タイトル: | 特許公報(B2)_アルカリ金属分散体および該分散体を用いる難分解性ハロゲン化合物の分解方法 |
出願番号: | 2001372773 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C09K 3/00,A62D 3/00,C07B 35/06,C07B 37/06,C07C 25/18,C07D 319/24 |
荒川 徹 JP 4672939 特許公報(B2) 20110128 2001372773 20011206 アルカリ金属分散体および該分散体を用いる難分解性ハロゲン化合物の分解方法 日本曹達株式会社 000004307 大石 治仁 100108419 荒川 徹 JP 2001156185 20010524 JP 2001214558 20010713 20110420 C09K 3/00 20060101AFI20110331BHJP A62D 3/00 20070101ALI20110331BHJP C07B 35/06 20060101ALI20110331BHJP C07B 37/06 20060101ALI20110331BHJP C07C 25/18 20060101ALI20110331BHJP C07D 319/24 20060101ALI20110331BHJP JPC09K3/00 SA62D3/00C07B35/06C07B37/06C07C25/18C07D319/24 A62D3/00-3/40 A62D101/00-101/49 欧州特許出願公開第0503831(EP,A1) 特開2001−335513(JP,A) 特開昭59−020179(JP,A) 2 2003089785 20030328 9 20011206 2007027925 20071011 木村 孔一 中澤 登 斉藤 信人 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、粒子径の小さなアルカリ金属分散体、及びこのアルカリ金属分散体を用いてポリ塩化ビフェニル(PCB)等の難分解性ハロゲン化合物を効率よく、簡便かつ安全に分解する方法に関する。【0002】【従来の技術】PCB等のハロゲン化合物は、トランスオイルや潤滑油等の様々な用途、工業製品等に使用されている。かかるハロゲン化合物は一般に化学的に安定であり、自然環境中では容易に分解されず(本発明では、かかるハロゲン化合物を「難分解性ハロゲン化合物」という。)、動植物体内に取り込まれて、蓄積・濃縮され、環境に悪影響を与える。したがって、近年、廃棄物中の難分解性ハロゲン化合物を効率よくかつ安価に、分解・無害化する技術の研究開発が盛んに行われている。【0003】従来、難分解性ハロゲン化合物を分解処理する方法としては、難分解性ハロゲン化合物を金属ナトリウム等のアルカリ金属分散体と反応させることにより、脱塩素化分解する方法が知られている(例えば、特開平9−216838号公報等参照)。この方法は、低コストでプロセスが単純である等の利点を有する。【0004】しかし、従来のアルカリ金属分散体は、空気又は水と接触して発火する性質を有するために、特別な貯蔵・取扱・運搬方法等が必要であった。そのため、簡易な設備、簡便な操作で迅速且つ安全に難分解性ハロゲン化合物を分解処理することが困難であった。【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる実状に鑑みてなされたものであり、難分解性ハロゲン化合物を効率よく、簡便かつ安全に分解することができるアルカリ金属分散体及び該分散体を用いる難分解性ハロゲン化合物の分解方法を提供することを課題とする。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく難分解性ハロゲン化合物を迅速且つ安全にアルカリ金属分散体を用いて分解する方法について鋭意検討した。その結果、最大粒子径が所定値未満のアルカリ金属粒子からなるアルカリ金属分散体を用いることで、効率よく、簡便、迅速かつ安全に難分解性ハロゲン化合物を分解することができることを見出し、本発明を完成させるに到った。【0007】すなわち、本発明は第1に、最大粒子径が12.5μm未満であるアルカリ金属粒子が分散媒中に分散されてなることを特徴とするアルカリ金属分散体を提供する。本発明の第1においては、前記分散媒は電気絶縁油であるのが好ましく、トランス油であるのがより好ましい。【0008】本発明は第2に、難分解性ハロゲン化合物をアルカリ金属分散体と反応させる難分解性ハロゲン化合物の分解方法であって、前記アルカリ金属分散体として、該分散体中のアルカリ金属粒子の最大粒子径が12.5μm未満であるアルカリ金属分散体を用いることを特徴とする難分解性ハロゲン化合物の分解方法を提供する。【0009】本発明によれば、安全に、短時間で、かつ難分解性ハロゲン化合物の含有濃度に関係なく一定の処理時間で難分解性ハロゲン化合物の分解処理を行うことができる。【0010】【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。本発明の第1は、最大粒子径が12.5μm未満であるアルカリ金属粒子が分散媒中に分散されてなることを特徴とするアルカリ金属分散体である。【0011】本発明のアルカリ金属分散体は、アルカリ金属粒子が溶媒に分散されてなる。アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム及びこれらの合金等が挙げられるが、ナトリウムが特に好ましい。【0012】アルカリ金属粒子を分散する溶媒としては、例えば、電気絶縁油(JIS C2320−1993に記載の電気絶縁油等)、重油(JIS K2205に記載の重油等)及びこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、トランスオイル、コンデンサーオイル等の電気絶縁油を用いるのが好ましく、トランスオイルを用いるのがさらに好ましい。【0013】本発明のアルカリ金属分散体は、アルカリ金属粒子の最大粒子径が12.5μm未満であることを特徴とする。アルカリ金属分散体中に最大粒子径が12.5μm以上のアルカリ金属粒子が含まれる場合には、自然発火等の危険性を伴い、また、難分解性ハロゲン化合物、特に低濃度の難分解性ハロゲン化合物を分解処理する場合に長時間を要する場合がある。【0014】アルカリ金属粒子には1次粒子、2次粒子等がある。1次粒子はアルカリ金属を分散溶媒に分散させて得られる粒子であり、2次粒子はその1次粒子が凝集等により生成した粒子である。本発明においては、アルカリ金属粒子の最大粒子径は、アルカリ金属分散体中の1次粒子のアルカリ金属粒子のうちで最も大きい粒子径を有する粒子の粒径を意味する。また、アルカリ金属分散体中のアルカリ金属粒子は、通常球状又は楕円状の形状を有しているが、その最大粒子径は、球状の粒子の場合にはその最大直径を、楕円状の粒子の場合には長軸方向の長さをそれぞれいう。アルカリ金属粒子の最大粒子径D100は、例えば、レーザー回折式の粒度分布測定機によって測定することができる。【0015】アルカリ金属分散体中のアルカリ金属粒子の平均粒子径は最大粒子径に関係なく1〜5μmの範囲が好ましい。平均粒子径が5μmを超えると、難分解性ハロゲン化合物、特に低濃度の難分解性ハロゲン化合物を分解処理する場合において長時間を要する場合がある。アルカリ金属粒子の平均粒子径D50は、レーザー回折式の粒度分布測定機により測定することができる。【0016】本発明に用いられるアルカリ金属分散体は、自然発火物質又は禁水性物質(空気や水と接触して、発火したり可燃性ガスを出したりする物質)に該当しないものであるのが好ましい。【0017】金属ナトリウム等のアルカリ金属は、本来、自然発火物質又は禁水性物質(空気や水と接触して、発火したり可燃性ガスを出したりする物質)であるため、アルカリ金属分散体の貯蔵、運搬及び分解処理時においては、自然発火等の危険が伴う。しかし、本発明のアルカリ金属分散体は、アルカリ金属粒子の最大粒子径が12.5μm未満であるため、空気や水と接触して、発火する危険性が著しく軽減されている。したがって、従来のアルカリ金属分散体に比してより安全に取り扱うことができる。【0018】アルカリ金属分散体が自然発火物質又は禁水性物質に該当するか否かは、例えば、以下の(1)又は(2)に示す判定試験を行うことにより判断することができる。以下の試験において、自然発火物質又は禁水性物質に該当するものは危険物第3類とされ、いずれにも該当しないものは危険物第3類に該当しない物質であるとされる(消防法第2条第7項参照)。【0019】(1)自然発火性試験(空気中での発火の危険性)▲1▼アルカリ金属分散体の一定量を磁製の器に滴下し、10分以内に発火するかを観察する。▲2▼アルカリ金属分散体の一定量をろ紙上に滴下し、10分以内に発火するか又はろ紙が焦がされるかを観察する。上記▲1▼又は▲2▼において、発火又はろ紙が焦がされた場合には、自然発火物質に該当すると認定される。【0020】(2)水との反応性試験(水と接触して発火又は可燃性ガスを発生する危険性)▲3▼アルカリ金属分散体の一定量を純水で湿らせたろ紙の上に置き、発火するか又は火炎によって着火するかを観察する。▲4▼アルカリ金属分散体の一定量を純水に入れ、可燃性ガスが発生するかを観察し、可燃性ガスの発生量を測定する。▲3▼又は▲4▼において、発火する若しくは着火するもの、又はアルカリ金属分散体1kgを用い、1時間当たりに発生した可燃性ガスが200リットル以上であるものは禁水性物質と認定される。【0021】本発明に用いられるアルカリ金属分散体は、公知の方法、例えば、Inorganic Syntheses.,Vol.5,p6−10,”Sodium Dispersions”に記載の方法や、特開平10−110205号公報に記載されたホモジナイザーを用いた方法等により調製することができる。【0022】アルカリ金属粒子の粒径(粒子径分布)は、ホモジナイザーの撹拌速度や撹拌時間等の撹拌条件等を変化させることによって任意に設定することができる。一般的に、図1に示すように、撹拌速度を速くし撹拌時間を長くする程、小さい粒子径のアルカリ金属粒子を得ることができる。撹拌時間は、アルカリ金属粒子の粒子径分布の設定値等によっても異なるが、例えば、最大粒子径12.5μm未満の金属ナトリウム金属粒子を得たい場合には、撹拌速度18,500rpmにて、通常15〜120分、好ましくは30〜100分である。得られるアルカリ金属分散体中のアルカリ金属濃度には特に制限はないが、通常5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%の範囲である。【0023】本発明の第2は、難分解性ハロゲン化合物をアルカリ金属分散体と反応させる難分解性ハロゲン化合物の分解方法であって、本発明のアルカリ金属分散体を用いることを特徴とする難分解性ハロゲン化合物の分解方法である。【0024】本発明の分解の対象となる難分解性ハロゲン化合物としては、一般的に脱ハロゲン化反応が困難なハロゲン化合物が挙げられる。かかる難分解性ハロゲン化合物としては、例えば、PCB、ダイオキシン類、ポリ塩素化ベンゾフラン類、ポリ塩素化ベンゼン、DDT等の芳香族ハロゲン化合物;BHC等の脂環族ハロゲン化合物;等が挙げられる。本発明は、PCB等の芳香族ハロゲン化合物を対象とする場合に好適である。【0025】また、本発明は有機溶媒に溶解した難分解性ハロゲン化合物を分解処理する場合にも適用することができる。かかる有機溶媒としては、ケロシン、デカリン、電気絶縁油(JIS C2320−1993に記載の電気絶縁油等)、重油(JIS K2205に記載の重油等)、潤滑油及びこれらの混合物等が挙げられる。本発明は、トランスオイル、コンデンサーオイル等の電気絶縁油に含まれる難分解性ハロゲン化合物をアルカリ金属分散体と反応させて脱ハロゲン化処理を行う場合に特に好適である。【0026】難分解性ハロゲン化合物をアルカリ金属分散体と反応させて分解する方法としては、例えば、アルカリ金属分散体に難分解性ハロゲン化合物を添加する方法、難分解性ハロゲン化合物にアルカリ金属分散体を滴下する方法等が挙げられる。アルカリ金属分散体の使用量は、難分解性ハロゲン化合物中のハロゲン原子1モルに対して、含有するアルカリ金属1モルに換算して通常1〜200モル、好ましくは1.05〜20モルの範囲である。【0027】また、本発明においては、分解反応をより円滑に進行させるため、難分解性ハロゲン化合物をアルカリ金属分散体と反応させる際に、反応系に水、メタノール等の活性水素化合物を添加することもできる。活性水素化合物の添加量は、アルカリ金属に対して、通常0.1〜2倍モルの範囲である。活性水素化合物は、難分解性ハロゲン化合物とアルカリ金属分散体の混合物に添加するのが好ましい。【0028】難分解性ハロゲン化合物とアルカリ金属分散体との反応温度は、通常0〜180℃、好ましくは60〜90℃の範囲である。反応時間は難分解性ハロゲン化合物の種類やその量に依存するが、通常0.5〜3時間である。また、分解反応をより安全に行なう為に、反応系内を窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスの雰囲気とするのが好ましい。【0029】反応終了後は、水を反応系に添加し、未反応のアルカリ金属分散体を分解するのが好ましい。反応処理液を分液して回収されるトランスオイル等の有機溶媒は燃料等に再利用することができる。【0030】【実施例】次に、本発明について実施例により更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。【0031】(1)実施例1 金属ナトリウム分散体(SD−1)の調製500mlフラスコ内に電気絶縁油(出光興産(株)製)240g及び金属ナトリウム60gを入れ、ホモジナイザー(ヒスコトロンNS−50、(株)マイクロテックニチオン製)を用いて、撹拌回転数18,500rpmで60分間撹拌し、ナトリウム含有量20重量%の金属ナトリウム分散体(SD−1)を得た。このものの最大粒子径を(HELOS−KF、SYMPATEC GmbH製のレーザー回折式粒度分布測定機)で測定したところ、最大粒子径D100は9.00μmであり、平均粒子径D50は4.59μmであった。【0032】(2)比較例1 金属ナトリウム分散体(SD−2)の製造撹拌時間を30分とする以外は前記SD−1の製造方法と同様にして、金属ナトリウム分散体(SD−2)を得た。このものの最大粒子径及び平均粒子径をSD−1の場合と同様に測定したところ、最大粒子径D100は12.5μmであり、平均粒子径D50は6.68μmであった。【0033】(3)比較例2 金属ナトリウム分散体(SD−3)の製造撹拌時間を20分とする以外は前記SD−1の製造方法と同様にして、金属ナトリウム分散体(SD−3)を得た。このものの最大粒子径及び平均粒子径をSD−1の場合と同様に測定したところ、最大粒子径D100は30.00μmであり、平均粒子径D50は8.37μmであった。第1表にSD−1、SD−2及びSD−3中に含まれる金属ナトリウム粒子の粒子径と累積体積%を示す。【0034】【表1】【0035】水との反応性試験図1に示すように、500ml広口ビーカー2に100ml広口ビーカー5を入れ、100ml広口ビーカー5が埋没するまで純水4を入れた。そこへ、直径70mmの濾紙3を置き、その上に、上記で得たアルカリ金属分散体(SD−1、SD−2又はSD−3)1を(0.05ml)滴下した。試験は、室温24〜25℃、湿度36〜40%、水温21〜22℃の条件下に行った。この試験をそれぞれについて3回行い、発火した場合を○、発火しない場合を×として評価し、評価結果を第2表にまとめた。【0036】【表2】【0037】SD−1では、3回の試験においていずれも発火しなかったが、SD−2及びSD−3においては3回中2回発火した。【0038】(4)実施例4 PCB分解試験1Lフラスコ内に、PCB(商品名:カネクロール400、鐘淵化学工業(株)製)28mgを含有する電気絶縁油530mlを入れた。そこへ、前記SD−1をナトリウム含有量が15重量%となるように絶縁油で希釈したもの8.7gを、窒素ガス雰囲気下、室温で添加した。60〜70℃まで昇温し、活性水素化合物として水(SD−1中のナトリウム1molに対して0.5mol)を滴下した。水の滴下開始から7.5分、15分、30分、60分及び120分経過後のそれぞれの段階の反応物を採取し、各反応生成物をそれぞれシリカゲルカラムで処理した後、反応物中のPCBの残存濃度をエレクトロンキャプチャ検出器(ECD検出器)を用いるガスクロマトグラフィーで分析した。測定結果を第2表に示す。【0039】(比較例3)SD−1を用いる代わりに、前記SD−2又はSD−3を用いる以外は実施例と同様にして、PCB分解試験を行った。実施例1と同様に、水の滴下開始から7.5分、15分、30分、60分及び120分経過後のそれぞれの段階の反応物を採取し、各反応生成物をそれぞれシリカゲルカラムで処理した後、反応物中のPCBの残存濃度をECD検出器を用いるガスクロマトグラフィーで分析した。測定結果を第3表に示す。【0040】【表3】【0041】第3表から明らかなように、実施例1では反応開始から60分後においては完全にPCBが分解されていたのに対し、比較例1及び2では、120分経過後であっても、PCBが残存していた。【0042】【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、PCB等の難分解性のハロゲン化合物を効率よく、簡便かつ安全に分解することができる。【図面の簡単な説明】【図1】図1は、実施例におけるアルカリ金属分散体と水との反応性試験の方法の概略図である。【符号の説明】1…アルカリ金属分散体2…500ml広口ビーカ3…濾紙4…純水5…100ml広口ビーカ 難分解性ハロゲン化合物をアルカリ金属分散体と反応させる難分解性ハロゲン化合物の分解方法であって、前記アルカリ金属分散体として、最大粒子径が12.5μm未満であるアルカリ金属粒子が、電気絶縁油中に分散されてなるアルカリ金属分散体を用いることを特徴とする難分解性ハロゲン化合物の分解方法。 前記電気絶縁油がトランス油であることを特徴とする請求項1に記載の難分解性ハロゲン化合物の分解方法。