タイトル: | 特許公報(B2)_パッケージング細胞 |
出願番号: | 2001500738 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C12N 5/10,C12N 7/00,C12N 15/09 |
北村 俊雄 森田 純代 JP 3904451 特許公報(B2) 20070119 2001500738 20000601 パッケージング細胞 北村 俊雄 599002744 中外製薬株式会社 000003311 清水 初志 100102978 北村 俊雄 森田 純代 JP 1999154364 19990601 JP 2000017831 20000121 20070411 C12N 5/10 20060101AFI20070322BHJP C12N 7/00 20060101ALI20070322BHJP C12N 15/09 20060101ALI20070322BHJP JPC12N5/00 BC12N7/00C12N15/00 A C12N 5/10 C12N 7/00 C12N 15/00 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) PubMed 国際公開第98/002529(WO,A1) Hum.Gene Ther.,Vol.10,No.2(1999.Jan.)p.189-200 新遺伝子工学ハンドブック(1998)p.245-249 Int.J.Hematol.,Vol.67,No.4(1998)p.351-359 Biochem.Biophys.Res.Commun.,Vol.252,No.2(1998)p.368-372 10 FERM BP-6737 FERM BP-6977 JP2000003557 20000601 WO2000073423 20001207 18 20041208 森井 隆信 技術分野本発明は、高力価ウイルスを生産する能力を安定に保持するウイルス生産細胞(パッケージング細胞)およびウイルス生産のための該細胞の利用に関する。背景技術レトロウイルスベクターは、宿主細胞に対し高い効率で、しかも安定に遺伝子を導入できることから、細胞への遺伝子導入法として医療分野を含む広い分野で用いられている。レトロウイルスベクターの作製は、レトロウイルスの遺伝子構造、生活環のメカニズムに基づき開発されてきた。その基本原理は、パッケージングシグナルは有するが、gag、pol、envの各構造遺伝子を欠如するレトロウイルスベクターに目的の遺伝子を導入し、当該レトロウイルスベクターを、パッケージングシグナルを欠くが、gag、pol、envの各構造遺伝子を有するパッケージング細胞に導入し、レトロウイルスベクターRNAを含むウイルス粒子を形成(パッケージング)させ、その培養上清にレトロウイルスを産生するものである(Kitamura T.,International Journal of Hematology,67,351−359,1998)。この様にして産生されたレトロウイルスは、目的とする遺伝子を効率よく細胞に導入することができる。一方、gag、pol、envの各構造遺伝子を欠如する為、パッケージング細胞の中でのみ複製でき、通常の細胞においては複製できない。従って、作製した感染細胞から再度レトロウイルスが産化されることがない。このような特徴を有するパッケージング細胞の作製は、国際公開番号WO90/02806、WO94/19478、WO96/34098等で示されているが、感染効率、長期安定性の点で満足できるものではなかった。また、ウイルスの力価を高めるために大量のウイルス構造タンパク質をパッケージング細胞中で発現させる必要がある。大量のウイルス構造タンパク質を発現し、継代によっても生産されるウイルスの力価の低下が起こりにくいパッケージング細胞が求められていた。発明の開示本発明は、高力価の感染性ウイルスを産生する能力を保持するウイルス産生細胞を提供することを課題とする。該細胞の好ましい態様において、長期安定性や安全性が高められたウイルス産生細胞を提供する。また、本発明は、該ウイルス産生細胞を用いる、高力価の感染性ウイルスの生産方法を提供することをも課題としている。本発明者は、上記課題を解決するために、まず、293T細胞において、高い活性を有するプロモーターの探索を行った。本発明者は、SV40プロモーター、SRαプロモーター、EF1αプロモーター、TKプロモーター、MuLV LTR、CMV LTRの転写活性の強さを調べたところ、EF1αプロモーターが、他のプロモーターに比較して顕著に高い活性を示すことを見出した。そこで、次に、EF1αプロモーターを用いた高性能パッケージング細胞の樹立を試みた。具体的には、本発明者は、パッケージング細胞において、ウイルス構造タンパク質をコードする遺伝子の発現効率を高めるために、ウイルス構造タンパク質をコードするgag−polおよびenv遺伝子をEF1αの制御下に組み込んだ。さらに、転写されたmRNAからのウイルス構造タンパク質の翻訳効率を高めるため、Kozak配列(GCCACC)を該遺伝子の翻訳開始コドンの上流に配した。さらに、該遺伝子の下流にIRES配列(internal ribosomal entry site:内部リボソーム侵入部位)を介して選択マーカー耐性遺伝子をつなげることで、1本のmRNAからIRES前後にある遺伝子が翻訳され、構築物が導入され発現している細胞を選択マーカーにより確実に選択することを可能にした。すなわち、選択マーカー耐性遺伝子を有する構築物と、gag−polおよびenv遺伝子を有する構築物を別々に導入して作製されていた従来のパッケージング細胞よりも、長期安定性に優れた細胞を作製した。また、構築物上に、ウイルス構造タンパク質のコード領域のみをPCRによって増幅した遺伝子としてgag−polおよびenv遺伝子を挿入することにより、パッケージング細胞から組み換えによる野生型ウイルスが産生される可能性をなくし、安全性を向上させた。本発明者は、このようにして作製されたパッケージング細胞の性能につき検討を行なった結果、該パッケージング細胞は、高力価のレトロウイルスを産生し、4ヶ月の長期継代後でも、それ以前と同等の力価のレトロウイルスを産生する能力を保持していた。本発明のパッケージング細胞は生体内への遺伝子導入のためのベクターの作製に有用であり、特に遺伝子治療などに用いられる高力価レトロウイルスベクターの製造等に好適に利用しうる。即ち、本発明は、長期間継代しても高力価の感染性ウイルスを産生する能力を保持し、安全性にも優れたウイルス産生細胞、および該ウイルス産生細胞を用いる高力価の感染性ウイルスの産生方法に関し、より具体的には、(1) レトロウイルスの産生に用いられる細胞であって、EF1αプロモーターの下流にレトロウイルスの構造タンパク質をコードするDNAが機能的に結合した発現構築物を有する細胞、(2) レトロウイルスの構造タンパク質をコードするDNAが、gag、pol、envからなる群より選択される1または複数のタンパク質をコードするDNAである、(1)に記載の細胞、(3) gag、pol、envのすべてを発現する、(2)に記載の細胞、(4) gagおよびpolを発現する発現構築物とenvを発現する発現構築物とを有する、(3)に記載の細胞、(5) envがエコトロピックレトロウイルス由来のenvまたはアンフォトロピックレトロウイルス由来のenvである、(3)または(4)に記載の細胞、(6) 発現構築物中のレトロウイルスの構造タンパク質をコードするDNAの翻訳開始コドンの上流に、Kozakのコンセンサス配列が配置されている、(1)から(5)のいずれかに記載の細胞、(7) レトロウイルスの構造タンパク質をコードするDNAがIRES配列を介して選択マーカーをコードするDNAと結合している、(1)から(6)のいずれかに記載の細胞、(8) レトロウイルスの構造タンパク質をコードするDNAが、該タンパク質のコード領域以外のウイルスゲノム由来DNAを実質的に有さない、(1)から(7)のいずれかに記載の細胞、(9) 細胞が293細胞由来である、(1)から(8)のいずれかに記載の細胞、(10) 細胞が293T細胞由来である、(9)に記載の細胞、(11) 寄託番号FERM BP−6737または寄託番号FERM BP−6977で特定される細胞、(12) (1)から(11)のいずれかに記載の細胞に、少なくとも1つの構造タンパク質をコードする遺伝子を欠損しているレトロウイルスベクターDNAを導入する工程を含む、レトロウイルスの産生方法、(13) レトロウイルスベクターDNAが、gag、pol、およびenvをコードする遺伝子をすべて欠損している、(12)に記載の方法、(14) レトロウイルスベクターDNAに外来遺伝子が含まれている、(12)または(13)に記載の方法、(15) (12)から(14)のいずれかに記載の方法により生産されたレトロウイルス、を提供するものである。本発明のパッケージング細胞は、レトロウイルスの構造タンパク質を発現させるために、EF1αプロモーターを用いることを特徴としている。本発明者等は、パッケージング細胞内で高い活性を示すプロモーターの探索を行なった結果、活性を検出したプロモーターの中で特にEF1αプロモーターが強力な活性を有することを見出した。本発明のパッケージング細胞は、EF1αプロモーターを用いることにより、レトロウイルスの構造タンパク質を高発現させ、力価の高いウイルス粒子の生産を行なうことを可能としている。パッケージング細胞において、EF1αプロモーターの制御下でレトロウイルスの構造タンパク質をコードするDNAを発現させるためには、EF1αプロモーターの下流にレトロウイルスの構造タンパク質をコードするDNAが機能的に結合した発現構築物を作製し、これを細胞に導入すればよい。ここで「機能的に結合」とは、EF1αプロモーターがその活性化によって下流のレトロウイルスの構造タンパク質をコードするDNAの発現を保証するように該DNAに結合していることを指す。細胞において発現されるレトロウイルスの構造タンパク質としては、gag、pol、およびenvが挙げられる。論理的にはパッケージング細胞においてこれらすべてのタンパク質を発現させる必要はなく、レトロウイルスベクターDNAにこのうちのいくつかのタンパク質をコードする遺伝子をのせておくことも可能である。例えば、パッケージング細胞にgag、polを発現させて、env遺伝子はレトロウイルスベクターDNAにのせておくようなことも可能であるが、この場合にはenvの発現量が必要量まで達しない可能性がある。従って、パッケージング細胞においては、gag,pol,envの全てが発現していることが望ましい。発現構築物としては、gagおよびpolを発現する構築物とenvを発現する構築物を分けて細胞に導入することが好ましい。これにより、レトロウイルスベクターとパッケージング細胞内に存在するpol,gag,envとの間で組換えが生じて、自己複製可能なウイルスが産生される可能性を低下させることができる。このことは、例えば、該細胞により生産されるウイルスを遺伝子治療に用いる際の安全性の点から重要である。gagおよびpolについては同じ構築物にgag−polとしてコードされていることが好ましい。仮に別々の発現構築物とした場合、polのみが多量に発現してしまうと細胞に対して毒性が生じることが知られており、また、polとgagの発現比率が高力価ウイルスの産生に重要であるからである。envとしては、所望によりエコトロピックレトロウイルス由来のenv(ecoenvと称する)やアンフォトロピックレトロウイルス由来のenv(amphoenvと称する)を用いてパッケージング細胞を作製することができる。ecoenvを有するパッケージング細胞からはエコトロピック(ecotropic)レトロウイルスが産生される。また、amphoenvを有するパッケージング細胞からは、アンフォトロピック(amphotropic)レトロウイルスが産生される。エコトロピックレトロウイルスは、ラットおよびマウスの細胞表面にのみに存在するエコトロピック受容体に結合する糖タンパク質を有することから、ラットあるいはマウス細胞にのみ感染する。一方、アンフォトロピックレトロウイルスは、より広範な種に対して感染可能であり、例えば、ラット、マウス、ヒト、ニワトリ、イヌ、ネコ等に感染できる。例えば、遺伝子治療に用いるレトロウイルスとしては、ヒトに感染可能なamphoenvが用いられる。また、実験室で新規遺伝子のクローニング等に用いる場合には、ヒトに感染できないecoenvを有するパッケージング細胞から作製されたレトロウイルスを用いることが安全である。また、ラウス肉腫ウイルス(RSV)由来のenvなど種々のレトロウイルスenvが使用されうる(Landau N.R.and Littman D.R.(1992)J.Virology 5110−5113))。さらに、レトロウイルス以外のエンベロープタンパク質を使用してもよい。例えば、水疱性口内炎ウイルス(VSV)由来のG蛋白質(VSV−G)を用いることができる(Ory D.S.et al.(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:11400−11406)。本発明のパッケージング細胞においては、好ましい態様として、レトロウイルスの構造タンパク質を発現させるための発現構築物から転写されたこれらタンパク質をコードするmRNAの翻訳効率を高めるため、該発現構築物中のレトロウイルスの構造タンパク質遺伝子の翻訳開始コドン(ATG)の上流にKozak配列のコンセンサス配列(GCCACC)を配することができる(Kozakの法則とは、翻訳開始点ATGの前の配列にGCCACCが存在する確率が高いことを明らかにしたものである)。本発明のパッケージング細胞の他の好ましい態様として、ウイルス構造タンパク質および選択マーカーをコードするDNAがIRESを介して機能的に結合し、ウイルス構造タンパク質と選択マーカーとが同時に発現する発現構築物を有するパッケージング細胞が提供される。該発現構築物においては、EF1α活性化により転写された単一分子内にウイルス構造タンパク質および選択マーカーがコードされており、該RNA分子からは、一方のタンパク質が翻訳されるのみならず、IRESの働きにより選択マーカーも翻訳される。このため該発現構築物が導入されレトロウイルス構造タンパク質を発現している細胞を、該選択マーカーにより確実に選択することが可能となった。従来は、選択マーカー耐性遺伝子を有する発現構築物と、gag−polおよびenv遺伝子を有する発現構築物を別々に細胞に導入してパッケージング細胞を作製していたため、選択マーカー耐性遺伝子を有する細胞とウイルス構造蛋白質遺伝子を有する細胞とが必ずしも一致せず、該細胞の安定性に問題が生じていたが、IRES配列の利用により長期安定性に優れたパッケージング細胞の調製が可能となった。選択マーカーとしては、実施例に記載したブラスチシジンやピューロマイシンの他に、例えばハイグロマイシン、ジフテリアトキシン、ネオマイシンなどを使うことができる。しかしながら、ブラスチシジンやピューロマイシンは、他の薬剤に比べて即効性で細胞の選択に必要な時間が短くてすむという点で好ましい。ジフテリアトキシンおよびハイグロマイシンの耐性遺伝子はそれぞれ「Bishai,W.R.et al.,J.Bacteriol.169:1554−1563(1987)」および「ハイグロマイシン:Yin,D.X.et al.,Cancer Res.55:4922−4928(1995)」に記載されている。本発明のパッケージング細胞のさらなる好ましい態様として、EF1α制御下のレトロウイルスの構造タンパク質をコードするDNAが、該タンパク質のコード領域以外のDNAを実質的に有さない発現構築物を有する細胞が提供される。本発明のパッケージング細胞においては、構造タンパク質の発現に必須ではないウイルスゲノム由来配列はできる限り除去されていることが好ましい。これにより、上記発現構築物を有するパッケージング細胞にレトロウイルスベクターDNAを導入した際に、該発現構築物中のウイルスゲノム由来DNAとレトロウイルスDNAの間の組換えの可能性を低下させ、複製能を有するレトロウイルス(RCR)が出現するリスクを最小限に抑制することができる。従って、これによりパッケージング細胞から産生されるウイルス粒子の安全性を向上させることができる。このようなレトロウイルスの構造タンパク質のコード領域以外のDNAを実質的に有さないDNAは、例えば、実施例に記載されたようにウイルスゲノムDNAを鋳型に、ウイルス構造タンパク質のコード領域に対応するプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応により得ることができる。ここでコード領域以外のDNAを「実質的に有さない」とは、ウイルスゲノム由来のタンパク質コード領域以外のDNAが、30塩基以下、好ましくは10塩基以下、さらに好ましくは5塩基以下、最も好ましくは0塩基であることをいう。パッケージング細胞を作成するための宿主細胞としては、トランスフェクションによる遺伝子導入効率が高い細胞であれば制限はなく、例えば、NIH3T3(マウス繊維芽細胞)や293(ヒト胎児腎細胞)(Graham,F.L.,J.Gen.Virol.,36,59−72(1977))などを用いることができる。発現構築物の細胞への導入方法としては、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、あるいはリポフェクタミン(lipofectamine,GIBCO BRL)、フュージン(Fugene,Bohringer Mannheim)等による一般的な遺伝子導入方法を用いることができる。選択方法としては薬剤選択を用いることができ、薬剤選択に用いる薬剤としては薬剤耐性遺伝子が明らかになっているものであれは制限はなく、例えば、ブラスチシジン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、ジフテリアトキシン、ネオマイシンなどを用いることができる。得られたパッケージング細胞は、限界希釈し、各クローンにレトロウイルスベクターDNAを導入し、産生されるウイルスの力価を測定して、最も高い力価のウイルスを産生する細胞を選択しクローン化することが好ましい。パッケージング細胞に導入されるレトロウイルスベクターDNAとしては特に制限はない。パッケージング細胞が293T細胞のようにSV40ラージT抗原を発現する細胞に由来する場合は、SV40の複製開始点と結合された該ベクターDNAを用いれば、パッケージング細胞内でのコピー数を増加させることができ、力価の上昇を期待することができる。レトロウイルスベクターDNAの細胞への導入は、上記ウイルス構造タンパク質発現構築物の細胞への導入と同様にして行うことができる。レトロウイルスベクターを導入後、パッケージング細胞の培養上清中に放出されるレトロウイルス粒子を回収することにより、目的のレトロウイルスベクターを調製することができる。本発明のパッケージング細胞により生産されたレトロウイルスベクターは、広範囲の研究・医療分野に有用に用いられる。例えば、遺伝子治療やモデル動物の作製において目的の遺伝子をex vivoまたはin vivoで発現させるためのベクターとして用いられる。また、抗原タンパク質や免疫機能を高めるタンパク質を発現させるためのワクチンとしても有用である。また、遺伝子機能を解析するためのin vitro遺伝子導入ベクターとしても有用である。また、該ベクターを、目的のタンパク質を製造するために用いることもできる。また、cDNA発現ライブラリーのように、不特定のcDNA分子種を発現するライブラリーの作製用ベクターとしても有用である。発明を実施するための最良の形態以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。[実施例1] FACS−GAL解析293細胞、293T細胞においてプロモーター活性を比較し、最も高い活性を示すプロモーターを用いるため、FACS−GAL解析(Steven N.F.,et al.,Cytometry,12,291−301,1991)を行った。これはそれぞれのプロモーターの下流にlacZ遺伝子をつなぎ、細胞内にトランスフェクションしてその細胞内でのlacZの発現分布を調べるものである。トランスフェクションする16〜24時間前に293細胞、293T細胞を6cm組織/培養皿に2×106まいた。それぞれのプロモーターの下流にlacZをつないだプラスミド3μg、Fugene(Boehringer Mannheim社)9μlを200μlの胎児ウシ血清を含まないDMEM培地に混合し、5〜10分おいた。その後、293細胞、293T細胞を播いた6cm皿にゆっくり加えた。24時間後細胞をはがし、50μlのPBSに懸濁した後、37℃で5分間置いた。FDG(フルオレセイン ジ−b−D−ガラクトピラノシド,モレキュラープローブ,Eugene,OR,カタログ番号F1179:2mM in 98%蒸留水)をあらかじめ37℃で温めておき、50μlを加えた。37℃で1分間インキュベートしたあと、PBSを1ml加え、氷上で2時間おく。2時間後反応を止めるためPETG(フェニルエチル−b−D−チオガラクトシド,Sigma,カタログ番号P4902)を20μl加え、FACSにて細胞内のlacZの発現分布を調べた。その結果、293T細胞内において、EF1αのプロモーター活性が一番高かった。レトロウイルスのプロモーターであるLTRと比較した場合、EF1αのプロモーター活性は約100倍高く、その他のプロモーターに対しても数十倍高い活性を示した。[実施例2] 選択マーカー遺伝子の増幅選択マーカーとしてブラスチシジン(blasticidin)、ピューロマイシン(puromycin)を用いるため、それぞれの抵抗性遺伝子(bsr:Kamakura.T.et al.,Agric.Biol.Chem.,51,3165−3168,1987.puror:Buchholz.F.et al.,Nuclic Acids Res.,24,3118−3119,1996)を鋳型として、以下のPCRの条件で、反応を行った。反応組成は鋳型DNA 10ng、10×KOD バッファー5μl、2mM dNTP 5μl、10μMプライマーそれぞれ2.5μl(プライマーの塩基配列は以下に示す)、25mM MgCl2 2μl、2.5U/ml KOD DNA ポリメラーゼ(TOYOBO社)1μlである。プライマーは、ブラスチシジン抵抗性遺伝子(bsr)については5’−AAAACATTTAACATTTCTCAACAAG−3’(配列番号:1)および5’−ACGCGTCGACTTAATTTCGGGTATATTTGAGTG−3’(配列番号:2)を、また、ピューロマイシン抵抗性遺伝子(puror)については5’−ACCGAGTACAAGCCCACG−3’(配列番号:3)および5’−ACGCAGATCTTCAGGCACCGGGCTTG−3’(配列番号:4)を用いた。温度条件は94℃30秒、94℃30秒・54℃30秒・72℃2分を25サイクル、72℃10分である。ブラスチシジン抵抗性遺伝子(bsr)はSalIで、ピューロマイシン抵抗性遺伝子(puror)はBglIIで制限酵素処理した後、電気泳動し、ゲルからの抽出を行った。抽出にはQiaexII(QIAGEN社)を用いた。[実施例3] pMX−IRES−EGFPの調製IRES(internal ribosomal entry site:内部リボソーム侵入部位)配列とは、ウイルスのmRNAの5’非翻訳領域に存在する配列であり、特徴的な二次構造をとると考えられている。本配列をリボソームが認識して翻訳が開始し、宿主の蛋白翻訳が抑えられ、ウイルス蛋白の翻訳を優位にすることができることになる。そのIRESの後ろに選択マーカー抵抗性遺伝子をつなげるため、pMX−IRES−EGFP(Nosaka,T.et al.,EMBO J.,18,4754−4765,1999)をNcoIで制限酵素処理した。その後エタノール沈殿を行い、クレノウ反応により平滑末端化した。フェノール/クロロホルム処理のあと、エタノール沈殿を行い、bsrを入れる場合にはSalI、purorを入れる場合にはBglIIで制限酵素処理し、それぞれライゲーションした。このようにしてIRESの後ろに選択マーカー抵抗性遺伝子が位置することになる。pMX−IRES−bsrはNotI(TAKARA社)とSalIで、pMX−IRES−purorはNotIとBglIIで制限酵素処理し、IRES−bsr、IRES−purorの断片を切り出した。[実施例4] gag−pol、エコトロピックenvの増幅gag−pol、エコトロピックenvのPCRを以下の条件で行った。反応組成は鋳型DNA(Shinnick.,et.al.Nature,293,543,1981)10ng、10×LA Taqバッファー5μl、2mM dNTP 8μl、10μMプライマーそれぞれ1μl(塩基配列は以下に示す)、5U/ml LA Taq(TAKARA社)0.5μlである。プライマーは、gag−polの増幅は5’−CGAATTCGCCGCCACCATGGGCCAGACTGTTACCACTCCCTTAA−3’(配列番号:5)および5’−TACGCCGGCGCTCTGAGCATCAGAAGAA−3’(配列番号:6)、また、エコトロピックenv増幅は5’−CGAATTCGCCGCCACCATGGCGCGTTCAACGCTCTCAAAA−3’(配列番号:7)および5’−TACGCCGGCGCTATGGCTCGTACTCTAT−3’(配列番号:8)を用いた。温度条件はgag−polの場合、98℃2分、98℃20秒・68℃3分を20サイクル、68℃8分である。エコトロピックenvの場合、98℃2分、98℃20秒・68℃2分を30サイクル、68℃7分である。PCR産物を電気泳動で流したのち、QiaexII(QIAGEN社)によりゲルからDNA抽出を行った。これをOriginal TA cloning kit(Invitrogen社)によりTAベクターにサブクローニングし、EcoRI、NotI(TAKARA社)処理した。[実施例5] gag−pol、エコトロピックenv発現ベクターの構築EF1αのコントロール下でgag−pol−IRES−bsr、env−IRES−purorを発現させるために、以下のようにpCHO(Hirata,Y.et al.,FEBS Letter,356,244−248(1994);Okayama Y.et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,838−45(1996);pCHOはpEF−BOS(Mizushima.S.,and Nagata.S.,Nucleic Acids Res.,18,5332,1990)に由来する)に挿入した。[pCHO(gag−pol−IRES−bsr)]pCHOをBamHI(TAKARA)により制限酵素処理した後、クレノウ反応により平滑末端化した。そこへSalIリンカーd(CGGTCGACCG)(Stratagene社)(配列番号:9)をつけた後、EcoRI、SalI(TAKARA)で制限酵素処理した。ここへ実施例2,3で作製したgag−pol、IRES−bsr断片をいれ、pCHO(gag−pol−IRES−bsr)を作製した。[pCHO(ecoenv−IRES−puro)]pCHOをEcoRI、BamHI(TAKARA社)で制限酵素処理し、ここへ実施例2,3で作製したエコトロピックenv、IRES−purorを挿入し、pCHO(ecoenv−IRES−puro)を作製した。[実施例6] アンフォトロピックenv発現ベクターの構築エコトロピックenvは同種由来の細胞にのみ感染可能であるのに対し、アンフォトロピックenvは幅広い細胞に感染可能である。このアンフォトロピックenvを用いて、実施例4および5と同様にenv−IRES−purorの発現ベクターの構築を行った。反応組成はアンフォトロピックenv遺伝子(4070A)(Ott,D.et.al.,J.Virol.64.757−766.,1990)の挿入されているプラスミド10ng、10×KODバッファー5μl、2mM dNTP 5μl、10μMプライマー(塩基配列は以下に示す)それぞれ2.5μl、25mM MgCl2 2μl、2.5U/ml KOD DNAポリメラーゼ(TOYOBO)1μlである。プライマーは、5’−CGAATTCGCCGCCACCATGGCGCGTTCAACGCTCTCAAAA−3’(配列番号:10)および5’−ATGCGGCCGCTCATGGCTCGTACTCTAT−3’(配列番号:11)を用いた。温度条件は98℃3分、98℃15秒・65℃2秒・72℃30秒を25サイクル、72℃10分である。実施例5で作製したpCHO(ecoenv−IRES−puro)をEcoRI、NotIで制限酵素処理し、クレノウ処理によって、平滑末端化した。ここへ上記アンフォトロピックenvをライゲーションし、pCHO(amphoenv−IRES−puro)を作製した。[実施例7] パッケージング細胞の樹立ヒト中腎由来細胞293T細胞(DuBridge,R.B.,et.al.,Mol.Cell.Biol.7,379−387.1987)に、作製したコンストラクトをトランスフェクションした。トランスフェクションする16〜24時間前に293T細胞を6cm組織/培養皿に2×106まいた。pCHO(gag−pol−IRES−bsr)3μg、Fugene(Boehringer Mannheim社)9μlを200μlのウシ胎児血清を含まないDMEM培地に混合し、5〜10分静置した。その後、293T細胞をまいた6cm dishにゆっくり加えた。48時間後細胞をはがし、10cm皿にまき、10%ウシ胎児血清を含むDMEM培地(ブラスチシジン8μg/ml)を加えた。約10日後、pCHO(ecoenv−IRES−puro)、またはpCHO(amphoenv−IRES−puro)それぞれを同様にトランスフェクションし、ピューロマイシン(0.8μg/mlおよびブラスチシジン(8μg/ml)の両方が入った培地で培養した。細胞が増殖してきたところで限界希釈し、単一のクローンにすることで目的とするパッケージング細胞を樹立した。ecoenv発現ベクターが導入された当該パッケージング細胞を「Platinum−E細胞(PLAT−E細胞)」と名付けた。該細胞は、「Pt−E」として下記の通り寄託機関に寄託した。(イ)寄託機関の名称・あて名名称:通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵便番号305−8566)(ロ)寄託日(原寄託日) 平成11年5月31日(ハ)寄託番号 生命研条寄第6737号(FERM BP−6737)一方、amphoenv発現ベクターが導入された当該パッケージング細胞を「Platinum−A細胞(PLAT−A細胞)」と名付けた。該細胞は、「Plat−A」として下記の通り寄託機関に寄託した。(イ)寄託機関の名称・あて名名称:通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵便番号305−8566)(ロ)寄託日(原寄託日) 平成11年12月22日(ハ)寄託番号 生命研条寄第6977号(FERM BP−6977)[実施例8] レトロウイルスの産生パッケージング細胞により得られたウイルス液の感染効率を調べるため、以下の方法で感染実験を行った。トランスフェクションする16〜24時間前に、パッケージング細胞(ecoenv導入PLAT−E細胞)を6cm組織/培養皿に2×106まいた。MoLuLVを基本骨格としたレトロウイルスベクターで、GFPが組み込まれているベクターDNA(pMX−GFP:Onishi.M.,et al.,Exp.Hematol.,24,324−329,1996)3μg、Fugene 9μlを200μlの血清を含まないDMEM培地に混合し、5〜10分おいた。その後、これをパッケージング細胞をまいた6cm皿にゆっくり加えた。48時間後に上清(ウイルス液)を回収し、3000rpmで5分間遠心した。このうち、500μlに1mg/mlポリブレン(sigma社)を5μl、×1000 IL3(R and D)を1μl加え、1×105のBaF/3細胞に5時間感染させた。5時間後、RPMI1640培地(IL3含有)を500μl加えた。感染した細胞内においてGFPが発現され、395nm波長の光で励起し、509nmの波長の光を放出することを利用し、FACScan(fluorescein activated cell sorter:Becton−Dickinson)を用いて発光する(感染発現している)細胞の割合を感染効率として、24時間後に測定した。BaF/3細胞に対する感染効率はウイルス液を濃縮することなく用いても95%に達した。液体窒素から同時期に起こしたPLAT−E(ecoenv導入PLAT−E細胞)とBOSC23より得られたウイルス液の感染効率をBaF/3細胞を用いて測定したところ、継代を開始して7日目では、いずれのパッケージング細胞を用いた場合でも90%以上の感染効率が確認されたが、継代2ヶ月後には、BOSC23を用いた場合の感染効率が23%にまで低下したのに対し、PLAT−Eを用いた場合では、7日目の感染効率と同程度の感染効率が、継代2ヶ月後および4ヶ月後においても保持されていることが確認された(継代を開始してから4ヶ月後において、Ba/F3細胞に対し70%以上の感染効率が保持されていた)。すなわち、約4ヶ月の間、約1x107/mlの力価のレトロウイルスを産生することができた。Plat−A細胞より得られたウイルス液の感染効率をBaF/3細胞を用いて測定したところ、継代開始して7日目に30%の感染効率が確認された(およそ1x106/mlの力価)。[実施例9] Plat−Eの安全性の検討パッケージング細胞にレトロウイルスベクターを導入した際、組み換えにより複製能を有するレトロウイルス(RCR;replication competent retroviruses)が出現していないかを検討した。NIH3T3細胞5x104を6cm組織/培養皿にまいた16時間後、pMX−neoをパッケージング細胞に導入して産生されたウイルス液1mlに1mg/mlのポリブレン10μlを加え、ウイルスを感染させた。4時間後、10%FCS DMEM 3mlを加え、コンフルエントになるまで培養した。1回継代後、終濃度2μg/mlポリブレンの添加されたDMEMで50%コンフルエントになるまで培養した後、培地を交換し、2mlのDMEMで2〜3日培養した。この上清を0.45μmフィルターに通し、新たにNIH3T3細胞に感染させ、G418(neo)の入ったDMEMで選択培養した。もし複製能を有するレトロウイルスが産生されているならば、G418耐性コロニーが出現するはずである。しかしながら、このようなコロニーは検出されなかった。[実施例10] Bosc23細胞及びPhoenix−E細胞と比較したPlat−E細胞の安定性の検討本発明者等は、Plat−E細胞がその初期経過において、一過性のトランスフェクションにより長期間安定して高い力価のレトロウィルスを産生することができるか否かにつき、Bosc23細胞及びPhoenix−E細胞の場合と比較した。この3つのパッケージング細胞系列の培養条件を以下に示す。Bosc23細胞は製造業者の指示に従い、GPT選抜試薬を含む、10%牛胎児血清を添加したDMEMにて増殖させた(Specialty Media,Lavallette,NJ,USA)。Phoenix−E細胞は、CD8の発現を指標にFACSにより分類し、ハイグロマイシン(300μg/ml)及びジフテリア毒素(1μg/ml)を含む、10%牛胎児血清を添加したDMEM中で1週間培養した後、ハイグロマイシン及びジフテリア毒素を含まない、10%牛胎児血清を添加したDEME中に移植した。Plat−E細胞は、常に、ブラスチジン(10μg/ml)およびプロマイシン(1μg/ml)を含む、10%牛胎児血清を添加したDEME中にて維持した。Bosc23から産生されたレトロウイルスの感染効率は3ヶ月以内に減少し、Phoenix−E細胞から産生されたレトロウイルスの感染効率も同時に減少した。一方、Plat−Eは薬剤選抜圧がかけられた状況下において少なくとも4ヶ月間、一過性の遺伝子導入で、NIH3T3細胞に対して平均約1×107/mlの力価をもち、BaF/3細胞に対して75%以上(最高99%)の感染効率を持つレトロウイルスを産生した。Plat−E、Bosc23、及びPhoenix−Eパッケージング細胞系列におけるGag−polおよびenv mRNAの発現レベルを比較するために、3週間培養した細胞を用いてノーザンブロット解析を行なった。Plat−E細胞におけるGag−polおよびenv mRNAの発現レベルは、他の細胞系と比較して、それぞれ4倍と10倍であった。細胞溶解物におけるRT活性の解析も行なった。Plat−E細胞では、Bosc23及びPhoenix−E細胞と比較して、少なくとも2倍のRT活性が検出された。さらに、env蛋白質の発現レベルは、env遺伝子産物に対する抗体染色によって評価した場合、Bosc23及びPhoenix−E細胞よりもかなり高かった。以上から、Plat−E細胞が高力価のレトロウイルスを長期間安定的に生産することができることが示された。産業上の利用の可能性本発明により、長期間継代しても高力価の感染性ウイルスを産生する能力を保持するウイルス産生細胞が提供された。また、該ウイルス産生細胞を用いる、高力価の感染性ウイルスの産生方法が提供された。本発明のレトロウイルスパッケージング細胞を用いれば、高力価のレトロウイルスを安定に供給することが可能となる。また、パッケージング細胞に含まれるウイルスゲノムを最小限にすることにより、複製能を有するレトロウイルス(RCR)等の望ましくない組換え体ウイルスの生成の可能性をより低くすることに成功した。従って、本発明のレトロウイルスパッケージング細胞は、生物学、医学研究分野において、レトロウイルスベクター作製のための強力なツールとなる他、遺伝子治療における遺伝子導入ベクターの作製にも有用である。【配列表】 レトロウイルスの産生に用いられるヒト胎児腎細胞由来の293細胞であって、 (1)EF1αプロモーターの下流にレトロウイルスの構造タンパク質gag及びpolをコードするDNAが機能的に結合した発現構築物;及び (2)EF1αプロモーターの下流にレトロウイルスの構造タンパク質envをコードするDNAが機能的に結合した発現構築物、を有する細胞。 envがエコトロピックレトロウイルス由来のenvまたはアンフォトロピックレトロウイルス由来のenvである、請求項1に記載の細胞。 発現構築物中のレトロウイルスの構造タンパク質をコードするDNAの翻訳開始コドンの上流に、Kozakのコンセンサス配列が配置されている、請求項1または2に記載の細胞。 レトロウイルスの構造タンパク質をコードするDNAがIRES配列を介して選択マーカーをコードするDNAと結合している、請求項1から3のいずれかに記載の細胞。 レトロウイルスの構造タンパク質をコードするDNAが、該タンパク質のコード領域以外のウイルスゲノム由来DNAを実質的に有さない、請求項1から4のいずれかに記載の細胞。 293細胞が、293T細胞である、請求項1から5のいずれかに記載の細胞。 寄託番号FERM BP−6737または寄託番号FERM BP−6977で特定される細胞。 請求項1から7のいずれかに記載の細胞に、少なくとも1つの構造タンパク質をコードする遺伝子を欠損しているレトロウイルスベクターDNAを導入する工程を含む、レトロウイルスの産生方法。 レトロウイルスベクターDNAが、gag、pol、およびenvをコードする遺伝子をすべて欠損している、請求項8に記載の方法。 レトロウイルスベクターDNAに外来遺伝子が含まれている、請求項8または9に記載の方法。