タイトル: | 特許公報(B2)_Gatewayエントリークローンの作製方法 |
出願番号: | 2001357821 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12Q 1/68 |
野村 信夫 五島 直樹 木須 康智 園 佐紀 JP 4210769 特許公報(B2) 20081107 2001357821 20011122 Gatewayエントリークローンの作製方法 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 インビトロジェン株式会社 301074757 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 藤田 節 100118773 藤井 愛 100125508 野村 信夫 五島 直樹 木須 康智 園 佐紀 20090121 C12N 15/09 20060101AFI20081225BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20081225BHJP JPC12N15/00 AC12Q1/68 Z C12N 15/00-15/90 C12Q 1/00- 3/00 PubMed Science Direct BIOSIS/WPI(DIALOG) JSTPlus(JDreamII) 国際公開第01/042509(WO,A1) 米国特許第05824517(US,A) 日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集,2000年11月25日,第23回,p.627 Genome Res.,2000年,Vol.10,pp.1788-1795 BioTechniques,1998年,Vol.24, No.1,pp.26,28 実験医学,2000年,Vol.18,No.19,pp.2716-2717 Annu. Rev. Biochem.,1989年,Vol.58,pp.913-949 日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集,2000年11月25日,第23回,p.757 11 2003159063 20030603 25 20041119 (出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成13年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「タンパク質機能解折の研究開発」に係る委託研究、産業活性化再生特別措置法第30条の適用を受けるもの) 引地 進 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、遺伝子工学の分野に属する。特に本発明は、遺伝子の組換え技術に関する。【0002】【従来の技術】Gatewayクローニングテクノロジーは、cDNAやPCR DNAの機能解析、たんぱく質発現やクローニング/サブクローニングのための迅速で高効率な汎用クローニングシステムである(USP5,888,732)。このGatewayシステムは、部位特異的DNA組換え反応を利用して、異なるベクター間でのインサートDNAの載せ換えを、制限酵素やリガーゼなしで、短時間にin vitroで行う技術であり、基本となるエントリークローンを構築して、多種類の発現クローンを迅速かつ容易に作製することを可能とした技術である。【0003】該システムでは、目的とする遺伝子DNAを、まずエントリーベクターに入れてエントリークローンを作製する。該エントリークローンは、PCR、制限酵素消化、リガーゼ接続でも作ることができ、Gatewayベクターで構築されたcDNAライブラリーからの部位特異的組み換え反応でも作製できることが知られている。attサイトと呼ばれる組み換え部位に接続された目的DNAを、適切なデスティネーションベクター及びCLONASE酵素ミックスと混合することにより、attサイト間の部位特異的組換えによって生成した中間体(co-integrate)分子が2個の分子に分解し、このうち1個は目的DNAを含む新しいベクター分子(発現クローン)が作製される。もう1個の分子は陰性選択(ccdB)遺伝子を含むため、宿主菌が殺され、この陽性、陰性選択により、目的とするクローンを効率よく(90%以上)回収できるものである。【0004】該エントリークローンの作製におけるPCR法は、まず、5'末端に配列表の配列番号3に記載の25bpのattB1の組換え配列を、3’末端に配列番号5に記載の25bpのattB2の組換え配列をそれぞれアダプターとして持つ2種類のプライマーによって目的の遺伝子DNAをPCR増幅し、アダプターPCR産物を得る。この目的遺伝子DNAをattPプラスミドに移し換える場合に、in vitroのBP反応(Gatewayクローニングテクノロジー(2000),五島直樹,木須康智,今本文男,実験医学,18(19)2716-2717)によって目的遺伝子の方向性を維持したまま移すことができる。【0005】該PCR法による該エントリークローンの作製における高効率化は、該Gatewayシステムの有効性を高めるための重要な課題である。中でも、融合たんぱく質の発現クローンを選択的に得ることは、該システムの汎用性と応用範囲の拡大を図る重要な技術としてその開発が要請されている。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明は、ネイティブ型cDNA及びC末端融合型cDNAのGatewayエントリークローンを選択的に作製する技術を提供することをその課題とする。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意検討をした結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば、以下に示す方法が提供される。(1)2ステップアダプターPCRにおいて、鋳型cDNAを増幅する第1ステップのPCRを、アダプターaを含む5'末端プライマーAを用い、アダプターbを含み、鋳型cDNAの停止コドンにハイブリダイズする部位の塩基配列が異なる3'末端プライマーB及びB'を混合して行い、第2ステップのPCRを、第1ステップでの増幅産物を鋳型として、5’末端にプラスミドへの接続部位となる配列attB1を持つアダプターcを含む5’末端共通プライマーCを用い、3'末端のPCRプライマーとしてプラスミドへの接続部位となる配列attB2を含むアダプターdを持つネイティブ型共通プライマーD又はC末端融合型共通プライマーD'を用いてそれぞれ増幅を行い、両末端に異なる接続塩基配列を持つネイティブ型cDNA及びC末端融合型cDNAを作製し、得られたcDNAをattPプラスミドに組み込み、これをコンピテントセルに導入することを特徴とするGatewayエントリークローンの作製方法。(2)配列表の配列番号4に記載の塩基配列を有する前記(1)に記載のPCRプライマーC。(3)該プライマーBは、その停止コドンにハイブリダイズする塩基配列がATTであり、該プライマーB'は、その停止コドンにハイブリダイズする塩基配列がATAであり、該プライマーDは、配列番号7に記載の塩基配列であり、該プライマーD'は、配列番号8に記載の塩基配列であることを特徴とする前記(1)に記載のGatewayエントリークローンの作製方法。(4)配列表の配列番号7に記載の塩基配列を有する前記(1)又は(3)に記載のPCRプライマーD。(5)配列表の配列番号8に記載の塩基配列を有する前記(1)又は(3)に記載のPCRプライマーD'。(6)該プライマーBは、その停止コドンにハイブリダイズする塩基配列がACTであり、該プライマーB'は、その停止コドンにハイブリダイズする塩基配列がACAであり、該プライマーDは、配列番号9に記載の塩基配列であり、該プライマーD'は、配列番号10に記載の塩基配列であることを特徴とする前記(1)に記載のGatewayエントリークローンの作製方法。(7)配列表の配列番号9に記載の塩基配列を有する前記(1)又は(6)に記載のPCRプライマーD。(8)配列表の配列番号10に記載の塩基配列を有する前記(1)又は(6)に記載のPCRプライマーD'。(9)該プライマーBは、その停止コドンにハイブリダイズする塩基配列がACTであり、該プライマーB'は、その停止コドンにハイブリダイズする塩基配列がCCTであり、該プライマーDは、配列番号9に記載の塩基配列であり、該プライマーD'は、配列番号11に記載の塩基配列であることを特徴とする前記(1)に記載のGatewayエントリークローンの作製方法。(10)配列表の配列番号11に記載の塩基配列を有する前記(1)又は(9)に記載のPCRプライマーD'。(11)前記(1)〜(10)のいずれかに記載の該エントリークローンの作製方法により作製されたネイティブ型cDNA及びC末端融合型cDNAのGatewayエントリークローン。【0008】【発明の実施の形態】本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による、ネイティブ型cDNA及び融合型cDNAのGatewayエントリークローンを選択的に効率良く作製する独創的な方法に関する。好ましい態様において、本発明では、目的とする遺伝子cDNAを含むDNA断片からネイティブ型cDNA及びC末端融合型cDNAのGatewayエントリークローン作製の前駆体である、5'末端に該attB1の組換え配列を、3’末端に該attB2の組換え配列をそれぞれアダプターとして持つそれぞれのcDNAのPCR産物を構築するために、2ステップアダプターPCRを用いる。【0009】本発明による該2ステップアダプターPCRにおいては、目的とする鋳型cDNAを増幅する第1ステップのPCRを、該アダプターaを含む5'末端プライマーAを用い、該アダプターbを含み、鋳型cDNAの停止コドンにハイブリダイズする部位の塩基配列が異なる3'末端プライマーB及びB'を混合して行い、第2ステップのPCRを、第1ステップでの増幅産物を鋳型として、5’末端にプラスミドへの接続部位となる該配列attB1を持つアダプターcを含む該5’末端共通プライマーCを用い、3'末端のPCRプライマーとしてプラスミドへの接続部位となる該配列attB2を含む該アダプターdを持つネイティブ型共通プライマーD又はC末端融合型共通プライマーD'を用いてそれぞれ増幅を行い、5'末端にattB1配列を、3'末端にattB2配列を持つネイティブ型cDNA及びC末端融合型cDNAのPCR産物をそれぞれ効率良く得ることができる。その概略図を図1に示す。【0010】該第1ステップのPCRで、その停止コドンにハイブリダイズする塩基配列において、ATT及びATA(なお、図1ではこの組み合わせの場合のみを例示してある)、ACT及びACAあるいはACT及びCCTであるそれぞれ2種類組み合わせの該プライマーB及び該プライマーB'を混合して用いて増幅された該cDNAの3'末端が、それぞれTAA及びTAT、TGA及びTGTあるいはTGA及びGGAである2種類のDNAが増幅されるが、得られた第1ステップのPCR産物を鋳型とした第2ステップでのPCRに際して、該3'末端のPCRプライマーとして、それぞれATTあるいはACTの配列を3’末端に持つ、配列番号7あるいは9に記載の該ネイティブ型共通プライマーD及びそれぞれATA、ACAあるいはCCTの配列を3’末端に持つ配列番号8、10あるいは11に記載の該C末端融合型共通プライマーD'を用いることにより、停止コドンによる読みとりを停止するネイティブ型cDNA及び停止コドンが破壊されC末端を読み繋ぐC末端融合型cDNAを選択的に且つ効率良く、それぞれ作製することができる。【0011】第2ステップでのPCRを、該アダプターcを含む該5’末端の該共通プライマーCを用い、3'末端のPCRプライマーとして、該アダプターdを含む該ネイティブ型共通プライマーD及び該C末端融合型共通プライマーD'の2種類を用いて行うことにより、5'末端にattB1配列を、3'末端にattB2は配列を持つネイティブ型cDNA及びC末端融合型cDNAのPCR産物を、それぞれ得ることができ、得られたcDNAをattPプラスミドに組み込み、これをコンピテントセルに導入することでGatewayエントリークローンを作製することができる。【0012】本発明による該第1ステップPCRにおいて、用いられる5'末端側プライマーA中のアダプターaの塩基配列は、配列表の配列番号1に記載の配列を用いることができる。3'末端側プライマーB及びB'中のアダプターbの塩基配列は、配列番号2を用いることができる。【0013】本発明では、該第2ステップでのPCRにおける5’末端のアダプターを含む共通プライマーCが用いられるが、該プライマーCにおけるアダプターcの塩基配列は、配列番号3に記載の配列を持つアダプターを用いることができ、該プライマーCは、配列番号4に記載の塩基配列を持つものを用いることができる。3'末端側はアダプターを含む該ネイティブ型共通プライマーD及び該C末端融合型共通プライマーD'の2種類を用いて行うが、両共通プライマーにおけるアダプターdの塩基配列は、配列番号6に記載の配列を持つアダプターを用いることができる。【0014】本発明では、RNAを逆転写して得られる全長cDNAポリヌクレオチド配列を含むDNA断片を用いる。該DNA断片は、ウイルス、細菌、酵母、糸状菌、植物、昆虫、及びヒトを含む動物など自然の材料から由来することができる。また、あらゆるRNA材料から調製することもできる。【0015】本発明によるPCR過程においては、多様なDNAポリメラーゼを用いることができる。好ましくは、サーマス・アクアティクス(Thermus aquaticus)(Taq)、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)(Tth)及びパイロコカスフリオサス(Pyrococcus furiosus)(Pfu)を含む様々な細菌から得られるような熱安定的な該DNAポリメラーゼである。【0016】本発明によるPCR過程においては、エンハンサー溶液(インビトロジェン社製)を用いることにより反応効率を上げることができる。該エンハンサー溶液を加える場合には、PCR反応溶液組成中に、5〜15%であり、好ましくは8〜12%である。【0017】本発明による該第1ステップPCRにおいては、PCRの反応プログラムのサイクル数は3〜10が好ましく、さらに好ましくは4〜6である。該第2ステップPCRにおいては、PCRの反応プログラムのサイクル数は5〜20が好ましく、さらに好ましくは8〜12である。【0018】本発明における第1ステップPCRの反応条件の一例として、反応溶液組成を表1に、反応プログラムを表2にそれぞれ示した。【0019】【表1】【0020】【表2】【0021】本発明における第2ステップPCRの反応条件の一例として、反応溶液組成を表3に、反応プログラムを表4にそれぞれ示した。【0022】【表3】【0023】【表4】【0024】表1〜表4のPCRの反応条件は一例であって、エントリークローン作製のためのcDNAの長さ等に対応して、例えば鋳型DNAの量等その条件は適宜選択することができる。【0025】本発明によれば、該2ステップアダプターPCR法による反応の結果、5'末端にattB1配列を、3'末端にattB2は配列を持つネイティブ型cDNA及びC末端融合型cDNAのPCR産物を同時に効率良く得ることができる。エントリークローン作製のための、第2ステップ(以後、2ndと略記)PCR産物のattPプラスミドへの組み込みは、BP反応により容易に行うことができる。表5にBP反応における、反応溶液組成の一例を示す。【0026】【表5】【0027】該BP反応は、例えば以下のような操作により行うことができる。氷上で表5における2ndPCR産物を含まない反応溶液を混合しておき、2ndPCR産物を所定量加えて、25℃で1時間以上インキュベートした後、1μlの10xプロテナーゼK(2μg/μl)を加え、37℃で10minインキュベートして反応を停止する。【0028】本発明においては、該BP反応により得られた産物を、例えば以下の操作によりコンピテントセルをトランスフォメーションすることで、Gatewayエントリークローンを作製することができる。即ち、氷上で50μlのコンピテントセル溶液に5μlのBP反応産物を加え、そのまま30minインキュベートする。その後、42℃でセルを30sec熱ショックを行い、直ちに2min氷上に置く。続いて、250μlのSOC培地を加えて、37℃で1.5時間振とう培養する。選択培地プレート(50μg/mlのカナマイシンを含むLB培地プレート)上にセル100〜150μlを蒔き、37℃でインキュベートする。生えてきたそれぞれのクローンから4個のコロニーをとり、50μg/mlのカナマイシンを含む0.2mlのTB培地中で振とう培養する。その後、80%グリセロール溶液に50μlの培養液を加えて、良く攪拌し、シールした後−80℃で保存する。得られたクローンについて、目的とするエントリークローンが作製されていることの確認を行う。【0029】本発明における、目的エントリークローンの生成の確認は、前記クローンから得られ保存したコロニーについて、コロニーPCRによるcDNAの増幅を行うことにより可能となる。コロニーPCRの反応条件の一例として、反応溶液組成を表6に、反応プログラムを表7にそれぞれ示した。なお、プライマーCの塩基配列は、配列表の配列番号4に、attB2プライマーの塩基配列は、配列番号12にそれぞれ記載のものを用いることができる。【0030】【表6】【0031】【表7】【0032】該コロニーPCRにより得られたPCR産物は、その反応産物の5μlを1.5%のアガロースゲル上で分離し、所定のエントリークローン作製の確認を行うことができる。【0033】【実施例】本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。また、実施例で用いた酵素及び試薬は、特記しない限りインビトロジェン社又は和光純薬社製の分析レベル及び生化学レベルのものを使用した。【0034】実施例1第1ステップのPCRに際して、3'末端側のアダプターbを持つプライマーとして、鋳型cDNAの停止コドンにハイブリダイズする塩基配列が、ATT及びATAの2種類であるプライマーB及びB'を混合して用いるGatewayエントリークローン作製の実施例。【0035】ヒト完全長cDNAプロジェクトにおいて見出されたORF624、1473、915、1389、498、1410、378及び672のそれぞれのcDNAを含むDNA断片を2ステップアダプターPCRによりcDNAの増幅を行い、Gatewayエントリークローンの作製を行った。第1ステップのPCR反応は、プライマーA及び配列番号2に記載ののアダプターbを持ち、鋳型cDNAの停止コドンにハイブリダイズする塩基配列が、ATT及びATAの2種類であるプライマーB及びB'を混合して用いて、基本的には表1の反応組成溶液により、表2の反応プログラムでPCR反応を行った。なお、第1及び第2ステップのPCR反応において、DNAポリメラーゼとしては、表1、表3にあるPLATINUM Taq DNA polymerase High Fidelity(以後、Taq HiFiと略記)以外にPLATINUM Pfx DNA polymerase(以後、Pfxと略記)の2種類について検討した。また、Taq HiFiを用いた場合については、エンハンサー溶液を添加した時と、添加しないと時について検討を行った。【0036】第1ステップPCR反応は、96ウエルプレートを用いて行い、表8の反応溶液組成(124反応分)を調製し、12チャンネルピペットを用いて各チューブに20μl分注した後、プライマーA(10μM)を0.5μl、プライマーB及びB'の混合液(10μM)を0.5μl及び鋳型DNAを5.0μl(50ng〜)をそれぞれのチューブに加えて、表2の反応プログラムにより反応を行った。【0037】【表8】【0038】第2ステップのPCR反応は、配列番号6に記載のプライマーC及び配列番号7に記載の配列を持つプライマーDあるいは配列番号8に記載の配列を持つプライマーD'用いて、基本的には表3の反応組成溶液により、表4の反応プログラムでPCR反応を行った。【0039】第1ステップPCR反応と同様に、第2ステップのPCR反応においても96ウエルプレートを用いて行い、表9の反応溶液組成(124反応分)を調製し、12チャンネルピペットを用いて各チューブに20μl分注した後、第1ステップのPCR反応溶液5.0μlをそれぞれのチューブに加えて、表4の反応プログラムにより反応を行った。【0040】【表9】【0041】2ステップアダプターPCR法による反応の結果、5'末端にattB1配列を、3'末端にattB2配列を持つネイティブ型cDNA及びC末端融合型cDNAのPCR産物が得られる。エントリークローン作製のための、attPプラスミドへの組み込みは、BP反応により行う。BP反応は、基本的には表5に示した反応溶液組成により行うが、PCR反応と同様に96ウエルプレートを用いて行い、表10の反応溶液組成(124反応分)を調製した。【0042】【表10】【0043】BP反応の操作は、氷上で表10に示した反応溶液を混合しておき、各チューブに5μl を分注した後、2ndPCR産物を5μl加えて、25℃で一晩インキュベートした後、1μlの10xプロテナーゼK(2μg/μl)を加え、37℃で10minインキュベートして反応を停止した。【0044】BP反応により得られた産物で、以下の操作によりコンピテントセルをトランスフォメーションし、Gatewayエントリークローンを作製した。即ち、氷上で50μlのコンピテントセル(DH5α)溶液に5μlのBP反応産物を加え、そのまま30minインキュベートした。その後、42℃でセルを30sec熱ショックし、直ちに2min氷上に置いた。続いて、250μlのSOC培地を加えて、37℃で1.5時間振とう培養した。選択培地プレート(50μg/mlのカナマイシンを含むLB培地プレート)上に培養液100〜150μlを蒔き、37℃でインキュベートした。【0045】以上の実験により、それぞれのクローンについて得られたコロニー数を確認した結果を表11に示した。【0046】【表11】【0047】表11の結果から、2ステップのPCRの反応条件により各クローンにおいて、充分なコロニー数が得られることが分かる。生えてきたそれぞれのクローンのコロニーから任意に4個のコロニーを選びとり、50μg/mlのカナマイシンを含む0.2mlのTB培地中で振とう培養した。その後、80%グリセロール溶液に50μlの培地を加えて、良く攪拌し、シールした後−80℃で保存した。【0048】選別した各クローンのコロニーについて、目的とするエントリークローンが作製されていることの確認を行った。即ち、各クローンから得られ、保存したコロニーについて、コロニーPCRによるcDNAの増幅を行った。コロニーPCRは、基本的には反応溶液組成を表6に示したものを用いて、反応プログラムを表7に示した方法で行った。【0049】第1、第2ステップPCR反応と同様に、コロニーPCR反応においても284ウエルプレートを用いて行い、表12の反応溶液組成(416反応分)を調製し、12チャンネルピペットを用いて各チューブに15μl分注した後、各コロニー培養液0.5μlをそれぞれのチューブに加えて、表7の反応プログラムにより反応を行った。【0050】【表12】【0051】コロニーPCRにより確認を行った各クローンの4個のコロニーについて、停止コドンの塩基配列についての確認結果を表13にまとめて示した。2ステップアダプターPCRによる停止コドンの改変を、任意に選別した4個のコロニー中での目的の配列を持つものの数で示した。【0052】【表13】【0053】表13の結果によれば、本発明による2ステップアダプターPCRによるエントリークローンの作製において、同時に選択性良くネイティブ型及びC末端融合型cDNAのクローンができていることが分かる。特に、Taq HiFiにエンハンサー溶液添加の場合には、ネイティブ型、C末端融合型cDNAとも100%の選択率でクローン化されていることが分かる。【0054】実施例2第1ステップのPCRに際して、3'末端側のアダプターbを持つプライマーとして、鋳型cDNAの停止コドンにハイブリダイズする塩基配列が、ACT及びACAの2種類であるプライマーB及びB'を混合して用いるGatewayエントリークローン作製の実施例。【0055】実施例1と同様に、ヒト完全長cDNAプロジェクトにおいてにおいて見出されたORF624、1473、915、1389、498、1410、378及び672のそれぞれのcDNAを含むDNA断片を2ステップアダプターPCRによりcDNAの増幅を行い、Gatewayエントリークローンの作製を行った。第1ステップのPCR反応は、プライマーA及び配列番号2に記載ののアダプターbを持ち、鋳型cDNAの停止コドンにハイブリダイズする塩基配列が、ACT及びACAの2種類であるプライマーB及びB'を混合して用いて、基本的には表1の反応組成溶液により、表2の反応プログラムでPCR反応を行った。なお、第1及び第2ステップのPCR反応において、DNAポリメラーゼとしては、表1、表3にあるTaq HiFi以外にPfxの2種類について検討した。【0056】第1ステップPCR反応は、96ウエルプレートを用いて行い、実施例1と同様に、表8の反応溶液組成(124反応分)を調製し、表2の反応プログラムにより反応を行った。ただし、表8におけるDNAポリメラーゼを Taq HiFiを用いた場合、エンハンサー溶液の無添加の反応は、本実施例では行っていない。【0057】実施例1と同様に、第2ステップのPCR反応においても96ウエルプレートを用いて行い、表9の反応溶液組成(124反応分)を調製し、表4の反応プログラムにより反応を行った。【0058】実施例1と同様に、第2ステップのPCR反応は、配列番号4に記載のプライマーC及び配列番号9に記載の配列を持つプライマーDあるいは配列番号10に記載の配列を持つプライマーD'用いて、基本的には表3の反応組成溶液により、表4の反応プログラムでPCR反応を行った。【0059】実施例1と同様に、2ステップアダプターPCR法による反応の結果得られたネイティブ型cDNA及びC末端融合型cDNAのPCR産物について、エントリークローン作製のための、BP反応を行った。【0060】BP反応により得られた産物で、実施例1と同様に、コンピテントセルをトランスフォメーションし、Gatewayエントリークローンを作製した。以上の実験により、それぞれのクローンについて得られたコロニー数を確認した結果を表14に示した。【0061】【表14】【0062】表14の結果から、2ステップアダプターPCRの反応条件により各クローンにおいて、必要なコロニー数が得られることが分かる。実施例1と同様に、任意に4個のコロニーを選びとり、処理後−80℃で保存した。【0063】引き続き、実施例1に従って、選別した各クローンのコロニーについて、目的とするエントリークローンが作製されていることをコロニーPCRにより確認を行った。【0064】コロニーPCRにより確認を行った各クローンの4個のコロニーについて、停止コドンの塩基配列についての確認結果を表15にまとめて示した。2ステップアダプターPCRによる停止コドンの改変を、任意に選別した4個のコロニー中での目的の配列を持つものの数で示した。【0065】【表15】【0066】表15の結果によれば、本発明による2ステップアダプターPCRによるエントリークローンの作製において、同時に選択性良くネイティブ型及びC末端融合型cDNAのクローンができていることが分かる。【0067】実施例3第1ステップのPCRに際して、3'末端側のアダプターbを持つプライマーとして、鋳型cDNAの停止コドンにハイブリダイズする塩基配列が、ACT及びCCTの2種類であるプライマーB及びB'を混合して用いるGatewayエントリークローン作製の実施例。【0068】実施例1と同様に、ヒト完全長cDNAプロジェクトにおいて見出されたORF624、1473、915、1389、498、1410、378及び672のそれぞれのcDNAを含むDNA断片を2ステップアダプターPCRによりcDNAの増幅を行い、Gatewayエントリークローンの作製を行った。第1ステップのPCR反応は、プライマーA及び配列番号2に記載ののアダプターbを持ち、鋳型cDNAの停止コドンにハイブリダイズする塩基配列が、ACT及びCCTの2種類であるプライマーB及びB'を混合して用いて、基本的には表1の反応組成溶液により、表2の反応プログラムでPCR反応を行った。なお、第1及び第2ステップのPCR反応において、DNAポリメラーゼとしては、表1、表3にあるTaq HiFi以外にPfxの2種類について検討した。また、Taq HiFiを用いた場合については、エンハンサー溶液を添加した時と、添加しないと時について検討を行った。【0069】第1ステップPCR反応は、96ウエルプレートを用いて行い、実施例1と同様に、表8の反応溶液組成(124反応分)を調製し、表2の反応プログラムにより反応を行った。【0070】実施例1と同様に、第2ステップのPCR反応は、配列番号4に記載のプライマーC及び配列番号9に記載の配列を持つプライマーDあるいは配列番号11に記載の配列を持つプライマーD'用いて、基本的には表3の反応組成溶液により、表4の反応プログラムでPCR反応を行った。【0071】実施例1と同様に、2ステップアダプターPCR法による反応の結果得られたネイティブ型cDNA及びC末端融合型cDNAのPCR産物について、エントリークローン作製のための、BP反応を行った。【0072】BP反応により得られた産物を、実施例1と同様の操作によりコンピテントセルをトランスフォメーションし、Gatewayエントリークローンを作製した。それぞれのクローンについて得られたコロニー数を確認した結果を表16に示した。【0073】【表16】【0074】表16の結果から、2ステップのPCRの反応条件により各クローンにおいて、充分なコロニー数が得られることが分かる。それぞれのクローンのコロニーから任意に4個のコロニーを選びとり、処理後−80℃で保存した。【0075】選別した各クローンのコロニーについて、目的とするエントリークローンが作製されていることを、コロニーPCRによるcDNAの増幅を行うことにより確認した。コロニーPCRは、実施例1と同様に行った。【0076】コロニーPCRにより確認を行った各クローンの4個のコロニーについて、停止コドンの塩基配列についての確認結果を表17にまとめて示した。2ステップアダプターPCRによる停止コドンの改変を、任意に選別した4個のコロニー中での目的の配列を持つものの数で示した。【0077】【表17】【0078】表17の結果によれば、本発明による2ステップアダプターPCRによるエントリークローンの作製において、同時に選択性良くネイティブ型及びC末端融合型cDNAのクローンができていることが分かる。特に、DNAポリメラーゼとしてTaq HiFiをもちいて、エンハンサー溶液添加の場合には、ネイティブ型及びC末端融合型cDNAともほぼ100%の選択率でクローン化されていることが分かる。【0079】【発明の効果】本発明によるGatewayエントリークローンの作成方法は、多種類の発現クローンを迅速かつ容易に作製することを可能とした技術である。cDNAやPCR DNAの機能解析、たんぱく質発現等が容易となり、ヒトゲノムcDNA等による医薬品開発などの進展に寄与する。【0080】【配列表】【図面の簡単な説明】【図1】本発明による2ステップアダプターPCRによるcDNAの増幅の概略を示したものである。【符号の説明】a:アダプターab:アダプターbc:アダプターcd:アダプターdATG:読み込み開始コドン配列Ter:停止コドン配列(TGA,TAA,TAGを総称)ORF:cDNAの翻訳領域 2ステップアダプターPCRにおいて、 鋳型cDNAを増幅する第1ステップのPCRを、アダプターaを含む5'末端プライマーAを用い、アダプターbを含み、鋳型cDNAの停止コドンにハイブリダイズする塩基配列がATT又はACTである3'末端プライマーB及び停止コドンと同じ位置で異なる塩基配列にハイブリダイズする塩基配列がATA又はACAであるB'を混合して行い、 第2ステップのPCRを、第1ステップでのPCR増幅により、5'末端にアダプターaを含み、3'末端にアダプターbを含む増幅産物を鋳型として、5’末端にプラスミドへの接続部位となる配列attB1を持つアダプターcを含み且つ前記アダプターaにハイブリダイズすることができる5’末端共通プライマーCを用い、3'末端のPCRプライマーとしてプラスミドへの接続部位となる配列attB2を含み且つ前記アダプターbにハイブリダイズすることができるアダプターdを持ち、さらに停止コドンに対する配列を有するネイティブ型共通プライマーD、又はさらに前記アダプターdを持ち前記停止コドンと同じ位置で異なる塩基配列に対する配列を有するC末端融合型共通プライマーD'を用いてそれぞれ増幅を行い、両末端に異なる接続塩基配列を持つネイティブ型cDNA及びC末端融合型cDNAを作製し、得られたcDNAをattPプラスミドに組み込み、これをコンピテントセルに導入することを特徴とするGatewayエントリークローンの作製方法。 配列表の配列番号4に記載の塩基配列を有する請求項1に記載のPCRプライマーC。 該プライマーBは、その停止コドンにハイブリダイズする塩基配列がATTであり、該プライマーB'は、その停止コドンにハイブリダイズする塩基配列がATAであり、該プライマーDは、配列番号7に記載の塩基配列であり、該プライマーD'は、配列番号8に記載の塩基配列であることを特徴とする請求項1に記載のGatewayエントリークローンの作製方法。 配列表の配列番号7に記載の塩基配列を有する請求項1又は3に記載のPCRプライマーD。 配列表の配列番号8に記載の塩基配列を有する請求項1又は3に記載のPCRプライマーD'。 該プライマーBは、その停止コドンにハイブリダイズする塩基配列がACTであり、該プライマーB'は、その停止コドンにハイブリダイズする塩基配列がACAであり、該プライマーDは、配列番号9に記載の塩基配列であり、該プライマーD'は、配列番号10に記載の塩基配列であることを特徴とする請求項1に記載のGatewayエントリークローンの作製方法。 配列表の配列番号9に記載の塩基配列を有する請求項1又は6に記載のPCRプライマーD。 配列表の配列番号10に記載の塩基配列を有する請求項1又は6に記載のPCRプライマーD'。 該プライマーBは、その停止コドンにハイブリダイズする塩基配列がACTであり、該プライマーB'は、その停止コドンにハイブリダイズする塩基配列がCCTであり、該プライマーDは、配列番号9に記載の塩基配列であり、該プライマーD'は、配列番号11に記載の塩基配列であることを特徴とする請求項1に記載のGatewayエントリークローンの作製方法。 配列表の配列番号11に記載の塩基配列を有する請求項1又は9に記載のPCRプライマーD'。 請求項1〜10のいずれかに記載の該エントリークローンの作製方法により作製されたネイティブ型cDNA及びC末端融合型cDNAのGatewayエントリークローン。