生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ダイオキシン類の除去方法
出願番号:2001364775
年次:2006
IPC分類:B01D 53/70,B01D 53/34,C07D 319/24


特許情報キャッシュ

宮田 博司 高橋 邦広 JP 3783619 特許公報(B2) 20060324 2001364775 20011129 ダイオキシン類の除去方法 栗田工業株式会社 000001063 重野 剛 100086911 宮田 博司 高橋 邦広 20060607 B01D 53/70 20060101AFI20060518BHJP B01D 53/34 20060101ALI20060518BHJP C07D 319/24 20060101ALI20060518BHJP JPB01D53/34 134EB01D53/34C07D319/24 B01D 53/70 B01D 53/34 ZAB C07D319/24 特開平11−104434(JP,A) 特開昭52−155182(JP,A) 特開昭53−045674(JP,A) 特開2001−219032(JP,A) 2 2003164727 20030610 8 20031001 田口 昌浩 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、湿式洗煙塔から排出される排ガス中に含まれるポリ塩化−p−ジベンゾダイオキシン類(PCDD)やポリ塩化ジベンゾフラン類(PCDF)、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、コプラナーPCB等の有機塩素化合物(以下、これらを併せて「ダイオキシン類」と称す。)を除去する方法に関する。【0002】【従来の技術】都市ごみ焼却炉、廃棄物焼却炉等の焼却炉においては、燃焼中に、フェノール、ベンゼン、アセチレン等の有機化合物、クロロフェノール、クロロベンゼン等の塩素化芳香族化合物や塩素化アルキル化合物等のダイオキシン類前駆体が発生する。これらのダイオキシン類前駆体は、飛灰が共存するとその触媒作用でダイオキシン類となって焼却灰や排ガス中に存在することとなる。【0003】従って、このようなダイオキシン類の排出が問題となっている施設では、排ガス処理設備をダイオキシン類の発生しにくい構造、即ち排ガスがダイオキシン類生成温度域にある時間をできるだけ短くするような構造へ改造することや、後段に触媒分解塔や吸着塔などのダイオキシン類除去設備を増設すること、集塵機を電気集塵機からバグフィルタへ交換することが主として提案されているが、いずれも多大な改造費が必要である。そこで、簡便にコストをかけずにダイオキシン類を処理する方法として、粉末活性炭による吸着除去方法が提案されている。【0004】ところで、ごみ焼却炉等においては、被焼却物中に混入した塩化ビニル系プラスチック、塩化ナトリウムや塩化カルシウム等の水溶性塩素、塩化ビニル以外の有機塩素類の燃焼により大量の塩化水素(HCl)が発生し、大気汚染、金属腐食の原因となることから、排ガス中のHClを除去するための処理設備が設けられている。このHClの除去方法としては、焼却炉からの排ガスに煙道にてアルカリ剤(通常は消石灰)を吹き込み、中和生成物を飛灰と共に回収する乾式ないし半乾式方式と、焼却炉からの排ガスを湿式洗煙塔に導き、湿式洗煙塔にて排ガスに洗煙水としてアルカリ水(通常は水酸化ナトリウム水溶液)を散布してアルカリ水中にHClを吸収する湿式方式とがある。湿式方式は乾式方式に比べて、排水処理が必要であるという難点があることから、現状にて湿式洗煙塔が採用されている焼却設備は少ないが、気−固反応の乾式方式に比べて、気−液反応であるため、反応効率が良く、集塵器からの飛灰の排出量が少なく、また、排ガスのHCl濃度を10ppm以下に抑制できるという利点があり、今後の拡充が期待される。【0005】湿式洗煙塔は多くの場合、排ガス処理工程の最終段階に設けられ、この湿式洗煙塔の出口排ガスのダイオキシン類濃度が、規制対象である煙突排ガスのダイオキシン類濃度に大きな影響を与えている。また、ダイオキシン類は疎水性であるため、湿式洗煙塔内部のゴム又は樹脂ランニングやプラスチック充填材に洗煙水を介して吸脱着することがあり、湿式洗煙塔で排ガスのダイオキシン類濃度が増加することが知られている。【0006】前述の如く、従来、焼却炉の排ガス中のダイオキシン類の除去方法として、活性炭を用いることが知られている。湿式洗煙塔を有する施設におけるダイオキシン類の除去方法として、特表2000−511108には、湿式洗煙塔に1〜20kg/hrの割合で粉末活性炭を注入し、排ガスを洗浄することにより排ガス中のダイオキシン類濃度の低減が可能であり、粉末活性炭は湿式洗煙塔手前にて乾式注入しても、スラリーとして洗浄水に直接混ぜても良いと記載されている。【0007】なお、特開平11−244658号公報には、主に乾式方式による排ガスプロセスの煙道に散布されるための活性炭として、孔径10〜16Åの細孔容積が0.1mL/g以上である粉末活性炭を用いることが提案されている。【0008】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、一般的な都市ごみ焼却炉の湿式洗煙塔からの洗浄水のブロー水量は概ね1〜2m3/hrであるため、1〜20kg/hrの活性炭注入量で活性炭を注入すると、洗浄水中の活性炭濃度が1000〜10000mg/Lと高濃度となる。このような高活性炭濃度の洗浄水を湿式洗煙塔で循環させると、活性炭が洗煙塔や洗浄水貯留槽内や配管内で沈降し、デッドスペースに堆積したり、配管やノズルの閉塞を招く恐れがある。また、一般に粉末活性炭粒子は堅いため、長期の運転により配管等が摩耗することもある。そして、これらのトラブルにより、メンテナンスコストが高くなったり、メンテナンス頻度が増えたりする。【0009】また、活性炭をスラリーとして注入する場合には、ダイオキシン類の除去が十分に行えないことがあった。即ち、洗浄水に活性炭を添加して排ガスを洗浄する方法では、排ガスと活性炭との接触時間が短く、洗浄水と接触して洗浄水に取り込まれたダイオキシン類が主に除去されることとなるため、ダイオキシン類の除去率が低い場合が多い。【0010】本発明は上記従来の問題点を解決し、湿式洗煙塔に活性炭を添加してダイオキシン類を除去するに当たり、湿式洗煙塔の運転上のトラブルを引き起こすことなく、低コストで効率的な処理を行う方法を提供することを目的とする。【0011】【課題を解決するための手段】 本発明のダイオキシン類の除去方法は、湿式洗煙塔から排出される排ガス中のダイオキシン類を除去する方法において、ブロー水量が1〜2m3/hrの該湿式洗煙塔の洗浄水の活性炭濃度が50〜500mg/Lとなるように、該湿式洗煙塔手前の排ガス中に活性炭を50〜1000g/hrの割合で乾式供給することを特徴とする。【0012】本発明者らは、湿式洗煙塔手前の排ガス中に活性炭を50〜1000g/hrの割合で乾式供給すると、特表2000−511108に記載される1〜20kg/hrという活性炭供給量よりも少ない活性炭供給量で、ダイオキシン類を十分に除去することができることを見出した。【0013】50〜1000g/hrの活性炭供給量であれば、1〜2m3/hrの湿式洗煙塔のブロー水量に対して、予想される洗浄水中の活性炭濃度は50〜500mg/Lとなり、高濃度活性炭による前述のようなトラブルは防止される。【0014】即ち、湿式洗煙塔の洗浄水中の活性炭濃度が低いため、洗煙塔内等での活性炭の沈降や、配管及びノズルの閉塞、摩耗を抑制することができ、メンテナンスに要する時間、経費を節約できる。【0015】また、湿式洗煙塔手前で活性炭を乾式供給することにより、排ガスとの接触時間を長くすることが可能となる。しかも、活性炭が排ガス中のダイオキシン類を直接吸着除去するため、洗煙塔内で高いダイオキシン類除去率を得ることができるようになる。【0016】本発明では、50〜1000g/hrという少ない活性炭供給量で高いダイオキシン類除去率を達成するために、モラセスナンバーが350以下の、ダイオキシン類除去性能の高い活性炭を用いることが好ましい。【0017】モラセスナンバーが350以下の活性炭が、ダイオキシン類除去性能に優れる理由は次の通りである。【0018】吸着材として幅広い分野に用いられている活性炭の一般的な吸着指標としては、ヨウ素吸着量、メチレンブルー吸着量、比表面積、細孔容積等の項目があり、前述の特開平11−244658号公報では、このうち、細孔容積を取り上げて吸着指標としている。【0019】しかしながら、ダイオキシン類は分子量約300〜450の中分子であるため、上述のような活性炭の一般的な吸着指標では、吸着性能を正しく評価することはできず、例えば直径10〜16Åの細孔容積が0.1mL/g以上の活性炭でもダイオキシン類を効率良く吸着することができるとは限らない。【0020】このような中分子のダイオキシン類が吸着される部位は、主として孔径が20〜200Åの中間孔(マクロ孔)とこのような中間孔への導入部であるメソ孔(孔径200Å以上)である。この中間孔及びメソ孔の細孔容積を評価し、ダイオキシン類に対する活性炭の吸着性能を表す指標として適切なものが、モラセスナンバーである。モラセスナンバーは、特殊糖蜜の脱色力の測定値であり、この値が大きいことは、分子量が200〜10000程度の中〜高分子化合物に対する吸着力が低いことを、逆に小さいことは中〜高分子化合物に対する吸着力が高いことを示す。しかして、モラセスナンバーが350以下の活性炭であれば、良好なダイオキシン類の吸着性能を得ることができる。【0021】【発明の実施の形態】以下に本発明のダイオキシン類の除去方法の実施の形態を詳細に説明する。【0022】本発明においては、湿式洗煙塔の手前、即ち、湿式洗煙塔の入口側の煙道に活性炭を50〜1000g/hrの供給量で乾式供給する。この活性炭の供給量が50g/hr未満では、十分なダイオキシン類除去効果を得ることができない。活性炭の供給量が1000g/hrを超えると前述の如く、高濃度活性炭によるトラブルが発生するため、活性炭の供給量は50〜1000g/hr、好ましくは100〜600g/hr、特に好ましくは200〜400g/hrとする。【0023】本発明では、このような少ない活性炭供給量で良好なダイオキシン類除去効果を得るために、好ましくはモラセスナンバー350以下、好ましくはモラセスナンバー150〜250以下のダイオキシン類吸着性能に優れた粉末活性炭を用いる。【0024】モラセスナンバーは、糖蜜脱色力試験法NSTM2.19によって測定される数値であり、標準となるA8100活性炭350mgで脱色できるある量の糖蜜を脱色するのに必要なサンプル活性炭のmg数を示す。本発明で好適に用いられるモラセスナンバー350mg以下の活性炭は、この標準活性炭8100と同等以上の糖蜜脱色力を有する。この標準活性炭8100はノリット クラツィーナフェーン(Norit Klaienaveen)より入手される。【0025】また、本発明で用いる活性炭は、モラセスナンバーが350以下、好ましくは150〜250の範囲であって、更にブラスト試験によるSUS−304の摩耗性が0.01g/cm2以下で、平均粒径が20μm以下、5%懸濁液のSV30が50%以上であることが好ましい。【0026】即ち、一般に活性炭は硬い粒子であるため、湿式洗煙塔の洗浄水の配管やノズルの閉塞や摩耗、洗浄水循環ポンプ等にトラブルを発生させることがある。このようなトラブルが発生した場合、焼却を停止して対応しなければならず、焼却炉にとっては重大な問題となる。このため、湿式洗煙塔で用いる活性炭の硬度は低いことが好ましく、具体的には、活性炭を500g/hrの速度で4時間金属表面に吹き付けて金属の重量変化を測定するブラスト試験において、SUS−304の摩耗量(以下「ブラスト試験値」と称す。)が0.01g/cm2以下、特に0.002g/cm2以下であるような、比較的低硬度のものであることが望まれる。【0027】また、湿式洗煙塔や貯留槽、配管、その他のデッドスペース等における活性炭の堆積を防止するためには、沈降し難い活性炭を使用することが好ましく、このため、5%懸濁液のSV30が50%以上、特に60%以上で、平均粒径が20μm以下、特に5〜15μmであることが望ましい。【0028】モラセスナンバー350以下の活性炭、即ち中間孔以上の孔が多い活性炭、更に好ましくは、上記硬度、懸濁特性を有する活性炭を製造する場合、原材料が大きな要因となり、具体的にはピート、リグナイト、木質、瀝青等が適している。また、賦活方法によっても影響を受け、ピート炭、リグナイト炭の賦活には900℃以上の蒸気賦活が適しており、木質炭の賦活には、リン酸や塩化亜鉛等を用い、500〜600℃で処理する化学賦活が適している。【0029】本発明に好適な活性炭の市販品としては、日本ノリット(株)社製のノリットGLA20、CP等を用いることができる。【0030】このような本発明のダイオキシン類の除去方法は、都市ごみ、産業廃棄物、医療廃棄物等の焼却施設に限らず、排ガス処理工程に湿式洗煙塔を採用しているプロセスであれば、その他の焼結炉、電炉、亜鉛回収プロセス、アルミ精錬プロセス等に良好に適用可能である。【0031】なお、これらのプロセスに採用される湿式洗煙塔は、前述の如く、一般的には、ブロー水量1〜2m3/hr程度であり、焼却施設の場合の焼却能力は50〜300t/日、排ガス発生量10,000〜80,000Nm3/hr程度である。【0032】【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。【0033】なお、以下において用いた活性炭の仕様は次の通りである。粉末活性炭:ノリット社製「GLA20(ピート炭)」モラセスナンバー:200平均粒径:10μm5%懸濁液のSV30:60%ブラスト試験値:0.0016g/cm2【0034】実施例1120t/日の焼却能力を有するストーカ式全連続都市ごみ焼却炉において、湿式洗煙塔の手前で粉末活性炭を250g/hrで噴霧した。1ヶ月の継続処理後、湿式洗煙塔出口のダイオキシン類濃度をJIS法に従って測定した。【0035】その結果、湿式洗煙塔出口のダイオキシン類濃度は0.3ng−TEQ/Nm3であった。なお、試験期間中、湿式洗煙塔の運転トラブルは認められなかった。【0036】実施例2〜4実施例1において、粉末活性炭の供給量を表1に示す値としたこと以外は同様にして処理を行い、湿式洗煙塔出口のダイオキシン類濃度と湿式洗煙塔の運転トラブルの有無を調べ、結果を表1に示した。【0037】比較例1実施例1と同じ都市ごみ焼却炉において活性炭の注入を行わずに、湿式洗煙塔入口及び出口のダイオキシン類濃度の測定を行った。【0038】その結果、湿式洗煙塔出口のダイオキシン類濃度は1.8ng−TEQ/Nm3であり、洗煙塔入口のダイオキシン類濃度1.1ng−TEQ/Nm3よりも増えていた。なお、試験期間中、湿式洗煙塔の運転トラブルは認められなかった。【0039】比較例2実施例1と同じ都市ごみ焼却炉において、湿式洗煙塔の洗浄水として粉末活性炭の1000mg/L濃度のスラリーを活性炭供給量250g/hrとなるように噴霧した。1ヶ月の継続処理後、湿式洗煙塔出口のダイオキシン類濃度をJIS法に従って測定した。【0040】その結果、湿式洗煙塔出口のダイオキシン類濃度は1.0ng−TEQ/Nm3であった。なお、試験期間中、湿式洗煙塔の運転トラブルは認められなかった。【0041】比較例3実施例1と同じ都市ごみ焼却炉において、湿式洗煙塔の手前で粉末活性炭を2.5kg/hrで噴霧した。1ヶ月の継続処理後、湿式洗煙塔出口のダイオキシン類濃度をJIS法に従って測定した。【0042】その結果、湿式洗煙塔出口のダイオキシン類濃度は0.25ng−TEQ/Nm3であった。しかしながら、本試験の間、湿式洗煙塔の洗浄水噴霧ノズルが3本閉鎖した。また、湿式洗煙塔底部に大量の活性炭の堆積が認められた。【0043】比較例4,5実施例1において、粉末活性炭の供給量を表1に示す値としたこと以外は同様にして処理を行い、湿式洗煙塔出口のダイオキシン類濃度と湿式洗煙塔の運転トラブルの有無を調べた。【0044】以上の結果を表1にまとめて示す。【0045】【表1】【0046】表1より、本発明によれば、少ない活性炭供給量で湿式洗煙塔の運転トラブルの問題を生じることなく、ダイオキシン類を確実に吸着除去することができることがわかる。【0047】【発明の効果】以上詳述した通り、本発明のダイオキシン類の除去方法によれば、湿式洗煙塔に活性炭を添加してダイオキシン類を除去するに当たり、従来法に比べて少ない活性炭供給量で高いダイオキシン類除去効果を得ることができ、湿式洗煙塔の運転トラブルを防止して、湿式洗煙塔のメンテナンス頻度やメンテナンス費用を大幅に低減することができる。 湿式洗煙塔から排出される排ガス中のダイオキシン類を除去する方法において、 ブロー水量が1〜2m3/hrの該湿式洗煙塔の洗浄水の活性炭濃度が50〜500mg/Lとなるように、該湿式洗煙塔手前の排ガス中に活性炭を50〜1000g/hrの割合で乾式供給することを特徴とするダイオキシン類の除去方法。 請求項1において、該活性炭は、モラセスナンバーが350以下の活性炭であることを特徴とするダイオキシン類の除去方法。


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