タイトル: | 特許公報(B2)_光合成生物からチラコイドを得る方法、その方法から得られる植物画分、純粋チラコイド、およびROSスカベンジャー、光保護剤、バイオセンサー、バイオフィルターおよびバイオリアクターとしてチラコイドを使用する方法 |
出願番号: | 2001549673 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61K 36/00,A61K 8/97,A61P 1/00,A61P 1/16,A61P 1/18,A61P 3/10,A61P 7/00,A61P 7/06,A61P 9/00,A61P 9/10,A61P 11/00,A61P 11/06,A61P 13/12,A61P 17/00,A61P 17/02,A61P 17/06,A61P 19/02,A61P 25/00,A61P 25/16,A61P 25/28,A61P 25/30,A61P 25/32,A61P 27/02,A61P 27/12,A61P 29/00,A61P 31/04,A61P 33/06,A61P 35/00,A61P 37/06,A61P 39/00,A61P 39/06,A61P 43/00,A61Q 17/04,A61Q 19/08,C09K 3/00,C09K 15/34 |
マルク・パーセル JP 4689129 特許公報(B2) 20110225 2001549673 20001229 光合成生物からチラコイドを得る方法、その方法から得られる植物画分、純粋チラコイド、およびROSスカベンジャー、光保護剤、バイオセンサー、バイオフィルターおよびバイオリアクターとしてチラコイドを使用する方法 ピュアセル・テクノロジーズ・インコーポレーテッド 502237272 志賀 正武 100064908 高橋 詔男 100108578 渡邊 隆 100089037 青山 正和 100101465 鈴木 三義 100094400 西 和哉 100107836 村山 靖彦 100108453 実広 信哉 100110364 マルク・パーセル CA 2,293,852 19991230 20110525 A61K 36/00 20060101AFI20110427BHJP A61K 8/97 20060101ALI20110427BHJP A61P 1/00 20060101ALI20110427BHJP A61P 1/16 20060101ALI20110427BHJP A61P 1/18 20060101ALI20110427BHJP A61P 3/10 20060101ALI20110427BHJP A61P 7/00 20060101ALI20110427BHJP A61P 7/06 20060101ALI20110427BHJP A61P 9/00 20060101ALI20110427BHJP A61P 9/10 20060101ALI20110427BHJP A61P 11/00 20060101ALI20110427BHJP A61P 11/06 20060101ALI20110427BHJP A61P 13/12 20060101ALI20110427BHJP A61P 17/00 20060101ALI20110427BHJP A61P 17/02 20060101ALI20110427BHJP A61P 17/06 20060101ALI20110427BHJP A61P 19/02 20060101ALI20110427BHJP A61P 25/00 20060101ALI20110427BHJP A61P 25/16 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C09K 15/34 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 米国特許第05290765(US,A) 特開平09−087620(JP,A) ZIMMERMANN G M et al,Lyophilization of Thylakoids for Improved Handling in a Bioassay,Environ Toxicol Chem ,1996年,Vol.15,No.9,Page.1461-1463 23 CA2000001541 20001229 WO2001049305 20010712 2003519191 20030617 54 20030212 鶴見 秀紀 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、実質的に完全で自然な状態で存在し、かつ少なくともその一部分が機能性であるか、または活性化し得るチラコイドの分離および回収に関する。また、本発明は、チラコイドの分離時に得られる他の可溶性および不溶性植物画分の取得にも関する。更に、本発明は、ROSスカベンジャー、光保護剤、とりわけUV光線に対する光保護剤、ならびにバイオセンサー、バイオフィルターまたはバイオリアクターとしてのチラコイドの使用にも関する。【0002】【従来の技術】抗酸化剤は、ROS(反応性酸素種)の形成および有害作用を防止することができるために、言わば生物医学分野で益々利用されるようになった。【0003】植物および他の光合成生物は、ROSの作用に抵抗するように特に良く適応しており、特にUV光線の酸化性傷害および有害作用からチラコイドと称する必須の細胞小器官光合成膜を保護する。【0004】日光は、我々が生活を維持する上で予想よりはるかに大きな役割を演じている。即ち、我々が食べる全ての食物および使用する全ての化石燃料は、日光中のエネルギーを生物系が使用することのできる化学形態のエネルギーに変換する過程である光合成の産物である。光合成は、植物から細菌に及ぶ多くの異なる生物によって行われる。最も良く知られている形態の光合成は、高等植物および藻類、ならびに大洋中での光合成の過半を担うシアノバクテリアとその近縁種によって行われる。これらの生物は全て、かなり複雑な一連の反応においてCO2(二酸化炭素)を炭水化物に還元することによって、そのガスを有機物に変換する。この還元用の電子は最終的には水に由来するが、その後、水は酸素およびプロトンに変換される。この過程のエネルギーは、色素(主にクロロフィルとカロテノイド)によって吸収された光から与えられる。クロロフィルは青色および赤色の光を吸収し、カロテノイドは青緑色光を吸収するが、緑色および黄色の光は植物中の光合成色素によって効果的には吸収されない。そのために、これらの色の光は葉または葉を貫く細路のいずれかで反射される。【0005】(以前は藍藻として知られていた)シアノバクテリア、紅藻等の他の光合成生物は、赤色または青色であって、クロロフィルやカロテノイドによって効果的に吸収されない色の可視光を吸収するフィコビリンと称する追加の色素も有している。(ついでながら、多くの増殖条件下でかなり褐色に見える)紅色細菌、緑色細菌等の更に他の生物は、スペクトルの青色部以外に、赤外で吸収するバクテリオクロロフィルを含有している。これらの細菌は酸素を発生しないが、嫌気(無酸素)条件下で光合成を行う。これらの細菌は光合成のために赤外光を効果的に使用する。赤外は、700nmを超える波長を有し、ヒトの眼では見ることのできない光である。1000nmまでの波長を有する赤外光を使用することのできる細菌種もある。しかし、やはりヒトの眼では見ることのできない紫外光(<400nm)の吸収に、大部分の色素はあまり効果的ではない。330nm未満の波長を有する光は、細胞にとって益々傷害性となるが、このような短波長の実質的に全ての光は、地上に達する前に大気(最も顕著にはオゾン層)によって濾し除かれる。大部分の植物が紫外光を吸収する化合物を生成することができるとは言え、約300nmの光に曝されることが増えると、植物の生産性に有害な作用を及ぼす。【0006】光合成色素は極めて多様である。正確な化学構造が互いに異なる多くの様々な型の(バクテリオ)クロロフィル、カロテノイドおよびフィコビリンが存在する。一般に色素は、色素分子に相互の適切な配向および位置取りをもたらす蛋白質と結合している。光エネルギーは個々の色素によって吸収されるが、これらの色素によって直ちにエネルギー変換のために使用されるのではない。代わりに、光エネルギーは特殊な蛋白質環境中にあるクロロフィルに渡され、そこで実際のエネルギー変換現象が起こる。即ち、電子を隣接色素に伝達するために、光エネルギーが使用される。この実際の初発電子伝達現象に一緒に関与する色素および蛋白質を、反応中心と呼ぶ。アンテナと総称される多数の色素分子(100〜5000)が光を「集め」、光子を捕捉し、光エネルギーを同じ反応中心に移動させる。その目的は、光強度がたとえ低めであっても、反応中心における高い電子伝達速度を維持することである。P680という呼称が反応中心PSIIのクロロフィル色素に割当てられているが、その理由は、その組成をとるクロロフィル対が主に波長680nmの光を吸収するからである。【0007】多くのアンテナ色素は、光エネルギーを他のアンテナ色素、および更に他のアンテナ色素等に移動することによって、単一の反応中心にそのエネルギーが「捕捉」されるまで、その反応中心にそのエネルギーを移動する。全体的な移動過程の大きな損失を避けるために、このエネルギー移動の各段階は非常に効率的でなければならず、様々な色素の蛋白質との会合が、適切な色素を相互に接近させ、かつ色素分子の幾何学的配列を相互に適切にすることによって、伝達効率が高いことを保証している。蛋白質結合色素の法則に対する例外は、非常に大きなアンテナ系を有する緑色細菌である。これらのアンテナ系の大きな部分は、相互に作用し、かつ蛋白質とは直接的に接触していない数千個までのバクテリオクロロフィル分子の(クロロソームと命名された)「袋」から成り立っている。クロロフィルは、励起エネルギー移動と電子伝達との連結部として、全ての光合成生物によって使用される。これらの移動・伝達反応が起こる必要のある速度は、特に重要である。量子の吸収後、励起状態の寿命は数ナノ秒(1ナノ秒(ns)は10-9sである)に過ぎないので、反応中心におけるエネルギー移動および電荷分離もこの時間内に起こってしまうに違いない。色素間のエネルギー移動速度は非常に迅速であり、反応中心における電荷分離は3〜30ピコ秒(1ピコ秒(ps)は10-12sである)で起こる。その後の電子伝達段階は有意にもっと遅い(200ps〜20ms)が、それにも関わらず、その電子伝達系は、吸収された日光の少なくとも有意な一部を光合成に使用し得るに十分な速度を有する。チラコイドの分離および精製時にその機能を維持しようとする場合に、色素は保持すべき特殊な組織構造を有している。【0008】多くの系において光合成アンテナの大きさには融通性があり、(例えば日陰の)弱い光で生育する光合成生物は、もっと高い光強度で生育するものより、反応中心当たりのアンテナ色素が一般に多いと思われる。しかし、(例えば完全な日当たりの)高い光強度では、植物が吸収する光の量は、反応中心によって開始される電子伝達の能力を超えてしまう。吸収光を必ず光合成のために使用するのではなく、吸収光エネルギーの一部を熱に変換する手段を植物は開発してきた。しかし、植物における光合成電子伝達の特に第1期は、過度に高い電子伝達速度にかなり敏感であり、光強度が高すぎると光合成電子伝達系の一部が遮断されるかもしれない。この現象は光阻害として知られている。【0009】光合成反応中心における初発電子伝達(電荷分離)は、長い一連のレドックス(還元−酸化)反応を始動させ、バケツリレーの列のように、補因子の連鎖に沿って電子を受け渡し、クロロフィル上の「電子正孔」を満たす。酸素を生成する全ての光合成生物は、光化学系IIおよび光化学系I(略してPSIIおよびPSI)という名称の2種の反応中心を有しており、両系はチラコイドと呼ばれる特殊な膜中に配置された色素/蛋白質複合体である。真核生物(植物および藻類)では、これらのチラコイドは葉緑体(植物細胞中の細胞小器官)中に配置され、積み重なった膜(グラナ)としてしばしば見出される。原核生物(細菌)は葉緑体や他の細胞小器官を有しておらず、光合成色素−蛋白質複合体は、細胞質周辺の膜中か、(例えば紅色細菌に見出されるように)その陥入部中にあるか、または(大部分のシアノバクテリアの場合のように)細胞内でもっとはるかに複雑な構造を形成するチラコイド膜の中にある。【0010】酸素産生生物中の全てのクロロフィルは、チラコイド中に配置され、PSII、PSI、またはこれらの光化学系にエネルギーを供給するアンテナ蛋白質と会合している。PSIIは、水の開裂および酸素の発生を起こす複合体である。PSII内の反応中心クロロフィルの酸化時に、周辺蛋白質の一部をなす近傍のアミノ酸(チロシン)から電子が引き抜かれ、その蛋白質はその結果水開裂性複合体から電子を得る。PSII反応中心から、電子は、チラコイド膜中の自由電子担持分子(プラストキノン)に流れ、そこから他の膜−蛋白質複合体、シトクロームb6f複合体に流れる。もうひとつの光化学系PSIも、基本的にPSIIと類似の様式で光誘起電荷分離を触媒する。即ち、アンテナによって光が集められ、光エネルギーが反応中心クロロフィルに渡され、そこで光誘起電荷分離が開始される。しかし、PSIでは電子が、その還元形を炭素固定に使用することのできるNADP(ニコチンアミドアデノシンジヌクレオチドリン酸)に最終的に伝達される。酸化された反応中心クロロフィルは、シトクロームb6f複合体から別の電子を最終的に受取る。したがって、PSIIおよびPSIを介した電子伝達によって、(酸素を生成する)水の酸化およびNADPの還元が起こり、この過程に対するエネルギーは光(全連鎖を通して輸送される各電子に対して2個の量子)によって与えられる。【0011】水からNADPへの電子の流れは、光を必要とし、チラコイド膜を貫くプロトン勾配の発生と共役している。このプロトン勾配は、高エネルギー分子のATP(アデノシン三リン酸)の合成に使用される。ATPおよび光反応から生じた還元NADPは、光とは関係のない過程においてCO2固定のために使用される。CO2固定には、カルビン・ベンソン回路と呼ばれる幾つかの反応が必要である。初発のCO2固定反応には、酵素リブロース−1,5−ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(RuBisCO)が必要であり、この酵素は(光呼吸と称する過程を起こし、炭素固定を起こさない)酸素か、またはCO2のいずれかと反応することができる。RuBisCOがCO2に対して酸素と反応する確率は、反応部位におけるその2種の化合物の相対濃度に依存している。全ての生物においてCO2は圧倒的に好ましい基質であるが、CO2濃度が酸素濃度よりはるかに低いと、光呼吸がかなりのレベルで起こる。局部的CO2濃度を高め、酸素圧を最小化するために、(C4植物と言われる)一部の植物では、(維管束鞘細胞という名称の)葉内の一部の細胞が主にCO2固定に関与し、(葉肉細胞という名称の)他の細胞は光反応に特化している。葉肉細胞内のATP、CO2および還元NADPは、(リンゴ酸のような)4炭素有機酸の合成のために使用され、その有機酸は維管束鞘細胞に輸送される。ここで有機酸は変換されてCO2および還元NADPを放出し、それらは炭素固定のために使用される。生成した3炭素酸は葉肉細胞に戻される。局部的酸素濃度を最小化するために、一般に維管束鞘細胞はPSII活性を有していない。しかし、恐らくATP合成を補助するために、それらの細胞はPSIを保持している。【0012】光からエネルギーを引出し、かつこのエネルギーを適当な箇所に移動させ、および/またはそれを消散させるために、チラコイドの組織は非常に精巧である。電荷の分離、および電気的中性状態を再生して電荷の変化を再び起こすことに備える高い能力によって、その移動が可能となり、効果的となる(Blankenship他、1998)。【0013】前記の主な5成分間の電子伝達は極めて迅速である。活性化P680からフェオフィチンへの電子伝達は、1ピコ秒未満で済む。全ての色素が中性電荷に戻り、新サイクルを起こすことに備えるとき、電子伝達が停止する。【0014】最後に電子は、共役因子に渡されることによって、ATP合成に必要なNADPHを還元し、それは後に糖合成に利用される。【0015】「チラコイド」という用語は以下で使用され、真核生物であれ原核生物であれ、光合成生物から得られる組織化された光合成膜成分を包含することを意味している。生物が葉緑体を有するとき、チラコイドは次の膜成分、即ちPSII、シトクロームb6およびf、PSIおよび共役因子を含んでいる。チラコイドの完全性および機能性を植物材料から試験する場合、2つの基準点、PSIIの基部側および共役因子の端部側との間でそれを測定した。一定の用途に対しては、チラコイドは見かけ上完全であっても、活性を有する必要はない。このようなチラコイドは機能し、他の任意の抗酸化剤と少なくとも同程度に安定である。したがって、「活性チラコイド」とは、完全ではあるが、能動的または受動的に不活性化された不活性チラコイドではなくて、水和したときに活性化する能力を有するチラコイドを意味する。この場合、チラコイド構造が実質的に保持されていても、反応中心は不活性である。したがって、「不活性」チラコイドは、活性/被活性化形とは同じ活力を有さず、再生する能力もROSに反応する能力も同じではなくても、適当な抗酸化剤である。【0016】光合成は、次の2反応に要約することのできる2つの基本的過程を含む。【化1】【0017】光存在下での第1反応の間に、ATPを生成するために、葉緑体の水からプロトンが取出される。第2反応は、炭素無水物の糖質、主に澱粉への還元に至る一連の反応において、NADPHおよびATPを使用することにある。これらの2反応は同時に起こり、過程(1)によって形成された生成物は過程(2)の反応の中に渡される。全体として光合成は、澱粉およびスクロースの形態の糖およびATP分子の形態のエネルギーを生成する。【化2】【0018】光活性化はチラコイド中で一定の経路を辿る。光は光アンテナ(LHCII)によって最初に集められ、そのエネルギーは反応中心(PSII)に渡され、最後にやはり独立した集光剤(LHCI)を有するPSIに渡される。チラコイドは光を集め、かつ光合成を進めるために、光エネルギーを適当な箇所に移動させる機能を有している。ATPおよび糖の合成はチラコイド中では起こらず、葉緑体の他の区画で起こる。【0019】クロロフィルは主要な活性色素である。カロテノイドは、所在箇所に応じて複数の役割を有している。第1の役割は集光剤としての役割であり、カロテノイドからクロロフィルへのエネルギー移動を起こす。第2の役割は光保護剤としての役割であり、この場合エネルギー移動がクロロフィルとカロテノイドの間で反対方向に起こる。カロテノイドの一重項状態は一重項クロロフィルより多くのエネルギーを有する一方、反対に、カロテノイドの三重項状態は三重項クロロフィルより少ないエネルギーを有する。エネルギー状態は高エネルギーレベルから低エネルギーレベルに移る自然の傾向を有するので、一重項カロテノイドは主に集光剤として作用し、光エネルギーを一重項クロロフィル分子に渡す一方で、三重項クロロフィルはそのエネルギーを三重項カロテノイドに容易に移動させると思われ、そのときに後者は反応中心における光保護剤として作用する。カロテノイドは、アンテナまたは反応中心と会合したときに異なる立体配置を取るが、その立体配置が活性化したときのエネルギー状態を担っていると思われる。「シス」の立体配置は反応中心における光保護と関係している。「全てトランス」の立体配置はアンテナの集光剤機能と関係している。【0020】エネルギー移動は、色素が相互に非常に接近しており、かつ特定の組織中にある条件のときにだけ効果的である。したがって、活性であるか、または十分に活性化し得るチラコイドを精製することを所望する場合、色素の自然な組織を乱さずに、その膜を完全な状態に保つことが非常に重要である。【0021】元のままのチラコイドを回収する一利点は、ROSを取扱う能力に見出される。このようなROSは、(スーパーオキシドを含む)フリーラジカルならびに一重項酸素(1O2)や過酸化物のような非ラジカル酸化剤を包含することを意図している。これらの種の定義および起源に関する良い総説は、国際公開第94/13300号に見出される。以上および以下に引用する全ての参考文献の内容を、参考のために本明細書中に組込んである。【0022】フリーラジカルは不対電子を含んだ原子、イオンまたは分子である。フリーラジカルは普通不安定であり、短い半減期を示す。元素状酸素は非常に電気陰性であり、シトクロームおよび還元された他の細胞成分から一電子移動を容易に受ける。したがって、好気的呼吸をする細胞が消費するO2の一部は、スーパーオキシドラジカル(・O2-)に1価性の還元を受ける。その後の・O2-の1価性還元によって、過酸化水素(H2O2)、ヒドロキシルラジカル(・OH)および水が生成する。【0023】フリーラジカルは、好気的呼吸、薬物および生体異物(例えば、トリクロロメチルラジカル、即ち四塩化炭素の酸化で形成されるCCl3・)のシトクロームP-450触媒一原子酸素添加反応、および電離放射線を含む多くの源から生じることができる。例えば、組織をガンマ線に暴露すると、細胞内に貯留したエネルギーの大部分は水によって吸収され、水における酸素−水素共有結合の切断を起こし、水素上に1電子、酸素上にも1電子を残す結果、2個のラジカルH・および・OHを創り出す。ヒドロキシルラジカル・OHは化学において知られている最も反応性の高いラジカルである。それは生体分子と反応し、連鎖反応を開始し、核酸のプリンまたはピリミジン塩基との相互作用をなし得る。事実、放射線誘起発癌をフリーラジカルによる傷害によって開始し得る。また、例えば活性化好中球の「酸化バースト」はスーパーオキシドラジカルを豊富に生成するが、それが活性化好中球の細胞毒性作用を生じる際の必須要因と考えられている。虚血組織の再灌流も高濃度の酸素ラジカル、通常スーパーオキシドを生じる。その上、生理的調節剤である一酸化窒素との反応で過酸化亜硝酸イオンONOO-を形成する内皮細胞によっても、スーパーオキシドは生理的に生成し得るが、その塩は崩壊してヒドロキシルラジカル・OHを生じ得る。それ以外の酸素ラジカル源は、破壊したミトコンドリアや小胞体の電子伝達系からの電子の「漏出」、プロスタグランジン合成、カテコールアミンの酸化および血小板活性化である。多くのフリーラジカル反応は細胞成分にとって傷害性が高い。それらの反応は蛋白質を架橋し、DNAを突然変異させ、脂質を過酸化する。一旦形成されると、フリーラジカルは、相互作用によって他のフリーラジカルおよび一重項酸素(1O2)や過酸化物等の非ラジカル酸化剤を生じる。【0024】一重項酸素は、多くの疾患や障害の開始または永続化に関わっている特に有害な化合物である。一重項酸素は、クロロフィルのような蛋白質の分解にも関与している。このことが、カロテノイドの存在によってもたらされる光保護が重要になる理由である。カロテノイドはクロロフィルの寿命および活性を保護し、更に、蛋白質の変性を防止することによって、膜の完全状態も保護する。カロテノイドは三重項クロロフィル分子のエネルギーを捕捉することができる。その結果、それは三重項カロテノイド分子となり、その分子は熱を放散しながら自己再生し、それによって三重項クロロフィル分子の蓄積を回避し、クロロフィルを分解する確率を最小化している。【0025】しかし、過剰の光がある場合、傷害が起こり得るが、それは「三重項状態」のクロロフィルの形成に由来するかもしれない。三重項状態では外殻中の2個の電子は、逆ではなく同じスピン配向を有する。この三重項クロロフィルは容易に酸素と反応する結果、反応性の非常に高い一重項酸素を生成し、それは蛋白質を損傷し得る。この損傷性反応に対処するために、カロテノイドは普通クロロフィルに近接して存在している。多くのカロテノイドはクロロフィルの三重項状態を効果的に「消光」し、それによって一重項酸素の形成を回避している。遊離形のクロロフィルは酸素の存在下、光の中では毒性が非常に高いが、その理由は、このような状況ではカロテノイドとの密接な相互作用が実現するとは限らないからである。したがって、好気性生物中の細胞内クロロフィルは、全て蛋白質と結合しており、一般にカロテノイドも同じ蛋白質と結合している。【0026】かなり短い時間尺度(1ms未満)で酵素反応速度を測定する際の主たる困難は、「伝統的」な酵素反応には基質と酵素の混合が必要であるが、普通それにはかなり長い時間がかかることである。光合成電子伝達のような光駆動反応の速度解析は、この点で大きな利点を有している。1psよりはるかに短くし得る光パルスだけで、反応を誘発し得るからである。その上、電子伝達に関与する成分の多くが、酸化形であるか還元形であるかに応じて、異なる吸収スペクトルを有している。レーザー分光法またはもっと標準的な光学分光法を用いると、1psと数msの間の時間尺度で回りにある電子を追跡することはかなり容易である。初発の電荷分離は数psで起こり、反応中心から更に離れている成分が反応に関与するにつれて、反応が次第に遅くなる。早期の反応速度が速いために、電子および「電子正孔」は長距離(一般に、電荷分離後1ns以内に、電子は約2nm移動して膜の反対側に達してしまう)によって物理的に迅速に分離され、その結果、逆反応(電荷結合)はもはや有利でない。多くの場合に一電子移動を伴うレドックス反応中に、一時的に形成される反応物上の不対電子を、電子常磁性共鳴(EPR)および(ENDOR、電子核二重共鳴およびESEEM、電子スピンエコー包絡線変調を含む)誘導技術を用いて検出することができる。これらの技術の多くは、レドックス反応の速度を追跡するために使用することができ、電子スピン分布等に関する詳細な情報をもたらす。したがって、光合成の膜および反応中心は、生化学および生物物理学における実験系として重要な位置を占めている。【0027】クロロフィルのような化合物の抗酸化性は式(1)に例示される。【化3】【0028】酸素の存在下で励起されたクロロフィルは、三重項状態(3Chl*)になり、細胞内に一重項酸素(有害種)を生成することによって、不活性化されて基底状態に戻る。植物は、一重項酸素の過剰生成という問題を解決することのできる効果的な手段を見出した。植物は、クロロフィルのエネルギーをもっと低いエネルギー状態を有する色素に移動する。カロテノイドというその色素(式2)は植物中に豊富に存在する。【化4】【0029】三重項クロロフィルは対応するカロテノイドより多くのエネルギーを有するが、一重項状態に対してはその逆が成立っている。式3aおよび3bに示すように、活性化された一重項カロテノイドはそのエネルギーをクロロフィル分子に移動する結果、クロロフィル分子は一重項状態で活性化される。【化5】【0030】三重項状態のカロテノイドは、有害な酸素種を形成することなく不活性化する。式4は、カロテノイドが基底状態に戻り、かつ熱を放散することによって、不活性化することを示している。【化6】【0031】抽出物中の色素の性質を保存するためには、ROSを生成しないことが重要と思われるが、分離中に発生し得るそのようなROSを除去することも重要である。これを実現するために、発明者等は式1の平衡を逆行させる方法を支持した。その結果、式1の逆が式5に見出される。【化7】【0032】式5の逆行を回避するために、活性化された三重項クロロフィル分子は、基底状態のカロテノイドと密接していることが必要であり、そのカロテノイドは移動されるエネルギーを受取り、それを熱として放散する。このように、クロロフィルおよびカロテノイド色素が、相互にエネルギーを移動するように非常に近接した状態で見出し得る限り、式5の可逆性は制限される。【0033】上記の式5から、最適な活性を有する抽出物を得るためには、両色素(クロロフィルおよびカロテノイド)を基底状態に維持するための考え得るあらゆる手段を取ることが好ましいことは、明らかである。単離したカロテノイド、例えばチラコイド構造内で組織化されていないカロテノイドであれば、三重項クロロフィル分子を効果的に消光することはできないであろう。組織化された色素を有する利点は、抽出物が自然のチラコイド膜の活力を保持することによって、それらの色素が、ROSを捕捉し、エネルギーを移動し、かつ新たな活性化サイクルを再び行い得る状態に戻る能力を獲得すると思われることである。この活力および再生能力は、組織化された色素に特有である。上記の反応は光の存在しない条件でも自発的に起こることを強調しておきたい。チラコイド抽出物の体内投与では光の存在が除外されると思われるので、この観察は治療上の観点から重要である。【0034】最適化された立体配置とカロテノイド比率を有するチラコイドは、特にROSに対して十分な活性を保持すると思われる。このような抗酸化剤は、ROSの生成が関与する疾患や障害の発現を低減するのに有用と思われる。このような疾患や障害は、炎症、癌および放射線暴露に関係する病因を有するものかもしれない。このような疾患や障害は、火傷、日焼け、乾癬、皮膚炎等の皮膚;外傷、脳卒中、パーキンソン病、神経毒、痴呆、アルツハイマー病等の脳;関節リウマチ、関節症等の関節;糖尿病、膵炎、内毒素肝傷害、腸虚血等の胃腸管;白内障発生、網膜症、変性網膜障害等の眼;アテローム性動脈硬化症、血管炎等の脈管;ファンコーニ貧血、マラリア等の赤血球;冠動脈血栓症等の心臓;喘息、COPD等の肺;移植、糸球体腎炎等の腎臓;炎症、癌、虚血−再灌流状態、薬物中毒、鉄分過常摂取、栄養失調、アルコール中毒、放射線、老化、アミロイド病、中毒性ショック等の多器官に影響を及ぼすものを含む。一部の疾患へのROSの関与に関する文献は以下のとおりである。【0035】皮膚:火傷 Youn, 1992日焼け Golan, 1994乾癬 Lange, 1998 a,b皮膚炎 Polla, 1992脳:外傷 Juurlink, 1998脳卒中 El Kossi, 2000パーキンソン病 Ebadi, 1996神経毒 Foler, 2000アルツハイマー病 Smith, 2000関節:関節リウマチ Cimen, 2000胃腸管:糖尿病 Gerber, 2000膵炎 Sakorafas, 2000内毒素肝傷害 McGuire, 1966腸虚血 Lai, 2000眼:白内障発生 Eaton, 1994未熟児網膜症 Hardy, 2000変性網膜障害 Castagne, 2000脈管:アテローム性動脈硬化症 Singh, 1997赤血球:貧血 Anastassopoulou, 2000マラリア Ginsburg, 1999心臓:冠動脈血栓症 Chen, 1995肺:喘息 Montuschi, 1999COPD Montuschi, 2000腎臓:糸球体腎炎 Barros, 2001多器官:移植 Jonas, 2000炎症 El-Kadi, 2000癌 Prior, 2000虚血 Lewen, 2000薬物中毒 Sinha, 1990鉄分過剰摂取 Karbownik, 2000栄養失調 Olszewski, 1993アルコール中毒 Lieber, 1997老化 Cadenas, 2000放射線 Bednarska, 2000アミロイド病 Floyd, 1999【0036】治療用途以外に、本発明のチラコイドは、バイオセンサーまたはバイオフィルターまたはバイオリアクターとして試験されてきた当技術分野の葉緑体誘導組成物を有利に代替し得ることが判明した。当分野の技術によってこれらの特定の用途が教示されるが、これらの葉緑体誘導組成物は安定性を欠き、非常に迅速に分解するために、商業的観点からこれらの用途は実用的でない。したがって、安定で活力あるチラコイド抽出物は、これらの機能しない葉緑体誘導組成物を有利に代替し得ると思われる。【0037】バイオセンサー:有毒な生成物の検出は、汚染物質の存在に伴う環境リスクを評価するために重要である。有効なバイオアッセイでは普通生物が使用され、次の条件が最小限満たされると思われる。i) それらは自然環境に対応すべきであり、ii) それらは再現性を有すべきであり、iii) 虚偽の結果を全くまたは殆どもたらさないように、それらは信頼性を有すべきであり、かつiv) それらは感度を有すべきである。【0038】毒性検出は、各種の汚染試料を分析するために十分な柔軟性も提供すべきである。理想的には、毒性を即時に調べ、感知すべきである。毒性検出は、少なくとも3部門の産業、製紙業、汚染土壌分析および農業に用途を有する。以上のすべての場合には、望ましくない状況を速やかに正すために、汚染物質の存在に関する情報が必要である。【0039】有毒生成物を感知するために実際の技術が直面する主な問題は、マスやDaphnea magnaのような生物を用いたとき、生物試験の結果を得るのに発生する48時間から96時間までの長い遅れである。良い検出装置とは、廃液の汚染性を即時かつ連続的に測定し得る材料を使用することによって、利用できる従来の生物試験とは異なる装置と思われる。植物の光合成活性によって発生する蛍光を測定する幾つかの生物検出装置が市販されているが、光の存在によって誘発され、汚染物質の存在によって変調される電荷を測定できるシステムがあれば、理想的と思われる。この技術は、蛍光測定技術よりはるかに安価であると思われる。チラコイド材料全体の上で光合成活性を評価する技術があれば、特定の蛋白質複合体、即ちPSIIの活性を測定する蛍光測定法より好ましいと思われる。したがって、チラコイド材料を含む装置は、より広い作用スペクトルで毒性を測定するという利点を有すると思われる。このような検出装置は、所与の光強度で生成する電子の数を測定することになろう。2〜3秒後に得られる電流(Epmax)は、チラコイドの光合成活性に比例するはずである。汚染物質の濃度に対して光電流をプロットすれば、典型的なS字形曲線が得られ、その上でEC50の推定値が求められるはずである。【0040】光電流はAllenおよびCraneによって1976年に既に測定された。電子伝達は、光合成活性全体および植物の生理的健康度の信頼性のある代表的な尺度となることが判明した。AllenおよびCraneの研究から、汚染物質および光に対する反応状態を再生する活力および能力と共に、大きな安定性を有する抽出物は、既知の装置より非常に好ましいと思われる。検出装置は、所与の光強度で生成する電子の数を測定することになろう。2〜3秒後に得られる光電流の最大値(Ipmax)は、チラコイド膜の光合成活性に比例するはずである。光電変換チャンバ中に存在する光合成阻害剤(汚染物質または汚濁物質)の濃度に対してIpmaxをプロットすれば、典型的なS字形曲線が得られる。その阻害剤効力は、容易に評価することができる(IC50)。【0041】検出装置は、白色光源、2個の電極を収容する光電変換チャンバ、光誘起電流を測定するための検出手段およびデータ(電流)を集め、処理するためのコンピュータ手段を含むものと思われる。同定または測定対象の有毒物質、汚染物質または汚濁物質を含む液体試料が、チラコイド膜抽出物と接触される。その混合物をチャンバ中に導入した後、短時間の照射を行う(1分未満)。その装置または器械は、複数の試料を同時に処理し、分析すると思われる。【0042】バイオフィルター/バイオリアクター:植物中の光合成装置は、光子を捕捉できるだけでなく、その各成分に対して親和性を有する分子を捕捉し、蓄積することができるので、本発明の抽出物も植物自体と同じ能力を有すると想像される。その上、捕捉分子の一部を処理し得るので、本発明の抽出物はバイオリアクターとして作用すると思われる。捕捉し易い分子は、例えば、除草剤、殺虫剤、殺カビ剤、尿素、イオンおよび重金属、ならびにO3、CO、H2S、NO、CO2、O2等のガスである。本発明のバイオフィルターは用途が広く、温度変化に耐性があると思われる。【0043】実用的な時間の間活性を保持することのできる、元のままの機能的チラコイドを回収する方法を、教示する実用的プロセスは存在しない。【0044】植物が脅威となる事態に対処する優れた自然の能力を有していることは、前記のことから明白である。チラコイドは、このような極端な事態に抵抗し、順応するように特に適合している。【0045】米国特許第4698360号は、フリーラジカルスカベンジャーとして有用なプロアントシアニジンを含む植物抽出物について記載している。この抽出物を作製する方法は次の段階を含む。a)カイガンショウの皮の粗粉末の入手、b)沸騰水中でのその抽出、c)固体からの液体の分離、d)液体の常温への冷却、e)ろ過、f)「塩析」沈殿による不用物の除去、g)活性成分の酢酸エチル中への抽出、h)有機相の乾燥、i)固体の再懸濁および活性成分のクロロホルムによる再沈殿、およびj)固体の再懸濁と、その後の高度な精製。【0046】この参考文献は特定の型の活性成分の単離に関するもので、言換えれば色素が相互に分離していない光合成成分の主要部を含むと思われるチラコイドの調製に関するものではない。【0047】この参考文献は、実際、本発明が関係する一般的技術における全体的教示の典型である。この先行技術は、1個または複数の所与の植物成分の単離に系統的に関係するものであって、完全かつ機能的な状態で保存された成分の主要部を含む元のままのチラコイドの分離に関するものではない。【0048】Planta 164: 487-494において、Glick等(1985)は、様々な型の光にエンドウを当てたときの、光化学系IIおよびI(PSII/PSI)の化学量論比の変動を記述している。PSIおよびPSIIの電子伝達能力が、各々PSIIおよびPSIに特異的な指示薬である2,5−ジメチル−p−ベンゾキノンおよびNADPのような指示薬の存在下で測定されている。非活性化光環境である緑色光が使用されているが、元のままの活性化し得るチラコイドを分離することを目的とするプロセスで、植物を条件付けするためにそれが使用されているのではない。その参考文献は、本質的に葉緑体の組成物の研究に関するもので、所与の光の質および強度の関数としてのチラコイド活性の保持に関するものではない。植物はむしろ、赤色波長が減耗または富化された様々な光の中で条件付けされている。この参考文献は、クロロフィルとカロテノイドの間のエネルギー移動を促進し、かつフリーラジカルの捕捉を促進するように、光合成色素を互いに近接させておくべきであるという事実に関するものではない。したがって、チラコイド中の自然状態で光合成色素を単離することになる条件は、この参考文献中では格別に教示されていないし、触れられてもいない。【0049】Mason等(1991)は、Plant Physiol. 97: 1576-1580で葉緑体を分離する方法を教示しているが、その方法は、ホモジナイゼーションによる分散段階を使用するのではなく、植物懸濁液を毎秒0.5mLの流速で27番針中に強制的に通過させる段階を利用している。その植物溶液は、pH7.5で0.3M ソルビトールを含む緩衝液を含んでいる。針中を強制的に通過させた調製液をパーコール勾配中で遠心し、チラコイドを含む他の成分から葉緑体を分離する。したがって、このプロセスは、全く単純な段階および反応物を用いたチラコイドの回収を本質的に目的とし、規模拡大も容易な本発明のプロセスとは異なっている。この参考文献では光条件に言及していない。更に、葉緑体を完全に保つ条件が、葉緑体を分解する条件と同じでないのは明白である。本発明の方法では、葉緑体は分解されるが、チラコイド膜は実質的に元のままで回収される。したがって、この参考文献は、本発明を教示することができない。【0050】カナダ特許出願第2110038号は、植物抽出物を安定化させる方法を記載している。しかし、これらの抽出物は細胞液や汁であって、チラコイド膜ではない。この参考文献では、チラコイドを安定化させるために、その膜から自然の電子供与体である水を取出すことには言及していない。【0051】上記のことに鑑みて、元のままの機能的なチラコイド膜の分離に導く実用的な方法は、当分野で教示されていない。更に、チラコイド成分を安定化させる条件も教示されていない。最後に、ROSから細胞成分を取出すための、分離チラコイド膜の使用も教示されていない。【0052】したがって、完全性を維持し、場合により許容し得る時間の間活性化することができ、再活性化したときに、そのROSスカベンジャー活性により抗酸化剤として作用し得る活性チラコイドを得る方法の開発は、未解決の難題である。光化学系成分に関する文献で入手し得るものは増加しているが、チラコイド活性の分離および保存の条件を教示している実用的方法は未だ出版されていない。【0053】その上、フリーラジカルは多くの細胞成分の分解の原因になり得るので、それを捕捉することは他の植物成分を保護すると予想される。したがって、本発明の方法は、チラコイド以外の植物成分を改良された収率で生成すると思われる。【0054】特に製薬分野では強力な抗酸化剤に対する需要があるので、このような任意の抗酸化剤を提供する方法、ならびに十分な効力だけでなく、持続的活性を有する抗酸化剤自体の価値も、大いに認識されよう。更に、センサーまたは検出器、捕捉材またはフィルター、バイオリアクターまたは生体分子生産装置に対する需要がある。【0055】【発明が解決しようとする課題】本発明は、機能的チラコイドを有する抽出物を得る単純な方法を提供することを目的とする。本発明は、他の細胞成分からチラコイドを精製する方法も提供する。分離されていないか、または分離されているチラコイドを含む安定化された抽出物を提供することは、本発明の他の目的である。安定化された抽出物は、チラコイドを活性化すると思われる電子供与体を本質的に含んでいない。最も豊富な電子供与体は水であるので、安定化された抽出物はしたがって無水であるのが好ましい。水は、例えば溶媒または乾燥によって追出すことができる。両性溶媒、特にプロピレングリコール等の界面活性剤を試した結果、成功した。この種の溶媒は膜の構造成分を分解せず、かつ水分子を置換し、水溶液中に再溶解したとき凝集体の形成を防止する利点を有している。安定化された抽出物は、水のような電子供与体を添加しない限り、実質的な活性の損失なしにより長い貯蔵寿命を有している。安定化された抽出物は、活性化を開始するために、使用前に準備なしに復水される。一度活性化された抽出物の活性は、他の如何なる既知の抗酸化剤よりはるかに長続きするが、そのことは、即時の完全な消耗ではなく、一定水準の活性の再生を示している。更に、抗酸化剤の効力は、酸化性傷害の程度に応じて適応する、即ち増減する。【0056】【課題を解決するための手段】本発明によれば、請求項1に明示した方法が提供される。【0057】本発明は、チラコイドを含む光合成生物から得られる抽出物を得る方法であって、a)チラコイドを含む生体成分の懸濁液を提供する段階、およびb)1から1.3センチポアズの間の粘度および2より高く、10より低いpHを有する媒質中で、チラコイドを元のままに維持しながら、その生体成分を破壊する段階であって、その媒質は次式に従って計算される体積で添加され、((媒質の体積+植物成分含水量)/植物成分乾重量)>10それによって、チラコイド、細胞屑/膜および液相で本質的に構成される第1抽出物が得られ、前記チラコイドが完全な光合成色素を含む段階を含む方法を提供する。【0058】【発明の実施の形態】前記式の計算値は、25と150の間に含まれるのが好ましい。【0059】媒質のpHは、好ましくは5と8の間、より好ましくは7と7.5の間に含まれる。【0060】段階a)の懸濁液は、生体成分または組織を前記媒質中に機械的に分散することによって、得られる。【0061】好ましい実施形態では、段階a)の前に、前記生体に光、浸透圧、熱、冷たさ、凍結、乾燥、ホルモン、化学的および生物学的誘導物質から選択される条件付けパラメーターを受けさせる段階を行う。【0062】最も好ましい実施形態では、段階a)の前に、約500と600nmの間に含まれる波長の光環境で前記生体を条件付けする段階を行い、段階b)を同じ光環境の下で行う。【0063】その粘度は、糖を添加することによって部分的に実現される。糖を1.5M以上もの濃度で添加してよい。好ましくは、前記溶液中の約0.2から0.4Mのスクロース濃度、または0.2から0.4Mのスクロースに等価な粘度を実現する糖が添加される。【0064】前記方法で使用される媒質の特定の例は、トリスまたは酢酸またはアスコルビン酸緩衝液(20mM、pH7.0〜7.5)、およびソルビトールまたはスクロース350mMである。【0065】本発明の方法は、更に次の段階c)、即ち、チラコイド、細胞屑/膜および液相を相互に分離することによって、各々、分離チラコイド、細胞屑および膜、および液相で本質的に構成される第2、第3および第4の抽出物を形成する段階を含んでもよい。【0066】分離段階は、チラコイド、細胞屑および膜、および液相の各沈降係数の差に基づいて特に行われた。【0067】このような分離段階の特定の例は、チューブの上部にフィルターを備えたそのチューブ内で10000gで10分第1抽出物を遠心する際に、フィルターは、チラコイドおよび液相がフィルターを通過する一方、細胞屑および膜がその上に沈着する適当な多孔性を有し、チラコイドがチューブの下部でペレットを形成することを含む。あるいは、例えば圧搾および/またはろ過によって先ず細胞屑および膜を回収した後、もっと細かな精製、例えば液相からチラコイドを分離することによって、粗精製が実現され得る。【0068】分離後、次の段階d)を付け加えることによって、第1から第4の各抽出物を安定化し得る。その段階は、前記の各抽出物から任意の電子供与体を消去することによって、好ましくは(冷たさから成分を保護し得る)糖の存在下で光合成色素を不活性化し、安定化させることである。この段階では、第2および第3の抽出物が特に対象となる。【0069】想定される第1の電子供与体は水であり、そのため抽出物は無水となるように処理される。【0070】段階c)の後、真空凍結乾燥または非変質性で両性の溶媒か界面活性剤で水を交換することによって、水を除去し得るが、この場合の非変質性とは、チラコイド構造成分を解離または損傷することができないことを意味している。【0071】試用して結果の良かった両性溶媒は、プロピレングリコールである。【0072】前記方法から生じる生成物を提供することは、本発明の更に他の目的である。第一に、活性化される能力を有する純粋なチラコイド抽出物が提供される。安定化された抽出物が好ましい。チラコイドおよびセルロース性物質の豊富な前記の第3抽出物も、本発明の範囲に入り、即ち安定化形態をとる。チラコイドの安定化形態は、乾燥されているか、またはプロピレングリコールのような両性溶媒で構成される媒質中にあってもよい。前者は不溶状態か懸濁物であり、後者は溶液をなす。チラコイドを含む抽出物は、電子供与体の存在下で再活性化される。想定される第1の電子供与体は水である。一旦活性化されると、その抽出物はROSの活力あるスカベンジャーとして作用する。【0073】栄養剤、化粧剤および薬剤用途に対しては、このスカベンジャー活性は、ROSの形成が介在する疾患や障害、殊に炎症、癌または放射線暴露に関係する病因を有するものの治療や防止に有用である。【0074】第1のスカベンジングおよび保護作用は、紫外スペクトル中にある放射線に対して利用される。したがって、チラコイドに対する局所用途およびチラコイドを含む局所用組成物は、本発明の範囲に入る。【0075】チラコイドは、皮膚や粘膜のような体表面上に、光子吸収性フィルムまたは被膜を形成する能力を有することが判明した。この性質はROSスカベンジャー活性とは無関係と思われる。したがって、チラコイドを含む抽出物は、活性化し得る形態であるか否かによらず、放射線、即ち紫外領域の放射線に対するフィルターとして作用する。その抽出物が更に機能性チラコイドを有すると、UVフィルター兼ROSスカベンジャーとして二重の役割を担う。その抽出物を更に、分子を検出または捕捉するか、あるいはチラコイドに対する親和性を有する分子を生成または処理するか、あるいはその活性を妨害するための方法、組成物、装置のいずれかにおいて使用してもよい。【0076】このような分子の例は、トリアジン(例えば、アトラジン型およびジウロン型除草剤)のような除草剤、キノン、クロルプロマジン、尿素、ホルムアルデヒド、アルキルアミノシアノアクリレート、トリプシン、シアノアクリレート、トリス、アデニン誘導体、ジスルフィラン(金属キレート化剤)、アセチルCoAカルボキシラーゼ、ジギトニン、重金属(例えば、Cu、Zn、Cd、Pb、Hg ...)、SO2、NO2、NH2OH、CO2、CO、O3、O2、H2S、カルシウム拮抗剤(カルモジュリン型)、硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、亜硝酸塩、酢酸(塩)、乳酸(塩)、NO3-、HCO3-、HCO2-、F-、NO2-、HSO3-等の陰イオンである。【0077】(発明の説明)本発明を特定の実施形態および付随する図を参考として以下に説明するが、その目的は本発明を例示するためであって、その範囲を制限するためではない。【0078】(発明の説明)本発明を特定の実施形態および付随する図を参考として以下に説明するが、その目的は本発明を例示するためであって、その範囲を制限するためではない。【0079】本明細書で使用する場合、「抗酸化剤」とは、酸化し得る生物基質を含む混合物または構造中に存在するとき、その生物基質の酸化を有意に遅らせるか、または防止する物質である。抗酸化剤は、生物学的に重要な反応性フリーラジカルや他のROS(一重項酸素、・O2-、H2O2、・OH、HOClフェリル、ペルオキシル、ペルオキシナイトライト、アルコキシル...)をスカベンジするか、またはそれらの形成を防止するか、またはフリーラジカルや他のROSを反応性のより低い種に触媒的に変換することによって、作用することができる。【0080】本発明の抗酸化剤は、細胞培養液またはアッセイ反応物に添加したとき、抗酸化剤で処理していない同時進行の細胞培養液またはアッセイ反応物と比較して、スーパーオキシドのようなフリーラジカルや過酸化水素、一重項酸素等の非ラジカル性ROSの量の検出し得る減少を起こす場合、そのようなものであると見なされる。適当な濃度(即ち、有効用量)は、実験的な用量−反応曲線の作成、QSAR法の使用や分子モデル作製による同種物質の効力および有効性の予測、および薬剤学で使用する他の方法を含む様々な方法によって、決定することができる。【0081】ROS関連の疾患や障害に関わる症状を治療し、防止し、または軽減するため、あるいはこのような疾患や障害の発現を低減するために、本発明を医学分野で使用することを意図している。このような疾患や障害は、in vivoでフリーラジカル、特に酸素ラジカル、および他のROSが生成するか、またはそれらに曝されることから、少なくとも部分的に生じる個人の状態を指す。単独の原因に基づく病状がたとえ2〜3しかないとしても、ROSの病因への関与に関する文献や知識は増加している。このような理由によって、「ROS関連疾患」という用語は、ROSによる傷害が病状の病理に働いていると考えられるか、あるいはフリーラジカル阻害剤(例えば、デスフェリオキサミン)、スカベンジャー(例えば、トコフェロール、グルタチオン)または触媒(例えば、SOD、カタラーゼ)の投与が、病状を治療または防止する際に、症状を低減するか、生存を増加させるか、または他の検知し得る臨床的便益をもたらすことによって、検知し得る便益を生み出すことが示される状態であると当分野で認識されている病状を包含している。制限するためでなく、例として、本明細書で論じる病状、例えば虚血性再灌流傷害、炎症性疾患、全身エリテマトーデス、心筋梗塞、脳卒中、外傷性出血、脊髄外傷、クローン病、自己免疫病(例えば、関節リウマチ、糖尿病)、白内障形成、ブドウ膜炎、気腫、胃潰瘍、酸素中毒、新生物、望まざる細胞アポトーシス、放射線宿酔は、ROS関連疾患とみなされる。更に、多くの炎症性の疾患や障害は、ROSが炎症過程に介在することが知られているので、本発明から利便を得ると思われる。例えば、活性化された好中球の「酸化バースト」は多量のスーパーオキシドラジカルを生成し、それが活性化された好中球の細胞毒性を生じる上で必須要因であると考えられている。更に、好中球はグラフト化または移植した組織や細胞の早死に関与しているので、抗酸化剤は、移植の成功に肝要な移植またはグラフト化細胞の早期生存を増加させると思われる。【0082】【実施例】本発明は、ROSに対するスカベンジャー活性を有する強力な抗酸化性分子を構成するであろう単離チラコイドおよびチラコイドの単離方法に関する。この抗酸化剤は自然界に起源を有し、それ相応の濃度で使用すると毒性あるいは有害作用を有することはないはずである。この抗酸化剤は安定化することもまた可能であって、それが経時的な安定度を確保し、したがって適度な保存性を確保する。安定化は電子供与体(すなわち水分子)を引き抜くことで行われ、それがチラコイドを静止状態に留める。チラコイドは電子供与体を加えること(すなわち水和)によって活性化される。【0083】調製ないし条件設定チラコイドを粗懸濁液で回収するためのステップに入る前に採られる最初のステップは条件設定ステップであってもよい。この条件設定は場合によって行われ、抽出物の組成を変えることができる。非活性状態での色素(すなわちクロロフィルとカロテノイド)のレベルを最適化するために、条件設定ステップは作用条件と同じ条件、例えば緑色光の下または暗状態で行われる。そのような環境の下では、クロロフィルは一重項状態であることが好ましく、一方、カロテノイドは基本状態であることが好ましい。この方式で準備が整うと、カロテノイドが活性化されて三重項のクロロフィルから入るエネルギーを取り込む用意が整う(光保護)。【0084】抽出の溶液にビオラキサンチンのような他のキサントフィルを添加することによってチラコイド色素をさらに保護すること、あるいは狭い波長帯域(465〜475nm)を有する光の下で作用させることによってカロテノイドの数を増大させることもやはり可能である。【0085】さらに、有機体を光条件以外の或る条件設定ステップにかけることによっていくつかの特定の成分について有機体、すなわち植物とその抽出物を富化させることもまた可能である。そのようなその他の条件設定には浸透ストレス、熱、冷気、凍結、乾燥、ホルモン、および化学的および生物学的誘導物質が含まれる。これらの条件設定パラメータすべては感受性のある有機体の応答につながり、その後、それが前記いくつかの特定成分の富化になる。【0086】この一例を挙げると、熱処理は熱ショックタンパク質の蓄積を促進するであろうし、それはROSに関連する疾病ないし障害(すなわち関節炎)を治療するのに有用である。本方法のステップの主要な目的は、いくつかの価値ある成分、すなわちチラコイドの分子成分の完全性を維持すること、および分子の状態を、好ましくはそれらの基本的な機能性状態に制御することである。【0087】粗抽出物の獲得植物組織ないし植物体全体などの有機体全体ないしその組織で開始するとき、この方法の最初のステップはホモジナイゼーション・ステップなどの分散ステップである。植物組織は、例えば機械的に粉砕される。葉肉組織(葉ないし針葉)はホモジナイザーに回収されるように回転ナイフまたは市販の回転式カッターを用いて小片に切断してもよい。セルロース性物質を解離させてチラコイドを露出させることにつながるあらゆる手段が適切であろう。【0088】光束を最適に最少化する光源(緑色光、λ=500〜600nm)の下で作用させるのに加えて、理想的には、細胞密度を高めてかつ酵素によるあらゆる分解を防止する目的で、作用条件には約2から20℃まで、好ましくは4℃未満の作用温度を含む。作用条件はまた、糖のような高張化剤を使用した高張条件をも含む。これらの条件は最適な粘度と流動性を達成する。ホモジナイゼーション・バッファの特定の範例は以下の通りである。【表1】【0089】溶液のpHは2以上10以下で、好ましくは5から8までで変化可能であり、さらに好ましくは7〜7.5の中性付近の値に維持することができる(図1)。【0090】基準植物をホウレンソウとすると、植物の葉組織の湿重量(g)/バッファの体積(mL)の比率は約1/3である。したがって、上記の処方はホウレンソウ100gからチラコイドを抽出するのに適している。植物は、例えば家庭用のブレンダー内でバッファと混合されて約30秒間ホモジナイゼーションされる。植物供給量は媒質の体積のように変えることができる。バッファそれ自体は中性付近のpHを維持するためのものであればどれでも適切である。例えば、上記のトリス・バッファは酢酸またはアスコルビン酸バッファで置き換えることも可能である。どちらの置き換えバッファも共にヒトによる消費に受容可能であり、アスコルビン酸はさらに消費する側にビタミンCを供給するという利点を有する。膜の完全性を維持し、約1から1.3の粘度を保証するためにソルビトールが添加されている(図2および3)が、市販のサッカロース、フルクトースあるいはタービナード(turbinado)のような他の適切な糖のいずれとでも、0.2から1.5M(好ましくは0.2〜0.4M)のソルビトールと同じ効果を達成する濃度で置き換えることができる。0.2〜0.4Mのスクロースは受容可能で安価な成分であろう(図4)。MgCl2、NaCl、アスコルビン酸塩/酸のようなバッファ成分は本方法に必要とは考えられないが、しかしそれらはより多くの活性を回収することや活性を長期間維持することに役立つかもしれない(図5)。【0091】中性付近のpHは最適なH+イオン濃度を維持するために優先して選択した。光合成色素の解離を防止するために糖とpHは重要なパラメータである。冷地または寒地環境、すなわち4℃以下で作用すると細胞液の比重は最大化される(図6参照、ここではFRTS/1が本抽出物を象徴している)。低温はまた、酵素による分解から成分を保護する。これらのホモジナイゼーション条件すべては、チラコイドの分子構造の組織構造に実質的に影響を与えることなく、膜構造をそのクロロプラスト内での有機体組織構造から解放する。したがってクロロプラストはチラコイドを破壊ないし分裂させることなくほぐされる。あらゆるセルロース質の保護を外した細胞成分の表面がこうして増大する。【0092】抽出溶液中で植物組織を直接的に使用することが本方法において便利であった。しかしながら、純粋なクロロプラストまたはクロロプラスト内で富化した調製物またはクロロプラストを有するか有しない他の光合成有機体の調製物でさえも使用することが有利となるのであれば、そうすることも可能である。培養細胞ないし組織が植物体全体と置き換え可能であることもまた明白である。【0093】ホウレンソウの葉から開始すると、次の式に従うとチラコイドの収量はかなり良くなり、α/β>10ここでαは湿重量/乾燥重量の比であり、βは湿重量/(媒質の体積+植物成分含水量)の比である。【0094】したがって、((媒質の体積+植物成分含水量)/植物成分乾重量)>10となる。【0095】さらに正確には(好ましくは)、((媒質の体積+植物成分含水量)/植物成分乾重量)=25−150である。【0096】選択したバッファの体積および選択した植物の水分含量に依存して収量が変わる可能性があることに言及するのは価値のあることである。例えば、マツの針葉はホウレンソウの葉の場合よりもはるかに問題にならない量の内因性水分含量を有する。植物材料の一様な湿重量を得るために、マツの針葉からチラコイドを単離するためには上式のすべてのパラメータを考慮に入れて、バッファの体積はホウレンソウの葉に比べて増やさなければならない。【0097】単独で得られた粗抽出物はそのまま、または脱水して、またはさらに分画して使用することのできる最初の画分を構成する。【0098】植物画分の分離ホモジナイゼーション・ステップに続いて分離ステップがある。チラコイドは細胞片および可溶性成分から、それらの沈降係数の違いに基づいて分離される。チラコイドの沈降係数は細胞のオルガネラのそれよりも上位にある。携帯型バケット中で10,000×gで10分間チラコイドを遠心分離した。10,000×g未満であるが3,000gを超える遠心力を、それに応じて遠心時間を調節しながら使用することができる(図7)。チラコイドのペレットとして最適な手ごろさは、10,000〜12,000×g、10分間で得られた。同等の結果を得るためのいかなる他のスピードと時間を適合させることも可能である。処理を大規模化すると異なるスピードと時間が意図される。沈降の間で、チラコイドは次の式に相当するフィルタを通過し、0.002≦X≦0.2ここでXは線径当たりの開口を積算することによって算出される(すべてミリメートル)。細胞片と膜は遠心チューブの上位部分でこのフィルタによって止められる。したがって、チラコイドを含む底部のペレットが容易に回収され、ペレットは直ぐに使用されてもよいし、またはさらに分画されることもあり、またはいつか将来使用するために安定化されることもある。もちろん、チラコイドを単離するという同じ目的を達成するために他の何らかの方法が使用されることもある。例えば、スクロース勾配のような密度勾配を使用することが可能である。何らかのクロマトグラフィーないしアフィニティー溶液および方法を使用することもできる。上記の特定した方法によると、大規模な処理では全体的かつ高純度の分離は1つのステップでは達成されないと考えられる。したがって、全体的な精製が最初に圧搾機またはフィルタで為され、チラコイドと液相の高純度の分離は後のステップで達成されるであろう。【0099】安定化普通、分離ステップに引き続いて安定化ステップがある。このステップは膜に結合しているかまたは非結合の水分子のような電子供与体の引き抜きを可能にし、これはPSII系の活性化物質を除去するためのものである。画分は回収され、清浄なバイアルに入れられる。特に抽出物全体、ペレット(チラコイド画分)および細胞片/膜画分をそれぞれ表わす第1、第2および第3の画分は凍結乾燥される。その後、バイアルは少なくとも4時間にわたって真空と低温(約−20から−50℃)に曝される。このように凍結乾燥された画分はそこに水が加えられるまで長期間にわたって安定なままである。その他の安定化手段も使用可能である。例えば、チラコイドの構造を損なうことなく水を追い出すために複数の界面活性剤がその性能確認のために使用されてきた。これらの溶剤は次のものであって、Triton X-100、PEG、ベータ-D-マルトシド、グリシン、グリセリン、グリセロール、TWEEN(商標)、SDS、LDS、DMSO、コール酸塩、ステアリン酸塩およびプロピレングリコールが使用されてきた。【0100】プロピレングリコールは好ましいものであったし、安定化剤として有利に凍結乾燥に取って代わるであろう。プロピレングリコールは不活性で不動のチラコイド調製物(水を加えると機能して充分に活性化する、図8参照)を供給するばかりでなく、その可溶化を補助することで水和時のチラコイドを安定化する。水和すると、普通はチラコイドは懸濁液を形成するが、100%プロピレングリコールの存在下ではチラコイドは100mg/mL溶液の溶解度限界を有する溶液を形成する。この溶液は活性化のために水で希釈することが可能である。この溶剤もまた無毒である。【0101】任意追加の分画チラコイド膜はさらに部分画分に分画することができる。例えば、反応中心ないし光化学系、集光性複合体、シトクロム複合体、特定の色素(クロロフィル、カロテノイド)、プラストキノン、非光合成成分(細胞核)、またはミトコンドリアを分離することが予想可能である。【0102】チラコイドの完全性および活性抽出物は実質的に純粋(>90%)のチラコイドを含み、それらは光合成活性を有し、安定であり、そして抽出物は制御可能である。光合成活性は様々な技術、すなわち酸素放出(Schlodder等、1999)、2,6ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)の光還元(Behera等、1983)および蛍光(Maxwell等、2000)で評価されてきた。さらに、チラコイドの完全性は連続的な電流を測定する技術で評価されてきており、いかなる分裂もこの電流の何らかの変化によって検出されるはずである。この電流はPSIIから共役因子に向かって測定され、それはチラコイドが上記で列挙した主要なサブユニット含むことおよびそれらが機能していることを示す。【0103】作用条件に緑色光が使用されたとき、色素はその基本状態(F0)で安定化され、したがってあらゆる所望の効果の最適化および同期化が可能になる。一次電子供与体の引き抜きのせいで安定化は可能になる。光合成活性(静止状態では欠如し、電子供与体で活性化されると現れる)およびクロロフィルとカロテノイド濃度によって測定される安定度は抽出後の数ヶ月にわたって存続する。クロロフィル/カロテノイドの比率もまた複合体の活性にとって、およびエネルギーの吸収と消費を維持するために重要である。【0104】抽出物はその天然の蛍光により容易に検出することができる。有毒な製品、溶剤、洗浄剤および保存剤が上記のチラコイドに添加されていないので、製品でその本来の性質すべてを維持されてきた。抽出物は完全に食用になる。チラコイドを安定化させるためにたとえプロピレングリコールが使用されても、この溶剤は酸化されてピルビン酸と酢酸を生じるので無害である。現在、この溶剤は食品の乳化剤として使用され、これは界面活性特性を有することを意味する(しかしながら、チラコイドの完全性に有害でない)。それはさらに発酵およびカビの成育に対して阻害活性を有する。したがって、この溶剤は本方法のいかなるステップでも使用可能であり、ホモジナイゼーションの間で水と混ぜてステップc(分離ステップ)以降に水と混ぜないことも可能である。【0105】抽出物は乾燥ないし湿潤固体の形、または液体の形で提供することができる。抽出物は容易に水和するけれども水に殆ど溶けないが、しかしプロピレングリコール中で完全に再懸濁する。チラコイドは再度水和されることで再度活性化される。したがって、可溶化したチラコイドを含む組成を使用し、水溶液と接触するとチラコイドが活性化することが想定される。【0106】副産物上記の手法の中でチラコイドは第1の注目を受ける生成物であるけれども、チラコイドから分離される他の植物成分もやはりその商業的価値ゆえに回収されるであろう。液体画分および細胞片/膜画分は興味対象のあらゆる植物分子を単離するための出発材料として容易に得ることができる。後者の画分は単位植物当たり回収されるチラコイドの収量を上げるために再抽出されることもある。他の画分の成分が先行技術の方法から得られるあらゆる相当する成分と比べても優れた性質を有することが予測される。本発明により調製されるチラコイドによって破壊性ROSの形成が阻止されるか、またはすでに形成されたROSが捕捉されるゆえに、ROSに感受性の他のいかなる植物成分もまた本方法から恩恵を受けることが予想される。まったくのところ、普通は酸化で劣化する傾向のあるその他の成分は有害な劣化源を除去することによって保存されるであろう。したがって、糖、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルおよびホルモンのようなあらゆる植物成分は、例えば上記の方法から得られる液相を分画することによって得られ、それらの成分は通常のものより大きな比活性を有するであろう。これに加えて、適切な条件設定ステップが抽出物の関心対象成分を富化させることができる。【0107】抽出物が機能することを確認した後、次のステップはそれらのROSに対するスカベンジャー活性を確認することである。【0108】チラコイドの抗酸化剤としての用途抗酸化剤は(一重項酸素、過酸化水素、スーパーオキシドアニオンおよびヒドロキシルラジカルのような)ROSと相互作用する化合物である。無害な劣化生成物を形成させるように活性酸素型は他の分子を劣化ないし不活化させ、そして突然変異、癌ないし炎症を引き起こすのかもしれない。それらはさらに老化に関与するかもしれない。本抽出物の抗酸化分子は次のもので、すなわちクロロフィル、カロテノイドおよびビタミン(B、C、E、K、...)、シトクロムおよびアントシアニンである。チラコイドは、それらの物理的組織構造がクロロフィル保護の役割りの中でカロテノイドによる一重項酸素の捕捉を可能にするので、特に抗酸化剤の役割りを果たしている。その消光効果は、カロテノイドが三重項クロロフィルから入るエネルギーを熱として消散させ、再度そのエネルギーを受け取る準備を整えるので、高い効力と比較的長い持続時間の両方を有する。したがってチラコイドは、その機能状態を再生させる能力ゆえに抗酸化剤の分野で傑出しており、色素の組織構造が持続した抗酸化活性を可能にするであろう。【0109】本発明のチラコイドを、これ以降は植物バイオマスから抽出される生理活性分子複合体を構成するFRTS/1と称する。FRTS/1の機能状態にある抗酸化活性はチラコイドの分子複合体の酸化還元電位に基づくものであり、そこではその様々な色素および分子の間の三次元的構造と自然状態の距離は維持されている。この抗酸化剤は最適構造と最適構成の指標である。【0110】・フルオレスカミン法によるタンパク質の定量化安定化された抽出物のタンパク質濃度は、0.42〜0.65g/g抽出物である。【0111】チラコイドの抗酸化機能ラジカル誘導型の脂質酸化での主要反応径路タンパク質、DNA、脂質などのような生体分子の酸化を防止するために自然は抗酸化剤を使用する。脂質の過酸化反応は特にいたるところにあって生きている有機体の中で損傷を与える過程である。過酸化性のラジカル(ROO・)は、それらが脂質の過酸化反応を開始可能であり、かつ生物学的に重要な分子の多様な酸化過程で中間体となるがゆえに生物学的系の中で重要なラジカルである。【化8】不飽和脂質部分の過酸化反応(反応式1〜3)はその構造に変化を引き起こし、それが生物膜の物理学的性質を最終的には変える。脂質の過酸化反応の間で共役ジエン基が形成され(反応式3のLOOH参照)、これがλmax=234nmでUV/Vis吸収を有し(ε=29,500M-1cm-1)、このことが形成される酸化生成物の定量化を可能にする。定量的データを得るために脂質の過酸化反応は制御された方式で開始されねばならない(反応式1)。in vitroの実験で脂質の酸化を調べるために、通気された水溶液中で充分に規定されたフラックスROO・を生じるアゾ開始剤がしばしば使用される。最も一般的に使用される水溶性のアゾ開始剤はAAPHである(ときにはABAPと呼ばれる、反応式4)。【化9】【0112】37℃におけるAAPHの分解速度はk=1.3×10-6M-1s-1であり、ROO・形成の効率は50%であり、すなわち1molのAAPHが1molのROO・を生じる。ROO・生成のこの方法はいかなる時間的間隔内でも形成されるROO・の正確な量の算出を可能にする。【0113】最も熱心に研究された抗酸化剤はビタミンEであり、ビタミンE類のうち最も活性のある化合物はα−トコフェロール(α−TocH)である。それはラジカル連鎖切断性の抗酸化剤であり、2つのペルオキシル・ラジカルを捕捉して非ラジカルの生成物を生じることが可能であり、それにより脂質の過酸化反応を阻止する(反応式5および6)。【化10】【0114】反応式5で形成されるトコフェロキシル・ラジカル(Toc・)は比較的非反応性のラジカルであって、普通はラジカル酸化連鎖反応を伝播させることができない。すべてのTocHが消費されるやいなや、まるで抗酸化剤が存在しないかのように脂質の過酸化反応が生じる。【0115】カロテノイド(Car)はFRTS/1で最もありそうな「抗酸化剤」であり、なぜならクロロプラストがその励起子伝播連鎖のためにカロテンおよびキサントフィルのようなカロテノイドを利用するからである。カロテノイドとROSの反応が可能な径路はいくつか存在し、それらの全体的な挙動は抗酸化活性からはるばる脂質の過酸化に関する無効性にまでわたる。得られる実験結果は使用する反応条件によって決まる。カロテノイドとROO・とのあり得る反応は、【化11】である。【0116】いくつかの反応は非ラジカルの生成物の形成につながり(反応式7+8、10+11、12+14)、結果としてカロテノイドの全体としての抗酸化挙動につながるであろう。その他の反応はペルオキシル・ラジカルを生じており(反応式9および13)、脂質の過酸化反応の伝播に含まれる可能性がある。カロテノイドの全体としての挙動は様々なあり得る反応径路のせいで明確に予測することができない。【0117】使用する抗酸化剤の可能な反応径路に応じて、検出されるLOOHの濃度の時間的プロファイルは一定の特徴を示す。ペルオキシル・ラジカル源としてアゾ開始剤を使用することによって発生するROO・の量は算出可能となり、共役ジエン部分の234nm吸収から酸化される脂質の量を決定することができる。遅滞期の間で捕捉されるROO・の量もまた決定することができる。【0118】FRTS/1内の方法は「本来の」抗酸化特性を「回復」するかもしれない。そのような挙動に関してあり得るメカニズムはラジカルの捕捉過程ではなくて電子伝達であるかもしれず(反応式15および16参照)、例えば、【化12】である。【0119】FRTS/1存在下での脂質酸化の濃度/時間プロファイルはこの仮説を試験することを可能にする。脂質の過酸化反応の実験の間のあり得る遅滞期の持続時間(図9)から、「捕捉された」ラジカルの量を算出することができる。これはFRTS/1がペルオキシル・ラジカルを不活化することができるという結論を引き出すことを可能にする。しかしながら、記述した抗酸化特性のあり得る再生はFRTS/1が完全であって「本来の」活性を発揮することができる限りにおいてのみ有効となり得ることに留意すべきである。全体として実験は最終的にERTS/1の抗酸化能について定量的データを提供するであろう(Troloxと比較したFRTS/1の抗酸化動力学の範例に関する図10参照)。β−カロテンをTroloxと比較したとき、前者は抗酸化剤であるが、抗酸化剤に通常伴なう遅滞期を備えていない。【0120】脂質は生存有機体の細胞膜、リポタンパク質およびその他の膜構造の主要成分であるので、本研究ではPLPC-FRTS/1(1−パルミトイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン)ミセルを標準酸化分析の基質として使用した。開始剤の2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(AAPH)から生起されるペルオキシル・ラジカルによって導入されるPLPC-FRTS/1の酸化は234nmに最大吸収をもつ共役ジエン系の形成と共にリノレン酸部分の対応するヒドロペルオキシドへの酸化という結果につながる。【0121】PLPC(1−パルミトイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン)ミセルの調製CHCl3に溶かした25mg/mLのPLPC-FRTS/1の溶液(Avanti Polar Lipids)をN2流中で蒸発させて乾燥物にした。金属イオンを除去するために前もってChelex(登録商標)で処理したリン酸バッファ食塩水(PBS)(281μL)をPLPC-FRTS/1に加え、この混合液を2分間渦流撹拌した。Chelex(登録商標)で処理したコール酸ナトリウム水溶液109μL、30mg/mL(Aldrich Chemical Company Inc., Milwaukee, WI, U.S.A)をこの混合液に加え、2分間渦流撹拌した。ミセルのサイズを均質化するためにこの混合液を20回ポリカーボネート膜(ポア・サイズ100nm)に通した。【0122】FRTS/1をCHCl3に溶解し(12mg/mL)、この溶液1mLを6mLのPLPC-FRTS/1(25mg/mL)と混合して終濃度6mg/mLのPC-FRTS/1を得た。ミセルは上述のようにして調製した。アゾ開始剤(AAPH)は5mg/mLの濃度にPBSで溶解して使用した。【0123】標準化ミセル、アゾ開始剤および波長を標準化するため、脱水された形のFRTS/1を使用して初期実験を行った。最適な吸収は234nmにおいて得られた。【0124】3mLのPBSに溶解したPLPC-FRTS/1およびPLPC-FRTS/1+FRTS/1を5mg/mLのアゾ開始剤で2通りに希釈(10μLと20μL)して調製した100μLのミセル溶液で2通りの予備実験をVarian社のCary 3紫外線/可視光分光器で波長234nmで37℃にて10時間実施した。PC-FRTS/1に起因する234nmでのバックグラウンド吸収がこれらの反応条件では高過ぎた。【0125】実験上記の実験で得られた結果に基づいて、さらに希釈したFRTS/1溶液を使用することに決定した(FRTS/1の終濃度は6.7μgであった)。陰性対照として、AAPHから由来するペルオキシル・ラジカルによって媒介される酸化に耐性のある化合物1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン(DMPC)で作製したミセルにFRTS/1を組み入れた。0.6375mLのPBSに溶かした15.937mgのDMPC-FRTS/1(ストック液25mg/mL)+1.053mLのPBS+0.408mLのコール酸ナトリウム+CHCl3に溶かした0.2435mLのFRTS/1(2mg/mL)から上述したようにミセルを調製した。したがって以下の実験を実施した。・3mLのPBS+100μLのPLPC-FRTS/1ミセル+10μLのアゾ開始剤・3mLのPBS+100μLのPLPC-FRTS/1ミセル+20μLのアゾ開始剤・3mLのPBS+100μLのPMPC+FRTS/1+10μLのアゾ開始剤・3mLのPBS+100μLのPMPC+FRTS/120μLのアゾ開始剤・3mLのPBS+10μLのアゾ開始剤・3mLのPBS+20μLのアゾ開始剤【0126】反応を37℃にて10時間、分光器でモニタした。【0127】結論これらの結果は、0.3mg/mLでFRTS/1を含むPLPC-FRTS/1ミセルの最大OD(234nm)が180分後に0.25になったのに対してFRTS/1の無いPLPC-FRTS/1ミセルのODは同じ時間経過後に3.2であっとことを示している。これらの結果は間違いなくFRTS/1が抗酸化特性を示すことを表わしている。【0128】ビタミンEと比較したFRTS/1溶液の抗酸化特性FRTS/1とTrolox、水溶性のビタミンE類似物質の抗酸化特性を比較するために低濃度の抗酸化剤を使用した(PBSで0.3mg/mLに溶解)。以下のサンプルで37℃にて10時間、分光器で実施した。1.3000μLのPBS+10μLのアゾ開始剤2.3000μLのPBS+100μLのPLPCミセル+10μLのアゾ開始剤3.2998μLのPBS+2μLの抗酸化剤(0.5mg/mL水溶液)+100μLのPLPCミセル+10μLのアゾ開始剤4.2995μLのPBS+5μLの抗酸化剤(0.5mg/mL水溶液)+100μLのPLPCミセル+10μLのアゾ開始剤5.2990μLのPBS+10μLの抗酸化剤(0.5mg/mL水溶液)+100μLのPLPCミセル+10μLのアゾ開始剤6.2980μLのPBS+20μLの抗酸化剤(0.5mg/mL水溶液)+100μLのPLPCミセル+10μLのアゾ開始剤7.2990μLのPBS+10μLのTrolox+100μLのPLPCミセル+10μLのアゾ開始剤8.2980μLのPBS+20μLのTrolox+100μLのPLPCミセル+10μLのアゾ開始剤9.2970μLのPBS+30μLのTrolox+100μLのPLPCミセル+10μLのアゾ開始剤【0129】図10はTroloxよりもFRTS/1の方がさらに持続することを示している。【0130】保護メカニズムラジカル酸素種(ROS)は容易に細胞内マクロ分子および構造体と相互作用し、膜透過性の変化、プロテアーゼとヌクレアーゼの活性化、および変化した遺伝子発現という結果につながる(Yu, 1994; SchiaffonatiとTiberio、1997)。ROSによって導入されるこれらの細胞内変化がアポトーシスによる細胞死につながることはよく知られている。著者らは次のことを企画した。−FRTS/1の抗酸化特性を評価すること。−抗酸化剤としてのFRTS/1の作用モードを判定すること。【0131】IMR-32細胞は著者らの抽出物の抗酸化能力を評価するのに優れたモデルを構成している。これらの細胞はアポトーシスを引き起こす酸化ストレスに敏感な神経芽細胞腫の細胞である。【0132】実験1.実験条件の標準化細胞培養の選択アポトーシスによって酸化ストレスに応答することで知られているヒト神経芽細胞腫の細胞株(IMR-32)(Kim等、1999)をin vitroの細胞モデルとして使用した。IMR-32細胞はそれらのp53遺伝子産物が細胞質内に閉じ込められるので特にROSおよびその他の毒物に対して感受性である。この閉じ込めは、遺伝子は突然変異していなくてもp53を不活化させる。【0133】ROS誘導物質の選択第三ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)を酸化ストレス誘導薬剤として使用した。TBHPはドーパミン作動性のニューロンでMPTPによって誘導される酸化ストレスとは対照的に何らニューロン特異性を有していない。このことは、(多くの神経組織変性疾病で見出されるもののような)より一般化された酸化ストレス条件に関連する研究を様々な細胞表現型で実施する必要がある場合、比較を可能にするであろう。【0134】A.IMR-32培養細胞にアポトーシスを誘導するためのTBHPの最適投与量の決定ウェル当たり1000個のIMR-32細胞を使用して1時間のインキュベーションで実験を行った。50、75および100μMのTBHPは78%、87%および87%のアポトーシスを生じた。他の実験でアポトーシスを誘導するのに50μMのTBHPを選択した。【0135】B.FRTS/1の投与IMR-32細胞に対して、TBHPと共に様々な希釈率を使用した。凍結乾燥したチラコイド画分を出発材料としてプロピレングリコール中で1:10の母体となる溶液を構成した。特定しない限り、記述した希釈率はこの母体溶液の希釈率である。FRTS/1によってもたらされた保護は希釈率1:10、1:100および1:1000でそれぞれ28%、35%および75%であった。後者の希釈率をさらなる実験について適用した。【0136】1.細胞培養95%空気および5%CO2の加湿した雰囲気中で37℃にて、10%のFBSを添加したMEMでIMR-32細胞を生育させた。1×104個細胞/T25 Falcon組織培養フラスコの密度で細胞を植え付け、週に2回サブカルチャーを行った。すべての実験に48時間経過後の培養物を使用した。最初の実験では、ウェル当たり1000個の細胞を植え付けた。後に表に示したように数は3000に増加した。【0137】2.in vitroのプロトコルでの酸化ストレス96ウェルのプレート(Linbro flat bottom)のNo.12の横列全部以外のすべてのウェルに1000または3000個細胞/ウェル/100μLを植え付けた。24時間後、250μLのPBS(pH7.2)で2回細胞を洗浄し、32ウェル各々を100および200μMのTBHP溶液(Sigma Chemical Companyから入手した70%水溶液)でそれぞれ1時間処理した。1時間後、新鮮な生育培地を加えるのに先だって細胞をPBSで2回穏やかに洗浄した。24時間後、以下の手法により、DNA結合蛍光染料Hoechstに基づいて高感度蛍光分析法によって生存細胞を分析した。この試験は集合の合計DNAを測定するものであり、測定値は細胞数と密接に相関する。培地は穏やかな吸引でアスピレータ処理した。細胞を250μLのPBSでゆすいだ。穏やかな吸引でPBSをアスピレータ処理した。ゆすぎのステップを繰り返した。横列12のDNA標準とブランク以外の各々のウェルに100μLの分解バッファ(1×SSCに溶解した0.02%のSDS)を加えた。このプレートをたまに渦流撹拌しながら37℃で1時間インキュベートした。40μg/mLのDNA100μLをDNAウェルに加え、1×SSCバッファ100μLをブランクとして処理されたウェルに加えた。1×SSCに溶解した100μLの40μg/mLのHoechst 33258を各々のウェルに加え、光から保護するためにアルミニウム・ホイルでカバーした。このプレートを5分間穏やかに撹拌し、励起波長355nmおよび発光波長460nmで蛍光を読み取った。【0138】3.計算非処理のCT=100%、TBHPの後の生存:42%、死滅細胞:100−42=58%、PCの後の集合体サイズ:88%CTとの差異:100−88=12%TBHP+PCの後の期待集合サイズ:100−58−12=30%。回収生存:60%生存利得%:60−30=30発揮保護:30:60×100=50%。【0139】4.LDH分析による細胞毒性の評価この実験のために、l−グルタミン、フェノールフタレインおよびピルビン酸ナトリウムを含まないMEM培地でIMR-32細胞を生育させ、3000個のIMR-32細胞/ウェルを96ウェルのプレートに植え付けた。酸化ストレスをかけて24時間後に、PBSで細胞を2回洗浄し、2本の横列を各々37℃にて1処理について1:1000および1:10000のPC-FRTS/1で処理した。1時間後、PBSで細胞を2回洗浄し、PBSを成長培地で置換した。2本の横列を各々1:1000および1:10000のPC-FRTS/1で処理したが、一方、2本の横列を各々25および50μMのTBHPでそれぞれ処理した。2本の横列が対照として未処理で残った。LDH活性はSigma Diagnosticsから供給されたLactate Dehydrogenase Assay Kitによって測定した。比色分析は残留ピルビン酸塩(酵素反応の基質)を測定するものである。溶液単体(細胞不在)に存在する基礎活性は0%と考えられ、各々の実験値から系統的に差し引かれた。2本の横列の未処理の対照をTriton X-100(0.02%)で分解し、100%のLDH放出のサンプルとして扱った。【0140】最初の2つの実験は手法、使用する細胞数、最適吸収波長、使用する最適ピルビン酸基質を標準化するために行った。3000個細胞/ウェル、0.4mLのピルビン酸、440nmでの分光器読み取りを標準にすると確定した。【0141】FRTS/1は前処理、同時処理および後処理で酸化的損傷で使用した。【0142】前処理TBHP投与に曝す前にFRTS/1で2時間細胞を前処理した。【表2】【0143】・同時処理細胞をFRTS/1とTBHPで同時に1時間処理した。【表3】【0144】・後処理細胞を、TBHP投与に曝した1時間後にFRTS/1を3回投与する処理をした。【表4】【0145】「TBHP/CTでの細胞損傷率」は酸化剤によって引き起こされる損傷を表わすものであって未処理の対照の生存数からパーセンテージで算出される。「FRTS/1での減少率」は対照とFRTS/1曝露細胞での集合体サイズの差異を指す。「合計の期待減少率」はTBHPおよびFRTS/1個々の曝露に起因する集合体サイズの差の合計である。「期待生存率」は100−合計の期待減少率である。「TBHP+PC/CTでの生存率」は1:1000に希釈したFRTS/1の存在下での実際の生存率である。「PCにより発揮された保護率」は上述したようにして算出される。【0146】前処理の実験で、FRTS/1の効果は後処理によって発揮される保護と比較すると増大している(23%に対して50%および62%に対して77%)。PC-FRTS/1の保護効果が抗酸化特性を通じて発揮されることが強く示唆される。低投与濃度(25μM)では、酸化剤により引き起こされる損傷に対する保護は2倍である。【0147】明らかに、PC-FRTS/1の効力はその抗酸化特性に起因する防止処理として確認される。【0148】FRTS/1の抗酸化特性は同時処理の実験で確認される。この生成物の効率は酸化剤の最も高い投与量では後処理で報告されるそれと同等であり、前および後処理それぞれで得られるそれの中間である。【0149】FRTS/1はTBHP損傷の間でTBHPによって引き起こされるアポトーシスに対する保護を発揮する。【0150】FRTS/1の強い抗酸化特性は酸化剤TBHPによってIMR-32細胞内で生じるROSに対するその保護効果を通じて確認される。著者らの標準条件下では、保護効果は平均62%である。【0151】抗酸化効果は前、同時および後処理で生じる。(図11aおよびb)【0152】IMR-32細胞に対してTBHPによって引き起こされる酸化的損傷が多くなるにつれて(TBHP投与量が増すにつれて)、FRTS/1によってさらに大きな保護が発揮される。これはFRTS/1の濃度とは無関係であり、なぜなら1/1000と同様に1/10,000の希釈で見られるからである(図12Aおよび12Bにそれぞれ示される)。これらの結果は本抽出物の活力を示すものである。【0153】損傷の増大につれて保護が増大するという事実は、FRTS/1の作用メカニズムが反応化学に関する研究で示されるような従来の抗酸化剤のそれと異なるかもしれないということを示すものであり、1)FRTS/1により発揮される保護効果はより長く続き、2)ビタミンEおよびその類似物質は所定の濃度で使用され、そしてその抗酸化効果を発揮する。それは上記の化学反応によって例示されるERTS/1のケースのようには思われない。【0154】酸化的損傷の量とPC-FRTS/1による保護との間の相関はこの抗酸化剤によって示される独特の特性である。【0155】細胞密度が1000から3000に増えると、各々の細胞が受け取る生成物の投与量は明らかに低下する。これは毒物学および薬理学でよく知られている効果である。FRTS/1によって発揮される保護は、保護すべき細胞の数が3倍になっても優れたままである。その効果は再現性がある。【0156】乳酸脱水素酵素(LDH)分析によるIMR-32細胞のアポトーシスの評価以前からあるLDH分析はアポトーシス細胞によるLDH酵素の放出を測定する。本研究で使用した分析は比色反応を利用して酵素の基質(ピルビン酸塩)の残留量を測定するものである。溶液中の基質が多いほど放出酵素は少ない。培地細胞を0%の酵素活性放出とし、培地内の分解細胞を100%放出とした。表の数値はこれら2つのパラメータから算出されるものである。損傷細胞によるLDH放出によって測定したアポトーシスの程度【表5】【0157】TBHP+FRTS/1の個々の曝露による合計のLDH放出を観察したLDH活性と比較した(最後の横列)。【0158】FRTS/1の保護効果は明らかである。FRTS/1による後処理は、TBHPにより生じるROSによって誘導されるアポトーシスに対して効果的にIMR-32細胞を保護する。【0159】結論FRTS/1化合物は化学的分析による評価で強力な抗酸化特性を示す。【0160】生物学的なin vitroの分析でもやはりこれらの高度に効率的な抗酸化効果が示され、・化学的に示されるFRTS/1の抗酸化特性は生物学的に確認され、・FRTS/1は、TBHP曝露の後にIMR-32細胞のアポトーシスを引き起こすROSによる損傷に対して高度に保護的な効果を示し、・FRTS/1は、酸化による損傷が増すにつれてさらに高い保護効果を発揮する(ROSによる損傷が高度になるほどFRTS/1による保護が高度になる)ように動的な独特の特性を提示し、・FRTS/1は(何時間も)長く続く抗酸化効果を示し、これは安定度および/または再生能力の程度が大きいことを示し、この抗酸化剤に独特なものであり、・FRTS/1は無毒な投与量で効率的である。【0161】細胞間相互作用効果的な投薬治療とするために、本抽出物は少なくともいくつかの性質を満足しなければならない。なかでも、本抽出物は毒性、免疫原性ではなく、または正常な組織機能、特に酸素と二酸化炭素の赤血球による輸送を妨害するものでないことである。【0162】本抽出物は、治療すべき組織ないし器官を標的にして被験者の体内に分散しなければならないが赤血球に粘着してはならない。著者らは第一線の防御細胞であるマクロファージが本抽出物を破壊しないかどうか確認した。マクロファージの破壊モードは普通、食作用の前に大型粒子を破壊するフリーラジカルの産生である。食作用で、マクロファージは何らかの侵入物あるいは組織の機能不全の存在の信号を発する分子であるサイトカインを産生する。サイトカインは他の細胞に送られる分子であって、侵入物あるいは組織の機能不全の存在の信号を発する。サイトカインに応答する細胞は繊維芽細胞、内皮細胞、マクロファージ、リンパ球、好中球および好酸球のような細胞である。これらの細胞は組織および器官の破壊および/または再編の過程に含まれる。これらの過程は炎症を含む。この応答が破壊されるかまたは侵入物が継続的に有機体の中に存在する場合、後者はリウマチ、皮膚炎、結膜炎、肺胞炎、喘息、および癌のような慢性の疾病を患う。細胞とFRTS/1との間の相互作用はFACS技術で実施される。この装置は細胞の蛍光(自己蛍光)および周りに固定されたすべての蛍光分子もまた検出する。FRTS/1は自己蛍光複合体であり、それゆえ何ら修飾することなく相互作用を定量化することができる。【0163】結論:FRTS/1は37℃で、マスト細胞(陽性対照、ATCCにより供給されるRCMC)と比較してマクロファージ(市販の系統:NR-8383でATCCにより供給される)に粘着する。マクロファージは2時間後にFRTS/1(1/3)を貪食し、これはFRTS/1が血流中に長時間滞留することを示す。ゆっくりした食作用は悪い知らせではなくてその逆であり、なぜならサイトカインの活性化に引き続いて別のタイプの有益な効果が観察され得るからである(「フェーズII」効果)。マクロファージは本抽出物を貪食し、IMR-32細胞は本抽出物が細胞質内に入ることを許容するようであるので、本抽出物はエンドサイトーシスによって細胞に入ることができると考えられる。【0164】酸化のex vivoのモデル肝臓の灌流モデルおよび脳の灌流モデルは酸化のストレスに応答する優れた実験的モデルである。生きた器官に対する本抽出物の保護効果を示すためにそれらを使用した。【0165】肝臓灌流モデル複数の肝機能を評価した。肝臓を灌流するために使用した方法はDrouin等、2000、およびLavoie等、2000によって報告された。グルコース、乳酸塩、ALT、およびLDHは分光法によって判定し、一方、胆汁生成は単純に容量で測定した。対照のベヒクルと比べると、本抽出物の灌流で観察される有害な影響はなかった。対照的に、虚血によって生じるストレスの発現を低減する本抽出物の効力の後に再灌流(I/R)が引き続くと、肝臓で誘導される酸化による損傷に対して本抽出物が保護効果を有する結果となった。【0166】このモデルで肝臓は、血管床を完全に保ち、かつその構造的および機能的完全性を守りながらも肝臓と隔てられている制御された体外循環で、in situで灌流される。このモデルは充分に報告されており(Ross, 1972)、細胞の損傷ならびに酸化のストレスの研究を可能にする(Bailey, 2000)。【0167】肝臓の生存への影響は、FRTS/1の肝臓の生存力への影響を評価するように企てられる。さらに特定すると、in situでの灌流の間で肝機能に対するFRTS/1の影響が評価される。【0168】Sprague-Dawley種のラットの肝臓を標準的なKrebs-Henseleit(K-H)溶液中で一回通過の系でin situ灌流する。[pH7.4, O2:CO2(95%:5%)]K-H溶液は、NaCl(118mM)、KCl(4.8mM)、KH2PO4(1.2mM)、MgSO4・7H2O、CaCl2(1.5mM)、NaHCO3(25mM)およびアルブミン(2%w/v)で構成される。【0169】麻酔(ペントバルビタール;50mg・kg-1体重)下で、開腹術を施し、カニューレ挿入のために肝門脈、下大静脈および胆道を露出させる。門脈へのカニューレ挿入は肝臓に灌流液を入れるのに使用し、大静脈へのそれは肝臓出口で灌流液を回収するために使用する。肝臓をあらゆる血管運動神経の影響から隔絶するために迷走神経を切断する。合計の外科処置は15分以内に完了する。門脈へのカニューレの挿入と循環の開始との間の時間的間隔は3分を超えない。胸郭切開により引き起こされる心臓停止と灌流の開始との間の時間経過は1分を超えない。【0170】灌流の合計の持続時間は60分であった。最初の30分の間で洗い出しを行った。その期間で、K-H溶液(37℃)にグルコース(8mM)、乳酸塩(0.5mM)、アラニン(0.2mM)およびグリセロール(0.02mM)を添加し、開回路系で肝臓に循環させた。その後、別の30分間で、肝臓をベヒクルのみ(対照)に曝すか、またはFRTS/ベヒクル(FRTS/1処理グループ)に曝した。このベヒクルは生理食塩水(1mL/800mL灌流液)、または1,3−プロパンジオール(24mL/800mL灌流液)のいずれかを含む。FRTS/1をプロパンジオールに加えて(0.06mgFRTS/mLプロパンジオール:24mL/800mL灌流液)とするか、または生理食塩水に加えて(2mgFRTS/mL生理食塩水:1mL/800mL灌流液)とした。灌流液の流速は6mL/分/100g体重で一定に保った。代謝物利用の生成を判定するために肝臓の入り口と出口で少量の灌流液サンプルを採取した。【0171】灌流液中でのグルコース、乳酸塩、ALTおよびLDHの濃度はSigma-Aldrich Canada n.17-UV、No.735、No.59-UVおよびNo.DH1240-UV、それぞれに開示された市販の手法を使用して分光法によって判定した。肝臓による基質の生成または抽出は代謝物の入り口と出口との間の差に灌流液の流速を積算することによって測定される。【0172】ベヒクルの性質が測定パラメータに影響を及ぼすことはなかったので、それらの結果を組み合わせた。【0173】胆汁の生成は対照と処理グループの両方で類似(対照と処理グループでそれぞれ0.55±0.10 v. 0.62±0.12mg/分/g肝臓)していた。再灌流の間で、胆汁生成は虚血前のレベルと比較すると処理および対照の両方のグループで減衰した。再灌流の後、10分以内に胆汁生成は正常なレベルに戻った。【0174】入り口では、グルコース濃度は両方のグループで類似(対照と処理グループでそれぞれ7.04±0.40 v. 7.24±0.07mM)していた。両方のグループで、肝臓はわずかにグルコースを利用する傾向にある。FRTS/1への曝露はグルコースの捕捉に影響を与えない(対照と処理グループでそれぞれ0.32±0.21 v. 0.39±0.25μM/分/g肝臓)。入り口での乳酸塩の濃度もまた両方のグループで類似(対照と処理グループでそれぞれ0.60±0.33 v. 0.50±0.10mM)していた。FRTSに曝露すると、処理した肝臓でわずかに乳酸塩を生成する傾向(対照と処理グループでそれぞれ−0.01±0.1 v. 0.40±0.005μM/分/g肝臓)がある。【0175】肝臓の灌流それ自体は対照グループでALTないしLDHの放出を何ら引き起こさない(それぞれ−0.07±0.14と1.79±0.47μM/分/g)。FRTS/1での処理は、多少増加する傾向があったけれどもALTないしLDHの放出を引き起こすようには見えない(0.57±0.21と2.36±1.10μM/分/g)。FRTSを使用する前に肝臓を部分的に灌流すると、肝臓によるLDH生成に進歩的な増加があった(35.57±8.96μM/分/g)。【0176】これらの予備的な結果からFRTS/1が灌流した肝臓の生存力に対して注目すべき効果を有していないと考えられる。さらに特定すると、FRTS/1による処理は、グルコースの利用、乳酸塩および胆汁の生成によって評価したように、30分間の灌流の間で肝機能を変化させないように思われる。ALTおよびLDHの増加がないので肝細胞に対する明らかな構造的損傷はない。【0177】虚血と再灌流の影響を研究するために以上のことにわずかに変更を加えた。灌流の合計を105分にした。31分目までは洗い出し期間を構成した。その期間で、K-H溶液(pH7.4およびO2:CO295%:5%存在下)にグルコース8mM、乳酸塩0.5mM、アラニン0.2mMおよびグリセロール0.2mMを添加した。溶液は開回路系で循環させた。その後、肝臓を本抽出物またはベヒクル:1,3−プロパンジオールに15分間曝した。灌流速度は100gの体重当たり毎分6mLで一定に保った(Drouin等、2000、Lavoie等、2000)。灌流を30分間停止した。この停止期間で、虚血が進展した。その後、30分間の持続時間で灌流を再開した。評価する生物学的マーカーの生成ないし利用を測定するために試験肝臓の入り口と出口で灌流液を採取した。【0178】再灌流すると、対照および処理肝臓の両方で虚血前と比較して生合成は減衰する。これらのレベルは再灌流を開始した後の10分以内に正常に戻る。対照および処理した肝臓は同じ方式でグルコースを放出(10.4±0.7μM・分-1・g-1)する。しかしながらグルコース生成は対照の器官と比較すると処理グループで80分後にわずかに上回った。乳酸塩は虚血の間で、対照の器官(4.5±0.1μM・分-1・g-1)と比較すると処理肝臓で高いレベルに蓄積した(5.9±0.5μM・分-1・g-1)。【0179】本抽出物による前処理は再灌流の間でALTの放出を減少させる(それぞれ1.09±0.44mU・分-1・g-1vs.2.44±0.79mU・分-1・g-1)。本抽出物での前処理は灌流の最初の30分間の虚血の衝撃を減衰させるように見える。本抽出物で何ら前処理していない虚血は再灌流の間でLDHの増加を引き起こす(108.7±27.3mU・分-1・g-1)。本抽出物での前処理はLDHの増加に影響を及ぼさない(115.9±60.8mU・分-1・g-1)。【0180】カリウムおよびナトリウムの血漿中の濃度もやはり両方のグループで測定した。再灌流の開始時では、処理グループのカリウム放出は対照を上回る(対照と処理グループでそれぞれ0.43±0.01mU・分-1・g-1vs.5.4±0.1mU・分-1・g-1)。入り口の灌流液では、両方のグループでカリウムおよびナトリウムの血漿中濃度は類似していた(対照と処理グループでそれぞれK+=5.6±0.3mMおよび5.4±0.1mM;対照と処理グループでそれぞれNa+=142.2±8.6mMおよび137.2±15.2mM)。【0181】再灌流の開始時では、ナトリウムの放出もやはり対照と比較すると処理グループで上回った(それぞれ1.2±1.1μM・分-1・g-1および16.5±3.9μM・分-1・g-1)。【0182】再灌流に先行する虚血は循環と代謝の障害、およびフリーラジカルによって引き起こされる組織損傷で特徴付けられる(Lee, 2000)。この特定のモデルは、現在、移植される組織ないし器官でフリーラジカルにより引き起こされる損傷を評価するために使用される(Smrekova 2000、Cohen 2000およびHachimoto 2000)。構造的および機能的障害はI/Rによって引き起こされ、酵素放出の増加(Bailey 2000、Vollmar 1994およびPerlata 1999)、胆汁生成の減少(Vollmer 1994)およびATP貯蔵の枯渇(Hwang 1999およびAmllet 1990)で反映される。虚血は鉄および銅のような金属イオンの放出に続いて一重項酸素、過酸化物、およびスーパーオキシド(O2-・、H2O2、OH・)を生成することにつながる可能性がある(Halliwell 1999)。したがってこのモデルは、もしもあるなら、ラジカルによる損傷に続く本抽出物の存在下での保護効果を特徴付けるのに優れたものである。【0183】肝細胞の保護を保証する代謝的変化は本抽出物で前処理することによって影響を受ける。I/Rの結果として生じるラジカルの攻撃はATPの細胞内含有量の低下を引き起こし、それにより細胞のエネルギー状態を変化させる(Peralta 2000、Mallet 1990)。Tamarina等(1984)は虚血が細胞の解糖系に損傷を与え、それが乳酸塩の生成を困難にすることを示唆している。健康な細胞(または保護薬剤の作用下にある細胞)は解糖系を介したATP生成を増加させることでそのようなストレスから自身を保護する。Sano等(1995)は解糖の活性化がI/Rで誘導されるフリーラジカルの形成を低下させることを提案した。ホスホエノールピルビン酸もやはりI/Rの結果として生じるATP減少を防止する(Saiki 1999)。Hwang等(1999)は細胞の損傷を最少化するためにNAD+/NADHの比率の低下がフリーラジカルに対する耐性に必須であると示唆する。本抽出物で細胞を前処理すると虚血の間の乳酸塩生成が増大し、それは明らかに虚血により引き起こされるATP減少に対する保護メカニズムの活性化を反映する。Kowalski 1992およびGroussard 2000は乳酸塩が虚血において保護的な役割りを果たすことができると示唆する。乳酸塩はスーパーオキシド(OH・)を緩衝することができ、ピルビン酸塩を生じてこれがやはり過酸化物およびスーパーオキシドを緩衝し、一方で、酢酸とCO2に分解する(Herz 1997)。【0184】本抽出物で前処理した細胞のカリウム流出もまた細胞に対する本抽出物の保護効果を支持する。膜成分の過酸化はカリウム・チャンネルに損傷を与える可能性がある(Halliwell 1999)。カリウム放出は代謝ストレスに対する有益な適合であるかもしれない(Wang等、1996)。カリウム・チャンネルの開放は細胞内ATP生成のために基質捕捉を可能にするであろう(Wondergem 1980)。カリウム放出はまたHCO3-輸送も阻害し、細胞質の酸性化に寄与し、それがやはり細胞への保護となるであろう(Currin 1991)。カリウム放出は早期に灌流液中に現れ、ALT放出に先行し、ATP減少に比例する(Mets 1993)。【0185】細胞内のナトリウム蓄積はI/Rによって誘導される細胞損傷に主要な役割りを果たす(Carini 2000、vanEchteld 1991およびXia 1996)。この増加は、1)ATPの減少と無機リン酸塩の増加によるNa+/K+ポンプの機能不全、または2)細胞質の酸性化によるNa/H抗キャリヤの刺激に起因するかもしれない(Zhao-fan 1996)。そのような状況のいかなる逆転もナトリウム蓄積により誘導される代謝ストレスの衝撃を低減することができるであろう(Fiegen 1997)。したがってナトリウム放出は損傷に対する保護メカニズムであるかもしれない。カリウムとナトリウム両方の減少が本抽出物で灌流した肝臓で観察されたが、これは肝細胞での本抽出物の保護作用を支持するものである。再灌流の10分後で、対照グループと比較して処理グループでナトリウム放出は上回っており、これは対照でTP含有量の回復が遅いことを示唆する。【0186】本抽出物は、ラジカルの攻撃に対する細胞保護に付随する細胞内メカニズムを刺激する。【0187】脳における本抽出物のex vivoでの効果多くの脳病変はフリーラジカル生成の増大を伴う。後者は神経組織変性の過程、すなわち脳血管障害の後、またはアルツハイマー病の進展の間の過程に寄与すると考えられる。抗ラジカル成分は神経組織変性疾病の発現を低減すること、またはそれらの予防ないしそれらの治療に有用かもしれないと考えられる。【0188】脳の海馬領域はフリーラジカルの神経毒性作用、すなわち脳無酸素症の間で傷つき易い。抗酸化分子の過剰発現が原因で、無酸素症の間で神経伝達が減衰することがin vitroで示された。したがって、海馬の神経伝達に対する本抽出物の作用を調べた。電気生理学的応答をこの脳組織に登録した。特に、神経細胞電位の回復を調べた。ラットの脳から450μmの厚さの海馬スライス切片を採り、電気生理学空間に移した。これらのスライス切片を、本抽出物の濃度を有するかまたは違わない濃度の酸素富化した生理学的溶液中に60から90分間保持した。この休止期間の後、25秒毎に海馬中央(Schaffer、CA1領域)に電気刺激を加えた。これらの電気刺激はシナプスの応答を進化させた。無酸素症の後のシナプスの伝達効力を定量化するために、励起後の電位の初期の勾配を算出した。神経細胞電位を調べるために、無酸素症の後の神経回路に高い頻度の刺激列を加えた。陽性対照として、虚血または非虚血でグルタミン酸塩に対する応答を測定することが可能であり、本抽出物の存在はグルタミン酸塩に対する応答を回復するはずである。【0189】FRTS/1の毒性in situでの肝臓の灌流およびin situでの脳の灌流の2つのモデルで毒性を評価した。これらの器官は本抽出物の存在に起因する毒性の兆候を何ら示さなかった。【0190】副作用本抽出物は非免疫原性である本抽出物125μgを7日の間隔で3回、マウスに腹膜内注入することによって本抽出物により引き起こされる免疫応答を調べた。最後の注入の後1週間経過し、免疫血清のオブテンションのために血液を採取した。血液サンプルは速やかに氷の上に置いた。氷上で凝血を進行させ、採取の12時間後にサンプルを遠心分離にかけた。遠心条件は次の通りであった、すなわち、2500gで10分間であり、これで約500μLの血清が得られた。固定化抗原調製物を供給するために本抽出物をマイクロプレート上に吸着させた。200μLの本抽出物(5μg/mL)と200μLのELISAバッファを96ウェルのプレートのウェルに滴下した。ELISAバッファは100mMの炭酸ナトリウムバッファ(pH9.6)で作製した。4℃で一晩、この抗原をインキュベートした後、非吸着抗原をリン酸ナトリウムバッファ100mM/NaCl、100mM(pH7.4)で3回洗浄するステップで除去した。遊離の吸着部位を、リン酸ナトリウム/NaClバッファに溶解したカゼイン3%の溶液で60分間、室温にてインキュベートしてブロックした。余剰のカゼインは3回洗い流した。もしもあるならであるが、抗体を供給する血清サンプルは次のように調製した。すなわち0.05%のTween20(商標)を添加したリン酸ナトリウム/NaClバッファで順々に希釈し、これらの希釈物25μLをウェルに加えた。このマイクロプレートをさらに37℃で1時間インキュベートし、このステップに引き続いてリン酸ナトリウム/NaCl/Tweenバッファで5回洗浄した。【0191】抗Ig−ペルオキシダーゼ複合体の形成によって抗体の存在を明らかにした。各々のウェルにリン酸ナトリウム/NaCl/Tweenバッファで希釈した酵素希釈液25μLを加え、その後に37℃で1時間インキュベートした。酵素の希釈は、抱合体(これらはペルオキシダーゼでラベルした抗Igヤギ抗血清、IgM、IgG、Ig1、Ig2およびIg3)に応じて1:750と1−3000の間で変えた。ラベル化ステップの後にバッファで5回洗浄した。100mMのリン酸クエン酸バッファ(pH4.0)に溶解した基質の過酸化水素0.015%とクロモゲンABTS(2,2アジノジエチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸)0.05%をウェルに加えた。さらに30分間、暗状態で室温下でインキュベートを進めた。酵素の作用で、405nmの吸収波長で分光学的に読み取り可能な着色基質が放出された。本抽出物に特異的な抗体の血清中のレベルは色彩強度に比例するはずである。得られた結果は本抽出物が被験個体に対して免疫原性でないことを示した。【0192】これらの結果は、肝臓毒性でも免疫原性でもないので、本抽出物が個体に対して無毒であることを示す。【0193】組成および投薬療法本抽出物の安定性と効力、および動物に対して無毒であるという事実により、1日当たり1ng/kg体重から1g/kg体重までの投与量の割合でそのような投与を必要とする個体に投与できると考えられる(μgの下の方の範囲の投与が好ましい)。投与量は疾病の治療に求められる積極性によって決まる。投与量はまた、製剤および投与径路によっても決まる。例えば、局所用の組成物は静脈注射用の組成物または経腸用の組成物と同じ投与量を有することはないであろう。【0194】皮膚ないし粘膜の疾病を治療するための局所用組成アレルギー/喘息Brown Norway種のラットはIgEの産生が高い。Brown Norway種のラットでアレルゲン誘発性の気道過敏症の充分に確立されたモデル1があり、それは早期および遅発(動物の70%)相反応、能動免疫化後の抗原特異性のIgEの増加2、気道の炎症3、およびアレルゲン攻撃の後のいくつかの刺激物質に対する気管支の応答性の増大を含むヒトのアレルギー性喘息の多くの特徴を反映している。【0195】肺動脈応答の測定:Brown Norway種のラットを以前に報告した5ように、生理食塩水に溶かした1mgオブアルブミン/100mgAl(OH)3を1mL腹腔内注射することによって感作する。21日後、動物を麻酔し、以前に報告した6ようにPlexiglasボックスに接続した気管内チューブの端を挿管する。圧力トランスデューサに取り付けた、水で充填した食道カテーテルを使用して胸膜圧力の変化を判定する。気流はPlexiglasボックスに取り付けた差動トランスデューサに結合された呼吸気流計によって測定される。気流、容量と肺内外圧差、肺抵抗(RL)は早期および遅延相反応の両方を識別するために異なる回数で判定される。感作されたBrown Norway種のラットは、Roxon Medi-Tech Lte(Montreal, PQ)から入手した“Wright”ネブライザを使用し、0.1〜0.2mL/minの出力を与える圧力でPlexiglasボックスに入る圧縮空気を使用して生理食塩水またはオブアルブミン(生理食塩水で2%に溶解)で攻撃する。肺抵抗は最初の1時間は5分毎に計測し、続く10時間は15分毎に計測する。腹腔内注射または吸入(約1から100μg)で投与される本抽出物による前、同時および後処理が改善を供給するかをこのモデルで試験される。【0196】紫外線照射に対する保護ヘアレスのマウスで紫外線により誘導される皮膚損傷を防止または低減するFRST/1の能力を調べた。殆どの皮膚癌は紫外線照射への曝露によって誘発されることが知られているので、紫外線照射の有害作用を防止することのできる新たな可能性のある自然界の化合物を識別する必要がある。【0197】動物ヘアレスでアルビノのマウス(SKH/1)はCharles River laboratories(Wilmington, MA)から購入する。【0198】すべてのマウスは照射期間の開始時で6週齢である。マウスはAnimal Facility of IBSで標準条件下(23±10C、相対湿度42±6%、12時間毎の明暗サイクル)で収容および維持される。照明は自動的に毎日午前7時に点灯され、毎日午後7時に消灯される。マウスはPurina chow餌料(24%タンパク質、4%脂肪、および4.5%繊維質)を与えられ、適宜水を与えられて飼育される。照射に関しては、マウスはプラスティックの檻に入れられ、照射の間で自由に檻の中を動くことができる。【0199】処理に先だって動物達は1週間環境に順化させ、次のように5つのグループに無作為に分けられる。・グループI:対照で、非照射、非処理(n=5)、・グループII:FRST/1を含む局所的な軟膏調製物で処理される紫外線非照射動物(n=5)、・グループIII:FRST/1を含まない局所的な軟膏調製物で処理される紫外線照射動物(n=5)、・グループIV:紫外線照射の間でFRST/1を含むクリームの局所的塗布を受ける動物(n=5)、・グループV:非処理で紫外線照射される動物(n=5)、処理の構成は、1.処理当日およびその後の2日目毎の健康評価のためにすべての動物の体重を測定する。2.1つのタイプのクリーム(動物およびヒトに対して無毒と知られている)の局所塗布を行う。このクリームはFRST/1を含むものまたは含まないものである。本抽出物は1:10,000希釈率で存在する(凍結乾燥チラコイド画分を出発材料として)。3つのグループの動物達の背中に前もって(および紫外線照射の間とその後もそのまま)1グラムのクリームを滴下する。これらのうち、1つのグループの5匹の動物はクリームを受けて照射は受けない。1つのグループはFRST/1を含まないクリームを受けて紫外線Bの照射に曝され、1つのグループはFRST/1クリームと紫外線Bを受ける。紫外線Bを照射されるグループ(n=5)は1回10分間太陽灯に曝される。1つのグループ(n=5)はクリーム処理なしで紫外線太陽灯に曝される。3.動物の背中から60cmに置かれた太陽灯による1回の10分間紫外線B照射を行う。2つのグループの5動物はクリーム保護(FRST有りおよび無し)に関して試験し、単一のグループの保護なしの5動物が紫外線Bの1回投与に曝される。4.処理の後、動物達はすべて檻に保持されて紫外線照射の当日と3から4日後に、操作しないで、檻の上部から写真撮影される。5.1週間後、動物達を屠殺し、さらに調べるためにそれらの投薬皮膚片を切除する。【0200】Westinghouse FS40太陽灯、IL-1400輻射計、および紫外線B光度計が使用される。紫外線ランプの照射スペクトルは280〜400nmであり、それらの80%は紫外線B領域で20%は紫外線A領域である。光源のピーク強度は297nmである。マウスの投薬表面から60cmでのフルエンスは0.48〜0.50mJ/cm2/sである。マウスは上述したような蓋のない檻に入れられる。【0201】陰性対照のマウス(グループI、II)は同様の方式で処理されるが、しかし紫外線ランプは点灯されない。グループIIはFRST/1の無い軟膏を局所的に受ける。【0202】グループIII、IVおよびVのマウスは合計で200mJ紫外光/cm2(急性投与)の1回曝露を10分間受ける。グループIVでは、動物は紫外線曝露の直前、最中および後にFRST/1調製物の局所塗布を受ける。この手法は、紫外線照射条件に光学的に影響するかもしれない(GonalesとPathak 1996)290〜320nmの範囲での紫外線吸収特性のわずかな違い(光学密度の差異)を考慮に入れるように合わせてある。【0203】マウスは紫外線照射の前の1週間と後の1週間で2日目毎に体重を測定し、保持する。実験の最後で、マウスは殺され、以下のパラメータが全グループで比較される。【0204】実験の最後で、マウスは殺され、以下のパラメータが全グループで比較される。1.体重2.表皮観察結果および写真3.マウスを殺した後、投薬皮膚を手術で切除してさらなる分析に使用。4.定量的ウェスタン・ブロット法によるサイトケラチン発現パターンの比較。【0205】太陽光照射はヒトの皮膚の構造と機能に影響を及ぼす主要な環境因子である。紫外線照射傷害の蓄積結果としての長期間の皮膚の紫外線性損傷はしばしば色白の皮膚の個人で光線加齢および皮膚癌へとつながる。紫外線照射の光生物学的研究を含めた研究は紫外線B(UVB)成分(290〜320nm)が特に紅斑生成性、発癌性であり、かつDNA、RNA、(酵素を含めた)タンパク質、細胞膜およびその他の細胞オルガネラへの直接的損傷が先に生じる皮膚の光線加齢を引き起こすことを明らかにする。Tedesco等(1997)。【0206】KligmanとKligman(1993)は年代的加齢と光線加齢との間の明確な区分けを行った。光線加齢は太陽光ないし太陽擬似紫外線への慢性的な皮膚曝露によって生じる臨床学的および組織学的損傷を説明するのに使用される。組織学的に、これらの変化はマスト細胞および炎症細胞の増加と一体になった弾力性、グリコサミノグリカン、および不調コラーゲンの顕著な変化の形で明らかになる(KligmanとGebre 1991;KaaresnとPoulsen 1995;Poulsen等、1984)。光線加齢のこの現象は、最近の治療解決法が内因性の加齢と光線加齢による変化の発現を最小限にする手助けをしても、臨床的に不可逆的と認識されている(Gilchrest 1996;KangとVoorhees 1998)。正規の基剤の上に遮光薬を使用すると結合組織への光線による損傷を防止する補助になることが報告されている(SnyderとMay 1975;KligmanとKligman 1982;Bissett等、1991)。遮光薬と抗酸化剤(例えば緑茶、ビタミンC、ビタミンE)の両方の使用は、光線加齢と光線発癌の両方に寄与する紫外線Bで誘導される急激の皮膚損傷に対する阻害効果を有する(SynderとMay, 1975;Bissett等、1991およびHuang等、1997)ようである。【0207】急激な紫外線照射曝露に対するFRST/1の光線防御能力または抗酸化効果はヘアレスでアルビノのマウスのモデルで調べられてきた。【0208】ヘアレスでアルビノのマウス(SKH-1)はヒトの紫外線照射の影響と光線加齢を研究し、理解するのに有用で適切な実験モデルとして認識されてきた(Kligman等、1989;Bissett等、1987;Chatterjee等、1990;KligmanとGebre, 1991)。目視および顕微鏡で識別可能な紫外線B照射に対する表皮と真皮の応答および毛の不在はヘアレスのマウスの皮膚を紫外線照射の損傷効果の研究と評価に特に有用にしている。このマウスのモデルはまた、両方共に皮膚の局所でかつ系統的に紫外線B照射によって誘発される免疫学的変化と発癌を研究および試験するのにも使用されてきた(Fisher等、1989;Ho等、1992;Reeve等、1991)。【0209】結果照射の後に正確に、すべての非処理で照射されたマウスは皮膚の炎症および掻痒の兆候を示した。その他の点では、それらは体重増加しないが健康で活動的であった。FRST/1で前処理すると後処理したのも同様に照射を受けたマウスに炎症ないし赤化の症状は認められず、かつ80%の事例で体重増加した。それ故、遮光用のローション、クリーム、軟膏、オイル、ゲルまたはスプレーのいずれかの局所用組成物が、本発明の目的である。【0210】皮膚のサイトケラチンの分析サイトケラチン1および10は成熟した皮膚の象徴である。これらのケラチンの減少は損傷の後の表皮の再生の兆候である。【0211】サイトケラチン5および8は基底層上部および基底層を表し、活発に増殖する表皮で発現されると想定される。【0212】これらのサイトケラチンの存在は特異的抗体で調べた。【0213】マウスの皮膚の抽出物を個別に抽出し、グループ毎に個々にマウスの皮膚を分析した。抽出した細胞質タンパク質の合計のうちの同量をウェルに加えた。動物間および処理間の比較を可能にする量は35μgであった。【0214】結論FRST/1で保護されたマウスは対照の非処理で非照射のものと同様のパターンを示したが、その他のすべての処理区は高分子量ケラチンで劇的な減少を示した。特に、サイトケラチン10はFRST/1マウスの皮膚で極めて充分に発現し続けており、これは保護効果の良好な兆候である。極めて低い投与量で本抽出物は局所的に活性であった。本抽出物の投与量は何ら毒性で制限されることはないので、投与量は望みに応じて増やすことができる。【0215】ここまで本発明をその好ましい実施形態の方式で説明してきたが、それは添付の特許請求の範囲に規定したような課題の発明の精神と性質から逸脱することなく変形することができる。【表6】【0216】【参考文献】【図面の簡単な説明】【図1】 外部抽出液のpHの関数として、本発明の抽出物の相対抗酸化活性を示す図である。【図2】 抽出液中に含まれるソルビトール濃度の関数として、本発明の抽出物の相対活性を示す図である。【図3】 時間および抽出液中に含まれる糖濃度の関数として、本発明の抽出物の相対活性を示す図である。各試料を−20℃に保った。【図4】 抽出液中の糖の性質の関数として、本発明の抽出物の相対活性を示す図である。【図5】 抽出に使用した様々な塩の関数として、本発明の抽出物の相対活性を示す図である。【図6】 時間および温度の関数として、本発明の抽出物(FRTS非安定化)の相対活性を示す図である。【図7】 最適化のための遠心条件の選択を示す図である。【図8】 再懸濁溶液中に含まれるプロピレングリコール(プロパン−1,2−ジオール)の割合の関数として、本発明の抽出物の相対活性を示す図である。【図9】 酸化曲線を示す図である。曲線Aは、抗酸化剤を含まないときの脂質酸化を示し、曲線Bは、ある程度の脂質酸化を「許容」する抗酸化剤存在下での脂質酸化を示し、曲線Cは、ビタミンE等の効果的なラジカル連鎖破壊性抗酸化剤存在下での脂質酸化を示す。【図10】 脂質PLPCの酸化速度を示す図であって、その中でBは本発明の抽出物がない脂質を表し、DはTrolox存在下での脂質を表し、Lは本発明に従って作製した活性抽出物存在下での脂質を表し、かつTは不活性抽出物で処理した脂質存在下での脂質を表す。【図11A】 TBPHの25μMによって引起された傷害に対して、IMR-32細胞に本発明の抽出物(希釈度1:1000)が施した保護を示す図である。【図11B】 TBPHの50μMによって引起された傷害に対して、IMR-32細胞に本発明の抽出物(希釈度1:1000)が施した保護を示す図である。【図12A】 TBPH 処理後のIMR-32細胞に、本発明の抽出物の1:1000の希釈度が施した保護を示す図である。【図12B】 TBPH 処理後のIMR-32細胞に、本発明の抽出物の1:10000の希釈度が施した保護を示す図である。【図13】 120秒間の酸素過多に対する脳海馬の挙動および本発明の抽出物を含むか、または含まない(対照)溶液の存在下での回復を示す図である。 光合成生物から抽出物を得る方法であって、a)チラコイドを含む生体成分の懸濁液を提供する段階、b)1から1.3の間に含まれる粘度および2より高く、10より低いpHを有する媒質中で、チラコイドを回収しながら生体成分を破壊する段階であって、その媒質は次式に従って計算される体積で添加され、((媒質の体積+植物成分含水量)/植物成分乾重量)>10それによって、チラコイド、細胞屑/膜および液相で本質的に構成される第1抽出物が得られ、前記チラコイドが基底状態の組織化された光合成色素を含む段階、c)チラコイド、細胞屑/膜および液相を相互に分離することによって、各々、分離チラコイド、細胞屑/膜、および液相で本質的に構成される第2、第3および第4の抽出物を形成する段階、およびd)前記の第1、第2および第3抽出物から水を除去することによって、光合成色素をその基底状態に安定化させる段階を含み、前記媒質は、0.2から1.5Mの濃度のソルビトール、または0.2から1.5Mのソルビトールに等価な粘度を実現する量の糖を含む、方法。 その式が、((媒質の体積+植物成分含水量)/植物成分乾重量)=25から150である請求項1に記載の方法。 pHが5から8の間に含まれる請求項1または2に記載の方法。 pHが6から7.5の間に含まれる請求項1または2に記載の方法。 前記生物が植物である請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。 段階a)の懸濁液が、植物成分または組織を前記媒質中で機械的に分散することによって得られる請求項5に記載の方法。 段階a)の前に、植物に光、浸透圧、熱、冷たさ、凍結、乾燥、ホルモン、化学的および生物学的誘導物質から選択される順化パラメーターを受けさせる段階を行う請求項5または6に記載の方法。 段階a)の前に、500と600nmの間に含まれる波長の光環境で前記植物を順化する段階を行い、段階b)を同じ光環境の下で行う請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。 段階a)の前に、500と600nmの間に含まれる波長の光環境で前記植物を順化する段階を行い、段階b)を同じ光環境の下で行う請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。 前記媒質が糖を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。 前記媒質が、0.2から0.4Mの濃度のソルビトール、または0.2から0.4Mのソルビトールに等価な粘度を実現する量の糖を含む請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。 前記媒質が、次の組成:7.5のpHを有するトリスまたは酢酸またはアスコルビン酸緩衝液(20mM)、またはソルビトールまたはスクロースまたはフルクトース350mMを有する請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。 分離段階が、チラコイド、細胞屑および膜、および液相の各沈降係数の差に基づいて行われる請求項12に記載の方法。 分離段階が、チューブの上部にフィルターを備えたそのチューブ内で第1抽出物を遠心することにおいて、そのフィルターは、チラコイドおよび液相がフィルターを通過する間に、細胞屑および膜がその上に沈着する多孔性を有し、チラコイドはチューブの下部でペレットを形成することを含む請求項13に記載の方法。 真空凍結乾燥下で水を除去する請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。 段階c)の後、両性の溶媒または界面活性剤で水を交換することによって、水を除去する請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。 プロピレングリコールで水を交換することによって、水を除去する請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。 請求項1から17のいずれか一項に記載の方法によって作製した第2又は第3抽出物を含む、反応性酸素種を捕捉するための組成物。 皮膚に影響し、かつ火傷、日焼け、乾癬および皮膚炎から選択され;脳に影響し、かつ外傷、脳卒中、パーキンソン病、神経毒、痴呆およびアルツハイマー病から選択され;関節に影響し、かつ関節リウマチおよび関節症から選択され;胃腸管に影響し、かつ糖尿病、膵炎、内毒素肝傷害および腸虚血から選択され;眼に影響し、かつ白内障発生、網膜症および変性網膜障害から選択され;脈管に影響し、かつアテローム性動脈硬化症および血管炎から選択され;赤血球に影響し、かつファンコーニ貧血およびマラリアから選択され;心臓に影響し、かつ冠動脈血栓症および虚血から選択され;肺に影響し、かつ喘息およびCOPDから選択され;腎臓に影響し、かつ移植および糸球体腎炎から選択され;多器官に影響し、かつ炎症、癌、虚血−再灌流状態、薬物中毒、鉄分過剰摂取、栄養失調、アルコール中毒、放射線、老化、アミロイド病および中毒性ショックから選択される、反応性酸素種の形成が関与する疾患または障害の発現を減少させるための、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法によって作製した第2又は第3抽出物を含む薬剤。 請求項1から17のいずれか一項に記載の方法によって作製した第2又は第3抽出物を含む、放射線に対するフィルター。 前記放射線が紫外領域に入る請求項20に記載のフィルター。 請求項1から17のいずれか一項に記載の方法によって作製した第2又は第3抽出物を含む、局所用組成物。 遮光用のローション、クリーム、軟膏、オイル、ゲルまたはスプレーである請求項22に記載の組成物。