タイトル: | 特許公報(B2)_オキシトシン拮抗剤 |
出願番号: | 2002077466 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61K 36/18,A61K 35/64,A61P 15/06 |
吉積 一真 大野 智弘 JP 4439787 特許公報(B2) 20100115 2002077466 20020320 オキシトシン拮抗剤 株式会社ファンケル 593106918 吉積 一真 大野 智弘 20100324 A61K 36/18 20060101AFI20100304BHJP A61K 35/64 20060101ALI20100304BHJP A61P 15/06 20060101ALI20100304BHJP JPA61K35/78 CA61K35/64A61P15/06 A61K36/18-36/31 A61K35/64 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2001−089497(JP,A) 特開2002−068979(JP,A) 特開2002−027926(JP,A) 特開2001−333731(JP,A) 3 2003277278 20031002 7 20050315 佐々木 秀次 【0001】【発明が属する技術分野】本発明は、オキシトシン拮抗作用を有する陣痛抑制剤、早産防止剤、月経困難症予防又は治療剤、及びそれを含有する経口用組成物又は食品、医薬に関する。【0002】【従来の技術】産科領域における最も重要な問題の一つは、妊娠満期前陣痛(早産)である。妊娠経過において、妊娠後20週間における未熟陣痛あるいは未熟出産を経験することがかなり報告されており、またこれは、新生児不健全あるいは死亡の原因となる。【0003】オキシトシンは、バソプレシンのペプチド構造と類似のペプチド構造を有する。近年の精力的な研究において、オキシトシンがヒトを含めた幾つかの哺乳動物において、陣痛の生理学的な誘発剤であることが明らかにされてきている。【0004】オキシトシンは、強力な子宮収縮作用を有し、1950年代に構造決定された9個のアミノ酸から成る下垂体後葉ホルモンで、分娩、乳汁分泌および性行動に関係していることから、広く産婦人科臨床の場で、子宮収縮の誘発、促進の目的で用いられているが、感受性の個人差が大きいため、慎重な投与管理が必要であることが問題となっている。【0005】また、オキシトシンは、一つには直接子宮筋層を収縮させることにより、また一つには子宮膜の脱落層からの収縮性プロスタグランジンの合成および放出を促進させることによって、子宮収縮作用の効果を及ぼしていると考えられている。さらに、これらのプロスタグランジンは頚部の成熟過程においても重要なものである。このような過程により陣痛過程(満期および前満期)は、一つには、オキシトシンに対するオキシトシン受容体の数の増加という現象の結果として子宮の感受性が高まることによって起こるものと考えられている。【0006】一方、オキシトシン受容体は出産(分娩)に深く関与しているタンパク質で、その発現数により陣痛の発来や促進を制御していると考えられている。このオキシトシン受容体は、子宮の平滑筋上にも見られ、さらにそれらは、乳腺の筋上皮細胞上、中枢神経系中、および腎臓中にも見られる。【0007】このオキシトシン受容体の促進的調節および子宮感受性の増加は、妊娠満期に向けて細胞質のエストロゲン量が増加する栄養因子的な作用によるもののように思われる。【0008】オキシトシンの子宮に対する直接的(収縮効果)および間接的(プロスタグランジン合成促進)効果を抑制することは、安静にしているよりも、妊娠満期前陣痛(早産)を処置する上で有効であると考えられている。【0009】また、月経困難症は、排卵サイクル中の月経に伴う周期的な痛みが特徴である。この痛みは、子宮内膜の分泌細胞におけるプロスタグランジン合成効果を介しての子宮の収縮および虚血によるものと考えられている。よって、このオキシトシンの子宮に対する直接的(収縮効果)および間接的(プロスタグランジン合成促進)効果を抑制することは、安静にしているよりも、月経困難症を抑える上で有効であると考えられている。【0010】上述した考えに基づいて、婦人科における臨床の現場では、オキシトシン拮抗剤が、早産及び過強陣痛の患者に対し、子宮収縮の開始を遅らせたり、減じたりする作用が期待されることから、最も理想的な産科薬として使用されているが、天然物由来で、長期間服用しても安全で尚且つ確実な治療を行うのに充分満足できるような医薬や食品は、現在までのところ全く開発されていないのが現状である。【0011】【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、天然物由来成分で、オキシトシン拮抗作用を有し、オキシトシンの関与する疾患、特に陣痛、早産、月経困難症を治療あるいは予防できる、長期間服用しても安全で尚且つ確実な治療を行うのに充分満足できる医薬や食品を提供することである。【0012】 すなわち、本発明は、プロポリス、ケール又はそれらの抽出物を含有するオキシトシン拮抗剤、1の剤を含有するオキシトシン拮抗用経口医薬組成物、1の剤を含有するオキシトシン拮抗用医薬 に関する。【0013】【発明の実施の形態】本発明で使用するプロポリスとは、蜂が集めた樹脂状の黒い塊であり、ブラジル産プロポリス、中国産プロポリス、オーストラリア産プロポリス、ウルグアイ産プロポリス、日本産プロポリスなど何れの産地のものでもよく、特に限定されるものではないが、汎用性の面から見て、ブラジル産プロポリス、中国産プロポリスが好ましい。【0014】本発明で使用されるケール(Brassicca Oleracea L. var. acephala DC.)には、キッチンケール、マローケール、ブッシュケール、ツリーケール、コラード、緑藻カンランなどがある。ケールはアブラナ科の植物でもともと南ヨーロッパ原産の野菜であり、キャベツの原種といわれている。葉など通常食用として供されているもので構わないし、その栽培方法や栽培地も特に限定されるものでもない。【0015】本発明におけるプロポリス又はケールは、それ自身を乾燥させた乾燥物、その粉砕物、超臨界抽出物、水あるいはアルコール、エーテル、アセトンなどの有機溶媒による粗抽出物、および粗抽出物を分配、カラムクロマトなどの各種クロマトグラフィーなどで段階的に精製して得られた抽出物画分など全てを含む。これらは単独で用いても良く、また2種以上混合して用いても良い。【0016】例えば、ブラジル産プロポリスの原塊又はケールの葉、茎、花や根などの乾燥物1Kgに99.5%エタノール抽出液3Lを加え、室温で一晩浸漬することにより得た抽出液を、そのままオキシトシン拮抗剤あるいは陣痛抑制剤、早産防止剤、月経困難症の予防、治療剤として使用しても良いし、各種クロマトグラフィーを組み合わせて、精製したものを使用しても良い。【0017】抽出されたプロポリス又はケール抽出物の溶液中のプロポリス又はケール抽出物濃度は特に制限はないが、15〜70重量%、好ましくは20〜60重量%程度が好ましい。この濃度が15重量%以下では、乾燥時に多量のエタノールや水などの溶液を蒸発させる必要があり、70重量%以上になると溶液の粘度が高くなり過ぎ、加工適性が悪くなる恐れがある。【0018】これらの本発明によるプロポリス又はケールの乾燥物または抽出物に、オキシトシン拮抗作用を有することは、従来から全く知られておらず、本発明により得られた新知見である。【0019】プロポリス又はケール或いはその抽出物は、卓越したオキシトシン拮抗作用を有しており、陣痛の抑制、早産の防止、月経困難症の予防、治療を目的とした食品又は医薬として使用可能である。プロポリス又はケール或いはその抽出物を、オキシトシン拮抗用、陣痛抑制用、早産防止用、月経困難症の予防、治療用食品又は医薬として製造することができる。【0020】オキシトシン拮抗剤、陣痛抑制剤、早産防止剤および月経困難症の予防、治療剤のような医薬は、経口投与又は非経口投与のいずれの投与方法も採用することができる。投与に際しては、有効成分を経口投与、直腸内投与、注射などの投与方法に適した固体又は液体の医薬用無毒性担体と混合して、慣用の医薬製剤の形態で投与することができる。このような製剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤などの固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤などの液剤、凍結乾燥製剤などが挙げられ、これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。上記の医薬用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングルコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩水などが挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、張化剤などの慣用の添加剤を適宜添加することもできる。【0021】食品としては、そのまま、又は種々の栄養成分を加えて、若しくは飲食品中に含有せしめて、陣痛の抑制、早産の防止、月経困難症の治療及び予防に有用な保健用食品又は食品素材として食される。例えば、澱粉、乳糖、麦芽糖、植物油脂粉末、カカオ脂末、ステアリン酸などの適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペーストなどに成形して食用に供してもよく、また種々の食品、例えば、ハム、ソーセージなどの食肉加工食品、かまぼこ、ちくわなどの水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳、発酵乳製品に添加して使用したり、水、果汁、牛乳、茶、清涼飲料などの飲料に添加して使用してもよい。【0022】本発明のプロポリス又はケールの有効投与量は、患者の年齢、体重、症状、患者の程度、投与経路、投与スケジュール、製剤形態、素材の阻害活性の強さなどにより、適宜選択・決定されるが、例えば、経口投与の場合、一般に1日当たり10〜500mg/kg体重程度、好ましくは、1日当たり150〜350mg/kg体重程度とされ、1日に数回に分けて投与してもよい。【0023】本発明のプロポリス又はケールは、その毒性は低く、例えばブラジル産プロポリスのエタノール抽出物を毎日1000mg/kg、100日間という長期間に亘ってラットに経口投与しても、死亡例は認められず、体重変化も観察されなかった。【0024】[実施例]以下に実施例を挙げて、具体的に説明するが、これに限定されるものではない。【0025】製造例1[プロポリス抽出物の製造]ブラジル産及び中国産プロポリス原塊それぞれ10gに99.5%エタノール3Lを加え、50℃で一晩浸漬した後、ロータリーエバポレーターにてエタノールを除去することにより、プロポリス抽出物をそれぞれ324mg、216mgを得た。【0026】製造例2[ケール抽出物の製造]ケールの葉を90℃で乾燥させ、苦みの渋味成分となる酵素を失活させた。その粉砕物4kgを電熱式水浴機で加熱還流しながら、99.5%エタノール20Lを用いて抽出を行い、ケール抽出物80gを得た。【0027】試験方法オキシトシン受容体への結合試験評価は、Douglas J. Pettiboneらの方法(European Journal of Pharmacology−Molecular Pharmacology Section ,188 , 235−242,1990)を一部改変して行った。【0028】すなわち、屠殺する18〜24時間前に0.3mg/kgの合成発情ホルモン剤、ジプロピオン酸ジエチルベスチルベステロールを静脈注射することにより処理したラットから摘出した子宮組織を、1mM EDTA、0.5mMジチオスレイトールを含む10mMトリス緩衝液(pH7.4)を用いて、ホモジナイズし、48000×g、4℃で30分間遠心分離し、得られた沈殿物を、5mM塩化マグネシウム、0.1%牛血清アルブミンを含む50mMトリス緩衝液(pH7.4)(以下、緩衝液Aとする)で再溶解させ、48000×g、4℃で30分間遠心分離し、沈殿物を得た。この得られた沈殿物を、緩衝液Aを用いて溶解させ、分析するまで氷冷した。【0029】次に、競合試験は、10nMの[3H]標識したオキシトシン(New England Nuclear製、比活性;30−60Ci/mmol)と、製造例1、2で得られた各プロポリス又はケール抽出物500μg/mlを、緩衝液A中で、22℃、60分間反応させた。【0030】その後、ガラスフィルター(Model 7019、Skatron Inc.製)を用いて、[3H]標識したオキシトシンと結合した膜標品を分離するために瀘過を行ない、2回、緩衝液A5mlにて洗浄した。このガラスフィルターをバイアルに入れ、アクアゾール(液体シンチレーション用カクテル)と混合し、液体シンチレーションカウンターにて結合[3H]標識オキシトシン量を測定し、阻害率(%)を次式より算出した。阻害率(%)=100−〔(C1−B)/(C0 −B)〕×100(式中、C1 は、既知量の供試化合物と[3H]標識オキシトシンが共存している状態での[3H]標識オキシトシンの膜に対する結合量を表わし、C0 は、供試化合物を除いた時の[3H]標識オキシトシンの膜に対する結合量を表わし、Bは、過剰のオキシトシン(5×10-6M)存在下での[3H]標識オキシトシンの膜に対する結合量を表わす。)なお、本測定系におけるポジティブコントロールとしてのオキシトシンのIC50値は、3.1nM(0.32μg/ml)であった。【0031】【表1】【0032】表1から、本発明のプロポリス或いはケール又はその抽出物に強いオキシトシン拮抗作用を有することがわかる。【0033】例1[錠剤の製造]製造例1で得られたブラジル産プロポリスのエタノール抽出物を用いて、常法に従って、下記の組成の錠剤を製造した。【0034】例2[ジュースの製造]製造例2で得られたケールのエタノール抽出物を用いて、常法に従って、下記の組成のジュースを製造した。【0035】【発明の効果】プロポリス或いはケール又はその抽出物は、オキシトシン拮抗作用を有し、陣痛の予防、早産の防止、月経困難症の予防、治療に有用な食品又は医薬として使用できる。本発明により、長期間服用しても安全で尚且つ確実な治療を行うのに充分満足できる陣痛の予防、早産の防止、月経困難症の予防、治療に有用な医薬や食品を提供することができる。 プロポリス、ケール又はそれらの抽出物を含有するオキシトシン拮抗剤。 請求項1記載の剤を含有するオキシトシン拮抗用経口医薬組成物 請求項1記載の剤を含有するオキシトシン拮抗用医薬