生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_近視矯正手術のための医薬
出願番号:2002109992
年次:2005
IPC分類:7,A61K45/00,A61K31/5575,A61P27/02,A61P43/00


特許情報キャッシュ

真野 富也 真野 真弓 十川 俊二 JP 2005289814 公開特許公報(A) 20051020 2002109992 20020412 近視矯正手術のための医薬 メイ株式会社 597002335 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 真野 富也 真野 真弓 十川 俊二 7 A61K45/00 A61K31/5575 A61P27/02 A61P43/00 JP A61K45/00 A61K31/5575 A61P27/02 A61P43/00 111 8 OL 6 4C084 4C086 4C084AA17 4C084NA14 4C084ZA331 4C084ZC201 4C086AA01 4C086AA02 4C086DA02 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA33 4C086ZC02 4C086ZC20 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は近視矯正手術のための医薬に関する。より具体的には、本発明は、近視矯正手術の治療成績を高めることができる医薬に関するものである。【0002】近年、近視の根治的治療法として、レーザーを用いて角膜を削り扁平化させることによって角膜の屈折率を変化させる手術が採用されている(以下、本明細書においてこの手術を「近視矯正手術」又は「LASIK」と呼ぶ。)。この手術は、マイクロケラトームを用いて角膜表層を削り、角膜フラップを作成してめくり上げた後、露出した角膜実質をレーザー照射により削り、角膜フラップを元にもどす操作を含んでいる。この手術を行うにあたり、術前に視力の詳細な検査を行い、術後に得ようとする目標視力に合わせて角膜実質を削る程度を決定する必要があるが、手術後にはほとんどの症例において目標視力を得ることができ、しかもその視力は安定していることから、この手術の適用が拡大している。しかしながら、一部の症例では、一時的な視力回復が認められた後、再び近視化を生じる場合や所望の視力回復が得られない場合があった。【0003】【発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段】本発明の課題は、近視矯正手術の成功率を高めることができる医薬を提供することにある。本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、近視矯正手術において一時的な視力回復が認められた後、再び近視化を生じた患者や、低矯正傾向を認めた患者に眼圧降下作用を有する医薬を局所投与することにより、良好な視力回復と安定化を達成できることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。【0004】すなわち、本発明は、近視矯正手術の成功率を高めるための医薬であって、眼圧降下作用を有する物質を有効成分として含む医薬を提供するものである。本発明の医薬は、近視矯正手術の成功率を高める目的で、例えば手術後の眼内に局所投与することができる。より好ましくは、近視矯正手術後に所望の視力回復が達成できない場合、一時的な視力回復が認められた後に再び近視化を生じる場合、あるいは術後に低矯正傾向を認める場合や視力回復の安定化が十分ではない場合に用いることができる。また、本発明により、近視矯正手術の術後に生じる再近視化を予防するための医薬であって、眼圧降下作用を有する物質を有効成分として含む医薬、及び近視矯正手術の術後の視力回復を安定化させるための医薬であって、眼圧降下作用を有する物質を有効成分として含む医薬、及び近視矯正手術の術後の低矯正傾向を改善するための医薬であって、眼圧降下作用を有する物質を有効成分として含む医薬が提供される。【0005】本発明の好ましい態様によれば、プロスタグランディンF2α製剤、βブロッカー製剤、及び炭酸脱水素酵素阻害剤からなる群から選ばれる1又は2以上の物質を有効成分として含む上記の医薬;正常な眼圧に対して眼圧降下を達成できる物質を有効成分として含む上記の医薬;プロスタグランディンF2α製剤及びβブロッカー製剤からなる群から選ばれる1又は2以上の物質を有効成分として含む上記の医薬が提供される。【0006】また、本発明により、近視矯正手術の成功率を高める方法であって、眼圧降下作用を有する物質の有効量を患者に投与する工程、好ましくは術後の眼内に局所投与する工程を含む方法;近視矯正手術の術後に生じる再近視化の予防方法であって、眼圧降下作用を有する物質の予防有効量を患者に投与する工程、好ましくは術後の眼内に局所投与する工程を含む方法;及び近視矯正手術の術後の視力回復を安定化する方法であって、眼圧降下作用を有する物質の有効量を患者に投与する工程、好ましくは術後の眼内に局所投与する工程を含む方法が提供される。【0007】さらに本発明により、近視の治療及び/又は治療のための医薬であって、眼圧降下作用を有する物質を有効成分として含む医薬が提供される。この医薬は、近視の治療に有用であるほか、特に若年期に生じる近視の進行を予防することができる。この発明の好ましい態様によれば、プロスタグランディンF2α製剤、βブロッカー製剤、及び炭酸脱水素酵素阻害剤からなる群から選ばれる1又は2以上の物質を有効成分として含む上記の医薬;正常な眼圧に対して眼圧降下を達成できる物質を有効成分として含む上記の医薬;プロスタグランディンF2α製剤及びβブロッカー製剤からなる群から選ばれる1又は2以上の物質を有効成分として含む上記の医薬が提供される。【0008】また、近視の進行の予防方法、好ましくは若年期の近視の進行の予防方法であって、眼圧降下作用を有する物質の予防有効量を患者に投与する工程、好ましくは眼内に局所投与する工程を含む方法;及び近視の治療方法であって、眼圧降下作用を有する物質の治療有効量を患者に投与する工程、好ましくは眼内に局所投与する工程を含む方法が本発明により提供される。【0009】【発明の実施の形態】本発明の医薬の有効成分としては、眼圧効果作用を有する物質であれば特に限定されないが、例えば、緑内障の治療に用いられている眼圧降下剤を用いることができる。より具体的には、プロスタグランディンF2α製剤(イソプロピルウノプロストン、ラタノプロストなど)、βブロッカー製剤(マレイン酸チモロール、塩酸ベフノロール、塩酸カルテオロール、塩酸ベタキソロールなど)、αブロッカー(塩酸ブナゾシンなど)、αβブロッカー(ニプラジロール)、及び炭酸脱水素酵素阻害剤(アセタゾラミド、ジクロルフェナミド、メタゾラミドなど)などの眼圧降下剤が緑内障の治療に用いられているので、本発明の医薬としてこれらの医薬をそのまま用いることが可能である。本発明の医薬としては、眼圧降下作用を有するこれらの物質を2種以上含むものであってもよい。また、異なる有効成分を含む本発明の医薬の2種以上を投与することもできる。【0010】好ましい有効成分としては、正常な眼圧に対してもさらに眼圧降下を達成できる物質を用いることができる。このような性質を有する眼圧降下剤として、プロスタグランディンF2α製剤又はβブロッカー製剤が知られており、これらを本発明の医薬の好ましい有効成分として用いることができる。本発明の医薬は通常は眼内に局所投与され、好ましくは点眼剤として投与することができが、経口投与や注射などの非経口投与による投与形態も選択できる。眼内への局所投与の形態は特に限定されず、水性の点眼剤のほか、眼軟膏剤などの形態の医薬であってもさしつかえない。【0011】本発明の医薬は、近視矯正手術の治療成績を高めるために用いることができる。より具体的には、近視矯正手術後に所望の矯正視力まで回復しない患者に対して、視力回復を目的として投与することができる。また、近視矯正手術によりいったん視力が回復した後、再近視化傾向を認める患者に対して視力回復及び近視の進行予防のために用いることができる。さらに、近視矯正手術により回復した視力を安定化させ、再近視化が進行しないように予防的に本発明の医薬を投与することもできる。また、本発明の医薬は、近視の進行予防のために投与することもできるが、特に若年期における近視進行の予防のために用いることが好ましい。あるいは、本発明の医薬を近視治療を目的として用いることもできる。【0012】いかなる特定の理論に拘泥するわけではないが、本発明の医薬の作用機序は以下のように考えられる。近視矯正手術において角膜フラップの作製およびレーザーによる菲薄化により、創傷治癒が完了(特に角膜フラップの接着)するまで角膜は正常な強度を持たず、眼圧により曲率が増した状況下に置かれている。この状態で創傷治癒が完了すると矯正手術により得ようとした角膜の扁平化が不足することになり、目標視力が得られないことになるが、このような状態において眼圧を降下させることにより、角膜強度が回復までの期間にわたり角膜曲率の増加を抑制することができ、目標とする角膜扁平率を得ることができる。また、若年期(角膜や強膜が薄いおよび強度が弱い)の近視進行にも同様な角膜強度の不足とさらには強膜硬度の不足が関連しており、本発明の医薬は角膜曲率の増加及び眼軸長の増加を抑制することにより、近視の進行の予防及び近視の治療を達成できる。【0013】本発明の医薬の投与量は有効成分の種類や作用の程度により適宜選択することができるが、一般的には、緑内障の治療の目的で眼圧降下させる場合の投与量をめやすとして同程度の投与量を選択することができる。本発明の医薬の投与時期及び投与期間も特に限定されず、適宜選択することが可能である。例えば、近視矯正手術の直後に投与することもできるが、一般的には近視矯正手術後の視力回復を数日から数週間観察した後、低矯正傾向が認められる場合に本発明の医薬を数週間から数ヶ月間投与することが望ましい。本発明の医薬は、近視矯正手術後、数ヶ月ないし数年後に投与しても有効な場合がある。本発明の医薬の投与回数は、有効成分の種類や達成すべき眼圧降下の程度などにより適宜選択可能であるが、緑内障治療のために眼圧降下させる場合をめやすに、一日あたり1ないし数回投与することができる。【0014】【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。実施例中、本発明の医薬としてラタノプラスト(Latanoprost、プロスタグランジン誘導体、製品名「キサラタン」(Xalatan)、0.005%、製造元/販売元:ファルマシア・アップジョン)、及びマレイン酸チモロール(Timolol maleate、βブロッカー、製品名「チモプトール」(Timoptol)、0.5%、製造元:萬有製薬株式会社、販売元:参天製薬株式会社)を用いた。実施例133歳女性。現病歴:平成12年9月4日、両眼の視力矯正手術(LASIK)目的に受診。初診時検査結果:視力 右眼 裸眼=0.04、矯正=(1.0×S−8.75D:C−2.0D A 5°)左眼 裸眼=0.04、矯正=(0.9×S−10.25D:C−3.0D A 175°)眼圧 右眼=15mmHg、左眼=14mmHg平成12年11月1日 両眼にLASIKを行った。術後視力は良好で術後1ヶ月の視力は右眼裸眼=0.8、右眼矯正=(1.0×S+0.75D:C−1.25D A 30°)左眼裸眼=0.9、左眼矯正=(1.0×S+0.75D:C−1.25D A 165°)であり、術後経過は順調であった。しかし、平成14年2月1日(術後約1年3ヵ月)に両眼の視力低下を自覚し来院した。右眼裸眼=0.6、矯正=(1.0×S−0.5D:C−0.75D A 30°)左眼裸眼=0.4、矯正=(1.0p×S−0.75D:C−1.25D A 150°)となっていた。そこでラタノプロスト点眼を両眼に1日1回、0.5%マレイン酸チモロール点眼を両眼に1日2回を開始した。その結果、平成14年3月5日(点眼開始後1ヶ月)には右眼裸眼=1.0、矯正=(1.0xS+0.25D :C-0.50D Ax10°)左眼裸眼=0.8、矯正=(1.0xS+0.50D :C-1.25D Ax160°)眼圧 右眼=14mmHg、左眼=13mmHgとなり裸眼視力の改善を認めた。【0015】実施例237歳女性。現病歴:平成13年5月29日、両眼のLASIK目的に受診。初診時検査結果:視力 右眼 裸眼=0.01、矯正=(1.0×S−11.5D:C−2.25D A 10°)左眼 裸眼=0.02、矯正=(1.0×S−8.5D:C−2.0D A 170°)眼圧 右眼=13mmHg、左眼=11mmHg平成13年6月21日 両眼にLASIKを行った。術後より低矯正傾向であり平成14年1月8日(術後6ヶ月半)には右眼裸眼=0.2、右眼矯正=(1.0xS-2.0D :C-0.5D Ax140°)左眼裸眼=0.3、左眼矯正=(1.0×S+0.75D:C−1.25D A 165°)となった。そこで裸眼視力改善の目的でラタノプロスト点眼を両眼に1日1回、0.5%マレイン酸チモロール点眼を両眼に1日2回を開始した。その結果、平成14年2月19日(点眼開始後1ヵ月半)には右眼裸眼=1.0、矯正=(1.2xS+0.5D :C-0.25D Ax130°)左眼裸眼=1.0、矯正=(1.0xS+0.75D :C-1.5D Ax100°)眼圧 右眼=7mmHg、左眼=9mmHgとなり裸眼視力に改善を認めた。【0016】実施例350歳女性。現病歴:平成13年8月21日、左眼のLASIK目的に受診。初診時検査結果:視力 左眼 裸眼=0.06、矯正=(1.0×S−7.5D:C−1.75D A 90°)眼圧 左眼=13mmHg平成13年10月18日 左眼にLASIK施行術後1ヶ月の裸眼視力は0.6と良好であったが、平成13年12月25日(術後約2ヵ月)に左眼裸眼=0.15、矯正=(1.0×S−2.5D:C−1.25D A 10°)と裸眼視力に低下を認めた。そこでラタノプロスト点眼を左眼に1日1回、0.5%マレイン酸チモロール点眼を左眼に1日2回を開始した。その結果、平成14年1月29日(点眼開始後1ヶ月)には左眼裸眼=0.5、矯正=(1.0xS-1.25D Ax65°)眼圧 左眼=7mmHgとなり裸眼視力の改善を認めた。【0017】実施例447歳男性。現病歴:平成13年8月28日、左眼のLASIK目的に受診。初診時検査結果:視力 左眼 裸眼=0.06、矯正=(1.0×S−2.0D:C−1.0D Ax85°)眼圧 左眼=16mmHg平成13年9月6日 左眼にLASIKを行った。術後1ヶ月の裸眼視力は1.2と良好であったが、平成13年12月25日(術後約3ヵ月)には左眼裸眼=0.5p、矯正=(1.2p×S−0.5D:C−0.25D A 170°)と裸眼視力に低下を認めた。経過観察を行い平成14年1月29日(術後約4ヵ月半)には左眼裸眼=0.9p、矯正=(1.0p×S−0.25D:C−0.25D Ax 140°)となったが裸眼視力に日内変動があるという自覚があった。そこでラタノプロスト点眼を左眼に1日1回開始した。その結果、平成14年3月19日(点眼開始後1ヵ月半)には左眼裸眼=1.0、矯正=(1.0xC-0.5D Ax5°)眼圧 左眼=15mmHgとなり裸眼視力の改善を認めた。【0018】【発明の効果】本発明の医薬は、近視矯正手術の治療成績を高めることができ、手術後の再近視化の予防や低矯正傾向の改善などに有用である。 近視矯正手術の成功率を高めるための医薬であって、眼圧降下作用を有する物質を有効成分として含む医薬。 近視矯正手術の術後に生じる再近視化を予防するための医薬であって、眼圧降下作用を有する物質を有効成分として含む医薬。 近視矯正手術の術後の視力回復を安定化させるための医薬であって、眼圧降下作用を有する物質を有効成分として含む医薬。 近視矯正手術の術後の低矯正傾向を改善するための医薬であって、眼圧降下作用を有する物質を有効成分として含む医薬。 プロスタグランディンF2α製剤、βブロッカー製剤、及び炭酸脱水素酵素阻害剤からなる群から選ばれる1又は2以上の物質を有効成分として含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の医薬。 正常な眼圧に対して眼圧降下を達成できる物質を有効成分として含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の医薬。 近視の治療及び/又は治療のための医薬であって、眼圧降下作用を有する物質を有効成分として含む医薬。 若年期に生じる近視の進行を予防し、及び/又は若年期における近視を治療するための請求項7に記載の医薬。 【課題】近視矯正手術の治療成績を高めることができる医薬を提供する。【解決手段】近視矯正手術の術後に生じる再近視化を予防し、近視矯正手術の術後の視力回復を安定化させ、及び/又は近視矯正手術の術後の低矯正傾向を改善することにより近視矯正手術の成功率を高めるための医薬であって、眼圧降下作用を有する物質を有効成分として含む医薬。


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