タイトル: | 特許公報(B2)_複屈折体の複屈折率の波長分散の測定方法、プログラム及び記録媒体 |
出願番号: | 2002039290 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | G01M 11/00,G01N 21/23,G02F 1/13363 |
比嘉 政勝 JP 3875116 特許公報(B2) 20061102 2002039290 20020215 複屈折体の複屈折率の波長分散の測定方法、プログラム及び記録媒体 株式会社リコー 000006747 鈴木 均 100085660 比嘉 政勝 20070131 G01M 11/00 20060101AFI20070111BHJP G01N 21/23 20060101ALI20070111BHJP G02F 1/13363 20060101ALI20070111BHJP JPG01M11/00 TG01N21/23G02F1/13363 G01M 11/00-11/08 特開平10−010041(JP,A) 特開平10−054797(JP,A) 9 2003240678 20030827 11 20041210 田邉 英治 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、複屈折体の複屈折率の波長分散の測定方法及び装置に関し、さらに詳しくは、複屈折体が液晶である場合、液晶ディスプレイ、特にカラー型の液晶ディスプレイの設計、開発に欠かせい液晶の複屈折率の波長分散の測定方法に関するものである。【0002】【従来の技術】近年、インターネットに代表される情報技術の進歩に伴って、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯端末、あるいは携帯電話等の情報機器が急速に普及してきている。これらの情報機器からの膨大な情報を瞬時に処理し、表示するために、高品質、高性能の液晶ディスプレイ、特にカラー型液晶ディスプレイの出現が切望されている。この高品質のカラー型液晶ディスプレイを設計するためには、液晶材料の複屈折率を波長分散を含めて正確に知っておくことが重要である。従来の複屈折率測定法としてよく知られた方法として、アッベの屈折計を用いる方法がある。この方法によれば、屈折率の常光成分neと異常光成分noの両方を求めることができる。また、複屈折率は、Δn=ne−noとして求められる。ところが、測定可能な屈折率の範囲が1.300〜1.700なので、常光成分neが測定範囲外になってしまうことがあった。また、目視で測定するのでプリズム面で配向しにくい液晶については測定が難しく、さらに波長分散まで含めて複屈折率を測定するには、通常は、ナトリウム光源を用いたD線(波長589nm)についてだけの測定が行われることが多いが、この場合は、波長の異なる複数の単色光源を用いて測定するために手間がかかるといった問題があった。【0003】その他、ホモジニアス配向させたサンドイッチ型の液晶セルを、偏光軸が互いに直交、もしくは平行な2枚の偏光子の間に狭持して分光透過率が最大もしくは最小となる複数の波長データから、複屈折率の波長分散を求める方法がある。例えば、偏光子が互いに平行の場合の透過率TはT=T0・cos(πR/λ)・・・・・(式2)で与えられる。ただし、T0は偏光子やガラス等の透過率で決まる最大透過率、λは波長、Rはリターデーションであり、液晶層の厚さをd、複屈折率をΔnとすると、R=Δn・dで表される。また、透過率Tが最小となる条件は、R=(m+1/2)・λ・・・・・・・(式3)で与えられる。ただし、mは干渉の次数で正の整数である。また、透過率Tが最大となる条件は、R=m・λ・・・・・・・・・・・・・(式4)で与えられる。ここで隣り合った波長ピーク間、あるいはボトム間では次数が1だけ異なる。この方法では、干渉の次数mを決定するために、液晶セルに電界もしくは磁界を徐々に印加してホモジニアス配向をホメオトロピック配向に変化させて、透過率の変化から求める必要がある。さらに、くさび型のセルを用いれば干渉の次数を求めなくても複屈折率を測定することができるが、くさび型セルのセルギャップを予め正確に測定しておく必要があり、くさび型セルの歪に起因して困難を伴う。その課題に対して特開平10−54797号公報には、くさび型セルを用いてコレステリック液晶のカイラルピッチを求める方法について開示されており、くさび型セルのセルギャップの測定方法についても開示されているが干渉の次数の決定方法については言及されていない。また、セルギャップの均一なサンドイッチセルを用いて、電界や磁界を印加しないで複屈折率の波長分散とセルギャップを同時にかつ正確にしかも簡便に測定する方法は知られていない。その他、偏光子あるいは液晶セルを面内で回転させて得られる透過率変化から複屈折率を求める、いわゆる検光子回転法も知られている。この方法では、精密に制御された回転機構と感度の高い透過光強度の測定を必要とするため、このような装置は比較的大きく高価になってしまう等の問題があった。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる課題に鑑み、複屈折体の複屈折率の波長分散を容易に測定できる方法を提供することを目的とし、特に、複屈折体が液晶である場合、電界や磁界を用いずに複屈折率およびリターデーションの波長分散を正確かつ簡便に測定する方法を提供することを目的とする。【0007】 本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、複屈折体の複屈折率の波長分散の測定方法において、厚さdが既知である複屈折体を、偏光軸が互いに直交又は平行な2枚の偏光子の間に狭持して測定される分光透過率が最大又は最小となる複数の波長データと干渉の次数を仮定して得られる各波長における複屈折体のリターデーションR=Δn・dを、コーシーの分散式R=Δn・d=A’+B’/λ2+C’/λ4でフィッティングして得られた式と、前記既知の厚さとから計算される仮のΔnの波長分散を用いて各波長において計算される複屈折体の厚さの標準偏差が最小になるように干渉の次数を決定し、最終的に複屈折体の複屈折率Δn及びリターデーションR=Δn・dの波長分散を決定することを特徴とする。 かかる発明によれば、厚さdが既知の複屈折体を、偏光軸が互いに直交、もしくは平行な2枚の偏光子の間にはさんで測定される分光透過率が、最大もしくは最小となる複数の波長データと干渉の次数を仮定して得られる各波長における複屈折体のリターデーションR=Δn・dを、コーシーの分散式R=Δn・d=A’+B’/λ2+C’/λ4でフィッティングして得られた式と前記既知の複屈折率とから計算される仮のΔnの波長分散を用いて各波長において計算される複屈折体の厚さの標準偏差が最小になるように干渉の次数を決定し、最終的に複屈折体の複屈折率Δnおよびリターデーション(R=Δn・d)の波長分散を決定するようにしたので、容易に複屈折率の波長分散が測定可能である。【0008】 請求項2は、複屈折体の複屈折率の波長分散の測定方法において、少なくとも一つの波長における複屈折率Δnが既知であり、厚さdが未知の複屈折体を、偏光軸が互いに直交又は平行な2枚の偏光子の間に狭持して測定される分光透過率が最大又は最小となる複数の波長データと干渉の次数を仮定して得られる各波長における複屈折体のリターデーションR=Δn・dを、コーシーの分散式R=Δn・d=A’+B’/λ2+C’/λ4でフィッティングして得られた式と前記既知の複屈折率とから計算される仮のΔnの波長分散を用いて各波長において計算される複屈折体の厚さの標準偏差が最小となるように干渉の次数を決定し、最終的に前記複屈折体の厚さd、複屈折率Δn及びリターデーションR=Δn・dの波長分散を決定することを特徴とする。 かかる発明によれば、少なくとも一つの波長における複屈折率Δnが既知であり、厚さdが未知の複屈折体を、偏光軸が互いに直交、もしくは平行な2枚の偏光子の間にはさんで測定される分光透過率が、最大もしくは最小となる複数の波長データと干渉の次数を仮定して得られる各波長における複屈折体のリターデーションR=Δn・dを、コーシーの分散式R=Δn・d=A’+B’/λ2+C’/λ4でフィッティングして得られた式と前記既知の複屈折率とから計算される仮のΔnの波長分散を用いて各波長において計算される複屈折体の厚さの標準偏差が最小になるように干渉の次数を決定し、最終的に複屈折体の厚さd、複屈折体の複屈折率ΔnおよびリターデーションR=Δn・dの波長分散を決定するようにしたので、厚さdが未知の複屈折体においても容易に複屈折率の波長分散が測定可能である。 請求項3は、前記分光透過率が最大又は最小となる波長データの数は、少なくとも4個以上であることも本発明の有効な手段である。 かかる技術手段によれば、分光透過率が最大もしくは最小となる波長データの数は少なくとも4個以上であるので、コーシーの分散式R=Δn・d=A’+B’/λ2+C’/λ4で確実にフィッティングが可能である。【0009】 請求項4は、前記複屈折体が液晶であることも本発明の有効な手段である。 かかる技術手段によれば、流動性がある複屈折体である液晶に適用することで、所定の厚さのサンドイッチセルや、くさび型セルに入れて測定することによって、本発明の効果が発揮される。また、本発明における液晶はネマティック液晶にかぎらず、スメクティック液晶にも適用できる。さらにねじれ角がわかっていれば、干渉の式を変えてやればコレステリック液晶にも同様に適用できる。 請求項5は、前記液晶は、ホモジニアス配向をしていることも本発明の有効な手段である。 かかる技術手段によれば、液晶をホモジニアス配向させることによって、本発明の測定方法を適用しての複屈折率の波長分散の測定を容易にすることができる。 請求項6は、前記液晶は、くさび型のセルに狭持されていることも本発明の有効な手段である。 かかる技術手段によれば、くさび型のセルを用いることで、測定しやすいセル厚を選択できるために、測定精度がさらに向上することができる。 請求項7は、前記液晶は、n型の液晶であることも本発明の有効な手段である。 かかる技術手段によれば、電界によってホモジニアス配向からホメオトロピック配向に変化させることができないn型の液晶において、磁界を使用することなく干渉の次数を決定できるので測定が容易にすることができる。 請求項8は、ユーザにより入力された波長データ及び必要データに基づいて、請求項1乃至7の何れか一項に記載の測定方法によるアルゴリズムをコンピュータに実行させることを特徴とする。 かかる発明によれば、本発明の測定方法のアルゴリズムをコンピュータが実行可能なソフトウェアとしてプログラム化し、そのプログラムをコンピュータに実行させることにより、簡単に複屈折の波長分散が容易に測定可能になる。また、測定データ量は分光透過率の最大もしくは最小となる数個の波長値だけであるので、データ処理の時間も短くすることができる。 請求項9は、請求項8に記載のプログラムを記録したことを特徴とする。 かかる発明によれば、本発明の測定方法によるプログラムをCD−ROM等の記録媒体に記録することにより、持ち運びが容易で、そのプログラムのOSを備えたコンピュータであればどれでもプログラムを稼動することができ、汎用性の高いシステムを構築することができる。【0010】【発明の実施の形態】以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。本発明の一つの実施形態は、予め別の方法で複屈折体の厚さdが知られているが、複屈折率はどの波長においても求まっていない場合に係わる。分光透過率の測定では分光光度計、もしくは顕微分光光度計等が使用できる。複屈折体の厚さdは、予めできるかぎり正確に測定しておく。例えば、数10μm以上の厚さについては厚みゲージ等の方法で、薄いものについてはレーザ光等の干渉を用いたギャップ測定機等で測定しておく。また、予め別の方法で厚さdが知られている複屈折体を、偏光軸が互いに直交、もしくは平行な2枚の偏光子の間にはさんで測定される分光透過率が、最大もしくは最小となる複数の波長データから、複屈折体の複屈折率ΔnおよびリターデーションR=Δn・dの波長分散をコーシーの分散式(式1)でフィッティングして求めるものである。R=Δn・d=A’+B’/λ2+C’/λ4・・・・・(式1)ここでは、偏光子が互いに平行な配置のときに、透過率が最小となる波長が測定データとして得られている場合を用いて説明することにする。まず、干渉の次数mを仮定し、測定された波長データ(長波長側から順に、λm、λm+1、λm+2、…)とから得られる各波長における複屈折体のリターデーションR=Δn・dを、(式3)によって、次のように仮に設定する。Rm=(m+1/2)・λm・・・・・・・・・・・(式5a)Rm+1=(m+3/2)・λm+1・・・・・・・・・(式5b)Rm+2=(m+5/2)・λm+2・・・・・・・・・(式5c)【0011】次に、これらのデータをコーシーの分散式(式1)でフィッティングして任意の波長におけるリターデーションの式を得る。R(λ)=A’+B’/λ2+C’/λ4・・・・・・・・・(式6)ここでフィッティングとは、得られたデータを例えば最小二乗法を用いて係数A’、B’、C’を定めることを意味し、このとき最低でも4個の波長データが必要である。あるいは市販のパソコン用表計算ソフトの回帰分析の機能を用いてもよい。また、複屈折率Δnの波長分散の式は、フィッティングで得られたリターデーションの式を複屈折体の厚さdで割って与えられる。Δn(λ)=(A’+B’/λ2+C’/λ4)/d・・・(式7)次に、前述の波長データ(λm、λm+1、λm+2、…)と(式7)とを用いて、複屈折体の厚さが各波長において次のように計算される。dm=Rm/Δn(λm)・・・・・・・・・・・・・(式8a)dm+1=Rm+1/Δn(λm+1)・・・・・・・・・・(式8b)dm+2=Rm+2/Δn(λm+2)・・・・・・・・・・(式8c)次に、これらの値の標準偏差を計算する。そして、干渉の次数mを変えてこれをくりかえし、標準偏差が最小となるmが求める干渉の次数である。すなわち、各波長で計算される複屈折体の厚さの値は、本来同じ値であるべきであるので、偏差が最小となったときの次数が求めるべき干渉の次数であるという考え方に基づいている。干渉の次数mが決定されれば、この次数mにおいて求められる複屈折体の複屈折率ΔnおよびリターデーションR=Δn・dの波長分散が最終的に決定される。【0012】本発明の他の実施形態は、少なくとも一つの波長における複屈折率Δnが既知であり、厚さdが未知の複屈折体の場合に係わる。少なくとも一つの波長における複屈折率Δnが既知であり、厚さdが未知の複屈折体を、偏光軸が互いに直交、もしくは平行な2枚の偏光子の間にはさんで測定される分光透過率が、最大もしくは最小となる複数の波長データから、複屈折体の厚さdと、複屈折体の複屈折率ΔnおよびリターデーションR=Δn・dの波長分散をコーシーの分散式R=Δn・d=A’+B’/λ2+C’/λ4でフィッティングして求めるものである。前述の発明と同様に、まず、干渉の次数mを仮定し、測定された波長データ(長波長側から順に、λm、λm+1、λm+2、…)とから得られる各波長における複屈折体のリターデーションR=Δn・dを(式5)によって仮に設定する。次に、これらのデータをコーシーの分散式((式1))でフィッティングして係数A’、B’、C’を定め、任意の波長におけるリターデーションの式として(式6)を得る。R(λ)=A’+B’/λ2+C’/λ4・・・・・・(式6)次に、ある波長λ0における既知の複屈折率をΔn0=Δn(λ0)と表し、複屈折体の厚さd0を求める。ここでの値は、仮定した干渉の次数mについての値である。d0=R(λ0)/Δn(λ0)=(A’+B’/λ02+C’/λ04)/Δn0・・・・(式9)さらに、複屈折率Δnの波長分散の式は、フィッティングで得られたリターデーションの(式6)を(式9)で与えられる複屈折体の厚さd0で割って得られる。Δn(λ)=(A’+B’/λ2+C’/λ4)/d0・・(式10)次に、前述の波長データ(λm、λm+1、λm+2、…)と(式10)とを用いて、複屈折体の厚さが各波長において次のように計算される。dm=Rm/Δn(λm)・・・・・・・・・・・・・・(式8a)dm+1=Rm+1/Δn(λm+1)・・・・・・・・・・・(式8b)dm+2=Rm+2/Δn(λm+2)・・・・・・・・・・・(式8c)次に、これらの値の標準偏差を計算する。そして、干渉の次数mを変えてこれをくりかえし、標準偏差が最小となるmが求める干渉の次数である。干渉の次数mが決定されれば、この次数mにおいて求められる、複屈折体の複屈折率ΔnおよびリターデーションR=Δn・dの波長分散が最終的に決定される。【0013】 次に、本発明の実施形態に係る複屈折体の複屈折率の波長分散を求める手順について以下に説明する。つまり、複屈折体を偏光軸が互いに直交、もしくは平行な2枚の偏光子の間にはさんで分光透過率を測定し、分光透過率が最大もしくは最小となる波長を得る。 図1は、本発明の第1の実施形態に係る複屈折率を求めるフローチャートである。すなわち、予め別の方法で複屈折体の厚さdが知られているが、複屈折率はどの波長においても求まっていない場合について、複屈折率の波長分散を求める計算の流れを示すフローチャートである。まず、複屈折体の厚さd0と波長データλk(k=1〜N)を入力する(S1)。次に、初期値としてm、σ(Δdk)を設定する(S2)。次に、mをm+1、σ0=σ(Δdk)を設定し(S3)、Rk(k=1〜N)としてリターデーション計算を行う。つまり、Rk=(m−N+k+1/2)・λkの計算を行う(S4)。次に、コーシーの分散式で回帰計算R(λ)=A’+B’/λ2+C’/λ4を計算して係数A’、B’、C’を求める(S5)。次に、複屈折率を計算するためにA=A’/d0、B=B’/d0、C=C’/d0を代入してΔn(λ)=A+B/λ2+C/λ4を計算する(S6)。次に、厚さdk(k=1〜N)をdk=Rk/Δn(λk)、Δdk=dk−d0より求め(S7)、Δdkの標準偏差σ(Δdk)を求める(S8)。その結果σ(Δdk)≦σ0であるか否かを検証し(S9)、NOであればステップS3に戻り、YESであれば結果を出力する(S10)。【0014】 図2は、本発明の第2の実施形態に係る複屈折率を求めるフローチャートである。すなわち、少なくとも一つの波長における複屈折率Δnが既知であり、厚さdが未知の複屈折体の場合について、複屈折率の波長分散を求める計算の流れを示すフローチャートである。まず、波長λ0での既知の複屈折率Δn0と波長データλk(k=1〜N)を入力する(S20)。次に、初期値としてm、σ(Δdk)を設定する(S21)。次に、mをm+1、σ0=σ(Δdk)を設定し(S22)、Rk(k=1〜N)としてリターデーション計算を行う。つまり、Rk=(m−N+k+1/2)・λkの計算を行う(S23)。次に、コーシーの分散式で回帰計算R(λ)=A’+B’/λ2+C’/λ4を計算して係数A’、B’、C’を求める(S24)。次に、厚さd0=R(λ0)/Δn0と複屈折率Δn(λ)=R(λ)/d0を計算する(S25)。次に、厚さdk(k=1〜N)をdk=Rk/Δn(λk)、Δdk=dk−d0より求め(S26)、Δdkの標準偏差σ(Δdk)を求める(S27)。その結果σ(Δdk)≦σ0であるか否かを検証し(S28)、NOであればステップS22に戻り、YESであれば結果を出力する(S29)。 以上においては、リターデーションの波長分散を表すコーシーの分散式(式1)を用いて、3個の未定係数A’、B’、C’をフィッティングで求めるようにしたが、測定データ数が少ない場合などには、(式1)において予めC’=0とおいた式を用いて2個の未定係数A’、B’を求めるようにすることも可能である。 次に、いくつかの具体的な実施例をあげて説明するが、当然のことながら本発明はこれらの実施例だけに限定されるものではない。【0015】【実施例1】 複屈折体として、チッソ石油化学株式会社製のp型液晶RC4057を用いた。一つの波長における液晶の屈折率は、光源としてナトリウムD線(波長589nm)を使用して、アタゴ社製のアッベの屈折計で予め測定し、ne=1.619、no=1.493、複屈折率は、Δn=ne―no=0.126であった。 測定サンプルは、ホモジニアス配向のサンドイッチセルを用いた。そして、JSR社製の配向剤AL3046を厚さが50nmになるようにスピンコートした後、120℃で1時間焼成した膜をラビング処理した透明導電膜付のガラス(厚さ1.1mm、面積30mm×40mm)を、互いにラビング方向が反平行なるように配向膜面を内側にして、所定のセルギャップになるようにガラスの2辺部に配置した約24μm厚のマイラースペーサを介して重ね合わせてサンドイッチセルを作製した。また、ガラスの接着には紫外線硬化型の接着剤を用いて、クリップで固定した状態で紫外線を照射して接着した。尚、後で液晶を注入できるように、重ね合わせたガラスの2辺は接着せずに開けておいた。また、液晶は表面張力を利用してサンドイッチセルに注入し、測定サンプルとした。 液晶注入前に、セル面内のほぼ中央部分のセルギャップを測定したところ、セルギャップは34.9μmであった。セルギャップの測定には、オーク社の顕微分光光度計(TFM−120)を用いて、干渉法で測定した。これはセル内面の反射光の干渉を利用した測定であるので、ガラス表面の反射率が低いために測定ばらつきは±0.5μm程度と比較的大きかった。液晶注入後に、同じ測定装置を用いて注入前と同じ位置を、偏光子の偏光軸が互いに平行になるように2枚の偏光子を配置して分光透過率を測定し、透過率の最小となる波長を得た。得られた波長を用いて、セルギャップd0=34.9μmを既知とし、複屈折率Δnはどの波長においても未知であるとして、フィッティング計算を行った結果の一例を図7に示す。また、干渉の次数mについて得られたセルギャップの標準偏差は、図3にプロットした。標準偏差の最小となる次数m=5が求める次数として決定される。図3から、この次数m=5におけるリターデーションRと複屈折率Δnの波長分散を表すコーシーの分散式における係数を図9に示す。この値を用いて計算した波長589nmにおける複屈折率は、Δn=0.1274であった。また、アッべの屈折計で測定された値との差は、1.1%である。【0016】【実施例2】 測定サンプルと測定データは、すべて実施例1と同じものを用いた。波長589nmにおける複屈折率Δn(589)=0.126を既知とし、セルギャップは未知としてフィッティング計算を行った結果の一例を図8に示す。実施例1と全く同じデータを用いているので、得られたセルギャップの標準偏差もやはり、実施例1と同じであり、求める干渉の次数はm=5である(図3参照)。また、計算されたセルギャップは、d0=35.30μmであった。【実施例3】 厚さが50μmのマイラースペーサを使用した以外は、実施例1と全く同じようにして、サンプルを作製した。今度は、偏光子の偏光軸が互いに直交になるように2枚の偏光子を配置して分光透過率を測定し、透過率の最小となる波長を得た。波長589nmにおける複屈折率Δn(589)=0.126を既知として、フィッティング計算を行った。また、干渉の次数とセルギャップの標準偏差との関係は図5に示した。標準偏差の最小となる次数は、m=12であった。フィッティング計算の結果は、図10、図11に示した。また、計算されたセルギャップは、d0=75.43μmであった。【0017】【比較例】 アッべの屈折計を用いて、実施例1に示した液晶RC4057について、いくつかの波長における複屈折率Δnを直接測定した。光源としてハロゲンランプを用いて、バンドパスフィルターによって4種類の単色光(波長450nm、500nm、550nm、650nm)を得た。また、589nmについては、実施例1で数値を示してある。測定結果を図12に示した。Δnの波長分散のグラフは、実施例2、実施例3で得られたΔnの波長分散とともに、図6にプロットした。この比較例は、実施例2と実施例3より測定精度は低いが、実施例2、実施例3に近い値を示している。実施例2と実施例3のセルギャップは、約2倍の違いがあり、かつ予め正確にはわかっていなかったにもかかわらず、両者は非常によい一致を示している。 以上の出説明した本発明の測定方法のアルゴリズムを、コンピュータが実行可能なソフトウェアとしてプログラム化し、そのプログラムをコンピュータに実行させることにより、簡単に複屈折の波長分散が容易に測定可能になる。また、測定データ量は分光透過率の最大もしくは最小となる数個の波長値だけであるので、データ処理の時間も短くすることができる。 また、本発明の測定方法によるプログラムをCD−ROM等の記録媒体に記録することにより、持ち運びが容易で、そのプログラムのOSを備えたコンピュータであればどれでもプログラムを稼動することができ、汎用性の高いシステムを構築することができる。【0018】【発明の効果】 以上記載のごとく請求項1では、厚さdが既知である複屈折体を、偏光軸が互いに直交、もしくは平行な2枚の偏光子の間にはさんで測定される分光透過率が、最大もしくは最小となる複数の波長データと干渉の次数を仮定して得られる各波長における複屈折体のリターデーションR=Δn・dを、コーシーの分散式R=Δn・d=A’+B’/λ2+C’/λ4でフィッティングして得られた式と前記既知の複屈折率とから計算される仮のΔnの波長分散を用いて各波長において計算される複屈折体の厚さの標準偏差が最小になるように干渉の次数を決定し、最終的に複屈折体の複屈折率Δnおよびリターデーション(R=Δn・d)の波長分散を決定するようにしたので、容易に複屈折率の波長分散が測定可能である。【0019】 また請求項2では、少なくとも一つの波長における複屈折率Δnが既知であり、厚さdが未知の複屈折体を、偏光軸が互いに直交、もしくは平行な2枚の偏光子の間にはさんで測定される分光透過率が、最大もしくは最小となる複数の波長データと干渉の次数を仮定して得られる各波長における複屈折体のリターデーションR=Δn・dを、コーシーの分散式R=Δn・d=A’+B’/λ2+C’/λ4でフィッティングして得られた式と前記既知の複屈折率とから計算される仮のΔnの波長分散を用いて各波長において計算される複屈折体の厚さの標準偏差が最小になるように干渉の次数を決定し、最終的に複屈折体の厚さd、複屈折体の複屈折率ΔnおよびリターデーションR=Δn・dの波長分散を決定するようにしたので、厚さdが未知の複屈折体においても容易に複屈折率の波長分散が測定可能である。 また請求項3では、分光透過率が最大又は最小となる波長データの数は、少なくとも4個以上であるので、コーシーの分散式R=Δn・d=A’+B’/λ2+C’/λ4で確実にフィッティングが可能である。 また請求項4では、流動性がある複屈折体である液晶に適用することで、所定の厚さのサンドイッチセルや、くさび型セルに入れて測定することによって、本発明の効果が発揮される。また、本発明における液晶はネマティック液晶にかぎらず、スメクティック液晶にも適用できる。さらにねじれ角がわかっていれば、干渉の式を変えてやればコレステリック液晶にも同様に適用できる。【0020】 また請求項5では、液晶をホモジニアス配向させることによって、本発明の測定方法を適用しての複屈折率の波長分散の測定を容易にすることができる。 また請求項6では、くさび型のセルを用いることで、測定しやすいセル厚を選択できるために、測定精度がさらに向上することができる。 また請求項7では、電界によってホモジニアス配向からホメオトロピック配向に変化させることができないn型の液晶において、磁界を使用することなく干渉の次数を決定できるので測定が容易にすることができる。 また請求項8では、本発明の測定方法のアルゴリズムをコンピュータが実行可能なソフトウェアとしてプログラム化し、そのプログラムをコンピュータに実行させることにより、簡単に複屈折の波長分散が容易に測定可能になる。また、測定データ量は分光透過率の最大もしくは最小となる数個の波長値だけであるので、データ処理の時間も短くすることができる。 また請求項9では、本発明の測定方法によるプログラムをCD−ROM等の記録媒体に記録することにより、持ち運びが容易で、そのプログラムのOSを備えたコンピュータであればどれでもプログラムを稼動することができ、汎用性の高いシステムを構築することができる。【図面の簡単な説明】【図1】第1の発明における複屈折率を求めるフローチャートである。【図2】第2の発明における複屈折率を求めるフローチャートである。【図3】実施例1、および実施例2における標準偏差を表す図である。【図4】実施例1、および実施例2において求められたΔnの波長分散を表す図である。【図5】実施例3における標準偏差を表す図である。【図6】実施例2、実施例3、および比較例のΔnの波長分散を表す図である。【図7】実施例1の計算例を示す図である。【図8】実施例2の計算例を示す図である。【図9】実施例1、2のコーシーの分散式へのフィッティング結果を示す図である。【図10】実施例3の計算例を示す図である。【図11】実施例3のコーシーの分散式へのフィッティング結果を示す図である。【図12】比較例の複屈折率測定値を示す図である。【符号の説明】S1 データ入力ステップ、S2 初期値設定ステップ、S3 干渉次数の設定ステップ、S4 リターデーション計算ステップ、S5 係数A’、B、C’を求めるステップ、S6 複屈折率を計算するステップ、S7 厚さを計算するステップ、S8 標準偏差を求めるステップ 複屈折体の複屈折率の波長分散の測定方法において、厚さdが既知である複屈折体を、偏光軸が互いに直交又は平行な2枚の偏光子の間に狭持して測定される分光透過率が最大又は最小となる複数の波長データと干渉の次数を仮定して得られる各波長における複屈折体のリターデーションR=Δn・dを、コーシーの分散式R=Δn・d=A’+B’/λ2+C’/λ4でフィッティングして得られた式と、前記既知の厚さとから計算される仮のΔnの波長分散を用いて各波長において計算される複屈折体の厚さの標準偏差が最小になるように干渉の次数を決定し、最終的に複屈折体の複屈折率Δn及びリターデーションR=Δn・dの波長分散を決定することを特徴とする複屈折率の波長分散の測定方法。 複屈折体の複屈折率の波長分散の測定方法において、少なくとも一つの波長における複屈折率Δnが既知であり、厚さdが未知の複屈折体を、偏光軸が互いに直交又は平行な2枚の偏光子の間に狭持して測定される分光透過率が最大又は最小となる複数の波長データと干渉の次数を仮定して得られる各波長における複屈折体のリターデーションR=Δn・dを、コーシーの分散式R=Δn・d=A’+B’/λ2+C’/λ4でフィッティングして得られた式と前記既知の複屈折率とから計算される仮のΔnの波長分散を用いて各波長において計算される複屈折体の厚さの標準偏差が最小となるように干渉の次数を決定し、最終的に前記複屈折体の厚さd、複屈折率Δn及びリターデーションR=Δn・dの波長分散を決定することを特徴とする複屈折率の波長分散の測定方法。 前記分光透過率が最大又は最小となる波長データの数は、少なくとも4個以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複屈折率の波長分散の測定方法。 前記複屈折体が液晶であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の複屈折率の波長分散の測定方法。 前記液晶は、ホモジニアス配向をしていることを特徴とする請求項4に記載の複屈折率の波長分散の測定方法。 前記液晶は、くさび型のセルに狭持されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の複屈折率の波長分散の測定方法。 前記液晶は、n型の液晶であることを特徴とする請求項4乃至6の何れか一項に記載の複屈折率の波長分散の測定方法。 ユーザにより入力された波長データ及び必要データに基づいて、請求項1乃至7の何れか一項に記載の測定方法によるアルゴリズムをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。 請求項8に記載のプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。