生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_眼科用組成物
出願番号:2002105778
年次:2010
IPC分類:A61K 31/133,A61K 31/198,A61P 27/02


特許情報キャッシュ

小高 明人 木村 麻乃 JP 4524538 特許公報(B2) 20100611 2002105778 20020408 眼科用組成物 ライオン株式会社 000006769 小島 隆司 100079304 重松 沙織 100114513 小林 克成 100120721 石川 武史 100124590 小高 明人 木村 麻乃 20100818 A61K 31/133 20060101AFI20100729BHJP A61K 31/198 20060101ALI20100729BHJP A61P 27/02 20060101ALI20100729BHJP JPA61K31/133A61K31/198A61P27/02 A61K 31/00 A61K 47/00 CA/REGISTRY(STN) 特開平11−005744(JP,A) 特開昭62−242618(JP,A) 特開昭62−242617(JP,A) 特開2001−172183(JP,A) 特公昭43−005372(JP,B1) 国際公開第01/037838(WO,A1) 国際公開第00/071175(WO,A1) 1 2003300871 20031021 8 20041227 福井 悟 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は防腐力に優れ、しかも眼刺激が低い眼科用組成物に関する。更に詳しくは、ソルビン酸類や両性界面活性剤を防腐剤として使用し、その配合量が非常に少なくても優れた防腐効力をもち、しかも眼に対する安全性が高い眼科用組成物に関する。【0002】【従来の技術】点眼剤等の眼科用組成物の防腐剤として、カチオン型界面活性剤、パラオキシ安息香酸エステル等が使用されている。その中でも、塩化ベンザルコニウムを代表とするカチオン型界面活性剤は、幅広い抗菌スペクトルを持ち、少量でも効果的であるという利点から最も多く利用されている。【0003】しかし、カチオン型系界面活性剤、例えば塩化ベンザルコニウムを含む点眼剤を頻回点眼したり、角膜に障害がある人やドライアイ症状等を示す涙液の動態が正常でない人が点眼すると、角膜に障害をきたすことが知られている(眼科31 p43〜48 1989年、眼科33 p533〜538 1991年)。【0004】そこで、最近ではカチオン系界面活性剤以外の、眼刺激性の低いソルビン酸及びその塩などの有機酸や両性界面活性剤を防腐剤として利用する点眼剤が検討されている。【0005】ソルビン酸やその塩類であるソルビン酸カリウムは、塩化ベンザルコニウム等のカチオン系防腐剤に比べて安全性が高く、これまでにも種々の液剤組成物(医薬品、医薬部外品、化粧品,食品等)において使用されている。点眼剤においては、特にソフトコンタクトレンズ用の人工涙液型点眼剤で多く利用されている。これは、眼刺激性が低いことのほかに、カチオン系防腐剤がソフトコンタクトレンズに吸着し蓄積することでレンズの変質や眼刺激性を助長するのに対し、ソルビン酸類は吸着しない利点があるためである。【0006】また、両性界面活性剤の防腐剤、中でもアルキル型両性界面活性剤、例えばアルキルポリアミノエチルグリシンは特に緑膿菌、真菌に対して強い殺菌作用をもち、これまでに医療器具などの消毒から医薬品等多方面で使用されており、しかも医薬品における実績から安全性が確かめられている防腐剤である。【0007】アルキルポリアミノエチルグリシンなどの両性界面活性剤は塩化ベンザルコニウムなどのカチオン系界面活性剤より眼低刺激性が低いという利点がある。またカチオン系界面活性剤は負電荷をもつ化合物と配合禁忌である場合が多く、例えば、ヒアルロン酸と相互作用により沈殿物を生じ水溶液が白濁してしまうのに対し、両性活性剤は、負電荷をもつ化合物とともに配合しても安定に配合できることが多いという利点がある。例えば特開平11−5744では塩酸アルキルジアミノエチルグリシンを0.001〜0.02%の濃度で配合しても、ヒアルロン酸との間に沈殿物が生じないこと示している。【0008】一方で、上記の防腐剤は以下のような問題点がある。例えば、ソルビン酸やその塩は、カチオン系界面活性剤より防腐力が弱く、配合する薬物や添加物、特にアミノ酸類や高分子類とともに配合すると防腐力が低下し、充分な防腐力を得られない場合がある。【0009】また、低眼刺激性とレンズへの吸着がないためソフトコンタクトレンズ用の点眼剤に利用されているという反面、点眼後に角膜とコンタクトレンズの間に長く滞留するため、花粉症などのアレルギーやコンタクトレンズ使用により角膜が敏感になり創傷を負いやすくなっている患者には、刺激や創傷を助長する可能性は否めない。【0010】また、両性活性剤についても配合するの濃度や目の症状によっては眼刺激やアレルギーなどの問題を引き起こす可能性が考えられる。【0011】そこで、これら防腐剤の配合濃度を眼刺激や角膜障害を起こす可能性の低い程度まで減じた安全性の高い製剤設計をすることが望まれている。【0012】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ソルビン酸類や両性界面活性剤の配合量が非常に少なくても優れた防腐効力をもち、しかも眼に対する安全性が高い眼科用組成物を提供することを目的とする。【0013】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行なった結果、ソルビン酸類または両性界面活性剤を含有する水溶液に対して、トロメタモールを配合することにより、ソルビン酸類や両性界面活性剤の配合量を従来よりも非常に少なくしても優れた防腐効力をもち、且つ眼に対して優れた安全性を持つことを見出し、本発明を完成するに至った。【0014】 即ち、本発明はアルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩0.0001〜0.0005w/v%を含有する水溶液に対して、トロメタモール0.1〜3w/v%を配合することにより、アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩の配合量が非常に少なくても優れた防腐力をもち、且つ眼に対して優れた安全性を持つ眼科用組成物を提供する。【0015】【発明の実施の形態】以下本発明につき更に詳しく説明する。本発明において用いられるソルビン酸類としては、ソルビン酸それ自体の他に、その塩としては通常眼科用組成物などの防腐剤として使用されるソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム等のソルビン酸塩も好適に使用することができる。【0016】本発明における眼科用組成物中のソルビン酸類の含有量は、組成物中に0.0001〜0.1重量/容量%(以下w/v%)であり、好ましくは0.001〜0.05w/v%、更に好ましくは、0.002〜0.05w/v%の範囲である。この量では、ソルビン酸塩単独の場合十分な防腐力が得られないが、本発明のトロメタモールと併用することによって、防腐力を相乗的に向上させることができる。前記範囲よりも配合量が少ない場合は、トロメタモール併用においても充分な防腐効力を得られない場合がある。【0017】本発明において用いられる両性界面活性剤としては、下記(1)式で示されるアルキルアミノエチルグリシン、アルキルジアミノエチルグリシン、またはアルキルポリアミノエチルグリシン及びこれらの塩酸塩等の塩などを挙げることができる。【0018】【化1】【0019】(但し、式中R1は水素原子またはアルキル基の炭素数が6〜20、好ましくは6〜14の直鎖又は分岐鎖であるアルキルアミノエチル(モノ、ジ、ポリ)基であり、R2はアルキル基の炭素数が6〜20好ましくは6〜14の直鎖又は分岐鎖であるアルキルアミノエチル(モノ、ジ、ポリ)基である)【0020】これらの中でも、アルキルジアミノエチルグリシン、アルキルポリアミノエチルグリシンまたはこれらの塩酸塩が好ましい。特に上記R1、R2がアルキルジアミノエチル基であって、アルキル基の炭素数が6〜14のグリシン誘導体及びその塩が好適であり、中でもより好ましくはアルキル基の炭素数が6〜14であるものの混合物で、その平均分子量が300〜500程度のアルキルジアミノエチルグリシン及びその塩(例えば、三洋化成工業(株)性、「レボンLAG−40」など)をあげることができる。【0021】本発明の眼科用組成物における両性界面活性剤の配合量は、組成物中に0.0001〜0.005w/v%であり、好ましくは0.0001〜0.001w/v%、更に好ましくは、0.0001〜0.0005w/v%の範囲である。この量では、両性界面活性剤単独の場合十分な防腐力が得られないが、本発明のトロメタモールと併用することによって、防腐力を相乗的に向上させることができる。前記範囲よりも配合量が少なすぎると、トロメタモールと併用しても充分に防腐効力を得られない場合がある。【0022】本発明の眼科用組成物において、トロメタモールの含有量は、特に制限されるものではないが、通常、組成物中に0.1〜5W/V%、より好ましくは0.2〜4W/V%、更に好ましくは0.3〜3W/V%である。配合量が少なすぎると、防腐効力が得られない場合があり、一方、多すぎると、浸透圧が高くなりすぎるため、眼刺激を生じることがある。【0023】本発明の製剤のpHは、医薬として許容される範囲であれば特に制限はなく、通常、pH4〜9の範囲であり、より好ましくは5〜8である。本発明の製剤の浸透圧は、医薬として許容される範囲であれば特に制限はなく、通常、0.1〜5圧比であり、より好ましくは0.2〜2圧比に調整する。【0024】本発明の眼科用組成物の用途は特に制限されず、医療用点眼剤又は一般用点眼剤として使用される。ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズを装用した状態でも点眼可能であり、さらに本組成物は洗眼剤、コンタクトレンズ装着液としても使用することができる。【0025】本発明においては、本発明の効果を妨げない限り、前記した成分のほかに前記した製剤の調製に通常使用するすべての緩衝剤、溶解補助剤、等張化剤、安定化剤、粘稠化剤、キレート剤、pH調整剤、清涼化剤等の各種の添加剤、及びその他の薬学的有効成分を通常使用量において配合することができる。【0026】緩衝剤としては、例えば、ホウ酸又はその塩(ホウ砂等)、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム等)、リン酸又はその塩(リン酸一水素ナトリウム等)、酒石酸又はその塩(酒石酸ナトリウム等)、グルコン酸又はその塩(グルコン酸ナトリウム等)、酢酸又はその塩(酢酸ナトリウム等)、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム等)、各種アミノ酸類(イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム等)又はそれらの組み合わせが挙げられる。【0027】溶解補助剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン(p=60)硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(p=20)ソルビタンモノオレエートなどのポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル等が挙げられる。【0028】等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、グリセリン等が挙げられる。【0029】安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、シクロデキストリン、亜硫酸塩、クエン酸又はその塩、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。エデト酸ナトリウムであれば、組成中に0.001〜0.5w/v%配合することができ、好ましくは0.01〜0.2w/v%の範囲である。また、ジブチルヒドロキシトルエンであれば通常、0.001〜0.1w/v%配合することができ、好ましくは0.01〜0.01w/v%の範囲である。【0030】粘稠化剤としては、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム等が挙げられる。【0031】キレート剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。【0032】pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、クエン酸又はその塩、ホウ酸又はその塩、リン酸又はその塩、酢酸又はその塩、酒石酸又はその塩、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。【0033】清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、リナロール、ユーカリ油、ベルガモット油、ウイキョウ油、ローズ油等が挙げられる。【0034】その他の薬学的有効成分としては、例えば、充血除去剤(塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸フェニレフリン、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、硝酸テトラヒドロゾリン、硝酸ナファゾリン等)、消炎・収斂剤(メチル硫酸ネオスチグミン、ε−アミノカプロン酸、アラントイン、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、塩化リゾチーム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸アンモニウム、グリチルレチン酸、サリチル酸メチル、トラネキサム酸、アズレンスルホン酸ナトリウム、クロモグリク酸ナトリウム等)、抗ヒスタミン剤(塩酸イプロヘプチン、塩酸ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン、塩酸イソチペンジル、マレイン酸クロルフェニラミン等)、水溶性ビタミン類(フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、塩酸ピリドキシン、シアノコバラミン)、脂溶性ビタミン類(ビタミンA類(例えば酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール)、ビタミンE類(酢酸トコフェロール(例えば、酢酸d−α−トコフェロール))、アミノ酸類(L−アスパラギン酸カリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム等)、サルファ剤、殺菌剤(スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾール、スルフイソミジンナトリウム、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール等)、を適宜配合することができる。【0035】本発明において、液剤の製造方法は特に制限されるものではなく、各剤型の常法に従って調製することができ、通常上記各配合成分を精製水(必要に応じて滅菌精製水)に溶解することにより調製される。例えば点眼剤であれば、まず、薬物及び各配合成分を滅菌精製水に溶解し、pHを調整した後、ポリエチレンテレフタラート製の点眼容器(15mL)に無菌充填することにより得られる。【0036】本発明において、眼科用組成物の製造方法は特に制限されるものではなく、各剤型の常法に従って調製することができる。例えば点眼剤であれば、以下のように調製する。約80重量%の精製水にトロメタモールを溶解し、希塩酸を用いpHを約7.3に調整、更に各配合成分を加え溶解した後、再度pHを7.3に調整し、ポリエチレンテレフタラート製の点眼容器(15mL)に無菌充填することにより得られる。【0037】【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明し、試験例によって本発明の効果を明らかにするが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。【0038】(実施例1および比較例1〜3) 表1に示す組成で点眼剤を調製し(配合量:g/100mL)、以下に示す試験を行なった。【0039】【表1】*三洋化成工業(株)製、「レボンLAG−40」【0040】<試験1> 防腐効力試験表1に示す組成に対して、第14改正日本薬局方・参考情報の保存効力試験法を参考にし、一部変更を加えて実施した。被検菌株は以下に示す細菌および真菌の5種を用い、各実施例及び比較例の試料1mLあたり105〜106個になるように加え25℃に静置し、7日後に菌を接種した溶液1mLのそれぞれを培養後、生菌数を測定し、接種菌数に対する残存率(%)を算出した。【0041】<試験2> 眼刺激試験男女各3名(計6名)のドライアイに悩むOA機器操作者をパネラーとし、点眼したときの眼刺激を下記評価基準に基づいて評価した。合計が0〜2点を○、3〜5点を△、6点以上を×とした。<評価基準>2:眼刺激性を感じた1:やや眼刺激性を感じた0:眼刺激は感じなかった【0042】 表1の結果から明らかなように、両性界面活性剤においては、トロメタモールを配合した実施例1では塩酸アルキルジアミノエチルグリシン濃度が0.001w/v%でも充分な抗菌力があることを示している。【0043】(実施例2〜4) 表2に示す組成の点眼剤を調製し、上記実験例の評価を行ったところ、いずれも良好な結果が得られた。【0044】【表2】 アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩0.0001〜0.0005w/v%と、トロメタモール0.1〜3w/v%とを含有してなることを特徴とする眼科用組成物。


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