやすい形態を備えた、1日1回型の用時調製型徐放性医薬組成物に関する。又、本発明は、更に調製後長時間経過しても所望の徐放性を保持する効果をも有している、1日1回型の用時調製型徐放性医薬組成物に関する。【0002】【従来の技術】医薬品の剤形のうち、服用時に水を加えて調製するドライシロップは、処方量の柔軟性、服用のしやすさから特に小児用剤形として汎用されている。かかるドライシロップ剤には水を加えたときに溶液になるものと懸濁液となるものがあり、製剤化において、薬物の溶解性等の物理化学的性質や徐放性などの製剤効果上の目的からいずれかの形態が選択される。【0003】所望の溶出性または徐放性を備えたドライシロップ剤を得る目的で、従来より、水不溶性基剤と水易溶性薬物とを組み合わせて、薬物の溶出を抑制する方法が各種提案されている。また、徐放性を付与するために、ドライシロップに配合する薬物の原体粒子を水不溶性ポリマーでコーティングする方法も考えられるが、原体粒子の粒子径は非常に小さく、表面積が大きいため、通常の水不溶性ポリマーによるコーティングで所望の溶出性をコントロールすることは非常に困難である。原体を直接コーティングする方法としては、原体を造粒した後、これを特定の割合の水不溶性ポリマーでコーティングする方法が報告されている(特開2000−201816号公報)。しかしながら、この方法では、コーティングに多量の徐放性フィルムを要する反面、その溶出制御効果は十分でなく、長時間にわたって溶出を制御できず、1日1回の徐放性製剤処方を可能とすることはできない。【0004】また、所望の溶出性または徐放性を備えたドライシロップ剤を得る場合、溶出抑制が過ぎると消化管内での放出が遅延する結果、バイオアベイラビリティーが低下するという問題がある。このため、良好なバイオアベイラビリティーを得るためにも、薬物の溶出が抑制されながらも消化管内では良好に放出されるという溶出挙動をバランスよく両立させることが重要な課題となる。【0005】このようにバイオアベイラビリティーの確保が前提として求められるため、従来、徐放性製剤としては1日2回までの製剤処方が一般的である。また、従来の技術では溶出制御と良好な消化管放出の条件を併せ持つ懸濁シロップ剤は、粒子が口中に残留しやすく服用に違和感がある欠点がある。【0006】また、用時調製型の製剤の場合、水を添加して調製した後、飲み忘れ等により長時間経過してしまう場合があり、これを誤って服用してしまうことも考えられる。このような場合、当該製剤がもつ本来の徐放性が失われてしまい、急激に溶出する結果、血中濃度の上昇により予期せぬ事故が起こる可能性がある。特に安全域の低い薬物を投与する場合、製剤の徐放性が喪失されると人体に対して多大なる影響が及ぼされることが予想される。例えば、急性及び慢性気管支喘息の対症療法剤として汎用されているテオフィリンは、その有効血中濃度範囲が約5〜20μg/mlであり、この血中濃度を超えると時には心血管系及び中枢神経系に対して重篤な副作用が現れることが知られている。【0007】このため、用時調整型の徐放性製剤は、調製後長時間経過したものを万が一服用した場合であっても血中薬物濃度が安全域を逸脱することのないように、所望の徐放性が保持されている必要がある。特にテオフィリン等の安全域の低い薬物を含有する用時調整型の徐放性製剤の場合には、高い徐放性保持効果が要求される。また、製剤の徐放性は、その製剤の形態や投与対象者の年齢や喫煙の有無によっても大きく影響されるため、より一層効果的に製剤の徐放性をコントロールできる技術の開発が望まれていた。【0008】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の用時調製型徐放性製剤に関する問題を解決することを目的とするものである。具体的には、所望の徐放性を備えながらも飲みやすさが改善されてなる1日1回の用時調製型の徐放性医薬組成物を提供することを目的とする。より詳細には、本発明は、薬物の溶出性及び徐放性を損なうことなく、用時に水を加えることによって一定の粘稠性を有したゼリー状またはシロップ状となることによって飲み込みやすい形態を備えた、1日1回型の用時調製型徐放性医薬組成物を提供することを目的とする。又、本発明は、更に調製後長時間経過しても所望の徐放性を保持する効果をも有している、1日1回型の用時調製型徐放性医薬組成物を提供することを目的とする。【0009】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成するため日夜鋭意研究を重ねていたところ、服用時の投与形態が、徐放性薬物粒子が分散してなるゼリー状またはシロップ状形態となるように処方を設計することにより、上記所望の目的が達成できることを見出した。そして、バイオアベイラビリティーを損なわない程度に薬物の溶出性が制御された徐放性薬物粒子と、水を加えると速やかに増粘してゼリー状若しくはシロップ状になるゲル化剤とを組み合わせて調製された医薬組成物によれば、用時に上記の所望の投与形態に調製できることを確認した。本発明はかかる知見に基づいて開発されたものである。すなわち、本発明は下記に掲げる医薬組成物である。(1)服用時に水を加えて調製される用時調製型医薬組成物であって、徐放性コーティング皮膜でコーティングされた薬物含有物とゲル化剤を含有することを特徴とする1日1回の用時調製型の徐放性医薬組成物。(2)徐放性コーティング皮膜でコーティングされた薬物含有物とゲル化剤成分とを併せて造粒されてなるか、或いは徐放性コーティング皮膜でコーティングされた薬物含有物を核としてゲル化剤でコーティングされてなるものである、(1)記載の徐放性医薬組成物。(3)徐放性コーティング皮膜でコーティングされた薬物含有物がゲル化剤で更に被覆されてなることを特徴とする、(1)記載の徐放性医薬組成物。(4)薬物がテオフィリンであり、調製後長時間経過しても徐放性が保持されていることを特徴とする、(1)乃至(3)のいずれかに記載の徐放性医薬組成物。(5)ゲル化剤がアルギン酸塩である、(1)乃至(4)のいずれかに記載の徐放性医薬組成物。(6)(A)徐放性コーティング皮膜がエチルセルロースを50〜100重量%及びメチルセルロース又はヒドロキプロピルセルロースの少なくとも1種を0〜50重量%の割合で含有し、(B)該皮膜でコーティングされた薬物含有物が薬物を0.01〜90重量%含有するものであり、(C)ゲル化剤がアルギン酸ナトリウムである、(1)乃至(5)のいずれかに記載の徐放性医薬組成物。【0010】なお、本発明でいう「徐放性の保持」或いは「徐放性保持」とは、血中薬物濃度が安全域を逸脱しないことを限度として、徐放性を保持していることを意味し、具体的には、用時調製型徐放性製剤に水を添加して調製後長時間経過したものを服用した場合であっても、血中薬物濃度が安全域の範囲内から逸脱しないように当該製剤の徐放性が保持されることをいう。【0011】本発明は、服用時の形態が、徐放性薬物粒子が分散したゼリー状またはシロップ状となるように調製することにより、従来技術による懸濁シロップの形態では達成できなかった服用しやすさと持続的な溶出制御性とを実現可能にしたものである。本発明の医薬用組成物は、用時に水を配合することによってゼリー状またはシロップ状といった飲み込み易い形態に調製でき、pH依存性のない溶出挙動を示すため、特に嚥下力の弱い乳幼児や嚥下困難な患者、さらに高齢者への経口投与剤形として有効である。また、本発明の用時調製型徐放性医薬組成物は、持続的な溶出挙動によって徐放性を備えているため、1日の投与回数を1回に低減することができ、これによって服用の煩わしさを解消することができる。更に、本発明の用時調製型徐放性医薬組成物は、徐放性保持効果が高く、調製後長時間経過したものを誤って服用したとしても所望の徐放効果が奏されるので、テオフィリン等の安全域の低い薬物を用時調製型の徐放性製剤として調製する場合に有用である。【0012】【発明の実施の形態】本発明の医薬組成物は、服用時に水を加えてゲル状またはシロップ状に調製して服用される1日1回の用時調製型の医薬組成物であって、徐放性コーティング皮膜でコーティングされた薬物含有物とゲル化剤を含有することを特徴とする。【0013】ここで本発明において用いられる薬物は、経口投与可能なものであれば、その薬効やその種類によって何等制限されるものではない。本発明に用いられる薬物の一例として、呼吸器官用製剤、消化器官用製剤、循環器官用製剤、中枢神経用製剤、末梢神経用製剤、抗生物質製剤、化学療法剤、抗腫瘍剤、血小板凝集抑制剤、抗アレルギー剤、ビタミン剤などの各種製剤に配合される通常の薬物を挙げることができる。その具体例としては、例えばテオフィリン、グレパフロキサシン、カルテオロール、プロカテロール、レバミピド、アリピプラゾール、シロスタゾールなどが挙げられる。好ましいものとして、水易溶性の薬物を挙げることができる。【0014】かかる本発明の薬物含有物は、薬物を通常使用される手法で徐放化してなるものであり、かかる徐放化手段としては、特に、薬物含有組成物を造粒した後、徐放性皮膜でコーティングする方法が採用される。【0015】かかる徐放性コーティング皮膜でコーティングされた薬物含有物の製造方法としては、具体的には、まず対象とする薬物を含む組成物を押し出し造粒法、破砕造粒法、流動層造粒法、遠心流動造粒法、転動造粒法または高速攪拌造粒法等により造粒し、得られた粒子に、スプレーコーティング法等の方法によって徐放性コーティング皮膜でコーティングする方法を例示することができる。なお、コーティングには流動層、遠心流動、通気式コーティングパン、高速攪拌或いはこれらの複合型の装置が、調製する薬物含有物の形状、大きさ、製造方法等に応じて適宜使用できる。【0016】薬物含有物の粒子径は、適宜設定されうるが、最終的にはゼリーに包まれた状態またはシロップ状態で服用されるため、2mm程度までであれば無理なく服用できる。好ましくは50〜1000μm、より好ましくは75〜750μmである。【0017】本発明の薬物含有物の形態は特に問わないが、例えば粒子径を50〜1000μm、好ましくは75〜750μmに調製する場合には、まずコーティング前の薬物含有物を押し出しマルメ粒子とすることが望ましい。この場合、薬物含量は0.01〜90重量%の範囲で任意に設定することができる。好ましくは0.01〜70重量%である。【0018】当該コーティング前の薬物含有物は、有効成分となる所望の薬物に加えて、当業界で慣用の製剤担体を配合して調製される。かかる製剤担体としては、当該分野で従来公知のものを広く使用でき、例えば、乳糖、白糖、マンニトール、塩化ナトリウム、ブドウ糖、でんぷん、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸塩等の賦形剤、水、エタノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースNa、セラック、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、デキストリン、プルラン等の結合剤;クエン酸、無水クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム等のpH調整剤;カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピセルロース、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、部分アルファー化デンプン、乾燥デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン、ポリソルベート80等の崩壊剤;第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ポリエチレングリコール、コロイド状ケイ酸等の滑沢剤等が例示できる。【0019】また成形手段も慣用方法が使用できるが、好ましくは上記粒子径を有する粒子が得られる手法である。例えば、薬物を含有する混合物を練合機で造粒し、得られる造粒物を押し出し造粒機に通過させ、引き続いてマルメライザーで球形化する方法が挙げられる。【0020】かくして得られる薬物含有物(核)は、さらに徐放性粒子として調製される。具体的には、徐放性粒子は前述で調製された薬物含有物を核として、これを徐放性コーティング皮膜で被覆することによって調製することができる。【0021】徐放性コーティング皮膜基剤としては、従来公知のものを使用することができ、例えば水分散エチルセルロース、エチルセルロース、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーS,メタアクリル酸コポリマーLD,アミノアルキルメタアクリレートコポリマーLD,アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート200731、メチルセルロース、D−マンニトール、グリセリン脂肪酸エステル、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、トリアセチン、クエン酸トリエチル、アセチル化モノグリセリド、ヒマシ油、水、エタノール等のフィルムコーティング基剤が例示される。これらは、1種単独で使用してもよく、又2種以上を組み合わせて使用してもよい。通常これらのコーティング基剤を、核粒子100重量部に対して10〜100部の割合で噴霧塗布することによって、徐放性粒子を調製することができる。【0022】徐放性コーティング皮膜基剤として、好ましくは低級アルキルセルロース、またはそれと水溶性被覆剤との混合物である。具体的には、低級アルキルセルロースと水溶性被覆剤の混合割合としては、低級アルキルセルロース:水溶性被覆剤の重量割合で100〜50:0〜50、或いは100〜60:0〜40の範囲を挙げることができる。【0023】ここで、コーティング剤成分として用いられる低級アルキルセルロースとしては、代表的にはエチルセルロースを例示できる。該エチルセルロースとしては、エチルセルロースそのものを使用してもよく、又エチルセルロースがセタノールやラウリル硫酸ナトリウム等の存在下で水中に分散されている水分散エチルセルロースを使用してもよい。エチルセルロースの市販品としては、例えば、「AQUACOAT」(水分散エチルセルロース)(旭化成社製)、「エトセル」(エチルセルロース)(日新化成社製)が知られている。また、他方のコーティング剤成分としての水溶性被覆剤には、D−マンニトール、ヒドロキシ低級アルキルセルロース誘導体及びポリアルキレングリコールが含有される。上記ヒドロキシ低級アルキルセルロース誘導体としては、具体的には例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のヒドロキシ低級アルキル低級アルキルセルロース類や、例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)等のヒドロキシ低級アルキルセルロース類およびメチルセルロース等の低級セルロースを例示できる。また、ポリアルキレングリコールとしては、特に分子量が約4000〜8000のものが好ましい。【0024】また、優れた徐放性保持効果を付与する点から、徐放性コーティング皮膜基剤として、好ましくは、該皮膜基材100重量%中にエチルセルロースを50〜100重量%、並びにメチルセルロース又はヒドロキプロピルセルロースの少なくとも1種を0〜50重量%の割合で含んでなるものである。更に好ましくは、エチルセルロースを70〜100重量%、並びにメチルセルロース又はヒドロキプロピルセルロースの少なくとも1種を0〜30重量%の割合で含んでなるものである。【0025】コーティング剤は通常、上記低級アルキルセルロースを約1〜30重量%の割合で含む溶液またはこれと水溶性被覆剤とを含む溶液に調製されて使用されるのが好ましく、さらに該溶液には必要に応じて着色剤、隠蔽剤、可塑剤、矯味剤等の添加剤を適宜添加することができる。【0026】上記、コーティング剤溶液の核粒子へのコーティングは、通常の方法、例えば、流動層コーティング法、遠心流動型コーティング法によるスプレーコーティング法等に従って、行うことができる。【0027】本発明の医薬用組成物におけるゲル化剤には、水を加えた時に常温で速やかにゲル化する性質を有することが重要である。したがって、ゲル化剤の成分としてはゼラチンや寒天等のようなゲル化に加熱や冷却を必要とするものは適当でない。本発明において好適なゲル化剤としては、多価金属イオンまたは多価金属の塩を配合することによって架橋ゲル化する高分子、または水に溶解若しくは水によって膨潤することによってゲル化する高分子を例示することができる。【0028】ここで、水に溶解若しくは水によって膨潤することによってゲル化する高分子としては、キサンタンガム等の各種のガム類、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等を例示することができる。【0029】また、多価金属イオンにより架橋ゲル化する高分子とは、例えばアルギン酸塩、ペクチン酸塩等が挙げられる。なお塩としては、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属との塩、カルシウムやマグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩を例示することができる。また、多価金属イオンとしては、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、マグネシウム、カルシウムなどの金属イオンが挙げられるが、医薬品の添加物としてはカルシウムイオンが望ましい。【0030】特に、アルギン酸塩は、徐放性を損なうことなく飲みやすい形態を備えさせるだけでなく、用時調製型徐放性製剤において水を添加して調製後長時間経過した場合であっても徐放性を保持する効果をも付与することができるので、特に血中濃度の安全域の狭いテオフィリン等薬物を用時調整型徐放性製剤として調製する場合に好適に使用することができる。【0031】アルギン酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、あるいはそれらの部分エステル化物等が使用可能であるが、なかでもアルギン酸ナトリウムは食品分野で粘稠剤やゲル化剤として広く使用されており、種々の分子量のものが市販されているため、本発明においても利用価値は大きい。【0032】市販のアルギン酸ナトリウムの多くは水溶液としたときの粘度として規格化される。本発明の医薬組成物において適用可能なアルギン酸ナトリウムの粘度は、20℃における1%水溶液の粘度として20cP〜1000cP、望ましくは50cP〜800cPである。アルギン酸ナトリウムは10%水溶液の粘度として規格化される超低粘度品も市販されているが、あまり低粘度のものは強いゲル強度が得られにくく、逆に高粘度のものは水を加えた時に溶解しにくくなり、いずれの場合も薬物のマスキングに不都合となる。また、アルギン酸ナトリウムは、ポリマーの構成単位であるマンヌロン酸とグルロン酸の構成比(M/G比)によっても各種グレードに分類されている。アルギン酸の金属イオンによるゲル化は、グルロン酸部分におけるキレート架橋に基づくため、M/G比が大きい、すなわちマンヌロン酸含有量の大きいものでは柔らかいゲルが得られ、M/G比が小さい、すなわちグルロン酸含量の大きいものは固いゲルが得られる。市販のアルギン酸ナトリウムのM/G比は0.5から2.0の間であり、本発明においては、この範囲のいずれのアルギン酸ナトリウムを用いても目的にかなう固さのゲルが調製できる。【0033】本発明の医薬組成物において、カルシウムイオンの供給成分としては、無機及び有機酸のカルシウム塩、例えば塩化カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、炭酸カルシウム等があげられる。ただし、このうち硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、炭酸カルシウム等の中性で水に不溶の塩を使用の場合は、水を加えただけではイオンを放出しないので、溶解させるために酸の添加が必須となる。本発明では、クエン酸、アジピン酸、グルコノデルタラクトン等の有機酸が添加可能である。【0034】また、ゲル化剤は水を加えたとき、できる限り速やかに、かつ均一なゼリーを形成することがきわめて重要である。例えばゲル化剤としてアルギン酸ナトリウムを用いる場合、そのゲル化は、(1)アルギン酸ナトリウムの水和、(2)カルシウムイオンとの塩形成の2段階で生じる。よって、アルギン酸ナトリウムが高粘度品であって、水和に時間を要する場合や、カルシウム塩の解離が早すぎる場合はアルギン酸の部分ゲル化がおこり、不均一となりやすい。特に塩化カルシウムや乳酸カルシウム等の中性で水に可溶の多価金属塩を使用すると、多価金属イオンの放出は早いが、アルギン酸の部分ゲル化に集中するため、最終的に固いゲルと液部分の二相に分かれ、かえって薬物の溶出を早める結果となることが多い。このような不都合に対しては、多価金属イオン、特にカルシウムイオンに対してキレート作用を持つ、クエン酸ナトリウムやピロリン酸ナトリウム等の添加によりゲル化反応を遅延させることができる。【0035】ゲル化剤に水を加えた時に形成されるゼリーの固さは、服用感および薬物粒子の分散状態を左右する。ある程度の弾性があり、容易に型くずれしない、例えばゼリーデザート食品に見られる程度の固さが望ましい。ゼリーの固さは、その主体であるゲル化剤の種類および添加量と、水の添加量に依存する。例えばゲル化剤としてアルギン酸ナトリウムを用いる場合、適度な固さのゼリーを得るためのその量は、その規格粘度、およびM/G比によって変動するが、加える水の重量に対して、0.2〜5重量%、望ましくは0.5〜3重量%である。ただし、本発明の医薬組成物は固体状態で提供され、水を加えるのは使用者であるため、製剤化においては、あらかじめ服用時の水の添加量を規定した上で分量が設定される。【0036】ゲル化剤に添加する多価金属の塩または多価金属イオンの量は、少なすぎるとゲル化が不十分となり、多すぎても過剰分が味の変化をもたらす。例えば、アルギン酸ナトリウム(カルボキシル基1個あたりの分子量:198.1)に対するカルシウム塩の配合量は、0.01〜1モル、0.1〜1モル、0.2〜0.7モルの範囲から適宜選択すればよく、好ましくは0.05〜0.5モルの範囲を挙げることができる。また、不溶性カルシウム塩を用いる場合は、その解離に必要な有機酸の選択、および添加量は、ゲル化速度のコントロールの他に、ゼリーの味に影響するため慎重に設定する必要がある。【0037】本発明におけるゲル化剤には、その他必要に応じて有機酸、キレート剤、さらに精製白糖、D−ソルビトール、D−マンニトール、キシリトール、サッカリンナトリウム、ソーマチン、アスパルテーム等の甘味料やクエン酸、クエン酸ナトリウム等のpH調整剤、チェリー、ストロベリー、オレンジ、バニラ、ヨーグルト等の香料を加えてもよい。【0038】本発明の医薬組成物において、徐放性の薬物含有物とゲル化剤の組成比は、服用時に水を加えることにより形成されるゼリーの体積と、その中に分散する薬物粒子の量を勘案し、主として服用感(飲みやすさ)の観点から総合的に評価し設定される。薬物粒子が多すぎる場合、ゼリーとなってもざらつき感が多く、粒子が舌に触れる確率が増すため、好ましくない。逆にゲル化剤の量が多すぎる場合は、水の必要量が増え、服用しずらくなる。本発明の医薬組成物の服用一回分あたりの処方量に水を1〜5mL加えることを想定した場合、徐放性薬物含有物とゲル化剤(特にアルギン酸ナトリウム)の適当な重量比は1:0.01〜1:0.5であり、より好ましくは1:0.02〜1:0.2である。【0039】以上のように、本発明の医薬組成物は、基本的には徐放性の薬物含有物とゲル化剤の2つの組成を備えるものであればよく、本発明の効果を奏することを限度としてその組成の存在態様は特に制限されない。具体的には、製剤化において、これらを全く別個に調製した後、最後に混合して合剤としてもよいし、徐放性の薬物含有物とゲル化剤成分とを合わせて造粒するか、あるいは徐放性の薬物含有物を核としてゲル化剤でコーティングして製剤化してもよい。又、ゲル化剤で更に被覆されてなる徐放性の薬物含有物とゲル化剤とを混合した合剤であってもよい。【0040】【実施例】以下、本発明の各種製剤の製造方法について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、ここで「Aquacoat」は旭化成(株)より販売されている水分散エチルセルロース、「エトセル」は日新化成(株)より販売されているエチルセルロース、「SM−4」は信越化学工業(株)販売されているメチルセルロース、「TC−5R」は信越化学工業(株)販売されているヒドロキシプロピルメチルセルロース、「マンニトール」は協和発酵(株)より販売されているマンニトール、HPC−SLは「日本曹達」より販売されているヒドロキシプロピルセルロース、「シトロフレックス2(SC−60)」はカルターフードサイエンス(株)より販売されているクエン酸トリエチル、「Myvacet9−45」は光洋商会(株)より販売されているアセチル化モノグリセリド、「アルギン酸Na(I−7)」はキミカ(株)より販売されているアルギン酸ナトリウム、「フジカリン」は富士化学工業(株)より販売されている無水りん酸1水素カルシウム、「キサンタンガム」は三栄源エフエフアイ(株)より販売されているキサンタンガム、クエン酸3ナトリウム2水和物、無水クエン酸は和光純薬(株)製である。【0041】実施例1(A:薬物を含む核粒子)テオフィリン2000g、乳糖680g、微結晶セルロース(アビセル、旭化成社製)1000g、及びコーンスターチ200gからなる混合物3880gをバーチカルグラニュレーター(FM−VG25P)に入れ、2%Tween80水溶液1600gで造粒した。得られた造粒物を押し出し造粒機(TWIN DOME GRAN MODEL TDG−80)(口径0.3mm)に通過させ、引き続いてマルメライザー(MARUMERIZER MODEL QJ−400)で球形化する。得られた球状粒子は送風乾燥機(TABAI SAFETY OVEN MODEL SPHH−200)80℃で乾燥後、篩別して0.15〜0.5mmの球状粒子を得た。【0042】(B:薬物を含む徐放性粒子)(A:薬物を含む核粒子)で得られた核粒子300gを流動造粒コーティング装置(NQ−125:不二パウダル)に入れ、吸気温度50℃、品温35〜40℃にコントロールし、Aquacoat500gとSM−4 18.75g、クエン酸トリエチル(「シトロフレックス2(SC−60)」、カルターフードサイエンス)50.0g及び水525gの混合フィルム溶液1093.75gを、微小球形粒子に対して10〜50%噴霧した。続いて送風乾燥機(TABAI SAFETYOVEN MODEL SPHH−200)70℃で5時間、流動造粒コーティング装置(NQ−125:不二パウダル)で、吸気温度80℃で2時間キュアリングした。その後、篩別して0.15〜0.5mmの徐放性粒子を得た。【0043】(C:球状ゼリー用徐放性組成物)(B:薬物を含む徐放性粒子)で得られた徐放性粒子250gを遠心流動型コーティング造粒機(CF−360:フロイント)に入れ、アルギン酸Na (I−7)20g、フジカリン2.0g、ストロベリー香料 1.0g、サッカリンナトリウム2.0g、マンニトール207.0gの混合粉末を散布しながら、クエン酸3ナトリウム2水和物1.0g及び無水クエン酸2.0gを水137gに溶解して調製した水溶液140gを結合剤として造粒して、球状ゼリー用徐放性組成物を得た。【0044】得られた球状組成物は送風乾燥機(TABAI SAFETY OVEN MODEL SPHH−200)60℃で乾燥後、篩別して0.15〜1.0mmの球状粒子を得た。【0045】実施例2(B:薬物を含む徐放性粒子)実施例1で得られた(A:薬物を含む核粒子)核粒子300gを流動造粒コーティング装置(NQ−125:不二パウダル)に入れ、吸気温度50℃、品温35〜30℃にコントロールし、エトセル107.6g、HPC−SL32.4g、Myvacet9−45 14.0g、無水エタノール1646.0g及び水200.0gの混合フィルム溶液2000.0gを微小球形粒子に対して10〜35%噴霧し、送風乾燥機(TABAI SAFETY OVEN MODEL SPHH−200)を用いて60℃で乾燥後、0.15〜0.5mmの徐放性粒子を得た。【0046】(C:球状ゼリー用徐放性組成物)実施例1の(C:球状ゼリー用徐放性組成物)に記載の方法に従って、球状ゼリー用徐放性組成物を得た。【0047】得られた球状組成物は送風乾燥機(TABAI SAFETY OVEN MODEL SPHH−200)60℃で乾燥後、篩別して0.15〜1.0mmの球状粒子を得た。【0048】実施例3(B:薬物を含む徐放性粒子)実施例1で得られた(A:薬物を含む核粒子)核粒子400gを流動造粒コーティング装置(NQ−125:不二パウダル)に入れ、吸気温度50℃、品温35〜40℃にコントロールし、Aquacoat500gとマンニトール37.5g、クエン酸トリエチル(「シトロフレックス2(SC−60)」、カルターフードサイエンス)50.0g及び水362.5gの混合フィルム溶液950.0gを、微小球形粒子に対して10〜50%噴霧し、送風乾燥機(TABAI SAFETY OVEN MODEL SPHH−200)を用いて60℃で乾燥後、0.15〜0.5mmの徐放性粒子を得た。【0049】(C:球状ゼリー用徐放性組成物)実施例1の(C:球状ゼリー用徐放性組成物)に記載の方法に従って、球状ゼリー用徐放性組成物を得た。【0050】得られた球状組成物は送風乾燥機(TABAI SAFETY OVEN MODEL SPHH−200)60℃で乾燥後、篩別して0.15〜1.0mmの球状粒子を得た。【0051】実施例4(B:薬物を含む徐放性粒子)実施例1の(B:薬物を含む徐放性粒子)の項に記載の方法に従って、薬物を含む徐放性粒子を得た。【0052】(C:球状ゼリー用徐放性組成物)徐放性粒子250gを遠心流動型コーティング造粒機(CF−360)に入れ、キサンタンガム20g、ストロベリー香料1.0g、サッカリンナトリウム2.0g、マンニトール220.0gの混合粉末を散布しながら、クエン酸3ナトリウム2水和物1.0g及び無水クエン酸2.0gを水137gに溶解して調製した水溶液140gを結合剤として造粒して、球状ゼリー用徐放性組成物を得た。【0053】得られた球状組成物は送風乾燥機(TABAI SAFETY OVEN MODEL SPHH−200)を用いて、60℃で乾燥後、篩別して0.15〜1.0mmの球状粒子を得た。【0054】実施例5(B:薬物を含む徐放性粒子)実施例1で得られた(A:薬物を含む核粒子)核粒子300gを流動造粒コーティング装置(NQ−125:不二パウダル)に入れ、吸気温度50℃、品温35〜40℃にコントロールし、Aquacoat500gとSM−4 15.0g、クエン酸トリエチル(「シトロフレックス2(SC−60)」、カルターフードサイエンス)50.0g及び水510gの混合フィルム溶液1075.0gを、微小球形粒子に対して10〜50%噴霧した。続いて送風乾燥機(TABAI SAFETY OVEN MODEL SPHH−200)を用いて70℃で5時間、流動造粒コーティング装置(NQ−125:不二パウダル)で、吸気温度80℃で2時間キュアリングした。その後、篩別して0.15〜0.5mmの徐放性粒子を得た。【0055】(C:ゲル化剤含有組成物)実施例4の(C:球状ゼリー用徐放性組成物)に記載の方法に従って、球状ゼリー用徐放性組成物を得た。【0056】得られた球状組成物は送風乾燥機(TABAI SAFETY OVEN MODEL SPHH−200)を用いて、60℃で乾燥後、篩別して0.15〜1.0mmの球状粒子を得た。【0057】実施例6(B:薬物を含む徐放性粒子)実施例2の(B:薬物を含む徐放性粒子)に記載の方法に従って、薬物を含む徐放性粒子を得た。【0058】(C:ゲル化剤含有組成物)実施例4の(C:球状ゼリー用徐放性組成物)に記載の方法に従って、球状ゼリー用徐放性組成物を得た。【0059】得られた球状組成物は送風乾燥機(TABAI SAFETY OVEN MODEL SPHH−200)を用いて、60℃で乾燥後、篩別して0.15〜1.0mmの球状粒子を得た。【0060】実施例7(A:薬物を含む核粒子)テオフィリン400g、乳糖260g、微結晶セルロース(アビセル、旭化成(株)製)260g、及びコーンスターチ72gからなる混合物992gをバーチカルグラニュレーター(FM−VG10M)に入れ、2%Tween80溶液400gで造粒する。得られる造粒物を押し出し造粒機(DOME GRAN MODEL DG−L)(口径0.3mm)に通過させ、引き続いてマルメライザー(MARUMERIZER MODEL QJ−400)で球形化する。得られた球状粒子は送風乾燥機(TABAI SAFETY OVEN MODEL SPHH−200)50℃で乾燥後、篩別して0.15〜0.5mmの球状粒子を得た。【0061】(B:薬物を含む徐放性粒子)(A:薬物を含む核粒子)で得られた微小球形粒子400gを流動造粒コーティング装置(NQ−125:不二パウダル)に入れ、吸気温度50℃、品温35〜40℃にコントロールし、Aquacoat 500gとマンニトール(協和発酵(株)製)22.5g、クエン酸トリエチル(「シトロフレックス2(SC−60)」、カルターフードサイエンス)50g及び水317.5gの混合フィルム溶液890gを、微小球形粒子に対して10〜100%噴霧し、送風乾燥機(TABAI SAFETY OVEN MODEL SPHH−200)60℃で3時間キュアリング後、篩別して0.15〜0.5mmの徐放性粒子を得た。【0062】(C:ゲル化剤含有組成物)アルギン酸Na 20g、フジカリン2.1g、クエン酸3ナトリウム3.9g、アジピン酸12.5g、ストロベリー香料 1.0g、ソーマチン2.0g、粉糖158.5gを流動層造粒装置(FL-10)に入れ、吸気温度60℃、品温35〜40℃にコントロールし、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L)の3%溶液を結合剤として造粒・乾燥して、ゲル化剤含有組成物を得た。【0063】BとCを混合して、球状ゼリー用徐放性組成物を得た。【0064】実施例8(B:薬物を含む徐放性粒子)実施例7の(A:薬物を含む核粒子)で得られた微小球形粒子200gを流動造粒コーティング装置(MP−01:不二パウダル)に入れ、吸気温度55℃、排気温度35〜40℃にコントロールし、Aquacoat 250g、マンニトール(協和発酵(株)製)18.75g、クエン酸トリエチル(「シトロフレックス2(SC−60)」、カルターフードサイエンス)25g及び水181.8gの混合フィルム溶液475.6gを用いて、微小球形粒子に対して10〜100%噴霧し、送風乾燥機(TABAI SAFETY OVEN MODEL SPHH−200)60℃で3時間キュアリング後、0.15〜0.5mmの徐放性粒子を得た。【0065】(C:ゲル化剤含有組成物)実施例7の(C:ゲル化剤含有組成物)の項に記載の方法に従って、ゲル化剤含有組成物を得た。【0066】BとCを混合して、球状ゼリー用徐放性組成物を得た。実施例9(B:薬物を含む徐放性粒子)マンニトール22.5g及び水317.5gに代えて、メチルセルロース(「SM−4」、信越化学工業(株)製)15g及び水510gを用いて調製した混合フィルム溶液1075gを用いる以外は、実施例7と同様にして、実施例7の(A:薬物を含む核粒子)で得られた微小球形粒子400gをコーティングして、0.15〜0.5mmの徐放性粒子を得た。【0067】(C:ゲル化剤含有組成物)カルボキシメチルセルロースナトリウム 20g、ストロベリー香料 1.0g、ソーマチン2.0g、粉糖177.0gを流動層造粒装置(FL-10)に入れ、吸気温度60℃、品温35〜40℃にコントロールし、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L)の3%溶液を結合剤として造粒・乾燥して、ゲル化剤含有組成物を得た。【0068】BとCを混合して、球状ゼリー用徐放性組成物を得た。【0069】実施例10(B:薬物を含む徐放性粒子)マンニトール22.5及び水317.5gに代えて、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(「TC−5R」、信越化学工業(株)製)15g及び水510gを用いて調製した混合フィルム溶液1075gを用いる以外は、実施例7と同様にして、実施例7の(A:薬物を含む核粒子)で得られた微小球形粒子400gをコーティングして、0.15〜0.5mmの徐放性粒子を得た。【0070】(C:ゲル化剤含有組成物)キサンタンガム 20g、ストロベリー香料 1.0g、ソーマチン2.0g、粉糖177.0gを流動層造粒装置(FL-10)に入れ、吸気温度60℃、品温35〜40℃にコントロールし、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L)の3%溶液を結合剤として造粒・乾燥して、ゲル化剤含有組成物を得た。【0071】BとCを混合して、球状ゼリー用徐放性組成物を得た。実施例11実施例1で得られた球状粒子100gと実施例7の(C:ゲル化剤含有組成物)で得られたゲル化剤含有組成物10gを混合して、球状ゼリー用徐放性組成物110gを得た。【0072】実験例1実施例1で得た本発明の医薬組成物(テオフィリン100mgを含有)を、4匹のビーグル犬に経口投与し、投与後、血中テオフィリン濃度の推移を測定観察した。上記血中濃度は、カフェインを内部標準物質とした高速液体クロマトグラフィー(東ソー製)により定量した。定量条件として逆相系のカラム(YMC AM-303、ワイエムシィ製、直径4.6mm×25cm長さ)を用い、移動相は0.01M酢酸ナトリウム:アセトニトリル(10:1)を用いた。また検出はUV=273nmで行った。【0073】結果を図1に示す。図1において縦軸は血清中テオフィリン濃度(μg/mL)を示す。また、比較の為、市販のテオドールドライシロップ製剤〔テオフィリン100mgを含有、平均粒子径:約100μm、「テオドールドライシロップ20%」(テオフィリン徐放性製剤:三菱東京製薬(株)製造、日研化学(株)販売)及び市販のユニフィル100mg錠〔テオフィリン100mgを含有、徐放性製剤:大塚製薬(株)販売〕を、4匹のビーグル犬に経口投与し、投与後、血中濃度推移を同様に測定した結果も併せて示す。【0074】この結果、1日2回投与の用法である市販のテオドールドライシロップ製剤の平均Tmaxが3.3時間であったのに対して、本発明の医薬組成物の平均Tmaxは8.0時間と有意に徐放性に優れていた。また、本発明の医薬組成物の平均Tmaxは、1日1回投与の用法であるユニフィル100mg錠の平均Tmax(7.0時間)と同程度であり,本発明の医薬組成物のユニフィル100mg錠に対する相対的生物学的利用率は87%であったことから,本発明の医薬組成物は,ユニフィル100mg錠と同じ用法が可能であることが示唆された。また、テオドールドライシロップ製剤は有効成分粒子が水に分散した形態であるため口腔内に残りやすいのに対し、本発明の医薬組成物は有効成分粒子がゲル中に分散した形態を有するため、口腔内に残りにくく、飲み込み易い製剤であった。【0075】実験例2実施例1、実施例4で調製された医薬組成物について、水2mlでゼリー化した直後及び24時間経過後のものについて、日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)に準じて、12時間にわたって溶出試験を行った。【0076】具体的には、実施例1で調製した医薬組成物(薬物量として100mg相当:ゲル化剤としてアルギン酸Na使用)及び実施例4で調製した医薬組成物(薬物量として100mg相当:ゲル化剤としてキサンタンガム使用)各々を水2mlでゼリー化した直後及び24時間経過後のものについて、日本薬局方崩壊試験法の水900mlに投入し、温度37℃、パドル回転数毎分75回転の条件で、規定時間毎に薬物溶出率を測定した(n=2)。【0077】得られた結果を図2及び図3に示す。図2には実施例1の医薬組成物をゼリー化した直後のもの及び24時間経過後のものの溶出曲線を、図3には実施例4の医薬組成物をゼリー化した直後のもの及び24時間経過後のものの溶出曲線を示す。図2及び3から明らかなように、実施例1の医薬組成物をゼリー化した直後及び24時間経過後のもの、並びに実施例4の医薬組成物をゼリー化した直後及び24時間経過後のものを比較すると、アルギン酸でゼリー化した実施例1では、薬物溶出速度の上昇がキサンタンガムでゼリー化した実施例4ほど、認められないことが確認された。【0078】実験例3実施例1で得た医薬組成物(テオフィリン100mgを含有)をゼリー化した直後のもの及びゼリー化して24時間経過後のものについて、4匹のビーグル犬に経口投与し、投与後、血中濃度推移を測定観察した。上記血中濃度は、カフェインを内部標準物質とした高速液体クロマトグラフィー(東ソー製)により定量した。定量条件として逆相系のカラム(YMC AM-303、ワイエムシィ製、直径4.6mm×25cm長さ)を用い、移動相は0.01M酢酸ナトリウム:アセトニトリル(10:1)を用いた。また検出はUV=273nmで行った。【0079】結果を図4に示す。図4において縦軸は血清中濃度(μg/mL)を示す。この結果、ゼリー化後24時間経過のものは,平均Tmaxが5.5時間と短くなるものの、Cmaxの上昇は小さなものであった。従って、実施例1の医薬組成物は、たとえ調整後長時間経過したとしても、調製直後のものと比べて同程度の徐放性が保持されていることが確認された。【0080】実験例4実施例5で調製された医薬組成物(テオフィリン100mgを含有)をゼリー化した直後及び1時間経過後のものについて、4匹のビーグル犬に経口投与し、投与後、血中濃度推移を測定観察した。上記血中濃度は、カフェインを内部標準物質とした高速液体クロマトグラフィー(東ソー製)により定量した。定量条件として逆相系のカラム(YMC AM-303、ワイエムシィ製、直径4.6mm×25cm長さ)を用い、移動相は0.01M酢酸ナトリウム:アセトニトリル(10:1)を用いた。また検出はUV=273nmで行った。【0081】結果を図5に示す。図5において縦軸は血清中濃度(μg/mL)を示す。この結果、実施例5の医薬組成物をゼリー化した直後のものでは優れた徐放性を備えていることが確認された。【図面の簡単な説明】【図1】実験例1において、テオフィリンを有効成分として含有する、実施例1の医薬組成物(―□―)、及び市販のテオドールドライシロップ(―▲―)、ユニフィル100mg錠(―○―)を犬に経口投与したときの血中テオフィリン濃度の推移を示す図である。【図2】実験例2において、実施例1の医薬組成物をゼリー化した直後のもの(―○―)及び24時間後のもの(―×―)についての溶出曲線を示す図である。【図3】実験例2において、実施例4の医薬組成物をゼリー化した直後のもの(―○―)及び24時間後のもの(―×―)についての溶出曲線を示す図である。【図4】実験例3において、実施例1の医薬組成物のゼリー化した直後のもの(―□―)、及びゼリー化後24時間経過のもの(―△―)について、犬に経口投与したときの血中テオフィリン濃度推移を示す図である。【図5】実験例4において、実施例5の医薬組成物をゼリー化した直後のもの(―○―)及びゼリー化後1時間経過のもの(―□―)について、犬に経口投与したときの血中テオフィリン濃度推移を示す図である。 服用時に水を加えて調製される用時調製型医薬製剤であって、 (1)徐放性コーティング皮膜でコーティングされた薬物含有物と (2)下記(2−1)〜(2−4)の混合物とを混合して製剤化することにより得られるものであり: (2−1)ゲル化剤、 (2−2)リン酸一水素カルシウム、 (2−3)有機酸、及び (2−4)カルシウムイオンに対してキレート作用を有する化合物、 当該ゲル化剤がアルギン酸ナトリウムであり、 徐放性コーティング皮膜がエチルセルロースを含み アルギン酸ナトリウムの含有量が、加えられる水の重量に対して0.2〜5重量%であり、かつ アルギン酸ナトリウムに対するカルシウム塩の配合量が、アルギン酸に含まれるカルボキシル基1モルに対し、0.01〜1モルである、1日1回の用時調製型の徐放性医薬製剤。 (1)徐放性コーティング皮膜でコーティングされた薬物含有物と(2−1)アルギン酸ナトリウム、(2−2)リン酸一水素カルシウム、(2−3)有機酸、及び(2−4)カルシウムイオンに対してキレート作用を有する化合物とを併せて造粒されてなるか、或いは徐放性コーティング皮膜でコーティングされた薬物含有物を核として(2−1)アルギン酸ナトリウム、(2−2)リン酸一水素カルシウム、(2−3)有機酸、及び(2−4)カルシウムイオンに対してキレート作用を有する化合物の混合物でコーティングされてなるものである、請求項1記載の徐放性医薬製剤。 徐放性コーティング皮膜でコーティングされた薬物含有物がゲル化剤で更に被覆されてなることを特徴とする、請求項1記載の徐放性医薬組製剤。 薬物がテオフィリンであり、調製後長時間経過しても徐放性が保持されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の徐放性医薬製剤。 (A)徐放性コーティング皮膜がエチルセルロースを50〜100重量%及びメチルセルロース又はヒドロキプロピルセルロースの少なくとも1種を0〜50重量%の割合で含有し、(B)該皮膜でコーティングされた薬物含有物が薬物を0.01〜90重量%含有するものである、請求項1乃至4のいずれかに記載の徐放性医薬製剤。