タイトル: | 特許公報(B2)_ゼオライトβ触媒を使用するキシレン異性体のニトロ化法 |
出願番号: | 2002003282 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07C 201/08,C07C 205/06,C07B 61/00 |
ボヤパティ マノランジャン チャウダリー マネパリ ラクシュミ カンタム ナダクディティ サイレンドラ クマール コンペラ ビシュシャワラ ラム プラサド コンダプラム ヴィジヤ ラグァバン JP 4139111 特許公報(B2) 20080613 2002003282 20020110 ゼオライトβ触媒を使用するキシレン異性体のニトロ化法 カウンセル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ 599032822 玉利 冨二郎 100077470 立川 登紀雄 100067116 ボヤパティ マノランジャン チャウダリー マネパリ ラクシュミ カンタム ナダクディティ サイレンドラ クマール コンペラ ビシュシャワラ ラム プラサド コンダプラム ヴィジヤ ラグァバン 20080827 C07C 201/08 20060101AFI20080807BHJP C07C 205/06 20060101ALI20080807BHJP C07B 61/00 20060101ALN20080807BHJP JPC07C201/08C07C205/06C07B61/00 300 C07C 201/08 C07C 205/06 C07B 61/00 特開2000−095734(JP,A) 特開昭63−225339(JP,A) 特開昭51−136626(JP,A) 特開昭64−009960(JP,A) 特開昭58−208131(JP,A) 特開平07−070001(JP,A) J.Org.Chem.,1998年,63,8448-8454 6 2003212827 20030730 7 20041227 中島 庸子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ゼオライトβを触媒として使用することによってキシレン異性体をニトロ化する方法に関する。本発明は特に、固体酸触媒を使用し、従って廃酸および塩の処理を全く必要とせずに、キシレンをニトロ化する方法に関する。【0002】【従来の技術】ニトロ化は、一世紀にわたり、工業化学における活発な分野である。ニトロ化法は、ニトロ芳香族炭化水素のような多くの大容量化学物質の製造に使用される。直接ニトロ化によって一般に得られるものと異なる異性体比率の芳香族ニトロ化合物の混合物の製造、および一般に非反応性の化合物のニトロ化は、合成的に重要である。これらのニトロ芳香族炭化水素は、染料、医薬品、農薬、香料および農薬の重要な中間体である。ニトロ化において、一般に1,2−二置換ベンゼンは、多くの場合、一置換ベンゼンより多くの選択性の問題を生じる。【0003】キシレンのニトロ化は、H2SO4−HNO3系を使用する従来法によって行われる。混合H2SO4−HNO3を使用するキシレンのニトロ化における選択性は以下の通りである:o−キシレンからの3−ニトロ−o−キシレンおよび4−ニトロ−o−キシレンはそれぞれ55%および45%であり、m−キシレンからの2−ニトロ−m−キシレンおよび4−ニトロ−m−キシレンはそれぞれ14%および86%である。混合酸系は、一および二置換芳香族ニトロ化合物のニトロ化において、低異性体選択性を示すだけでなく、腐蝕性であり、常に過剰に使用され、過ニトロ化生成物または酸化副生物を生じる場合が多い。この方法の他の重大な欠点は、廃酸の処理である。【0004】最近、関心を集めていることは、環境に有害な化学物質に代わって使用される、ゼオライト、硫酸化ジルコニア、および特にフリーデル−クラフツニトロ化反応用のNafionのような環境に優しい固体酸触媒を開発することである。【0005】J.Org.Chem.,1961,26,2536を参照することができ、それによれば、無水酢酸中で、硝酸ウラン−三酸化窒素水錯体を使用して行われるo−キシレンのニトロ化によって、4−ニトロ−o−キシレンが製造された。上記の方法の短所は、高価かつ有害な金属錯体および系中で爆発性硝酸アシルを形成する多量の無水酢酸の使用と、反応は高発熱性反応である。【0006】J.Am.Chem.Soc.,1962,84,3684を参照することができ、それによれば、キシレンの異性体のニトロ化が、テトラメチレンスルホン中およびニトロメタン溶液中、20℃でニトロニウム塩を使用して行われた。テトラメチレンスルホンおよびニトロメタンを使用するo−およびm−キシレンのニトロ化合物の異性体分布は以下の通りであった:79.7%、68.6%(3−ニトロ−o−キシレン);20.3%、31.4%(4−ニトロ−o−キシレン);17.8%、14.6%(2−ニトロ−m−キシレン);82.2%、85.44%(4−ニトロ−m−キシレン)。上記の方法の短所は、高稀釈溶液の使用および過剰のニトロ化剤の使用であり、該方法は均質法である。【0007】J.Org.Chem.,1973,38,2271を参照することができ、それによれば、o−キシレンのニトロ化が、対応する塩化アロイルおよび硝酸銀から製造された硝酸アロイルによって誘発された。この方法の短所は、使用される試薬が不経済かつ高価な金属塩であり、ニトロ化に加えてベンゾイル化も起こることである。【0008】J.Am.Chem.Soc.,1974,96,2892を参照することができ、それによれば、キシレンのニトロ化がBF3によって触媒された。ニトロ生成物の異性体分布は以下の通りである:o−キシレンのニトロ化において、4−ニトロ−o−キシレン34.7%;3−ニトロ−o−キシレン65.3%;m−キシレンのニトロ化において、2−ニトロ−m−キシレン16.9%;4−ニトロ−m−キシレン83.1%。この方法の短所は、該方法が均質であり、収率が相対的に低いことである。【0009】J.Chem.Soc.,Perkin Trans,1,1974,1751を参照することができ、それによれば、o−およびm−キシレンのニトロ化が、室温において、ジルコニウム(IV)および鉄(III)のニトラト錯塩によって行われた。この方法の選択性は以下の通りである:o−キシレンのニトロ化において、4−ニトロ−o−キシレン65%および3−ニトロ−o−キシレン35%;m−キシレンのニトロ化において、2−ニトロ−m−キシレン10%および4−ニトロ−m−キシレン90%;それぞれZr(NO3)4およびFe(NO3)4NOを使用。この方法の短所は、高価なニトロ化剤の使用である。【0010】J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,1978,1076を参照することができ、それによれば、o−キシレンのニトロ化が、亜硝酸ナトリウムまたは硝酸塩を使用して、トリフルオロ酢酸中において、室温で攪拌しながら8時間にわたって行われた。この方法における4−ニトロ−o−キシレンの選択性は、NaNO2およびNaNO3をそれぞれ使用して47%および39%である。この方法の短所は、危険かつ爆発性であり、不経済であり、4−ニトロ−o−キシレンに対して選択性が低いことである。【0011】J.Org.Chem.,1978,38,4243を参照することができ、それによれば、m−キシレンのニトロ化が、ジクロロメタンを溶媒として使用して、無水硝酸およびトリフルオロメタンスルホン酸によって行われた。この方法の短所は、m−キシレンのモノニトロ異性体が形成されないことである(ジニトロ誘導体だけが形成された)。【0012】J.Org.Chem.,1978,43,4628を参照することができ、それによれば、n−ブチルニトレート、アセトンシアノヒドリンニトレートを使用し、過弗素化樹脂スルホン酸(Nafion−H)触媒で触媒して、ニトロ化が行われた。ニトロ化は、Nafion−H触媒上で硝酸および四酸化二窒素を使用しても行われた。変換は、o−、m−およびp−キシレンについてそれぞれ98%、98%および95%である。これらの方法の短所は、長い反応時間、発煙硝酸の使用および四酸化二窒素との反応についての長時間のワークアップ手順ならびに高価なニトロ化剤の使用である。さらに、Nafion−H樹脂は高価であり、サイクル毎に分解し、その結果、触媒の寿命が短い。【0013】J.Org.Chem.,1981,46,2706を参照することができ、それによれば、ジクロロメタンを溶媒として使用し、N−ニトロピラゾールを使用して、三フッ化ホウ素エーテル錯化合物によってニトロ化が触媒された。p−キシレンについての変換は96%である。この方法の短所は、過剰の芳香族化合物の使用、および均質法である。【0014】J.Org.Chem.,1981,46,3533を参照することができ、それによれば、アセトニトリル溶液中で、三フッ化ホウ素および硝酸銀を使用して、ニトロ化が触媒された。ニトロ異性体の選択性は以下の通りであった:o−キシレンのニトロ化において、4−ニトロ−o−キシレン37%、3−ニトロ−o−キシレン63%;m−キシレンのニトロ化において、2−ニトロ−m−キシレン13%および5−ニトロ−m−キシレン87%。この方法の短所は、長い反応時間、困難な反応条件およびワークアップ手順である。【0015】J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,1993,1591を参照することができ、それによれば、オゾンを連続供給しながら、過剰の二酸化窒素の存在下に、溶媒としてのジクロロメタン中で、0℃において、o−キシレンのニトロ化が行われた。ニトロ異性体の選択性は以下の通りであった:o−キシレンのニトロ化において、4−ニトロ−o−キシレン46%、3−ニトロ−o−キシレン34%;m−キシレンのニトロ化において、2−ニトロ−m−キシレン9%および4−ニトロ−m−キシレン78%。この方法の短所は、高価な、環境に優しくないオゾンの連続供給が必要なことである。【0016】J.Org.Chem.,1998,63,8448を参照することができ、それによれば、穏やかな条件下に、βゼオライトを触媒として使用し、理論量の硝酸よび無水酢酸を使用して、o−キシレンのニトロ化が行われた。変換は、99%であり、低選択性であった。この方法の短所は、他の異性体と一緒に23%の収率で3,4−ジメチル−1−アセトキシベンゼンが形成され、硝酸との爆発性混合物を形成する無水酢酸を使用することである。【0017】混合酸系の使用における短所を克服するために、我々は、既に、ケイ酸アルミニウムを触媒として使用し、硝酸をニトロ化剤として使用する一置換芳香族炭化水素のニトロ化法を開発した。我々は、米国、ヨーロッパおよび日本において特許出願し、2000年に既に米国特許第6,034,287号を取得し、ヨーロッパ特許第1004570 A1号および日本国特開2000−95734を取得した。本明細書において、我々は、無水酢酸の使用を必要とせず、硝酸およびβゼオライト触媒を使用することによる、二置換ベンゼン、キシレンの全ての異性体のニトロ化を開示する。反応は、室温〜溶媒(DCE)の還流温度で行われた。反応は、o−キシレンおよびHNO3を0.80〜1.50のモル比で使用することによって行われた。o−キシレンから製造される4−ニトロ−o−キシレンの選択性は68%であり、m−キシレンから製造される4−ニトロ−m−キシレンの選択性は87%である。キシレンおよびHNO3を1:1.2のモル比で使用してニトロ化を行う場合、p−キシレンから製造される2−ニトロ−p−キシレンの選択性は、消費されたp−キシレンに基づいて100%である。反応において形成され、硝酸中に存在する水の共沸除去は、固体酸触媒の再使用可能にする。【0018】【発明が解決しようとする課題】本発明の主要な目的は、ゼオライト触媒を回分法で使用する、4−ニトロ oおよびm−キシレンへの高選択性を有するキシレン異性体のニトロ化法を提供することである。【0019】本発明の他の目的は、改質クレー触媒を使用する、4−ニトロ o−およびm−キシレンへの高選択性を有するキシレン異性体のニトロ化法を提供することである。【0020】本発明のさらに他の目的は、一般的な真空蒸留を使用し、従来法によって過剰の硝酸を除去して、異性体を分離することである。【0021】【課題を解決するための手段】本発明のさらに他の目的は、反応の間に形成され、硝酸中に存在する水を共沸除去し、それによって固体酸触媒の再使用を可能にすることである。【0022】従って、本発明は、ゼオライト触媒を回分法で使用する、4−ニトロ oおよびm−キシレンへの高選択性を有するキシレン異性体のニトロ化の改善された方法を提供し、該方法は、ゼオライトβ触媒の存在下に、溶媒の還流温度において、約4時間にわたって、1:0.80〜1:1.5のキシレンと硝酸のモル比において基質を硝酸でニトロ化し、得られたニトロ化合物を従来法で回収することを含んで成る方法である。【0023】本発明の実施態様において、使用される硝酸は、管理された方法で、所定時間内に添加される。【0024】さらに他の実施態様において、使用される硝酸は約70%の硝酸である。【0025】さらに他の実施態様において、キシレンと使用される硝酸の比は、好ましくは1:1.0〜1:1.25である。【0026】さらに他の実施態様において、反応に使用される溶媒は、ジクロロエタン、ジクロロメタン、四塩化炭素およびキシレン自体から成る群から選択される。【0027】さらに他の実施態様において、反応は、好ましくは90〜120℃の温度で、約4時間にわたって行われる。【0028】下記実施例は、本発明を例示するものであり、従って、本発明の範囲を限定するものであると理解すべきではない。【0029】【実施例】実施例150mmolのo−キシレンおよび500mgの触媒を、10mLのジクロロエタンと一緒に、100mLの二口丸底フラスコに入れ、還流温度まで加熱する。4.23mLのHNO3(70%)を4時間にわたって連続的に添加する。反応において形成された水を、Dean−Stark装置で分離する。反応が終了した際に、反応混合物を濾過する。塩基洗浄に付して、過剰の酸を除去する。形成された異性体を真空蒸留によって分離する。硝酸の添加速度を変更して、多くのo−キシレンのニトロ化反応を行い、表1に要約する。硝酸の最適添加速度は、1mL/時であることが明らかである。【0030】【表1】【0031】a: o−キシレン/70%HNO3のモル比は、1:1.25である。b: 過剰の出発物質を使用する。c: o−キシレン/70%HNO3のモル比は、1:1.2である。1: 全ての反応を還流温度で行った。変換は最大40%である。【0032】実施例250mmolのm−キシレンおよび500mgの触媒を、10mLのジクロロエタンと一緒に、100mLの二口丸底フラスコに入れ、還流温度まで加熱する。4.23mLのHNO3(70%)を4時間にわたって連続的に添加する。反応において形成された水を、Dean−Stark装置で分離する。反応が終了した際に、反応混合物を濾過する。塩基洗浄に付して、過剰の酸を除去する。形成された異性体を真空蒸留によって分離する。【0033】実施例350mmolのp−キシレンおよび500mgの触媒を、10mLのジクロロエタンと一緒に、100mLの二口丸底フラスコに入れ、還流温度まで加熱する。4.23mLのHNO3(70%)を4時間にわたって連続的に添加する。反応において形成された水を、Dean−Stark装置で分離する。反応が終了した際に、反応混合物を濾過する。塩基洗浄に付して、過剰の酸を除去する。形成された異性体を真空蒸留によって分離する。【0034】【発明の効果】本発明の主要な長所は以下の通りである。1.本発明の方法は極めて簡単である。2.触媒が、安価であり、性質において非腐蝕性かつ不均質性である。3.少量の硝酸を使用する。4.方法が経済的である。5.方法が短時間で行われる。6.この方法において形成される排出物の量は最少にされる。 ゼオライト触媒を回分法で使用する、4−ニトロ oおよびm−キシレンへの高選択性を有するキシレン異性体のニトロ化の改善された方法であって、ゼオライトβ触媒の存在下に、溶媒の還流温度で、約4時間にわたって、1:0.80〜1:1.5のキシレン/硝酸のモル比において基質を硝酸でニトロ化し、得られたニトロ化合物を従来法によって回収することを含んで成る方法。 使用される硝酸が、管理された方法で、所定時間内に添加される請求項1に記載の改善された方法。 使用される硝酸が約70%の硝酸である請求項1および2に記載の改善された方法。 使用されるキシレン/硝酸のモル比が好ましくは1:1.0〜1:1.25である請求項1〜3に記載の改善された方法。 反応に使用される溶媒が、ジクロロエタン、ジクロロメタン、四塩化炭素およびキシレン自体から成る群から選択される請求項1〜4に記載の改善された方法。 反応が、好ましくは90〜120℃の温度で、約4時間にわたって行われる請求項1〜5に記載の改善された方法。