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タイトル:特許公報(B2)_O2センサ並びに空燃比制御装置
出願番号:2002039174
年次:2005
IPC分類:7,G01N27/409,F02D41/14,F02D45/00,G01N27/416


特許情報キャッシュ

安井 裕司 岩城 喜久 JP 3706075 特許公報(B2) 20050805 2002039174 20020215 O2センサ並びに空燃比制御装置 本田技研工業株式会社 000005326 佐藤 辰彦 100077805 千葉 剛宏 100077665 安井 裕司 岩城 喜久 20051012 7 G01N27/409 F02D41/14 F02D45/00 G01N27/416 JP G01N27/58 B F02D41/14 310G F02D45/00 312B F02D45/00 368F G01N27/46 381 7 G01N 27/409 F02D 41/14 310 特開平11−324767(JP,A) 特開平01−152358(JP,A) 特開昭56−165743(JP,A) 実開昭61−189259(JP,U) 7 2003240749 20030827 13 20021126 黒田 浩一 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関の排気系に備えるO2センサ及び空燃比制御装置に関する。【0002】【従来の技術】内燃機関の排気系(排気通路)に備えた三元触媒等の触媒装置による排ガスの所要の浄化性能を確保するために、触媒装置の下流側にO2センサを配置し、このO2センサの出力電圧をあらかじめ定めた所定の目標値(一定値)に維持するように内燃機関から触媒装置に供給される排ガスの空燃比(排ガス中の酸素濃度が表す空燃比)を制御する技術が本願出願人により提案されている(特開平11−324767号公報等)。【0003】この技術は、内燃機関から触媒装置に供給される排ガスの空燃比を、触媒装置下流のO2センサの出力電圧がある所定の一定値に整定するような空燃比状態に制御したとき、触媒装置によるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、NOx(窒素酸化物)等の浄化率が、該触媒装置の劣化状態等によらずに良好な状態(浄化率がほぼ最大となる状態)に確保されるという現象に着目してなされたものである。【0004】【発明が解決しようとする課題】ところで、本願発明者等のさらなる検討によって、次のようなことが判明した。すなわち、内燃機関の排気系レイアウトや排ガスの温度状態等、O2センサの素子部(排ガスに接触する感応部)の温度に影響を及ぼす要因によってO2センサの素子部の温度が変化すると、O2センサの出力特性が変化する。そして、その出力特性の変化が、触媒装置下流のO2センサの出力電圧を所定の目標値に維持するための空燃比制御の制御性(制御の速応性や安定性)に影響を及ぼすことがある。これは、O2センサの出力特性の変化によって、上記目標値近傍におけるO2センサの出力電圧の空燃比変化に対する感度が変化してしまうからである。また、O2センサの出力特性の変化によって、触媒装置の浄化性能が良好となるような触媒装置下流のO2センサの出力電圧の値、すなわち、触媒装置の良好な浄化性能を確保するために目標値とすべきO2センサの出力電圧の値も変化する。【0005】このため、O2センサの素子部の温度状態、あるいはそれに影響を及ぼす内燃機関の運転条件もしくは環境条件によっては、O2センサの出力電圧を目標値に維持するための空燃比制御の制御性が低下する虞れがある。また、内燃機関の運転中に排ガスの温度状態等、O2センサの温度状態に影響を及ぼす要因の変動が生じ易い場合には、該O2センサの出力電圧を一定の目標値に制御しても、触媒装置の浄化性能を良好に確保することが困難となる虞れがある。【0006】本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、触媒装置の所要の浄化性能を確保する上で的確な出力特性を有するO2センサを提供することを目的とする。【0007】また、O2センサの出力特性を安定化し、触媒装置の所要の浄化性能を確実に確保することができる空燃比制御装置を提供することを目的とする。【0008】【課題を解決するための手段】まず、本発明を説明する前に、O2センサの出力特性について説明しておく。内燃機関の排気通路に配置したO2センサは、その素子部(感応部)が接触する排ガス中の酸素濃度に応じた出力電圧を発生するものであり、その素子部は通常、鉛や銀、白金等を含有する、又はそれらがコーティングされた材質(例えばジルコニア(ZrO2+Y2O3))により構成されている。このようなO2センサの出力特性(詳しくは、素子部が感応する酸素濃度が表す排ガスの空燃比に対するO2センサの出力電圧の特性)は、一般にZカーブといわれる特性を有している。【0009】 さらに詳細には、O2センサの出力特性は、例えば図3の実線のグラフaで示すように、排ガスの空燃比の変化に対して出力電圧が比較的大きな傾きでほぼリニアに変化する部分e1(以下、大傾斜部分e1という)と、空燃比の変化に対する出力電圧の変化の傾きが大傾斜部分e1よりも小さい部分e2,e3(以下、小傾斜部分e2,e3という)とを有する。これらの小傾斜部分e2,e3は大傾斜部分e1の両側、すなわち、大傾斜部分e1に対応する空燃比の範囲Δよりもリッチ側の領域とリーン側の領域とにそれぞれ存している。この場合、大傾斜部分e1に対応する空燃比の範囲Δは理論空燃比近傍の狭い範囲である。また、各小傾斜部分e2,e3の傾きは、大傾斜部分e1の傾きに比して格段に小さく、各小傾斜部分e2,e3と大傾斜部分e1との境界部分e4,e5は、それぞれ、その前後で傾きが大きく切替る切替り部e4,e5となっている。このような出力特性がO2センサの一般的な出力特性である。尚、上記出力特性における排ガスの空燃比、すなわちO2センサの素子部が感応する酸素濃度が表す空燃比は、該酸素濃度が低い程、リッチ寄りの空燃比(空気に対する燃料の割合がより多くなる空燃比)となり、該酸素濃度が高い程、リーン寄りの空燃比(空気に対する燃料の割合がより少なくなる空燃比)となる。【0010】 そして、本願発明者等の知見によれば、上記のような出力特性をもつO2センサの出力電圧をある一定の目標値に維持させるように触媒装置に供給する排ガスの空燃比を制御する場合、その目標値は、前記切替り部e4,e5のうち、空燃比のリッチ側に存する変曲点部e4における出力電圧とほぼ同等のレベルであること(詳しくは、目標値が切替り部e4における出力電圧の範囲内に存すること)が上記空燃比制御の制御性を高める上で好適である。【0011】 これは、次の理由による。すなわち、切替り部e4では、空燃比に対するO2センサの出力電圧の傾き(平均的な傾き)が、大傾斜部分e1の大きな傾きと小傾斜部分e2の小さな傾きとの中間的な傾きになるため、その傾きが大き過ぎたり、小さ過ぎたりすることがなく適度な傾きになる。換言すれば、切替り部e4では、空燃比の変化に対する出力電圧の変化(感度)が過大となることも過小となることもない。また、切替り部e4に連なる小傾斜部分e2は、ある程度の傾き(≠0)を有しており、空燃比の変化に対して出力電圧がある程度の感度を有する。さらに、一般に、空燃比がリーン側に変化したとき、排ガス中のNOxが増加しやすいので、空燃比を迅速にリッチ側に戻すことが望ましい。このため、特に空燃比のリーン側への変化に対しては、O2センサの出力電圧が感度よく変化することが望ましい。このようなことから、前記目標値は、切替り部e4における出力電圧とほぼ同等のレベルであること、換言すれば、切替り部e4の出力電圧の範囲が前記目標値の近傍に存することが好適である。【0012】 一方、本願発明者等の知見によれば、O2センサの出力特性は、素子部の温度によって変化する。この様子を前記図3に例示する。図3の実線のグラフa、破線のグラフb、一点鎖線のグラフc、二点鎖線のグラフdは、それぞれO2センサの素子部の温度が800℃、750℃、700℃、600℃である場合のO2センサの出力特性を示すグラフである。尚、図3では、O2センサの一般的な出力特性を前述の通り説明するために、代表的に実線のグラフaに対して、前記大傾斜部分e1、小傾斜部分e2,e3、切替り部e4,e5にそれぞれ参照符号e1〜e5を付している。但し、以下の説明では、O2センサの出力特性を表す他のグラフについても、便宜上、その大傾斜部分、小傾斜部分、切替り部(これらの意味は実線のグラフaの場合と同様である)に、実線aのグラフと同じ参照符号を用いる。この場合、参照符号e2を付する小傾斜部分は、空燃比のリッチ側の小傾斜部分、参照符号e3を付する小傾斜部分は、空燃比のリーン側の小傾斜部分を意味する。また、参照符号e4を付する切替り部は、大傾斜部分e1とリッチ側の小傾斜部分e2との間の切替り部、参照符号e5を付する切替り部は、大傾斜部分e1とリーン側の小傾斜部分e3との間の切替り部を意味する。【0013】 同図3に示されるように、O2センサの素子部の温度は、O2センサの出力特性のうち、特に前記大傾斜部分e1の傾きと、前記小傾斜部分e2,e3のうちのリッチ側の空燃比に対応する小傾斜部分e2の出力電圧のレベルとに影響を及ぼす。すなわち、小傾斜部分e2の出力電圧のレベルは、基本的には、素子部の温度が高い程、低下する(これに伴い、切替り部e4の出力電圧のレベルも低下する)。より一般的に言えば、小傾斜部分e2の出力電圧のレベルは、素子部の温度が高い程、他方の小傾斜部分e3の出力電圧により近づく方向に変化する。また、大傾斜部分e1の傾きは、基本的には、素子部の温度が低い程、より緩やかな傾きになる。尚、素子部の温度が750℃である場合のグラフbと素子部の温度が800℃である場合のグラフaとを比較して判るように、O2センサの素子部の温度が750℃以上になると、O2センサの出力特性はほぼ一定になる(素子部の温度変化に対する出力特性の変化が微小になる)。【0014】 さらに、本願発明者等の知見によれば、上記のような出力特性をもつO2センサを触媒装置(例えば三元触媒)の下流側に配置し、O2センサの出力電圧を一定値に維持するように触媒装置に供給する排ガスの空燃比を制御した場合、該触媒装置による排ガス中のCO、HC、NOxの浄化率は、図4に実線グラフのグループあるいは破線グラフのグループで例示するように、O2センサの出力電圧の値との間に相関性を有する。ここで、図4の実線グラフのグループは、O2センサの素子部の温度が800℃である場合におけるCO、HC、NOxのそれぞれの浄化率とO2センサの出力電圧との関係を示し、破線グラフのグループは、O2センサの素子部の温度が650℃である場合におけるCO、HC、NOxのそれぞれの浄化率とO2センサの出力電圧との関係を示している。【0015】同図示のように、触媒装置によるCO、HC、NOxの浄化率がいずれもが良好となるようなO2センサの出力電圧Vop(以下、浄化適正出力電圧Vopということがある)は、O2センサの素子部の温度によって異なるものとなる。これは、前述のようにO2センサの素子部の温度によって、該O2センサの出力特性が変化するからである。例えば、O2センサの素子部の温度が650℃である場合には、O2センサの浄化適正出力電圧Vop(650℃)は、概ね0.67[V]程度であるが、O2センサの素子部の温度が800℃である場合には、O2センサの浄化適正出力電圧Vop(800℃)は、概ね0.59[V]程度である。【0016】 そして、特に注目すべきは、O2センサの素子部の温度が例えば800℃である場合におけるO2センサの浄化適正出力電圧Vop(800℃)は、前記図3に併記したように、800℃におけるO2センサの出力特性(グラフa)における切替り部e4の出力電圧とほぼ同等になることである。尚、O2センサの出力特性は、前述のように素子部の温度が750℃以上になるとほぼ一定になるので、O2センサの素子部の温度が例えば750℃である場合における浄化適正出力電圧Vop(750℃)(図示省略)は、800℃における浄化適正出力電圧Vop(800℃)とほぼ同一である。従って、750℃における浄化適正出力電圧Vop(750℃)は、図3のグラフbの切替り部e4の出力電圧とほぼ同等になる。【0017】 以上説明したことから、次のことが判る。(1)O2センサの出力電圧をある目標値に維持するように排ガスの空燃比を制御する場合、その目標値とO2センサの出力特性における切替り部e4の出力電圧とがほぼ同等のレベルになることが好適である。(2)O2センサの出力特性(特に、小傾斜部分e2や切替り部e4の出力電圧のレベル)は、その素子部の温度を制御することで調整し、あるいは、一定に維持することができる。(3)触媒装置の下流側に配置したO2センサの素子部の温度を750℃以上の温度に制御したとき、O2センサの浄化適正出力電圧Vopと、O2センサの出力特性における切替り部e4の出力電圧とがほぼ同等のレベルになる。【0018】 尚、上記(2)に関し、O2センサの出力特性における小傾斜部分e2や切替り部e4の出力電圧のレベルは、例えば素子部の鉛や銀等の素材の含有量を調整することにより変化させることも可能である。【0019】 以上説明したことを基礎として、以下に本発明を説明する。本発明のO2センサは、前記の目的を達成するために、内燃機関の排気通路に設けた触媒装置の下流側に、排ガス中の酸素濃度に応じたレベルの出力電圧を発生すると共に該酸素濃度が表す排ガスの空燃比に対する出力電圧の変化の傾きが該空燃比のリッチ側への変化に伴い大きい傾きから小さい傾きに切替る切替り部を有するO2センサを配置し、前記触媒装置の所要の浄化性能を確保するために該O2センサの出力電圧を所定の目標値に維持するように前記内燃機関から触媒装置に供給する排ガスの空燃比を制御するシステムに用いるO2センサにおいて、前記切替り部における出力電圧が前記目標値と略同一になるような出力特性をもたせたことを特徴とするものである。尚、かかる本発明における「切替り部」は、図3に示した切替り部e4に相当するものである。そこで、説明の便宜上、以下の本発明の説明においても「切替り部」に参照符号e4を付する。【0020】 かかる本発明によれば、O2センサの出力電圧の目標値と、O2センサの出力特性のうちの前記切替り部e4における出力電圧とが略同一であるので、該目標値が切替り部に存することとなる。このため、前述したように、O2センサの出力電圧を目標値に維持するような排ガスの空燃比制御の制御性を高めることができる。このため、触媒装置に内燃機関から供給される排ガスの空燃比状態を、O2センサの出力電圧が目標値に維持されるような空燃比状態に安定して制御することができる。この結果、触媒装置の所要の浄化性能を安定して確保することができる。また、外乱等により、O2センサの出力電圧が前記切替り部e4よりも空燃比のリーン側に変化すると、O2センサの出力電圧が前記大傾斜部分に移るので、前記目標値との偏差が大きくなる。その結果、速やかに排ガスの空燃比を前記目標値に対応する空燃比側に戻すことができる。このため、特に排ガス中のNOxが増加するような事態を迅速に回避することができる。【0021】従って、本発明のO2センサによれば、触媒装置の所要の浄化性能を確保する上で的確な出力特性を有するO2センサを提供できる。尚、排ガスの空燃比の制御は、内燃機関の燃料供給量を調整することで行うことができる。【0022】かかる本発明では、O2センサの前記のような出力特性は、素子部を構成する素材の含有量の調整等により実現することも可能であるが、該出力特性は、O2センサの素子部の温度が所定温度に維持されるように該素子部の温度を制御することにより実現されていることが好適である。そして、この場合、特に、前記所定温度は、少なくとも750℃以上の温度であることが好適である。【0023】これによれば、O2センサの素子部の温度を所定温度に維持するので、内燃機関の排ガスの温度状態が変動するような場合であっても、O2センサの出力特性を前記目標値と整合した特性に安定化することができる。この結果、排ガスの空燃比制御の安定性をさらに確実に確保することができ、ひいては、触媒装置による排ガスの浄化性能もより安定化することができる。【0024】 特に、前記所定温度を750℃以上にしたときには、制御されるO2センサの素子部の温度が多少のばらつきを生じても、O2センサの出力特性の安定性が高まると共に、前記目標値と、排ガスの空燃比変化に対する前記切替り部e4の平均的な傾きとの整合性を良好なものにすることができる。換言すれば、前記目標値の近傍(=切替り部e4)におけるO2センサの出力電圧の空燃比変化に対する感度を過不足の無い良好なものにすることができる。この結果、空燃比制御の制御性を効果的に高めることができる。さらに、O2センサの素子部の温度を750℃以上の温度に制御したときには、前述のように触媒装置によるCO、HC、NOxの浄化率のいずれもが良好となるようなO2センサの適正浄化出力電圧Vopが切替り部e4に存するようにすることができる。このため、この適正浄化出力電圧Vopを前記目標値とすることで、空燃比制御の制御性の向上と相まって、触媒装置の浄化性能を安定且つ効果的に向上させることができる。【0025】尚、O2センサの素子部の温度制御は、例えば、該素子部の近傍でO2センサに設けた電熱ヒータの通電制御により行うことが可能である。この場合、O2センサの素子部の温度制御を行うために、該素子部の温度を把握する必要があるが、その素子部の温度は、該素子部の近傍でO2センサに設けた温度センサにより直接的に検出してもよく、あるいは、適当なモデルに基づいて推定するようにしてもよい。【0026】 次に、本発明の空燃比制御装置は、前記の目的を達成するために、内燃機関の排気通路に設けた触媒装置の下流側に、排ガス中の酸素濃度に応じたレベルの出力電圧を発生すると共に該酸素濃度が表す排ガスの空燃比に対する出力電圧の変化の傾きが該空燃比のリッチ側への変化に伴い大きい傾きから小さい傾きに切替る切替り部を有するO2センサを配置し、前記触媒装置の所要の浄化性能を確保するために該O2センサの出力電圧を所定の目標値に維持するように前記内燃機関から触媒装置に供給される排ガスの空燃比を制御する空燃比制御装置において、前記O2センサの素子部の温度が所定温度に維持されるように該素子部の温度を制御するセンサ温度制御手段を備え、前記所定温度は、その温度に前記O2センサの素子部の温度を維持したとき、前記切替り部における出力電圧が前記目標値と略同一になるように定められた温度であることを特徴とするものである。【0027】 かかる本発明によれば、O2センサの素子部の温度が所定温度に維持されるので、該O2センサの出力特性を一定に維持することができる。このため、内燃機関の排ガスの温度状態が変動するような場合であっても、O2センサの出力特性の安定性を確保できる。この結果、O2センサの出力電圧を所定の目標値に維持するような排ガスの空燃比制御によって、触媒装置の所要の浄化性能を安定に確保することができる。また、O2センサの素子部の温度制御によって、O2センサの出力電圧の目標値と前記切替り部e4における出力電圧とが略同一となり、該目標値が切替り部e4に存することとなる。このため、本発明のO2センサに関して説明したように、O2センサの出力電圧を目標値に維持するような排ガスの空燃比制御の制御性を高めることができる。従って、触媒装置に内燃機関から供給される排ガスの空燃比状態を、O2センサの出力電圧が目標値に維持されるような空燃比状態に安定して制御することができる。この結果、触媒装置の浄化性能を効果的に安定して確保することができる。また、外乱等により、O2センサの出力電圧が前記切替り部e4よりも空燃比のリーン側に変化しても、速やかに排ガスの空燃比を前記目標値に対応する空燃比側に戻すことができる。このため、特に排ガス中のNOxが増加するような事態を迅速に回避することができる。【0028】 かかる本発明では、前記所定温度は、少なくとも750℃以上の温度であることが好ましい。これによれば、制御されるO2センサの素子部の温度が多少のばらつきを生じても、O2センサの出力特性の安定性が高まる。この結果、触媒装置の浄化性能の安定性を高めることができる。また、O2センサは、排ガス中の酸素濃度が表す該排ガスの空燃比に対する出力電圧の変化の傾きが該空燃比のリッチ側への変化に伴い大きい傾きから小さい傾きに切替る切替り部e4を有するセンサである。そして、このようなO2センサの素子部の温度を750℃以上の温度に制御したとき、前述のように触媒装置によるCO、HC、NOxの浄化率のいずれもが良好となるようなO2センサの適正浄化出力電圧Vopが切替り部e4に存するようにすることができる。このため、この適正浄化出力電圧Vopを前記目標値とすることで、空燃比制御の制御性の向上と相まって、触媒装置の浄化性能を安定且つ効果的に向上させることができる。【0031】また、本発明の空燃比制御装置では、前記センサ温度制御手段は、前記内燃機関の始動後、所定時間が経過するまでは、前記所定温度よりも低い温度(例えば約600℃)になるように前記O2センサの温度を制御することが好ましい。【0032】これによれば、内燃機関の始動直後に、O2センサの素子部に排ガス中の水分が付着していても、該素子部の急減な加熱を避け、該素子部が熱応力等により破損してしまうような事態を回避することができる。【0033】また、本発明において、前記センサ温度制御手段が、前記O2センサの素子部の温度を電熱ヒータを介して制御するものである場合には、該電熱ヒータの温度が所定の上限温度(例えば930℃)を越えたときには該電熱ヒータへの通電を遮断することが好ましい。【0034】これによれば、電熱ヒータが断線したり、該電熱ヒータを内蔵するO2センサの素子部が過熱により損傷を受けるような事態を回避できる。【0035】【発明の実施の形態】本発明の第1実施形態を図1及び図2並びに、前記図3及び図4を参照して説明する。図1は、本実施形態の空燃比制御装置の全体構成を模式的に示すブロック図である。同図中、1は例えば自動車やハイブリッド車に搭載されるエンジン(内燃機関)であり、このエンジン1が燃料及び空気の混合気を燃焼させて生成する排ガスは、該エンジン1の排気ポート2から導出された排気管3(排気通路)を介して大気側に排出される。排気管3には、排ガスを浄化するための触媒装置4,5が上流側から順次介装されている。各触媒装置4,5は例えば三元触媒6を内蔵するものである。尚、触媒装置4,5は一体構造のもの(例えば三元触媒からなる触媒床を上流部と下流部とに内蔵したもの)であってもよい。【0036】本実施形態では、特に上流側の触媒装置4の良好な浄化性能(触媒装置によるCO、HC、NOxの浄化性能)を確保するようにエンジン1の排ガスの空燃比を制御する。そして、この空燃比制御を行うために、触媒装置4の下流側(触媒装置5の上流側)にはO2センサ7が設けられ、触媒装置4の上流側には、広域空燃比センサ8が設けられている。ここで、O2センサ7は、より詳しい構成は後述するが、その素子部(感応部)が接触する排ガス(触媒装置4を通過した排ガス)の空燃比に対して前記図3に示したような特性で出力電圧Voutを発生するO2センサである。また、広域空燃比センサ8は、その素子部(感応部)が接触する排ガス(触媒装置4に進入する排ガス)の空燃比に比例した出力電圧を発生するセンサである。この広域空燃比センサ8は、例えば特開平4−369471号公報にて本願出願人が開示した空燃比センサであり、O2センサ7よりも広い空燃比域において、排ガスの空燃比に比例した出力電圧KACTを発生するものである(以下、広域空燃比センサをLAFセンサと称する)。【0037】前記O2センサ7についてさらに説明する。O2センサ7は、図2に示すような構造のものであり、酸素イオンを通しやすい固体電解質、例えば安定ジルコニア(ZrO2+Y2O3)を主材質とする有底筒形状の素子部9を備え、この素子部9の外面及び内面には、それぞれ、多孔質の白金電極10,11がコーティングされている。また、この素子部9の内部には、該素子部9の昇温活性化や温度制御等を行うために電熱ヒータとしての棒状のセラミックヒータ12が挿入されると共に、セラミックヒータ12の周囲の空間には一定酸素濃度(一定の酸素分圧)の空気が充填されている。そして、このO2センサ7は、その素子部9の先端部の外面が排気管3内の排ガスに接触するようにセンサ筐体13を介して排気管3に装着される。尚、図2中、14は、排気管3内の素子部9に異物等が当たらないようにするための筒状のプロテクタであり、排気管3内の素子部9は、プロテクタ14に穿設されている複数の孔(図示省略)を介して排ガスに接触するようになっている。【0038】かかる構造のO2センサ7では、素子部9の先端部外面に接触する排ガスの酸素濃度と素子部9の内部の空気の酸素濃度との差によって、前記白金電極10,11間に排ガスの酸素濃度に応じた起電力が生じ、それが図示しない増幅器を介して出力電圧Voutとして外部に取り出される。【0039】尚、本実施形態では、素子部9とセラミックヒータ12とには、それぞれの温度を検出するために、熱電対で構成された温度センサ15,16が装着されている。これらの温度センサ15,16は、それぞれ素子部9の温度に応じた出力電圧TO2、セラミックヒータ12の温度に応じた出力電圧Thtを図示しない増幅器を介して出力する。【0040】本実施形態の装置は、さらに、図1に示すように、マイクロコンピュータを用いて構成されたコントロールユニット17を備え、このコントロールユニット17に、前記LAFセンサ8の出力電圧KACTや、O2センサ7の出力電圧Vout、温度センサ15,16の出力電圧TO2,Thtが入力される。そして、コントロールユニット17は、その機能的手段として、空燃比制御手段18と、センサ温度制御手段18とを備えている。ここで、空燃比制御手段18は、LAFセンサ8の出力電圧K ACT及びO2センサ7の出力電圧Voutを用いて、O2センサ7の出力電圧Voutをあらかじめ定めた所定の目標値Vop(一定値)に整定・維持するように排ガスの空燃比を制御するものである。【0041】より詳しくは、この空燃比制御手段18は、例えば本願出願人が特開平11−324767号公報にて公開した明細書の[0071]〜[0362]に記載したように空燃比制御を行うものであり、その概要を簡略的に説明すれば次の通りである。すなわち、空燃比制御手段18は、エンジン1の排気系のうち、LAFセンサ8からO2センサにかけての触媒装置4を含む排気系Eを、LAFセンサ8の出力電圧KACTを入力、O2センサ7の出力電圧Voutを出力とする制御対象とし、この排気系Eの出力であるO2センサ7の出力電圧Voutを前記目標値Vopに収束させるために要する該排気系Eの目標入力としての目標空燃比(LAFセンサ8が検出する排ガスの空燃比の目標値)を適応スライディングモード制御の処理により逐次求める。そして、空燃比制御手段18は、この目標空燃比にLAFセンサ8が検出する排ガスの空燃比を収束させるように適応制御の処理あるいはPID制御の処理により、エンジン1の燃料供給量(ひいてはエンジン1で燃焼させる混合気の空燃比)を調整するための燃料指令を生成し、その燃料指令に応じてエンジン1の燃料供給量を調整する。【0042】この場合、空燃比制御手段18は、前記目標空燃比の算出処理においては、LAFセンサ8の出力電圧KACT(排気系Eの入力)とO2センサ7の出力電圧Vout(排気系Eの出力)との間に存する無駄時間、並びに、目標空燃比とLAFセンサ8が検出する排ガスの空燃比との間に存する無駄時間の影響を補償するために、それらの無駄時間を合わせた合計無駄時間後のO2センサ7の出力電圧Voutの推定値を逐次求める。そして、空燃比制御手段18は、この推定値を目標値Vopに収束させる(結果的にO2センサ7の出力電圧Voutを目標値Vopに収束させる)ように適応スライディングモードの制御処理により、前記目標空燃比を算出する。さらに、排気系Eの動的な特性変化等の影響を補償するために、空燃比制御手段18は、適応スライディングモード制御の処理や合計無駄時間後のO2センサ7の出力電圧Voutの推定値の算出処理に用いる排気系Eのモデルのパラメータを逐次同定する。【0043】尚、本実施形態では、O2センサ7の出力電圧Voutの目標値Vopは、例えば該O2センサ7の素子部9の温度が800℃である場合に、触媒装置4によるCO、HC、NOxの浄化率がいずれも良好となるような値、すなわち、前記図4に示したVop(800℃)である。【0044】前記センサ温度制御手段19は、基本的には、O2センサ7の温度センサ16の出力電圧TO2が表す素子部9の温度が、本実施形態におけるO2センサ7の出力電圧Voutの目標値Vopに対応する素子部9の温度800℃になるように、前記セラミックヒータ12の通電制御を行うものである。この場合、セラミックヒータ12は、パルス電圧により通電制御されるものであり、センサ温度制御手段19は、そのパルス電圧のデューティDUTを調整することにより、セラミックヒータ12への供給電力、ひいては、該ヒータ12の発熱量を調整するようにしている。そして、センサ温度制御手段19は、O2センサ7の温度センサ16の出力電圧TO2が表す素子部9の温度がその目標値としての800℃に収束するように、フィードバック制御処理(例えばPID制御処理)により、前記パルス電圧のデューティDUTを逐次決定し、そのデューティDUTのパルス電圧でセラミックヒータ12に通電する。【0045】次に、本実施形態の装置の全体的な作動を説明する。コントロールユニット17は、エンジン1の運転中(但し、LAFセンサ8やO2センサ7の活性化後)に、空燃比制御手段18により、前述のようにO2センサ7の出力電圧Voutを目標値Vop(800℃)に維持するように排ガスの空燃比を制御する。また、これと並行して、コントロールユニット17は、センサ温度制御手段19により、前述のように、温度センサ16の出力電圧TO2が表すO2センサ7の素子部9の温度がその目標値としての800℃に収束するようにセラミックヒータ12に通電する。【0046】 このとき、セラミックヒータ12への上記の通電制御により、O2センサ7の素子部9の温度が800℃に保持される。このため、O2センサ7の出力特性は、前記図3に実線のグラフaの特性に維持され、O2センサ7の出力電圧Voutの目標値Vop(800℃)が定常的に前記切替り部e4に存することとなる。従って、この目標値Vop(800℃)近傍での排ガスの空燃比の変化に対するO2センサ7の出力電圧Voutの変化(感度)が過大であったり過小であったりすることなく、適度なものとなる。このため、O2センサ7の出力電圧Voutを安定且つ高精度に目標値Vop(800℃)に維持し得るように空燃比制御手段18により排ガスの空燃比を制御することができる。この結果、触媒装置4の浄化性能を確実且つ安定に良好な状態に維持することができる。【0047】また、特に、O2センサ7の出力電圧Voutが目標値Vop(800℃)の近傍に維持されている状態で、排ガスの空燃比がリーン側に変化した場合には、一般にNOxが増加しやすい。しかし、このように排ガスの空燃比がリーン側に変化した場合には、出力電圧VoutがO2センサ7の出力特性の大傾斜部分e1(図3参照)に近づいて、該出力電圧Voutの変化が大きくなるため、速やかに出力電圧Voutを目標値Vop(800℃)側に戻すように排ガスの空燃比が空燃比制御手段18により制御される。このため、NOxの増加を迅速に抑制することができる。【0048】また、本実施形態では、センサ温度制御手段19は、上述のようなセラミックヒータ12の通電制御に加えて、次のような制御も行う。すなわち、エンジン1の冷間始動時のように、排気官やO2センサ7が冷えている状態で、O2センサ7を急激に加熱すると、O2センサの素子部9に付着している排ガス中の水分等の影響で、該素子部9が熱応力等により破損してしまう虞れがある。そこで、本実施形態では、センサ温度制御手段19は、エンジン1の始動後、所定時間が経過するまで(O2センサ7の素子部9が、これに付着している水分が蒸発するような温度に上昇するよう時間が経過するまで)は、素子部9の温度の目標値を800℃よりも低い温度、例えば600℃として、セラミックヒータ12への通電制御を行う。これにより、エンジン1の始動後、O2センサ7素子部9が急激に加熱されるような事態が回避され、該素子部9の破損を防止できる。尚、この場合の素子部9の温度の目標値は、素子部9の破損を防止しつつ、該素子部9を迅速に活性化する上で、約600℃程度が好適である。【0049】また、セラミックヒータ12の温度が過剰に高温になると、該セラミックヒータ12の断線が生じる虞れがある。そこで、本実施形態では、センサ温度制御手段19は、前記温度センサ15の出力電圧Thtが表すセラミックヒータ12の温度が所定の上限温度(例えば930℃)まで上昇したときには、該セラミックヒータ12への通電を遮断する。これにより、セラミックヒータ12の断線を防止することができる。【0050】次に、本発明の第2実施形態を説明する。前記第1実施形態では、O2センサ7の素子部9の温度を温度センサ16により検出するようにしたが、本実施形態は、素子部9の温度を推定するものである。【0051】この場合、素子部9の温度の推定値TO2_hatは、定常的には、エンジン1の排気ポート2から排気官3に導入される排ガスの温度に一次遅れを伴ってほぼ一致するものとし、例えば次式(1)により逐次算出される。【0052】【0053】ここで、式(1)中の「k」はセンサ温度制御手段19の制御周期の番数を示し、Texg_MAP(NE(k),PB(k))は、エンジン1の排ガスの温度として、エンジン1の回転数NEと吸気圧(吸気管内の絶対圧)PBとからあらかじめ設定されたマップにより求められる温度である。また、「Ktex」はあらかじめ定められた定数である。また、この場合、素子部9の温度の推定値TO2_hatの初期値は、例えば、エンジン1の始動時の機関温度からデータテーブル等を用いて求められる。【0054】そして、センサ温度制御手段19は、その制御周期毎に上式(1)により求められる素子部9の温度の推定値TO2_hat(k)を目標値800℃(但し、エンジン1の運転開始後の所定時間は600℃)に収束させるように、前記セラミックヒータ12へのパルス電圧のデューティDUTを逐次決定し、その決定したDUTに応じてセラミックヒータ12の通電制御を行う。つまり、本実施形態は、前記第1実施形態でセラミックヒータ12の通電制御のために用いた温度センサ16の出力電圧TO2(素子部9の温度の検出値)の代わりに、推定値TO2_hatを用いたものである。【0055】このような本実施形態においても前記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。そして、この場合、素子部9の温度を検出する温度センサ16を省略できるため、経費を削減できる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の第1実施形態の装置の全体構成を示すブロック図。【図2】図1の装置に備えたO2センサの要部の構成を示す模式図。【図3】O2センサの出力特性を示す線図。【図4】触媒装置の下流のO2センサの出力電圧と触媒装置による排ガスの浄化率との関係を示す線図。【符号の説明】1…エンジン(内燃機関)、3…排気管(排気通路)、4…触媒装置、7…O2センサ、18…空燃比制御手段、19…センサ温度制御手段。 内燃機関の排気通路に設けた触媒装置の下流側に、排ガス中の酸素濃度に応じたレベルの出力電圧を発生すると共に該酸素濃度が表す排ガスの空燃比に対する出力電圧の変化の傾きが該空燃比のリッチ側への変化に伴い大きい傾きから小さい傾きに切替る切替り部を有するO2センサを配置し、前記触媒装置の所要の浄化性能を確保するために該O2センサの出力電圧を所定の目標値に維持するように前記内燃機関から触媒装置に供給する排ガスの空燃比を制御するシステムに用いるO2センサにおいて、 前記切替り部における出力電圧が前記目標値と略同一になるような出力特性をもたせたことを特徴とするO2センサ。 前記出力特性は、O2センサの素子部の温度が所定温度に維持されるように該素子部の温度を制御することにより実現されていることを特徴とする請求項1記載のO2センサ。 前記所定温度は、少なくとも750℃以上の温度であることを特徴とする請求項2記載のO2センサ。 内燃機関の排気通路に設けた触媒装置の下流側に、排ガス中の酸素濃度に応じたレベルの出力電圧を発生すると共に該酸素濃度が表す排ガスの空燃比に対する出力電圧の変化の傾きが該空燃比のリッチ側への変化に伴い大きい傾きから小さい傾きに切替る切替り部を有するO2センサを配置し、前記触媒装置の所要の浄化性能を確保するために該O2センサの出力電圧を所定の目標値に維持するように前記内燃機関から触媒装置に供給される排ガスの空燃比を制御する空燃比制御装置において、 前記O2センサの素子部の温度が所定温度に維持されるように該素子部の温度を制御するセンサ温度制御手段を備え、前記所定温度は、その温度に前記O2センサの素子部の温度を維持したとき、前記切替り部における出力電圧が前記目標値と略同一になるように定められた温度であることを特徴とする空燃比制御装置。 前記所定温度は、少なくとも750℃以上の温度であることを特徴とする請求項4記載の空燃比制御装置。 前記センサ温度制御手段は、前記内燃機関の始動後、所定時間が経過するまでは、前記所定温度よりも低い温度になるように前記O2センサの温度を制御することを特徴とする請求項4または5記載の空燃比制御装置。 前記センサ温度制御手段は、前記O2センサの素子部の温度を電熱ヒータを介して制御するものであり、該電熱ヒータの温度が所定の上限温度を越えたときには該電熱ヒータへの通電を遮断することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の空燃比制御装置。


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