タイトル: | 特許公報(B2)_皮膚外用剤 |
出願番号: | 2002003652 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,A61K7/00,A61K7/42 |
上月 裕一 板垣 宏 鹿子木 宏之 黒沢 卓文 JP 3683533 特許公報(B2) 20050603 2002003652 20020110 皮膚外用剤 株式会社資生堂 000001959 ▲高▼野 俊彦 100094570 上月 裕一 板垣 宏 鹿子木 宏之 黒沢 卓文 20050817 7 A61K7/00 A61K7/42 JP A61K7/00 J A61K7/42 7 A61K 7/00-155、32-50、47/34 特開平06−056624(JP,A) 特表平07−502748(JP,A) 3 2003206214 20030722 12 20040512 大宅 郁治 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は皮膚外用剤に関する。 また、本発明は、紫外線吸収剤のオクチルメトキシシンナメートの刺激を緩和した皮膚外用剤に関する。【0002】【従来の技術】紫外線吸収剤は、種々の化粧料に配合されている。その目的は、紫外線による製品の分解防止と、皮膚の損傷(日焼け止め)に大別される。【0003】化粧料中の紫外線吸収剤は、敏感肌の使用者が刺激を感じる場合がある。そのため、その刺激を緩和する方法が強く求められていた。【0004】【発明が解決しようとする課題】 本発明者らは、化粧料基剤に適した多くの汎用原料を探索した結果、ポリプロピレングリコールジメチルエーテルが、紫外線吸収剤のオクチルメトキシシンナメートの経皮吸収抑制効果が極めて高いことを発見した。【0005】 そして、前記ポリプロピレングリコールジメチルエーテルを皮膚外用剤に配合すると、紫外線吸収剤のオクチルメトキシシンナメートの効果を損なうことなく、皮膚刺激を緩和できることを見出した。【0006】 さらに、ポリプロピレングリコールジメチルエーテルは紫外線吸収剤のオクチルメトキシシンナメートの感作性を抑制する効果があることを発見した。【0007】 特に、日焼け止め化粧料には一定量以上の紫外線吸収剤のオクチルメトキシシンナメートが配合されるため、本発明の意義が大きい。【0008】【課題を解決するための手段】本発明は下記の通りである。【0009】 1.ポリプロピレングリコールジメチルエーテルを含有する皮膚外用剤。 2.紫外線吸収剤のオクチルメトキシシンナメートと、ポリプロピレングリコールジメチルエーテルとを含有する皮膚外用剤。 3.前記皮膚外用剤が日焼け止め化粧料である上記の皮膚外用剤。【0010】【発明の実施の形態】以下、本発明を説明する。【0011】本発明に用いるポリプロピレングリコールジメチルエーテル(DMPPGという)は、下記の構造式(1)を有する公知の化合物である。【化1】(nは整数)分子量は任意であり、例えば、数平均分子量が1000のDMPPG(DMPPG1000という)、数平均分子量が2000のDMPPG(DMPPG2000という)などを使用できる。DMPPGは、公知の製造方法により任意の数平均分子量に調整し使用することができる。数平均分子量1000〜2000のものが好ましい。数平均分子量は化粧品原料基準 第二版注解I(1984年 薬事日報社)の942頁に記載された方法で求めることが出来る。【0012】 ポリプロピレングリコールジメチルエーテルは、皮膚外用剤に対して0.1〜20.0質量%(好ましくは、1.0〜10.0質量%)配合される。 例えば、紫外線吸収剤のオクチルメトキシシンナメートの刺激緩和剤若しくは経皮吸収抑制剤として、紫外線吸収剤のオクチルメトキシシンナメートの配合量に応じて、実際の配合量が適宜決定される。【0013】 本発明に用いる紫外線吸収剤例はオクチルメトキシシンナメート(商品名:パルソールMCX)である。【0014】 紫外線吸収剤のオクチルメトキシシンナメートの配合量は、皮膚外用剤の分解安定性に使用する場合は、皮膚外用剤全量に対して、通常、0.01〜1.0質量%である。 紫外線吸収剤のオクチルメトキシシンナメートを、紫外線から皮膚を保護する場合に使用する場合は、皮膚外用剤全量に対して、通常、1.0〜5.0質量%である。 特に、日焼け止め化粧料として使用する場合は、通常、5.0〜15.0質量%である。 紫外線吸収剤のオクチルメトキシシンナメートを5.0質量%以上配合した場合は、敏感肌に対する皮膚刺激を感じる割合が高くなるので、刺激緩和の効果が大きくなる。【0015】本発明は、特にオクチルメトキシシンナメート(商品名:パルソールMCX)の刺激緩和効果が高い。ポリプロピレングリコールはオクチルメトキシシンナメートに対して、10〜50質量%の割合で配合することが好ましく、例えば、メトキシシンナメート7.5質量%に対して、ポリプロピレングリコールジメチルエーテルを2〜4質量%で配合した場合に、オクチルメトキシシンナメートの経皮吸収抑制効果が高い。【0016】皮膚外用剤の剤形は限定されない。例えば、液状、乳液状、ゲル状、ペースト状、クリーム状がある。日焼け止め化粧料の製品形態も制限されない。日焼け止め化粧料とは紫外線から皮膚を保護する化粧料を意味する。本発明の皮膚外用剤は、上記必須成分を、皮膚外用剤の製剤成分(例えば、保湿剤、油分、界面活性剤、増粘剤、金属封鎖剤、紫外線防止剤、薬剤、色素、香料)に配合し、目的の剤形に応じて、常法により製造される。【0017】【実施例】次に実施例により本発明を具体的に説明する。配合量は質量%を表わす。【0018】各化粧料について、下記の試験を行って、本発明の効果を確認した。【0019】「経皮吸収試験」試験方法:1.市販のラボスキン(ヘアレスマウス)をフランツ型拡散セルに装着する。2.拡散セルのドナー側に、脂溶性薬剤を配合した被験液を注入する。3.拡散セルのレシーバー側に、0.1%アジ化ナトリウム、0.5〜6%ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテルを加えたりん酸緩衝液(pH 7.4)を注入する。4.レシーバー側をマグネティックスターラーで撹拌しながら、恒温層で37℃に保つ。5.経時的にレシーバー側よりサンプリングを行う。6.HPLCにより被験物質の定量を行う。評価方法:レシーバー側へ透過した被験物質の累積透過量により、経皮吸収性を判定する。【0020】「連続皮膚刺激試験」試験方法:1.脂溶性薬剤を配合した被験液0.05mlをモルモットの背部2×2cmに塗布(1回目塗布)する。2.24時間後に2回目の塗布を行う。3.さらに24時間後に3回目の塗布を行う。評価方法:2回目及び3回目の塗布前及び3回目塗布後24時間後に、紅斑、浮腫等の皮膚反応を肉眼で観察する。評価は以下の基準で行い、3回の評点の平均値を皮膚反応スコアとする。皮膚反応の評価基準皮膚反応の程度 評点紅斑が全く認められないもの 0わずかな紅斑が認められるもの 1明らかな紅斑がみとめられるもの 2強紅斑あるいはわずかな浮腫、痂皮がみとめられるもの 3明らかな浮腫、痂皮が認められるもの 4【0021】1.紫外線吸収剤とポリプロピレングリコールジメチルエーテル(DMPPG)とを含有する化粧料「実施例1〜2」下記表1の処方のサンスクリーンを常法により製造した。経皮吸収試験及び連続皮膚刺激試験を行った。結果を図1及び図2に示す。ポリプロピレングリコールジメチルエーテルは、数平均分子量が2000のDMPPG2000、数平均分子量が1000のDMPPG1000を使用した。紫外線吸収剤はオクチルメトキシシンナメート(MCXという)を使用した。【0022】【表1】【0023】「図1の説明」実施例1及び2の化粧料は、比較例1(対照)よりも、24時間累積透過量が小さく、経皮吸収抑制効果を有することが確認できる。【0024】「図2の説明」実施例1及び2の化粧料は、比較例1(対照)よりも、皮膚刺激が小さいことが確認できる。【0025】「感作抑制試験」次に、実施例2(紫外線吸収剤とDMPPGとを配合)、比較例1(紫外線吸収剤を配合し、DMPPGを配合しない)、比較例2(紫外線吸収剤もDMPPGも配合しない)の化粧料について、下記のMaximization Test(MAX法)により、紫外線吸収剤の感作抑制効果を調べた。結果を「表2」に示す。この結果から、ポリプロピレングリコールジメチルエーテルは紫外線吸収剤に対して優れた感作抑制効果があることが分かる。【0026】「MAX法」(モルモット皮膚接触感作性試験)7〜10週齢の健常なハートレイ系モルモット1群5匹を使用し、MagnussonおよびKligmanのGPMT法(guinea pig maximization test, 1970 Allergic contact dermatitis in the guinea pig. Springfield. Illinois. C.C.Thomas)に準じて行った。感作処置は、下記▲1▼〜▲3▼の順に、モルモットの肩口左右2例、合計6ヶ所に皮内注射する。▲1▼ 0.1mLフロインド完全アジュバンド(Freund's complete adjuvant:以下、FCAと略す。Difco社製)の水乳化液(FCA:H2O=1:1,V/V)、▲2▼ 0.1mL被験物質溶液(5、7.5% MCX流動パラフィン溶液)▲3▼ ▲2▼の倍濃度のMCX流動パラフィン溶液とFCAの混合物、7日後、前日剃毛後10 W/V %ラウリル硫酸ソーダ/白色ワセリンを少量塗布しておいた注射部位に、被験物質溶液(5、7.5% MCX流動パラフィン溶液)0.2mLを48時間閉塞下に塗布し、感作処置を終了した。誘発試験は、上記操作終了後2週間目に、被験液10μl(表2記載の被験液)を、剃毛した背部および腹部皮膚に24時間開放下に塗布して行った。各試験に際しては、対照としてFCAの水乳化物のみを皮内注射しておいた同数の動物を同時使用し、非特異的皮膚刺激性反応を区別した。判定は、塗布後48時間目に、以下の判定基準に従って行った。感作率、評価点は、下記により求めた。感作率=皮膚反応を呈した動物数/感作処置した動物数評価点=Σ(紅斑の評点+浮腫の評点)/感作処置した動物数【0027】【表2】【0028】以下に、本発明の実施例を挙げる。いずれも、紫外線吸収剤の経皮吸収が抑制され、刺激緩和効果を有する。【0029】実施例3 サンスクリーンオクチルメトキシシンナメート 7.5DMPPG1000 2.0t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン 0.1二酸化チタン 5.0デカメチルシクロペンタシロキサン 30.0POE・メチルポリシロキサン共重合体 3.0有機変性モンモリロナイト 0.81,3−ブチレングリコール 5.0アルブチン 5.0防腐剤 適量香料 適量精製水 残余【0030】実施例4 クリーム(製法)Aの成分を加熱融解し、Bを攪拌しながら加える。ホモミキサーで処理し、乳化粒子を細かくした後、攪拌しながら急冷し、クリームを得る。【0031】実施例5 化粧水(製法)Bを調整する。別にエタノールにAのほかの成分を溶解してAを調整し、これをBに加えて可溶化し、ろ過して化粧水を得る。【0032】実施例6 乳液(製法)Bを調整し、70℃に保つ。Aの成分を混合し、加熱融解して70℃に保つ。BにAを加えてホモミキサーで均一に乳化、攪拌しながら急冷し、乳液を得る。【0033】実施例7 日焼け止めヘアージェル(製法)AをBに攪拌溶解し、Cを加えた後、分散機にて分散する。これにDを加え、攪拌し、目的のヘアージェルを得る。【0034】実施例8 日焼け止め乳化ファンデーション(製法)Aを攪拌後、十分に混合粉砕されたBを添加し、ホモミキサー処理する。Cを溶解後これに加えホモミキサー処理し、日焼け止め乳化ファンデーションを得る。【0035】【発明の効果】1)本発明の皮膚外用剤は、紫外線吸収剤のオクチルメトキシシンナメートの経皮吸収抑制効果に優れている。2)本発明の皮膚外用剤は、紫外線吸収剤のオクチルメトキシシンナメートの皮膚刺激緩和効果に優れている。3)本発明の皮膚外用剤は、紫外線吸収剤のオクチルメトキシシンナメートの感作抑制効果に優れている。4)本発明の皮膚外用剤は、紫外線吸収剤のオクチルメトキシシンナメートが経皮に吸収されないので、紫外線防止効果と安全性に優れている。【図面の簡単な説明】【図1】 紫外線吸収剤のオクチルメトキシシンナメートの24時間累積透過量を示すグラフである。【図2】 紫外線吸収剤のオクチルメトキシシンナメートの連続皮膚刺激試験結果を示すグラフである。 ポリプロピレングリコールジメチルエーテルを含有する皮膚外用剤。 オクチルメトキシシンナメートと、ポリプロピレングリコールジメチルエーテルとを含有する皮膚外用剤。 前記皮膚外用剤が日焼け止め化粧料である請求項2記載の皮膚外用剤。