タイトル: | 特許公報(B2)_擬似インプリンティング法を用いた農薬の選択的固相抽出法 |
出願番号: | 2001519177 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | G01N 30/88,B01J 20/26 |
竹内 俊文 松井 淳 JP 4561027 特許公報(B2) 20100806 2001519177 20000823 擬似インプリンティング法を用いた農薬の選択的固相抽出法 日産化学工業株式会社 000003986 泉名 謙治 100090918 小川 利春 100082887 山本 量三 100072774 竹内 俊文 松井 淳 JP 1999236914 19990824 JP 1999325485 19991116 20101013 G01N 30/88 20060101AFI20100922BHJP B01J 20/26 20060101ALI20100922BHJP JPG01N30/88 201XG01N30/88 101SB01J20/26 G G01N 30/88 G01N 30/00 B01J 20/26 B01J 20/281 CAplus(STN) JSTPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) 特開平10−239293(JP,A) Jun Matsui, Yuko Tachibana, and Toshifumi Takeuchi,Molecularly imprinted receptor having metalloplrphyrin-based signaling binding site,Analytical Communications,1998年 7月,Vol.35, No.7,P.225-227 Jun Matsui, Hiroyuki Kubo, and Toshifumi Takeuchi,Design and Preparation of Molecularly Imprinted Atrazine-Receptor Polymers: Investigation of Functional Monomers and Solvents,Analytical Sciences,1998年,Vol.14, No.4,P.699-702 Jun Matsui, Makoto Okada, Makoto Tsuruoka, and Toshifumi Takeuchi,Solid-phase Extraction of a Triazine Herbicide Using a Molecularly Imprinted Synthetic Receptor,Analytical Communications,1997年 3月,Vol.34, No.3,P.85-87 8 JP2000005653 20000823 WO2001014871 20010301 16 20070727 河野 隆一朗 【0001】【技術分野】 本発明は、環境中における農薬、例えばトリアジン系農薬の動態を簡便且つ迅速に分析するために、当該農薬に類似の化合物を鋳型(テンプレート)とし、鋳型重合(モレキュラーインプリンティング)法により合成した鋳型ポリマーを、当該農薬のレセプターポリマーとして使用する(擬似インプリンティング法)、当該農薬の選択的固相抽出法に関する。【0002】【背景技術】 現在、環境中における有機農薬、特に農薬の分析法としては、ガスクロマトグラフィー或いは液体クロマトグラフィーが一般的に用いられ、これらクロマトグラフィーによる分析の前処理法として、試料中の農薬を濃縮するために或いは混在する不純物から農薬を分離するために固相抽出法がしばしば用いられる。 分析化学、第67巻、4404頁(1995年)には、固相抽出法の基礎的な原理が開示されている。 農薬の固相抽出法としては、抽出する農薬と吸着剤との相互作用として逆相、順相及びイオン交換型の手法が開発されている。 固相抽出法としては、抽出する農薬との親和性を主体としたアフィニティー型の手法が知られている。【0003】 従来の逆相、順相及びイオン交換型の固相抽出法は、目的とする農薬との相互作用が非選択的であるため、前処理法として試料中の農薬を濃縮或いは不純物から農薬を分離する際に、抽出する農薬と不純物との物理化学的特性を考慮し、抽出及び洗浄等の条件を詳細に検討する必要が生じ、膨大な時間と費用を要するため、農薬の迅速且つ簡便な分析法としては問題点が多い。【0004】 又、一般に、アフィニティー型の固相抽出系として、天然の抗体とレセプター(抗原抗体反応の利用)が用いられるが、これらは有機溶媒中で不安定なため抽出する農薬が脂溶性の場合には適用することができない。 特開平10−239293号公報には、トリアジン系除草剤を鋳型として鋳型重合法により合成したレセプターポリマーを用いる当該除草剤の固相抽出法が記載されている。 しかし、当該特許公報では、鋳型重合法によりレセプターポリマーを製造する際、鋳型として、トリアジン系農薬、例えばアトラジン等そのものを用いており、作業者の安全上好ましい方法とはいえない。【0005】 又、トリアジン系農薬の多くは、トリアジン環上に反応性の高いハロゲン原子或いはアルキルチオ基(メルカプト基)を有しており、これら反応性の高い官能基を有するトリアジン系農薬それ自体を鋳型とし、レセプターポリマーを製造した場合には、当該官能基由来の反応に起因する副生物が生成する。 この副生物は、洗浄等の操作で分離・除去が困難であることから、合成したレセプターポリマーを用い、トリアジン系農薬の固相抽出及び分析を行った際、レセプターポリマー中に含有されたトリアジン系農薬由来の副生物も一緒に検出され、複雑な結果を与えるといった問題があった。【0006】【課題を解決するための手段】 本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意努力検討した結果、安全性が高く、農薬、例えばトリアジン系農薬と構造が類似しており、且つ、分子内に反応性の高い塩素原子或いはアルキルチオ基等を持たない極めて安定性の高いアルキルメラミンを鋳型とし、鋳型重合法により合成した鋳型ポリマーが、当該農薬のレセプターポリマーとして作用する事、又、この鋳型ポリマーを用いた固相抽出法が、当該農薬を選択的に簡便、迅速且つ安価に分析するための前処理法となることを見出し、本発明を完成するに至った。 また、本発明は、トリアジン系農薬、更に農薬全般の分析にも応用することができる。 即ち、本発明は、一般式(1)【0007】【化2】(式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子又はC1−5アルキル基を意味し、R1、R2及びR3のうち少なくとも一つはC1−5アルキル基を意味する。)で表されるアルキルメラミンを鋳型として鋳型重合法により合成した鋳型ポリマー、該鋳型ポリマーを用いるトリアジン系農薬の選択的固相抽出法及び該鋳型ポリマーをカラムに充填し、使用することを特徴とするトリアジン系農薬の選択的固相抽出用キットに関するものである。【0008】 一般式(1)において示される各置換基を具体的に説明する。 尚、本明細書中「n」はノルマルを、「i」はイソを、「s」はセカンダリーを、「t」はターシャリーを、「neo」はネオを意味する。 C1−5アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、i−ペンチル、neo−ペンチル、t−ペンチル、1−メチルシクロプロピル、2−メチルシクロプロピル、シクロブチル及びシクロペンチル等が挙げられる。【0009】 次に本明細書中に用いられている語句について説明する。 鋳型重合法(モレキュラーインプリンティング法)とは、ある化合物を認識するポリマーを得る目的で、プレポリマー(ポリマーの原料)、希釈剤(溶剤)、架橋剤等の混合液中に認識対象化合物を鋳型として添加したものを重合反応溶液とし、これを加熱或いは紫外光照射する事により重合させてポリマー(鋳型ポリマー)を得る手法を意味する。 擬似インプリンティング法とは、ある化合物を認識する鋳型ポリマーを得る目的で、その認識対象化合物とは異なる化合物を代替の鋳型として用いて鋳型重合を行う方法を意味する。 塊状重合法とは、鋳型重合を反応容器中(例えばガラス製試験管)において行い、塊状の鋳型ポリマーを得る手法を意味する。 懸濁重合法とは、鋳型重合における重合反応溶液を水或いは重合反応溶液と混じり合わない適当な溶媒中に分散させ、攪拌することにより重合反応溶液を液滴状に保ちながら加熱或いは紫外線照射する事により、球状の鋳型ポリマーを得る手法を意味する。【0010】【発明を実施するための最良の形態】 本発明の選択的固相抽出法をアルキルメラミンを鋳型とする鋳型ポリマーで概説すると、アルキルメラミンを鋳型とする鋳型ポリマーは、水溶液中で疎水性ポリマーとして、非極性有機溶媒中では人工レセプターとして機能するため、1)水中の疎水性物質(トリアジン系農薬を含む)を吸着し(疎水性ポリマーモード)、2)非トリアジン系の物質のみを溶出し(人工レセプターモード)、3)残留したトリアジン系農薬を抽出するという操作により、トリアジン系農薬を濃縮し、選択的に分離及び抽出する事ができる。 又、本発明は、アルキルメラミンを鋳型とする鋳型ポリマーをアフィニティー型のカラム充填剤として用いることも包含している。【0011】 本発明における農薬としては、ショート・レビュー・オブ・ハービィサイド[Short Review of Herbicide、保土谷化学(株)編集]或いはシブヤ・インデックス[クミアイ化学(株)編集]に収録された化合物等を挙げることができる。【0012】 トリアジン系農薬としては、シマジン(simazine)、アトラジン(atrazine)、ノラジン(norazine)、プロパジン(propazine)、トリエタジン(trietazine)、イパジン(ipazine)、クロラジン(chlorazine)、セブチラジン(sebuthylazine)、テルブチラジン(terbuthylazine)、シアナジン(cyanazine)、プロシアジン(procyazine)、メソプラジン(mesoprazine)、シメトン(simetone)、イパトン(ipatone)、メトメトン(methometon)、アトラトン(atratone)、セクブメトン(secbumeton)、プロメトン(prometone)、シメトリン(simetryne)、アメトリン(ametryn)、プロメトリン(prometryne)、シアナトリン(cyanatryn)、テルブトリン(terbutryn)、メトプロトリン(methoprotryne)、MPMT、ジメタメトリン(dimethametryn)、デスメトリン(desmetryne)、ジプロペトリン(dipropetryn)、テルブメトン(terbumeton)、アジプロトリン(aziprotryne)、エグリナジン(eglinazine)及びプログリナジン(proglinazine)等が挙げられ、好ましくは、アトラジン、プロパジンシマジン及びアメトリンが挙げられる。【0013】 スルホニルウレア系農薬としては、アミドスルフロン(amidosulfuron)、クロリムロン−エチル(chlorimuron−ethyl)、スルホメッロン−メチル(sulfometuron−methyl)、オキサスルフロン(oxasulfuron)、プリミスルフロン(primisulfuron−methyl)、ベンスルフロン−メチル(bensulfuron−methyl)、エトキシスルフロン(ethoxysulfuron)、シクロスルファムロン(cyclosulfamuron)、クロルスルフロン(chlorsulfuron)、メトスルフロン−メチル(metsulfuron−methyl)、トリベニュロン−メチル(tribenuron−methyl)、プロスルフロン(prosulfuron)、トリアスルフロン(triasulfuron)、シノスルフロン(cinosulfuron)、エタメトスルフロン−メチル(ethametsulfuron−methyl)、トリフルスルフロン−メチル(triflusulfuron−methyl)、チフェンスルフロン−メチル(thifensulfuron−methyl)、ピラゾスルフロン−エチル(pyrazosulfuron−ethyl)、アジムスルフロン(azimsulfuron)、ハロスルフロン−メチル(halosulfuron−methyl)、フラザスルフロン(flazasulfuron)、リムスルフロン(rimsulfuron)、ニコスルフロン(nicosulfuron)、フルピルスルフロン(flupyrsulfuron)、イマゾスルフロン(imazosulfuron)、スルホスルフロン(sulfosulfuron)等が挙げられる。【0014】 以下、本発明の鋳型ポリマーの合成法を、アルキルメラミンを鋳型とする鋳型ポリマーの合成法を用いて説明する。 本発明のアルキルメラミンを鋳型とする鋳型ポリマーの合成法は、アルキルメラミンを鋳型として用いる他は、通常のポリマー合成用の原料、資材及び重合条件を採用することができる。 塊状重合法により製造する場合は、アルキルメラミン(鋳型分子)、プレポリマー、架橋剤及びラジカル開始剤等を適当な溶剤に溶解した後、紫外線等で、重合させることにより達成される。【0015】 プレポリマーとしては、アルキルメラミンと親和性のある官能基を有するプレポリマーを挙げることができる。 プレポリマーの具体例としては、メタクリル酸、ジメタクリル酸エチレングリコール、2−(トリフルオロメチル)アクリル酸等を挙げることができる。 プレポリマーは、単独又は二種以上を混合して用いることができ、その混合比率は任意に設定できる。 プレポリマーの使用量は、アルキルメラミン(鋳型分子)に対して1〜100当量、好ましくは、1〜30当量の範囲である。【0016】 架橋剤は、架橋してポリマーを生成するものであれば特に限定はしないが、トリアクリル酸トリメチロールプロパン、トリアクリル酸ペンタエリスリトール、ジアクリル酸エチレングリコール、ジアクリル酸1,4−ブタンジオール、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸1,4−ブタンジオール及びジメタクリル酸1,6−ヘキサンジオール等が挙げられ、好ましくは、ジメタクリル酸エチレングリコールが挙げられる。 架橋剤の使用量は、アルキルメラミン(鋳型分子)に対して5〜500当量、好ましくは、10〜100当量の範囲である。【0017】 ラジカル開始剤は、ラジカルを生成しうるものであれば特に限定はしないが、過酸化ベンゾイル及びt−BuOOH等の過酸化物並びにアゾビスジメチルバレロニトリル及びアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられ、好ましくは、アゾ化合物が挙げられ、更に好ましくは、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。 ラジカル開始剤の使用量は、触媒量以上であれば特に限定はしないが、アルキルメラミン(鋳型分子)に対して0.1〜1.0当量、好ましくは、0.3〜0.5当量以上用いれば充分である。【0018】 溶剤は、上記のポリマー原料を溶解するものであれば特に限定はしないが、1,2−ジクロルエタン、ジクロルメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒が好ましく、特にクロロホルムが好ましい。 反応温度は、−20〜70℃の範囲であり、好ましくは0〜50℃の範囲が挙げられる。 反応時間は、反応温度によって変化するが、たとえば反応温度が5℃の場合、5〜20時間、好ましくは、10〜15時間以上反応させれば充分である。 懸濁重合法により製造する場合は、アルキルメラミン(鋳型分子)、プレポリマー、架橋剤、分散を安定化させる安定剤及びラジカル開始剤等を適当な溶剤に溶解した後、溶液を水に懸濁させ加熱攪拌を行い、重合させることにより達成される。 プレポリマー、架橋剤、ラジカル開始剤及び溶剤に関しては、塊状重合法と同様の条件を採用することができる。【0019】 分散を安定化させる安定剤は、プレポリマーを含む溶液が、水中で分散した小滴の形態とることを安定化させるものであれば、特に限定はしないが、ゼラチン、トラガカントゴム、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール及びポリアクリル酸塩等が挙げられ、好ましくは、ポリビニルアルコールが挙げられる。 安定剤の使用量は、溶液の分散化を安定化させる範囲であれば、特に限定はしない。【0020】 攪拌速度は、溶液の分散を安定化させる範囲であれば特に限定はしないが、100〜500rpmの範囲、好ましくは、200〜400rpmの範囲である。反応温度は、30〜80℃の範囲であり、好ましくは、40〜60℃の範囲が挙げられる。 反応時間は、反応温度によって変化するが、たとえば反応温度が50℃の場合、3〜15時間、好ましくは、4〜10時間以上反応させれば充分である。 製造した、アルキルメラミンを鋳型とする鋳型ポリマーは、塊状重合法により製造したポリマーの場合は、すり潰し、ふるいにかけることにより、又、懸濁重合法により製造したポリマーの場合は、ふるいにかけることにより、所望の粒径を有するポリマー粒子にすることができる。 得られた粒子状のポリマーを、メタノール、酢酸又はメタノール−酢酸混合溶液等で洗浄することにより、鋳型分子をポリマー内から除去することができる。 上記のようにして合成した鋳型ポリマーは、アルキルメラミンに対する選択的結合部位を有しているが、この結合部位には構造が類似したトリアジン系農薬も同様に結合しうる。【0021】 即ち、トリエチルメラミンをはじめとするアルキルメラミンを鋳型とする鋳型ポリマーは、トリアジン系農薬のレセプターポリマーとして作用しうる。 スルホニルウレア系農薬のレセプターポリマーを合成する際用いる鋳型分子としては、下図に示した化合物を挙げることができる。【0022】【化3】【0023】{式中、R4はC1−6アルキル基、C1−6アルケニル基、C1−6アルキニル基、フェニル基(該フェニル基はC1−3アルキル基で任意に置換されていてもよい。)、1,4−ジC1−3アルキルピラゾール−5−イル又はピリジル基(該ピリジル基はC1−3アルキル基で任意に置換されていてもよい。)を意味し、R5、R6、R8、R9、R11、R12、R14及びR15はそれぞれ独立に水素原子、C1−5アルキル基、C1−4アルコキシ基又はC1−4アルキルアミノ基を意味し、R7、R10及びR13はそれぞれ独立にC1−6アルキル基、C1−6アルケニル基、C1−6アルキニル基、フェニル基(該フェニル基はC1−3アルキル基、C1−3アルコキシ基、C2−4アルキルカルボニル基、C2−4アルコキシカルボニル基又はハロゲン原子で任意に置換されていてもよい。)、1,4−ジC1−3アルキルピラゾール−5−イル、1−C1−3アルキル−4−C2−4アルコキシカルボニルピラゾール−5−イル、ピリジル基(該ピリジル基はC1−3アルキル基又はC2−4アルコキシカルボニル基で任意に置換されていてもよい。)を意味し、XはN又はCHを意味する。} 上記化合物を鋳型とする鋳型ポリマーの合成は、アルキルメラミンを鋳型とする鋳型ポリマーの合成と同様の方法で行うことができる。 又、トリアジン系農薬及びスルホニルウレア系農薬以外の農薬に於いても、該農薬と同じ母核を有する化合物を鋳型分子として、上記と同様の方法により、該農薬のレセプターポリマーを製造することができる。【0024】 次に、本発明の農薬の選択的固相抽出法を、トリアジン系農薬の選択的固相抽出法を用いて説明する。 アルキルメラミンを鋳型とする鋳型ポリマーは、極性の低い有機溶媒中では、水素結合や静電相互作用に基づいてトリアジン系農薬を認識することができ、水溶媒中では、水素結合や静電相互作用の形成が起こりにくく、ポリマーベースとの非特異的疎水性相互作用による吸着が起こると考えられる。【0025】【化4】【0026】 即ち、トリアジン系農薬と他の化学物質を含む水を、アルキルメラミンを鋳型とする鋳型ポリマーが充填されたカラム(カートリッジ)に通し、疎水性相互作用により当該農薬及び他の化学物質全てをポリマーに吸着させ[(1):保持工程]、通気によりカラムを乾燥し[(2):乾燥工程]、非極性有機溶媒(例えば、トルエン又はジクロロメタン)をカラムに流す[(3):洗浄工程]。 この操作により、トリアジン系農薬はアルキルメラミンを鋳型とする鋳型ポリマーと水素結合や静電相互作用による特異的な親和性を有しており、カラム内に保持されるが、他の化学物質にはこのような作用が働かず、容易にカラムから溶出される。【0027】 次に、カラム内に残留しているトリアジン系農薬を極性有機溶媒(例えば、メタノール)で溶出させる[(4):抽出工程]。 上記操作により、トリアジン系農薬の濃縮、選択的分離及び抽出が行うことができる。 スルホニルウレア系農薬をはじめとする、トリアジン系農薬以外の農薬における選択的固相抽出は、上述と同様な方法で達成することができる。 本発明の鋳型ポリマーは、カラム(カートリッジ)に充填することにより、農薬の選択的固相抽用キットとして用いることができる。 選択的固相抽用キットの構成としては、本発明の鋳型ポリマーを充填したカラム(カートリッジ)のみでも使用できるが、これに洗浄溶媒としてトルエン又はジクロロメタン等の非極性溶媒及び抽出溶媒としてメタノール等の極性溶媒を加えてもよい。【0028】【実施例】 以下、実施例及び参考例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例1[塊状重合によるトリエチルメラミンを鋳型とする鋳型ポリマー(ポリマー(1))の合成]【0029】【化5】トリエチルメラミン1.67mmol、メタクリル酸1.67×4mmol、ジメタクリル酸エチレングリコール8.86ml及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル120mgをクロロホルム25mlに溶かし、ネジ付き試験管に入れて混合し、氷水で冷やしながら窒素をバブリングした。 試験管を密封して5℃に保った水浴中で約12時間紫外線を当てて重合させた。【0030】 得られたポリマーは乾燥させた後、砕いてソックスレー抽出器を使用し、約100時間メタノールを循環させて洗浄しテンプレートであるトリエチルメラミンをポリマー内から除去した。 次に乳鉢とふるいを利用して粒径を32−63μmに揃えた。 このポリマーをカラムに充填した。 これを以降のHPLC評価に使用した。【0031】実施例2[塊状重合によるトリイソプロピルメラミンを鋳型とする鋳型ポリマー(ポリマー(2))の合成] トリエチルメラミンの代わりにトリイソプロピルメラミンを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、トリイソプロピルメラミンを鋳型とする鋳型ポリマー(ポリマー(2))を合成した。 このポリマーをHPLC評価に使用した。【0032】実施例3[塊状重合によるジノルマルブチルメラミンを鋳型とする鋳型ポリマー(ポリマー(3))の合成] トリエチルメラミンの代わりにジノルマルブチルメラミンを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、ジノルマルブチルメラミンを鋳型とする鋳型ポリマー(ポリマー(3))を合成した。 このポリマーをHPLC評価に使用した。【0033】実施例4[塊状重合によるトリノルマルブチルメラミンを鋳型とする鋳型ポリマー(ポリマー(4))の合成] トリエチルメラミンの代わりにトリノルマルブチルメラミンを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、トリノルマルブチルメラミンを鋳型とする鋳型ポリマー(ポリマー(4))を合成した。 このポリマーをHPLC評価に使用した。【0034】実施例5[懸濁重合によるトリエチルメラミンを鋳型とする鋳型ポリマー(ポリマー(5))の合成] トリエチルメラミン7.3mmol、メタクリル酸7.3×15mmol、ジメタクリル酸エチレングリコール41g、アゾビスジメチルバレロニトリル940mg、ポリビニルアルコール1.6gをクロロホルム45gに溶かし、精製水219ml中に懸濁させて50℃で6時間攪拌し(300rpm)、更に室温で15時間攪拌することにより、球状のポリマーを得た。 ポリマーはふるいにかけ、粒径を32−63μmに揃えた後、ソックスレー抽出器を使用し、メタノールを循環させて洗浄した。(200mL,5.3times/hr) 乾燥後、このポリマーをカラムに充填した。 これを以降のHPLC評価に使用した。【0035】実施例6[懸濁重合によるジノルマルブチルメラミンを鋳型とする鋳型ポリマー(ポリマー(6))の合成] トリエチルメラミンの代わりにジノルマルブチルメラミンを用いた以外は実施例5と同様の操作を行い、ジノルマルブチルメラミンを鋳型とする鋳型ポリマー(ポリマー(6))を合成した。 このポリマーをHPLC評価に使用した。【0036】実施例7[塊状重合による鋳型分子を用いないブランクポリマー(ポリマー(7))の合成] トリエチルメラミンを用いなかった以外は実施例1と同様の操作を行い、鋳型分子を用いないブランクポリマー(ポリマー(7))を合成した。 このポリマーをHPLC評価に使用した。【0037】実施例8[ポリマー(1)〜(7)の評価] 上記実施例で合成した鋳型ポリマーが充填されたカラムをアセトニトリルで充分に洗浄し、高速液体クロマトグラフィーに接続した。 ベースラインが安定していることを確認後、アトラジン、シマジン、プロパジン、シアナジン、アメトリン、プロメトリン、テルブチラジン、テルブトリン、アシュラム、メコプロップ、プロピザミド、イプロジオン、チウラム、アラクロール、ベンタゾン、MCPエチル、メトリブジン、ペンディメタリン、MBPMC、TPN、ジウロン、ダイアジノン、フルトラニル及びアミトロールの1mM濃度、20μlを各々注入し、保持容量k’を求めた。 溶離液としてクロロホルム/アセトニトリル(3:1v/v)を用い、保持容量k’は、注入したサンプルの保持時間tR及びアセトンの保持時間t0から次式により算出した。 k’=(tR−t0)/t0 結果を表1に示す。 尚、ブランクは未試験を意味する。【0038】【表1】【0039】【化6】【0040】【化7】【0041】【化8】【0042】 表1から明らかなように、アルキルメラミンの鋳型ポリマーであるポリマー(1)〜(6)の保持容量k’は、トリアジン系農薬(アトラジン、シマジン、プロパジン、シアナジン、アメトリン、プロメトリン、テルブチラジン及びテルブトリン)を用いたときに大きな値を示し、非トリアジン系農薬(アシュラム、メコプロップ、プロピザミド、イプロジオン、チウラム、アラクロール、ベンタゾン、MCPエチル、メトリブジン、ペンディメタリン、MBPMC、TPN、ジウロン、ダイアジノン、フルトラニル及びアミトロール)を用いたときの保持容量k’の数十倍の値であり、トリアジン系農薬に充分な選択性を示した。 又、ブランクポリマーであるポリマー(7)は、上記のような選択性を示さなかった。【0043】実施例9[鋳型ポリマー(5)を用いた固相抽出] 実施例5で製造した鋳型ポリマー(5)2.0gをカラム(長さ65mm、直径13mm)に充填し(カートリッジ)、アトラジン、アシュラム、チウラム、プロピザミド及びイプロジオンを各々50μg含む溶液500ml(純水450ml+アセトン50ml)をカートリッジのトップから注入した(保持工程)。 カートリッジを通気により乾燥し(乾燥工程)、トルエン10mlをカートリッジトップから注入した(洗浄工程)。 次に、メタノール3mlを4回、カートリッジトップから注入した(抽出工程)。 結果を表2に示す。【0044】【表2】 表2から明らかなように、トリエチルメラミンを鋳型とする鋳型ポリマー(ポリマー(5))は、トリアジン系除草剤であるアトラジンのみを選択的に抽出した。【0045】実施例10[鋳型ポリマー(6)を用いた固相抽出] 実施例6で製造した鋳型ポリマー(6)2.0gをカラム(長さ65mm、直径13mm)に充填し(カートリッジ)、アトラジン、アシュラム、チウラム、プロピザミド及びイプロジオンを各々50μg含む溶液500ml(純水450ml+アセトン50ml)をカートリッジのトップから注入した(保持工程)。 カートリッジを通気により乾燥し(乾燥工程)、ジクロロメタン10mlをカートリッジトップから注入した(洗浄工程)。 次に、メタノール10mlをカートリッジトップから注入した(抽出工程)。 結果を表3に示す。【0046】【表3】 表3から明らかなように、ジノルマルブチルメラミンを鋳型とする鋳型ポリマー(ポリマー(6))は、トリアジン系除草剤であるアトラジンのみを選択的に抽出した。【0047】【発明の効果】 本発明のアルキルメラミンを鋳型として鋳型重合法により合成した鋳型ポリマーは、トリアジン系農薬を選択的に固相抽出することができる。 又、本発明は、農薬全般の選択的固相抽出法として適応できる。 一般式(1)(式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子又はC1−5アルキル基を意味し、R1、R2及びR3のうち少なくとも一つはC1−5アルキル基を意味する。)で表されるアルキルメラミンを鋳型として鋳型重合法により合成した鋳型ポリマー。 鋳型重合法が塊状重合法である請求の範囲1記載の鋳型ポリマー。 鋳型重合法が懸濁重合法である請求の範囲1記載の鋳型ポリマー。 請求の範囲1記載の鋳型ポリマーを用いるトリアジン系農薬の選択的固相抽出法。 トリアジン系農薬がアトラジン、プロパジン、シマジン又はアメトリンである請求の範囲4記載の選択的固相抽出法。 請求の範囲1記載の鋳型ポリマーをカラムに充填し、使用することを特徴とするトリアジン系農薬の選択的固相抽出用キット。 トリアジン系農薬がアトラジン、プロパジン、シマジン又はアメトリンである請求の範囲6記載の選択的固相抽出用キット。 洗浄溶媒がトルエン又はジクロロメタンであり、抽出溶媒がメタノールである請求の範囲6記載のトリアジン系農薬の選択的固相抽出用キット。