タイトル: | 特許公報(B2)_ジメチルカーボネート及びエチレングリコールの製造方法 |
出願番号: | 2002068187 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07C 27/02,C07C 27/28,C07C 29/128,C07C 29/80,C07C 31/20,C07C 68/06,C07C 68/08,C07C 69/96 |
金丸 高志 JP 3960525 特許公報(B2) 20070525 2002068187 20020313 ジメチルカーボネート及びエチレングリコールの製造方法 三菱化学株式会社 000005968 岡田 数彦 100097928 金丸 高志 20070815 C07C 27/02 20060101AFI20070726BHJP C07C 27/28 20060101ALI20070726BHJP C07C 29/128 20060101ALI20070726BHJP C07C 29/80 20060101ALI20070726BHJP C07C 31/20 20060101ALI20070726BHJP C07C 68/06 20060101ALI20070726BHJP C07C 68/08 20060101ALI20070726BHJP C07C 69/96 20060101ALI20070726BHJP JPC07C27/02C07C27/28C07C29/128C07C29/80C07C31/20 AC07C68/06 AC07C68/08C07C69/96 Z C07C 27/02 C07C 27/28 C07C 29/128 C07C 29/80 C07C 31/20 C07C 68/06 C07C 68/08 C07C 69/96 特開平10−36297(JP,A) 特開平6−9507(JP,A) 特開平9−183744(JP,A) 4 2003267897 20030925 8 20041019 松本 直子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明はジメチルカーボネート及びエチレングリコールの製造方法に関する。【0002】【従来の技術】ジメチルカーボネート及びエチレングリコールは、エチレンカーボネートとメタノールとのエステル交換反応により製造される。そして、斯かる反応においては、ジメチルエーテル及びメチルエーテルグリコールが副生する。従って、ジメチルカーボネート及びエチレングリコールの製造においては、上記の副生物を分離する必要がある。【0003】特開平10−36297号公報には、上記のエステル交換反応液を第1の蒸留塔で処理して、ジメチルカーボネートを主成分とし、メタノール、ジメチルエーテル及びメチルエーテルグリコールを含む低沸点留分と、エチレングリコールを主成分とし、エチレンカーボネート、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールを含む高沸点留分とに分離し、次いで、低沸点留分を第2の蒸留塔で処理し、低沸点留分中の最も低沸点であるジメチルエーテルを塔頂留分として、最も高沸点であるメチルエーテルグリコールを塔底留分として抜出しながら必要成分であるジメチルカーボネート及びメタノールと分離している。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、エチレンカーボネートとメタノールとのエステル交換反応によりジメチルカーボネート及びエチレングリコールを製造する方法において、副生成分の分離を公知の方法に比して簡略化された工程で行ない得る様に改良されたジメチルカーボネート及びエチレングリコールの製造方法を提供することにある。【0005】【課題を解決するための手段】本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、ジメチルエーテルの沸点が非常に低い点に注目して検討した結果、エステル交換反応液からジメチルカーボネート及びエチレングリコールを回収する気液分離工程から流出するベーパーの分縮によって上記の成分を容易に分離し得るとの知見を得、本発明の完成に至った。【0006】すなわち、本発明の要旨は、エチレンカーボネートとメタノールとのエステル交換反応によりジメチルカーボネート及びエチレングリコールを製造する方法において、上記のエステル交換反応液を気液分離工程で処理して上記の生成物を分離回収するに際し、上記の気液分離工程から流出するベーパーを分縮し、排気ガスとして、上記のエステル交換反応で副生したジメチルエーテルを分離することを特徴とするジメチルカーボネート及びエチレングリコールの製造方法に存する。【0007】【発明の実施の形態】以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の好ましい態様の一例を示すプロセス説明図である。本発明の製造方法は、反応工程と気液分離工程とから成る。なお、以下の説明においては次の表1に示す略号を使用することがある。【0008】【表1】【0009】反応工程においては、ECとMeOHとのエステル交換反応によりDMC及びEGを製造する。【0010】通常、上記のエステル交換反応は触媒の存在下に行なわれる。触媒としては、カーボネート類のエステル交換触媒として一般的に使用されているものを制限なく使用するすることが出来る。具体的には、均一系触媒として、トリエチルアミン等のアミン類、ナトリウム等のアルカリ金属、クロロ酢酸ナトリウム、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属化合物、タリウム化合物などが挙げられ、不均一系触媒として、官能基により変性したイオン交換樹脂、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の珪酸塩を含浸した無定型シリカ類、アンモニウム交換Y型ゼオライト、コバルトとニッケルとの混合酸化物などが挙げられる。【0011】反応器の形式は、特に限定されないが、図示した様に、固定床式反応器(1)を使用するのが好ましい。図示した例の場合は、EC及びMeOHは反応器(1)の頂部のライン(L1)及びライン(L2)から供給され、反応液は底部のライン(L3)から取り出されている。ECに対するMeOHの使用割合(モル比)は通常2〜20であり、反応温度は通常50〜180℃、反応時間は通常0.5〜5時間である。【0012】上記のエステル交換反応は平衡反応であり、反応液中には必ず未反応の原料成分が存在する。すなわち、反応液中には、目的生成物のDMC及びEGの他に、原料のEC及びMeOHが含まれ、更に、副生したDME等が含まれている。【0013】気液分離工程においては、上記のエステル交換反応液を処理して上記の生成物を分離回収する。この際、本発明においては、気液分離工程から流出するベーパーを分縮し、排気ガスとしてDME等を分離する。そして、気液分離工程からMeOHを含む低沸留分のベーパーを流出させた場合は、DME等の実質全量を当該低沸留分中に回収できるので好ましい。【0014】気液分離工程の構成は、特に限定されないが、図示した様に、蒸留塔(精留塔)(2)で構成するのが好ましい。蒸留塔(2)の形式は、棚段塔または充填塔の何れの形式であってもよい。図示した蒸留塔(2)は、塔底部にリボイラー(3)、塔頂部に凝縮器(4)を備え、当該凝縮器(4)の気相部はエジェクター(5)に連結され、更に、当該エジェクター(5)は凝縮器(6)に連結されている。凝縮器(4)及び(6)としては一般的な多管式熱交換器を使用することが出来る。エジェクター(5)としてはスチームエジェクターが使用されているが、他の形式のエジェクターであってもよい。【0015】図示したプロセスにおいては、蒸留塔(2)でエステル交換反応液を処理して、DMCを主成分とし、MeOHと副生したDMEとを含む低沸点留分と、EGを主成分とし、ECを含む高沸点留分とに分離する。すなわち、反応液はライン(L3)から蒸留塔(2)の供給段に導入され、MeOHと副生したDMEとを含む低沸点留分はライン(L5)から凝縮器(4)に導入され、EGを主成分とし、ECを含む高沸点留分はライン(L4)から抜出される。蒸留塔(2)の濃縮段および回収段の段数、操作条件(温度、圧力、還流比など)は、上記の成分分離が行なわれる様に適宜選択される。【0016】本発明においては、上記の成分分離に際し、蒸留塔塔頂の凝縮器(4)によって低沸点留分を分縮し、凝縮器(4)の排気ガスとしてDMEを分離することが重要である。従って、凝縮器(4)の温度(凝縮液温度)は、DMEの沸点(−23.6℃)以上で且つ次の低沸点成分であるMeOHの沸点(64.5℃)未満の温度に設定される。凝縮器(4)の温度は、通常10〜50℃、好ましくは25〜35℃の範囲である。凝縮器(4)で回収された凝縮液は、ライン(L6)から抜出され、その一部はライン(L6(a))を通して蒸留塔(2)に還流され、他の一部はライン(L6(b))を通して抜出される。【0017】本発明においては、排気ガスとして分離された DMEは水と接触させて水溶液として回収するのが好ましい。すなわち、図示したプロセスにおいては、凝縮器(4)の排気ガスとして分離されたDMEは、ライン(L7)を通してエジェクター(5)に導入され、ライン(L11)から供給される駆動流体のスチームと混合され、ライン(L8)を通して凝縮器(6)に導入され、凝縮液(DME水溶液)として回収される。ライン(L11)から供給される駆動流体の圧力は蒸留塔(2)の操作圧力(減圧度)を考慮して適宜選択され、凝縮器(6)の温度(凝縮液温度)は、通常5〜50℃の範囲である。【0018】なお、DMEは水に可溶であるものの沸点が低いため水に溶解する量には限度があり、特に圧力が低い場合や水温が高い場合は極く僅かしか水に溶解しない。そこで、DMEを吸収する水量はエステル交換反応で副生するするDMEに対して十分過剰であることが必要であり、通常、DMEに対して100倍(モル比)以上を使用する。【0019】凝縮器(6)にて回収されたDME水溶液は、適当な濃度に希釈した後、曝気槽を備えた活性汚泥処理設備(図示せず)に導入して無害化される。一方、凝縮器(6)におけるパージガスはライン(L10)から排出される。【0020】図示した例においては、真空装置としてエジェクターが使用されているが、水封式真空ポンプも好適に使用することが出来る。高い減圧度が必要な場合は、エジェクターが多段に配置され、水封真空ポンプの前にブースターポンプが設置される。なお、真空ポンプの様に、水を駆動流体として使用しない真空装置を使用した場合は、排気ガスを棚段や充填物を備えた吸収塔に導いて水と向流接触させてDMEを水に吸収させる必要がある。【0021】本発明の特徴は、副生したDMEを排気ガスとして分離するため、エステル交換反応液の気液分離工程から流出するベーパーを分縮する点に存する。斯かる分縮操作は、図示した例の様にエステル交換反応液を蒸留塔で処理する場合の他、次の様な各種のケースに適用し得る。【0022】(1)MeOHとECとを蒸留塔に供給しながら触媒と接触させ、反応蒸留により、塔頂留分としてMeOHとDMC、塔底留分としてEGとECを得る場合。【0023】(2)抽出蒸留によりエステル交換反応液からMeOHを選択的に塔頂留分として抜き出す場合。【0024】(3)反応蒸留を行う蒸留塔の反応部位の上方に抽出蒸留を行う部位を設置し、未反応MeOHを塔頂から循環しながら、DMC、EG、ECを塔底から抜き出す場合。【0025】(4)薄膜蒸発器でエステル交換反応液の一部を蒸発させ、低沸点成分の一部をベーパーで取り出して凝縮させる場合。【0026】【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。【0027】実施例1図1に示すのと同様のプロセスでエステル交換反応および低沸点成分の蒸留分離を行なった。固定床反応器(1)としては、四級アンモニウム塩構造がスペーサー基を介して架橋ポリスチレン鎖に結合したアニオン交換樹脂を充填した反応器を使用し、蒸留塔(2)としては、三菱化学エンジニアリング(株)製「MCパック250S」を7mの高さに充填した内径0.2mの充填塔を使用した。【0028】固定床反応器(1)に、ライン(L1)からEC88重量部、ライン(L2)からMeOH64重量部を供給し、反応温度80℃、反応圧力200KPa、LHSV=1の条件で反応させたところ、ライン(L3)から、EC36重量%、MeOH26重量%、EG15重量%、DMC22重量%の反応液が得られた。反応液中には副生したDMEが0.1重量%含まれていた。【0029】蒸留塔(2)にライン(L3)から上記の反応液を供給した。反応液の供給は充填部上端から2.5mの位置に行なった。そして、還流比0.3で蒸留分離を行なって、塔頂のライン(L5)からMeOHとDMC、塔底のライン(L4)からECとEGの混合液を得た。操作圧力は塔頂で24KPaとした。【0030】塔底液組成はEC69重量%、EG30重量%、MeGE0.7重量%であった。DMCは10重量ppm未満でMeOH及びDMEは検出されなかった。凝縮器(4)は凝縮液温が30℃になる様、10℃の冷水で冷却した。ライン(L6)から抜出された凝縮液組成は、MeOH54重量%とDMC46重量%、DME250重量ppmであった。そして、その一部はライン(L6(a))を通して蒸留塔(2)に還流し、他の一部はライン(L6(b))を通して抜出した。マスバランスの計算結果、塔頂ベーパーの約20重量%が凝縮器(4)からライン(L7)を通してエジェクター(5)へ抜き出されており、このベーパーには生成したDMEの約90%が含まれていることが分った。【0031】ライン(L11)からエジェクター(5)に供給される蒸気流量は48重量部/hとした。これは吸引ベーパー中のDMEに対し約900倍に相当する。吸引ベーパーと混合した水蒸気はライン(L8)を通して凝縮器(6)に導入され、50℃に冷却して凝縮した。ライン(L9)から回収された凝縮水中のDME濃度は約2000重量ppmであった。【0032】次いで、上記の廃水を純水で15倍に希釈した試料100mLに活性汚泥を加えて200mLの容器に入れ、常温で攪拌、曝気しながら溶存酸素を8〜9mg/Lに調節し、5時間後のCODを測定したところ、開始時の1/10以下に低下した。【0033】比較例1図2に示すのと同様のプロセスでエステル交換反応および低沸点成分の蒸留分離を行なった。図2に示すプロセスは、図1に示すプロセスにおいて、更に、蒸留塔(7)として、三菱化学エンジニアリング(株)製「MCパック250S」を2.37mの高さに充填した内径0.2mの充填塔を付加したものである。そして、蒸留塔(7)の塔底部にはリボイラー(8)、塔頂部には凝縮器(9)が備えられ、当該凝縮器(9)の気相部は真空設備(図示せず)に連結されている。【0034】先ず、実施例1と同一条件エステル交換反応を行なって反応液を得た。次いで、実施例1と同様にして、蒸留塔(2)にライン(3)から上記の反応液を供給して低沸点留分と高沸点留分に分けた。但し、この際、コンデンサー(4)の凝縮温度を13℃まで下げて塔頂ベーパーをほぼ全凝縮させた。【0035】次いで、上記の凝縮液の一部はライン(L6(a))を通して蒸留塔(2)に還流し、他の一部はライン(L6(b))を通して蒸留塔(7)に供給した。凝縮液の供給は充填部の上端から1.2mの位置に行なった。そして、常圧下、蒸留分離を行なった。ライン(L13)から抜出された塔頂ベーパーは凝縮器(9)で−20℃に凝縮した。この凝縮液の一部は還流比1となる様にライン(L14(a))を通して蒸留塔(7)に還流し、他の一部(ライン(L6(b))からの供給液の1重量%相当量)はライン(L14(b))を通して抜出した。その結果、塔底のライン(L12)から抜出された液中のDMEは5重量ppm未満であった。【0036】また、塔頂ベーパーの略60重量%はライン( L15)からベーパーで真空装置へ抜き出され、ライン(L14)から抜出された凝縮液中のDMEは13重量%であり、これは生成量の27%であった。【0037】上記の操作では低沸点留分からDMEを分離する第2段の蒸留操作でエネルギーを消費しているため、第1段の蒸留操作と合わせたエネルギー消費量は、実施例1より16%増加した。また、蒸留塔(7)での留出量が少ないため凝縮器(9)の負荷は大きくはないが、凝縮温度を−20℃にするのは実際の製造設備では困難である。【0038】【発明の効果】以上説明した本発明によれば、副生成分の分離を公知の方法に比して簡略化された工程で行ない得る様に改良されたジメチルカーボネート及びエチレングリコールの製造方法が提供され、本発明の工業的価値は顕著である。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の好ましい態様の一例を示すプロセス説明図【図2】比較例1のプロセス説明図【符号の説明】1:固定床式反応器2:蒸留塔3:リボイラー4:凝縮器5:エジェクター6:凝縮器7:蒸留塔8:リボイラー9:凝縮器 エチレンカーボネートとメタノールとのエステル交換反応によりジメチルカーボネート及びエチレングリコールを製造する方法において、上記のエステル交換反応液を気液分離工程で処理して上記の生成物を分離回収するに際し、上記の気液分離工程から流出するベーパーを分縮し、排気ガスとして、上記のエステル交換反応で副生したジメチルエーテルを分離することを特徴とするジメチルカーボネート及びエチレングリコールの製造方法。 気液分離工程から流出するベーパーがメタノールを含む低沸点留分である請求項1に記載の製造方法。 気液分離工程が蒸留塔で構成され、当該蒸留塔でエステル交換反応液を処理して、ジメチルカーボネートを主成分とし、メタノールと副生したジメチルエーテルとを含む低沸点留分と、エチレングリコールを主成分とし、エチレンカーボネートを含む高沸点留分とに分離するに際し、蒸留塔塔頂の凝縮器によって低沸点留分を分縮し、凝縮器の排気ガスとしてジメチルエーテルを分離する請求項1に記載の製造方法。 排気ガスとして分離されたジメチルエーテルを水と接触させて水溶液として回収する請求項1〜3の何れかに記載の製造方法。