タイトル: | 特許公報(B2)_担体−薬物複合体 |
出願番号: | 2001502881 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 47/48,A61K 49/00,A61K 51/00,A61P 29/00,A61P 31/00,A61P 31/12,A61P 35/00,A61P 37/00,G01N 33/50 |
クラッツ フェリックス JP 5392956 特許公報(B2) 20131025 2001502881 20000607 担体−薬物複合体 ケイテーベー ツモルフォルシュングスゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 501477462 特許業務法人三枝国際特許事務所 110000796 クラッツ フェリックス DE 199 26 475.9 19990610 20140122 A61K 47/48 20060101AFI20131226BHJP A61K 49/00 20060101ALI20131226BHJP A61K 51/00 20060101ALI20131226BHJP A61P 29/00 20060101ALI20131226BHJP A61P 31/00 20060101ALI20131226BHJP A61P 31/12 20060101ALI20131226BHJP A61P 35/00 20060101ALI20131226BHJP A61P 37/00 20060101ALI20131226BHJP G01N 33/50 20060101ALI20131226BHJP JPA61K47/48A61K49/00 CA61K49/00 ZA61K49/02 AA61P29/00A61P31/00A61P31/12A61P35/00A61P37/00G01N33/50 T A61K 47/00 A61K 49/00 A61K 51/00 A61P 29/00 A61P 31/00 A61P 35/00 A61P 37/00 G01N 33/00 国際公開第99/25383(WO,A1) 国際公開第98/17319(WO,A2) 特開平7−70175(JP,A) 特開平11−92405(JP,A) PROCEEDINGS OF THE NATIONAL ACADEMY OF SCIENCES,米国,1982年1月,V79,P626−629 BIOCHEMISTRY,米国,1993年,V32 N25,P6427−6432 15 EP2000005254 20000607 WO2000076550 20001221 2003501485 20030114 23 20070522 2011016210 20110727 村上 騎見高 岩下 直人 渕野 留香 本発明は、担体−薬物複合体及びそれらの調製方法並びに該複合体を含有する医薬品に関する。 現在使用される薬物の多くは、低分子量化合物であり、そして全身投与後に高血漿クリアランスまたは全身クリアランスを示す。さらに、それらは、拡散プロセスによって身体の組織構造に浸透し、そして、一般に、均一な生体分布を示す。2つの特性のために、ほんの少量の薬物が作用部位に達する結果となり、そして薬物は、その分布のために身体の健康な組織に副作用をもたらす。これらの不都合は、特に、高細胞傷害性ポテンシャルを有する薬物(例えば、細胞増殖抑制剤または免疫抑制剤)の場合に、顕著である。 従って、より選択的な治療を可能にする新規の誘導体または製剤が、求められている。このために、好適な担体物質および薬物から構成されるポリマー複合体またはタンパク質複合体、または化学免疫複合体(chemoimmunoconjugate)が、開発されている。 当該領域の関連分野に関して、細胞増殖抑制剤が血清タンパク質、抗体、増殖因子、ホルモン様もしくはペプチド様構造体、または合成ポリマーにカップリングされているポリマー複合体について言及されるべきである(Magerstadt, M., Antibody Conjugates and Malignant Disease, Library of Congress, 1990; Seymour, L. W., Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Sys. (1992), 9, 135-187; Maeda, H., and Matsumura, Y., Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Sys. (1989), 6, 193-210)。 DE-A-41 22 210は、アルブミンとの腫瘍活性化合物の複合体を開示し、腫瘍活性化合物は、N−ヒドロキシスクシンイミドおよびカルボジイミドによって活性化され、そしてこのように得られる混合物が、担体タンパク質へ直接カップリングされる。これらの複合体の不都合は、中でも、それらが必要な高純度で得られることができず、アルブミンの天然構造は、しばしば、調製方法のためにインタクトのままでなく、そしてアルブミンに対する薬物の化学量論比が一定でなくかつ再現性に乏しいことである。さらに、これらの複合体は、標的組織または標的細胞において、好適な形式で放出されることが許容されない。 従って、本発明の目的は、以前に公知の複合体の不都合を克服する新規の担体−薬物複合体を提供することである。 この目的は、特許請求の範囲に特徴づけられる本発明の実施形態によって達成される。 特に、1または複数のシステイン基を有するポリペプチド配列を含む担体、ならびに薬学的および/または診断学的活性物質、スペーサー分子およびチオール結合基を含む薬物から構成される担体薬物複合体が提供され、システイン基1モル当たり0.7モルを超える、好ましくは少なくとも0.9モルの薬物が、チオール結合基を介して担体へ結合されている。表現「薬学的活性物質」は、問題の物質が、それ自体でまたは問題の生物における代謝によるその変換後に薬理学的効果をもたらすことを意味し、そして従ってまた、これらの変換から生じる誘導体を含む。通常、薬学的活性物質は、単一の(例えば、細胞増殖抑制剤のみとして)またはブロードな薬理学的作用スペクトル(例えば、細胞増殖抑制剤および抗炎症剤として)を示し得る。表現「診断学的活性物質」は、問題の物質が、生物またはその部分(例えば、細胞)および/または体液(例えば、血清)において、好適な化学的および/または物理学的測定法によって、検出され、好ましくは定量もされ得ることを意味する。 薬学的活性物質の放出が好ましく、何故ならば、一般に、低分子量活性物質は、その薬理学的有効性の役割を果たすために、標的分子と相互作用しなければならないからである。診断学的活性物質の場合、一般に、担体分子に結合されている診断学的薬物の放出は、必要でないが、それでも生じ得る。従って、本発明に従うと、診断学的活性物質は、特に、さらに、身体で切断可能でない結合を介してスペーサー分子へ、または直接担体分子結合基へ、結合され得る。 本発明に従う複合体の好ましい実施形態に従うと、担体は、天然または組換えアルブミンである。 本発明に従う複合体における薬物または薬物誘導体は、例えば、以下のスキームによって示され得る(AS、薬学的および/または診断学的活性物質;SM、スペーサー分子;TG、チオール結合基): 本発明に従う複合体は、薬学的および/または診断学的活性物質の運搬(transport)および/または蓄積(depot)形態を示し、従って、これは、薬物の標的細胞または標的組織へ、目的様式または計量形態で達する。以前に公知の複合体とは対照的に、本発明の複合体は高純度で得られ得、担体の天然構造はインタクトのままであり、そして担体に対する薬物の化学量論比は一定でありかつ再現性がある。 DE-A-41 22 210に記載されるアルブミン−細胞増殖抑制剤複合体とは対照的に、本発明に従う複合体は、さらに、スペーサー分子が薬学的および/または診断学的活性物質とチオール結合基との間に存在し、このスペーサー分子が、薬学的および/または診断学的活性物質あるいはその対応する活性誘導体が加水分解的におよび/またはpH依存様式でおよび/または酵素的に標的組織または標的細胞において放出され得るように、仕立てられる(tailored)という利点を有する。 担体(例えば、アルブミン)またはその薬物複合体は、全身循環において顕著に長い半減期を示す(19日まで−−Peters, T., Jr. (1985): Serum Albumin, Adv. Protein. Chem. 37, 161-245)。高分子についての、悪性の、感染または炎症組織の脈管壁の増加した透過性のために、担体(例えば、血清アルブミン)が、標的組織へと優先的に通過する(Maeda, H., and Matsumura, Y., Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Sys. (1989), 6, 193-210)。結果として、担体(例えば、アルブミン)へカップリングされた活性物質が、より標的化された様式で、作用部位に達し得る。さらに、本発明に従う担体−薬物複合体は、薬学的および/または診断学的活性物質が、身体の健康組織構造体中に拡散すること、または腎臓を介して排出されることを防止し、あるいは非結合薬学的および/または診断学的活性物質と同程度に腎臓を損傷することを防止する。結果として、薬学的および/または診断学的活性物質の薬物動態プロフィールは、改変および改善され、何故ならば、薬学的および/または診断学的活性物質の作用が、作用部位での増強によって増大され、そして同時に、身体の健康系に対する毒性効果が減少されるからである。 本発明の複合体は、優れた水溶性を有する。さらに、本発明に従う複合体は、インビボで、例えば、非結合薬学的および/または診断学的活性物質と比較して、改善された抗腫瘍効果を示す。 本発明に従う複合体の好ましい実施形態に従うと、スペーサー分子、および/または薬学的および/または診断学的活性物質とスペーサー分子との間の連結、および/またはチオール結合基とスペーサー分子との間の連結は、加水分解的におよび/またはpH依存様式でおよび/または酵素的に切断可能である。好ましくは、スペーサー分子、および/または薬学的および/または診断学的活性物質とスペーサー分子との間の連結、および/またはチオール結合基とスペーサー分子との間の連結は、少なくとも1つの酸不安定性結合を含む。酸不安定性結合の例は、エステル、アセタール、ケタール、イミン、ヒドラゾン、カルボキシルヒドラゾンおよびスルホニルヒドラゾン結合、およびトリチル基を含む結合である。薬学的および/または診断学的活性物質の放出を伴う加水分解によって切断される結合は、例えば、エステル結合または金属錯化合物、例えば、白金−ジカルボキシレート錯体に存在するものであり、ここで、ジアミンジアクオ(diaminediaquo)−白金(II)錯体が、遊離される。身体内で切断可能でない結合(これは、例えば、診断学的活性物質への連結の場合に存在し得る)の例は、アミド結合、飽和および不飽和炭素−炭素結合、または炭素とヘテロ原子との間の結合、−C−X−(ここで、Xは好ましくは、O、N、SまたはPである)である。 本発明に従う複合体のさらなる実施形態に従うと、スペーサー分子、および/または薬学的および/または診断学的活性物質とスペーサー分子との間の連結、および/またはチオール結合基とスペーサー分子との間の連結は、少なくとも1つのペプチド結合を含む。ペプチド結合は、好ましくは、プロテアーゼの少なくとも1つの切断配列を含むペプチド配列内にある。従って、少なくとも1つのペプチド結合は、スペーサー分子への、および/または薬学的および/または診断学的活性物質とスペーサー分子との間の連結への、および/またはチオール結合基とスペーサー分子との間の連結への、ペプチド配列の挿入によって実行され得;すなわち、問題の連結は、ペプチド結合であり、そして好ましくは、約1〜30のアミノ酸から構成される。従って、ペプチド配列は、好ましくは、身体の自己酵素あるいは微生物中に生じるかまたは微生物によって形成される酵素のあるものの基質特異性へと仕立てられる。このように、ペプチド配列またはこの配列の部分は、身体において、酵素によって認識され、そしてペプチドは切断される。 酵素、例えばプロテアーゼおよびペプチダーゼ、例えばマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、システインプロテアーゼ、セリンプロテアーゼおよびプラスミンアクチベーターであり、これらは、過剰組織分解、炎症および転移へ導く疾患(例えば、リウマチ様関節炎または癌)において、強められた様式で、形成されるかまたは活性化される。標的酵素は、特に、MMP 2、MMP 3およびMMP 9であり、これらは、引用される病理プロセスにおいてプロテアーゼとして関与する(Vassalli, J., and Pepper, M. S. (1994), Nature 370, 14-15; Brown, P. D.(1995), Advan. Enzyme Regul. 35, 291-301)。 本発明の複合体についての標的酵素を示すさらなるプロテアーゼは、カテプシン、特にカテプシンBおよびHであり、これらは、炎症および悪性疾患におけるキー酵素として同定された(T. T. Lah ら(1998), Biol. Chem. 379, 125-301)。 本発明に従う複合体のさらなる実施形態に従うと、スペーサー分子、および/または薬学的および/または診断学的活性物質とスペーサー分子との間の連結、および/またはチオール結合基とスペーサー分子との間の連結は、酵素的に切断されるがペプチド結合から構成されていない少なくとも1つの結合を含む。例えば、カルバメート結合であり、ここで、活性物質または活性物質の誘導体が、疾患特異的酵素(例えば、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、グルクロニダーゼ、ガラクトシダーゼ)での切断によって放出される。酵素的に切断可能な結合が、ペプチド配列およびペプチド結合でない上述の結合の1つから形成されることもまた、直ちに可能である。 結合の全ての例示されるタイプ−−加水分解的に切断可能な結合、酸不安定性結合、ペプチド結合、ペプチド結合を含まない酵素的に切断可能な結合、ならびにペプチド配列および非ペプチド結合から形成される結合−−は、薬学的および/または診断学的活性物質あるいは対応の活性誘導体が、細胞外的および/または細胞内的に、作用部位で切断され、そして該物質がその薬学的および/または診断学的作用の役割を果たし得ることを保証する。 好ましい実施形態に従うと、薬学的活性物質は、細胞増殖抑制剤、サイトカイン、免疫抑制剤、抗リウマチ剤、抗炎症剤、抗生物質、鎮痛剤、ウイルス増殖抑制剤(virostatic)または抗真菌剤である。本発明の複合体の特に好適な細胞増殖抑制剤は、N−ニトロソウレア類(例えば、ニムスチン)、アントラサイクリン類、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロンおよびアメタントロン(ametantrone)ならびに関連誘導体;アルキル化剤、クロラムブシル、ベンダムスチン(bendamustine)、メルファラン(melphalan)およびオキサザホスホリン類ならびに関連誘導体;代謝拮抗剤、例えば、プリンアンタゴニストまたはピリミジンアンタゴニスト、および葉酸アンタゴニスト(例えば、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、2’−デオキシ−5−フルオロウリジンおよびチオグアニン)ならびに関連誘導体;タキサン類、パクリタクセルおよびドセタクセル(docetaxel)ならびに関連誘導体;カンプトテシン類(camptothecins)、トポテカン(topotecan)、イリノテカン(irinotecan)、9−アミノカンプトテシンおよびカンプトテシンならびに関連誘導体;ポドフィロトキシン誘導体エトポシド(etoposide)、テニポシド(teniposide)およびミトポシド(mitopodozide)ならびに関連誘導体;ビンカアルカロイド ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビン(vinorelbine)ならびに関連誘導体;カリケアマイシン(calicheamicins);メイタンシノイド(maytansinoids);ならびに一般式I〜XIIのcis−配置白金(II)錯体: 本発明の複合体における特に好適なサイトカインは、例えば、インターロイキン2、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンβ−1a、インターフェロンβ−1b、インターフェロンγ−1bおよび関連誘導体である。使用されるサイトカインは、一般に、遺伝子工学を使用して調製される薬剤である。 本発明の複合体における特に好適な免疫抑制剤は、例えば、シクロスポリンA、FK 506および関連誘導体である。 本発明の複合体における特に好適な抗リウマチ剤は、例えば、メトトレキセート、スルファサラジン、クロロキンおよび関連誘導体である。 本発明の複合体における特に好適な抗炎症剤および/または鎮痛剤は、例えば、サリチル酸誘導体(例えば、アセチルサリチル酸および関連誘導体);酢酸またはプロピオン酸基を有する薬物誘導体(例えば、ジクロフェナクまたは、それぞれ、インドメタシンもしくはイブプロフェンまたは、それぞれ、ナプロキセン(naproxen));およびアミノフェノール誘導体(例えば、パラセタモール)である。 本発明の複合体における特に好適な抗真菌剤は、例えば、アンフォテリシンBおよび関連誘導体である。 本発明の複合体における好ましいウイルス増殖抑制剤は、例えば、ヌクレオシドアナログ(例えば、アシクロビル、ガンシクロビル、イドクスウリジン(idoxuridine)、リバビリン、ビダリビン(vidaribine)、ジドブジン(zidovudine)、ジダノシン(didanosine)および2’,3’−ジデオキシシチジン(ddC))および関連誘導体、ならびにアマンタジンである。 本発明に従う複合体における好ましい抗生物質は、スルホンアミド類、例えば、スルファニルアミド、スルファカルバミドおよびスルファメトキシジアジンならびに関連誘導体;ペニシリン類、例えば、6−アミノペニシリン酸、ペニシリンGおよびペニシリンVならびに関連誘導体;イソキサゾリルペニシリン類、例えば、オキサシリン(oxacillin)、クロキサシリン(cloxacillin)およびフルクロキサシリン(flucloxacillin)ならびに関連誘導体;α−置換ベンジルペニシリン類、例えば、アンピシリン、カルベニシリン(carbenicillin)、ピバンピシリン(pivampicillin)、アモキシシリン(amoxicillin)ならびに関連誘導体;アシルアミノペニシリン類、例えば、メツゾシリン(mezlocillin)、アズロシリン(azlocillin)、ピペラシリン(piperacillin)、アパルシリン(apalcillin)ならびに関連誘導体;アミジノペニシリン類、例えば、メシリナム(mecillinam);非定型的β−ラクタム類、例えば、イミペナム(imipenam)およびアズトレオナム(aztreonam);セファロスポリン類(cephalosporins)、例えば、セファレキシン、セフラジン、セファクロール(cefaclor)、セファドリキシル(cefadroxil)、セフキシム(cefixime)、セフポドキシム(cefpodoxime)、セファゾリン(cefazolin)、セファゾドン(cefazedone)、セフロキシム(cefuroxime)、セファマンドール(cefamandole)、セフォチアム(cefotiam)、セフォキシチン(cefoxitin)、セフォテタン(cefotetan)、セフメタゾール(cefmetazole)、ラタモキセフ(latamoxef)、セフォタキシム(cefotaxime)、セフトリアクソン(ceftriaxone)、セフトリゾキシム(ceftizoxime)、セフモノキシム(cefmonoxime)、セフタジジム(ceftazidime)、セフスロジン(cefsulodin)およびセフォペラゾン(cefoperazone)ならびに関連誘導体;テトラサイクリン類、例えば、テトラサイクリン、クロロテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン(demeclocycline)、ロリテトラサイクリン(rolitetracycline)、ドキシサイクリン(doxycycline)、ミノサイクリン(minocycline)および関連誘導体;クロラムフェニコール類、例えば、クロラムフェニコールおよびチアムフェニコール(thiamphenicol)ならびに関連誘導体;ジャイレース阻害剤、例えば、ナリジクス酸、ピペミジン酸(pipemidic acid)、ノルフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシンおよびエノキサシンならびに関連誘導体;ならびに抗結核剤、例えばイソニアジドならびに関連誘導体である。 当然ながら、単一薬物種(例えば、薬学的活性物質として細胞増殖抑制剤を有する薬物)または種々の薬物種(例えば、薬学的活性物質として複数の異なる細胞増殖抑制剤、または細胞増殖抑制剤および抗炎症剤など)が、本発明に従う複合体に、モル当たり組み合わせた形態で、存在し得る。 本発明に従う複合体のさらなる好ましい実施形態に従うと、スペーサー分子は、1〜12の炭素原子を有する置換または非置換の分枝鎖または直鎖の脂肪族アルキル基、および/または少なくとも1つの置換または非置換のアリール基、および/または3〜12の炭素原子を有する脂肪族炭素環を含む。脂肪族アルキル基は、好ましくは、1〜20の炭素原子を含み、これは、例えば、水溶性を増大させるために、酸素原子によって一部置換され得、このような基は、好ましくは、オリゴエチレンオキシドまたはオリゴプロピレンオキシド鎖から誘導される。オリゴエチレンオキシドまたはオリゴプロピレンオキシド鎖から誘導される特に好適な基としては、例えば、ジエチレングリコール鎖、トリエチレングリコール鎖、およびジプロピレングリコール鎖が挙げられる。好ましいアリール基は、非置換または置換のフェニル基であり、ここで、同様に、1または複数の炭素原子が、ヘテロ原子によって置換され得る。脂肪族アルキル基またはアリール基の好ましい置換基は、親水基、例えば、スルホン酸基、アミノアルキル基およびヒドロキシ基である。 本発明に従う複合体の好ましい診断学的活性物質としては、例えば、1または複数の放射性核種;放射性核種を含み、好ましくはこのような放射性核種と錯体を形成している、1または複数のリガンド;1または複数の陽電子放射体;1または複数のNMRコントラスト媒体(contrast media);1または複数の蛍光化合物;あるいは1または複数の近IR領域におけるコントラスト媒体が挙げられる。 本発明に従う複合体のさらなる好ましい実施形態において、チオール結合基は、マレインイミド基、ハロアセトアミド基、ハロアセテート基、ピリジルジチオ基、ビニルカルボニル基、アジリジン基、ジスルフィド基またはアセチレンを含み、これらは、好適である場合、置換される。 本発明に従う複合体の薬物または薬物誘導体は、どの官能基が存在するかに依存して、以下の一般的記載の1つに従って、調製され得る。 本発明に従う複合体の、HOOC基を有する、薬物または薬物誘導体は、例えば、以下の様式で誘導体化され得る: ここでのエステル化は、当該関連分野において公知の方法を用いて実施される。 例えばtert−アルキルカルバゼートとの反応続いて酸を用いての切断によって、HOOC基をヒドラジド基に変換すること(DE-A-196 36 889に記載される)、および中でもDE-A-196 36 889に記載されるように: ヒドラジド基を有する薬物を、カルボニル成分を含みそしてチオール結合基およびスペーサー分子から構成された基と反応させることが、さらに可能である。 本発明に従う複合体の、H2N基を有する、薬物または薬物誘導体は、例えば以下の様式で誘導体化され得る: ここでのイミン誘導体への反応は、当該関連分野において公知の方法を用いて実施される。 本発明に従う複合体の、HO基を有する、薬物または薬物誘導体は、例えば以下の様式で誘導体化され得る: ここでのエステル化は、当該関連分野において公知の方法を用いて実施される。 本発明に従う複合体の、カルボニル成分を有する、薬物または薬物誘導体は、例えば以下の様式で誘導体化され得る: ここでのカルボキシヒドラゾン、スルホニルヒドラゾン、ヒドラゾンまたはイミン誘導体への反応は、当該関連分野において公知の方法を用いて実施される。 薬学的および/または診断学的活性物質のHO基またはNH2基を、例えば、以下の一般反応スキームに従って、カルボン酸保有カルボニル成分を用いてのエステル化またはアミド化によって、カルボニル成分へ変換させることが、さらに可能である:ここで、Rは、脂肪族炭素鎖および/または脂肪族炭素環および/または芳香族であり、そしてR1=H、アルキル、非置換フェニル基または置換フェニル基である。Rは、好ましくは、1〜12の炭素原子を含み、これらは、同様に、例えば親水基(例えば、スルホン酸基、アミノアルキル基またはヒドロキシル基)によって置換され得る。芳香族は、好ましくは、ベンゼン環であり、これは、同様に、置換され得る。好ましい置換基は、例えば、上記の親水基である。 カルボニル成分は、さらに、他の化学反応によって、例えば、好適なカルボニル成分を用いての活性物質のHOまたはNH2基における求電子置換によって、導入され得る。 この様式で誘導体化される薬物(これは、現在、カルボニル成分を有する)は、アミノ基、ヒドラジド基またはヒドラジン基を有する担体分子結合スペーサー分子を用いての上述の方法と類似の様式で、対応のカルボキシルヒドラゾン、スルホニルヒドラゾン、ヒドラゾンまたはイミン誘導体へ変換される。これらの酸不安定性結合の切断は、その後、カルボニル成分を有する誘導体化された薬学的および/または診断学的活性物質の放出へ導く。 チオール結合基およびスペーサー分子から構成される基は、例えば、中でも、DE-A-196 36 889, U. Beyerら、1997 (Chemical Monthly, 128, 91, 1997), R. S. Greenfieldら、1990 (Cancer Res., 50, 6600, 1990)、T. Kanekoら、1991 (Bioconjugate Chem., 2, 133, 1991)、Bioconjugate Techniques (G. T. Hermanson, Academic Press, 1996),または米国特許第4,251,445号に記載される方法に従って、調製され得る。 本発明に従う複合体の、ペプチド結合を含む、薬物または薬物誘導体は、例えば、2〜約30のアミノ酸から構成されるペプチドとチオール結合化合物とを反応させることによって、調製され得、その結果、チオール結合基が、直接またはスペーサー分子を介してペプチドのN末端に導入される。このような担体分子結合ペプチド誘導体の合成は、好ましくは、当業者に公知の固相合成によって実施され、カルボン酸保有担体分子結合スペーサー分子(例えば、マレインイミドカルボン酸)が、ペプチドのN末端へのペプチドカップリングによってペプチド組み立ての最終工程で結合され、そして担体分子結合ペプチドは、次いで、固相から分離される。 縮合剤、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)またはN−シクロヘキシル−N’−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメチル−p−トルエンスルホネート(CMC)または1−ベンゾトリアゾリルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)またはベンゾトリアゾリル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートの存在下で、そして好適である場合にはN−ヒドロキシスクシンイミドまたは水溶性N−ヒドロキシスクシンイミド(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド−3−スルホン酸ナトリウム塩)、または1−ヒドロキシベンゾトリアゾールを添加して、および/または塩基(例えば、N−メチルモルホリンまたはトリエチルアミン)の存在下で、そのように得られたペプチド誘導体は、H2NまたはHO基を有する薬物または薬物誘導体と反応させて対応のチオール結合薬物ペプチド誘導体とし得る: 本発明に従う複合体の薬物のHOOC基を介して、例えば、アミノ酸リジン、セリンまたはスレオニンのαアミノ基を介してのあるいは一般式H2N−(CH2)n−NH2のジアミノ化合物または一般式H2N−(CH2)n−OHのアルコールアミン(ここで、n=1〜12)を用いての誘導体化によって、H2NまたはHO基を導入すること、ならびに次いで、これらの誘導体を上述のペプチド誘導体と反応させて対応のチオール結合薬物ペプチド誘導体とすることが、さらに可能である: 標的酵素(例えば、MMP 2、MMP 3、MMP 9、カテプシンBおよびH)の基質特異性は公知である(Netze-Arnettら、(1993), Biochemistry 32, 6427-6432, Shuja, S., Sheahan, K., and Murname, M. J. (1991), Int. J. Cancer 49, 341-346, Lah, T. T., and Kos, J. (1998), Biol. Chem. 379, 125-130)。 例えば、MMP 2およびMMP 9についてのオクタペプチド(P4−P’4)が同定され(表1を参照のこと)、このオクタペプチドは、コラーゲン鎖の切断配列をシミュレートし、そして、特別な効率でMMP 2および9によって切断される(下記において、アミノ酸が、国際3文字コードに従って略記される): ペプチドは、もっぱらP1−P’1結合で、酵素的に切断される。 さらに、カプテシンBの場合、基質特異的ペプチドが、配列−Gly−Phe−Leu−Gly−、−Gly−Phe−Ala−Leu−、−Ala−Leu−Ala−Leu−、−Arg−Arg−または−Phe−Lys−を有することが公知である(Werle, B., Ebert, E., Klein, W., and Spiess, E. (1995), Biol. Chem. Hoppe-Seyler 376, 157-164 ; Ulricht, B., Spiess, E., Schwartz-Albiez, R., and Ebert, W. (1995), Biol. Chem. Hoppe-Seyler 376, 404-414)。 標的酵素に重要な意図されるペプチド切断ポイントを含むペプチド配列はまた、例えば以下:−Gly−Pro−Leu−Gly−−Ile−Ala−Gly−Gln−Gly−Pro−Leu−Gly−−Ile−Ala−Gly−Glnまたは−Phe−Lys−Phe−Lys−Phe−Lys−Phe−Lys−Phe−Lys−Phe−Lys−によって、意図されるペプチド切断ポイントが複数回繰り返されるように、構築され得るか、あるいは、繰り返しペプチド配列は、例えば以下:−(Gly)n−Phe−Lys−Phe−Lys−(ここで、好ましくはn=2〜20、より好ましくはnは12以下である)によって、チオール結合基と重要な意図されるペプチド切断ポイントとの間の距離が増加するように、統合され得る。 本発明に従う複合体のこの実施形態の重要な特徴は、問題の標的酵素に重要な意図されるペプチド切断ポイントが、ほぼ1〜30のアミノ酸から構成されるオリゴペプチドにおいて少なくとも1度存在することである。上述のオリゴペプチドは、本発明に従う複合体における酵素的に切断可能な結合についての代表例であり、そして本発明を限定しない。 本発明に従う複合体の、サイトカインを含む、薬物または薬物誘導体は、例えば、サイトカインとチオール結合基を含むスペーサー分子とを反応させることによって調製され得、このスペーサー分子は、カルボン酸または活性化カルボン酸を示す: スペーサー分子が、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基(N−ヒドロキシスクシンイミドまたはN−ヒドロキシスクシンイミド−3−スルホン酸ナトリウム塩)を示す場合、それは直接サイトカインと反応される。対応のチオール結合誘導体への、サイトカインとチオール結合基を含むスペーサー分子(スペーサー分子はカルボン酸を示す)との反応は、縮合剤(例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイジド(DDC)またはN−シクロヘキシル−N’−(2−モルホリノエチル)−カルボジイミドメチル−p−トルエンスルホネート(CMC))の存在下で、そして好適である場合にN−ヒドロキシスクシンイミドまたはN−ヒドロキシスクシンイミド−3−スルホン酸ナトリウム塩を添加して、実施される。一般に、この様式で誘導体化されるサイトカインは、ゲルクロマトグラフィーの助けを借りて、精製される。上記の反応は、当業者に周知である(例えば、Bioconjugate Techniques, G. T. Hermanson, Academic Press, 1996を参照のこと)。 上述の薬物または薬物誘導体は、1または複数のシステイン基を有するポリペプチド配列を含む担体(例えば、天然または組換えアルブミン)へカップリングされて、その結果、システイン基1モル当たり、0.7モルを超える、好ましくは少なくとも0.9モルの薬物が、チオール結合基を介して担体へ結合される。担体のペプチド配列がn(例えば、3)のシステイン基を含む場合、これは、この担体1モルが、n(例えば、3)モルのシステイン基を含み、従って、最大n(例えば、3)モルの薬物が、対応する複合体1モル当たり、担体へ結合されて存在し得ることを意味する。従って、本発明に従う複合体において、担体に存在する100%のシステイン基が、理想的には、チオール結合基を介して薬物と結合される。 従って、本発明のさらなる実施形態は、以下を含む、上記に定義される複合体の調製方法に関する:(i)0.7モルを超える、好ましくは少なくとも0.9モルのシステインSH基が、システイン基1モル当たり、該担体に存在するように、還元剤で前記担体を処理すること、ならびに(ii)該チオール結合基を介して、該担体の該システインSH基へ、該薬物をカップリングすること。 本発明に従う方法の好ましい実施形態において、担体の処理のために使用される還元剤は、ジチオスレイトール(DDT)、ジチオエリスリトール(DTE)またはメルカプトエタノールである。特に好ましい還元剤は、DDTである。 本発明に従う方法は、当該関連分野において公知の担体は不均一酸化状態で存在するという認識に基づいている。例えば、市販の天然アルブミンの場合、Ellmann フォトメトリックアッセイは、アルブミンにおけるシステイン基1モル当たり約0.2〜0.7モルのHS基を検出し;すなわち、システイン−34は、しばしば、硫黄含有化合物(例えば、システインまたはグルタチオン)によって、ジスルフィド結合を介して酸化される。これは、アルブミンに存在するシステインSH基は少なくともしばしば遊離でないことを意味し、このことは、以前は、調製される複合体の収率が低いおよび/または1つのアルブミン装入(charge)と別のアルブミン装入(charge)とで激しく変動するという状態へ導いた。 市販の担体は還元剤で処理され得、ジスルフィド結合を介して酸化されているシステイン基が、0.7モルを超えるシステインSH基が担体においてシステイン基1モル当たり存在するように、還元されることが、本発明に従って、確立された。反応は、好ましくは、少なくとも0.9モルのシステインSH基が担体におけるシステイン基1モル当たり利用可能となるように、制御される。 還元剤と市販の担体(例えば、アルブミン)との反応は、例えば、塩緩衝液(例えば、0.01Mホウ酸ナトリウム、0.15M NaCl、0.001M EDTAもしくは0.15M NaCl、0.004Mホスフェート、5.0〜8.0、好ましくは6.0〜7.0のpH範囲)において、実施される。還元剤は、過剰量で入れられ得;好ましくは、還元剤対担体の比が0.5:1〜10:1である。反応時間は、1時間〜96時間、好ましくは6時間〜24時間である。 還元剤で処理される担体は、例えば、ゲル濾過(例えば、Sephadex(登録商標)G10またはG25;溶媒0.0004Mホスフェート、0.15M NaCl、pH7.4)または限外濾過によって単離される。 ゲル濾過が実施された後の担体の濃度は、280nmでの吸光係数を使用して測定される;挿入されるHS基の数は、Ellmann試薬を用いて412nmで測定される。このように得られた担体溶液は、複合体の合成のために直接使用され得る。担体溶液を市販のコンセントレータ(concentrator)を用いて濃縮すること、またはそれを凍結乾燥することが可能である。単離担体溶液または凍結乾燥物は、−78〜+30℃の温度範囲で保存され得る。 上記の薬物誘導体の担体へのカップリングは、例えば、室温で起こる。塩緩衝液(例えば、0.15M NaCl、pH6.0〜8.0)中にあり、好適である場合に脱気されている担体へ、最小量の溶媒(例えば、DMF、ジメチルスルホキシド、水、塩緩衝液、エタノール、メタノール、プロピレングリコール、グリセリン、アセトニトリルまたはTHF)(試験部分の担体の体積の1〜10%)に溶解した、およそ1.1倍〜10倍過剰(担体に存在するHS基の数に対して)の上記で調製した薬物を添加する。薬物を担体溶液へ固体として添加することもまた可能である。さらに、助剤(例えば、脂肪酸またはトリプトファネート誘導体)を担体溶液へ添加することが、有利であり得る。5分〜48時間の反応時間後、溶液を必要ならば遠心分離し、そして形成された担体薬物複合体を、塩緩衝液(例えば、0.004Mホスフェート、0.15M NaCl、pH6.0〜8.0)において引き続くゲル濾過(例えば、Sephadex(登録商標)G10またはG25)によって単離する。 得られる複合体の純度は、例えばHPLCによって、例えばゲルクロマトグラフィーによって確証される。市販の複合体とは対照的に、本発明に従う方法の好ましい実施形態に従って調製された複合体は、95%を超える純度を示す。 このように得られた複合体の溶液は、市販のコンセントレータで濃縮され得る。複合体は、+1〜+30℃で溶解形態で、またはT=0℃〜−78℃の凍結形態で保存され得る。さらに、複合体の溶液を凍結乾燥すること、および凍結乾燥物を+30〜−78℃で保存することが可能である。 本発明のさらなる実施形態は、上述の複合体、ならびに、好適である場合、薬学的に適合性の担体および/または助剤および/または希釈剤を含有する医薬品に関する。本発明に従う医薬品は、好ましくは、癌疾患、自己免疫疾患、急性または慢性の炎症性疾患、およびウイルスまたは微生物(例えば、細菌および/または真菌)によって引き起こされる疾患の処置のために使用され得る。 本発明のなおさらなる実施形態は、上述の複合体を含む診断キットに関する。本発明の診断キットは、好ましくは、上記で規定される疾患の検出のために、ならびに/あるいは身体における担体の分子および/またはそれらの分布の検出のために使用され得る。 以下の実施例は、本発明を、限定することなしに、より詳細に説明する。 実施例ジチオスレイトール(DTT)とのヒト血清アルブミン(HSA)の反応 還元剤でのHSAの処理のための方法は、以下の実施例によって、より正確に例示される:2.0gのヒト血清アルブミン(10mLの20%HSA溶液、Pharma Dessau)を、10mLの緩衝液A(0.004Mリン酸ナトリウム、0.15M NaCl、pH7.0)で希釈し、そして新たに調製したDDTの0.036×10-2M溶液100μL(5.55mgのDDTを緩衝液A100μLに溶解した)へ添加し、そして空気を排除するためにきつく密封した反応容器を、室温で16時間振盪した。次いで、アルブミン溶液を、ゲル濾過(5.0cm×25.0cmカラム、Sephadex(登録商標)G25;溶媒緩衝液0.004Mリン酸ナトリウム、0.15M NaCl、pH7.4)によって精製する。ゲル濾過後のタンパク質濃度を、280nmでの光度測定によって測定し(ε(HSA)280=35,700M-1cm-1、c[HSA]約3.1×10-4M)、そして導入したHS基の数を、Ellmann試薬を用いて412nmで測定した(ε412=13,600M-1cm-1、c[HS基]約3.07×10-4M)。このように処理したHSAにおいて、システイン基1モル当たり、従って0.99モルの遊離のシステインSH基が存在する。処理したHSAを、およそ1.0×10-3M(Centriprep−10(登録商標))へ濃縮し、そして、以下に記載される、本発明のチオール結合薬物とのカップリング反応のために直接使用する。 本発明に従う複合体A−DOXO−HYD−Cの調製 上記実施例に従ってDDTで処理したHSA、およびドキソルビシンのマレインイミドフェニル酢酸ヒドラゾン誘導体から構成される、HSA−ドキソルビシン複合体(A−DOXO−HYD−C)を、さらに、以下の様式で調製した。 DTTで処理した12mLのHSA試験部分(HSA1モル当たり0.99モルのスルフヒドリル含有率〉を、DMF中のDOXO−HYD(Mr 807.8)溶液0.6mL(0.6mLのDMFに12.5mgを溶解した)へ添加し、そして反応溶液を、密封し、18時間振盪した。生成物HSA−ドキソルビシン複合体を、Sephadex(登録商標)G−25Fカラム(カラム5.0cm×25cm)(保持容積85〜135mL)を使用して単離した。結合ドキソルビシンの量を、495nmでのドキソルビシンの吸光係数を用いて、測定した(ε495=10,650M-1cm-1、pH7.4で)。測定に従うと、HSAにおけるシステイン基1モル当たり0.97モルのドキソルビシンが、この実施例において、HSAへ結合されている。 方法:複合体の調製のためのFPLC:P−500ポンプ、LCC 501コントローラー(Pharmacia)およびLKB 2151 UVモニター。複合体のタンパク質濃度を、光度測定的に、そしてまたBCAタンパク質アッセイ(Pierce、U.S.A.)によって測定した。 A−DOXO−HYD−C複合体の純度を、分析カラム(Bio−Sil SEC 250(300mm×7.8mm、Bio−RAD)(移動相、一般に、0.15M NaCl、0.01M NaH2PO4、5%CH3CN、pH7.0)を用いて、λ=495nmで確認した。A−DOXO−HYD−Cについておよび市販の天然アルブミン(Immuno GmbH)のHPLCクロマトグラムを、図1A(A−DOXO−HYD−C)および図1B(天然アルブミン)に示す。A−DOXO−HYD−Cが市販の天然アルブミンに匹敵する優れた純度を示すことが、明らかに理解され得る。 DTTで処理したHSAおよびMMP 9で切断され得るドキソルビシン−マレインイミド−ペプチド誘導体を含む、本発明に従う複合体の調製 ドキソルビシン−マレインイミド−ペプチド誘導体(2)を、以下の反応式に従って調製した: ここで、マレインイミドグリシン1(Mr 848、Bachem AG, Switzerandによって固相合成によって調製される)を用いて誘導体化されたオクタペプチドGln−Gly−Ala−Ile−Gly−Leu−Pro−Glyを、以下の方法に従って、ドキソルビシンと反応させた: 3mLのDMF中の17.1mgのドキソルビシンの僅かに濁った溶液へ、500μLのDMFに溶解させた25mgの1(トリフルオロ酢酸塩として)、200μLのDMFに溶解させた33.5mgのO−ベンゾトリアゾリル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HPTU)、100μLのDMFに溶解させた11.9mgのヒドロキシベンゾトリアゾール水和物、および16.2μLのN−メチルモルホリンを添加し、次いで、装入物を、18時間、室温で、暗所中、激しく撹拌する。DMFを高真空下で除去し、そして固体を20mLのメタノールに溶解し、濾過し、そして真空で1mLに濃縮した。シリカゲル(アセテート/メタノール 2/1)での精製後、5mgの2を得た。 DTTで処理した3.0mLのHSA試験部分(HSA1分子当たり0.95のスルフィドリル含有率、HS基含量1000μM)を、DMF中の2(Mr 1374)の溶液(250μLのDMFに5.1mg溶解した)へ添加し、そして反応溶液を密封し、30分間振盪した。生成物アルブミン−ドキソルビシン複合体を、Sephacryl(登録商標)HR100カラム(2.0cm×20cm)を使用して単離した。この様式で、以下の構造のアルブミン複合体(以降、HSA−Cys34−2と呼ぶ)を、単離した(消耗ファクター(Beladungsfaktor)約0.9): ペプチド配列Gln−Gly−Ala−Ile−Gly−Leu−Pro−Glyは、マトリックスメタロプロテアーゼMMP 9によって認識され、そしてイソロイシンとグリシンとの間で切断される。これは、以下の実験によって示された:HSA−Cys34−2の100μM溶液200μLを、30分間、37°で、トリプシン/アプロチニン活性化MMP 9(2mU、Calbiochem由来, ドイツ)と共にインキュベートした。MMP 9を用いての切断によるDOXO−Gln−Gly−Ala−Ileの遊離を、HPLCゲルクロマトグラフィー(Biorad製のBiosil 250 SECカラム、λ=495nmで検出)によって、インキュベーション前(t=0、図2Aを比較せよ)および活性化MMP 9と共に30分のインキュベーション時間後(t=30、図2Bと比較せよ)で、確認した。 生物学的研究 本発明に従う複合体のインビボ有効性についての例として、HSA−ドキソルビシン複合体A−DOXO−HYD−Cの生物学的データを示す。 「RENCA」(腎細胞癌腫)モデルにおいて、ドキソルビシンおよび本発明複合体A−DOXO−HYD−Cを、おおよそ等毒性用量(equitoxic dose)(およそ100万の腎癌腫細胞の左腎臓への注射後10日後、経静脈治療)での抗腫瘍作用に関して、互いに比較した。 動物:Balb/c マウス、雌性; 腫瘍:RENCA、腎細胞癌腫; 治療:日(d)10、14、18、21静脈内(i.v.); 試験の最後:d25。 これらの研究の結果を、表2に要約する。 用量は、存在するドキソルビシンの量に比例する。ドキソルビシンおよびA−DOXO−HYD−Cの投薬量は、およそ等毒性である(表2の体重の減少を参照のこと)。 この実験の結果を、さらに、図3において、腎臓および腎腫瘍の重量および体積に関して(図3A)、ならびに肺重量および肺転移の数(図3B)に関して図示する。A−DOXO−HYD−Cは、非常に良好な抗腫瘍効果を示し、そして全ての動物において完全な緩解をもたらす。肉眼で目に見える肺転移が、たった1匹の動物において見ることができた(図3B)。ドキソルビシンで処理したグループにおいて、はっきりと目に見える腎腫瘍が、全ての動物において観察された(図3A);つまり、対照的に、完全な緩解は最適用量のドキソルビシンでもたらされなかった(体重減少−21%(d1〜25);1匹の動物が死んだ)。さらに、肺転移の数は、遊離のドキソルビシンで処理したマウスにおいて、マウス1匹当たり平均で数100転移であった(図3B)。 図1Aは、本発明に従う複合体(A−DOXO−HYD−C)のHPLCクロマトグラムである。プロットは、保持時間(分)に対する495nmでの吸収を示す。 図1Bは、市販の天然アルブミン(Immuno GmbH)の対応するHPLCクロマトグラムである。 図2は、マトリックスメタロプロテアーゼMMP 9によって切断され得る、本発明の複合体(HSA−Cys34−2)のHPLCクロマトグラム(ゲルクロマトグラフィー、Biosil 250 SECカラム、Biorad)を示す。495nmでの吸収をまた、保持時間(分)に対してプロットする。(A)MMP 9でのインキュベーション前(t=0)での複合体HSA−Cys34−2のクロマトグラム。(B)30分間のMMP 9でのインキュベーション後(t=30分)での複合体HSA−Cys34−2のクロマトグラム。 図3は、腎癌腫が誘発されそして記載の処置に供されたマウスの腎臓および腎腫瘍の重量および体積(A)ならびに肺重量および肺転移の数(B)の図表示を示す(コントロール:処置せず; アルブミンコントロール:天然アルブミン; Doxo:ドキソルビシン; A−DOXO−HYD−C;本発明の複合体)。比較のための、腫瘍細胞を注入されないマウスのデータも示される(腫瘍なし)。担体−薬物複合体、ならびに、好適である場合、薬学的に適合性の担体および/または助剤および/または希釈剤を含有する医薬品であって、(i)前記担体が天然または組換えアルブミンであり、(ii)前記薬物が薬学的および/または診断学的活性物質であり、(iii)前記薬物がスペーサー分子およびチオール結合基を介して該アルブミンのシステイン34に結合されており、(iv)前記スペーサー分子、および/または前記薬学的および/または診断学的活性物質と該スペーサー分子との間の連結、および/または前記チオール結合基と該スペーサー分子との間の連結が、加水分解的におよび/またはpH依存形式でおよび/または酵素的に切断可能であり、および(v)アルブミンのシステイン34基1モル当たり0.7モルを超える薬物がシステイン34に結合されている、医薬品。 前記スペーサー分子および/または前記連結が、少なくとも1つのペプチド結合を含む、請求項1に記載の医薬品。 前記ペプチド結合が、プロテアーゼの少なくとも1つの切断配列を含むペプチド配列内にある、請求項2に記載の医薬品。 前記スペーサー分子および/または前記連結が、少なくとも1つの酸不安定性結合を含む、請求項1〜3の1項に記載の医薬品。 前記薬学的活性物質が、細胞増殖抑制剤、サイトカイン、免疫抑制剤、抗リウマチ剤、抗炎症剤、抗生物質、鎮痛剤、ウイルス増殖抑制剤または抗真菌剤である、請求項1〜4の1項に記載の医薬品。 前記細胞増殖抑制剤が、アントラサイクリン類、N−ニトロソウレア類、アルキル化剤、プリンアンタゴニストまたはピリミジンアンタゴニスト、葉酸アンタゴニスト、タキサン類(taxanes)、カンプトテシン類、ポドフィロトキシン誘導体、ビンカアルカロイド、カリケアマイシン、メイタンシノイド(maytansinoids)またはcis−配置白金(II)錯体の群から選択される、請求項5に記載の医薬品。 前記診断学的活性物質が、1または複数の放射性核種、1または複数の放射性核種含有リガンド、1または複数の陽電子放射体、1または複数のNMRコントラスト媒体、1または複数の蛍光化合物、あるいは1または複数の近IR領域のコントラスト媒体を含有する、請求項1〜6の1項に記載の医薬品。 前記チオール結合基が、適切である場合に置換されている、マレインイミド基、ハロアセトアミド基、ハロアセテート基、ピリジルジチオ基、ビニルカルボニル基、アジリジン基、ジスルフィド基またはアセチレン基を含む、請求項1〜7の1項に記載の医薬品。 前記スペーサー分子が、置換または非置換の、分枝鎖または直鎖の、1〜12の炭素原子を有する脂肪族アルキル基、および/または少なくとも1つの置換または非置換のアリール基、および/または3〜12の炭素原子を有する脂肪族炭素環を含む、請求項1〜8の1項に記載の医薬品。 以下(i)アルブミンのシステイン34基1モル当たり、0.7モルを超えるシステイン34SH基が存在するように、還元剤で該アルブミンを処理すること(ここで、該処理は、5.0〜8.0のpH範囲で、還元剤対アルブミンの比が0.5:1〜10:1で、および反応時間が1時間〜96時間で行われる)、ならびに(ii)前記チオール結合基を介して、該アルブミンの該システイン34SH基へ、前記薬物をカップリングすること、を含む、請求項1〜9の1項に記載の医薬品中に存在する複合体の調製方法。 前記還元剤が、ジチオスレイトール、ジチオエリスリトールまたはメルカプトエタノールである、請求項10に記載の方法。 前記調製される複合体が95%を超える純度を示す、請求項10または11に記載の方法。 癌疾患、自己免疫疾患、急性または慢性の炎症性疾患ならびにウイルスおよび/または微生物によって引き起こされる疾患の処置のための、請求項1〜9の1項に記載の医薬品。 請求項1〜9の1項に記載の医薬品を含む診断キット。 癌疾患、自己免疫疾患、急性または慢性の炎症性疾患ならびにウイルスおよび/または微生物によって引き起こされる疾患の、ならびに/あるいは身体における前記アルブミン分子および/またはその分布の検出のための、請求項14に記載のキット。