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タイトル:特許公報(B2)_新規カルシウム拮抗剤
出願番号:2001576049
年次:2010
IPC分類:A61K 31/7072,A61P 7/02,A61P 9/10,A61P 43/00,C07H 19/10


特許情報キャッシュ

田中 俊雄 菅谷 純子 岸 雄一郎 松川 晃 JP 4601238 特許公報(B2) 20101008 2001576049 20000417 新規カルシウム拮抗剤 扶桑薬品工業株式会社 000238201 青山 葆 100062144 矢野 正樹 100106231 田中 俊雄 菅谷 純子 岸 雄一郎 松川 晃 20101222 A61K 31/7072 20060101AFI20101202BHJP A61P 7/02 20060101ALI20101202BHJP A61P 9/10 20060101ALI20101202BHJP A61P 43/00 20060101ALI20101202BHJP C07H 19/10 20060101ALN20101202BHJP JPA61K31/7072A61P7/02A61P9/10A61P43/00 111C07H19/10 A61K 31/7072 A61P 7/02 A61P 9/10 A61P 43/00 C07H 19/10 CAplus/CASREACT/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus(JDreamII) 特開2000−247891(JP,A) Stroke,1997,28,p2053-2059 3 JP2000002477 20000417 WO2001078749 20011025 16 20070208 瀬下 浩一 技術分野本発明は、ヌクレオシド5’−アルキルホスフェート化合物の新しい用途、特にウリジン5’−アルキルホスフェート化合物またはアデノシン5’−アルキルホスフェート化合物のカルシウム拮抗剤としての用途に関する。背景技術感染症は、抗生物質などの薬剤によって克服されつつあるが、他方、循環器系疾患は、食生活の西洋化に伴う摂取脂肪量の急激な増加と日本古来からの高塩化ナトリウム食とが相まって、症例の拡大を見つつあり、高齢化が進む将来においてはゆゆしい問題になることが懸念されている。このような状況を反映して、種々の循環器用薬剤が開発されてきているが、中でもカルシウム拮抗作用を機序とする循環器用薬にはその優れた薬効から大きな期待が寄せられている。カルシウム拮抗剤は、血管平滑筋細胞へのカルシウムイオンの流入を抑制することにより、冠動脈の太い部分および細い部分の両方を弛緩させ、これにより冠動脈血流量を増加させ、心筋への酸素供給を増大させる。従来のカルシウム拮抗剤は、主にニフェジピン、ベラパミルおよびジルチアゼムの三つのタイプに分けられるが、これらのうち、ニフェジピンタイプ(ジヒドロピリジンタイプ)のカルシウム拮抗剤は、血管のみならず、心筋細胞におけるカルシウムイオンの流入も抑制する作用を有しており、ベラパミルやジルチアゼムに比較して、相対的に心臓抑制作用が弱いと理解されている。発明の目的カルシウム拮抗剤は、現在、狭心症や心筋梗塞のような虚血性心疾患の治療薬として注目を浴びるに至っており、より強力かつ安全な効力を有するカルシウム拮抗剤の提供が、常時、要望されている。本発明の主な目的は、このような新規カルシウム拮抗剤を提供することである。以下、添付の図面を参照し、本発明のこの目的および他の目的ならびに効果について、さらに説明する。発明の概要本発明者らも、このような要望に応えるべく、種々のヌクレオシド化合物について種々研究を重ねるうち、ヌクレオシド5’−アルキルホスフェート化合物、とりわけウリジン5’−アルキルホスフェート化合物またはアデノシン5’−アルキルホスフェート化合物が顕著なカルシウム拮抗作用を有する事実を確認し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。ウリジン類化合物については、本発明に先立って、ウリジン5’−モノホスフェート(UMP)の血小板凝集作用の有無を検討した事実が存在するが、陰性の結果が得られた旨、報告されている(薬学雑誌、111(9)504−509(1991))。また、ウリジン5’−アルキルホスフェート類は、酵母菌のαおよびαハプロイド(1倍体)細胞間の有性凝集を阻害するが、細胞の成長には影響しないことが報告されている(FEMS Microbiol.Lett.,147,17−22(1997))。この凝集阻害は、ウリジン5’−アルキルホスフェート類の酵母菌細胞壁への直接の作用によるものではないことが明らかになっている。本発明の要旨は、式I:(式中、Rは直鎖または分岐鎖状アルキル基を示し、Bはヌクレオシドを構成する塩基を示す。)で表されるヌクレオシド5’−アルキルホスフェート化合物(以下、単に化合物(I)と称する)を有効成分とするカルシウム拮抗剤、特に、血小板凝集抑制剤にある。発明の詳細な説明上記式Iにおいて、Rで示されるアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のいずれであってもよい。その炭素数は、通常30を超えることはなく、好ましくは4〜24、さらに好ましくは16〜20である。このようなアルキル基の具体例としては、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシルなどの直鎖状アルキルまたはゲラニル、ファルネシルなどの分岐鎖状アルキルを挙げることが出来る。また、Bで示される、ヌクレオシドを構成する塩基としては、アデノシン、グアノシン、シチジンまたはウリジンを挙げることができる。現時点で最も好ましいと考えられるものは、Rが炭素数16のn−ヘキサデシル基であり、かつBがアデノシンまたはウリジンを表す場合、すなわち、アデノシン5’−ヘキサデシルホスフェート(AMPC16)またはウリジン5’−ヘキサデシルホスフェート(UMPC16)である。有効成分としての本発明の化合物(I)は、遊離形のみならず、医薬的に許容される限り、水和物、塩、エステルなど、生体内で遊離形を与えることの出来る任意の形で使用されてよい。したがって、以下の記載において、化合物(I)は、遊離形のみならず、そのような医薬的に許容される任意形をも包括して意味するものとする。本発明の化合物(I)、すなわちヌクレオシド5’−アルキルホスフェートは、一般にヌクレオシド5’−モノホスフェート(式Iにおいて、R=Hに相当する化合物)から自体常套の方法により合成することができる。例えば、ヌクレオシド5’−モノホスフェートおよび種々の直鎖状または分岐鎖状アルキルアルコールをt−ブチルアルコールに溶解し、ジシクロヘキシルカルボジイミドの存在下で反応させることにより、製造することが出来る。反応温度は、溶媒の種類により異なるが、通常60〜100℃、好ましくは70〜90℃であり、反応時間は、反応温度により異なるが、通常2〜20時間、好ましくは6〜8時間である。化合物(I)は、後に記載するように、ウサギの血小板を使用する凝集試験において、阻害効果を有する事実が確認された。また、化合物(I)について、細胞内カルシウムイオン流入抑制作用を有する事実も確認された。したがって、化合物(I)は、カルシウム拮抗剤として有用なものであり、さらに血小板凝集抑制剤として有用なものである。化合物(I)は、例えば、経口、非経口、口腔、経直腸または経皮投与により、すなわち薬剤を適用するのに都合のよい方法で投与することが出来る。経口投与のためには、液体または固体、たとえば、シロップ、懸濁液、エマルジョン、錠剤、カプセルまたはロゼンジとして処方できる。液体処方は、一般に、化合物(I)を、沈殿防止剤、保存剤、フレーバー剤、着色剤などのような任意の添加剤と共に、適当な液体担体(例えば、エタノール、グリセリン、ポリエチレングリコール、油、水)中へ、懸濁または溶解させて調製する。錠剤形である組成物は、固体処方の製造に慣用的な適宜の医薬担体を用いて製造することが出来る。このような担体の例は、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、ラクトース、シュークロースおよびセルロースを包含する。カプセル形である組成物は、慣用的カプセル化操作を用いて製造できる。たとえば、活性成分含有のペレットを標準担体の使用により調製し、ついで、硬ゼラチンカプセルに充填することができる。別法として、いずれか適当な医薬担体、たとえば水性ガム、セルロース、シリケートまたは油を用いて分散液または懸濁液を調製し、ついで該分散液または懸濁液を軟ゼラチンカプセルに充填することができる。化合物(I)は、また、ボーラス注射または点滴により非経口投与してもよい。典型的な非経口用組成物は、該化合物の滅菌水性担体または非経口的に許容される油中、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、レシチン、落花生油またはゴマ油中溶液または懸濁液からなる。別法として、該溶液を凍結乾燥し、ついで、投与直前に適当な溶媒で復元してもよい。本発明の医薬組成物は、錠剤、カプセルまたはアンプルのような単位投与形であるのが好ましい。経口投与用の各投与単位は、1〜250mg(非経口投与では、好ましくは0.1〜60mg)の化合物(I)(遊離塩基として換算)を含有するのが好ましい。成人患者の場合、一日の投与量は、たとえば化合物(I)(遊離塩基として換算)が、1mg〜500mg、好ましくは1mg〜250mg(例えば、5〜200mg)の経口用量、あるいは0.1mg〜100mg、好ましくは0.1mg〜60mg(例えば、1〜40mg)の静脈内、皮下または筋肉内用量であり、それを一日に1〜4回投与する。また、化合物(I)を、好ましくは一日当たり400mgまでの用量で、連続的静脈内注入により投与してもよい。かくして、経口投与による一日の全用量は、1〜2000mgの範囲にあり、非経口投与による一日の全用量は0.1〜400mgの範囲にある。適当には、該化合物を連続的治療の期間中、たとえば1週間またはそれ以上の期間投与する。以下、本発明の化合物(I)の製造例、製剤例および試験例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。製造例ヌクレオシド5’−アルキルホスフェート化合物は、Machida K.らの方法(FEMS Microbiol.Lett.,147,17−22(1997))により合成した。例えば、ウリジン5’−ヘキサデシルホスフェート(I:R=C16H33、B=ウリジン)(UMPC16)の場合、以下のごとく合成される。ウリジン5’−モノホスフェート(600μmol)およびヘキサデシルアルコール(6mmol)を20mLのt−ブチルアルコールに溶解した後、3mmolのジシクロヘキシルカルボジイミドを加え、80℃で20時間加熱する。反応終了後、生成した沈殿を濾別し、t−ブチルアルコールを減圧下に除去する。残渣をヘキサンおよびアセトンの混液(1:1)で数回洗浄し、乾燥した後、クロロホルムおよびメタノールの混液(95:5)に溶解する。これを同溶液にて作成したシリカゲルカラムに負荷し、カラムを同液で充分洗浄してジシクロカルボジイミドを流出させる。以後、メタノールの濃度を順次、上昇させることによって、ウリジン5’−ヘキサデシルホスフェートを溶出する。溶出液から溶媒を減圧下に除去することにより、白色の沈殿を得た。対ウリジン5’−モノホスフェートあたりの収率は、32.4%であった。製剤例1(静脈内注射)化合物(I) 1−40mgバッファー pH約7まで溶媒 100mlまで製剤例2(ボーラス注射)化合物(I) 1−40mgバッファー pH約7まで共溶媒 5mlまで上記製剤例1および2において、バッファーの具体例としてはクエン酸塩、リン酸塩および水酸化ナトリウム/塩酸を、溶媒の具体例としては水を、共溶媒の具体例としてはプロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびアルコールを挙げることができる。製剤例3(錠剤)化合物(I) 1−40mg希釈剤/充填剤 50−250mg結合剤 5−25mg崩壊剤 5−50mg滑沢剤 1−5mg上記製剤例3において、希釈剤/充填剤の具体例としては微結晶セルロース、ラクトースおよび澱粉を、結合剤の具体例としてはポリビニルピロリドンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースを、崩壊剤の具体例としてはナトリウム澱粉グリコレートおよびクロスポビドンを、滑沢剤の具体例としてはステアリン酸マグネシウムおよびステアリルフマル酸ナトリウムを挙げることができる。製剤例4(経口用懸濁液)化合物(I) 1−40mg沈殿防止剤 0.1−10mg希釈剤 20−60mg保存剤 0.01−1.0mgバッファー pH約5−8まで共溶媒 0−40mgフレーバー 0.01−1.0mg着色剤 0.001−0.1mg上記製剤例4において、沈殿防止剤の具体例としてはキサンチンガムおよび微結晶セルロースを、希釈剤の具体例としてはソルビトール溶液、典型的には水を、保存剤の具体例としては安息香酸ナトリウムを、バッファーの具体例としてはクエン酸塩を、共溶媒の具体例としてはアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびシクロデキストリンを挙げることができる。試験例1.試験材料と試験方法1−1.試験材料試験化合物としてのウリジン5’−オクチルホスフェート(I: R=C8H17)(UMPC8)、ウリジン5’−ドデシルホスフェート(I: R=C12H25)(UMPC12)、ウリジン5’−エイコシルホスフェート(I: R=C20H41(UMPC20)、ウリジン5’−テトラコシルホスフェート(I: R=C24H49)(UMPC24)およびアデノシン5’−ヘキサデシルホスフェート(AMPC16)は、それぞれ、製造例の方法に準じて合成した。血小板凝集誘導剤としての1−ヘキサデシル−2−アセチル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(PAF)は、Bachem Feinchemikalien AG(Bubendorf,Switzerland)から購入したものを使用した。カルシウム−イオン透過担体「A23187」、ウシ血漿由来トロンビン、アラキドン酸、パルミチン酸、ヘキサデシルアルコール、アデノシン5’−ジホスフェート(ADP)、イオノマイシンカルシウム塩およびウシ血清アルブミン(BSA、fraction V,必須脂肪酸を含まない)は、Sigma Chemical Co.(St.Louis,MO,USA)の製品を用いた。ヌクレオシド5’−アルキルホスフェート化合物および脂質は、クロロホルム−メタノール−水の展開溶媒系でシリカゲル60Hプレートを用いた薄層クロマトグラフィーにより単一スポットを示すか、あるいは、メタノール−水−アセトニトリルの溶媒系でODSカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより単一ピークを示すものを用いた。フラ2AMとフラ2は、同仁(熊本、日本)の製品を用いた。塩酸ベラパミル、12−ミリスチン酸13−酢酸ホルボール(PMA)、フィコール−ハイパーク液、および塩化ピアシナノールは、それぞれ和光純薬(東京、日本)、Research Biochemicals International(Natick,MA,USA)、アマシャム・ファルマシア・バイオテク(東京、日本)およびナカライテスク(京都、日本)から入手した。溶媒は全ての試薬が特級である。ヌクレオシド5’−アルキルホスフェート化合物の機能としての臨界ミセル濃度(CMC)は、塩化ピナシアノール色素の可視吸収スペクトル(595nm)を測定することにより決定した(Nunn,CCら、J.Phys.Chem.,86,3271−3272(1982))。バッファー組成は、次のとおりである:(1)基本タイロード(Tyrode)液:NaCl 8.01g/L、KCl 0.195g/L、MgCl2 6H2O 0.215g/L、NaHCO3 1.02g/L、グルコース 1.01g/L、pH7.2;(2)Ca2+を含まずEDTAを含んだタイロード/ゼラチン:バッファー(1)と同じであるが、ゼラチン(2.5g/L)とNa2EDTA(0.373g/L)を含む、pH6.5;(3)Ca2+を含んだタイロード/ゼラチン:バッファー(1)と同じであるが、CaCl2 2H2O(0.143g/L)を含む、pH7.2;(4)HEPES−EDTAを含む緩衝性生理食塩水:HEPES 1.00g/L、NaCl 8.01g/L、KCl 0.195g/L、デキストロース 1.01g/L、Na2 EDTA 0.373g/L、pH7.4。ウサギ血小板の調製:プラスチック容器やシリコン処理したガラス製容器が全ての血小板の調製と刺激実験に用いられた。洗浄されたウサギの血小板は、スガタニらの方法(J.Biol.Chem.,262巻、5740頁、1987年)を一部修正して調製した。それぞれ45mL分のウサギ血液を、5mLの41mMクエン酸−85mMクエン酸三ナトリウム−2%グルコース溶液中で加え、170gで10分間遠心分離した。血小板が豊富な血漿である上清多血小板血漿(platelet−richplasma:PRP)は、10mLのフィコール−ハイパーク液で下層にし、750gで20分間遠心分離した。血小板層は、0.1mMのEDTAを含んだ40mLのHEPES−緩衝性生理食塩水(pH7.2)と穏やかに混合し、0.2mLのフィコール−ハイパーク液に重層し、750gで、10分間遠心分離した。再び、血小板層を0.1mMのEDTAを含んだ40mLのHEPES−緩衝性生理食塩水(pH7.2)で懸濁し、750gで10分間遠心分離した。血球は、0.1mMEDTAを含んだタイロード/ゼラチン(pH6.5)で、1.0×109cells/mLとなるように懸濁した。1−2.試験方法(血小板凝集試験)血小板(1×108cells,400μL)は、1mM Ca2+を含んだタイロード/ゼラチン緩衝液中で刺激を受け、活性化される。凝集活性は、凝集測定器(Nikko Hematracer,PAT−2A)を使って、光透過の変化として測定される。0.05%エタノール−0.005%ジメチルスルホキシドを含んだ生理食塩水に溶解させたウリジン5’−アルキルホスフェートや生理食塩水に溶解させたベラパミルは、特に示さない場合は、PAF等の刺激剤を添加する1分前に、反応系に添加される。ただし、グアノシン5’−O−(3−チオトリホスフェート)(GTPγS)により誘発される血小板凝集に対する試験では、膜非透過性であるGTPγSを効果的に血小板サイトゾルの中へ送達させるために、血小板をサポニン(3.3μg/mL)と1分間インキュベートし、予め血小板の膜透過性を高めておいた。血小板凝集阻害の割合は、[(コントロール反応−阻害反応)/コントロール反応]×100で計算する。IC50は、添加量−反応量曲線の回帰分析によって得られる。([3H]acetyl−PAFとの結合性)0.1%のBSAおよび1mMのCa2+を含有するタイロード−ゼラチン緩衝液(pH7.2)中で、血小板(2.5×108cells/mL)をUMPC16(1×10−5M)と1分間インキュベートした後、37℃で[3H]acetyl−PAF(1×10−9M)を添加した。結合試験は、ポリプロピレンチューブ中で行った。3分間インキュベーションした後、400μLの血小板を取り出し、50μLのジブチルフタレート/ジオクチルフタレート混液(3:1、V/V)を積層し、遠心分離(10,000×g、60秒)により懸濁培地から分離した。続いて、400μLの0.1%BSA/生理食塩液で洗浄した。血小板ペレットは、300μLの1%(w/v)トリトンX−100液に再懸濁し、血小板結合放射活性を液体シンチレーションカウンターで測定した。特異的結合は、1000倍量の過剰の非ラベルPAFの存在下、または非存在下における[3H]acetyl−PAF結合との差として計算した。(サイトゾル中の遊離カルシウム濃度の測定)0.1mMのEDTAを含んだHEPES−緩衝性生理食塩水(pH7.4)中に懸濁したウサギ血小板(1×109cells/mL)は、1×10−6Mのフラ2−アセトキシメチルエステルと、37℃45分間インキュベートして細胞内に取り込ませ、細胞外色素を取り除くために1度洗浄した。0.1mM EDTAを含んだタイロード/ゼラチン緩衝液(pH6.5)で1×109cells/mL濃度となるように再懸濁した。この血小板懸濁液(0.48mL)を、丸底試験管に分取し、外液中のCa2+([Ca2+]0)濃度が1mMとなるようにCaCl2を添加した。その後、これらのサンプルは、特注のキュベットホルダーに移し、記録計を備えた日本分光(東京、日本)蛍光分光光度計CAF−100中に設置し、37℃に保温した。試験管内の磁石を回転させ、絶えず細胞を攪拌した。少なくとも5分間37℃に保った後、細胞は、0.01mMの前述した濃度のウリジン5’−アルキルホスフェートで1分間、次いで、0.01mLの前述した濃度の凝集惹起物質を添加することにより、活性化した。フラ2蛍光は、340nm(F340)と380nm(F380)(それぞれ誤差±5nm])の励起波長で連続的に測定した。[Ca2+]iの測定は、相当する発光シグナル(500±10nm)を、R340/380と表す比シグナル(F340/F380)と同様に計測した。細胞内Ca2+濃度[Ca2−]iは、次の式から算出できる(G.Grynkiewiczet al.,J.Biol.Chem.,260巻、3440頁、1985年)。[Ca2+]i=Kd×B×[(R−Rmin)/(Rmax−R)]ただし、Kd:Ca2+に対するフラ2の解離定数で、in vivoでは224nMと仮定する式から算出できる(G.Grynkiewicz et al.,J.Biol.Chem.,260巻、3440頁、1985年); B:Ca2+を含んだ溶液中でのF380に対するCa2+を含まない溶液中でのF380の割合;R:F340/F380で表される蛍光比; Rmax:20%TritonX−100を0.01mL添加し、細胞を溶解したときの細胞内フラ2による最大発光シグナル値; Rmin:Rmaxの測定後、150mM Tris/450mM EGTAを0.01mL添加し、Ca2+を除去したときの発光シグナル値。いずれの実験も、それぞれの阻害剤について3〜4回測定した。また、血小板反応蛍光、色素の漏れおよび蛍光標識の影響を最小限に止めるために、実験を1時間以内に完了するように設定した。データ表示:表や図に示した結果は、調整した血小板を分離して用い、少なくとも2回行った実験を表し、特別の場合を除き、複数回の平均値(±平均の範囲)を提供している。2.試験結果2−1.血小板凝集を惹起するPAFに対するUMPC16の効果PAFに対する血小板凝集に対するUMPC16の投与量に依存的な効果を、図1に示す。すなわち、図1は、血小板凝集を惹起するPAFに対するUMPC16の効果を示す図であって、Aは凝集を惹起するPAFに対するUMPC16の異なった濃度における効果を示し、Bは血小板凝集を惹起するPAFに対するUMPC16とパルミチン酸の投与量依存的効果の比較を示し、Cは種々の濃度のPAFによる血小板凝集に対するUMPC16の阻害活性を示す。図1のAにおけるa〜fは、次の実験条件を示す。すなわち、1mM CaCl2を含んだタイロード/ゼラチン緩衝液(pH7.2)中の洗浄ウサギ血小板(1×108cells,0.38mL)を、2.0%エタノール−2.0%ジメチルスルホキシドを含んだ生理食塩水に溶解したUMPC16(指示された濃度)(10μL)と、1分間プレインキュベートし(a)、その後0.1%BSAを含んだ生理食塩水に溶解したPAF(10μL)(最終濃度8×10−11M)に、2分間(PAF刺激により最大反応が得られる時間)、暴露した(b)。血小板凝集の阻害率を上記の方法により計算し、結果を複数個の平均値で示した(±平均値の範囲)。cは媒介物のみ、dは6×10−6M、eは8×10−6M、fは1×10−5Mの場合を示す。図1のAに示すように、UMPC16は、8×10−11M PAFによる血小板の形態、変化を抑制しなかったが、血小板凝集を阻害した。UMPC16による凝集阻害は、UMPC16とPAFの濃度に依存した(図1のBとC参照)。一方、1〜10μM濃度のパルミチン酸(UMPC16のアルキルの一部から成る)は、PAFによる血小板凝集を抑制しなかった(図1のB)。2−2.血小板凝集を惹起するPAF、トロンビン、アラキドン酸、ADP、A23187およびPMAに対するUMPC16の効果UMPC16による血小板凝集阻害は、PAFに対してのみ惹起されるのか検討するために、種々の凝集惹起物質に対するUMPC16の効果を試験した。すなわち、2−1(図1)の場合と同様に、血小板(1×108 cells,0.38mL)を1分間UMPC16とプレインキュベートし、その後凝集惹起物質(10μL)、すなわち0.1%BSAを含んだ生理食塩水に溶解したPAF(最終濃度8×10−11M)、生理食塩水に溶解したトロンビン(最終濃度0.02U/mL)、4%エタノールを含んだ生理食塩水に溶解したアラキドン酸(最終濃度2×10−5M)、生理食塩水に溶解したADP(最終濃度2.5×10−5M)、4%ジメチルスルホキシドを含んだ生理食塩水に溶解したA23187(最終濃度2×10−7M)および4%エタノールを含んだ生理食塩水に溶解したPMA(最終濃度2×10−8M)に、それぞれ2分、4分、2分、2分、4分および30分間(媒介物の存在下、凝集惹起物質で刺激することにより最大反応が得られる時間)、暴露した。血小板凝集の阻害率は、上記方法で計算し、結果を複数個の平均値で、図2に示した(±平均値の範囲)。図2から明らかなように、血小板凝集を惹起するトロンビン、アラキドン酸、ADPは、血小板凝集を惹起するPAFと同様にUMPC16により明らかに抑制された。阻害の強さは、凝集惹起物質とUMPC16の濃度に依存した。凝集を惹起するPAF(8×10−11M)、トロンビン(0.02U/mL)、アラキドン酸(2×10−5M)およびADP(2.5×10−5M)に対するIC50値は、それぞれ2.4×10−6M、5.4×10−6M、2.1×10−6Mおよび2.2×10−6Mであった(データを示さず)。反対に、2×10−8Mから2×10−7Mの濃度のA23187による血小板凝集と、2×10−9Mから2×10−7Mの濃度のPMAによる血小板凝集は、1×10−5MのUMPC16により阻害されなかった。これらの結果は、UMPC16がPAFの刺激のみならず、受容体を介した刺激を阻害するが、A23187により惹起される細胞外カルシウムの流入や、プロテインキナーゼC経路の活性化には影響を及ぼさなかったことを示している。また、UMPC16の濃度依存効果を図3に示す。実験の結果、UMPC16は、PAF、トロンビン、アラキドン酸、ADPおよびGTPγSにより誘導される血小板凝集を濃度依存的に阻害することが明らかとなった。なお、GTPγS(最終濃度2×10−5M)により誘発される血小板凝集に対する試験では、膜非透過性であるGTPγSを効果的に血小板サイトゾルの中へ送達させるために、UMPC16(最終濃度1×10−5M)でプレインキュベートされた後、サポニン(3.3μg/mL)と1分間インキュベートされ、予め血小板の膜透過性を高めた。図3のa〜cは、それぞれ、指示された濃度のUMPC16とのプレインキュベート(a)、サボニンとのインキュベート(b)(GTPγS実験のみ)、および各種アゴニストの曝露(c)を示す。また、( )内の数字は、UMPC16の相対濃度を示す。すなわち、(o)は、媒介物のみのデータを表している。2−3.血小板凝集を誘発するPAFとトロンビンに対するヌクレオシド5’−アルキルホスフェート化合物(I)の阻害効果各種ヌクレオシド5’−アルキルホスフェート化合物(I)、すなわちUMPC8、UMPC12、UMPC16、UMPC20、UMPC24およびAMPC16の血小板凝集阻害作用を調べた。すなわち、2.0%エタノール−2.0%ジメチルスルホキシドを含む生理食塩水に溶解した所定濃度のUMPC8、UMPC12、UMPC16、UMPC20、UMPC24またはAMPC16(10μL)を、1mM CaCl2含有タイロード/ゼラチン緩衝液(pH7.2)中の血小板(1×108 cells,0.38mL)に1分間暴露し、その後0.1%BSAを含む生理食塩水に溶解したPAF(最終濃度8×10−11M)(A)または生理食塩水に溶解したトロンビン(最終濃度0.02U/mL)(B)に、それぞれ2分または4分間暴露する。血小板凝集の阻害率を、上記した方法により計算し、結果を図4に複数個の平均値で示した(±平均値の範囲)。図4のAやBから明らかなように、これらのヌクレオシド5’−アルキルホスフェート化合物(I)はPAFやトロンビンによる血小板凝集に影響を及ぼす。極頭基のメチレン鎖の長さを引き延ばしたC16やC20を含むヌクレオシド5’−アルキルホスフェート類は、血小板凝集を惹起するPAFをPAF刺激に対する阻害が報告(K.D.Newman et al.,J.Clin.Invest.,61巻、395頁、1978年;T.C.Lee et al.,Arch.Biochem.Biophys.,223巻、33頁、1983年;F.H.Valone et al.,Thromb,Res.,40巻、385頁、1985年)されているカルシウムチャネル阻害剤であるベラパミルより強く阻害した。つまり、1×10−5MのUMPC16と1×10−5Mのベラパミルは、それぞれ対照試験に対し、8×10−11M PAFによる凝集を0%および19%抑制した。8×10−11M PAFに対するUMPC16の凝集阻害のIC50値(2.4×10−6M)は、UMPC20のIC50値(2.2×10−6M)と同程度であった。さらに、UMPC16とUMPC20は、PAFだけでなく、トロンビンの凝集も同様に抑制した。また、AMPC16は、8×10−11MのPAFで誘発される血小板凝集を阻害した(IC50値:8.7×10−6M)。2−4.凝集を惹起するPAFに対するUMPC16の阻害作用の特徴次に、UMPC16により惹起された血小板凝集阻害が、ベラパミルで見られたのと同様に、補足のカルシウムにより元に戻るかどうかを調べた。すなわち、1mM又は10mMのCaCl2を含んだタイロード/ゼラチン緩衝液(pH7.2)中の血小板(1×108cells,0.38mL)を、2.0%エタノール−2.0%ジメチルスルホキシドを含んだ生理食塩水に溶解したUMPC16(最終濃度1×10−5M)(10μL)と1分間プレインキュベーションした後、0.1%BSAを含む生理食塩水に溶解したPAF(最終濃度8×10−11M)に2分間暴露した。血小板凝集の阻害率は、上記した方法により計算し、結果を図5に複数個の平均値として示した(±平均値の範囲)。図5から理解できるように、血小板の懸濁液中で、1mMから10mMの範囲でカルシウム濃度を増加させたところ、PAFの凝集惹起に対するUMPC16による阻害は元に戻らなかった。逆に、補足CaCl2濃度を10mMにするとPAFによる血小板凝集誘発の程度は、72%に減少した。さらに、UMPC16は、PAFの添加後でも効果があるのか調べるために、血小板凝集に対するUMPC16の添加時間の影響を試験した。すなわち、UMPC16または対照試験用の溶媒を、8×10−8MのPAF添加前後の指定された時間に血小板に添加し、血小板凝集の阻害率を上記方法により計算し、結果を図6に複数個の平均値として示した(±平均値の範囲)。8×10−11MのPAFを添加する前に1分間1×10−5MのUMPC16とインキュベートしただけでなく、8×10−11MのPAFと同時に1×10−5MのUMPC16を添加した場合も、PAFによる凝集が100%阻害された。一方、UMPC16をPAFの添加後10秒、30秒および1分経過した後の血小板に添加すると、血小板凝集は、それぞれ、対照試験に対し29%、42%および75%程度となった(図6)。これらの所見は、UMPC16がベラパミル同様に脱凝集を引き起こし、PAFより後に添加した場合でさえ、PAF刺激に対する阻害効果があったことを示している。2−5.受容体を介した血小板凝集に対するUMPC16の阻害活性の特徴カルシウム拮抗剤であるエコナゾールによるカルシウム流入阻害は、0.3%(w/v)のBSAを添加することにより復元することが知られている。そこで、血小板凝集を誘発するPAFに対するUMPC16の阻害活性に対するBSAの作用について検討した。1mMの塩化カルシウムを含有するタイロード−ゼラチン緩衝液(pH7.2)中のウサギ血小板(2.5×108cells/mL)をUMPC16(1×10−5M)と1分間プレインキュベートした後、PAF(1×10−9M)を加えて2分間インキュベートし、生理食塩液に溶解させたBSA(最終濃度0.3%(w/v))または生理食塩液を血小板に添加した。3分後、UMPC16を添加しなかったものと添加したものとの血小板凝集の程度は、それぞれ58.3±6.5%、12.5±6.5%であった。この結果は、UMPC16によるPAFの阻害は、0.3%BSAの添加により復元しないということを示している。また、血小板懸濁液中のCa2+濃度を1から10mMにまで上昇させても、UMPC16による血小板凝集を誘発するPAFの阻害は復元しなかった。このことは、UMPC16がカルシウムキレート作用を有しないことを示している。一方、血小板(2.5×108cells/mL)を1×10−5MのUMPC16と10秒、30秒、1分および2分間ブレインキュベートした後1×10−9MのPAFを添加すると、血小板凝集はコントロールに比較して、それぞれ85.7±14.3%、56.0±15.5%47.6±4.7%及び17.9±2.1%であった(図7)。これらの所見は、UMPC16による阻害活性の強さは血小板との反応時間に依存することを示している。UMPC16がアゴニストと受容体の結合を阻害しているかどうかを調査するために、血小板に結合する[3H]acetyl−PAFに対するUMPC16の作用を検査した。PAFは、ウサギ血小板と特異的あるいは非特異的に結合する。PAFの特異的結合は、UMPC16により有意に阻害されない。1×10−9MのPAFの特異的結合は、1×10−5MのUMPC16の非存在下および存在下でそれぞれ1.9±0.9および1.5±0.2fmol/108cellsであり、PAFの非特異的結合は、1×10−5MのUMPC16の非存在下および存在下でそれぞれ9.4±1.4及び8.3±0.3fmol/108cellsであった。2−6.[Ca2+]i反応を誘発するPAF、トロンビン、ADPおよびイオノマイシンに対するUMPC16の作用[Ca2+]i反応を誘発するアゴニストに対するUMPC16の作用を調べるため、UMPC16や溶媒を37℃の温水中で、直接血小板と1分間、ブレインキュベーションした。最大反応は、溶媒の存在下で、PAFの刺激により測定した。添加を指示したのは、溶媒(a)、PAF(b、8×10−11M)、UMPC16(c、1×10−5M)、0.05U/mLのトロンビン、2.5×10−5MのADPおよびイオノマイシン(d、4×1−8M)を添加した。結果は、少なくとも4回行った実験の代表例を、図8に示す。各図において、Aは媒介物のみ、BはUMPC16添加のデータを示す。また、a〜cは、それぞれ、媒介物とのプレインキュベート(a)、指示された濃度のUMPC16とのプレインキュベート(b)、および各種アゴニストの曝露(c)を示す。その結果、UMPC16は、PAF、トロンビン、およびADPによる[Ca2+]iを阻害した。血小板内カルシウム濃度を変化させるPAFやトロンビン、ADP、イオノマイシンに対するベラパミルとUMPC類の効果を比較した。すなわち、血小板(109cells/mL)を、溶媒、ベラパミル(最終濃度1×10−1M)またはUMPC類(最終濃度1×10−5M)と、上記2.4(図6)に記載したように、1分間、インキュベート、処理した後、PAF(最終濃度4×10−11M)やトロンビン(最終濃度0.05U/mL)、ADP(最終濃度2.5×10−5M)、イオノマイシン(最終濃度4×10−8Mまたは1.6×10−7M)に暴露した。最大[Ca2+]iレベルは、上記したように、フラ−2蛍光で測定した。結果は、4−6回行った測定結果の平均値±SDとして表1に示す。その結果、PAF、トロンビンおよびADPにより誘発される[Ca2+]i増加は、1×10−5MのUMPC16により阻害(コントロールに比較してそれぞれ65%、34%、78%)された。この結果から、UMPC16は、[Ca2+]iを誘発するPAF、トロンビンおよびADPの作用を減弱させるが、[Ca2+]iを誘発するイオノマイシンの作用を減弱させないことが理解できる(図8、表1)。UMPC16による受容体を介する[Ca2+]iの阻害は100%ではなかったが(図8、表1)、血小板凝集の阻害は100%であった。このことはUMPC16による[Ca2+]i応答の阻害が、受容体を介するCa2+流入を阻害することにより起こったことを示している。1mMの細胞外カルシウムの存在下において、未刺激血小板の平均[Ca2+]iが52.0±18.4nM(n=15)であり、UMPC16はこの値を変化させなかった。8×10−11MのPAFを添加すると、血小板[Ca2+]iは474.7±74.2nMに上昇するが、UMPC16は、このPAFによる[Ca2+]iの上昇を減弱させた。UMPC16による[Ca2+]i反応の阻害の程度は、ベラパミルによるものより高かったが(表1)、血小板凝集阻害の様式は、よく似ていた。3.試験結果の解析上記試験結果は、UMPC16が、PAFだけでなく、血小板凝集を惹起するトロンビン、アラキドン酸およびADPをも投与量依存的に直接阻害し、その阻害は血小板活性化を惹起するPAFに限局したものでないことを示している(図1および2)。UMPC化合物のうち、UMPC16は、血小板活性化に対する阻害効果がUMPC8やUMPC12よりも強い。また、AMPC16も血小板凝集阻害活性を示した(図3)。アラキドン酸は、ホスホリパーゼC経路の活性を誘発すると考えられているエンドペルオキシドやトロンボキサンA2を経てシクロオキシゲナーゼやトロンボキサンA2シンテターゼにより代謝される。PAF、トロンビン、トロンボキサンA2およびADPによる刺激は、受容体を介して伝達され、40−kDaのタンパク質リン酸化を惹起する、プロテインキナーゼCシステムと関連しているホスホリパーゼCの活性化を誘発する。UMPC16は、これら受容体を介した刺激による血小板凝集や、[Ca2+]iの変化を誘発するPAFの作用を阻害した(図2と8および表1)。血小板懸濁液中のカルシウム濃度の増加は、UMPC16のPAFに対する凝集誘発の阻害を回復させず(図5)、これは、ベラパミルの活性様式とは相違する。他の所見は、好中球におけるベラパミルの阻害効果が、単にカルシウムの流入を阻害するためだけでなく、ベラパミルにより活性化されたプロテインキナーゼC酵素に対する直接的な阻害活性もまたあるということを示している。一方、UMPC16は、カルシウムイオン透過担体であり、血小板凝集を惹起するA23187や[Ca2+]iを変化させるイオノマイシンの作用を阻害しなかった(図2と8)。さらに、UMPC16は、血小板凝集を惹起するPMAを阻害しなかった(図2)。一方、UMPC16は、血小板凝集を誘発するGTPγSを阻害した(図3)。グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)は、受容体と膜イオンチャネルの活性を含む関連反応をつなぐと考えられている。したがって、UMPC16が、Gタンパク質受容体とつながっているCa2+チャネルに拮抗することが明らかになった。PMAは、血小板において、40kDaのタンパク質をリン酸化するプロテインキナーゼCを直接活性化させ、細胞外Ca2+を必要としない。図6で示したように、あらかじめPAFで凝集された血小板に添加したとき、1×10−5Mの濃度のUMPC16は、凝集を阻害できる。すなわち、脱凝集を引き起こす。ベラパミルは、40−kDaや20−kDaのタンパク質のリン酸化を元に戻すことにより、PAFで凝集した血小板に脱凝集を引き起こすと報告されてきた(G.Bonadonna et al.,Thromb.Heamos.,56巻、308頁、1986年)。我々は、ウサギ血小板に結合するPAFの動態についての研究で、PAFにより完全に凝集された血小板は、受容体に対するPAFの量が減少すると同時に、脱凝集が見られる、つまり、血小板凝集を維持するために、受容体にPAFの結合が必要であるということを示していることを解明している。以上、UMPC16の活性様式は、受容体に特異的に結合する凝集惹起物質を介するカルシウム流入を阻害したり、カルシウムチャンネル阻害剤であるベラパミルと同様に、凝集惹起物質の結合を阻害することによるものであると考えることが出来る。なお、細胞内カルシウムに依存する反応の阻害は、血小板反応に対するUMPC16の阻害活性に影響を与える可能性が考えられる。結論として、UMPC16は、血小板反応を介する受容体をベラパミルより効果的に阻害するということができる。ヌクレオシド5’−アルキルホスフェート化合物は、アゴニスト(PAF、トロンビン、アラキドン酸、ADP、GTPγS)の血小板受容体への結合を阻害しなかった。よって、UMPC16は、受容体に拮抗しないことがわかる。また、培地中のカルシウム濃度を上昇させても、ヌクレオシド5’−アルキルホスフェート化合物のPAF阻害作用は復元しなかった。よって、ヌクレオシド5’−アルキルホスフェート化合物は、カルシウムキレート作用は有しない。ヌクレオシド5’−アルキルホスフェート化合物は、受容体を介した細胞内カルシウム濃度増加を100%阻害しなかったが、血小板凝集は100%阻害したことから、ヌクレオシド5’−アルキルホスフェート化合物は、受容体作動性のカルシウムチャネルを阻害していることが明らかとなった。さらに、ヌクレオシド5’−アルキルホスフェート化合物は、イオノマイシンおよびA23187を阻害せず、PAF、トロンビン、アラキドン酸、ADP、GTPγSによる細胞内カルシウム濃度上昇を阻害した。よって、カルシウムチャネル阻害剤であることが判った。また、PAF、トロンビン、GTPγSを阻害することから、ヌクレオシド5’−アルキルホスフェート化合物はGタンパク質共役型受容体作動性カルシウムチャネルに拮抗していることがわかった。ヌクレオシド5’−アルキルホスフェート化合物のPAF阻害作用の強さは、添加時間に依存しており、PAF添加の前にUMPC16を添加した方が、阻害作用は強かった。BSAの添加により血小板凝集阻害が元に戻らないことより、エコナゾールとは作用機序が異なっていると思われる。また、培地中のカルシウム濃度上昇により血小板凝集阻害が元に戻らないことより、ベラパミルとは作用機序が異なっていると思われる。以上記載したごとく、本発明のヌクレオシド5’−アルキルホスフェート化合物(I)は、カルシウム拮抗作用を有し、特に細胞外液カルシウムの細胞内流入阻止に基づくカルシウム拮抗作用を有することから、心筋障害や不整脈発生の防止に有効であり、また優れた血小板凝集抑制作用を有することから、血栓症、塞栓症または動脈硬化症の予防薬または治療薬として有用である。【図面の簡単な説明】図1は、後に記載する試験例における血小板凝集を惹起するPAFに対するUMPC16の効果を示す図である。Aは凝集を誘発するPAFに対するUMPC16の異なった濃度における効果を示し、Bは血小板凝集を惹起するPAFに対するUMPC16とパルミチン酸の投与量依存的効果を示し、Cは種々の濃度のPAFによる血小板凝集に対するUMPC16の阻害活性を示す。図2は、血小板凝集を惹起する凝集惹起物質に対するUMPC16の阻害効果を示す図である。図3は、種々のアゴニストに誘導された血小板凝集に対するUMPC16の効果を示す図である。aはUMPC16の添加時、bはサポニン添加時(GTPγS実験のみ)、cは各アゴニストの添加時を示す。図4は、血小板凝集惹起剤に対するヌクレオジド5’−アルキルホスフェート類の阻害効果を示す図である。Aは惹起剤がPAFの場合のもの、Bは惹起剤がトロンビンの場合のものである。図5は、血小板凝集を惹起するPAFのUMPC16による阻害活性に対する細胞外カルシウムの効果を示す図である。図6は、血小板凝集を惹起するPAFに対し、様々な時間にUMPC16を添加したときの効果を示す図である。図7は、PAFに誘導される血小板凝集に対するUMPC16のプレインキュベーションが及ぼす影響を示す図である。図8は、血小板内カルシウム濃度を変化させるPAF、トロンビン、ADPおよびイオノマイシンに対するUMPC16の効果を示す図である。 式I:(式中、Rは炭素数16の直鎖または分岐鎖状アルキル基を示し、Bはアデノシンを示す。)で表されるアデノシン5’−アルキルホスフェート化合物を有効成分とするカルシウム拮抗剤。 アデノシン5’−アルキルホスフェート化合物が遊離形、または水和物および塩から選択される生体内で遊離形を与え得る医薬的に許容される形で使用される、請求項1記載のカルシウム拮抗剤。 血小板凝集抑制剤として使用される、請求項1または2記載のカルシウム拮抗剤。


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