タイトル: | 特許公報(B2)_第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物の製造法 |
出願番号: | 2001336421 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07C 209/68,C07C 211/63,C07C 211/65,C07B 61/00 |
原 靖 青木 雅裕 JP 3925161 特許公報(B2) 20070309 2001336421 20011101 第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物の製造法 東ソー株式会社 000003300 原 靖 青木 雅裕 20070606 C07C 209/68 20060101AFI20070517BHJP C07C 211/63 20060101ALI20070517BHJP C07C 211/65 20060101ALI20070517BHJP C07B 61/00 20060101ALN20070517BHJP JPC07C209/68C07C211/63C07C211/65C07B61/00 300 C07C209/68 C07C211/62 特開平06−192867(JP,A) 特開平03−052868(JP,A) 6 2003137846 20030514 6 20041001 柿澤 恵子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物の製造法に関する。この第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物は、半導体集積回路、プリント配線基板、液晶の製造工程におけるフォトレジスト層及びチタン酸化物の剥離剤に使用される。【0002】【従来の技術】第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物は、第四級アンモニウム塩に過酸化水素が配位したものである。過酸化水素が第四級アンモニウム塩に配位することで、過酸化水素の性質が大きく変化し、白金と接触しても分解しなくなるなど取扱いやすくなる。この第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物の最も有用な用途はレジスト剥離剤である。レジスト剥離剤は、半導体、液晶などの回路形成のため使用されるフォトレジスト、あるいはその残渣の剥離に使用される。【0003】以上の様に、第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物は有用な物質であるが、その工業的な製造法は全く知られていなかった。そこで、工業的に可能な第四級アンモニウム塩過酸化水素化物の製造法の開発が望まれていた。【0004】【発明が解決しようとする課題】上述したように、工業的に可能な第四級アンモニウム塩過酸化水素化物の製造法の開発が望まれていた。そのため本発明の目的は、工業的に可能な第四級アンモニウム塩過酸化水素化物の製造法を提供することにある。【0005】【課題を解決するための手段】本発明者らは四級アンモニウム塩過酸化水素化物の製造法について鋭意検討した結果、芳香族カルボン酸を触媒とすることにより、第四級アンモニウム塩と過酸化水素化物から第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物が容易に製造できることを見い出し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は、芳香族カルボン酸の存在下、第四級アンモニウム塩と過酸化水素を接触させることを特徴とする第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物の製造法である。【0006】以下に本発明をさらに詳細に説明する。【0007】本発明の方法において、第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物とは、結晶水における水の様に、第四級アンモニウム塩に過酸化水素が配位したものを意味する。過酸化水素は様々な化合物に配位して過酸化水素化物を形成する。他に過酸化水素化物を形成するものとして知られているのは、フッ化カリウム、炭酸ルビジウム、尿素などがある。本発明の方法において製造する第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物もこれらと同様の構造になっていると推定される。【0008】本発明の方法において、芳香族カルボン酸の存在下、第四級アンモニウム塩と過酸化水素とは、第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物を形成する。芳香族カルボン酸が存在すると、過酸化水素化物の形成速度は飛躍的に増加する。逆に芳香族カルボン酸が存在しないと反応は工業的でないほど遅くなり、反応を進めるために、加熱を要するようになる。【0009】本発明の方法において使用される芳香族カルボン酸としては、1価または2価の芳香族カルボン酸を例示することができ、芳香環上の水素原子は、アルキル基や水酸基等の置換基により1個以上置換されていてもよい。このような芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、トルイル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸などが挙げられ、これらの1種以上を用いればよい。製造した第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物の安定性が良好な点および工業的に安価に入手できるという点で、安息香酸、サリチル酸、フタル酸が好ましい。【0010】本発明の方法において、過酸化水素は、無水、水溶液、いずれも使用できるが、安定で工業的に入手しやすい水溶液を使用するのが好ましい。一般に30〜35%の濃度の過酸化水素水が市場に流通しているが、濃度にかかわらず使用することができる。【0011】本発明の方法において使用される原料の第四級アンモニウム塩は、第四級アンモニウムカチオンとアニオンから成る。アニオンの種類に特に制限は無いが、半導体用レジスト剥離剤として使用するためには、ハロゲン化物イオンは好ましくない場合がある。好ましいイオンを例示すると、炭酸イオン、カルボン酸イオン、水酸化物イオンが挙げられる。カルボン酸イオンとしては、脂肪族カルボン酸イオン、芳香族カルボン酸イオンのいずれも使用することができるが、本発明の方法で使用する触媒と同じ芳香族カルボン酸イオンを使用するのが工業的には好ましい。これらのアニオンは1種類で使用しても良いし、2種類以上が存在していても良い。【0012】本発明の方法において使用される原料の第四級アンモニウム塩を形成する第四級アンモニウムカチオンには特に制限は無いが、例えば、比較的安価なテトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、エチルトリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、オクチルトリメチルアンモニウムカチオン、デシルトリメチルアンモニウムカチオン、ドデシルトリメチルアンモニウムカチオンなどのテトラアルキルアンモニウムカチオン、ベンジルトリメチルアンモニウムカチオンなどのベンジルトリアルキルアンモニウムカチオン、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムカチオンなどのヒドロキシアルキルトリアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。【0013】本発明の方法において、芳香族カルボン酸の量は、好ましくはその芳香族カルボン酸/第四級アンモニウムカチオンのモル比に芳香族カルボン酸1分子のカルボキシル基の数を乗じた値が、0.01〜1、より好ましくは0.1〜1である。このような範囲とすることにより、原料の過酸化水素を分解することなく、工業的に十分な反応速度で第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物を製造することができる。【0014】本発明の方法において、過酸化水素の量には特に制限はない。第四級アンモニウム塩に対し過剰に添加しても良いし、過酸化水素より第四級アンモニウム塩を過剰に添加しても良い。【0015】本発明の方法において、第四級アンモニウム塩、過酸化水素及び芳香族カルボン酸を接触させる順序に特に制限は無い。第四級アンモニウム塩、過酸化水素、芳香族カルボン酸を一緒に混合しても良いし、第四級アンモニウム塩と芳香族カルボン酸の混合物に過酸化水素を添加しても、過酸化水素と芳香族カルボン酸の混合物に第四級アンモニウム塩を添加しても、過酸化水素に芳香族カルボン酸と第四級アンモニウム塩の混合物を添加しても良い。しかし、第四級アンモニウム塩、過酸化水素及び芳香族カルボン酸を混合すると発熱するため、この発熱を制御するには、第四級アンモニウム塩と芳香族カルボン酸の混合物に過酸化水素を添加するのが最も好ましい。【0016】本発明の方法において、過酸化水素化物を製造する際の温度は0〜100℃が好ましく、30〜70℃がさらに好ましい。このような温度範囲とすることにより、原料および第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物が分解することなく、工業的に十分な反応速度が得られる。【0017】本発明の方法において、使用する溶媒は水が最も好ましい。最も安価である上、過酸化水素、第四級アンモニウム塩のいずれも水溶液で市場に流通していることが多く、工業的に有利である。しかし、第四級アンモニウム塩、過酸化水素、芳香族カルボン酸を溶解できるアルコールなどの溶媒を添加することは一向に差し支えない。【0018】本発明の方法において、過酸化水素化物の安定剤を加えても良い。安定剤は過酸化水素化物を製造する前の原料に添加しても良いし、過酸化水素化物を製造した後に添加しても良い。過酸化水素化物の安定剤を例示すると、アニリン、アセトアニリド、ヒンダードアミンなどが挙げられる。これらは単一で使用しても、二種類以上を併用しても一向に差し支えない。【0019】本発明の方法において、第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物は、特願2001−336140号に従って、液体クロマトグラフィー(LC)で分析することができる。LCで分析すれば、過酸化水素化物になっていない第四級アンモニウム塩と本発明の製造法で過酸化水素化物になった第四級アンモニウム塩を分離することができる。分離剤は通常、カラムに充填されたものを使用する。【0020】カラムとしては、ゲルろ過用(GPC)のカラムを使用すれば高分離能で分析できる。その中でもビニルポリマーを基材とした充填剤を充填したカラムを使用するのが好ましく、極性有機溶媒系カラムがさらに好ましい。LCの溶離液としてはアセトニトリルを含む水溶液を使用するのが好ましい。水とアセトニトリルの比率は分離する化合物によって異なるため、一概に決めることはできない。溶離液の極性を上げる場合には水を増やし、溶離液の極性を下げる場合はアセトニトリルを増やす。ピーク形状、分離性を鑑み、自由に比率を変えることができる。【0021】本発明の方法で製造した第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物は、水、水溶性有機溶媒、アミン類、腐食抑制剤を加えて、レジスト剥離剤とすることができる。このレジスト剥離剤は、無機質基体上に塗布されたフォトレジスト膜、また無機質基体上に塗布されたフォトレジスト膜をドライエッチング後に残存するフォトレジスト層、あるいはドライエッチング後にアッシングを行い残存するフォトレジスト残渣物などを剥離するのに用いられる。【0022】【実施例】本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。【0023】なお、過酸化水素化物は液体クロマトグラフィーで分析したが、カラムとしては、ゲルろ過用のカラムを使用し、溶離液としてはアセトニトリルを含む水溶液を使用した。【0024】実施例1室温でテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの25%水溶液100g(0.275モル)にフタル酸18.2g(0.110モル)を添加した。さらに撹拌しながら30%過酸化水素水溶液45.4g(0.401モル)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続けた。水溶液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、第四級アンモニウム塩の97%が過酸化水素化物になっていた。【0025】比較例1フタル酸を使用しなかった以外は実施例1と同じ方法で過酸化水素化物の製造を試みた。過酸化水素滴下終了後、1時間撹拌した水溶液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物は検出されなかった。【0026】比較例290℃でテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの25%水溶液100g(0.275モル)に30%過酸化水素水溶液45.4g(0.401モル)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続けた。水溶液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、第四級アンモニウム塩の91%が過酸化水素化物になっていた。【0027】実施例2ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドの40%水溶液115g(0.275モル)に炭酸ガスを吹き込み、ベンジルトリメチルアンモニウム炭酸塩とした。これにフタル酸18.2g(0.110モル)、30%過酸化水素水溶液45.4g(0.401モル)を加え、5時間撹拌を続けた。水溶液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、第四級アンモニウム塩の99%が過酸化水素化物になっていた。【0028】実施例3コリンヒドロキシド(ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド)の50%水溶液66.6g(0.275モル)に安息香酸16.8g(0.138モル)、フタル酸9.1g(0.055モル)を加え、コリン安息香酸塩、コリンフタル酸塩とコリンヒドロキシドの混合物とした。これに30%過酸化水素水溶液45.4g(0.401モル)を加え、5時間撹拌を続けた。水溶液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、第四級アンモニウム塩の88%が過酸化水素化物になっていた。【0029】実施例4〜10第四級アンモニウム塩として15%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を40g(0.066モル)使用し、これに35%過酸化水素水、芳香族カルボン酸を加え撹拌した。芳香族カルボン酸の種類、それぞれの使用量、温度、撹拌時間を表1に示した。また水溶液を液体クロマトグラフィーで分析し、原料の第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物への転化率も表1に示した。【0030】【表1】【発明の効果】本発明の製造法は、レジスト剥離剤原料として有用な第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物を工業的に製造できる方法を提供するものである。 芳香族カルボン酸の存在下、第四級アンモニウム塩と過酸化水素を接触させることを特徴とする第四級アンモニウム塩の過酸化水素化物の製造法。 芳香族カルボン酸が、安息香酸、サリチル酸、フタル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の製造法。 第四級アンモニウム塩を形成するアニオンが、炭酸イオン、カルボン酸イオン、水酸化物イオンから成る群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載の製造法。 第四級アンモニウム塩を形成するカチオンが、テトラアルキルアンモニウムイオン、トリアルキルベンジルアンモニウムイオン、ヒドロキシアルキルトリアルキルアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の製造法。 芳香族カルボン酸を、カルボキシル基/第四級アンモニウムカチオンが0.01〜1となるよう添加する請求項1〜請求項4のいずれかに記載の製造法。 過酸化水素化物を製造する際の温度を0〜100℃とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の製造法。