タイトル: | 特許公報(B2)_二枚貝類由来のセルラーゼ及びその製造方法 |
出願番号: | 2002015116 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C12N 9/42 |
尾島 孝男 西田 清義 JP 4050060 特許公報(B2) 20071207 2002015116 20020124 二枚貝類由来のセルラーゼ及びその製造方法 北海道ティー・エル・オー株式会社 800000024 矢野 裕也 100086221 尾島 孝男 西田 清義 20080220 C12N 9/42 20060101AFI20080131BHJP JPC12N9/42 C12N 9/14-9/46 BIOSIS/WPI(DIALOG) GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq SwissProt/PIR/Geneseq JSTPlus(JDream2) ロシア国特許出願公開第01097674(RU,A) Aquat. Living Resour., 1991, Vol.4, No.3, p.191-202 Eur. J. Biochem., 2000, Vol.267, p.4970-7 Appl. Environ. Microbiol., 1991, Vol.57, No.2, p.359-65 3 2003210165 20030729 16 20050118 松田 芳子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、二枚貝類に由来する新規なセルラーゼ及び当該セルラーゼを製造する方法に関する。【0002】【従来の技術】セルラーゼとは、セルロースを低分子化セルロース、セロオリゴ糖、ブドウ糖(β−D−グルコース)にまで分解する酵素の総称であり、セロオリゴ糖などの機能性オリゴ糖の生産のほか、食品、飼料、工業材料の生産、ひいてはセルロースのバイオマスエネルギー化等に有用な酵素である。このような広い用途を有するセルラーゼが工業的に利用されている主要なものは、現状では糸状菌由来のセルラーゼである。【0003】ホタテガイのように微細藻類を主食としている二枚貝類(軟体動物二枚貝類)の消化液等には、かなり強いセルラーゼ活性が認められる。しかしながら、原料の軟体動物が高価であることや、資源的に大量に得るのが難しいことなどの問題があって、現在のところ産業レベルでの利用は実現していない。【0004】ところで、北海道においては、ホタテガイやカキ等の二枚貝類などの養殖に伴う不可食部分(貝殻、内臓)が、年間約30万トン廃棄されている。近年では、その処理コストや廃棄場所の問題が水産加工業の経営を圧迫する原因となっており、環境への影響も社会問題化している。そのため、これらの廃棄物から高付加価値成分を生産することにより、廃棄物を有価資源化しようという試みが各方面でなされている。【0005】ホタテガイを例にとると、廃棄される内臓(廃棄内臓)等の利用可能量は、年間数千トンから1万トン程度はあると思われ、セルラーゼの製造に際して、この廃棄内臓等を出発材料とすることができれば、部分精製品としてもかなりの量のセルラーゼが得られると考えられる。例えば、10gの内臓から1mg程度のセルラーゼが得られるとすると、単純計算で廃棄内臓1万トンから1トン程度のセルラーゼが得られることが期待される。【0006】前記したように、二枚貝類などの軟体動物にセルラーゼが含まれていることは知られているが、これまでは当該酵素の精製が不十分であり、したがって酵素の諸性質については詳細な検討がなされていなかった。また、二枚貝類から上記セルラーゼを効率良く製造する方法についても十分に検討されていなかったため、産業上有効利用することができなかった。【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明は、二枚貝類由来のセルラーゼの諸特性を解明し、これらの養殖に伴なう廃棄内臓等の有価資源化の実現に供することを目的とするものである。また、本発明は、二枚貝類から、上記セルラーゼを用途に応じた純度で、簡易な操作で、かつ短時間に効率良く製造する方法を開発し、廃棄内臓等の有価資源化の一層の促進を図ること目的とするものである。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するため、二枚貝類のセルラーゼを抽出、精製して、その基本的諸性質を鋭意検討した。その結果、二枚貝類由来のセルラーゼは、基質特異性、至適温度、熱安定性、pH依存性等の点において、従来知られている微生物(細菌、真菌、糸状菌)由来のセルラーゼとは異なる基本的性質を持つことを見出した。また、二枚貝類のセルラーゼを抽出、精製する方法について検討する過程で、セルラーゼを効率良く製造するための製造方法をも見出した。本発明は、係る知見に基づくものである。【0009】請求項1に係る本発明は、二枚貝類に由来し、下記の特性を有するセルラーゼである。(a)作用:本酵素は、セルロースを分解して低分子化セルロース及びセロオリゴ糖をを生成する。(b)基質特異性:本酵素は、セルロースに作用する。(c)分子量:45kDa(ポリアクリルアミドゲル電気泳動による)(d)至適温度:30〜35℃(e)熱安定性:30℃以下で安定である。(f)至適pH:pH5.0〜7.0(g)N末端アミノ酸配列:配列表の配列番号1に記載の配列を有する。【0010】 請求項2に係る本発明は、ホタテガイの胃と中腸腺及び/又は胃と中腸腺の滲出液に緩衝液又は抽出液を注入することによりセルラーゼを抽出し、セルラーゼを回収することを特徴とする請求項1に記載のセルラーゼの製造方法である。【0011】請求項3に係る本発明は、請求項2に記載の方法により回収したセルラーゼを冷水に加え、得られたセルラーゼ液に吸着剤を加えて攪拌することによりセルラーゼを当該吸着剤に吸着させた後、緩衝液を加えてセルラーゼを吸着剤から溶出させることを特徴とする請求項1に記載のセルラーゼの製造方法である。【0012】【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳しく説明する。請求項1に係る本発明のセルラーゼは、二枚貝類に由来する酵素である。二枚貝類としては、例えばホタテガイ、アカザラガイ(アズマニシキガイ)、ウバガイ(ホッキガイ)、マガキ、ムラサキイガイ、アカガイ、アサリ、ハマグリ等が挙げられる。これらの内、養殖に伴なう廃棄内臓等を原料として容易に入手できる点で、ホタテガイ等が好ましい。本発明のセルラーゼは、これらの二枚貝類の内臓や内臓滲出液、特に消化器系の内臓組織やその滲出液に多く分布し、中でもホタテガイの胃部から中腸腺にかけての内蔵組織、並びに胃及び中腸腺からの滲出液等に豊富に分布している。【0013】請求項1に係る本発明のセルラーゼは、以下に示す特性を有している。【0014】(a)作用:本酵素は、セルロースを分解して低分子化セルロース及びセロオリゴ糖を生成する。すなわち、請求項1に係る本発明のセルラーゼは、セルラーゼとしての活性を有する。ここで、セルラーゼとは、▲1▼非晶性セルロースをエンド型で切断するエンドβ−グルカナーゼ(EG、CMCase(カルボキシメチルセルラーゼ))としてのセルラーゼ〔cellulase,EC.3.2.1.4〕、▲2▼セルロースの非還元末端に作用し、セロビオースを精製するエキソβ−グルカナーゼ(セロビオハイドラーゼ(CBH)、アビセラーゼ)としてのセルロース1,4−β−グルコシダーゼ〔glucan 1,4-glucosidase,EC 3.2.1.91〕;▲3▼セロビオースを分解してブドウ糖を生成するβ−グルコシダーゼ(セロビアーゼ)〔β-glucosidase,EC 3.2.1.21〕の総称であり、請求項1に係る本発明のセルラーゼは、これらの3つの酵素活性のうち▲1▼に相当する。なお、本酵素によりセルロースを分解して生成したセロオリゴ糖にβ−グルコシダーゼを作用させると、ブドウ糖(β−D−グルコース)が生成する。【0015】(b)基質特異性:本酵素は、セルロースに作用する。(c)分子量:45kDa(ポリアクリルアミドゲル電気泳動による)(d)至適温度:30〜35℃(e)熱安定性:30℃以下で安定である。(f)至適pH:pH5.0〜7.0(g)N末端アミノ酸配列:配列表の配列番号1に記載の配列を有する。【0016】請求項1に係る本発明のセルラーゼの製造は、一般的な手法に従えば良いが、例えば請求項2に示した如く、二枚貝類の内臓及び/又は内臓滲出液からセルラーゼを含む抽出液を得た後、これをそのまま回収する方法などがある。さらに、回収したセルラーゼ含有液を精製する方法としては、請求項3に示した方法は、簡便で、しかも短時間に処理できるので好ましい方法である。【0017】次に、請求項2に記載のセルラーゼの製造方法について説明する。二枚貝類の内臓及び/又は内臓滲出液を原料とするセルラーゼの製造は、基本的に穏やかな条件下で実施すべきである。二枚貝類からセルラーゼを含む抽出液を得る場合に、ワーリングブレンダーを用いた従来のホモジェナイズによる抽出法を行うと、得られるセルラーゼ活性が著しく低下するので好ましくない。しかし、セルラーゼの用途などを考慮して従来法を採用することもできる。【0018】本発明では、貝殻に付着した状態の二枚貝類の内臓の適当な部分に切り込みを入れ、この部分から内臓内に緩衝液又は抽出液を静かに注入して内臓各部や内臓滲出液と接触させるか、もしくは貝殻から切除した後の二枚貝類の内臓や内臓滲出液に直接緩衝液又は抽出液を加えることによって、セルラーゼを洗い出すように抽出する。この抽出操作を、必要に応じて数回(2〜5回)繰り返すと、目的とするセルラーゼを含有する抽出液を効率よく回収することができる。この方法によれば、抽出に際して脂質や色素成分などの不純物の溶出量を低減させることができ、高いセルラーゼ活性を示す抽出液が得られる。【0019】ここで、セルラーゼの抽出に使用する緩衝液又は抽出液としては、例えば5〜10mM リン酸ナトリウム(pH7.0)、1〜5mM 炭酸水素ナトリウム(pH7.5)、10〜20mM Tris−HCl(pH7.5)などの中性ないし弱アルカリ性に緩衝能を持つ緩衝液であれば使用可能である。いずれも、4〜10℃程度に冷却して使用する。【0020】このようにして得た粗セルラーゼ抽出液からセルラーゼの精製を行う場合、粗セルラーゼ抽出液を冷蒸留水で10倍に希釈し、イオン交換樹脂を加えてバッチ吸着し、これをカラムに充填してから溶出するというイオン交換クロマトグラフィーを行っても良いが、この方法はフラクションコレクターを必要とすること、試料分取のために数多くの試験管を必要とすること、クロマトグラフィーに12時間程度を要する等の時間と手間がかかるという問題点がある。そこで、請求項3に係る本発明の方法では、上記した方法によって回収したセルラーゼを含む抽出液を冷水で希釈して得た粗セルラーゼ液、通常は4〜10℃程度の冷水で7〜15倍、好ましくは8〜12倍程度に希釈した粗セルラーゼ液に、吸着剤を加えて穏やかに攪拌することにより、セルラーゼを当該吸着剤に吸着させる。このとき用いる吸着剤としては、イオン交換樹脂の場合、陽イオン交換タイプのイオン交換樹脂、好ましくはCM-Toyopearl(東ソー社製)、SP-Toyopearl(東ソー社製)などがある。イオン交換樹脂を加えて5〜20分間、好ましくは8〜15分間攪拌することによって、当該樹脂にセルラーゼをバッチ吸着させることができる。イオン交換樹脂以外の吸着剤としては、例えばハイドロキシルアパタイト(和光純薬製)などを使用することができる。【0021】セルラーゼを当該吸着剤に吸着させた後、中性pHに調整した、イオン強度0.1〜0.15のNaCl、KCl 、Na2HPO4 などの溶離液又は緩衝液を加えて懸濁することによって、セルラーゼを吸着剤から溶出させる。この場合、セルラーゼを吸着剤から溶出させる前に、デカンテーションや吸引ろ過等によって吸着剤を回収し、非吸着画分をイオン強度0.01程度の緩衝液で洗浄、除去することが望ましい。なお、吸着剤からのセルラーゼの溶出は、直線濃度勾配で行うと、より高純度のセルラーゼを得ることができる。次いで、ろ過、遠心分離などの固−液分離手段によりセルラーゼを溶出液中に回収する。この方法によれば、比較的高純度(通常30〜50%程度)のセルラーゼを1〜3時間という短時間で大量に製造することができる。例えば、ホタテガイ(体重200〜300g)の場合、1個体から1〜5mg程度のセルラーゼ得ることができる。【0022】【実施例】以下、実施例により本発明を詳しく説明するが本発明はこれらによって制限されるものではない。なお、実施例を示す前に、活性の測定法など本実施例で用いた基本的分析方法について述べる。【0023】(1)セルラーゼ活性の測定および検出方法(1−1)生成還元糖の定量によるセルラーゼ活性の測定セルラーゼ活性測定には、基本的には以下の組成の反応混液を用いた。10mM リン酸ナトリウム(pH7.0)0.5% カルボキシメチルセルロース(中粘度CMC、ICN製)種々の量のセルラーゼ(測定対象の試料)【0024】反応液量は1mlとし、反応温度は30℃、反応温度は30分とした。反応停止は100℃で5分間の加熱によった。生成した還元糖(還元末端)はNelson−Somogyi法により定量した。セルラーゼ1単位(unit)は、1分間に1μmolのグルコース相当の還元糖を生成する酵素量と定義した。【0025】(1−2)ザイモグラフィーによるセルラーゼ活性の検出セルラーゼをSDS−PAGEで分画した後、ゲルをシャーレに移し50mlの10mM リン酸ナトリウム(pH7.0)と25% イソプロパノールを含む溶液により4℃で30分間、穏やかに振盪しながら洗浄した。この操作を3回繰り返した後、さらに10mM リン酸ナトリウム(pH7.0)で3回洗浄することにより酵素を再生させた。【0026】一方、15cmのガラスシャーレに0.1%のCMCと10mM リン酸ナトリウム(pH7.0)を含む2%の寒天ゲルを作成しておき、ここに上記SDS−PAGE後の洗浄ゲルを重層した。これを37℃で3時間インキュベートすることにより、洗浄ゲル中の再生セルラーゼと寒天ゲル中のCMCとを反応させた。反応後、SDS−PAGEゲルは、0.1% クマシブリリアントブルーの50% メタノール溶液で染色し、一方の寒天ゲルは、0.1% コンゴーレッド水溶液で染色した。セルラーゼ活性はコンゴーレッド非染色部として検出した。【0027】(2)タンパク質濃度、総タンパク質量の測定タンパク質濃度は、高濃度(mg/mlオーダー)の場合は、Biuret法で、低濃度(μg/mlオーダー)の場合は、Lowry法で定量した。また、総タンパク質量は、試料のタンパク質濃度に試料の体積を乗ずることによって算出した。【0028】(3)SDS−PAGE(ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動)SDS−PAGEは、Porzio&Pearsonの方法に従い、0.1%SDS−10%ゲルと0.1%SDS−150mM Tris−glycine緩衝液(pH8.6)を用いて行った。【0029】実施例1(ホタテガイ・セルラーゼの調製)ホタテガイ(Patinopecten yessoensis)を用いて、以下の手順でホタテガイ・セルラーゼを抽出・精製した。(1)ホタテガイ・セルラーゼの分布ホタテガイの消化器官は、図1に示すように、口に当たる唇弁に始まり、胃、中腸腺を経て生殖腺内部の腸管を通り、貝柱外側の直腸から肛門に至る。そこで、まずホタテガイ・セルラーゼの内臓組織中の分布について調べた。即ち、試料として貝殻長約12cm、体重180gのホタテガイ(3年貝)を解体し、唇弁、胃+中腸腺(胃と中腸腺は組織的に融合しており、分離できない。)腸管及び直腸に切除した。各内臓組織をそれぞれ50mlのビーカーに取り、氷冷下で30分間、10mlの駒込ピペットで1分間に20回程度の吸引−吐出を行うことにより、可溶性成分を抽出した。抽出後、10,000×gで10分間遠心分離し、得られた上清を、各内臓組織の酵素液とした。【0030】なお、ホタテガイ解体の際、胃+中腸腺及び直腸のそれぞれからの滲出液もそれぞれ胃+中腸線滲出液、直腸滲出液として回収した。これらの各内臓組織の酵素液及び各消化液試料について、総タンパク質量とセルラーゼ活性を測定した。【0031】図2に、ホタテガイの各内臓組織及び各滲出液の総タンパク質量とセルラーゼ活性を示す。なお、図2中、黒色は総タンパク質量を、白色はセルラーゼ活性(全活性、units)を示す。図2によれば、胃+中腸腺の酵素液と胃+中腸腺の滲出液に高い酵素活性が認めらることが明らかとなった。【0032】また、胃+中腸腺の滲出液について、ザイモグラフィーを行い、セルラーゼ活性の検出を行った。ザイモグラフィーの結果を図3に示す。図3から明らかな通り、ホタテガイ・セルラーゼの主成分の分子サイズは、約45kDaであることが示された。【0033】(2)ホタテガイ・セルラーゼの調製▲1▼ホタテガイ・セルラーゼ(粗酵素)の抽出前項の結果から、セルラーゼは、胃+中腸腺とその滲出液に多く含まれていることが分かったので、ホタテガイ・セルラーゼの調製には、これらを出発原料として用いることにした。なお、予備実験の結果、抽出の際にPotter型ホモジェナイザーやワーリングブレンダーなどにより組織を強くホモジェナイズすると、酵素活性が著しく低下することを認めた。そこで、抽出は、できるだけ穏やかに行うように留意した。【0034】即ち、ホタテガイ(3年貝)20個体を解体し、貝柱を貝殻に残したまま、外套膜及び内臓を貝殻からはずした。ここから、胃+中腸腺部分をハサミで切り取り、それをビーカー中に移した。このようにして、約200gの胃+中腸腺を得た。次いで、胃+中腸腺に対し、4倍量の抽出液(10mM リン酸ナトリウム(pH7.0),0.2% NaN3,0.1mM PMSF,1mM EDTA)を加え、ハサミで胃+中腸腺を概ね4〜6片に切断し、ガラス棒で穏やかに攪拌しながら、氷冷下で30分間ホタテガイ・セルラーゼ(粗酵素)を抽出した。【0035】この抽出液を、10,000×gで10分間遠心分離し、上清を得た。この上清のタンパク質濃度は、約1.78mg/mlで容量は992mlであった。その結果、1,766mgの粗酵素が得られた。また、上記全タンパク質量(mg)のほか、この上清、すなわち粗酵素のカルボキシメチルセルラーゼ活性(比活性(units/mg)及び全活性(units))、精製度(fold)及び収率(%)を、第1表に示す。【0036】この粗酵素試料について、SDS−PAGEとザイモグラフィーを行った結果、ホタテガイ・セルラーゼ活性は、分子サイズ66kDaと45kDaの位置に検出され、活性の高さから、45kDaの成分がホタテガイ・セルラーゼの成分であることが分かった。【0037】▲2▼ホタテガイ・セルラーゼのCM−Toyopearl カラムクロマトグラフィーによる精製上記▲1▼で抽出したホタテガイ・セルラーゼ(粗酵素)の抽出液を、以下の手順でCM−Toyopearl カラムクロマトグラフィーにより精製した。なお、▲1▼で抽出した粗酵素抽出液には、抽出の際に貝殻中からの海水が若干混入しており、イオン強度がやや高く、セルラーゼのCM−Toyopearl への吸着が悪いことが分かった。そこで、酵素抽出液を冷蒸留水で10倍に希釈することによりイオン強度を下げた。【0038】次いで、この粗酵素希釈液に、あらかじめ10mM リン酸ナトリウム(pH7.0)で平衡化したCM−Toyopearl 650M(東ソー(株)製)をベッド体積で50ml加え、4℃で10分間穏やかに攪拌することによりセルラーゼを担体に吸着させた。静置して担体を沈澱させ、デカンテーションで上清を概ね除去した後、担体を100mlの10mM リン酸ナトリウム(pH7.0)で再度懸濁して2.0cm×15cmのガラスカラムに充填した。このカラムを10mMリン酸ナトリウム(pH7.0)100mlで洗浄した後、10mM リン酸ナトリウム(pH7.0)を含む0〜200mM NaClの直線濃度勾配によりタンパク質を溶出した。各フラクションの吸光度(280nm)とセルラーゼ活性(比活性(units/ml))の測定結果を図4に示す。なお、図4中、○は吸光度を示し、●は比活性を示す。【0039】図4から明らかなように、セルラーゼは、2つのピーク画分、即ちフラクション番号21〜23、25〜28の2画分に溶出していることが分かった。これらについては、以降それぞれを、SC−I画分、SC−II画分と呼ぶこととする。【0040】一方、図4中でa〜iで示した画分については、その一部をSDS−PAGEとザイモグラフィーによるセルラーゼ活性の分析に供した。ザイモグラフィーの結果を図5に示す。【0041】図5の結果によれば、ホタテガイ・セルラーゼの主成分である分子サイズ45kDaの活性成分は、SC−I画分に含まれることが分かったので、この画分について、さらにハイドロキシアパタイト・カラムクロマトグラフィーで精製することとした。【0042】SC−I画分の総タンパク質量は、7.68mgであった。また、上記全タンパク質量(mg)のほか、このSC−I画分のカルボキシメチルセルラーゼ活性(比活性(units/mg)及び全活性(units))、精製度(fold)及び収率(%)の測定値を、第1表に示す。なお、SC−II画分も十分なセルラーゼ活性を持っているので、精製品が必要でない場合は、これらの画分もホタテガイ・セルラーゼとして使用可能である。【0043】▲3▼ホタテガイ・セルラーゼのハイドロキシアパタイト・カラムクロマトグラフィーによる精製上記▲2▼において、CM−Toyopearl カラムクロマトグラフィーにより得たSC−I画分(フラクション番号21〜23、総タンパク質量7.68mg)を、10mM リン酸カリウム(pH7.0)で平衡化したハイドロキシアパタイト(和光純薬工業(株)製、カラムクロマトグラフ高流速タイプ)カラム(1.5×20cm)に供した。ここで、緩衝液をリン酸ナトリウムからリン酸カリウムに変換したが、その理由は、ハイドロキシアパタイト・カラムからのタンパク質の溶出に用いる高濃度のリン酸塩の溶解度が、リン酸ナトリウムよりもリン酸カリウムの方が高く、低温下の操作でも析出し難いためである。【0044】ハイドロキシアパタイトに吸着したタンパク質は、10〜300mMのリン酸カリウム(pH7.0)の直線濃度勾配により溶出した。溶出液は1フラクションあたり5ml分取した。各フラクションの吸光度(280nm)とセルラーゼ活性(比活性(units/ml))の測定結果を図6に示す。なお、図6中、○は吸光度を示し、●は比活性を示す。【0045】図6から明らかなように、ハイドロキシアパタイト・カラムクロマトグラフィーの結果、セルラーゼの比活性は、フラクション番号36〜38付近にほぼ単一のピークとして溶出することが分かった。また、図6のa〜iで示した各画分については、その一部をSDS−PAGE及びザイモグラフィーによるセルラーゼ活性の分析に供した。ザイモグラフィーの結果を図7に示す。【0046】図7の結果によれば、フラクション36〜38に相当するb〜c画分の場合には、SDS−PAGEにより45kDa付近にほぼ単一のバンドが確認され、ザイモグラフィーにより、この成分がセルラーゼ本体であることが確認された。この精製セルラーゼ(45kDa)〔ScHyd〕の総タンパク質量は、0.79mgであった。また、この精製セルラーゼ(45kDa成分)の上記全タンパク質量(mg)のほか、カルボキシメチルセルラーゼ活性(比活性(units/mg)及び全活性(units))、精製度(fold)及び収率(%)を第1表に示す。【0047】【表1】【0048】以上、ホタテガイの胃+中腸腺を出発材料として、分子量サイズ45kDaのホタテガイ・セルラーゼを精製することに成功した。この精製過程は、第1表に示す通りであり、分子量サイズ45kDaの精製セルラーゼは、粗酵素から約89倍に精製されたことが分かる。一方、活性収率は4%であるが、残りの活性の多くは、前記▲2▼のCM−ToyopearlカラムクロマトグラフィーにおいてSC−Iの非回収部分に残存している。従って、この画分は部分精製セルラーゼとして利用可能である。【0049】実施例2(ホタテガイ・セルラーゼの基本的な性質)実施例1で精製した分子量サイズ45kDaの精製セルラーゼの基本的な酵素特性を調べた。以下の実施例2において、市販の糸状菌セルラーゼ(Trichoderma viride起源、和光純薬工業(株)製)からCM−Toyopearlカラムクロマトグラフィーで精製した、23.5kDaセルラーゼ成分を比較対照とした。【0050】(1)セルラーゼ活性の温度依存性(至適温度)実施例1で得た分子量サイズ45kDaの精製セルラーゼ(以下、ScHydという。)及びTrichoderma viride由来の分子量サイズ23.5kDaのセルラーゼ(以下、Tri−23.5という。)のセルラーゼ活性の温度依存性を測定した。【0051】酵素液を除く反応混液(0.95ml)を、10〜70℃の各温度(ScHydは10〜50℃、Tri−23.5は20〜70℃)で、10分間プレインキュベートした後、各反応混液にいずれかのセルラーゼを0.05ml加えて反応を開始し、それぞれの温度で30分間保持した後、100℃で10分間加熱して反応を停止した。生じた還元糖はNelson−Somogyi法で定量し、セルラーゼ活性を算出した。なお、Tri−23.5の至適pHは、酸性側(pH5.0)にあるので、反応混液のpHはリン酸ナトリウムでpH5.0とした。結果を図8に示す。なお、図8の上段は比活性(units/mg)の温度依存性を、下段は相対的活性(%)の温度依存性を示し、○はScHydの結果を、△はTri−23.5の結果を示す。【0052】図8に示すように、35℃においてTri−23.5の比活性が約1.5units/mgであるのに対し、ScHydは約3.4units/mgであったことから、ScHydの比活性は、Tri−23.5に比べ測定した温度範囲で約2倍高いことが明らかとなった。また、ScHydの至適温度は、30〜35℃付近にあり、Tri−23.5の至適温度である約50℃よりも15〜20℃低かった。これらの結果から、ホタテガイ・セルラーゼがTrichoderma viride由来のセルラーゼに比べて、より低温で高活性を示すことが示された。【0053】(2)セルラーゼ活性の熱安定性次に、ScHyd及びTri−23.5のセルラーゼ活性の熱安定性を測定した。10mM リン酸ナトリウム(pH7.0)に、各酵素を0.15mg/mlとなるように溶解し、20〜70℃の各温度で30分間インキュベートした後、氷冷した。これら加熱処理酵素の0.05mlを、あらかじめ30℃に保温してある0.95mlの反応混液に加え、同温度で30分間反応させた。相対的活性の結果を図9に示す。なお、図9中、○はScHydの結果を、△はTri−23.5の結果を示す。【0054】図9によれば、ScHydの活性は、加熱温度が30℃まではほとんど変化しないが、35℃以上になると急激に失活することが分かる。一方、比較対照のTri−23.5の活性は、50℃まではほとんど失活しないが、60℃では従来の報告通りほぼ完全に失われた。このことから、ホタテガイ・セルラーゼの熱安定性は、Trichoderma viride由来のセルラーゼよりも約20℃低いことが明らかとなった。【0055】(3)セルラーゼ活性のpH依存性従来知られているセルラーゼの至適pHは、多くの場合酸性側にある。そこで、ホタテガイ・セルラーゼのpH依存性をTrichoderma viride由来のセルラーゼと比較すべく、ScHyd及びTri−23.5のセルラーゼ活性のpH依存性を測定した。即ち、酢酸ナトリウム(pH2.0〜5.0)、リン酸ナトリウム(pH5.0〜9.0)又はグリシン−NaOH(pH9.0〜10.0)で反応混液のpHを変えて、温度30℃における各pHにおけるセルラーゼ活性を調べた。図10に結果を示す。なお、図10の上段は比活性(units/mg)を、下段は相対的活性(%)を示し、○はScHydの結果を、△はTri−23.5の結果を示す。【0056】図10に示すように、ScHydは、pH6.1で最大活性を示し、pH5.0〜7.0にかけて最大の70%以上の活性値を示したことから、ホタテガイ・セルラーゼは弱酸性から中性付近に至適pHを有することが明らかとなった。一方、比較対照に用いたTri−23.5の至適pHは、これまで報告されている通り、pH5.0付近であった。このことから、ホタテガイ・セルラーゼの至適pHは、弱酸性から中性付近にあり、Trichoderma viride由来のセルラーゼを始めとする他の糸状菌セルラーゼの至適pHが酸性側にあるのとは明らかに異なるpH特性を持つ酵素であることが分かった。従って、ホタテガイ・セルラーゼは既知のセルラーゼの使用可能なpH範囲を広げるという点で有用性が高いと考えられる。【0057】(4)ScHydの部分アミノ酸配列の解読ホタテガイ・セルラーゼのうち、完全精製した45kDaの成分(ScHyd)の部分アミノ酸配列を分析し、これまでに一次構造が明らかにされているセルラーゼのアミノ酸配列との差異を若干ながら検討した。まず、ScHydについてSDS−PAGEを行った後、PVDF膜にエレクトロブロットした。そして、そのN末端のアミノ酸配列を、パーキンエルマー−ABI社製の473A型プロテインシークエンサーで分析した。その結果、ScHydのN末端8残基の配列は、配列表の配列番号1に示される通りであることが明らかとなった。【0058】ScHydのN末端の配列と相同性のある配列をFASTAプログラム(DDBJを利用)により検索した。図11には、ScHydのN末端の配列及びシロイヌナズナの第3染色体にコードされている未同定タンパク質(Accession No. AC020580)のアミノ酸配列との比較を示す。図11から明らかなとおり、ScHydのN末端の配列は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の第3染色体にコードされている未同定タンパク質(Accession No. AC020580)のアミノ酸配列(370〜376塩基部分)と、高い相同性を示すことが分かった。【0059】実施例3(ホタテガイ・セルラーゼの調製)ホタテガイ(3年貝、貝殻を含めた体重約250g)の貝柱筋をナイフで切断することにより開殻した後、ハサミで唇弁から胃及び中腸腺方向に向かって切開した。それにより、滲出した消化液をビーカーに受けた。さらに、切開部に駒込ピペットを使って5mlの10mM リン酸ナトリウム(pH7.0)を吹き込み、洗浄液をビーカー中に受けた。この操作はさらに2回繰り返した。【0060】10個体分についてこの操作を行い、得られた粗酵素液を合わせた後、10,000×gで10分間遠心分離した。得られた上清のタンパク質濃度は、約1.2mg/mlで、体積は161mlであった。従って、総タンパク質量は、193.2mgであった。総タンパク質量のほか、粗酵素液のカルボキシメチルセルラーゼ活性(比活性(units/mg)、全活性(units))、精製度(fold)、収率(%)を第2表に示した。【0061】この粗酵素液に500mlの冷蒸留水を加え、さらにベッド体積で20mlの10mM リン酸ナトリウム(pH7.0)で平衡化したCM−Toyopearlを直接加えた。5分間静かに懸濁することにより、セルラーゼをCM−Toyopearlに吸着させ、グラスフィルターろ過により、CM−Toyopearlを集めた。これを、100mlのビーカーに取り、ここに10mlの0.2M NaCl−10mM リン酸ナトリウム(pH7.0)を加えて静かに攪拌し、セルラーゼを溶出した。次いで、グラスフィルターでろ過し、ろ液を集めた。この担体からのセルラーゼ溶出操作は、もう一回行い、これらの溶出液を合一した。この溶出液の全タンパク質量(mg)、セルラーゼ活性(比活性(units/mg)、全活性(units))、精製度(fold)、収率(%)を第2表に示した。【0062】【表2】【0063】第2表に示すように、本発明の方法により、比活性が1.07units/mgで、精製度が粗酵素の4.9倍の純度20%程度のホタテガイ・セルラーゼを、1〜3時間で33%の収率で大量に(ホタテガイ(貝殻を含めた体重約250g)の場合、1個体から1〜2mg)得られることが分かった。このセルラーゼの比活性は、従来のようにワーリングブレンダー等を用いたホモジェナイズ抽出や、先に貝殻から消化器官を切除する方法で精製したものと比較して、脂質や色素成分などの混入がなく、高い精製率のものであった。なお、CM−Toyopearlからの溶出を直線濃度勾配にすれば、より高純度のセルラーゼを得ることができる。【0064】比較例1ホタテガイ(3年貝、貝殻を含めた体重約250g)の10個体分の中腸線をワーリングブレンダーでホモジェナイズし、遠心分離(10,000×g)により得た上清を粗酵素とした。これを硫安分画して得た画分(40〜70%飽和画分)及びゲルろ過によって脱塩した画分(脱塩画分)の全タンパク質量(mg)、セルラーゼ活性(比活性(units/mg)、全活性(units))、精製度(fold)及び収率(%)を第3表に示した。【0065】【表3】【0066】【発明の効果】請求項1に係る本発明のセルラーゼは、比較的低温で高活性を示し、至適pHが弱酸性から中性付近にあり、しかも比活性値が糸状菌のセルラーゼより高いことから、新規なセルラーゼであることが明らかである。特に、至適pHの範囲が広いことから、従来のセルラーゼよりも広範な利用が期待できる。さらに、本発明に係るセルラーゼは、二枚貝類に由来し、その給源を養殖及び水産加工の際に廃棄される廃棄内臓に求めることができる。そのため、従来の糸状菌由来のセルラーゼと比較して低コストで、かつ大量に生産することが可能である。【0067】請求項1に係る本発明のセルラーゼは、地球上に最も大量に存在する多糖であるセルロースの糖化利用、セロビオース、セロトリオースなどのセロオリゴ糖の生産、飼料効率を高めるための飼料添加、製紙工業における脱墨や脱色の促進、洗剤等の用途に広く利用できると共に、本発明は養殖及び水産加工に伴なう廃棄内臓の有価資源化の実現に供するものである。【0068】また、請求項2に係る本発明の方法により、不純物である脂質や色素成分などの溶出量を最低限に抑え、活性の低下が抑制された上記請求項1に係る本発明のセルラーゼを製造することができる。そして、本発明の方法は、加熱や激しい撹拌などの操作を必要としないので操作が簡便である。また、本発明によれば、抽出後に硫安分画を行わなくても、従来の抽出後に硫安分画を行って得られるセルラーゼ標品と同程度か、それ以上の純度のセルラーゼを得ることができるので、操作工程を省略できる上に、短時間で所望のセルラーゼを製造できる。【0069】そして、請求項3に係る本発明の製造方法によれば、従来の製造方法と比較して、簡便な操作で高純度のセルラーゼを、短時間で得ることができる。それ故、請求項2及び3に係る本発明の製造方法は、上記優れた性質を有し、産業上の利用性も高い請求項1に係る本発明のセルラーゼの効率的な製造方法として極めて有用である。【0070】【配列表】【図面の簡単な説明】【図1】 ホタテガイの解剖図を示す図である。【図2】 ホタテガイの内臓組織及び滲出液におけるセルラーゼの分布を示す図である。【符号の説明】 黒色は総タンパク質量を、白色はセルラーゼ活性を示し、棒グラフの上の数値は比活性を示す。【図3】 胃+中腸腺滲出液のザイモグラフィーの結果を示す図である。【図4】 CM-Toyopearlクロマトグラフィーの結果を示す図である。【図5】 CM-Toyopearlクロマトグラフィーの結果得られた各画分についてのザイモグラフィーの結果を示す図である。【図6】 SC−I画分についてハイドロキシアパタイト・クロマトグラフィーを行った結果を示す図である。【符号の説明】図4及び6中、○は吸光度を、●は比活性を示す。【図7】 ハイドロキシアパタイト・クロマトグラフィーの結果得られた各画分についてのザイモグラフィーの結果を示す図である。【図8】 セルラーゼ活性の温度依存性(至適温度)を示す図である。【図9】 セルラーゼ活性の熱安定性を示す図である。【図10】 セルラーゼ活性のpH依存性を示す図である。【図11】 ScHydのN末端アミノ酸配列とシロイヌナズナのアミノ酸配列との比較を示す図である。 二枚貝類に由来し、下記の特性を有するセルラーゼ。(a)作用:本酵素は、セルロースを分解して低分子化セルロース及びセロオリゴ糖を生成する。(b)基質特異性:本酵素は、セルロースに作用する。(c)分子量:45kDa(ポリアクリルアミドゲル電気泳動による)(d)至適温度:30〜35℃(e)熱安定性:30℃以下で安定である。(f)至適pH:pH5.0〜7.0(g)N末端アミノ酸配列:配列表の配列番号1に記載の配列を有する。 ホタテガイの胃と中腸腺及び/又は胃と中腸腺の滲出液に緩衝液又は抽出液を注入することによりセルラーゼを抽出し、セルラーゼを回収することを特徴とする請求項1に記載のセルラーゼの製造方法。 請求項2に記載の方法により回収したセルラーゼを冷水に加え、得られたセルラーゼ液に吸着剤を加えて攪拌することによりセルラーゼを当該吸着剤に吸着させた後、緩衝液を加えてセルラーゼを吸着剤から溶出させることを特徴とする請求項1に記載のセルラーゼの製造方法。