生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_1,2−ジクロロエタンの製造における反応開始方法
出願番号:2002113051
年次:2008
IPC分類:C07C 17/02,C07C 19/045,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

森脇 正之 宮崎 幸二郎 田中 宏樹 松並 義雄 JP 4093789 特許公報(B2) 20080314 2002113051 20020416 1,2−ジクロロエタンの製造における反応開始方法 株式会社トクヤマ 000003182 森脇 正之 宮崎 幸二郎 田中 宏樹 松並 義雄 20080604 C07C 17/02 20060101AFI20080515BHJP C07C 19/045 20060101ALI20080515BHJP C07B 61/00 20060101ALN20080515BHJP JPC07C17/02C07C19/045C07B61/00 300 C07C 17/02 C07C 19/045 特公昭50−022009(JP,B1) 特公昭42−025642(JP,B1) 特公昭42−018443(JP,B1) 特開昭57−109727(JP,A) 3 2003306455 20031028 8 20041028 品川 陽子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、反応系に金属鉄を存在せしめて鉄系触媒の供給源とし、生成する鉄系触媒の存在下にエチレンと塩素とを反応せしめる1,2−ジクロロエタンの製造方法における反応の新規な開始方法に関する。詳しくは、原料の供給開始から短時間で高い選択率を達成することが可能な反応開始方法を提供するものである。【0002】【従来の技術】1,2−ジクロロエタンの製造方法として、塩素とエチレンとを鉄系触媒の存在下に反応せしめる方法が行われる。上記反応の実施は、工業的には、反応系内に鉄製のラシヒリング、屑鉄等の形態の金属鉄を充填して反応を開始し、該反応系内鉄系触媒を生成せしめることにより行われる。この場合、鉄系触媒の発生機構は明らかでないが、該反応系内で副生する塩化水素や塩素中に含まれる水分等の存在により、前記金属鉄が塩素化されることにより生成しているものと考えられる。【0003】一方、上記反応の開始時に反応系に充填される鉄製のラシヒリング、屑鉄等の金属鉄は、その表面に酸化膜または油膜等による皮膜が形成されており、そのため、反応の開始時に鉄の溶出が阻害されて反応に必要な鉄系触媒の濃度を維持することができず、高選択率で1,2−ジクロロエタンを製造することができない。【0004】従って、上記反応の開始時には、十分な鉄系触媒の濃度となるまで反応液を長時間循環する必要があった。因みに、金属鉄を充填後、原料の供給を開始から、通常、1日以上かけて鉄触媒の濃度が定常状態となるように反応を立ち上げていたのが現状である。【0005】そのため、その間の反応液は、一般的に選択率が低いためタンクに溜められ、除鉄処理した後廃棄するか、該タンクを大型化し、反応が定常化後、徐々に反応塔に供給して処理せざるを得なかった。その量は、塩化ビニルの原料である1,2−ジクロロエタンは大規模生産される化学品であることから大量であり、反応液を循環するための多大の設備を必要としていた。また、表面に酸化膜または油膜等による皮膜が形成された金属鉄を使用して起動する場合、反応初期には反応液中に存在する鉄触媒が少ない為に、副生物の1,1,2−トリクロロエタンの生成量に伴う塩化水素の発生量が多いことによる、低沸点副生物のエチルクロライドの増量、触媒となる塩化鉄の発生を促進させる一方で、充填金属の局所的な溶解による一時的な不溶鉄の発生等によるトラブルも懸念される。【0006】【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、反応系に金属鉄を存在せしめて鉄系触媒の供給源とし、生成する鉄系触媒の存在下にエチレンと塩素とを反応せしめる1,2−ジクロロエタンの製造方法において、原料の供給開始から短時間で高い選択率を達成すると共に反応系内の鉄、塩化水素等の濃度を反応当初から安定させることで、不溶解鉄等の発生を低減することが可能な反応の開始方法を提供することにある。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた。その結果、反応系に原料の供給を開始する際に、使用する金属鉄を塩酸と接触せしめてその表面を更新するか、鉄イオンを瞬時に供給し得る塩化鉄を上記金属鉄と共に添加して反応を開始することにより、原料の供給開始後、極めて短時間で100%に近い選択率を達成でき、前期問題を一挙に解決することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。【0008】 即ち、本発明は、反応系に金属鉄を存在させ、該金属鉄より生成する鉄系触媒の存在下にエチレンと塩素とを反応せしめて1,2−ジクロロエタンを製造する方法において、反応開始時には反応系内に塩化鉄を供給することにより、反応開始直後における反応系内の鉄イオン濃度を上昇せしめるとともに、反応率が定常化した後には、該塩化鉄の供給を止めることを特徴とする1,2−ジクロロエタンの製造方法、及び反応系に金属鉄を存在させ、該金属鉄より生成する鉄系触媒の存在下にエチレンと塩素とを反応せしめて1,2−ジクロロエタンを製造する方法において、該金属鉄を塩酸と接触せしめた後に使用することにより、反応開始直後における反応系内の鉄イオン濃度を上昇せしめることを特徴とする1,2−ジクロロエタンの製造方法である。【0009】【発明の実施の形態】本発明において、反応系に存在させる金属鉄は、従来から1,2−ジクロロエタン製造に使用されていた公知の鉄源が特に制限なく使用される。例えば、前記した鉄製のラシヒリング、屑鉄などが一般に使用される。上記金属鉄の形状は特に限定されず、一般的には円筒上のラシヒリング等が使用できる。また、上記金属鉄の表面積は、一般的に生成1,2−ジクロロエタンの1時間当たりに生成する量を1kgとした場合、この生成量に対する表面積が0.02〜5m2となるようにその使用量を決定するのが適当である。【0010】従来、上記金属鉄を鉄系触媒の供給源として使用した、1,2−ジクロロエタンの製造における反応の開始方法は、上記金属鉄を充填した層に1,2−ジクロロエタンを循環しながら、塩素及びエチレンを供給することによって行われていた。かかる方法によれば、金属鉄が溶解し、反応の触媒となる鉄イオンを十分な量で生成するまでに1日以上を必要としていた。【0011】これに対して、本発明の金属鉄を塩酸と接触せしめた後、使用する方法、または、上記循環する1,2−ジクロロエタンに予め塩化鉄を添加して塩素及びエチレンを供給し始め、反応を開始することによって、その直後から高い選択率で1,2−ジクロロエタンを生成することができる。因みに、上記本発明の方法によれば、塩化鉄の添加量にもよるが、通常、数時間でほぼ100%の選択率を達することができる。【0012】そして、上記のように高い反応率に達した後は、最早、塩化鉄の供給は不要であり、その後は塩化鉄の供給を停止し、金属鉄から溶出する金属イオンによって必要な鉄系触媒量を確保することができる。【0013】本発明において、上記金属鉄の塩酸による処理は、金属鉄表面からの鉄の溶出を阻害しているであろうFe2O3、Fe3O4、FeO等の酸化皮膜や油膜などを除去し得る条件が特に制限なく採用される。【0014】一般に、塩酸濃度、温度等の影響もあるが、一般的に2時間以上接触させることが好ましい。また、上記塩酸濃度は、0.1重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは、0.5〜37.0重量%である。【0015】また、塩酸による金属鉄の処理方法は、特に限定されず、別に用意した容器等において塩酸と接触させて処理した金属鉄を反応器に充填する方法でも、反応器に充填した金属鉄の層に塩酸を流通せしめて処理した後、塩酸を除去して反応を開始しても良い。【0016】本発明において、前記塩化鉄を添加する態様において、塩化鉄としては、塩化第1鉄(FeCl2)及び塩化第2鉄(FeCl3)が特に制限なく使用されるが、塩化第2鉄(FeCl3)が好適である。【0017】また、塩化鉄の添加は、固体状で行っても良いし、溶媒に溶かして液体状で行っても良い。好適な溶媒としては、精製工程での分離を必要としない1,2−ジクロロエタンが良い。【0018】本発明において、上記態様によって反応系内の鉄イオン濃度を極めて短時間のうちに上昇せしめることができるが、好ましくは、反応開始から1時間以内に、該鉄イオン濃度が15ppmw以上、特に、15〜200ppmw、更には20〜100ppmwとなるようにすることが好ましい。【0019】即ち、鉄イオン濃度が15ppmw未満の場合は、本発明の効果が低下し、反応開始から目的とする選択率に達するまでの時間が増す傾向にある。また、鉄イオン濃度が200ppmwを超えると逆に選択率の低下につながる傾向がある。【0020】例えば、塩酸による処理においては、その表面の更新率を上げることによって、また、塩化鉄の添加においては、その添加量を調節することによって反応系内の鉄イオン濃度を上記範囲となるように調整することができる本発明において、反応の開始は、前記塩酸で処理した金属鉄を充填した反応系に1,2−ジクロロエタンを、金属鉄を充填した層に循環せしめながら、塩素及びエチレンの供給を開始して反応を開始するか、上記塩化鉄を含有する1,2−ジクロロエタンを金属鉄を充填した層に循環せしめながら、塩素及びエチレンの供給を開始して反応を開始する。本発明によれば、反応開始直後から、上記塩素及びエチレンの供給は殆ど定常時の条件で行うことができる。【0021】また、本発明において、上記金属鉄を塩酸と接触せしめた後に使用する態様と該金属鉄と共に塩化鉄を添加する態様とは、同時に実施しても良く、その方がより効果的である。【0022】更に、反応において、塩素及びエチレンの供給比、反応温度、反応圧力等の条件も公知の条件が特に制限なく採用される。例えば、塩素及びエチレンの供給比は、ほぼ1:1で反応させることが好ましく。反応温度は、30〜70℃で行うのが一般的であり、圧力は常圧である。【0023】また、本発明に使用する反応装置も、基本的には公知の反応装置が特に制限なく使用される。本発明において、塩化鉄を添加する態様を例にとって、好適に使用される代表的な反応装置の態様を例示すれば、図1に示す反応装置が挙げられる。【0024】即ち、上部に金属鉄2を充填する充填層を、下部に1,2−ジクロロエタンを溜める貯液槽を有し、貯液槽にエチレン導入配管4を該貯液槽と充填層との間の気相部に塩素導入配管3を接続した反応塔1、該反応塔下部の貯液槽より液を抜き出し、循環ポンプ5により前記充填層の上方に液を循環する循環ライン、該循環ラインより生成する1,2−ジクロロエタンを抜き出すための抜出配管7、循環ラインに塩化鉄を供給する塩化鉄導入配管9、反応塔塔頂よりガスを取り出すガス取出配管10、該ガス取出配管より取り出されたガスを冷却する熱交換器11、冷却後により凝縮した液を反応塔に戻す1,2−ジクロロエタン回収配管12、未凝縮の排ガスを取り出す排ガス配管13よりなる。【0025】尚、6は循環ラインの液を冷却するための熱交換器、8は抜出配管の抜出量を調節するための抜出バルブである。【0026】上記装置を使用した反応の開始方法は、以下のようにして行うことができる。先ず、反応塔1の上部の充填層に金属鉄2を充填し、この下部に設けた塩素導入配管3より塩素を供給する。エチレンは、反応塔1の下部に予め1,2−ジクロロエタンを貯め、この液中にエチレン導入配管4より供給する。1,2−ジクロロエタンを循環ポンプ5により循環し、この循環ラインの途中で、塩化鉄導入配管9より塩化鉄を供給する。反応率が定常化した後、該塩化鉄導入配管9からの塩化鉄の供給を止める。【0027】また、エチレンと塩素との反応で発生する反応熱は循環ラインに設置した熱交換器6で熱回収する。図示されていないが、循環ラインの循環液の一部を反応塔の中間部に戻しても良い。【0028】更に、反応により生成した1,2−ジクロロエタンは、抜出し配管7より、バルブ8の操作により適当量抜き出す。【0029】反応塔1の排ガスは、塔頂の排ガス配管10より熱交換器11により冷却し、1,2−ジクロロエタン回収配管12より1,2−ジクロロエタンを回収し、未凝縮ガスを排出ガス配管13より排出する。【0030】【発明の効果】以上の説明により理解されるように、本発明によれば、鉄系触媒の供給源として反応系に金属鉄を存在させ、該鉄系触媒の存在下にエチレンと塩素とを反応せしめて1,2−ジクロロエタンを製造するに際し、該金属鉄を塩酸と接触せしめた後に使用するか、または、反応系に塩化鉄を添加することにより、原料の供給開始から極めて短時間でほぼ100%の選択率を達成することが可能であり、上記反応開始時に必要であった大掛かりな排水の処理設備や、排水貯蔵用のタンク等の設備を著しく縮小することができると共に、原料であるエチレン、塩素の損失も効果的に防止することができる。【0031】【実施例】以下、本発明をより具体的に説明するため、実施例を示すが本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。【0032】実施例1図1に示され、下記の仕様を有する反応装置を用いて1,2−ジクロロエタンの製造を以下のようにして開始した。【0033】反応器径:38mm触媒鉄:1/4B鉄製ラシヒリング充填量60mL、1/4磁性ラシヒリング470mLに混合して使用反応器内の1,2−ジクロロエタン保有量:900mL上記仕様の反応装置に塩素ガス50.5NL/hr、エチレンガス50NL/hrを供給し、1,2−ジクロロエタンを25L/hrで循環し、反応温度を50℃、塔頂の熱交換器の温度は−10℃で制御した。 塩化鉄を1,2−ジクロロエタンに溶解して、6mg/hrで供給した。この時の本反応の反応率、選択率は、生成1,2−ジクロロエタンのガスクロマトグラフィーによる定量分析から計算した。【0034】反応開始1時間後の1,2−ジクロロエタン中の鉄濃度は17ppmwであり、5時間後の1,2−ジクロロエタン中の鉄濃度は19ppmwとなり、そのときの1,2−ジクロロエタンの反応率99.9%、選択率は、99.8%であった。【0035】その後、塩化鉄の供給を止めたが、定常状態で反応を行うことができた。【0036】反応開始から、全ての1,2−ジクロロエタンを製品とすることができた。【0037】比較例1塩化鉄を投入しない以外は、実施例1と同様の方法により実施した。【0038】反応開始から1時間後の1,2−ジクロロエタン中の鉄濃度は6ppmwであり、5時間後の1,2−ジクロロエタン中の鉄濃度は12ppmwとなり、1,2−ジクロロエタンの反応率99.6%、選択率は、99.6%であった。反応開始30時間後に1,2−ジクロロエタン中の鉄濃度は25ppmwとなり、そのときの生成1,2−ジクロロエタン選択率99.9%であった。この間、生成した1,2−ジクロロエタン5.6Lは製品とすることができなかった。【0039】実施例2塩化鉄の投入量を8mg/hとした以外は実施例1と同様の方法で実施した。反応開始1時間後の1,2−ジクロロエタン中の鉄濃度は20ppmwであり、4時間後の1,2−ジクロロエタン中の鉄濃度は25ppmwであり、そのときの生成1,2−ジクロロエタン選択率は、99.9%であった。【0040】その後、塩化鉄の供給を止めたが、定常状態で反応を行うことができた。【0041】実施例3触媒鉄を5wt%塩酸に2時間浸した以外は実施例1と同様の方法で実施した。【0042】反応開始1時間後の1,2−ジクロロエタン中の鉄濃度は25ppmwであり、3時間後の1,2−ジクロロエタン中の鉄濃度は25ppmwであり、そのときの1,2−ジクロロエタンの選択率は、99.9%であった。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の方法に使用する反応装置の代表的な態様を示す概略図【符号の説明】1:反応塔2:金属鉄充填層3:塩素導入配管4:エチレン導入配管5:循環ポンプ6:熱交換器7:抜出配管8:抜出バルブ9:塩化鉄導入配管10:ガス取出配管11:熱交換器12:1,2−ジクロロエタン回収配管13:排出ガス配管 反応系に金属鉄を存在させ、該金属鉄より生成する鉄系触媒の存在下にエチレンと塩素とを反応せしめて1,2−ジクロロエタンを製造する方法において、反応開始時には反応系内に塩化鉄を供給することにより、反応開始直後における反応系内の鉄イオン濃度を上昇せしめるとともに、反応率が定常化した後には、該塩化鉄の供給を止めることを特徴とする1,2−ジクロロエタンの製造方法。 反応開始時の塩化鉄の供給を、1,2−ジクロロエタンに溶かした溶液として行う請求項1記載の製造方法。 反応系に金属鉄を存在させ、該金属鉄より生成する鉄系触媒の存在下にエチレンと塩素とを反応せしめて1,2−ジクロロエタンを製造する方法において、該金属鉄を塩酸と接触せしめた後に使用することにより、反応開始直後における反応系内の鉄イオン濃度を上昇せしめることを特徴とする1,2−ジクロロエタンの製造方法。


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