生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_痔疾治療剤
出願番号:2002044699
年次:2009
IPC分類:A61K 31/216,A61K 9/02,A61K 9/06,A61K 9/08,A61K 9/10,A61K 9/107,A61K 9/12,A61K 9/70,A61P 9/14


特許情報キャッシュ

鮫島 輝行 JP 4245844 特許公報(B2) 20090116 2002044699 20020221 痔疾治療剤 天藤製薬株式会社 592066572 岩谷 龍 100077012 鮫島 輝行 20090402 A61K 31/216 20060101AFI20090312BHJP A61K 9/02 20060101ALI20090312BHJP A61K 9/06 20060101ALI20090312BHJP A61K 9/08 20060101ALI20090312BHJP A61K 9/10 20060101ALI20090312BHJP A61K 9/107 20060101ALI20090312BHJP A61K 9/12 20060101ALI20090312BHJP A61K 9/70 20060101ALI20090312BHJP A61P 9/14 20060101ALI20090312BHJP JPA61K31/216A61K9/02A61K9/06A61K9/08A61K9/10A61K9/107A61K9/12A61K9/70 401A61P9/14 A61K 31/00-31/80 BIOSIS(STN) REGISTRY(STN) CAplus(STN) EMBASE(STN) MEDLINE(STN) JSTPlus(JDreamII) JMEDPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) 特開平07−196516(JP,A) 特開平10−316554(JP,A) 特開平10−120594(JP,A) 6 2003238397 20030827 9 20050209 安居 拓哉 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、肛門裂創、肛門潰瘍、肛門括約筋のレン縮、内痔核、外痔核等の痔疾を治療する新規な痔疾治療剤に関する。【0002】【従来の技術】痔疾は肛門部又は直腸内に発生する疾患であり、大きく分けて痔核、裂肛、痔瘻があり、その症状は出血、疼痛、腫れ、痒み等の症状を特徴とするものである。痔核とは、肛門静脈叢が静脈瘤様に変化したものをいう。便秘、妊娠、喘息、長時間の座業、飲食等の原因で肛門部静脈叢にうっ血を繰り返すことにより、次第に痔核が形成される。痔核の発生部位により内痔核と外痔核がある。裂肛とは、過進展により急速にできた肛門上皮の裂創をいう。肛門裂創、痔裂、切れ痔、裂け痔等とも呼ばれており、排便時の肛門痛と出血が主な症状である。痔瘻とは、肛門管および周辺に存在する瘻孔のことである。一般に、非特異性細菌感染により発生したものをいう。【0003】痔疾の治療剤の多くは、抗炎症薬、局所麻酔薬、血管収縮薬、収斂剤等が単独又は配合剤として用いられている。また、一部では裂肛治療を目的として内肛門括約筋を一時的に弛緩・不全麻痺に陥らせることによって裂肛を治療する試みが行われている。この目的のため、ニトログリセリン軟膏やニフェジピン軟膏等が用いられている。ニトログリセリン軟膏はニトログリセリンが体内で代謝され、非コリンアドレナリン性抑制神経の伝達物質であるNO(一酸化窒素)となって平滑筋を弛緩させる作用を発揮する。カルシウム拮抗薬であるニフェジピンは筋肉の興奮収縮関連物質であるCaの平滑筋への流入を抑制して、血管平滑筋を弛緩させる。【0004】【発明が解決しようとする課題】抗炎症薬、局所麻酔薬、血管収縮薬、収斂剤等成分は痔疾患の症状の改善を目的としたものであり、対症療法的であり、厳密には治療を目的としたものではない。また、ニトログリセリン軟膏やカルシウム拮抗薬であるニフェジピン軟膏は、通常どのような投与経路をとっても全身作用がでることが考えられる。このような場合、循環器系の疾患を有している者は、既に使用されている場合があり、薬理作用を分離またはコントロールしにくいという問題がある。また、ニトログリセリンにおいては頭痛等の副作用頻度が高く使用においてはかかる観点からも注意を有する。このような現状において、従来の痔疾治療剤では十分な効果が得られているとはいい難い。そこで、本発明では安全性および有効性の高い痔疾治療剤を提供することを目的とする。【0005】【課題を解決するための手段】本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデラート、酒石酸ニコチニックアルコール、ヘプロニカート、塩酸イソクスプリン、クエン酸ニカメタート、硫酸バメタンまたは塩酸トラゾリンに従来の痔疾治療剤にはない弛緩作用、抗浮腫作用、および血液循環改善効果を併せ持つ安全性および有効性の高い痔疾治療効果を有することを見いだし、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデラート、酒石酸ニコチニックアルコール、ヘプロニカート、塩酸イソクスプリン、クエン酸ニカメタート、硫酸バメタンまたは塩酸トラゾリンを有効成分として含有する痔疾治療剤を提供することを目的とする。【0006】すなわち、本発明は、(1) 痔疾治療の有効成分としてイノシトールヘキサニコチネート、シクランデラート、酒石酸ニコチニックアルコール、ヘプロニカート、塩酸イソクスプリン、クエン酸ニカメタート、硫酸バメタンまたは塩酸トラゾリンを含有することを特徴とする痔疾治療剤、(2) 痔疾治療の有効成分としてイノシトールヘキサニコチネート、シクランデラート、酒石酸ニコチニックアルコールまたはヘプロニカートを含有することを特徴とする痔疾治療剤、(3) さらに、副腎皮質ホルモン、局所麻酔剤、解熱鎮痛消炎剤、消炎・鎮痒・創傷治癒剤、ビタミン剤、サルファ剤、殺菌剤、抗ヒスタミン剤、止瀉・整腸剤から選ばれる一種または二種以上を含んでなる前記(1)または(2)に記載の痔疾治療剤、(4) 肛門または直腸投与用である前記(1)から(3)のいずれかに記載の痔疾治療剤、(5) 剤形が坐剤、軟膏剤、エアゾール剤、液剤、懸濁剤、乳化剤、貼付剤、パップ剤、リニメント剤およびローション剤から選ばれる前記(1)から(4)のいずれかに記載の痔疾治療剤、(6) 剤形が坐剤または軟膏剤である前記(1)から(5)のいずれかに記載の痔疾治療剤、(7) イノシトールヘキサニコチネート、シクランデラート、酒石酸ニコチニックアルコール、ヘプロニカート、塩酸イソクスプリン、クエン酸ニカメタート、硫酸バメタンまたは塩酸トラゾリンの痔疾治療有効成分の利用、に関する。【0007】【発明の実施の形態】本発明の痔疾治療の有効成分は、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデラート、酒石酸ニコチニックアルコール、ヘプロニカート、塩酸イソクスプリン、クエン酸ニカメタート、硫酸バメタンまたは塩酸トラゾリンである。本発明の痔疾治療の有効成分は、好ましくはイノシトールヘキサニコチネート、シクランデラート、酒石酸ニコチニックアルコールまたはヘプロニカートである。より好ましくはイノシトールヘキサニコチネートである。痔疾治療剤に用いるときの上記有効投与量は通常50mg/day〜2000mg/dayの範囲で使用する。【0008】医薬上許容できるキャリアとは、油脂性基剤または水溶性基剤のいずれでもよく、油脂性基剤としては、例えば、カカオ脂、ラウリン脂、牛脂若しくは半合成品由来のハードファット等の常温で固形状である基剤、あるいは常温で液状または半固形状である、例えば、ヤシ油、パーム核油、ツバキ油、オリーブ油、大豆油、ゴマ油、トウモロコシ油、その他中鎖脂肪酸トリグリセライド、流動パラフィン、白色ワセリン、精製ラノリン若しくはミリスチン酸イソプロピル、例えば、モノステアリン酸グリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の界面活性剤やステアリルアルコール、セタノール等の高級アルコールの1種又は2種以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではなく医薬上許容されるものであればよい。水溶性基剤としては、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール、ソルビトール、1,3―ブチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、精製水等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。坐剤に用いられるキャリアとしては、ハードファットが好ましい。また、軟膏に用いられるキャリアとしては白色ワセリン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、流動パラフィンが好ましい。【0009】本発明の痔疾治療剤には、所望により通常痔疾治療剤として用いられている薬剤をさらに一種または二種以上配合することができる。このような薬剤としては、例えば、酢酸プレドニゾロン、ヒドロコルチゾンまたはベタメゾン等の副腎皮質ホルモン剤、例えば、リドカインまたはジブカイン等の局所麻酔剤、例えば、インドメタシン、アスピリン、サリチル酸ナトリウム等の解熱鎮痛消炎剤、例えば、塩化リゾチームまたはグリチルレチン酸等の消炎剤、例えば、クロタミトン等の鎮痒剤、例えば、アラントイン等の創傷治癒剤、例えば、肝油、エルゴカルシフェロール、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、トコフェロールまたは酢酸トコフェロール等のビタミン剤、例えば、スルフイソミジン、スルフイソミジンナトリウム、ホモスルファミンまたはスルファジアジン等のサルファ剤、塩酸クロルヘキシジン、セトリミド、塩化デカリニウムまたは塩化ベンザルコニウム等の殺菌剤、例えば、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤、止潟・整腸剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。【0010】投与方法は、特に限定されるものではないが、本発明においては、肛門または直腸投与が好ましい。具体的には、軟膏を肛門部に直接塗布するか、あるいは坐剤を直腸内に投与する。痔疾治療剤が患部に直接適用されることにより、患部の出血、疼痛、腫れ、痒み等を効果的に治療することができる。【0011】本発明で用いる剤形は、坐剤、軟膏剤、エアゾール剤、液剤、懸濁剤、乳剤、貼布剤、パップ剤、リニメント剤、ローション剤等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。好ましくは坐剤、軟膏剤等の患部の投与部位に的確に投与できる剤形がよい。坐剤としては、例えば、基剤型坐剤、ゼラチンカプセル坐剤、錠剤型坐剤等の形態を使用することができる。また、軟膏剤、液剤等は通常、肛門周辺に塗布するが、所望により注入用容器に収納することにより肛門、直腸内に注入することもできる。【0012】【実施例】以下、本発明の実施例を説明するが、以下の開示は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明の技術的範囲を何等限定するものではない。【0013】実施例1〔製剤例〕イノシトールヘキサニコチネート 200mgハードファット 1500mg予め50℃に加温して溶融したハードファットにイノシトールヘキサニコチネートを加えて分散し、この液を坐剤の型に充填して室温で固化し、痔疾治療剤を得た。【0014】実施例2〔製剤例〕シクランデラート 10g中鎖脂肪酸トリグリセリド 15gモノステアリン酸グリセリン 2.5gワセリン 72.5g60℃に加温した中鎖脂肪酸トリグリセリドにシクランデラートを加えて分散し、この液を予め70℃で溶融したワセリンとモノステアリン酸グリセリンに加えて均一に混ぜ合わせ冷却して軟膏の剤形の痔疾治療剤を得た。【0015】実施例3〔製剤例〕イノシトールヘキサニコチネート 10gリドカイン 3g中鎖脂肪酸トリグリセリド 15gモノステアリン酸グリセリン 2.5gワセリン 69.5g60℃に加温した中鎖脂肪酸トリグリセリドにリドカインを溶解し、これにイノシトールヘキサニコチネートを加えて分散し、この液を予め70℃で溶融したワセリンとモノステアリン酸グリセリンに加えて均一に混ぜ合わせ冷却して軟膏の剤形の痔疾治療剤を得た。【0016】実施例4〔製剤例〕ヘブロニカート 100mgリドカイン 60mg酢酸トコフェロール 60mgアラントイン 20mgハードファット 1460mg予め50℃に加温して溶融したハードファットにリドカインと酢酸トコフェロールを加えて溶解し、これにヘブロニカート、アラントインを加えて分散し、この液を坐剤の型に充填して室温で固化し痔疾治療剤を得た。【0017】実施例5〔製剤例〕酒石酸ニコチニックアルコール 7.5gリドカイン 3g流動パラフィン 25g中鎖脂肪酸トリグリセリド 15gパルミチン酸デキストリン 6gワセリン 43.5g60℃に加温した中鎖脂肪酸トリグリセリドと流動パラフィンの混液にリドカインを溶解し、液温を40℃まで冷却後、酒石酸ニコチニックアルコールとパルミチン酸デキストリンを加えて均一に分散し、この液に60℃で溶融したワセリンを加え、直ちに90℃まで加温した。この液を冷水を用いて室温付近まで冷却して半固形状の軟膏の剤形の痔疾治療剤を得た。【0018】試験例1 デキストラン足蹠浮腫に対する作用試験5週齢のWistar系雄性ラットを1群10匹とし、ラット右後肢にマジックでマークを付け、足蹠容積をplethysmometer(UNICOM,TK-10)を用いて測定し、投与前値とした。下記表1の実施例及び比較例を生理食塩液に溶解又は分散して投与液を調整し、この液0.05mL及び1%デキストラン生理食塩溶液0.05mLを右後肢足蹠皮下に投与した。投与後、1,2,3及び5時間後に足蹠容積を再び測定した。デキストラン生理食塩水投与浮腫惹起前の足蹠容積に対する惹起後の足蹠容積の差から浮腫率及び抑制率を算出した。対照群には生理食塩液を用いた。【式1】【式2】【0019】浮腫率および抑制率を評価した結果を以下に示す。【表1】【0020】以上の結果より、イノシトールヘキサニコチネートは浮腫率および抑制率において抗炎症薬であるインドメタシンと同様の抗浮腫作用を示した。一方、血管拡張作用を有する硝酸イソソルビドは、抗浮腫作用を示さなかった。【0021】試験例2ペントバルビタール(25mg / kg)腹腔内麻酔下、Wistar系雄9週齢222〜273gのラットの直腸を摘出し、氷冷下栄養液中で歯状線より口側2mmの幅の筋層を採取して幅2mm、長さ20mmの筋条片とし、セルフィンを付け、内肛門括約筋の走行に従い懸垂し、内肛門括約筋標本を作製した。標本は混合ガス(95%O2−5%CO2)送気下の栄養液を満たしたマグヌス槽に懸垂し、液温を37℃に保ち、1gの負荷をかけて実験開始まで栄養液を還流し、筋緊張が一定になった後試験を開始した。張力変化をFDピックアップ及び圧力アンプを介してレコーダ上に等尺に記録した。始めに塩化バリウム溶液(3×10−3g/mL)を添加し、後に塩化バリウム溶液(2×10−3g/mL)を数回添加して、筋収縮が安定したときのベースラインと極大ピークの頂点までの幅をレコーダ上から読み取り、塩化バリウム収縮値(mm)とした。なお、塩化バリウム溶液を添加した後は、ウオッシュアウトを3回行うこととした。また、下記表3の実施例及び比較例欄に記載した化合物を栄養液に分散又は溶解して試験溶液を調製し、これを添加して、さらに5分後に塩化バリウム溶液(2×10−3g/mL)を添加して収縮値をレコーダから読み取り、被験物質収縮値(mm)とした。被験物質の内肛門括約筋収縮抑制率は、下記の式より算出した。【式3】【0022】被験物質の調製はすべて用時調製とした。調製方法を以下に示す。1. ニトログリセリン、硝酸イソソルビド:無水エタノールに溶解後、[表2]の組成の栄養液で希釈した。エタノール量は試験系に影響を与えない量とした。2. 塩酸パパベリン:[表2]の組成の栄養液に溶解した。3. イノシトールヘキサニコチネート:乳鉢を用いて[表2]の組成の栄養液に懸濁した。分散液については、光学顕微鏡により分散状態を観察した。【0023】栄養液の組成を以下に示す。【表2】【0024】内肛門括約筋収縮抑制率測定結果を評価した結果を以下に示す。【表3】【0025】以上の結果より、イノシトールヘキサニコチネートは筋弛緩薬である塩酸パパベリンと同様の内肛門括約筋収縮抑制効果を示した。また、平滑筋を弛緩させる作用のあるニトログリセリンよりも優れた内肛門括約筋収縮抑制効果を示した。【0026】【発明の効果】本発明の痔疾治療剤は、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデラート、酒石酸ニコチニックアルコール、ヘプロニカート、塩酸イソクスプリン、クエン酸ニカメタート、硫酸バメタンまたは塩酸トラゾリンを有効成分として含有することにより、弛緩作用、抗浮腫作用、血液循環改善効果を奏することができ、有効性の高い痔疾治療剤を提供することができる。また、局所に投与することにより、全身作用が軽減され、副作用の軽減が図られることとなり、安全性の高い痔疾治療剤を提供することができる。 痔疾治療の有効成分としてイノシトールヘキサニコチネートを含有することを特徴とする痔疾治療剤。 さらに、副腎皮質ホルモン、局所麻酔剤、解熱鎮痛消炎剤、消炎・鎮痒・創傷治癒剤、ビタミン剤、サルファ剤、殺菌剤、抗ヒスタミン剤、止瀉・整腸剤から選ばれる一種または二種以上を含んでなる請求項1に記載の痔疾治療剤。 肛門または直腸投与用である請求項1または2に記載の痔疾治療剤。 剤形が坐剤、軟膏剤、エアゾール剤、液剤、懸濁剤、乳化剤、貼付剤、パップ剤、リニメント剤およびローション剤から選ばれる請求項1から3のいずれかに記載の痔疾治療剤。 剤形が坐剤または軟膏剤である請求項1から4のいずれかに記載の痔疾治療剤。 イノシトールヘキサニコチネートの痔疾治療剤製造のための利用。


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